第二九章 山上の眺〔三二九〕
インフォメーション
著者：出口王仁三郎
巻：霊界物語 第7巻 霊主体従 午の巻
篇：第6篇 肥の国へ
よみ（新仮名遣い）：ひのくにへ
章：第29章 山上の眺
よみ（新仮名遣い）：さんじょうのながめ
通し章番号：329
口述日：1922（大正11）年02月01日（旧01月05日）
口述場所：
筆録者：井上留五郎
校正日：
校正場所：
初版発行日：1922（大正11）年5月31日
概要：
舞台：
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です（一部加筆訂正してあります）。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]：日の出神は、こんな未開の筑紫の島まで曲津神が眷属を遣わして勢力を張っている様を慨嘆した。北の方に五色の煙が立つのを見つけた。
面名芸の神は、あまり進んでいくと船が出てしまう、と心配するが、日の出神はまた次の船に乗ればよい、これも神様のご都合であろう、と諭した。そして建日向別の守る、肥の国に向かって進んでいくことにした。
三柱は人里近くで、住民たちが重い石を担がされて、普請をさせられているのを見た。
三柱は宣伝歌を歌いながら谷間を下っていく。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]：
備考：
タグ：建日向別？（武日向別）
データ凡例：
データ最終更新日：2020-05-06 19:06:34
OBC ：rm0729
愛善世界社版：185頁
八幡書店版：第2輯 100頁
修補版：
校定版：191頁
普及版：79頁
初版：
ページ備考：
001 行けど行けど限り知られぬ足曳の、002山路を辿る宣伝使、003激潭飛瀑の谷川を、004右に左に飛び越えて、005夜を日に継いで進み行く。006ここに三人の宣伝使、007さしもに高き山の尾に、008腰打かけて四方山の景色を眺めて雑談に耽りゐる。009日の出神は、
010日の出神『曲津神と云ふものは、011何処から何処まで、012よくも仕組をしたものだな。013こンな未開の筑紫の嶋の山奥まで、014眷族を遣はして、015どこ迄も天下を席巻せむとする執念深き仕組には、016吾々は実に感服の至りだ。017悪が八分に善が二分の世の中、018吾々もうかうかとしては居れない。019ヤヤ、020あの北の方に怪しい煙が立つではないか』
021祝姫『如何にも妙な煙が立ちますな、022紫の麗しい何ともいへぬ煙の色。023あそこには何でも尊い神様が居らつしやるのでせう。024斯うして高山の上から四方を見はらせば実に世界一目に見るやうな雄大な心地が致しまして、025実に壮快ですな』
026日出神『いかにも壮快だ、027人間は山へ上るに限る。028かうして展開された四方の山や海を眼下に見下す心地よさは、029丁度天教山から自転倒嶋を見下すやうだね。030ヤヽ、031あの煙を見られよ、032ますます麗しき五色の彩になつたぢやないか』
033面那芸『彼処は肥の国でせうかな』
034日出神『さうだらう、035何でもこの熊襲山の山脈を境に肥の国があつて、036そこには武日向別が守つてゐる筈だ。037しかしながら常世神王の毒牙に罹つて、038彼国の神人は又もや悪化してゐるかも判らない。039一つ行つて宣伝をやつて見やうかな』
040面那芸『それも結構ですが、041良い加減に帰りませぬと、042常世の国へ船は出て了ひはしますまいかな。043こンな嶋に置いとけぼりを喰つては堪りませぬぜ』
044日出神『何、045構ふことがあるものか、046何事も惟神だ。047船はあれ計りじやない、048また次の船が来るよ。049折角神様の御計らひで常世の国へ行く積りが、050こンな処へ押し流されたのだから、051何か深い神界の御都合があるのだらう。052我々は翌日の事は心配しなくてもよい。053今と云ふこの瞬間に善を思ひ、054善を言ひ、055善を行つたらよいのだ。056我々はその刹那々々を清く正しく勤めて行けばよい。057取越苦労も過越苦労も、058何にもならない。059一息後のこの世は、060もはや過去となつて吾々のものではない。061また一息先といへども、062それは未来だ。063人間の分際で取越苦労をしたり、064過越苦労をしたつて何にもならない。065マア何事も神様に任したがよからうよ』
066祝姫『貴神の仰せの通り、067何事も惟神に任せませう』
068面那芸『如何にもさうです、069然らばぼつぼつ参りませう』
070 三人の宣伝使は、071又もや宣伝歌を歌ひながら、072五色の雲の立昇る山を目当に疲れた足を進ませ嶮しき山を下りゆく。
073 山の尾を伝ひ、074谷に下り、075また山に上り谷に下りつ進み行く折しも、076何処ともなく人声聞え来たるにぞ、077三人は人里近しと立停まつてその声を聞き入りぬ。
078 谷間には、079数十人の以前の如き黒い顔の人間が、080何事か囁きながら谷間の奇石怪岩をいぢつて居る。
081甲『おい、082詰らぬじやないか。083毎日日日こンな重たい石を担がされて、084腹は空るなり、085着物は破れるなり、086掠り疵はするなり、087掠り疵はまだ宜いが、088鈍公の様に岩に圧へられて、089身体が紙の様になつて死ンで了つちや、090たまつたものぢやないぜ。091皆気を付けぬと、092何時石に圧へられて、093また鈍公のやうな目に逢ふかも知れないぞ。094気を付けよ』
095乙『気を付けるも良いが、096貴様らは神さまを知つてゐるかい。097神さまさへ信神すれば、098怪我なンかしやしないよ。099あの鈍公の野郎はな、100俺が三五教の宣伝使の教を聞いて、101「貴様も神様を信仰しないと、102今日はえらい怪我をするぞ、103貴様の顔には不審しい曇りが現はれて居る」と気をつけてやつたのに、104鈍公の野郎「なに、105神さまだ、106そンなものが何処にあるかい。107神さまがあるなら俺に逢はしてくれ、108一目でも神の姿を見せて呉れたら本当にする。109屁でさへも、110姿見えでも音なりとするだらう。111それに音もせねば声もなし、112姿も見えず、113そンな便りないありもせぬ神が信神できるかい。114俺のとこには、115立派な、116ものもおつしやる、117手伝うても下さる結構な嬶大明神といふ現実の神様が鎮座ましますのだよ。118それに何ぞや、119屁でもない神さまを信神せなぞと、120雲を掴むやうなことを云ひよつて、121人を馬鹿にするない、122俺の目は光つて居るぞ、123節穴じやないぞ」と劫託を吐き散らして、124鼻唄を唄ひよつて、125石運に行きよつた。126さうすると彼の大きな岩奴が、127鈍公の方にごろりと転けたと思ふが最後、128きやつと一声この世の別れ、129忌やな冥土へ死出の旅、130気の毒なりける次第なりだ。131貴様も、132ちつと神さまを信神せぬと、133また鈍公の二の舞だぞ』
134 斯く囁く折しも、135三柱の宣伝使は宣伝歌を歌ひながら谷間に向かつて下りきたる。
136（大正一一・二・一 旧一・五 井上留五郎録）
霊界物語.ネット～出口王仁三郎 大図書館～