第二三章 色良い男〔三二三〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第7巻 霊主体従 午の巻
篇:第4篇 鬼門より竜宮へ
よみ(新仮名遣い):きもんよりりゅうぐうへ
章:第23章 色良い男
よみ(新仮名遣い):いろよいおとこ
通し章番号:323
口述日:1922(大正11)年01月31日(旧01月04日)
口述場所:
筆録者:外山豊二
校正日:
校正場所:
初版発行日:1922(大正11)年5月31日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:竜宮の海域を出ると、船頭は船客たちに会話を許可した。
船客たちは馬鹿話を始めたが、そのうちに風が変わって船は筑紫の洲へと流されることになってしまった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:2020-05-06 18:07:42
OBC :rm0723
愛善世界社版:141頁
八幡書店版:第2輯 86頁
修補版:
校定版:148頁
普及版:61頁
初版:
ページ備考:
001 船頭は又もや立つて船歌を唄ひ始めたり。
002船頭『金は世界の宝と聞けど ここの宝は手に合はぬ』
003と歌ひながら進み行く。004船頭は日の出神に向ひ、
005船頭『漸く竜宮島の区域は離れました。006これから先は何ンな話をしても構ひませぬ。007どうぞ珍らしい話を聞かして下さい。008長い海の上、009嘸御退屈でせうから、010充分面白い話をして下さいませ』
011と、012荒つぽい船頭に似ず日の出神に向つては、013力限り丁寧な言葉を列べ立てたり。014而て一般の船客に向ひ、
015船頭『おい、016皆の御客さまよ、017是から何ンな話をしてもよいわ。018もう竜宮島の上は越えた。019面白い歌でも唄はつしやれ』
021甲『あゝヤレヤレ、022口に虫が湧くかと思つた。023これからチツと喋らして貰はうかい。024おい船頭衆、025何言つても好いかい』
026船頭『生命の洗濯ぢや、027面白い事を話さつしやい』
028甲『何うも立派な宝が浮いたね。029一つ俺も欲しかつた。030彼れ一つ有つたら、031一生涯親子兄弟が「呑めよ騒げよ一寸先は暗よ」と云つて、032ウラル彦さまのやうに暮されるのに、033一つ位くれたつて好ささうなものだに、034竜宮の乙姫といふ餓鬼や、035よつぽど欲な奴ぢやナア』
036乙『欲な奴は皆、037竜宮の乙姫見たやうな奴だと云はうがな、038欲有る奴ぢやから偉いのだ。039ヨク無い奴は即ち悪いのだよ。040よくよく思案をしてみれば、041金が仇の世の中か』
042甲『何を吐かすのだい。043貴様の云ふ事は、044チツとも分りやしないよ』
045乙『分らぬ筈だよ。046深い深い海の底に隠してあるのだもの、047分つたら貴様のやうな欲心坊が、048みな持つて帰ンで了ふ。049それで乙姫様が分らぬやうにして御座るのぢや』
050甲『益々分らぬことを言ふ奴だなあ』
051乙『そンなことは牛の爪だい、052先から分つてらあ』
053丙『そンなけなりさうな話はやめてくれ。054何だか羨ましくなつてきた。055それよりも酒を呑ンで喧嘩でもして見ようかい。056俺が呑まぬ役の狸彦とか、057狐彦とかになるさ。058貴様らは徳利彦と、059酔払彦になつて歌を唄つて酒を呑むのだ。060さうすると俺の狸彦が、061貴様の頭をポカンとやるのだ。062さうすると日の出神さまが、063貴様は狸かいとおつしやるのだ。064さうするとタヽヽヽタヽヽヽタノで御座いますと云ふのだ。065然り而して日の出神さまが、066其処に居るのは徳利彦か、067酔払彦かと御訊ね遊ばすのだ。068そこで俺がトヽヽトヽヽトツクリと分りませぬと噛ますのだ。069さうすると今度は日の出神さまが、070そこに居るのは酔払彦かと仰有るのだ。071さうすると俺がヨヽヽヽヨヽヽヽヨウ酔うてゐますと噛ますのだ。072さうすると日の出神さまが、073御感心遊ばしてな、074俺にはまた色好い男とか、075何とかいふ神名を下さるなり、076貴様にはクヽヽクヽヽ黒狸とか、077クヽヽクヽヽ黒狐とかいふ名を賜つて、078竜宮島の神さまにして下さるのだ』
079甲『やい、080貴様は色好い男なンて吐かしよつて、081俺を黒狐の黒狸と、082何だい馬鹿にするな。083それそれ日の出神さまが、084大きな目を剥いて睨んでゐらつしやるぞ。085蝸牛蟲のやうに、086すつこめすつこめ』
087と他愛なく馬鹿口を叩いて酒をチビリチビリと呑ンでゐる。088船頭は、
089船頭『オイ、090御客様、091常世の国に行くつもりだつたが、092お前達が仕様もない話をするものだから、093さつぱり風が変つて了つたよ。094これは如何しても一旦は、095筑紫の島へ押流されにや仕方が無い。096これもお前達の身から出た錆だ。097必ず船頭を悪いと思つてくれるなよ』
098丁『船頭、099吾々の前途を見届けるのは、100船頭の役ぢやないか。101飯は船中の虱のやうにセンドセンドかかつて喰ふなり、102そンなことで船商買は務まらせんどうだアハヽヽヽ』
103 霧をすかして遥向方に、104波に浮べるこンもりとした島かげ現はれたり。105船頭は、
106船頭『やあ、107たうとう筑紫の島が見えました』
108 日の出神は立ち上り、109筑紫の島に向つて、110またもや歌を唄ひたまう。
111(大正一一・一・三一 旧一・四 外山豊二録)