霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第八章 (かはづ)(くち)〔六三六〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第18巻 如意宝珠 巳の巻 篇:第3篇 反間苦肉 よみ:はんかんくにく
章:第8章 第18巻 よみ:かわずのくち 通し章番号:636
口述日:1922(大正11)年04月26日(旧03月30日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年2月10日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
綾彦とは、行方不明になっていた豊彦・豊姫の長男であった。妻のお民と共にようやく弥仙山の家に帰り着いたが、豊彦と豊姫は夢のお告げで、綾彦夫婦に豊国姫命参拝をさせよ、と神命を受けたので、さっそく真名井に参詣させたところであった。
魔窟ヶ原に帰ってきた浅公は、黒姫に報告をし、さも自分たちが神力でバラモン教徒から綾彦・お民を助け出したかのように語った。
黒姫は、綾彦に自分の身の回りで御用をするように申し付け、お民はウラナイ教の支所・高城山で、松姫の用を足すようにと命じた。
浅公以下は、黒姫から、綾彦夫婦を連れて来た手柄の褒美として、酒を飲むことを許可され、宴会を開いている。一同は酔いに乗じて、今日の策略を大声で話していた。
綾彦とお民は、廊下からふと酒酔いの笑い声を耳にして、聞き耳を立てると、浅公らの企みをすべて聞いてしまった。二人は顔を見合わせ、ひそひそと何事かを囁きながら一睡もせずに夜を明かした。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm1808
愛善世界社版:126頁 八幡書店版:第3輯 684頁 修補版: 校定版:130頁 普及版:57頁 初版: ページ備考:
001黄金(こがね)(みね)(きこ)えたる
002弥仙(みせん)(やま)麓辺(ふもとべ)
003(この)()(しの)豊彦(とよひこ)
004(むすめ)(たま)(いぶ)かしや
005去年(こぞ)(あき)よりブクブクと
006(いき)(くる)しく()(つき)
007むかつき()した布袋腹(ほていばら)
008豊彦(とよひこ)夫婦(ふうふ)()(よる)
009(こころ)(いた)()(はな)
010(かみ)(ねがひ)掛巻(かけま)くも
011(かしこ)(かみ)(ゆめ)()
012真名井ケ原(まなゐがはら)()れませる
013豊国姫(とよくにひめ)大神(おほかみ)
014御許(みもと)綾彦(あやひこ)(たみ)をば
015一日(ひとひ)(はや)(まゐ)らせよ
016天地(あめつち)かぬる大神(おほかみ)
017(うづ)御霊(みたま)御心(みこころ)
018(さと)(たま)ふと()るうちに
019(たちま)(ゆめ)(やぶ)られて
020雨戸(あまど)(たた)(あめ)(おと)
021(あき)()()(こがらし)
022()かれて()つる(さわ)がしさ
023()(やうや)くに()けぬれば
024(あに)綾彦(あやひこ)(つま)(たみ)
025二人(ふたり)(めい)じて逸早(いちはや)
026(とき)(うつ)さず豊国姫(とよくにひめ)
027(うづ)(みこと)御前(おんまへ)
028参向(さんかう)せよと(めい)ずれば
029正直(しやうぢき)一途(いちづ)孝行者(かうかうもの)
030(おや)言葉(ことば)大地(だいち)より
031(おも)しと(あふ)夫婦(ふうふ)()
032草蛙(わらぢ)脚絆(きやはん)扮装(いでたち)
033若草山(わかくさやま)()()えて
034(そら)真倉(まくら)谷径(たにみち)
035(すす)(すす)みて一本木(いつぽんぎ)
036田辺(たなべ)丸八江(まるやえ)由良(ゆら)(かは)
037(いき)切戸(きれど)文珠堂(もんじゆだう)
038(あま)橋立(はしだて)(みぎ)()
039(おや)言葉(ことば)一言(ひとこと)
040小言(こごと)(たがひ)岩淵(いはふち)
041広野(ひろの)()ぎて五箇(ごか)(しやう)
042比治山峠(ひぢやまたうげ)(みね)(つづ)
043比沼(ひぬ)真名井(まなゐ)神霊地(しんれいち)
044(みづ)宝座(ほうざ)参拝(さんぱい)
045(くさ)(まくら)(かず)(かさ)
046普甲峠(ふかふたふげ)(ふもと)まで
047すたすた(かへ)二人(ふたり)()
048(たちま)()るる(あき)(そら)
049黒雲(くろくも)(ひく)(ふさ)がりて
050(こころ)(やみ)怖々(おぢおぢ)
051(かへ)(きた)れる(みち)(うへ)
052(おも)はず(つまづ)(ひと)(かげ)
053(たちま)五人(ごにん)荒男(あらをとこ)
054前後左右(ぜんごさいう)()(あが)
055(ころ)して()れむと呶鳴(どな)りつつ
056()つやら()るやら(なぐ)るなら
057綾彦(あやひこ)(たみ)(こゑ)(かぎ)
058(たす)けて()れえと(さけ)(こゑ)
059()くより(たちま)(くら)がりに
060(あら)はれ()でた大男(おほをとこ)
061ウラナイ(けう)言霊(ことたま)
062悪者(わるもの)(ども)()()らし
063綾彦(あやひこ)(たみ)(ともな)ひて
064魔窟ケ原(まくつがはら)岩窟(いはやど)
065意気(いき)揚々(やうやう)(かへ)()
066(みち)出会(であ)うた五人連(ごにんづ)
067手柄話(てがらばなし)(はな)()かし
068土産(みやげ)沢山(たつぷり)黒姫(くろひめ)
069隠家(かくれが)()して(かへ)()く。
070 (あさ)071(いく)両人(りやうにん)(れい)岩蓋(いはぶた)(めく)つて一行(いつかう)十人(じふにん)(とも)(すべ)()る。
072浅公(あさこう)高山彦(たかやまひこ)(さま)073黒姫(くろひめ)(さま)074只今(ただいま)(かへ)りました』
075黒姫(くろひめ)『ヤア、076(まへ)浅公(あさこう)か、077ヤ、078幾公(いくこう)079梅公(うめこう)080えらう(おそ)いぢやないか、081(なに)をして()つたのだい、082何時(いつ)までも()()れてから其処(そこ)らをブラブラ(ある)いて()ると、083大江山(おほえやま)(おに)眷族(けんぞく)間違(まちが)へられるから、084()()れたら(すぐ)(かへ)つて()るのだよ、085今日(けふ)(また)えらい(おそ)(こと)ぢやないか、086ヤ、087今日(けふ)見馴(みなれ)(かた)がお二人(ふたり)088これや(また)如何(どう)ぢや、089えらう(あたま)(かみ)(みだ)れて()る、090(なに)かこれには様子(やうす)でもあるのかな』
091幾公(いくこう)『これに()いて色々(いろいろ)苦心話(くしんばなし)御座(ござ)います、092それが(ため)今日(けふ)吾々(われわれ)一同(いちどう)(もの)(おそ)くなりました、093三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)数多(あまた)人民(じんみん)(まよ)はすに()つて、094吾々(われわれ)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)()つけ()し、095天地(てんち)道理(だうり)()()かせ帰順(きじゆん)させむものと普甲峠(ふかふたふげ)(くだ)つて()ました。096(くら)さは(くら)し、097(かぜ)はピユーピユーと()いて()る、098(なみ)()(さわ)海原(うなばら)太鼓(たいこ)(やう)(おと)をたててイヤもう(すさま)じい光景(くわうけい)099(たちま)(さわ)がしい物音(ものおと)100何事(なにごと)ならむと吾々(われわれ)一同(いちどう)(みみ)をすまして()()れば「人殺(ひとごろ)人殺(ひとごろ)し、101(たす)けて()れえ」との(いや)らしい(こゑ)(きこ)えて()る、102ア、103これや大変(たいへん)だ、104(ひと)(たす)けるのがウラナイ(けう)(かみ)(をしへ)105(わが)()如何(どう)なつても(かま)はぬ、106仮令(たとへ)大江山(おほえやま)(おに)餌食(ゑじき)にならうとも(かみ)(つか)ふる吾々(われわれ)107(この)悲鳴(ひめい)()いて如何(どう)して()てて(かへ)れようか、108(ひと)(たす)くるは宣伝使(せんでんし)(やく)と、109生命(いのち)(まと)(こゑ)する(はう)(うかが)()()れば、110(あん)(たが)はぬ百人(ひやくにん)(ちか)くの鬼雲彦(おにくもひこ)眷族(けんぞく)者共(ものども)111覆面(ふくめん)頭巾(づきん)扮装(いでたち)112(やり)113薙刀(なぎなた)棍棒(こんぼう)114刺股(さすまた)(こほり)(やいば)115(やみ)(ひらめ)かし十重(とへ)二十重(はたへ)()(かこ)み、116(なか)二人(ふたり)男女(だんぢよ)(とら)へて四五人(しごにん)(をとこ)117()()(なぐ)るの乱暴狼藉(らんばうろうぜき)118大江山(おほえやま)(とりで)()(かへ)りバラモン(けう)(かみ)(いけにへ)にせむとの(たく)み、119(さと)つた吾々(われわれ)()(たて)(たま)らず、120一生懸命(いつしやうけんめい)熱湯(ねつたう)(あせ)(しぼ)り、121ウラナイ(けう)大神様(おほかみさま)122何卒々々(なにとぞなにとぞ)この旅人(たびびと)生命(いのち)(すく)はせ(たま)へ、123吾々(われわれ)生命(いのち)はたとへ()くなつても、124幸魂(さちみたま)極端(きよくたん)発揮(はつき)暗祈黙祷(あんきもくたう)すれば、125アーラ不思議(ふしぎ)(わが)身体(しんたい)(たちま)(くだ)(たま)天津神(あまつかみ)国津神(くにつかみ)八百万(やほよろづ)(かみ)(たち)126()出神(でのかみ)先頭(せんとう)竜宮(りうぐう)乙姫(おとひめ)127吾々(われわれ)三人(さんにん)肉体(にくたい)(かか)らせ(たま)ひ、128天地(てんち)(とどろ)言霊(ことたま)(こゑ)129(ひと)(ふた)()()(みな)まで()はずに、130さしも強力無双(がうりきむさう)鬼雲彦(おにくもひこ)手下(てした)(ども)131朝日(あさひ)(つゆ)()ゆるが(ごと)く、132(たましひ)(うば)はれ(ほね)(くだ)けて生命(いのち)()しさに(なみだ)(とも)(たの)()る。133(おも)へば()つくき(やつ)なれど、134彼等(かれら)(いへど)(もと)(かみ)分霊(わけみたま)135(ぜん)(たす)(あく)(ゆる)すは大神(おほかみ)慈悲(じひ)136(こころ)(うち)見直(みなほ)()(なほ)せば、137(ひやく)(あま)豪傑(がうけつ)どもは、138チウの(こゑ)()()てず足音(あしおと)(しの)ばせ(なが)ら、139(かぜ)(ごと)()(ごと)水泡(みなわ)()えてやみの(なか)140そこで吾々(われわれ)八人(はちにん)(かね)ての計略(けいりやく)141オツト、142ドツコイ……計略(けいりやく)(もつ)旅人(たびびと)(くる)しめむと(いた)(おに)(ども)に、143言霊(ことたま)鉄鎚(てつつゐ)(くは)今後(こんご)(いまし)()二人(ふたり)のこれなる夫婦(ふうふ)(すく)花々(はなばな)しく()(かへ)つて(さふらふ)
144黒姫(くろひめ)『ヤア、145それは御苦労(ごくらう)であつた、146人間(にんげん)()ふものは目前(まさか)(とき)になれば神様(かみさま)がお使(つか)(くだ)さるもの「(くさ)(なは)にも()りえ」と()(こと)がある、147(わし)もお(まへ)(やう)穀潰(ごくつぶ)しを沢山(たくさん)(やしな)つて()いてつまらぬ(もの)ぢや、148()かすにも()かされず、149大根(だいこん)()ねち()いた(やう)なものぢやと(おも)つて()つたが、150目前(まさか)(とき)にそれ(だけ)神力(しんりき)()れば万更(まんざら)()てたものぢや()い。151ヤ、152御苦労(ごくらう)だつた、153サアサア一服(いつぷく)して(くだ)され、154(しか)(なが)(うし)155(とら)156(たつ)(ほか)二人(ふたり)(をとこ)今迄(いままで)(なに)をして()つたのだ、157(あさ)158(いく)(やう)にお(まへ)もチツと活動(くわつどう)をせなくては神様(かみさま)()むまいぞや』
159寅公(とらこう)吾々(われわれ)御神前(ごしんぜん)(おい)て……(いや)無形(むけい)神殿(しんでん)(むか)つて祈願(きぐわん)する(をり)しも、160(たちま)吾々(われわれ)天眼通(てんがんつう)(えい)じた普甲峠(ふかふたうげ)突発(とつぱつ)事件(じけん)161やれ可憐相(かはいさう)二人(ふたり)旅人(たびびと)162神力(しんりき)(もつ)(たす)けてやらむと(こころ)千々(ちぢ)焦慮(あせ)れども、163(なに)()つても遠隔(ゑんかく)()164アヽ仕方(しかた)()い、165遠隔(ゑんかく)神霊(しんれい)注射法(ちうしやはふ)実行(じつかう)せむかと(おも)(をり)166(また)もや吾々(われわれ)天眼(てんがん)(えい)じたのは(あさ)167(いく)168(うめ)三人(さんにん)169これや()霊代(みたましろ)だと五人(ごにん)一度(いちど)三人(さんにん)身体(からだ)神懸(かむがか)りし、170(むら)がる魔軍(まぐん)(むか)つて、171言霊(ことたま)神力(しんりき)(まを)すに(およ)ばず、172あらゆる霊力(れいりよく)(つく)して(たたか)へば、173(てき)蜘蛛(くも)()()らすが(ごと)く、174()()りパツと(はな)(あらし)(あた)りし(ごと)く、175(かすみ)となつて()()せたりツ』
176浅公(あさこう)『アハヽヽヽ』
177黒姫(くろひめ)(なに)()もあれ、178藪医者(やぶいしや)手柄(てがら)をした(やう)なものだ、179(へら)(おに)(くび)とつたも同然(どうぜん)180今日(けふ)(はな)れの()御神酒(おみき)でも沢山(たくさん)(いただ)いてグツスリと()たが()い、181コレコレ(たび)(かた)182神様(かみさま)(たふと)(こと)(わか)りましたかな』
183(あや)184(たみ)『ハイ、185(なん)とも有難(ありがた)うて(まを)(やう)御座(ござ)いませぬ、186(ただ)もう(この)(とほ)り……』
187夫婦(ふうふ)両手(りやうて)(あは)黒姫(くろひめ)(かほ)()(をが)み、188(あつ)(なみだ)をボロボロと(こぼ)すのみである。
189黒姫(くろひめ)『お(まへ)(ほん)幸福(しあはせ)御夫婦(ごふうふ)ぢや、190結構(けつこう)御神徳(おかげ)(いただ)きなさつた、191袖振(そでふ)()ふも多生(たしやう)(えん)192(つまづ)(いし)(えん)(はし)()うて、193コンナ結構(けつこう)神様(かみさま)(をしへ)取次(とりつぎ)(たす)けて(もら)うとはよくよく(ふか)(むかし)からの果報(くわはう)(あら)はれたのぢやぞえ、194(わし)(なん)ぢやか(はじ)めて()うた(ひと)(やう)()がせぬ、195(これ)からは(すべ)ての娑婆心(しやばごころ)()てて神界(しんかい)(ため)千騎一騎(せんきいつき)活動(くわつどう)をしなされや、196()いては夫婦(ふうふ)ありては御用(ごよう)出来(でき)(かみ)のお(みち)ぢやから、197(まへ)明日(あす)から夫婦(ふうふ)(わか)れて御用(ごよう)をするのだ、198()ンで(わか)るるのは(つら)いけれど、199(この)()()きて()れば矢張(やつぱ)(おな)じウラナイの(みち)御用(ごよう)するのだから()機会(きくわい)(いく)らもある、200(まへ)(なん)()()だ』
201『ハイ、202綾彦(あやひこ)(まを)します。203(わらは)はお(たみ)(まを)します』
204黒姫(くろひめ)『アヽさうか、205綾彦(あやひこ)(わし)(そば)御用(ごよう)をするなり、206(たみ)矢張(やつぱ)りウラナイ(けう)支所(でやしろ)高城山(たかしろやま)()(ところ)207そこには意地(いぢ)くねの………(わる)くない松姫(まつひめ)(ひか)へて()る、208(たみ)松姫(まつひめ)(そば)()つて御用(ごよう)をなさるのだ、209御承知(ごしようち)がゆけば明日(あす)から、210幾公(いくこう)(おく)らしてあげよう』
211(たみ)『ハイ、212如何(いか)なる(こと)でも神様(かみさま)御為(おんた)めなれば(いや)とは(まを)しませぬ、213(しか)何卒(どうぞ)三四日(さんよつか)(ばか)一緒(いつしよ)()いて(くだ)さいますまいか、214とつくり夫婦(ふうふ)(もの)相談(さうだん)(いた)()御座(ござ)いますから……』
215黒姫(くろひめ)『アヽ(その)相談(さうだん)がいかぬのだ、216人間心(にんげんごころ)取越苦労(とりこしくらう)をしたつて(なに)になるものか、217何事(なにごと)神様(かみさま)絶対(ぜつたい)にお(まか)せするのだ、218夫婦(ふうふ)(わか)るるのが(つら)いかな、219それはお(わか)()(うへ)だから無理(むり)()い、220年寄(としよ)りの(わし)でさへも夫婦(ふうふ)()ければならぬ(もの)ぢやと(おも)うて()(くらゐ)ぢや、221(しか)年寄(としよ)りは(また)例外(れいぐわい)ぢや、222(すゑ)(みじか)いから……、223(わか)(もの)何程(なんぼ)でも()機会(きくわい)が、224(なが)月日(つきひ)には()るものぢや。225あの木貂(きてん)()(やつ)は、226夫婦仲(ふうふなか)()いものぢやが(けつ)して夫婦(めをと)一緒(いつしよ)()まひはせぬ、227(をす)(はう)(ひがし)(やま)()(うろ)()みて()れば、228(めす)(はう)屹度(きつと)(たに)(へだ)てて、229西(にし)(やま)()(うろ)棲居(すまゐ)をし、230西(にし)からと(ひがし)からと(たがひ)見張(みはり)をして()るさうぢや、231()(めす)()みて()大木(たいぼく)(ふもと)猟師(れふし)でも()()たら、232灯台(とうだい)元暗(もとくら)がり、233(ちか)くに()(めす)()がつかいでも(とほ)くから()()(をす)がチヤンと(これ)(さと)つて、234電波(でんぱ)(おく)つて(めす)()らせ、235(をす)危険(きけん)(せま)つた(とき)(また)(とほ)くから()()(めす)電波(でんぱ)(もつ)(をす)()らせると()(こと)だ。236その(とほ)りお(まへ)両方(りやうはう)()かれて(たがひ)(つま)(をつと)(おも)ひ、237(をつと)(つま)(おも)ひ、238偶々(たまたま)()うた(とき)のその(うれ)しさは(なん)とも()へぬ(あぢ)()るぞえ、239(これ)だけ(わか)(もの)ばかり沢山(たくさん)()るのだからお(まへ)(やう)若夫婦(わかめをと)一緒(いつしよ)において()くと、240いろいろと(わか)(もの)修羅(しゆら)()やしてごてつき、241(まへ)(また)(つら)いであらうから、242明日(あす)(すぐ)にお(たみ)高城山(たかしろやま)()つて御用(ごよう)をして(くだ)さい』
243何事(なにごと)神様(かみさま)にお(まか)せした以上(いじやう)は、244何卒(どうぞ)貴女(あなた)思召(おぼしめし)(とほ)りお使(つか)(くだ)さいませ』
245黒姫(くろひめ)『ア、246さうかさうか、247結構(けつこう)結構(けつこう)248本当(ほんたう)聞訳(ききわけ)()(ひと)ぢや、249サアサ今晩(こんばん)(おく)()つて(やす)みなされ、250(わし)大変(たいへん)草臥(くたび)れたから今晩(こんばん)(これ)(やす)みませう、251(しか)しこれこれお(わか)いの、252神様(かみさま)()(あは)せお(れい)(まを)して(やす)みなされや、253(かなら)(かなら)神様(かみさま)(まつ)つてある(はう)(しり)()けたり(あし)()けてはなりませぬぞえ』
254夫婦(ふうふ)『ハイ有難(ありがた)御座(ござ)います、255(しか)らば(やす)まして(いただ)きます』
256(おく)目蒐(めが)けて両人(りやうにん)徐々(しづしづ)(すす)()く。
257黒姫(くろひめ)『アーア、258()(なか)(おも)(やう)にいかぬものだなア、259(いま)()()うて若夫婦(わかふうふ)生木(なまき)()(やう)命令(めいれい)をしたが、260(おも)へば(おも)へば可憐相(かはいさう)(もの)だ。261(わし)とても(その)(とほ)り、262高山彦(たかやまひこ)さまが二三日(にさんにち)他所(よそ)()つてお(かほ)()ええでも(さび)しくて仕方(しかた)()いのに、263鴛鴦(をしどり)(やう)(なか)()若夫婦(わかふうふ)(わか)れて御用(ごよう)するのは、264(わし)(くら)ぶれば幾層倍(いくそうばい)(つら)いだらう。265ウラナイ(けう)双壁(そうへき)といはれた竜宮(りうぐう)乙姫(おとひめ)(この)生宮(いきみや)でさへも、266高山彦(たかやまひこ)さまを(をつと)()つたのが露見(あらは)れてより、267夏彦(なつひこ)常彦(つねひこ)(すぐ)()()し、268それから(のち)毎日(まいにち)日日(ひにち)(なん)とか、269かとか()つて、270岡餅(をかもち)()いて法界悋気(はふかいりんき)続出(ぞくしゆつ)271コンナ(こと)では折角(せつかく)(きづ)()げたウラナイ(けう)崩解(ほうかい)するかも()れない、272(なに)ほど一旦(いつたん)(つな)かけたらホーカイはやらぬと、273(いろ)(くろ)尉殿(じやうどの)(すず)()(やう)矢釜(やかま)しく()つても駄目(だめ)だ、274アヽいやいやいやオンハと、275三番叟(さんばさう)もどきに()げて()(やつ)(くびす)(せつ)するのだから、276法界悋気(ほふかいりんき)(ふか)連中(れんちう)(なか)へ、277(なに)ほど可憐相(かはいさう)でも若夫婦(わかふうふ)(まじ)へて()(こと)出来(でき)ぬ。278アーア若夫婦(わかめをと)279(かなら)(かなら)黒姫(くろひめ)邪慳(じやけん)(やつ)ぢやと(おも)うて()れな、280口先(くちさき)では(きつ)()うては()るものの、281(なみだ)もあれば()もある、282アヽ可憐相(かはいさう)だ、283青春(せいしゆん)()()ゆる二人(ふたり)(こころ)284(さつ)しのない(やう)黒姫(くろひめ)ぢや御座(ござ)いませぬ』
285独語(ひとりご)ちつつ同情(どうじやう)(なみだ)()れて()る。
286 かかる(ところ)高山彦(たかやまひこ)(あら)はれ(きた)り、
287『ヤア黒姫(くろひめ)か、288()大分(だいぶん)()けた(やう)だ、289もうお(やす)みになつたら如何(どう)です』
290『ハイ、291只今(ただいま)(やす)みます』
292『お(まへ)(ひと)相談(さうだん)がある、293()いて()れまいか』
294(これ)(また)(あらた)まつたお言葉(ことば)295相談(さうだん)とは何事(なにごと)御座(ござ)いますか』
296(ほか)でも()い、297(わし)(ひと)(おほい)()する(ところ)があるのだ、298(これ)からフサの(くに)一先(ひとま)()(かへ)り、299(おほい)高姫(たかひめ)さまの後援(こうゑん)をして大々的(だいだいてき)活動(くわつどう)仕様(しやう)(おも)ふ、300(まへ)此処(ここ)()つて自転倒島(おのころじま)征服(せいふく)して(くだ)さい、301明日(あす)からすぐ出立(しゆつたつ)しようと(おも)ふから…』
302『エ、303(なん)(おつ)しやいます、304夫婦(ふうふ)(くるま)両輪(りやうりん)305唇歯輔車(しんしほしや)関係(くわんけい)(たも)たねばなりませぬ、306(たと)へば(をとこ)(ひだり)手足(てあし)307(をんな)(みぎ)手足(てあし)同様(どうやう)308片手(かたて)片足(かたあし)では大切(たいせつ)神業(しんげふ)奉仕(ほうし)する(こと)出来(でき)ますまい、309ちつとお(かんが)(なほ)しを(ねが)ひます』
310木貂(きてん)311一名(いちめい)雷獣(らいじう)()(けだもの)随分(ずゐぶん)(なか)()いものだが、312夫婦(ふうふ)(けつ)して一緒(いつしよ)()ないものだ』
313『エヽ()いて(くだ)され、314(わたし)模像(もざう)ばつかりやるのですな、315ソンナ玩弄物(おもちや)九寸五分(くすんごぶ)()きつけた(やう)同情(どうじやう)ある恐喝(きようかつ)手段(しゆだん)にのる(やう)黒姫(くろひめ)とは(ちが)ひますわいな、316ヘン……いい加減(かげん)揶揄(からか)つて()きなさいよ、317ホヽヽヽ』
318『ヤア真剣(しんけん)だ、319()つてお(ひま)(ねが)()い』
320『まつたくですか、321ハヽア、322(よろ)しい、323御勝手(ごかつて)になさいませ、324(ほか)増花(ますはな)出来(でき)たと()えます、325もの()(はな)(この)黒姫(くろひめ)一人(ひとり)だと(わたし)(こころ)自惚(うぬぼれ)して()つたのは(わたし)不覚(ふかく)326(あざみ)(はな)接吻(キツス)をして()なさいよ』
327『そう(おこ)つて(もら)つては(こま)るぢやないか、328(ふた)()には(めう)(ところ)論鋒(ろんぽう)()けるのだな、329(ひる)演壇(えんだん)()つて滔々(たうたう)苦集滅道(くしふめつだう)()くお(まへ)態度(たいど)(いま)態度(たいど)とは(まる)別人(べつじん)(やう)な、330(こゑ)(いろ)まで(かは)つて()るぢやないか』
331『ヘンきまつた(こと)ですよ』
332(かた)高山彦(たかやまひこ)(はう)へニユツと()()し、333(くび)(ななめ)にし()(ほそ)うし、
334野暮(やぼ)(こと)(おつ)しやるな、335こゑ思案(しあん)(ほか)ぢやないか、336ホヽヽヽ』
337鰐口(わにぐち)無理(むり)おちよぼ(ぐち)仕様(しやう)とつとめる。338巾着(きんちやく)()()めた(やう)(たて)(しわ)一所(ひとところ)集中(しふちう)し、339牛蒡(ごぼう)()(くち)(やう)(くち)(あた)りが()えて()る。
340 高山彦(たかやまひこ)は、
341『アヽもう(やす)まうか』
342黒姫(くろひめ)背中(せなか)をポンと(たた)く。
343勝手(かつて)一人(ひとり)()やしやンせいな』
344黒姫(くろひめ)は、345故意(わざ)とピーンとした(かほ)()せ、346向返(むきかへ)つて背中(せなか)()ける。
347『ハヽヽヽ、348非常(ひじやう)逆鱗(げきりん)だ、349どれどれ今晩(こんばん)(やま)(かみ)さまに巨弾(きよだん)()たれて、350(ただ)一人(ひとり)赤十字(せきじふじ)病院(びやうゐん)収容(しうよう)されるのかな、351アハヽヽヽ』
352寝室(ねま)(かへ)()く。353黒姫(くろひめ)水鏡(みづかがみ)灯火(あかり)(てら)(かほ)修繕(しうぜん)をなし、354()ばたきし(なが)四辺(あたり)()まはし()(ほそ)うし、
355『どれ(をつと)負傷(ふしやう)を、356女房(にようばう)としてお見舞(みまひ)(まを)さねばなるまい』
357(また)もや一室(ひとま)にいそいそ(はし)()く。
358
359 黒姫(くろひめ)許可(ゆるし)()浅公(あさこう)360幾公(いくこう)361梅公(うめこう)362その()十数名(じふすうめい)老壮連(らうさうれん)御神酒(おみき)頂戴(ちやうだい)()(もと)に、363()うた(とき)(かさ)()げ」(しき)にガブリガブリと()いでは()()いでは()み、364(ゑい)(まは)るにつれ徳利(とくり)(くち)から「()()(だけ)()み」を(はじ)()しける。
365(かふ)『オイ、366(うめ)大将(たいしやう)367随分(ずゐぶん)よく()むぢやないか』
368梅公(うめこう)『きまつた(こと)だ、369大蛇(をろち)子孫(しそん)だもの、370()(こと)にかけたら天下一品(てんかいつぴん)だ、371親譲(おやゆづ)りの(やま)()()()(いへ)まで()みて、372(さけ)(さかな)(おや)(すね)(かじ)り、373此奴(こいつ)()()へぬ(やつ)ぢや、374七生(しちしやう)(しよう))までの(かん)(かん)(だう)ぢやと()つて()()されたと()阿哥兄(にい)さまだ。375親爺(おやぢ)七升(しちしよう)(かん)をせいと()つた(とき)流石(さすが)(おれ)一寸(ちよつと)(よわ)つたね、376(あさ)九一合(くいちがふ)377(ひる)九一合(くいちがふ)378(ばん)九一合(くいちがふ)379夜中(よなか)九一合(くいちがふ)380夜明(よあ)(まへ)九一合(くいちがふ)381マア一寸(ちよつと)ゴシヨゴシヨ(五升(ごしよう))とやつた(ところ)で、382それ以上(いじやう)(はら)(むし)が「梅公(うめこう)383あまりぢや、384もう(この)(うへ)六升(ろくしよう)だ、385七升(しちしよう)七生(しちしやう)(まで)(うら)(ます)」と副守(ふくしゆ)(やつ)でさへも弱音(よわね)()いたのだからな』
386(かふ)随分(ずゐぶん)酒豪(しゆがう)だな』
387梅公(うめこう)酒豪(しゆがう)守護神(しゆごじん)だ、388(しか)(これ)だけ、389(さけ)()みの梅公(うめこう)(この)(ごろ)はずつと改心(かいしん)して、390滅多(めつた)()みた(こと)はあるまいがな、391(えら)(もの)だらう』
392浅公(あさこう)『アハヽヽヽ、393()()いと()つたつて()ます(もの)がないものだから()(どく)なものだ』
394梅公(うめこう)(さけ)()本性(ほんしやう)(たが)はずだ、395何程(なにほど)()つた(ところ)(あし)ひよろつくの、396(あたま)(いた)いの、397眩暈(めまい)()るの、398八百屋店(やほやみせ)開業(かいげふ)するのと()(やう)不始末(ふしまつ)(こと)は、399ちつとも、400()いのだからな、401それで今日(けふ)(やう)妙案(めうあん)奇策(きさく)(ひね)()すのだ、402今晩(こんばん)()うして貴様(きさま)(たち)(うま)(さけ)舌鼓(したつづみ)()(やう)にしてやつたのは(おれ)のお(かげ)ぢやないか、403随分(ずゐぶん)うまくいつたぢやないか』
404寅公(とらこう)『あの(くら)がりに()まぬ(さけ)()うた()になつて、405(つめた)(つち)(うへ)(よこた)はり、406(むか)うから一歩(ひとあし)々々(ひとあし)(ちか)づいて()足音(あしおと)407何処(どこ)()まれるか(わか)つたものぢやない、408(その)(とき)(こころ)のせつなさ、409(こし)をトウトウ土足(どそく)()まれ、410睾丸(きんたま)()まれた(とき)(いた)いの(いた)くないのつて一生懸命(いつしやうけんめい)(はな)(わざ)だ、411随分(ずゐぶん)(おれ)(ほね)()つた、412(なに)ほど梅公(うめこう)(かしこ)うても俺達(おれたち)実行(じつかう)せなくては今夜(こんや)芝居(しばゐ)()てやしない、413あまり威張(ゐば)つて(もら)うまいかい』
414辰公(たつこう)(おれ)だつて(へそ)(うへ)をギユツと()まれた(とき)(くる)しさ、415早速(さつそく)ベランメー口調(くてう)業託(ごうたく)()はうと(おも)つても満足(まんぞく)(こゑ)()やがらぬのだ、416(みな)(やつ)417()()かぬ(もの)だから(くら)がり(まぎ)れに旅人(たびびと)だと(おも)つて(おれ)(あたま)()はず背中(せなか)()はず、418(いく)(たた)きよつたか(わか)つたものぢやない、419コオこれを()い、420背中(せなか)(あを)くなつて()るワ』
421梅公(うめこう)『アハヽヽヽ、422(なに)ぬかしよるのだ、423(かはづ)ぢやあるまいし背中(せなか)(あを)くなつたのが如何(どう)して(わか)るかい、424兎角(とかく)芝居(しばゐ)幕開(まくあ)きはしたものの(うま)(あし)(しし)になる大根役者(だいこんやくしや)が、425うまくやつて()れるかと(おも)つて随分(ずゐぶん)()()みたよ、426マアマア木戸銭(きどせん)()らずの奉納(ほうなふ)芝居(しばゐ)だから、427あれ(くらゐ)観客(くわんきやく)(なん)とも()はぬが、428下足賃(げそくちん)でも()つて()よ、429それこそ一人(ひとり)這入(はい)(もの)はありやせないぞ、430(しか)寅公(とらこう)431辰公(たつこう)432鳶公(とびこう)433貴様等(きさまら)五人(ごにん)如何(どう)しやがつたかと(おも)つて心配(しんぱい)して()つたら、434何時(いつ)()にか(さき)()きよつて天眼通(てんがんつう)だの、435(なん)のと(うま)(こと)()ひよつたね』
436寅公(とらこう)当意即妙(たういそくめう)437神謀(しんぼう)奇略(きりやく)智勇(ちゆう)兼備(けんび)大将(たいしやう)だ、438知識(ちしき)源泉(げんせん)たる吾々(われわれ)439何処(どこ)()()があるものかい、440サアサ()加減(かげん)(やす)まうぢやないか』
441浅公(あさこう)『オヽ、442(やす)みても()からう、443膝坊主(ひざばうず)でも()いて()エ、444アーア、445今晩(こんばん)(をんな)随分(ずゐぶん)素敵(すてき)(やつ)ぢやないか、446アンナ()女房(にようばう)()つたハズバンドは随分(ずゐぶん)幸福(かうふく)だらうな、447エー怪体(けつたい)(わる)い、448あれ(ほど)堅苦(かたぐる)しい(こと)()つて()黒姫(くろひめ)大将(たいしやう)婿(むこ)()つ、449やもめばつかりの俺達(おれたち)(ゆび)(くは)へて、450()()るより仕方(しかた)()い、451そこへ(また)うら(わか)綺麗(きれい)夫婦(ふうふ)がやつて()やがつて、452随分(ずゐぶん)貴様(きさま)(たち)()()める(こと)だらう、453アハヽヽヽ』
454()ひに(じやう)じて四辺(あたり)(かま)はず(ののし)つて()る。455綾彦(あやひこ)456(たみ)黒姫(くろひめ)(めい)()り、457一室(ひとま)()つて(しん)()かむと廊下(らうか)(とほ)(をり)458(おも)はぬ(さけ)()ひの(わら)(ごゑ)459()()きは不道徳(ふだうとく)とは()(なが)らも、460つひ()にかかりフツと(みみ)(かたむ)()いて()れば、461どうやら自分(じぶん)(こと)らしい、462二人(ふたり)(かほ)見合(みあは)何事(なにごと)かひそひそ(ささや)(なが)一睡(いつすゐ)もせず(その)()()かしける。
463大正一一・四・二六 旧三・三〇 北村隆光録)
464(昭和一〇・六・一 王仁校正)