霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二章 唖呍(あうん)〔七三二〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第24巻 如意宝珠 亥の巻 篇:第1篇 流転の涙 よみ:るてんのなみだ
章:第2章 第24巻 よみ:あうん 通し章番号:732
口述日:1922(大正11)年06月14日(旧05月19日) 口述場所: 筆録者:外山豊二 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年5月10日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
友彦は、鬼熊別夫婦の信任を一段と集めた。また小糸姫も友彦の親切にほだされて、いつとはなしに、面貌卑しい友彦にも好意を抱くようになった。
友彦は小糸姫と割りなき仲になり、それを利用して鬼熊別の後継となるよう、蜈蚣姫を通じて工作を開始した。しかし鬼熊別は友彦の心性を考慮して、自分の後継として指名することは決して許さなかった。
友彦と小糸姫は鬼熊別の心中を悟り、将来を心配して、ついに顕恩郷から出奔して行方をくらましてしまった。
二人は波斯を越えて印度の国の南までやって来たが、この辺りには露の都というバラモン教の大きな拠点があった。事の露見を恐れた二人は、さらに南下してセイロン島に渡った。
セイロン島の人々は、小糸姫の容貌を見て天女の降臨だと思って尊敬し、女王のように扱った。友彦は表向き従者となって過ごした。
しかし友彦はおいおい本性を現して小糸姫が持って来た金銭を湯水のように使って酒に浸り、島の女に戯れ出した。小糸姫の恋はすっかり醒めて、二人の反りは日に日に合わなくなっていった。ついに小糸姫は二人の島人に舟を漕がせて逃げてしまった。
友彦は島人の報せを受けて、小糸姫の出奔を知った。小糸姫の書置きを守り袋にしまうと、後を追って印度の国へ舟を出した。しかしすでに友彦は無一文になっていた。島人たちへの駄賃に着物を与えてしまい、守り袋を首から下げただけの姿で印度の国の浜辺に降り立ち歩き始めた。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm2402
愛善世界社版:29頁 八幡書店版:第4輯 621頁 修補版: 校定版:29頁 普及版:13頁 初版: ページ備考:
001 友彦(ともひこ)鬼熊別(おにくまわけ)夫婦(ふうふ)信任(しんにん)益々(ますます)(あつ)く、002(つひ)には鬼熊別(おにくまわけ)(おく)()内事係(ないじがかり)主任(しゆにん)として(つか)ふる(こと)となりぬ。003小糸姫(こいとひめ)(あさ)(ゆふ)なに友彦(ともひこ)親切(しんせつ)にほだされ、004()かぬ(かほ)とは(おも)(なが)らも何時(いつ)とは()しにスツカリ無二(むに)(ちから)(たの)むに(いた)りける。005蔭裏(かげうら)()えた(まめ)でも時節(じせつ)()ればはぢける道理(だうり)006十五(じふご)(はる)(むか)へたオボコ(むすめ)も、007何時(いつ)とはなしに(こゑ)(がは)りがし、008臀部(でんぶ)恰好(かつかう)余程(よほど)大人(おとな)()たりぬ。009男女(だんぢよ)交情(かうじやう)(むす)第一(だいいち)要点(えうてん)談話(だんわ)()(かさ)ぬること、010会見(くわいけん)()(おほ)きこと、011(およ)時間(じかん)関係(くわんけい)大影響(だいえいきやう)(およ)ぼすものなるべし。
012 小糸姫(こいとひめ)何時(いつ)とはなしに友彦(ともひこ)(かほ)()(ごと)に、013(かほ)(あか)らめ、014(ふすま)(かげ)(かく)れ、015(ぬす)()(のぞ)(まで)になりぬ。016蜈蚣姫(むかでひめ)信任(しんにん)(あつ)友彦(ともひこ)に、017小糸姫(こいとひめ)身辺(しんぺん)世話(せわ)委託(ゐたく)したるが、018遠近(ゑんきん)上下(じやうげ)(へだ)てなきは(こひ)(みち)019優柔不断(いうじうふだん)フナフナ(ごし)友彦(ともひこ)何時(いつ)とは()しに(めう)(かんが)へを(おこ)し、020(つい)には小糸姫(こいとひめ)(をつと)となつてバラモン(けう)実権(じつけん)(にぎ)らむと、021野心(やしん)火焔(くわえん)(つつ)まれ昼夜(ちうや)(こころ)(こが)()たり。
022 友彦(ともひこ)(つの)恋路(こひぢ)に、023小糸姫(こいとひめ)(ふすま)開閉(あけたて)にも、024()れつ(もつ)れつ相生(あひおひ)(まつ)(まつ)との若緑(わかみどり)025手折(たお)るものなき高嶺(たかね)()いた(まつ)(はな)026(つい)友彦(ともひこ)得意(とくい)時代(じだい)到来(たうらい)した。027猪食(ししく)(いぬ)蜈蚣姫(むかでひめ)(さと)くも二人(ふたり)関係(くわんけい)推知(すゐち)し、028(をつと)鬼熊別(おにくまわけ)(むか)つて言葉(ことば)(つく)し、029友彦(ともひこ)をして小糸姫(こいとひめ)(をつと)となし、030鬼熊別(おにくまわけ)後継者(こうけいしや)たらしめむとする意志(いし)を、031(こと)()れ、032(もの)(せつ)し、033遠廻(とほまは)しにかけて鬼熊別(おにくまわけ)にいろいろと斡旋(あつせん)(らう)()りぬ。
034 されど鬼熊別(おにくまわけ)友彦(ともひこ)下劣(げれつ)なる品性(ひんせい)と、035野卑(やひ)なる面貌(めんばう)(こころ)(いた)め、036到底(たうてい)副棟梁(ふくとうりやう)後継者(こうけいしや)として不適任(ふてきにん)たることを(さと)り、037何時(いつ)蜈蚣姫(むかでひめ)千言万語(せんげんばんご)(つく)しての斡旋(あつせん)馬耳東風(ばじとうふう)()(なが)した。
038 友彦(ともひこ)039小糸姫(こいとひめ)(ちち)心中(しんちう)(さつ)し、040人目(ひとめ)(しの)んでは二人(ふたり)行末(ゆくすゑ)(あん)(わづら)ひつつ、041ヒソヒソ(ばなし)(ふけ)()たりける。
042 ある(とき)友彦(ともひこ)は、
043小糸姫(こいとひめ)(さま)044(わたし)今日(こんにち)(かぎ)貴方(あなた)御別(おわか)(いた)さねばならぬことが出来(でき)ました。045(いま)までの御縁(ごえん)(あきら)めて(くだ)さいませ』
046 小糸姫(こいとひめ)(やうや)(くち)(ひら)(はづか)()に、
047友彦(ともひこ)(さま)048そりや(また)()うした理由(わけ)御座(ござ)います。049たとへ()うなつても小糸姫(こいとひめ)のためには(ちから)(つく)し、050生命(いのち)でも差出(さしだ)すと仰有(おつしや)つたではありませぬか』
051『ハイ、052(わたし)(こころ)(すこ)しも(かは)つては()りませぬ。053()()可愛(かあい)さ、054(こひ)しさが弥増(いやま)し、055片時(かたとき)()貴女(あなた)のお(かほ)()えねば、056ジツクリとして()られないやうに、057(こひ)(ほのほ)()()つて()()ります。058(しか)(なが)貴女(あなた)(たふと)副棟梁(ふくとうりやう)一人娘(ひとりむすめ)059何時(いつ)までも(わたし)のやうな(いや)しき(もの)関係(くわんけい)(むす)(わけ)には(まゐ)りませぬ。060御父様(おとうさま)御意中(ごいちう)(けつ)して吾々(われわれ)両人(りやうにん)()(かな)へては(くだ)さいませぬ。061何程(なにほど)御母上(おははうへ)御取持(おとりもち)(くだ)さつても、062最早(もはや)駄目(だめ)だと()ふことが(わか)りました。063(わたし)(これ)より()煩悶(はんもん)(わす)れるため、064貴女(あなた)御側(おそば)(とほ)(はな)れ、065世界(せかい)遍歴(へんれき)一苦労(ひとくらう)(いた)しませう。066これが御顔(おかほ)見納(みをさ)めで御座(ござ)いますれば、067()うぞ御両親(ごりやうしん)孝養(かうやう)(つく)し、068立派(りつぱ)(をつと)()つてバラモン(けう)のために御尽(おつく)(くだ)さいませ』
069 小糸姫(こいとひめ)(おどろ)いて()()()()し、
070『アー()うしませう。071父上様(ちちうへさま)072(きこ)えませぬ』
073()(さけ)ぶを友彦(ともひこ)は、
074『モシモシ御嬢様(おぢやうさま)075(くや)んで(かへ)らぬ(たがひ)(えん)076(しば)しの(ゆめ)()たと御諦(おあきら)(くだ)さいませ。077(まこと)(いや)しき()(もつ)て、078貴女様(あなたさま)(たい)失礼(しつれい)(いた)しました重々(ぢゆうぢゆう)(つみ)079何卒(なにとぞ)御赦(おゆる)(くだ)さいませ……左様(さやう)なら、080これにて(いと)しき貴女(あなた)御別(おわか)(いた)しませう』
081立去(たちさ)らむとするを(すそ)()()め、
082(しば)らくお()(くだ)さいませ。083(わたし)(をんな)(はし)くれ、084たとへ天地(てんち)(かは)るとも、085一旦(いつたん)()(かは)した貴方(あなた)見捨(みす)てて()うして(をんな)(みち)()ちませう。086苦楽(くらく)(とも)にするのが夫婦(ふうふ)(みち)087仮令(たとへ)(なん)仰有(おつしや)つても、088(わたし)何処(どこ)までも(はな)しませぬ。089()うしても(わか)れねばならなければ貴方(あなた)のお()(わたし)刺殺(さしころ)し、090何処(どこ)へなりと御出(おい)(くだ)さいませ』
091()()す。
092『アヽ(こま)つたことが出来(でき)たワイ、093(わか)れようと()へば御嬢様(おぢやうさま)(つよ)御決心(ごけつしん)094生命(いのち)にも(かか)はる一大事(いちだいじ)095大恩(たいおん)ある鬼熊別(おにくまわけ)御夫婦(ごふうふ)(たい)申訳(まをしわけ)()い。096さうだと()つて大切(たいせつ)御嬢様(おぢやうさま)伴出(つれだ)しては(なほ)()まず、097アヽ仕方(しかた)がない……。098モシ御嬢様(おぢやうさま)099(わたし)此処(ここ)(はら)()()つて相果(あひは)てまする。100()うぞ貴女(あなた)両親(りやうしん)(つか)へて孝養(かうやう)御尽(おつく)(あそ)ばされ、101(さいはひ)(わたし)(こと)(おも)()された(とき)は、102(みづ)一杯(いつぱい)手向(たむ)けて(くだ)さいませ。103千万人(せんまんにん)宣伝使(せんでんし)読経(どくきやう)よりも貴女(あなた)御手(おて)づから(あた)へて(くだ)さつた一滴(いつてき)(みづ)が、104何程(なにほど)(うれ)しいか()れませぬ。105小糸姫(こいとひめ)(さま)106さらばで御座(ござ)いまする』
107懐剣(くわいけん)スラリと引抜(ひきぬ)き、108(はら)(いま)()てむとする(とき)109小糸姫(こいとひめ)()(うで)(すが)りつき、
110『モシモシ友彦(ともひこ)(さま)111(しば)らくお()(くだ)さいませ。112(ねが)ひいたし()いことが御座(ござ)います』
113 友彦(ともひこ)は、
114最早(もはや)覚悟(かくご)(いた)した(うへ)申訳(まをしわけ)のため(ただ)()あるのみ。115()うぞ立派(りつぱ)()なして(くだ)され』
116『どうして(これ)()なされませう。117()うなる(うへ)是非(ぜひ)がない。118(おや)につくか、119(をつと)につくか、120()ちつく(みち)(ただ)(ひと)つ。121暫時(しばし)(おや)御苦労(ごくらう)をかけるか()れないが、122(いづ)(この)()(なが)らへて()れば、123御両親(ごりやうしん)孝養(かうやう)(つく)すことも出来(でき)ませう。124何卒(どうぞ)友彦(ともひこ)(さま)125(わたし)()れて()げて(くだ)さいませぬか』
126『これはしたり御嬢様(おぢやうさま)127親子(おやこ)一世(いつせ)128夫婦(ふうふ)二世(にせ)(まを)しまして、129(この)()(おや)ほど大切(たいせつ)なものは御座(ござ)いますまい。130友彦(ともひこ)ばかりが(をとこ)ではありませぬ。131モツトモツト立派(りつぱ)(をとこ)沢山(たくさん)御座(ござ)いますれば、132(わたし)のことは只今(ただいま)(かぎ)(おも)()り、133両親(りやうしん)御孝養(ごかうやう)(ねが)ひます。134さらば、135(これ)にて御別(おわか)れ……』
136(また)もや懐剣(くわいけん)()()てようとする。137小糸姫(こいとひめ)(かな)しさやる()なく(うで)()ひつき満身(まんしん)(ちから)()めて友彦(ともひこ)(ころ)さじと(あせ)()る。138友彦(ともひこ)感慨無量(かんがいむりやう)(てい)にて、
139『アヽ其処(そこ)まで(わたし)(おも)うて(くだ)さるか。140左様(さやう)なれば(あふ)せに(したが)ひ、141(しば)らく(わたし)一緒(いつしよ)何処(どこ)かへ(かく)れて、142(たの)しき月日(つきひ)(おく)りませう』
143 小糸姫(こいとひめ)は、
144『あゝそれで安心(あんしん)(いた)しました』
145(おく)()り、146(ひそ)かに数多(あまた)路銀(ろぎん)懐中(くわいちう)し、147()()くるを()つて二人(ふたり)(やかた)(あと)に、148何処(いづこ)ともなく顕恩郷(けんおんきやう)より()えにけり。
149 親子(おやこ)のやうに(とし)(ちが)うた二人(ふたり)男女(だんぢよ)は、150()()をとつて波斯(フサ)(くに)を、151彼方(あちら)此方(こちら)彷徨(さまよ)ひ、152(つい)には高山(かうざん)(いく)つか()えて印度(ツキ)(くに)(みなみ)(はし)(すす)んで()た。153此処(ここ)には(つゆ)(みやこ)()つて相当(さうたう)繁華(はんくわ)土地(とち)がある。154バラモン(けう)宣伝使(せんでんし)市彦(いちひこ)相当(さうたう)(はば)()かし、155遠近(ゑんきん)()(とどろ)かして()た。156友彦(ともひこ)(かか)地点(ちてん)彷徨(さまよ)ふは、157発覚(はつかく)(おそ)れありとなし、158(つき)()(まぎ)れて(うみ)(わた)り、159セイロンの(しま)()ぎつけ、160(おく)(ふか)(すす)みシロ(やま)谷間(たにあひ)(きよ)(かま)へ、161二人(ふたり)(くら)(こと)となつた。162物珍(ものめづ)しき島人(しまびと)は、163(はな)(あざむ)小糸姫(こいとひめ)容貌(ようばう)()て、164天女(てんによ)降臨(かうりん)せしものと(おも)尊敬(そんけい)(ねん)(はら)ひ、165日夜(にちや)()(いほり)(たづ)ねて参拝(さんぱい)するもの()きも()らぬ有様(ありさま)であつた。166小糸姫(こいとひめ)表向(おもてむき)友彦(ともひこ)下僕(しもべ)となし、167女王(ぢよわう)気取(きど)りで無鳥島(むてうたう)蝙蝠王(へんぷくわう)となりすまし、168友彦(ともひこ)(とも)日夜(にちや)快楽(くわいらく)(ふけ)りゐたり。
169 友彦(ともひこ)(にはか)()りたてた身魂(みたま)鍍金(めつき)は、170()(つき)剥脱(はくだつ)し、171父母(ふぼ)両親(りやうしん)()(とほ)(はな)れたるを(さいは)ひ、172横柄(わうへい)小糸姫(こいとひめ)(あご)(さき)にて使(つか)(やう)になつた。173さうして小糸姫(こいとひめ)()(きた)れる旅費(りよひ)取出(とりだ)しては日夜(にちや)(さけ)(ひた)り、174(あるひ)島人(しまびと)(をんな)(たい)他愛(たあい)なく(たはむ)()した。175小糸姫(こいとひめ)は、176(やうや)(こひ)(ゆめ)()むるとともに、177友彦(ともひこ)()ふこと()すことを、178蛇蝎(だかつ)(ごと)()(きら)ひ、179友彦(ともひこ)(はう)より()きくる(かぜ)さへも、180()()(ごと)くに(かん)じた。181百度(ひやくど)以上(いじやう)逆上(のぼ)()つた(こひ)(なつ)何時(いつ)しか()ぎて、182ソロソロ秋風(あきかぜ)()(おこ)り、183()()冷気(れいき)(くは)はり(こがらし)(さむ)(ふゆ)(ごと)く、184友彦(ともひこ)(おも)(こひ)(ねつ)はスツカリ冷却(れいきやく)して(こほり)(ごと)くになり(をは)りけり。
185 友彦(ともひこ)小糸姫(こいとひめ)様子(やうす)()()につれなくなるに(ごふ)()やし、186時々(ときどき)鉄拳(てつけん)(ふる)ひ、187自暴酒(やけざけ)()み、188(しわ)がれ(ごゑ)呶鳴(どな)()て、189二人(ふたり)(なか)()()(そり)(あは)なくなりにける。
190 (ある)()小糸姫(こいとひめ)友彦(ともひこ)大酒(おほざけ)(あふ)り、191()(つぶ)れたる(すき)(うかが)ひ、192一通(いつつう)遺書(かきおき)(のこ)し、193浜辺(はまべ)(つな)げる小舟(こぶね)()ぎ、194島人(しまびと)(くろ)(ばう)二人(ふたり)(とも)なひ、195太平洋(たいへいやう)目蒐(めが)けて大胆(だいたん)にも()()したり。
196 友彦(ともひこ)(さけ)(ゑひ)()め、197()()()れば()はカラリと()けはなれ小鳥(ことり)(こゑ)(かしま)し。
198 友彦(ともひこ)(ねむ)たき()(こす)(なが)ら、
199小糸姫(こいとひめ)200(みづ)(みづ)だ』
201 ()べど(さけ)べど(なん)応答(いらへ)もなきに友彦(ともひこ)は、
202『アヽ(また)(うら)(やま)へでも果物(くだもの)()りに()きよつたのかなア。203(なに)()うても御嬢(おぢやう)さまで気儘(きまま)(そだ)つた(をんな)だから仕方(しかた)()い。204(しか)()()ふものの、205まだ十六(じふろく)だから子供(こども)(やう)なものだ。206(あま)りケンケン()つてやるのも可哀想(かあいさう)だ。207チツトこれから可愛(かあい)がつてやらねばなるまい。208顕恩郷(けんおんきやう)()れば、209彼方(あちら)からも、210此方(こちら)からも御嬢(おぢやう)さまと(たてまつ)られ、211女王(ぢよわう)(やう)()(はや)され、212栄耀栄華(えいようえいぐわ)(くら)せる身分(みぶん)だ。213()友彦(ともひこ)(おも)はぬ手柄(てがら)()つてそれをきつかけに(うま)たらし()み、214世間(せけん)()らずのオボコ(むすめ)をチヨロマカした(おれ)腕前(うでまへ)215(さだ)めてバラモン(けう)幹部連(かんぶれん)(おどろ)いたであらう。216(おれ)(かほ)自分(じぶん)(なが)愛想(あいさう)()きるやうなものだが、217それでも生命(いのち)(おや)だと(おも)つて、218すねたり、219(はね)たりし(なが)()いて()るのはまだ(しほ)らしい。220たとへ(おれ)(きら)つて()(かへ)らうと(おも)つても、221(とほ)山坂(やまさか)()えコンナ(はな)(じま)()()まれては、222孱弱(かよわ)(をんな)()うすることも出来(でき)よまい。223(おも)へば可哀想(かあいさう)なものであるワイ……アヽ(のど)(かわ)いた。224(ひと)友彦(ともひこ)(みづか)玉水(ぎよくすゐ)を、225()みて御飲(おあが)(あそ)ばす(こと)としよう』
226()(なが)ら、227門前(もんぜん)(なが)るる谷川(たにがは)(みづ)竹製(たけせい)柄杓(ひしやく)突込(つつこ)み、228グイと一杯(いつぱい)()()(こゑ)()へて、
229『さア、230旦那様(だんなさま)231御上(おあが)(あそ)ばせ。232あまり御酒(おさけ)(あが)りますと御身(おんみ)のためによろしく御座(ござ)いませぬ。233()しも貴方(あなた)御病気(ごびやうき)にでも()なり(あそ)ばしたら、234(わたし)()うしませう。235ねー貴方(あなた)236(わたし)可愛(かあい)いと思召(おぼしめ)すなら、237()うぞ御酒(おさけ)(あま)()ごさない(やう)にして頂戴(ちやうだい)……ナンテ(ぬか)しよるのだけれど、238今日(けふ)(かぎ)つて若山(わかやま)神様(かみさま)何処(どこ)かへ御出張(ごしゆつちやう)(あそ)ばした。239(やが)御帰館(ごきくわん)になるだらう。240それまで(やま)(かみ)代理(だいり)(つと)めるのかなア』
241独語(ひとりごと)()(なが)ら、242グツト一杯(いつぱい)()()し、
243『アヽ酔醒(よひざ)めの(みづ)美味(うま)さは下戸知(げこし)らずだ。244アヽうまいうまい、245(みづ)()らさぬ二人(ふたり)恋仲(こひなか)246媒酌人(ばいしやくにん)()しに自由(じいう)結婚(けつこん)洒落(しやれ)たのだから、247()(しやく)媒酌人(ばいしやくにん)仮定(かてい)して()一杯(いつぱい)やりませう。248何程(なにほど)しやくだと()つても、249顕恩郷(けんおんきやう)(とほ)(はな)れた()(しま)250二人(ふたり)恋仲(こひなか)(みづ)()(やつ)滅多(めつた)にあるまい。251(しか)(なが)小糸姫(こいとひめ)時々(ときどき)(しやく)(おこ)すのには、252一寸(ちよつと)(おれ)(こま)る………「もしわが夫様(つまさま)253(しやく)がさしこみました。254どうぞ御介錯(ごかいしやく)(ねが)ひます」………なんて本当(ほんたう)になまめかしい(こゑ)()しやがつて、255(おれ)何時(いつ)もそれが(しやく)(さは)………らせぬワ。256アヽうまいうまい』
257と、258()んでは()()くんでは()一人(ひとり)(きよう)がりゐる。
259 ()かる(ところ)(くろ)(ばう)一人(ひとり)(あら)はれ(きた)り、
260『モシモシ友彦(ともひこ)(さま)261女王様(ぢよわうさま)夜前(やぜん)(ふね)()つて何処(どこ)かへ()かれたのを、262貴方(あなた)御存知(ごぞんじ)御座(ござ)いますか』
263()くより友彦(ともひこ)真蒼(まつさを)になり、
264(なに)ツ、265小糸姫(こいとひめ)(ふね)()つて此処(ここ)()つたとは、266そりや本当(ほんたう)か』
267(なに)(わたくし)(うそ)(まを)しませう。268チヤンキーとモンキーの二人(ふたり)が、269櫓櫂(ろかい)(あやつ)(みなと)船出(ふなで)しましたのを、270月夜(つきよ)(ひかり)(たしか)見届(みとど)けました。271(わたくし)ばかりでない、272四五人(しごにん)のものがみんな()()りますよ』
273『ソンナラ何故(なぜ)早速(さつそく)()らして()ぬのだ』
274早速(さつそく)()らせに(まゐ)つたのですが、275御承知(ごしようち)(とほ)()急坂(きふはん)276さう着々(ちやくちやく)()られませぬワ』
277『さうして小糸姫(こいとひめ)何処(どこ)()つたか()つて()るか』
278『そこまではハツキリしませぬが、279(なん)でも(へさき)印度(ツキ)(くに)(はう)()けて()られましたから、280大方(おほかた)(つゆ)(みやこ)御越(おこ)しになつたのでせう』
281 友彦(ともひこ)両手(りやうて)()みウンウンと吐息(といき)()き、282両眼(りやうがん)より(あら)(なみだ)をポロリポロリと(こぼ)して()る。283(しばら)くして友彦(ともひこ)立上(たちあが)り、
284『おのれチヤンキー、285モンキーの両人(りやうにん)286大切(たいせつ)女房(にようばう)(そその)かし、287何処(どこ)()()つたか、288たとへ(てん)をかけり、289()(くぐ)神変(しんぺん)不思議(ふしぎ)(じゆつ)あるとも、290(くさ)をわけても(さが)()し、291女房(にようばう)()はねば()かぬ。292(その)(とき)にチヤンキー、293モンキーの二人(ふたり)血祭(ちまつ)りに(いた)して()れむ』
294狂気(きやうき)(ごと)()(くる)ひ、295(なべ)296(かま)297火鉢(ひばち)()げ、298()障子(しやうじ)(うら)みを(てん)じ、299(みづか)乱暴狼藉(らんばうろうぜき)(かぎ)りを(つく)し、300家財(かざい)(のこ)らず滅茶(めつちや)苦茶(くちや)(たた)(こは)し、301小糸姫(こいとひめ)(のこ)()いた衣服(いふく)手道具(てだうぐ)引裂(ひきさ)き、302打砕(うちくだ)き、303地団駄(ぢだんだ)()んで室内(しつない)七八回(しちはちくわい)もクルクルと(まは)(くる)ひ、304()(まは)してパタリと(たふ)れた。
305 (くろ)(ばう)一人(ひとり)(おどろ)いて(そば)駆寄(かけよ)り、
306『モシモシ友彦(ともひこ)(さま)307狂気(きやうき)めされたか。308マア()御鎮(おしづ)めなされ、309何程(なにほど)(あせ)つても()ひつくことは出来(でき)ますまい。310(いづ)印度(ツキ)(くに)(つゆ)(みやこ)市彦(いちひこ)()名高(なだか)宣伝使(せんでんし)()られますから、311其処(そこ)大方(おほかた)御越(おこ)しなつたのでせう』
312 友彦(ともひこ)(この)(こゑ)にハツト()がつき、
313(なに)ツ、314市彦(いちひこ)()うしたと()ふのだ』
315大方(おほかた)女王様(ぢよわうさま)(つゆ)(みやこ)市彦(いちひこ)(やかた)御越(おこ)しになつたのだらうと、316(みな)(もの)(うはさ)(いた)して()りましたと()ふのです』
317『それは貴様(きさま)318よく()らせて()れた。319さア、320駄賃(だちん)をやらう』
321金凾(かねばこ)(ひら)()れば、322こは如何(いか)に、323(から)ツけつ勘左衛門(かんざゑもん)324(びた)一文(いちもん)(のこ)つて()ない。325(はこ)(そこ)(のこ)つた折紙(をりがみ)手早(てばや)(つか)(ひら)()て、
326『アヽ(なん)だか(ちつと)(わか)らない。327スパルタ文字(もじ)で………意地(いぢ)(わる)い、328(おれ)()めぬのを()(なが)ら、329遺書(かきおき)をして()きやがつたのだらう。330(しか)しこれは(のち)証拠(しようこ)だ。331大切(たいせつ)にせなくてはならない』
332(まも)(ぶくろ)(なか)大事(だいじ)(さう)にしまひ()み、333(くろ)(ばう)案内(あんない)させ、334一生懸命(いつしやうけんめい)にシロ(やま)急坂(きふはん)をドンドン威喝(ゐかつ)させ(なが)ら、335大股(おほまた)(くだ)()く。
336 (やうや)くシロの(みなと)(かけ)ついた。337滅法矢鱈(めつぱふやたら)(くろ)(ばう)二人(ふたり)がマラソン競走(きやうそう)をやつた結果(けつくわ)338(みなと)()くや、339()(ゆる)みバツタリと此処(ここ)(たふ)れて(しま)つた。340(みなと)(あつ)まる(くろ)(ばう)二三十人(にさんじふにん)()つて(たか)つて(みづ)をかけたり、341(はな)()ぢたり、342いろいろとして(やうや)()をつけた。
343 友彦(ともひこ)四辺(あたり)キヨロキヨロ見廻(みまは)(なが)ら、
344『オー此処(ここ)はシロの(みなと)だ。345さア、346汝等(おまへら)一時(いちじ)(はや)(ふね)用意(ようい)(いた)し、347印度(ツキ)(くに)(おく)れ』
348賃銭(ちんせん)幾何(いくら)()れますか』
349『エーコンナ(とき)賃銭(ちんせん)(はなし)どころか、350一刻(いつこく)(はや)猶予(いうよ)がならぬ。351賃銭(ちんせん)(のぞ)次第(しだい)(あと)から(つか)はす。352さア、353(はや)()け』
354()()てる。
355 友彦(ともひこ)懐中(くわいちゆう)実際(じつさい)無一物(むいちぶつ)であつた。356八人(はちにん)(くろ)(ばう)八挺櫓(はつちやうろ)()(なが)()()(ごと)友彦(ともひこ)(めい)のまにまに印度洋(いんどやう)横切(よこぎ)り、357印度(ツキ)(くに)浜辺(はまべ)(やうや)()いた。358此処(ここ)真砂(まさご)(はま)()遠浅(とほあさ)になつてゐる。359(ふね)十町(じつちやう)ばかり(おき)にかかり、360それより(しり)(まく)つて徒歩(とほ)上陸(じやうりく)する(こと)となりゐるなり。
361『モシモシ大将(たいしやう)さま、362賃銭(ちんせん)(いただ)きませう』
363『ウン一寸(ちよつと)()て、364賃銭(ちんせん)はシロの(みなと)まで(かへ)つた(とき)365往復(わうふく)(とも)()りこんでやる。366二度(にど)にやるのは邪魔臭(じやまくさ)いから、367此処(ここ)(ふね)()かべて()つてゐるがよからう』
368『さうだと()つて………(つゆ)(みやこ)までは二日(ふつか)三日(みつか)では()けませぬ。369往復(わうふく)十日(とをか)もかかるのに、370コンナ(ところ)()つてゐられますかい』
371()つのが(いや)なら(さき)(かへ)つてシロの(みなと)()つてゐるがよからう。372帰途(かへり)には(また)(ほか)(ふね)()るから………』
373『ソンナ(こと)()はずに(わた)して(くだ)さいなア。374女房(にようばう)(なべ)(あら)つて()つてゐるのですから』
375(じつ)(かね)をあまり周章(あわて)(わす)れて()たのだ』
376『ヘンうまいこと()ふない。377女王(ぢよわう)にスツパ()けを()はされ、378(かね)(なに)()つて()げられたのだらう。379(いま)までは女王様(ぢよわうさま)(ひか)りで、380貴様(きさま)尊敬(そんけい)して()つたが、381モー()うなつちや(たれ)貴様(きさま)(したが)ふものがあるか。382(かね)()ければ仕方(しかた)がない。383貴様(きさま)()につけたものを(のこ)らず(おれ)(わた)せ。384グヅグヅ(ぬか)すと、385()つて(たか)つて()海中(かいちう)水葬(すゐさう)してやらうか』
386『エー仕方(しかた)()い、387ソンナラ(あつ)(くに)(こと)でもあり、388(はだか)でもしのげぬ(こと)()いのだから、389これなつと()つて()け』
390とクルクルと真裸(まつぱだか)になり、391(ふね)(なか)()げつけたるに(くろ)(ばう)は、
392『ヨー(おも)ひの(ほか)立派(りつぱ)着物(きもの)だ。393何分(なにぶん)(かね)あかし(こしら)へよつた品物(しなもの)だから………オイその(くび)にかけて()(まも)(ぶくろ)此方(こちら)寄越(よこ)せ』
394(これ)貴様等(きさまら)()()れると、395(たちま)身体(からだ)がしびれるぞ。396さア()つて()け』
397(くび)()()す。398八人(はちにん)(くろ)(ばう)は、
399『ヤア、400ソンナ(おそ)ろしいものは()らぬワイ。401勝手(かつて)()つて()け』
402()()遠浅(とほあさ)(うみ)友彦(ともひこ)(のこ)し、403八挺(はつちやう)()()ぎ、404(むらさき)(しほ)(ただよ)海面(かいめん)()(ごと)(かへ)つて()く。
405 友彦(ともひこ)(すな)(あし)(ぼつ)し、406()むを()(くび)守袋(まもりぶくろ)をプリンと()げ、407飼犬(かひいぬ)よろしくと()ふスタイルで、408遠浅(とほあさ)(うみ)をノタノタと、409()()ひになつて岸辺(きしべ)()して(すす)()く。
410大正一一・六・一四 旧五・一九 外山豊二録)
   
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