第二八章 不思議の窟〔三二八〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第7巻 霊主体従 午の巻
篇:第5篇 亜弗利加
よみ(新仮名遣い):あふりか
章:第28章 不思議の窟
よみ(新仮名遣い):ふしぎのいわや
通し章番号:328
口述日:1922(大正11)年02月01日(旧01月05日)
口述場所:
筆録者:高木鉄男
校正日:
校正場所:
初版発行日:1922(大正11)年5月31日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:強烈になる岩窟の唸り声に、小島別はほとんど失神状態で、大地に仰向けに倒れて震えていた。
日の出神は合図すると、祝姫と面那芸が現れた。三柱の宣伝使は岩窟の前に現れると、面那芸は石を持って拍子をとり、祝姫は白扇を手に広げて舞い始めた。
祝姫が岩窟の神を鎮める歌を歌うと、大音響はぴたりと止まった。すると小島別はむっくと起き上がり、三柱の宣伝使の姿を見て驚いた様子であった。
日の出神は小島別に、さいぜんの岩窟の唸り声はどうしたことかと問いかけた。
小島別は語って曰く、一ケ月ほど前に阿弗利加に渡り、立派な岩窟の噂を聞いて参拝に来たが、常世神王を奉じる人間ばかりなので、三五教の宣伝歌を始めたところ、参拝者たちに迫害を受けた。そうしたところ、岩窟の奥から不思議の姿が現れて自分の弱点を並べ立てられてきつく油を絞られたのだ、と概略を語った。
日の出神は厳然として、ここは尊い神様の隠れ家で、建日別という仮の御神名をお持ちだが、本当の御神名は時が来れば明らかになるであろう、と述べた。
そして小島別に、この岩窟の前に純世姫命の御魂を祭って熊襲の国の人民を守るように任命した。小島別はこれより、岩窟の神の名を取って建日別と名乗り、日の出神の任を受けることになった。
日の出神は満足の色を表し、三柱の宣伝使は谷間を登って進んでいった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:2020-05-06 19:06:02
OBC :rm0728
愛善世界社版:175頁
八幡書店版:第2輯 97頁
修補版:
校定版:181頁
普及版:75頁
初版:
ページ備考:
001 巌窟内の唸り声は刻々強烈となり、002百千万の虎狼の一時に吼え猛るが如く、003四辺の山々も木草も凡て一切のものを戦慄せしめたり。004小島別は殆ど失神の状態にて、005大地に仰向けに倒れたるまま、006手足をビクビク慄はせ居たりける。007日の出神は、
010と合図をすれば、011この声に応じて何処よりともなく祝姫の宣使と面那芸の宣使は現はれきたり、012ここに三柱は小島別の倒れたる巌窟の前に立ち現はれ、013日の出神は歌を歌ひ、014面那芸の宣使は石と石とを両手に持ち拍子を取り、015祝姫は日蔭葛を襷に掛け、016常磐の松を左手に携へ右の手に白扇を広げ舞ひ始めたり。
018祝姫『天と地との火と水の 019呼吸を合せて国治立の
021心筑紫の神の島
023浦安国は豊の国
024熊襲の国は神の園 025常磐堅磐に築立てし
026天の岩戸は是なるか
028心の汚き八十神の 029曲神の企みの舌の根に
030懸らせ玉ひて天津神 031日の大神の戒めを
032受けさせ玉ひて根の国に
034何も岩戸の奥深く 035隠れ玉ひて世を忍び
036天地四方の神人の 037身魂を永遠に守ります
038その勲功は千代八千代 039常磐の巌の弥堅く
040穿ちの巌の弥深く
043岩戸を開く久方の
044天津日の出の神言を 045堅磐常磐に宣る神は
046日の出神と祝姫 047面那芸彦の三柱ぞ
048浮船伏せて雄々しくも 049踏み轟かす巌の前
050神の小島の宣伝使 051建日の別と現はれて
052天の三柱大神の
055未だ晴れやらぬ胸の闇
056心の岩戸は締め切りて
058恵も深き国治立の 059神の命の分け魂
060建日の別の大神は 061天の岩戸を開かむと
063神の心を不知火の
064小島の別の宣伝使 065千々の神言蒙りて
066心に懸る千万の 067雲霧払ひ晴れ渡る
068御空に清く茜さす 069日の大神の御恵みに
070常世の暗も晴れぬべし 071赦させ玉へ建日別
072熊襲の国の守り神 073人の心も清々と
074誠の道に服従ひて 075心安らけく純世姫の
076神の命の御魂をば
078千木高知りて斎かひつ 079天津祝詞の太祝詞
080宣るも尊き巌の前 081日の出神の言霊を
082建日の別も諾なひて 083御心和め玉へかし』
084と涼しき声を張上げ調子よく歌ひながら、085汗を流し帰神して舞ひ狂ひける。086面那芸神は石と石とを打ち合せて面白く拍子をとりしが、087さしも猛烈なりし巌窟の大音響は夢のごとくに止まりにける。088小島別はムツクと立上がり細き目を開きながら三柱の神を眺めて驚き、089夢か現か幻か、090合点の行かぬこの場の光景と、091自ら頬を抓めり指を噛み、
092小島別『アヽ矢張り夢では無かつたかナア』
094日の出神『オー貴下は小島別の宣伝使、095最前よりの貴下の様子、096如何にも怪しく何事ならむと、097木蔭に佇み聞きをれば此巌窟の唸り声、098如何なせしやその顛末を詳細に語られよ』
099と尋ねられ、100小島別は三柱の宣伝使に黙礼しながら、
101小島別『イヤモウ、102大変でしたよ。103私は神界に仕へてより、104何一つ功名もいたさず、105智慧暗き身の悲しさ、106大慈大悲の大神の御心を誤解し普く天下を宣伝して、107やうやうこの亜弗利加の嶋に参りましたのは一月以前のことであります。108国人の話に依れば、109此処には立派な巌窟ありて、110時々唸りを立てるといふ事。111私も一つ修業の為と思ひ、112嶮しき山坂を越へ谷を渡りて、113漸くこの巌窟に辿り着きし間もなく、114色々の国人がこれこの通り参拝いたして、115頻りに何事か祈つてをる。116耳を澄して聞けば、117常世神王の教を奉ずる人間計り、118これでは成らぬと背水の陣を張りて、119命を的に三五教の宣伝歌を歌ひ始めました。120数多の人々は私の宣伝歌を非常に嫌つて四方八方より迫害せむとする。121なに、122吾々は天地の教を説く神の使の宣伝使だ。123たとへ火の中水の底も、124潜りて助けるは吾々の天職と、125有らゆる勇気を出して漸く彼らを改心させ、126ホツト一息吐く間もなく此巌窟の奥の方より異様の姿朦朧と現はれ、127「アハヽヽハー、128オホヽヽホー」と嘲弄はれ、129あらむかぎりの吾々の弱点を並べ立てられ、130イヤハヤモウ埒もなくきつく油を搾られました。131吾々は未だ身魂が磨けて居りませぬ。132いよいよ一つ決心をして、133今までの取違を改めねばなりませぬ』
134と大略を物語りける。135日の出神は厳然として宣るやう、
136日の出神『ここは尊き神様の御隠家、137建日別とは仮りの御神名、138やがて御本名を名乗り玉ふ時も来たるべし。139貴下は此処へ永らく鎮まりて、140この巌窟の前に宮を建て、141純世姫命の御魂を祭り、142熊襲の国の人民を守つて下さい、143吾々はこの山を越えて肥の国に行かねばなりませぬから』
144 これを聞くより小島別は、
145小島別『如何なる神の御引合せか、146思ひ掛なき尊き日の出神様に御目に掛り、147こンな嬉しきことはありませぬ。148仰せに従ひ大神様の岩戸の神の御名を戴き、149これより建日別と改め永遠に守護をいたします。150どうぞ御安心下さいませ』
151と答へける。152日の出神は満足の色を現はし、153この場を後に三柱の宣伝使を伴ひ、154又もや宣伝歌を歌ひながら、155この谷間をドンドン登り行く。