霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一三章 治安内教(ぢあんないけう)〔七四三〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第24巻 如意宝珠 亥の巻 篇:第4篇 蛮地宣伝 よみ:ばんちせんでん
章:第13章 第24巻 よみ:ちあんないきょう 通し章番号:743
口述日:1922(大正11)年07月05日(旧閏05月11日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年5月10日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
一行はネルソン山の山頂で祝詞を唱えていたとき、強風に吹き煽られて、山頂から墜落してしまった。一つ島は、ネルソン山より東側は黄竜姫が治めていたが、西側は猛獣毒蛇が多く、人が立ち入れない場所と考えられていた。
しかし実際には、相当数に人間が住んでいたのである。この地に住む人々は、勇猛で身体大きく、男女共に顔面に刺青をしていた。これはこの地に多い猛獣や毒蛇を避けるためである。
ジャンナの里のジャンナイ教は、肉食を厳禁し、肉食を犯した者はネルソン山西麓の谷間に集まって贖罪の生活を為していた。酋長の娘・照姫が、贖罪の道を教えるためにジャンナイ教の教主となっていた。
ジャンナイ教には、鼻の赤い神が救世主として降る、という伝説があった。そこへ、ネルソン山の強風に吹き煽られた友彦が墜落してきた。
友彦が息を吹き返すと、刺青をした人間たちが自分を取り囲んでいた。しかし自分を崇めているような様子から、これは自分を天から降った人種だと思って奉っているものだと日ごろの山師気を起こし、言葉が通じないのをよいことに、天を指差したり五十音を発生したりしてそれらしく振舞っていた。
やがて友彦は、ジャンナイ教の照姫のもとに連れて行かれた。ジャンナイ教主である照姫だけは、刺青をしていなかった。そこで照姫と友彦は結婚の儀式を行い、祝いの歌が響き渡った。
そこへ同じようにネルソン山から吹き落とされた玉治別が担ぎ込まれてきた。玉治別は友彦がわけのわからない言葉で歌っているのを聞いて、思わずふき出した。
玉治別は言葉が通じないのをよいことに、友彦の悪行を里人に向かって説法したり、友彦をからかっている。友彦は照姫に連れられて別室に行ってしまった。
すると屋根の上から木の実が玉治別の顔に落ちて、鼻が赤く腫れ上がってしまった。ジャンナイ教の従者はこれを見て、友彦より鼻の赤い立派な神様が現れたと思い、照姫のところに連れて行った。
すると照姫は玉治別の方を気に入ってしまい、友彦に肘鉄を食わした。友彦と玉治別がやりあっている間に、玉治別の鼻は紫になり、黒くなってきた。すると今度は玉治別が肘鉄を食わされてしまった。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm2413
愛善世界社版:205頁 八幡書店版:第4輯 688頁 修補版: 校定版:211頁 普及版:96頁 初版: ページ備考:
001大海原(おほうなばら)(ただよ)へる
002黄金(こがね)(はな)()竜宮(りうぐう)
003(ひと)つの(しま)上陸(じやうりく)
004(うづ)(みやこ)城門(じやうもん)
005(くぐ)りて高姫(たかひめ)蜈蚣姫(むかでひめ)
006黄竜姫(わうりようひめ)面会(めんくわい)
007梅子(うめこ)(ひめ)宇豆姫(うづひめ)
008(たか)功績(いさお)(した)()
009天狗(てんぐ)(はな)高姫(たかひめ)
010高山彦(たかやまひこ)黒姫(くろひめ)
011(しめ)(あは)せて玉能姫(たまのひめ)
012初稚姫(はつわかひめ)玉治(たまはる)
013別命(わけのみこと)海原(うなばら)
014(とほ)(わた)りて自転倒(おのころ)
015(しま)(かへ)りしものとなし
016(にはか)(ふね)(あやつ)りつ
017(ひがし)()して()でて()
018玉治別(たまはるわけ)玉能姫(たまのひめ)
019初稚姫(はつわかひめ)一行(いつかう)
020(うづ)(みやこ)城門(じやうもん)
021(あと)(なが)めて竜王山(たつおやま)
022(みね)(つた)うてシトシトと
023(たに)()()岩間(いはま)をくぐり
024ネルソン(ざん)山頂(さんちやう)
025(あせ)をタラタラ(なが)しつつ
026炎暑(えんしよ)(たたか)ひやうやうに
027(いき)()ぎあへず(のぼ)()
028折柄(をりから)()()涼風(りやうふう)
029(はら)(おと)した(たま)(あせ)
030(うづ)(みやこ)(かへり)みて
031(やま)(また)(やま)(つら)なりし
032雄大無限(ゆうだいむげん)絶景(ぜつけい)
033(こころ)()くまでも観賞(くわんしやう)
034(おのおの)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)
035天津御神(あまつみかみ)国津神(くにつかみ)
036国魂神(くにたまがみ)大前(おほまへ)
037拍手(はくしゆ)(こゑ)(いさ)ましく
038竜宮島(りうぐうじま)宣伝(せんでん)
039無事(ぶじ)()まさせ(たま)へよと
040(いの)(をり)しも山腹(さんぷく)より
041(にはか)()()濃雲(のううん)
042一行(いつかう)十人(じふにん)(たちま)ちに
043(やみ)(つつ)まれ足許(あしもと)
044碌々(ろくろく)()えずなりにける
045()かる(ところ)黒雲(くろくも)
046()()(きた)大蛇(をろち)(むれ)
047(ほのほ)(した)()(なが)
048一行(いつかう)目蒐(めが)けて()(きた)
049スマートボールは(おどろ)いて
050(やみ)(なか)をば(かけ)めぐり
051ネルソン(ざん)頂上(ちやうじやう)より
052(あし)()みはづし万丈(ばんぢやう)
053谷間(たにま)(たちま)顛落(てんらく)
054(つづ)いて貫州(くわんしう)武公(たけこう)
055久助(きうすけ)(たみ)各自(めいめい)
056行方(ゆくへ)()れずなりにけり
057玉治別(たまはるわけ)玉能姫(たまのひめ)
058初稚姫(はつわかひめ)()をつなぎ
059暗祈黙祷(あんきもくたう)折柄(をりから)
060(たちま)()()大嵐(おほあらし)
061本島一(ほんたういち)高山(かうざん)
062()()(わた)荒風(あらかぜ)
063一入(ひとしほ)(つよ)三人(さんにん)
064()()(ごと)中空(ちうくう)
065()きあげられて(かな)しくも
066(おのおの)行方(ゆくへ)白雲(しらくも)
067(つつ)谷間(たにま)()ちにけり
068(かみ)(おもて)(あら)はれて
069(ぜん)(あく)とを立別(たてわ)ける
070(この)()(つく)りし神直日(かむなほひ)
071(こころ)(ひろ)大直日(おほなほひ)
072(ただ)何事(なにごと)(ひと)()
073直日(なほひ)見直(みなほ)聞直(ききなほ)
074()(あやま)ちを()(なほ)
075三五教(あななひけう)皇神(すめかみ)
076(をしへ)(まか)せし一行(いつかう)
077(ただ)何事(なにごと)惟神(かむながら)
078御霊(みたま)(さち)はひましませと
079(こころ)(うち)(いの)りつつ
080(そこ)ひも()れぬ谷底(たにぞこ)
081生命(いのち)からがら墜落(つゐらく)
082(たに)木霊(こだま)(ひび)かせつ
083天津祝詞(あまつのりと)をスラスラと
084奏上(そうじやう)するこそ健気(けなげ)なれ。
085
086(うづ)(しろ)より舁出(かきだ)され
087谷間(たにま)岩上(がんじやう)墜落(つゐらく)
088(こし)()ちたる友彦(ともひこ)
089(かみ)(まも)りの(いちじる)
090ハツと(こころ)取直(とりなほ)
091あたりを()れば人影(ひとかげ)
092()きを(さいは)森林(しんりん)
093(くさ)()けつつやうやうに
094()()(くら)谷水(たにみづ)
095(のど)(うるほ)しネルソンの
096(やま)()()()きにける
097(また)もや()()烈風(れつぷう)
098友彦(ともひこ)()(あふ)られて
099高山(かうざん)数多(あまた)()()えつ
100ジヤンナの谷間(たにま)墜落(つゐらく)
101前後不覚(ぜんごふかく)になりにける
102あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
103御霊(みたま)(さち)はひましますか
104九死一生(きうしいつしやう)友彦(ともひこ)
105ジヤンナイ(けう)信徒(まめひと)
106(かつ)ぎこまれて照姫(てるひめ)
107(をしへ)(やかた)()きにける。
108 (この)(しま)はネルソン(ざん)山脈(さんみやく)(もつ)東西(とうざい)区劃(くくわく)され、109(ひがし)黄竜姫(わうりようひめ)三五教(あななひけう)宣布(せんぷ)し、110(その)勢力(せいりよく)範囲(はんゐ)となつて()た。111されどネルソン(ざん)以西(いせい)住民(ぢゆうみん)(すくな)く、112猛獣(まうじう)113毒蛇(どくじや)114大蛇(をろち)(むれ)無数(むすう)棲息(せいそく)して、115東半部(とうはんぶ)人民(じんみん)(この)山脈(さんみやく)西(にし)()えた(もの)はなかつた。116(しか)るにネルソン(ざん)以西(いせい)にも相当(さうたう)人類(じんるゐ)棲息(せいそく)して秘密郷(ひみつきやう)(ごと)くなつて()た。117(きは)めて獰猛(だうまう)勇敢(ゆうかん)なる人種(じんしゆ)にして、118男子(だんし)()(たけ)八九尺(はちくしやく)119女子(ぢよし)(いへど)七八尺(しちはつしやく)(くだ)(もの)はない、120巨人(きよじん)棲息地(せいそくち)である。121男子(だんし)女子(ぢよし)(のこ)らず顔面(がんめん)文身(いれずみ)をなし、122一見(いつけん)して男女(だんぢよ)区別(くべつ)(はん)(がた)(ぐらゐ)である。123()()()みて(こし)周囲(まはり)(おほ)ひ、124(その)()全部(ぜんぶ)赤裸(まつぱだか)にして、125赤銅(しやくどう)(ごと)皮膚(ひふ)(いう)()れり。
126 (いろ)(くろ)(かほ)(あを)文身(いれずみ)をなし()(こと)とて、127(じつ)(なん)とも()へぬ(おそ)ろしき容貌(ようばう)(ばか)りなりき。128猛獣(まうじう)129大蛇(だいじや)(おそ)れて近寄(ちかよ)らざる(やう)との注意(ちゆうい)より、130()くの(ごと)文身(いれずみ)をなしゐるなり。131(ゆゑ)(この)()美男子(びだんし)()へば(もつと)獰猛(だうまう)醜悪(しうあく)なる面貌(めんばう)持主(もちぬし)にして、132酋長(しうちやう)たるべき(もの)一見(いつけん)して(おに)(ごと)くなり。133頭部(とうぶ)には諸獣(しよじう)(つの)付着(ふちやく)し、134()には石造(いしづく)りの(やり)(たづさ)へ、135旅行(りよかう)する(とき)(すくな)くとも五六人(ごろくにん)同伴(つれ)()ければ、136一歩(いつぽ)(そと)()ないと()風習(ふうしふ)である。137住宅(ぢゆうたく)(おも)山腹(さんぷく)(あな)穿(うが)ち、138芭蕉(ばせう)(ごと)(だい)なる()()()()めて(しとね)となし、139食物(しよくもつ)()()140(やま)(いも)141(まつ)()(とう)(もつ)常食(じやうしよく)となしゐるなり。142山間(さんかん)()魚類(ぎよるゐ)(じつ)珍味(ちんみ)にして、143一生(いつしやう)(あひだ)一二回(いちにくわい)(くち)にするを()ば、144(じつ)豪奢(がうしや)生活(せいくわつ)()はるる(くらゐ)なり。145谷川(たにがは)(のぼ)(きた)るミースと()五寸(ごすん)(ばか)りの(さかな)146(とき)あつて捕獲(ほくわく)するのみにして、147魚類(ぎよるゐ)姿(すがた)()(こと)(はなは)(まれ)なり。148(うさぎ)149山犬(やまいぬ)150山猫(やまねこ)などを捕獲(ほくわく)し、151()れを最上(さいじやう)珍味(ちんみ)とし()たるなり。
152 されどジヤンナイ(けう)教理(けうり)は、153動物(どうぶつ)(にく)()(こと)厳禁(げんきん)しあるを(もつ)て、154()(この)(きん)(やぶ)(もの)は、155焦熱地獄(せうねつぢごく)(おちい)るとの信仰(しんかう)(いだ)き、156容易(ようい)(くら)(こと)()()れり。157一度(いちど)肉食(にくしよく)(をか)せし(もの)は、158(その)(むれ)より放逐(ほうちく)され、159谷川(たにがは)(ほとり)()ひやらるる(こと)となれり。160(この)肉食(にくしよく)(をか)()退(やら)はれたる(もの)は、161ネルソン(ざん)西麓(せいろく)(ひろ)谷間(たにま)(あつ)まり(きた)り、162(かみ)(つみ)(しや)する(ため)酋長(しうちやう)(むすめ)照姫(てるひめ)教主(けうしゆ)(あふ)ぎ、163ジヤンナイ(けう)()て、164醜穢(しうわい)罪人(ざいにん)(ばか)りに(たい)し、165謝罪(しやざい)(みち)(をし)()たりける。166肉食(にくしよく)せざる(もの)(いづ)れも(やま)中腹(ちうふく)以上(いじやう)住居(ぢゆうきよ)(かま)へ、167豊富(ほうふ)なる()()常食(じやうしよく)となし、168安楽(あんらく)なる月日(つきひ)(おく)りゐたり。169谷底(たにぞこ)には猛獣(まうじう)170大蛇(をろち)171毒蛇(どくじや)(おほ)(あつ)まり、172(じつ)危険(きけん)(きは)まる湿地(しつち)なりけり。
173 (この)谷底(たにそこ)照姫(てるひめ)教主(けうしゆ)とせるジヤンナイ(けう)本山(ほんざん)()てられ、174数多(あまた)信徒(しんと)朝夕(あさゆふ)祈願(きぐわん)()らしつつあつた。175ジヤンナイ(けう)信条(しんでう)は………我等(われら)はアールの(かみ)(きん)(をか)せし罪人(つみびと)なれば、176死後(しご)(かなら)根底(ねそこ)(くに)(くるし)みを()くる(もの)なれば、177(かみ)(いの)りて(つみ)(しや)し、178来世(らいせ)()(のが)るべきもの……と(かた)(しん)じてゐたるなり。179さうして……(やが)鼻頭(びとう)(あか)(かみ)180(この)()降臨(かうりん)する(こと)あらむ。181()我等(われら)救世主(きうせいしゆ)にして、182(てん)より我等(われら)信仰(しんかう)(あは)れみ天降(あまくだ)(たま)ふものなり……と、183照姫(てるひめ)(をしへ)(かた)(しん)じ、184(とき)(きた)るを()ちつつありける。185さうして(はな)(あか)生神(いきがみ)はオーストラリヤ全島(ぜんたう)支配(しはい)し、186霊肉(れいにく)(とも)に、187我等(われら)(すく)(もの)との信念(しんねん)保持(ほぢ)して、188救世主(きうせいしゆ)(くだ)るを旱天(かんてん)雲霓(うんげい)(のぞ)むが(ごと)()()たりしなり。
189 ()かる(ところ)へネルソン山上(さんじやう)のレコード(やぶ)りの強風(きやうふう)()きまくられ、190高山(かうざん)(いただ)きを数多(あまた)()えて(いま)(この)ジヤンナの(ひろ)谷間(たにま)墜落(つゐらく)したれば、191(あや)しき人物(じんぶつ)(くだ)(きた)れるものかなと、192(をり)から()(あは)せたる十数人(じふすうにん)男女(だんぢよ)は、193友彦(ともひこ)人事不省(じんじふせい)となれる肉体(にくたい)藤蔓(ふぢづる)(もつ)()みたる寝台(しんだい)()せ、194ジヤンナイ(けう)本山(ほんざん)(かつ)()みぬ。195数多(あまた)信徒(しんと)物珍(ものめづら)しげに(あつま)(きた)り、196(みづ)()ませ、197()でさすり、198()()げ、199(あし)(うご)かしなどして、200やうやうに蘇生(そせい)せしめたり。
201 友彦(ともひこ)(この)(とき)(すで)失心(しつしん)し、202血液(けつえき)循環(じゆんかん)(ほとん)休止(きうし)し、203全身(ぜんしん)蒼白色(さうはくしよく)(かは)()たり。204照姫(てるひめ)(いち)弟子(でし)(きこ)えたるチーチヤーボールは、205(すぐ)れて(だい)(をとこ)にして、206(くち)(ほほ)(なかば)まで引裂(ひきさ)け、207(はな)(おほ)きく、208白目勝(しろめがち)(だい)なる(まなこ)所有者(しよいうしや)なりき。209教主(けうしゆ)照姫(てるひめ)(すこ)しの文身(いれずみ)もなさず、210比較的(ひかくてき)(いろ)(しろ)く、211(やや)赤味(あかみ)()びたる美人(びじん)なりき。212ジヤンナイ(けう)教主(けうしゆ)たる(もの)は、213天然(てんねん)自然(しぜん)肉体(にくたい)()めざるを(もつ)(をしへ)本旨(ほんし)となし、214数多(あまた)信者(しんじや)より特別(とくべつ)待遇(たいぐう)()け、215尊敬(そんけい)(まと)とせられ()たるなり。
216 友彦(ともひこ)(やうや)くにして正気(しやうき)づき、217四辺(あたり)()れば、218(なん)とも()れぬ(おそ)ろしき、219男女(だんぢよ)区別(くべつ)(わか)らぬ人種(じんしゆ)の、220十重(とへ)二十重(はたへ)(わが)周囲(しうゐ)取巻(とりま)きゐるに(おどろ)き、221如何(いかが)はせむと(かうべ)(かた)思案(しあん)()()たり。222顔色(がんしよく)(やうや)(もと)(ふく)し、223身体(しんたい)一面(いちめん)血色(けつしよく)よくなると(とも)に、224(はな)(さき)はいやが(うへ)にも(あか)くなり()たりぬ。
225 チーチヤーボールは大勢(おほぜい)(むか)ひ、
226『オーレンス、227サーチライス』
228()ひける。229(この)意味(いみ)は『吾々(われわれ)救世主(きうせいしゆ)なり』と()意味(いみ)なり。230一同(いちどう)(こし)(かが)め、231両手(りやうて)(あは)せ、232友彦(ともひこ)(むか)つてしきりに何事(なにごと)口々(くちぐち)(さけ)(なが)ら、233落涙(らくるゐ)しゐる。234チーチヤーボールは、
235『オーレンス、236サーチライス』
237繰返(くりかへ)繰返(くりかへ)()ふ。238友彦(ともひこ)合点(がてん)()かねども、239(この)土人(どじん)()(けつ)して(われ)虐待(ぎやくたい)するものにあらず、240(めづ)らしげに(われ)天降人種(てんかうじんしゆ)誤信(ごしん)し、241感涙(かんるゐ)(むせ)ぶものならむと(おも)ひ、242日頃(ひごろ)山師気(やましげ)発揮(はつき)し、243(みぎ)()(にぎ)人差指(ひとさしゆび)()て、244(てん)()して、
245『ウツポツポー、246ウツポツポー』
247二声(ふたごゑ)(さけ)びてみたり。248チーチヤーボールを(はじ)一同(いちどう)(その)(こゑ)(おう)じて、
249『ウツポツポー、250ウツポツポー、251オーレンス、252サーチライス』
253(こゑ)(そろ)へて(さけ)()しぬ。254(その)(こゑ)(たに)木霊(こだま)(ひび)き、255(むか)(がは)(たに)にも山彦(やまびこ)(おな)(やう)言霊(ことたま)応酬(おうしう)する。256土人(どじん)(また)もや(こゑ)する(はう)(むか)つて(まへ)言葉(ことば)繰返(くりかへ)しける。
257 友彦(ともひこ)(やや)安心(あんしん)したるが、258(この)ジヤンナの(さと)言語(げんご)(つう)じないに(いささ)当惑(たうわく)(かん)じたり。259されど頓智(とんち)のよい友彦(ともひこ)は……(なに)260(かへつ)天降人種(てんかうじんしゆ)地上(ちじやう)言葉(ことば)(つう)ぜざるが一層(いつそう)尊貴(そんき)観念(かんねん)(あた)ふるならむと決心(けつしん)し、
261『アオウエイ、262カコクケキ、263サソスセシ、264……』
265五十音(ごじふおん)繰返(くりかへ)繰返(くりかへ)(とな)()したり。266老若男女(らうにやくなんによ)一同(いちどう)友彦(ともひこ)言葉(ことば)()いて『アオウエイ』と異口同音(いくどうおん)(とな)()す。267友彦(ともひこ)(やうや)空腹(くうふく)(かん)じ、
268()れに(しよく)(あた)へよ』
269()ふ。270されど郷人(さとびと)(みみ)には一人(ひとり)として了解(れうかい)するものなく、271呆然(ばうぜん)として友彦(ともひこ)(かほ)心配(しんぱい)げに打眺(うちなが)めてゐたり。272友彦(ともひこ)自分(じぶん)(くち)(みぎ)()(おさ)へてみするに、273一同(いちどう)(おな)じく自分(じぶん)()各自(めいめい)(くち)(おさ)へゐる。274友彦(ともひこ)は、
275(なに)()(もの)があれば()つて()いツ』
276()ふ。277(また)一同(いちどう)は、
278(なに)()(もの)があれば()つて()いツ』
279(めう)(なまり)(さけ)ぶ。
280 (この)(とき)大勢(おほぜい)(こゑ)尋常(ただ)ならぬに不審(ふしん)(おこ)し、281二三(にさん)侍女(じぢよ)(ともな)(あら)はれ(きた)りしは、282ジヤンナイ教主(けうしゆ)テールス(ひめ)照姫(てるひめ))なりき。283友彦(ともひこ)(かほ)()るより(たちま)(こら)()れぬ(やう)(ゑみ)(ふく)み、284友彦(ともひこ)()(にぎ)りぬ。285友彦(ともひこ)(おに)(やう)人間(にんげん)(むれ)(なか)にも、286()かる(うる)はしき女性(ぢよせい)のあるかと(おどろ)(なが)ら、287彼女(かれ)がなす(まま)(まか)()たり。288テールス(ひめ)侍女(じぢよ)何事(なにごと)命令(めいれい)したるに、289三人(さんにん)侍女(じぢよ)左右(さいう)()()り、290一人(ひとり)(こし)()し、291テールス(ひめ)(さき)()ち、292穴居(けつきよ)民族(みんぞく)()ず、293蔦葛(つたかづら)(もつ)(しば)りつけたる木造(もくざう)(ひろ)(いへ)(みちび)きける。294友彦(ともひこ)意気(いき)揚々(やうやう)として、295天下(てんか)色男(いろをとこ)気取(きど)りになりて、296(おく)()(ふか)(みちび)かれ()く。
297 (おく)()には立派(りつぱ)斎殿(さいでん)(まう)けられてあり、298()()れぬ(うる)はしき果物(くだもの)299小山(こやま)(ごと)()(かさ)(そな)へられありぬ。300テールス(ひめ)(その)(なか)紅色(べにいろ)果物(くだもの)(ひと)取出(とりだ)し、301侍女(じぢよ)(めい)じ、302(いし)包丁(はうちやう)(もつ)(ふた)つに()らしめ、303さうして(ひと)つは自分(じぶん)()ひ、304(ひと)つは友彦(ともひこ)()へと、305仕方(しかた)をして()せたり。306友彦(ともひこ)(よろこ)空腹(すきばら)(こと)とて、307かぶり()(やう)(またた)(うち)(たひら)げにける。308これはコーズと()果物(くだもの)()で、309(この)(さと)(ただ)一本(いつぽん)より()大切(たいせつ)なる()果物(くだもの)なりき。310二年目(にねんめ)(あるひ)三年目(さんねんめ)(わづ)かに(ひと)(ふた)(みの)(くらゐ)のものにして、311(この)コーズの()(みの)りたる(とし)(かなら)(この)(さと)芽出度(めでた)(こと)ありと(つた)へられ()たり。312そしてテールス(ひめ)(ふた)つに()つて友彦(ともひこ)()はしたるは、313(えう)するに結婚(けつこん)儀式(ぎしき)なりけり。314数多(あまた)男女(だんぢよ)雪崩(なだれ)(ごと)追々(おひおひ)(この)()(あつ)まり(きた)り「ウローウロー」と(うれ)しさうに(さけ)び、315()()(をど)(くる)ひゐる。316()れは救世主(きうせいしゆ)降臨(かうりん)(しゆく)しテールス(ひめ)結婚(けつこん)(よろこ)(こゑ)なりけり。
317 テールス(ひめ)救世主(きうせいしゆ)降臨(かうりん)夫婦(ふうふ)結婚(けつこん)盛典(せいてん)(しゆく)する(ため)()つて(うた)(はじ)めたり。318その(うた)
319『オーレンス、サーチライス
320ウツポツポ、ウツポツポ
321テールスナイス、テーナイス
322テーリスネース、テーネース
323ウツパツパ、ウツパツパ
324パークパーク、ホースホース、エーリンス
325カーチライト、トーマース
326タリヤタラーリヤ、トータラリ
327タラリータラリー、リートーリートー、ユーカ
328シンジヤン、ジヤンジヤ、ベース
329ヘース、ヘースク、ツーターリンス
330イーリクイーリク、イーエンス
331ジヤイロパーリスト
332ポーポー、パーリスク
333ターウーインス、エーリツクチヤーリンスク、パーパー』
334(うた)ひける。335友彦(ともひこ)(なん)(こと)だか合点(がつてん)()かず、336されど(けつ)して(わる)(こと)ではない、337(いはひ)言葉(ことば)だと(こころ)(おも)ひぬ。338(この)意味(いみ)総括(そうくわつ)して()へば、
339天来(てんらい)救世主(きうせいしゆ)(あら)はれ(たま)ひ、340人間(にんげん)としても(じつ)立派(りつぱ)英雄(えいゆう)豪傑(がうけつ)なり。341()れは(この)(さと)信仰(しんかう)中心(ちうしん)人物(じんぶつ)342さうして(じつ)(をんな)として(はづ)かしからぬ准救世主(じゆんきうせいしゆ)である。343(なれ)(くだ)(きた)るを(くび)(なが)くして(かみ)(いの)()つて()りました。344最早(もはや)(この)谷間(たにま)(さと)如何(いか)なる大蛇(をろち)()ても猛獣(まうじう)()ても、345如何(いか)なる悪魔(あくま)でも、346(けつ)して(おそ)るるに()りない。347(わたくし)立派(りつぱ)(をつと)()(この)(うへ)(よろこ)びはない。348暗夜(あんや)灯火(とうくわ)(てん)じたやうな心持(こころもち)になつて()た。349今日(けふ)老若男女(らうにやくなんによ)(たれ)(かれ)貴方(あなた)御降臨(ごかうりん)()て、350()()(あし)()(ところ)()らず(よろこ)んでゐます。351どうぞ千年(せんねん)万年(まんねん)此郷(ここ)御鎮(おしづ)まり(くだ)さいまして、352末永(すえなが)夫婦(ふうふ)(ちぎり)(むす)び、353(この)(さと)(すく)(ぬし)となつて人民(じんみん)(まも)つて(くだ)さい。354アヽ有難(ありがた)い、355(うれ)しい。356(あま)岩戸(いはと)(ひら)けた(やう)な……(いや)(まつた)岩戸(いはと)(ひら)けました。357我々(われわれ)一同(いちどう)(これ)より安心(あんしん)して月日(つきひ)(おく)ります。358(まへ)(はな)(あたま)(あか)いのが()(かみ)(くに)から御降(おくだ)りなされた証拠(しようこ)だ。359どうぞ末永(すえなが)(わらは)(はじ)一同(いちどう)(もの)可愛(かあい)がつて(くだ)さい』
360()意味(いみ)感謝(かんしや)(ことば)なりけり。361友彦(ともひこ)返答(へんたふ)せずには()られないと、362()けぬ気腰(きごし)になりて……天降人種(てんかうじんしゆ)気取(きど)りで(わか)らぬ(こと)()つてやる(はう)(かへつ)有難(ありがた)がるだらう、363土人(どじん)言語(げんご)()らずに、364(なまじ)ひに真似(まね)をして(かへつ)軽蔑(けいべつ)さるるも不利益(ふりえき)だ……と(こころ)(おも)(さだ)め、365さも応揚(おうやう)態度(たいど)で、
366『……アーメンス、ヨーリンス
367フーララリンス、サーチライス
368スーツクスーツク、ダーインコーウンス
369カーブーランス、ネーギーネーブーカー
370ナーハーネース、エンモース
371水菜(みづな)嫁菜(よめな)蒲公英(たんぽぽ)セーリンス
372ナヅナ、ヤーマンス、ノンインモー
373ドンジヨー、ウナーギー、フーナモロコ、
374コーイ、ナマヅ、タコドービンヒツサゲタ、
375ナイス、ネース、ローマンス、
376ホートーホートー、ローレンス
377ピーツク、ピーツク、ヒーバーリース』
378(うた)()まし()()たり。379一同(いちどう)(なん)(こと)だか(わけ)(わか)らぬ。380されど(てん)より(くだ)りし救世主(きうせいしゆ)言葉(ことば)有難(ありがた)がり、381随喜(ずいき)(なみだ)(こぼ)()たりける。
382 (この)(とき)(また)もや十数人(じふすうにん)土人(どじん)(かつ)がれて、383(この)()()たりしは玉治別(たまはるわけ)なりき。384玉治別(たまはるわけ)友彦(ともひこ)言葉(ことば)半分(はんぶん)ばかり()いて可笑(をか)しさに()()し「プーツプーツ」と(つばき)()ばしける。385一同(いちどう)(おな)じく「プーツプーツ」と()つて友彦(ともひこ)目蒐(めが)けて唾液(つば)()()ける。386友彦(ともひこ)唾液(つば)夕立(ゆふだち)()うた(やう)になつて、
387(たれ)かと(おも)へば玉治別(たまはるわけ)さま、388あまりぢやないか、389馬鹿(ばか)にしなさるな』
390『オイ友彦(ともひこ)さま、391随分(ずゐぶん)好遇(もて)たものだなア。392コンナ ナイスを女房(にようばう)()ち、393無鳥郷(むてうきやう)蝙蝠(へんぷく)(くら)して()れば、394マア無事(ぶじ)だらうよ』
395玉治別(たまはるわけ)さま、396チツト()()かして(くだ)さいな。397折角(せつかく)ここの大将(たいしやう)(この)(あか)(はな)()れて、398コンナ面白(おもしろ)(ゆめ)()()るのに、399しようもない(こと)()うて(くだ)さると、400サツパリ()けが(あら)はれるぢやないか』
401『ナアニ、402言語(げんご)(つう)じない(ところ)だ。403(なに)()つたつて(かま)ふものか。404わしも(ひと)言霊(ことたま)をやつて()ようかな』
405『やるのも(よろ)しいが、406なまかぢりに此郷(ここ)言葉(ことば)使(つか)つちや()けませぬよ』
407『ソンナこたア(たま)さま(ひやく)承知(しようち)だ。408(わら)つちや()けないよ』
409『ナニ(わら)ふものかい、410やつて()(たま)へ。411わしは最早(もはや)此郷(ここ)御大将(おんたいしやう)だから、412あまり心安(こころやす)さうに()つて()れては(こま)るよ。413第一(だいいち)(まへ)態度(たいど)から(なほ)して、414わしの家来(けらい)(やう)(ふう)をして()せて()れよ』
415 玉治別(たまはるわけ)は、
416『ヨシ面白(おもしろ)い』
417()(なが)言語(げんご)(つう)ぜざるを(さいは)ひ、
418『ジヤンナの郷人(さとびと)よ、419玉治別(たまはるわけ)(いま)(まを)(こと)をよつく()けよ。420(この)友彦(ともひこ)()(をとこ)はメソポタミヤの顕恩郷(けんおんきやう)(おい)て、421バラモン(けう)副棟梁(ふくとうりやう)鬼熊別(おにくまわけ)(むすめ)小糸姫(こいとひめ)十五才(じふごさい))を巧言(かうげん)(もつ)てチヨロまかし……』
422『コレコレ(たま)さま、423あまりぢやないか』
424(なん)でも()いぢやないか。425(わか)らぬ(こと)だから、426マア(だま)つて()かうよ……それから錫蘭(シロ)(しま)随徳寺(ずゐとくじ)をきめ()み、427一年(いちねん)ばかり(くら)して()たが、428赤鼻(あかはな)出歯(でば)鰐口(わにぐち)に、429流石(さすが)小糸姫(こいとひめ)愛想(あいさう)をつかし、430(くろ)(ばう)のチヤンキー、431モンキーを(やと)ひ、432(ふね)()つて(ひと)(じま)まで()げて()た。433……(はなし)(もと)(もど)つて友彦(ともひこ)()(やつ)434浪速(なには)(さと)(おい)三百両(さんびやくりやう)詐欺(さぎ)(いた)し、435(つぎ)淡路(あはぢ)洲本(すもと)酋長(しうちやう)東助(とうすけ)不在(るす)(うかが)ひ、436女房(にようばう)(まへ)偽神憑(にせかむがかり)(いた)し、437陰謀(いんぼう)(たちま)露見(ろけん)して雪隠(せんち)(あな)より()()し……』
438『コラコラ()加減(かげん)()めて()れぬかい。439あまりぢやないか』
440『ナアニ、441(かま)(こと)があるものか。442あれを()よ。443有難(ありがた)がつて(なみだ)(なが)して()いてるぢやないか。444………マダマダ(おく)はありますけれど、445()今晩(こんばん)()れにて(とど)めをき、446(また)明晩(みやうばん)ゆーるゆるとお()きに(たつ)しまする。447(みな)さま、448吶弁(とつべん)吾々(われわれ)(この)物語(ものがたり)449よくも神妙(しんめう)にお()(くだ)さいました。450(しか)(なが)用心(ようじん)なさらぬと、451(この)友彦(ともひこ)険難(けんのん)ですよ。452……テールス(ひめ)さま、453此奴(こいつ)女子惚(をなごのろ)けの後家盗人(ごけぬすびと)454グヅグヅしてると、455そこらの侍女(じぢよ)(みんな)チヨロまかし、456あなたに(たこ)揚壺(あげつぼ)()はす(こと)()()るより(あきら)かですよ。457アツハヽヽヽ』
458大口(おほぐち)()けて(わら)()ける。459友彦(ともひこ)仕方(しかた)がなしに自分(じぶん)もワザと(わら)ひゐる。460チーチヤーボールは(この)()にヌツと(あら)はれ………「神様(かみさま)大変(たいへん)御機嫌(ごきげん)だ。461(しか)(いま)()でになつた(かみ)余程(よほど)立派(りつぱ)(かた)だが、462(しか)家来(けらい)(ちがひ)ない。463(その)証拠(しようこ)には(はな)(さき)がチツトも(あか)くない。464さうして(あま)(くち)(ちひ)さすぎる」……と(やや)下目(しため)見下(みおろ)し、465友彦(ともひこ)(おな)()()いて()玉治別(たまはるわけ)()()つて、466一段下(いちだんした)(せき)(みちび)き、
467『ウツポツポ ウツポツポ、468サーチライス、469シーリス シーリス』
470合掌(がつしやう)する。471()(もの)一同(いちどう)に、
472『シーリス シーリス』
473()ふ。474これは「救世主(きうせいしゆ)のお脇立(わきだち)……御家来(ごけらい)」と()意味(いみ)なり。475玉治別(たまはるわけ)(その)()(さと)り、
476『オイ(とも)477馬鹿(ばか)にしよるな。478(おれ)眷属(けんぞく)だと()ひよつて、479貴様(きさま)それで大将面(たいしやうづら)して()つて気分(きぶん)()いのか』
480(なん)だか奥歯(おくば)(もの)がこまつた(やう)()もするし、481(しり)(くそ)(はさ)んどる(やう)心持(こころもち)もするのだ、482マアここはお(まへ)辛抱(しんばう)して家来(けらい)になつて()れ』
483 玉治別(たまはるわけ)嘲弄(からかひ)半分(はんぶん)に、
484『オイ(とも)485(その)(はう)(おれ)一段下(いちだんした)につけ。486貴様(きさま)天来(てんらい)救世主(きうせいしゆ)と、487(はな)(あか)いお(かげ)(しん)ぜられてるのだから、488(おれ)(うへ)(あが)つた(ところ)貴様(きさま)(した)だとは(おも)ひはせまい。489さうしたら、490貴様(きさま)(くらゐ)()ちず、491(おれ)はモ(ひと)(うへ)神様(かみさま)(しん)じられて、492面白(おもしろ)芝居(しばゐ)出来(でき)るから、493一遍(いつぺん)(おれ)(はう)()いて(をが)みて()よ』
494『さうだと()つて、495まさかテールス(ひめ)(まへ)で、496ソンナ不態(ぶざま)(こと)出来(でき)るものか。497そこはチツト忍耐(がまん)して()れぬと(こま)るよ』
498『それならそれでよし、499(おれ)には(かんが)へがある。500貴様(きさま)旧悪(きうあく)此郷(ここ)言葉(ことば)素破抜(すつぱぬ)いてやらうか』
501『ヘン、502(えら)さうに()ふない。503此郷(ここ)言葉(ことば)がさう(きふ)(わか)るものか。504(なん)なと()へ、505(わか)りつこないワ』
506『ヨシ、507(おれ)(いま)神様(かみさま)から言葉(ことば)(なら)つたのだ……オーレンス、508サーチライス、509ウツポツポ ウツポツポ、510イーエス イーエス、511エツポツポ エツポツポ、512エツパツパ……』
513 友彦(ともひこ)はあわてて、
514『コラコラ、515しようもない(こと)()うて()れるない。516何時(いつ)()(おぼ)えよつたのだらう。517モウ(この)(うへ)治安(ちあん)妨害(ばうがい)だから、518弁士(べんし)中止(ちうし)(めい)じます』
519『とうとう(よわ)りよつたなア。520サア(おれ)合掌(がつしやう)するのだ。521下座(げざ)(すわ)れ』
522 友彦(ともひこ)はモヂモヂし(なが)ら、523(しり)(くそ)(はさ)んだ(やう)調子(てうし)で、524(あを)(かほ)して(たたず)()る。525テールス(ひめ)(なん)(おも)つたか、526友彦(ともひこ)()()り、527(しば)(つく)つた押戸(おしど)()け、528(おく)()姿(すがた)(かく)しける。
529『エー到頭(たうとう)養子(やうし)になりよつたなア。530淡路島(あはぢしま)養子(やうし)になり(そこな)つて(つら)(さら)されよつたが、531熱心(ねつしん)()ふものは(えら)いものだナア。532到頭(たうとう)鼻赤(はなあか)のお(かげ)でコンナ(ところ)()()つて、533怪態(けつたい)(わる)い、534テールス(ひめ)()()()つて()ましこみて這入(はい)りよつた。535(しか)(なが)彼奴(あいつ)可憐相(かはいさう)だ。536モウこれぎりで嘲弄(からか)(こと)()めてやらう』
537 チーチヤーボールは玉治別(たまはるわけ)(まへ)()て、
538『オーレンス、539サーチライス、540シーリス シーリス』
541()(なが)ら、542()()つて(つぎ)()(みちび)き、543果物(くだもの)(さけ)(そそ)いで玉治別(たまはるわけ)(すす)めける。544玉治別(たまはるわけ)(みぎ)()(たか)()()げ、
545『アマアマ』
546()ひつつ太陽(たいやう)()(しめ)したり。547ここは(つぎ)第三番目(だいさんばんめ)()で、548屋根(やね)()く、549(ただ)石盤(せきばん)(やう)(いし)奇麗(きれい)()()めてある露天(ろてん)座敷(ざしき)なり。550鬱蒼(うつさう)たる樹木(じゆもく)天然(てんねん)屋根(やね)をなし()たり。551チーチヤーボールは(この)樹上(じゆじやう)(のぼ)れと(めい)じたと早合点(はやがつてん)し、552(ましら)(ごと)樹上(じゆじやう)()(のぼ)り、553テールス(ひめ)寵愛(ちようあい)()つときのコーズの()(ふた)(ばか)(のこ)つて()るのを、554(ひと)つむしり(ふところ)(ねぢ)こみたり。555(ふところ)()つても、556(あら)(あら)(つる)()みし(かたち)ばかりの着物(きもの)なり。557コーズは着物(きもの)()()けてバサリと()ちたる途端(とたん)に、558玉治別(たまはるわけ)面部(めんぶ)にポカンと(あた)りぬ。559玉治別(たまはるわけ)は「アツ」と(さけ)んで俯向(うつむ)けに(たふ)れ、560(はな)(したた)()ち、561(なみだ)をこぼし気張(きば)()る。562チーチヤーボールは(おどろ)いて樹上(じゆじやう)(くだ)(きた)り、563玉治別(たまはるわけ)(まへ)犬突這(いぬつくばひ)となりて無礼(ぶれい)拝謝(はいしや)するものの(ごと)く、
564『ワーク ワーク、565ユーリンス ユーリンス』
566泣声(なきごゑ)になり合掌(がつしやう)()たり。567(しばら)くして玉治別(たまはるわけ)(かほ)をあげたるに、568(はな)(すこ)しく(はれ)あがり、569友彦(ともひこ)以上(いじやう)赤鼻(あかはな)急変(きふへん)したり。570チーチヤーボールは(おどろ)いて()びあがり、
571『ウツポツポ ウツポツポ、572オーレンス、573サーチライス、574アーリンス アーリンス』
575(さけ)()しぬ。576(その)意味(いみ)は、
577(いま)テールス(ひめ)(をつと)となつた救世主(きうせいしゆ)より一層(いつそう)立派(りつぱ)救世主(きうせいしゆ)だ。578縁談(えんだん)(むす)(とき)(もち)ふる果実(このみ)(あた)つて、579(かく)(ごと)立派(りつぱ)(はな)になつたのは、580(まつた)神様(かみさま)思召(おぼしめし)であらう』
581無理(むり)無体(むたい)玉治別(たまはるわけ)()()つてテールス(ひめ)居間(ゐま)(むか)()れたり。582()れば友彦(ともひこ)立派(りつぱ)なる(かんむり)()せられ、583(つる)()みたる衣服(いふく)着流(きなが)し、584()()(ふんどし)()め、585傲然(がうぜん)(かま)()たり。586(そば)にテールス(ひめ)はジヤンナイ(けう)神文(しんもん)を、
587『タータータラリ、588タータラリ、589トータラリ、590リートー リートー トータラリ』
591(とな)()る。592神文(しんもん)(をは)るを()つて、593チーチヤーボールはテールス(ひめ)(むか)ひ、
594『オーレンス、595サーチライス、596アーリンス アーリンス』
597言葉(ことば)をかけたり。598(この)(こゑ)にテールス(ひめ)(あと)()()き、599玉治別(たまはるわけ)(あか)(はな)()打驚(うちおどろ)き……「アヽ今日(けふ)(なん)たる立派(りつぱ)なる神様(かみさま)がお()(あそ)ばす()だらう。600それにしても(あと)からお(くだ)りになつた神様(かみさま)(はう)余程(よほど)立派(りつぱ)だワ。601(おな)(をつと)()つのなら立派(りつぱ)(かた)()たなくては、602神様(かみさま)申訳(まをしわけ)がない。603(すこ)しく(くち)(ちひ)さいなり、604身長(せい)(ひく)いけれど、605(なん)とはなしに(むし)()御方(おかた)だ」……と(あな)のあく(ほど)606玉治別(たまはるわけ)(かほ)見惚(みと)れ、607(こころ)(なか)にさげ(くら)べをなし()たりけり。
608『オイ(とも)609どうだ、610(おれ)(はな)()い、611貴様(きさま)余程(よほど)此処(ここ)()鼻高(はなだか)になりよつたが、612(おれ)正真正銘(しやうしんしやうめい)鼻赤(はなあか)だ。613貴様(きさま)(あか)さは……(じつ)(ところ)()へば……安物(やすもの)染料(せんれう)()めた(やう)大変(たいへん)(いろ)(うす)くなつて()るぞ。614(おれ)(はな)はまるで赤林檎(あかりんご)(はだ)(やう)だ。615サア(はな)(くら)べをしようかい。616(あか)ハナには()()くと()つて、617子供(こども)でさへも(よろこ)ぶんだぞ。618(おれ)(はな)(いろ)百点(ひやくてん)とすれば、619貴様(きさま)(はな)はマア四十点(よんじつてん)スウスウだ。620(いま)にテールス(ひめ)さまが審神(さには)をして(くだ)さるから、621マア(たのし)んで()たがよからう。622キツト団扇(うちは)(おれ)(はう)へあがるこたア、623請合(うけあひ)西瓜(すゐくわ)だ。624(なか)までマツカイケだ……たーかい、625やーまかーら、626谷底(たにそこ)()ればなア、627うーりやなあすびイイの、628ハナ629あかいな、630アラどんどんどん、631コラどんどんどん、632……どんどんでテールス(ひめ)花婿(はなむこ)さまは、633玉治別(たまはるわけ)九分九厘(くぶくりん)(きま)つて()るワ。634それだから、635(この)(おに)(やう)立派(りつぱ)(つら)をして、636チーチヤーボールさんとやらが貴様(きさま)結婚(けつこん)したにも(かか)はらず、637(おれ)(みちび)いて此室(ここ)(つれ)()()れたのだ。638エツヘン』
639(はな)(さき)握拳(にぎりこぶし)(ふた)(かさ)ねて、640キリキリツと二三遍(にさんぺん)(まは)つて()せたりける。
641洒落(しやれ)()加減(かげん)にして()かぬかい。642何程(なにほど)(うつく)しうても、643()つた(はな)(すぐ)()げて(しま)ふぞ。644(この)(あつ)(くに)(あせ)一二度(いちにど)かいて()よ。645(たちま)(ばけ)(あら)はれるワ。646(おれ)(はな)(うま)れつき、647()(そこ)から()えぬきの赤鼻(あかはな)だ。648ヘン、649自転倒島(おのころじま)(その)(ほか)では……鼻赤々々(はなあかはなあか)……と馬鹿(ばか)にしられて、650あちらの(をんな)にも此方(こちら)(をんな)にも(はな)あかされて()たが、651どんなものだい。652貴様(きさま)(はな)はたつた(いま)(ばけ)(あら)はれて、653(はら)(ばこ)()ふのだ』
654馬鹿(ばか)()へ、655ナンボ()いても()いても、656()ちぬのだ。657(おれ)(にはか)(てん)神様(かみさま)御降臨(ごかうりん)(あそ)ばして御憑(おうつ)りなさつた、658コノハナ(あか)(ひめ)御化身(ごけしん)だぞ。659貴様(きさま)があまり詐欺(さぎ)泥棒(どろばう)して、660()(ところ)()くなり、661(また)斯様(かやう)(ところ)温情(おとな)しい土人(どじん)をチヨロまかさうと(いた)すから、662(てん)大神様(おほかみさま)が、663可憐相(かあいさう)だから、664本当(ほんたう)のコノハナ(あか)(ひめ)玉治別(たまはるわけ)だと()(こと)証明(しようめい)する(ため)に、665(この)(とほ)(あか)くして(くだ)さつたのだ。666(うそ)(おも)ふなら貴様(きさま)()一寸(ちよつと)()いて()よ。667(なか)まで真赤(まつか)けだ』
668『ソンナ真赤(まつか)(うそ)()ふものぢやない』
669 玉治別(たまはるわけ)はヌツと(あご)突出(つきだ)し、670(した)()し、
671『アヽさうでオマツカ672ハナハナ(もつ)赤恥(あかはぢ)をかかし()みませぬなア』
673 テールス(ひめ)はツト()ち、674玉治別(たまはるわけ)(ひだり)()自分(じぶん)右手(みぎて)でグツと(にぎ)り、675二三遍(にさんへん)(ゆす)つた(うへ)今度(こんど)()(はな)(ひだり)()玉治別(たまはるわけ)(みぎ)()(にぎ)り、676(みぎ)(ほほ)玉治別(たまはるわけ)(みぎ)(ほほ)()りつけ、677恋慕(れんぼ)(じやう)十二分(じふにぶん)(しめ)した。678充分(じうぶん)尊敬(そんけい)(きよく)679愛慕(あいぼ)(きよく)(たつ)した(とき)は、680相手(あひて)(ひだり)()自分(じぶん)(みぎ)()(にぎ)るのが方式(はうしき)である。681さうして(ほほ)をすりつけるのは、682(もつと)()()つたと()表証(しるし)であつた。683友彦(ともひこ)(がふ)()やし、684ツカツカと(この)()(すす)()り、685テールス(ひめ)(みぎ)()鷲掴(わしづか)みにグツと(にぎ)り、686(ふた)()(よこ)にしやくつた。687(ひめ)(かほ)をしかめて、688(こし)(かが)め、689そこに平太(へた)らうとした。690玉治別(たまはるわけ)友彦(ともひこ)も、691()せずして(にぎ)つた()(はな)した。692友彦(ともひこ)自分(じぶん)(ほほ)をテールス(ひめ)(ほほ)()てようと()()()うた。693テールス(ひめ)は、
694『イーエス』
695()(なが)ら、696(ちから)(かぎ)りに友彦(ともひこ)()()ばした。697友彦(ともひこ)はヨロヨロとよろめき、698ドスンと尻餅(しりもち)()き、699(ひと)つひつくり(かへ)つて、700居室(ゐま)(はしら)(いや)()(ほど)後頭部(こうとうぶ)(うち)つけ、701「キヤツ」と()つて(その)()にフン()びて(しま)つた。702玉治別(たまはるわけ)703テールス(ひめ)704チーチヤーボールは(おどろ)いて、705(みづ)()(きた)り、706(あたま)から何杯(なんばい)何杯(なんばい)誕生(たんじやう)釈迦(しやか)(やう)に、707()708(はな)709(くち)区別(くべつ)もなく(そそ)()けた。710友彦(ともひこ)は「ウン、711ブー、712ブルブルブル」と(いき)()いた拍子(へうし)に、713鼻汁(はな)()らし、714(はな)から(うす)(まり)(やう)(たま)()()つ、715串団子(くしだんご)(やう)()()した。716テールス(ひめ)(かほ)背向(そむ)けて(うつ)ぶいて(しま)つた。
717 そろそろ玉治別(たまはるわけ)(あか)(はな)()がヨドンだと()え、718紫色(むらさきいろ)になり、719終局(しまひ)には真黒(まつくろ)けになつて(しま)つた。720されど玉治別(たまはるわけ)はヤツパリ鮮紅色(せんこうしよく)(はな)持主(もちぬし)だと(しん)じて()た。721友彦(ともひこ)玉治別(たまはるわけ)(はな)(いろ)(かは)つたのにヤツと安心(あんしん)し、722テールス(ひめ)()をグツと(にぎ)り、723(ひだり)()玉治別(たまはるわけ)(はな)()(しめ)した。724テールス(ひめ)怪訝(けげん)(かほ)して玉治別(たまはるわけ)(なが)めて()る。725玉治別(たまはるわけ)はモ(ひと)悪戯(からか)つてやらうと、726ツカツカと(まへ)(すす)み、727テールス(ひめ)()をグツと(にぎ)り、728(ほほ)()てようとした。729テールス(ひめ)は、
730『イーエス イーエス』
731()ひつつ(ちから)(まか)せて、732玉治別(たまはるわけ)をドツと()した。733玉治別(たまはるわけ)(あと)(ひく)段々(だんだん)()されて、734友彦(ともひこ)同様(どうやう)タヂタヂと逡巡(たじろ)(なが)ら、735(いち)()(なが)くなつて(たふ)れた。736友彦(ともひこ)()()つて、
737『アツハヽヽヽ』
738チーチヤーボール『エツポツポ エツポツポ、739エツパー エツパー、740イーエス イーエス』
741()(なが)ら、742玉治別(たまはるわけ)引起(ひきおこ)し、743(つぎ)()押出(おしだ)して()く。
744大正一一・七・五 旧閏五・一一 松村真澄録)
   
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