霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二七章 湖上(こじやう)木乃伊(ミイラ)〔七七〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第2巻 霊主体従 丑の巻 篇:第4篇 常世の国 よみ(新仮名遣い):とこよのくに
章:第27章 湖上の木乃伊 よみ(新仮名遣い):こじょうのみいら 通し章番号:77
口述日:1921(大正10)年11月02日(旧10月03日) 口述場所: 筆録者:桜井重雄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年1月27日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
常世城から敗走した元照彦は、身をもって美濃彦の館に逃れた。門番は着の身着のままで逃れた元照彦を疑ったが、元照彦は戯れ歌に託して自分の正体を訴え、美濃彦に迎えられた。
元照彦は身なりを変えて、スペリオル湖のほとりに船頭となって潜み、味方を集め、敵の情勢を探ることとなった。
常世姫の部下・猿世彦は言霊別命と元照彦の行方を追って、スペリオル湖のほとりに達し、船頭に舟を出すように命じた。
しかし船頭は湖の中まで来ると、自分は言霊別命に味方する港彦である、と名乗った。そして猿世彦に自決を迫った。
命乞いをする猿世彦に、港彦は、湖の中に飛び込むようにと命じた。猿世彦が湖に飛び込もうと衣服を脱ぐと、激烈な寒気のためにたちまち猿世彦は木乃伊になってしまった。
港彦はこの木乃伊を乗せて、船着場に引き返した。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2019-11-09 16:17:33 OBC :rm0227
愛善世界社版:132頁 八幡書店版:第1輯 206頁 修補版: 校定版:134頁 普及版:63頁 初版: ページ備考:
001 元照彦(もとてるひこ)裸体(らたい)のまま(から)うじて常世城(とこよじやう)(のが)れいで、002(くさ)()んで簑笠(みのかさ)(つく)り、003(くれなゐ)(やかた)()ちのび美濃彦(みのひこ)(もん)(たた)いた。004美濃彦(みのひこ)門戸(もんこ)には立熊別(たてくまわけ)といふ守将(しゆしやう)が、005少数(せうすう)神卒(しんそつ)(とも)厳守(げんしゆ)してゐた。006そこへ元照彦(もとてるひこ)(かほ)(くは)()(しる)をぬり、007容貌(ようばう)()へ、008簑笠(みのかさ)みすぼらしい姿(すがた)にて(あら)はれたのである。009立熊別(たてくまわけ)はこの姿(すがた)()悪神(あくがみ)()ちぶれ(もの)(しん)じ、010(おほ)いに叱咤(しつた)して門戸(もんこ)出入(しゆつにふ)(こば)んだ。
011 元照彦(もとてるひこ)は、
012(われ)美濃彦(みのひこ)同志(どうし)である。013すみやかにこの(むね)美濃彦(みのひこ)(つた)へられよ』
014といつた。015立熊別(たてくまわけ)はこれを(しん)ぜず、
016『すみやかにここを()()れ』
017厳命(げんめい)し、018元照彦(もとてるひこ)(なに)ほど弁明(べんめい)しても()()れぬ。019そこで元照彦(もとてるひこ)一策(いつさく)(あん)じ、
020(じつ)(われ)浮浪神(さすらひがみ)である』
021()つて、022そろそろ竜世姫(たつよひめ)故智(こち)をまねて(うた)(うた)ひだした。
023常世(とこよ)(しろ)()げだして
024()()(とほ)(はだか)(ばう)
025(みの)()(かさ)()()(をは)
026どうして()はしてくれなゐの
027(やかた)(かみ)門番(もんばん)
028()のほど()らぬ簑虫(みのむし)
029わが()姿(すがた)()ちぶれて
030乞食(こじき)のやうに()えたとて
031結構(けつこう)(かみ)ぢやぞ()のがすな
032わが()(あだ)となることを
033()らずに(もん)()(くま)
034わけも()らずにハネのける
035(いま)(くも)りしこの身体(からだ)
036(もと)照彦(てるひこ)()(ひか)
037(ひかり)()たら(くれなゐ)
038(やかた)はたちまち()()ける
039()けて口惜(くや)しい玉手箱(たまてばこ)
040美濃彦(みのひこ)(いま)()(づら)
041かわくを()るのが()(どく)ぢや
042()はにや()はぬでそれもよい
043(あと)でビツクリして(あわ)()くな
044(あと)でビツクリして(あわ)()くな』
045繰返(くりかへ)しくりかへし(をど)つたのである。
046 立熊別(たてくまわけ)不思議(ふしぎ)(やつ)()たものと、047面白(おもしろ)半分(はんぶん)にからかつてゐた。048美濃彦(みのひこ)はあまり門口(かどぐち)(さわ)がしさに()()で、049じつ様子(やうす)(かんが)へてみた。050合点(がつてん)のゆかぬはこの浮浪神(さすらひがみ)である。051(かほ)(いろ)こそ(かは)つてゐるが、052どことなく見覚(みおぼ)えのある(かほ)である。053またその(こゑ)(なん)となく()(おぼ)えのある(こゑ)である。054不思議(ふしぎ)(おも)つて、055ともかくもこれを門内(もんない)(とほ)した。056門内(もんない)()るや(いな)や、057美濃彦(みのひこ)にむかひ、
058(われ)元照彦(もとてるひこ)である。059常世(とこよ)(しろ)(はい)をとり、060全軍(ぜんぐん)四方(しはう)解散(かいさん)し、061(われ)はわずかに()をもつて(まぬが)れ、062やうやくここまで()ちのびたのである』
063一伍(いちぶ)一什(しじふ)物語(ものがた)つた。
064 美濃彦(みのひこ)(おどろ)いて大地(だいち)平伏(へいふく)し、065立熊別(たてくまわけ)無礼(ぶれい)陳謝(ちんしや)し、066ただちに奥殿(おくでん)へともなひ種々(しゆじゆ)饗応(きやうおう)をなし、067かつ(あたら)しき衣服(いふく)()(きた)りてそれを着用(ちやくよう)させた。068さうして元照彦(もとてるひこ)正座(しやうざ)(なほ)し、069自分(じぶん)左側(さそく)端座(たんざ)し、070侍者(じしや)をして立熊別(たてくまわけ)(まね)(きた)らしめた。071立熊別(たてくまわけ)美濃彦(みのひこ)(まへ)出頭(しゆつとう)した。072正座(しやうざ)立派(りつぱ)(かみ)のあるのを()(おどろ)き、073不審(ふしん)さうに(かほ)打見(うちみ)まもつてゐる。074美濃彦(みのひこ)立熊別(たてくまわけ)(むか)つて、075先程(さきほど)浮浪神(さすらひがみ)此方(こなた)であると、076上座(じやうざ)(はう)()(しめ)した。077立熊別(たてくまわけ)はつくづくこれを(なが)め、078はじめて元照彦(もとてるひこ)なりしことを()り、079(しり)花立(はなたて)にして以前(いぜん)無礼(ぶれい)陳謝(ちんしや)した。
080 ここに美濃彦(みのひこ)密議(みつぎ)結果(けつくわ)081元照彦(もとてるひこ)服装(ふくさう)(へん)じ、082(やかた)従臣(じゆうしん)港彦(みなとひこ)をともなひ、083スペリオル()のほとりに船頭(ふながみ)となつて往来(わうらい)神司(かみがみ)調(しら)べ、084味方(みかた)をあつめ、085かつ(てき)情勢(じやうせい)(さぐ)らむとした。
086 常世姫(とこよひめ)(ぐん)は、087八方(はつぱう)手分(てわ)けして言霊別(ことたまわけの)(みこと)088元照彦(もとてるひこ)所在(ありか)厳密(げんみつ)(さぐ)らむとし、089猿世彦(さるよひこ)言霊別(ことたまわけの)(みこと)(あと)()ふて、090いま此処(ここ)(あら)はれた。091猿世彦(さるよひこ)(ふね)(めい)じこの湖水(こすゐ)(わた)らむとした。092港彦(みなとひこ)はただちに(ふね)()した。093(ふね)(みづうみ)(なか)ほどまで(すす)んだ。094にはかに暴風(ばうふう)()きおこり、095(なみ)(たか)(ふね)はすでに(なみ)()まれむとする。096猿世彦(さるよひこ)顔色(がんしよく)(あを)ざめ(ふる)(おのの)ひてゐた。097これにひきかへ、098港彦(みなとひこ)平気(へいき)平左(へいざ)(うた)をうたつてゐる。099さうして常世(とこよ)(しろ)言霊別(ことたまわけの)(みこと)100元照彦(もとてるひこ)といふ神将(しんしやう)のために(ふたた)陥落(かんらく)し、101常世姫(とこよひめ)竜宮城(りゆうぐうじやう)()つたといふ(うはさ)(もつぱ)らであると、102他事(よそごと)(はなし)しかけた。103猿世彦(さるよひこ)(こころ)(こころ)ならず、104(すみ)やかにこの(ふね)(もと)(かへ)せと(めい)じた。105(かぜ)はますます(はげ)しく、106(なみ)はおひおひ(たか)くなつてきた。107猿世彦(さるよひこ)()()でなく、108しきりにかへせかへせと厳命(げんめい)した。109港彦(みなとひこ)(すこ)しも(さわ)がず、110ますます北方(ほつぱう)()ぐのであつた。111そして港彦(みなとひこ)(かたち)(ただ)し、112猿世彦(さるよひこ)にむかひ、
113(われ)(いや)しき船頭(ふながみ)となつて(なんぢ)らの()るのを()つてゐたのである。114(じつ)言霊別(ことたまわけの)(みこと)115元照彦(もとてるひこ)謀将(ぼうしやう)である。116(いま)ここで(みなみ)()きかへさむか、117言霊別(ことたまわけの)(みこと)数多(あまた)神軍(しんぐん)(ととの)へて(なんぢ)(ほろ)ぼさむと()ちかまへてゐる。118(きた)(すす)まむか、119北岸(ほくがん)には元照彦(もとてるひこ)神軍(しんぐん)(ととの)(なんぢ)到着(たうちやく)()つてこれを(ほろ)ぼさむとしてゐる。120この(みづうみ)両神軍(りやうしんぐん)部将(ぶしやう)東西(とうざい)南北(なんぽく)手配(てくば)りして、121(あり)のはひでる隙間(すきま)もない状況(じやうきやう)である。122(われ)(なんぢ)(をし)ふべきことがある、123袖振(そでふ)()ふも他生(たしやう)(えん)といふではないか。124(なんぢ)(われ)とはいはば一蓮(いちれん)托生(たくしやう)125いつそこの(みづうみ)両人(りやうにん)投身(とうしん)しては如何(いかん)126なまじひに(いのち)(なが)らへむとして(はぢ)をかくは男子(だんし)たるものの本意(ほんい)ではあるまい。127また卑怯(ひけふ)未練(みれん)(こころ)をおこし()(のが)れむとして捕虜(とりこ)となり、128(はぢ)をさらさば、129(なんぢ)(いち)(にん)(はぢ)のみではない。130常世姫(とこよひめ)一大(いちだい)恥辱(ちじよく)である。131覚悟(かくご)はいかに』
132問詰(とひつ)めた。133猿世彦(さるよひこ)進退(しんたい)きはまり卑怯(ひけふ)にも(こゑ)(はな)つて、134(をとこ)()きに()きだし、135()()はせて(すく)ひを()ふた。136港彦(みなとひこ)愉快(ゆくわい)でたまらず、
137『しからば(なんぢ)(ねが)ひを()(とど)けてやらう。138その(かは)りに、139(われ)(ひと)つの(ねが)ひを()いてくれるか』
140といつた。141猿世彦(さるよひこ)は、
142(いのち)あつての物種(ものだね)143たとへ貴下(きか)(やま)逆様(さかさま)(あが)れと()はれても、144()(いのち)さへ(たす)けたまへば(けつ)して違背(ゐはい)(まを)さじ』
145(こた)へた。146港彦(みなとひこ)は、
147『しからば(なんぢ)衣類(いるゐ)()ぎすて、148この(みづうみ)(なか)投入(とうにふ)し、149(はだか)になれ』
150(めい)じた。
151 寒気(かんき)激烈(げきれつ)なるこの湖上(こじやう)に、152かてて(くは)へて()()るやうな寒風(かんぷう)()(すさ)んでゐる。153されど(いのち)大事(だいじ)猿世彦(さるよひこ)は、154(めい)まにまに(ころも)()()てた。155たちまち菎蒻(こんにやく)幽霊(いうれい)地震(ぢしん)(まご)のやうに、156ブルブル(ふる)ひだし、157つひには手足(てあし)(こほ)(いき)さへ()えて、158完全(くわんぜん)なる木乃伊(ミイラ)になつてしまつた。159港彦(みなとひこ)言霊別(ことたまわけの)(みこと)土産(みやげ)として、160この木乃伊(ミイラ)()せて乗場(のりば)()きかへしたのである。
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