第一〇章 附合信神〔三一〇〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第7巻 霊主体従 午の巻
篇:第2篇 白雪郷
よみ(新仮名遣い):はくせつきょう
章:第10章 附合信神
よみ(新仮名遣い):つきあいしんじん
通し章番号:310
口述日:1922(大正11)年01月30日(旧01月03日)
口述場所:
筆録者:桜井重雄
校正日:
校正場所:
初版発行日:1922(大正11)年5月31日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:日の出神を案内する里人、甲、乙、丙(八、六、鹿)は大中教の威勢を恐れて情けない会話をしながら、道を先導していた。
甲、乙、丙は、大中教に命を脅かされても信仰を変えないとがんばっている信者を馬鹿にした。日の出神は三人を一喝すると、こんな弱虫にかまっていられないと、どんどん先に山道を進んでいった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:2020-05-02 18:10:06
OBC :rm0710
愛善世界社版:59頁
八幡書店版:第2輯 56頁
修補版:
校定版:63頁
普及版:25頁
初版:
ページ備考:
001 日の出神は、002ビクビク顫ふ三人を先頭に立て山深く進みけるが、003先頭に立てる甲は忽ち『キヤツ』と一声、004その場に仆れたり。
005 乙は驚いて抱き起さうとするを、006甲は眼を塞ぎ首を左右に振りながら、
007甲『おい最うこらへてくれ、008ドエライこつちや。009今それ、010健寅彦の宣伝使が仰山乾児を連れて此方へ来るぢやないか。011それツ』
012と目を塞ぎながら前方を指さしてブルブル顫へて言ふ。
013丙『何にも来やあせぬぢやないか。014猫一匹居りはせぬのに、015貴様何だい、016大方幻でも見たのだらう』
017乙『此奴は何時もビツクリ虫を腹の中にやつと飼うとるからな。018此奴と歩くと俺までが顫ひ出すわい。019こんな腰抜は帰なしてやつた方がよからう。020モシモシ宣伝使様、021こンな奴を連れて行つては足手纏ひになつて大変な御迷惑をかけるかも知れませぬ。022我々二人がお供をしますから、023此奴はもう帰してやつて下さい。024おい、025もう除隊だ。026勝手に帰つて留守の家で鼠と一緒に仲ようせい。027貴様の嬶アは今ウラル彦の宣伝使に喰はれて了つてるかも知れぬぞ。028早う帰つて線香でも立ててやれ。029俺は斯ういふものの独身者だから、030脛一本、031ラマ一本だ。032しかし貴様や甲になると、033さういふ訳には行かぬから気の毒なものだ。034それだから、035三五教の宣伝使様が荷物を軽うして置けと仰有つたのだよ』
036丙『馬鹿な事を言ふない。037貴様だつてあのお照を嬶アにすると言つたぢやないか。038そのお照は今ごろ宣伝使に殺されとるぞ。039あまり大きな声で太平楽を言ふない』
040日の出神『おい、041好い加減に話を切り止めて案内せぬか』
042一同『ハイハイ、043今案内いたします』
044と拳を握り人指し指をニユーツと出して、
045甲『モーシ、046宣伝使様、047如何にも斯うにも足が向ふへ出ませぬ。048かう行つて、049かう行つて、050かう曲つて、051かう寄つてツーとお出なさいませ』
052日の出神『そんなことを言つたつて分るか、053この深山が』
054甲『俺だけ、055それなら堪へて呉れるか。056家まで送つてくれ。057丙は俺の後について乙は前になつて俺の所まで送つた上で、058宣伝使様のお供をしてくれ』
059日の出神『コラコラそンな悠長な事ではない。060貴様はそンな弱いことで何うするのか。061苟も三五教の教を聞いた者のする所作か』
062甲『ハイ、063私は何の事ぢやかテンと分りませぬが、064酋長様が拝めと仰有るので拝まぬと叱られますからなア。065邪魔くさいけれどイヤイヤ祭つとりますので』
066日の出神『この郷の奴は皆そンな信仰か』
070甲『イエイエそれは私一人のことです。071他の奴共は何ンな信仰有つとるかテンと分りませぬ。072何だか知れませぬが、073しぶとい信仰を持つとります。074ウラル彦の宣伝使にエライ目に遇はされても信仰は変へぬといつて気張つてます』
075乙『たとへ殺されてもこの神様には離れぬと言つてますぜ。076命知らずですなア。077ほンとに馬鹿ですなア。078私らの思ふのには、079敵はぬ時に助けて貰うための信仰なのに殺されてまで信仰する馬鹿があるものか。080トンと合点が行かぬがなア』
081日の出神『何ツ、082殺されても信仰を変へぬというか。083エライ奴だ。084見込みがある』
085乙『へー殺されても信仰するつて幽霊になつて信神するのですか。086ケタイな神さまですなア』
087日の出神は大喝一声、
089と言つたその声に三人は驚いて、090両手をひろげ口を開けて、091思はず知らず、092二三尺飛び上る。093日の出神はこれらの弱虫に目もくれず、094ドシドシと又もや宣伝歌を歌ひながら、095山奥さして進み行く。
096(大正一一・一・三〇 旧一・三 桜井重雄録)