霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第三章 魚水心(ぎよすゐしん)〔七八五〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第27巻 海洋万里 寅の巻 篇:第1篇 聖地の秋 よみ:せいちのあき
章:第3章 第27巻 よみ:ぎょすいしん 通し章番号:785
口述日:1922(大正11)年07月22日(旧閏05月28日) 口述場所: 筆録者:外山豊二 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年6月20日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
高姫、黒姫、高山彦は、夏彦、常彦と夕餉を済ませてひそひそ話にふけっている。高姫は夏彦と常彦に、麻邇の宝珠の神業の様子を尋ねた。そして、黄竜姫、蜈蚣姫、友彦、テールス姫らの手柄を聞いて、憤慨する。
そして、玉が聖地に来たのも自分たちを守護する日の出神と竜宮の乙姫のはからいだと嘯き出す。常彦は、それだから言依別教主は、高姫と黒姫が来ないと玉をお披露目できないと言って、二人が来るのを待っているのだ、と高姫に伝えた。
高姫は相好を崩して、言依別もこのごろはやっと出来てきた、と独りごちる。そして、それなら言依別の方からこちらにやってきて、懇願するべきだとまた嘯き出す。夏彦は、なんとか理屈をつけて、高姫・黒姫を動かそうと説得する。
話は杢助の話になり、高姫は杢助をけなし出す。夏彦はそれに同調する振りをして、杢助の本心を高姫・黒姫に諭そうと、たとえ話で説得する。
常彦は、国依別に石魚を持ってこさせたのも、実は言依別教主の指図で、それは高姫・黒姫がまだ寛大な心になっていないのではないか、という懸念から、それを試そうとしたのだ、と明かした。
高姫は、そんな心配は無用だと憤慨し、そこまで言うなら自分の大精神を見せてやる、と言って教主館に行くことをほとんど承諾した。
そこへ外から宣伝歌が聞こえて来て、亀彦が高姫館の門を叩いた。高姫は、今日は来客があるからと言って亀彦を帰した。高姫、黒姫、高山彦は、亀彦も国依別の計略の片棒をかついで後ろめたいのだろう、と笑っている。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm2703
愛善世界社版:63頁 八幡書店版:第5輯 264頁 修補版: 校定版:65頁 普及版:26頁 初版: ページ備考:
001 高姫(たかひめ)002黒姫(くろひめ)003高山彦(たかやまひこ)004夏彦(なつひこ)005常彦(つねひこ)五人(ごにん)は、006四方山(よもやま)(はなし)(ふけ)(なが)晩餐(ばんさん)()ませ、007(まど)()けて(つき)(はい)(なが)ら、008ヒソヒソ(ばなし)(ふけ)つてゐる。
009高姫(たかひめ)夏彦(なつひこ)010常彦(つねひこ)さま、011(まへ)さまは言依別(ことよりわけ)教主(けうしゆ)()いて、012五色(いついろ)御玉(みたま)御迎(おむか)へに秋山彦(あきやまひこ)(やかた)まで()つたぢやありませぬか』
013夏彦(なつひこ)『ハイ()きました。014それはそれは御立派(ごりつぱ)(こと)御座(ござ)いましたよ。015なんでも初稚姫(はつわかひめ)016玉能姫(たまのひめ)017玉治別(たまはるわけ)018久助(きうすけ)019(たみ)五人(ごにん)さまが、020竜宮(りうぐう)(ひと)(じま)諏訪(すは)(みづうみ)(たつ)宮居(みやゐ)とかで、021乙姫(おとひめ)さまから五色(いついろ)結構(けつこう)(たま)御頂(おいただ)きなされ、022それを自分(じぶん)手柄(てがら)にするのも勿体(もつたい)ないと()御精神(ごせいしん)から、023初稚姫(はつわかひめ)さまは(むらさき)(たま)梅子姫(うめこひめ)(さま)御渡(おわた)(あそ)ばされ、024それに(なら)うて四人(よつたり)御方(おかた)黄竜姫(わうりようひめ)025蜈蚣姫(むかでひめ)026友彦(ともひこ)027テールス(ひめ)にその(たま)無言(むごん)(まま)(わた)されたといふ(こと)です。028人間(にんげん)も、029アー()工合(ぐあひ)(わたくし)()(ゆづ)()つて()けば、030何事(なにごと)円満(ゑんまん)()くのですがなア』
031高姫(たかひめ)(なに)ツ、032黄竜姫(わうりようひめ)蜈蚣姫(むかでひめ)033()友彦(ともひこ)にテールス(ひめ)034()んな(やから)がそんな御用(ごよう)をしましたかい。035何程(なにほど)人物(じんぶつ)払底(ふつてい)だと()つても、036あんまり(ひど)いぢやありませぬか。037さうしてその(たま)(いま)聖地(せいち)(をさ)まつてあるだらうな。038竜宮(りうぐう)乙姫(おとひめ)さまの(にく)(みや)039黒姫(くろひめ)さまが此処(ここ)御座(ござ)るのだから、040()はば黒姫(くろひめ)さまが二三年(にさんねん)竜宮(りうぐう)(しま)(わた)つて御仕組(おしぐみ)をして()かれたのだ。041それも()高姫(たかひめ)神様(かみさま)御都合(ごつがふ)で、042黒姫(くろひめ)さまを聖地(せいち)から追出(おひだ)したのが矢張(やつぱり)御用(ごよう)になつて()るのだ。043そんな(こと)(わか)つた(やつ)一人(ひとり)()りますまい。044(なに)()つても杢助(もくすけ)のやうな没分暁漢(わからずや)総務(そうむ)さまだからね』
045夏彦(なつひこ)『それは(たれ)もよく(ぞん)じて()ります。046これは(まつた)()出神(でのかみ)さまや、047竜宮(りうぐう)乙姫(おとひめ)(さま)御蔭(おかげ)(さづ)かつたのだと()つて()ますで』
048高姫(たかひめ)『それは(きま)つて()るぢやないか。049(しか)()出神(でのかみ)(にく)(みや)と、050竜宮(りうぐう)乙姫(おとひめ)さまの(にく)(みや)は、051何方(どなた)ぢやと()(こと)(わか)つて()らねば駄目(だめ)ですよ』
052常彦(つねひこ)『それは()はいでも(きま)つてゐますがな。053系統(ひつぽう)肉体(にくたい)(うつ)らいで何処(どこ)(うつ)らはりませう。054乙姫(おとひめ)さまだつて、055依然(やつぱり)()出神(でのかみ)さまの生宮(いきみや)引添(ひきそ)うて御座(ござ)御方(おかた)(きま)つとるぢやありませぬか。056それで言依別神(ことよりわけのかみ)(さま)信者(しんじや)一同(いちどう)(たま)()けて一度(いちど)(をが)まし()いのだけれど、057肝腎(かんじん)系統(ひつぽう)生宮(いきみや)さまが御帰(おかへ)りになる(まで)058吾々(われわれ)()ける(こと)出来(でき)ないと()つて、059御自分(ごじぶん)何処(どこ)かへ御納(おをさ)めになりました。060貴方(あなた)(ちつ)とも言依別(ことよりわけ)さまの御館(おやかた)顔出(かほだ)しをなさらぬものだから、061()つてゐられるのですよ』
062高姫(たかひめ)言依別(ことよりわけ)大分(だいぶ)(この)(ごろ)改心(かいしん)出来(でき)たと()えますワイ。063()肉体(にくたい)()出神(でのかみ)生宮(いきみや)ぢやと()(こと)徐々(そろそろ)()()いたらしい。064なア竜宮(りうぐう)乙姫(おとひめ)さま、065それに()いても、066(ちつ)(わか)らぬぢやありませぬか。067吾々(われわれ)(たづ)ねに()かずとも、068それが(わか)つた以上(いじやう)()出神(でのかみ)竜宮(りうぐう)乙姫(おとひめ)(さま)御礼(おれい)()ねばならない(はず)だ。069本末(ほんまつ)顛倒(てんたう)(じつ)(はなはだ)しい』
070夏彦(なつひこ)(けつ)して(けつ)して、071言依別(ことよりわけ)(さま)はそんな御考(おかんが)へは(ちつ)とも()いのですが、072貴方(あなた)何時(いつ)言依別(ことよりわけ)奴灰殻(どはひから)だとか、073四足身魂(よつあしみたま)だとか仰有(おつしや)るものだから言依別(ことよりわけ)(さま)は、074貴方(あなた)御宅(おたく)御訪(おたづ)ねなされ()いのは胸一杯(むねいつぱい)になつて()らつしやるのですが、075人手(ひとで)(すくな)いのに、076又々(またまた)秋季大清潔法(しうきだいせいけつはふ)をなさらんならぬ(やう)(こと)(おこ)ると、077御気(おき)(どく)だと()つて(ひか)へて御座(ござ)るのですよ』
078高姫(たかひめ)『そんな御心配(ごしんぱい)()りませぬわ。079()出神(でのかみ)竜宮(りうぐう)乙姫(おとひめ)生宮(いきみや)(わか)(だけ)身魂(みたま)なら、080最早(もはや)四足(よつあし)身魂(みたま)退散(たいさん)して()るに(ちが)ひないから、081高姫(たかひめ)082黒姫(くろひめ)()ちかねてゐるから一遍(いつぺん)御出(おい)でなさいと()つて(くだ)さい。083いろいろと()うて()かしたい(こと)もある。084何程(なにほど)(かしこ)教主(けうしゆ)だと()つても(とし)(わか)経験(けいけん)()社会(しやくわい)大学(だいがく)卒業(そつげふ)せない(ひと)だから、085()はねばならぬ(こと)(やま)(ほど)あるのだけれど、086(また)(うる)さがられると(おも)うて今迄(いままで)()はずに()つたのだよ。087それが本当(ほんたう)なら言依別(ことよりわけ)見上(みあ)げたものぢや。088オツホヽヽヽ』
089夏彦(なつひこ)折角(せつかく)立派(りつぱ)御玉(みたま)(をさ)まつて(みな)信者(しんじや)拝観(はいくわん)したいと()つて()つて()ります。090何卒(どうぞ)その(たま)貴女(あなた)御手(おんて)(ひら)いて(もら)はなければ(たれ)(ひら)(こと)出来(でき)ぬのですから、091何卒(どうぞ)(はや)御機嫌(ごきげん)(なほ)して(にしき)(みや)御参詣(ごさんけい)(うへ)092言依別(ことよりわけ)(さま)御相談(ごさうだん)して(くだ)さいな』
093高姫(たかひめ)『ソリヤ(みち)(ちが)ひませう。094言依別(ことよりわけ)教主(けうしゆ)だと()つても、095それは人間(にんげん)()めたもの、096誠生粋(まこときつすゐ)()出神(でのかみ)(さま)竜宮(りうぐう)乙姫(おとひめ)(さま)御鎮(おしづ)まり(あそ)ばす(にく)(みや)へ、097一度(いちど)面会(めんくわい)にも()()ぬと()失礼(しつれい)(こと)がありますかい』
098 夏彦(なつひこ)()(にく)さうに一寸(ちよつと)(かしら)()()げて、
099夏彦(なつひこ)『あなたの仰有(おつしや)(こと)一応(いちおう)御尤(ごもつと)ものやうに(かんが)へますが、100そこはさう四角張(しかくば)らずに、101言依別(ことよりわけ)(さま)言依別(ことよりわけ)(さま)として、102教主(けうしゆ)()()(たい)貴方(あなた)から御訪問(ごはうもん)なさるが至当(したう)だと(おも)ひます。103それも(また)直接(ちよくせつ)御会(おあ)ひになつてはいけませぬ。104何程(なにほど)御嫌(おきら)ひになつても総務(そうむ)杢助(もくすけ)さまの()()御面会(ごめんくわい)をなさいませ。105それが至当(したう)だと()夏彦(なつひこ)御神徳(おかげ)(いただ)いてゐます』
106高姫(たかひめ)『あんな杢助(もくすけ)国依別(くによりわけ)のやうな行儀(ぎやうぎ)()らずに、107阿呆(あはう)らしくて面会(めんくわい)出来(でき)ぬぢやありませぬか。108(ふた)()には四足(よつあし)かなんぞのやうにゴロンと(よこ)になり、109不作法(ぶさはふ)な…生宮(いきみや)(まへ)でも()(はなし)をすると()代物(しろもの)だから、110国依別(くによりわけ)までが(おな)(やう)(さる)人真似(ひとまね)をしよつて、111()いかと(おも)つてグレンと仰向(あふむ)けになり応対(おうたい)をして()るから、112この高姫(たかひめ)が「(ちつ)心得(こころえ)なさい、113失礼(しつれい)ぢや()いか」とたしなめてやれば、114霊界物語(れいかいものがたり)でさへも仰向(あふむ)けになつて、115(あし)をピンピン()(もつ)結構(けつこう)神界(しんかい)因縁(いんねん)()かれるぢやないかと、116屁理屈(へりくつ)をこねる仕方(しかた)()(やつ)だ。117そんな(やつ)(また)言依別(ことよりわけ)さまも人間(にんげん)()いものだから、118(よろこ)んで使(つか)つてゐると()御目出度(おめでた)さ。119第一(だいいち)これからが退(しりぞ)けて(しま)はなくちや、120三五教(あななひけう)何時(いつ)になつても駄目(だめ)ですよ』
121夏彦(なつひこ)『あなたの御言葉(おことば)(じつ)御尤(ごもつと)もです。122(わたくし)時々(ときどき)杢助(もくすけ)さまが仰向(あふむ)けになつて、123私達(わたくしたち)にいろいろの(こと)御指図(おさしづ)をなさるので時々(ときどき)ムツとしてその(わけ)詰問(きつもん)すると杢助(もくすけ)さまの言草(いひぐさ)面白(おもしろ)い。124(いま)のやうな百鬼昼行(ひやくきちうかう)()(なか)人間(にんげん)は、125みんな(おに)(へび)悪魔(あくま)人間(にんげん)真似(まね)をして()つて(ある)いて()るのだ。126さうして(かに)()(よこ)さの(みち)(ばか)平気(へいき)でやつてゐるから(たま)らない。127今日(こんにち)()(なか)革正(かくせい)しようと(おも)へば、128()うしても(ひと)のようせぬ(こと)(いた)さねば立替(たてかへ)129立直(たてなほ)しは出来(でき)ない。130今日(こんにち)社会(しやくわい)()なさい、131その潮流(てうりう)滔々(たうたう)として(よこ)(よこ)へと(なが)れてゐるぢやないか。132それが所謂(いはゆる)天地(てんち)自然(しぜん)(みち)だ。133(かは)(みづ)でも潮水(てうすゐ)でも(よこ)(なが)れて()るべきものだ。134数多(あまた)人命(じんめい)()せて(はし)汽車(きしや)矢張(やつぱり)(よこ)(なが)うなつてゐる。135レールでさへもさうぢやないか。136もしもレールがチヨコンと(すわ)つたり、137()てつて()なされ、138汽車(きしや)(たちま)転覆(てんぷく)するぢやないか。139(よこ)(なが)れて()河川(かせん)洋々(やうやう)として(すこ)しも淹滞(えんたい)なく、140(また)(あい)らしい(ひな)(そだ)てる牝鳥(めんどり)(つばさ)(なか)大切(たいせつ)(かか)えて()(なか)()てゐます。141(たまご)(かへ)すのだつて()()らねば(かへ)りはしない。142ノアの方舟(はこぶね)だつて矢張(やつぱ)水面(すゐめん)(よこ)(すす)んで(なが)れてゐる、143水平社(すゐへいしや)運動(うんどう)でも……」と仰有(おつしや)いましたよ』
144高姫(たかひめ)『そんな屁理屈(へりくつ)がありますか。145この庭先(にはさき)(まつ)篠竹(しのたけ)()なさい。146(みんな)()から真直(まつすぐ)(うへ)(むか)つて()つてるぢやありませぬか。147(よこ)になつてる(やつ)(みき)(くさ)つて(かぜ)()(たふ)された()(ばか)りぢや。148(また)本打(もとうち)()(すゑ)打断(うちた)ちて(かは)()かれた枯木(かれき)材木(ざいもく)ばつかりだ。149(よこ)になつてる(やつ)(ろく)なものがありますか。150さうだから杢助(もくすけ)では駄目(だめ)だと()ふのですよ』
151(ちから)をこめて握拳(にぎりこぶし)(しきゐ)(おも)はずポンと(たた)き、152『アイタヽヽ』と()はんとしたが、153『アイ……』と()つた()(かほ)(しか)めて(ひだり)()でコツソリと()でてゐるその()(どく)さ。
154常彦(つねひこ)『なんと理屈(りくつ)何方(どちら)へでもつくものですな。155火中水(くわちうすゐ)あり、156水中火(すゐちうくわ)あり、157()(みづ)(ちから)()つて()(あが)り、158(みづ)()(ちから)()つて(うご)かされる道理(だうり)で、159何方(どちら)から()いても理屈(りくつ)()ひますワイ。160それで(たて)変性男子(へんじやうなんし)161(よこ)変性女子(へんじやうによし)神様(かみさま)仰有(おつしや)るのでせう。162経糸(たていと)(ばか)りでは所詮(しよせん)駄目(だめ)で、163矢張(やつぱ)緯糸(よこいと)()ければ(にしき)(はた)()(こと)出来(でき)ませぬ』
164高姫(たかひめ)『その(よこ)がいかぬのですよ。165(よこ)(さとく)()ちたり、166(いと)()れたり(いた)すから、167それで変性女子(へんじやうによし)行方(やりかた)駄目(だめ)だと()ふのだよ……
168 (はた)(よこ)()身魂(みたま)こそ(くる)しけれ (ひと)(とほ)せば(ひと)()たれつ
169なんて弱音(よわね)()いて()るやうな言依別(ことよりわけ)(なに)出来(でき)ますかいな。170イヤイヤ矢張(やつぱり)言依別(ことよりわけ)出来(でき)ぬとも(かぎ)らぬ。171(この)(ごろ)大分(だいぶ)改心(かいしん)をしかけたから、172変性男子(へんじやうなんし)経糸(たていと)(たい)して、173(わたし)がサトクとなつて立派(りつぱ)(はた)()つて()せませう。174緯糸(よこいと)になる緯役(よこやく)さへサトクの()(とほ)()いてくれば()いのだ。175……ナア黒姫(くろひめ)さま、176さうぢやありませぬか』
177黒姫(くろひめ)左様(さやう)々々(さやう)178貴方(あなた)仰有(おつしや)(とほ)一分一厘(いちぶいちりん)毛筋(けすぢ)横巾(よこはば)(ほど)(ちが)ひはありませぬ。179何卒(どうぞ)一時(いちじ)(はや)杢助(もくすけ)さまが改心(かいしん)さへしてくるれば、180(なん)にも()(こと)はありませぬがなア』
181常彦(つねひこ)杢助(もくすけ)さまの(はう)では何卒(どうぞ)一日(いちにち)(はや)高姫(たかひめ)さまや黒姫(くろひめ)改心(かいしん)さへしてくれれば(なに)()(こと)はないがなア…と(くび)(かた)げて大変(たいへん)(かんが)へてゐましたよ。182国依別(くによりわけ)だつてあんたの敵対役(てきたいやく)実際(じつさい)(ところ)はこしらへてあるのですよ。183(この)(あひだ)もお(さかな)だと()つて(いし)()つて()たでせう。184それは(おほ)きな(こゑ)では()へぬが(まつた)言依別(ことよりわけ)(さま)御指図(おさしづ)ですよ』
185高姫(たかひめ)『ナニ、186言依別(ことよりわけ)が……あんまりぢやないか』
187常彦(つねひこ)言依別(ことよりわけ)(さま)(ふか)思召(おぼしめ)しがあつて国依別(くによりわけ)にあーいふ(こと)をさせて、188(まへ)さまが(おこ)るか(おこ)らないか、189(おこ)るやうでは(たま)御用(ごよう)をさす時機(じき)がまだ()()らぬのだし、190それを()(しの)ぶやうな高姫(たかひめ)さまなら、191モウ大丈夫(だいぢやうぶ)だからと()つて()御引(おひ)きなさつたのですよ。192(まへ)さまは矢張(やつぱり)(はら)()ちませうね』
193高姫(たかひめ)『エー(はら)()つといふやうな、194そんな()つぽけな精神(せいしん)で、195大和魂(やまとだましひ)()はれますかい。196大海(たいかい)(ちり)(えら)まず、197百川(ひやくせん)濁流(だくりう)()んで(にご)らずと()高姫(たかひめ)態度(たいど)ですからなア。198(てん)(たか)くして諸鳥(もろどり)飛翔(ひしよう)するに(まか)するが(ごと)く、199(うみ)(ひろ)(ふか)くして魚鼈(ぎよべつ)(をど)るに(まか)すが(ごと)しといふ広大無辺(くわうだいむへん)大精神(だいせいしん)ですから……ヘン……あんまり見損(みそこな)ひをして(もら)ひますまいかい。200(わたし)(ため)すなんて猪口才(ちよこざい)()ぎる。201矢張(やつぱり)自分(じぶん)(こころ)(ちい)さいからだよ。202自分(じぶん)(こころ)尺度(しやくど)(もつ)て、203生神様(いきがみさま)大精神(だいせいしん)測量(そくりやう)しようと(おも)ふのが、204テンから間違(まちが)つてゐる。205(しか)(なが)らそこまで言依別(ことよりわけ)もなつたか、206ホンに可愛(かあい)いものだ。207……そんなら常彦(つねひこ)さま、208(まへ)209言依別(ことよりわけ)さまに()つて、210高姫(たかひめ)さまは()(くらゐ)(こと)は、211何処(いづこ)(かぜ)()くらんといふやうな態度(たいど)で、212余裕(よゆう)綽々(しやくしやく)213泰然自若(たいぜんじじやく)として(わら)つて御座(ござ)つたと、214実地正真(じつちまこと)らしく……オツトドツコイ……実地正真(じつちまこと)立派(りつぱ)態度(たいど)を、215よく(はら)へシメこんで()いて申上(まをしあ)げるのだよ』
216常彦(つねひこ)()(かく)今日(けふ)()りの(まま)申上(まをしあ)げたら()いのですか。217(うそ)一寸(ちよつと)()はれぬ御道(おみち)ですからなアー』
218高姫(たかひめ)『エー矢張(やつぱり)モウ()うて(くだ)さるな。219(わたし)直接(ちよくせつ)御目(おめ)にかかつてその寛大振(くわんだいぶり)()せて()るから、220今日(けふ)(こと)(なん)にも()ひつてはなりませぬぞ』
221常彦(つねひこ)魚心(うをごころ)あれば水心(みづごころ)あり、222()てば(ひび)くとやら……、223ナア夏彦(なつひこ)224さうぢやないか。225チツトはコンミツシヨンとか、226ボーナスとか()りさうなものだなア』
227黒姫(くろひめ)『オホヽヽヽ、228(なん)現金(げんきん)なお(かた)だこと』
229常彦(つねひこ)何分(なにぶん)(この)肉体(にくたい)融通(ゆうづう)()人間(にんげん)ですが、230三五教(あななひけう)(まこと)(をしへ)守護神(しゆごじん)(やつ)231腹中(はらのなか)で、232すつかりと()()つたものだから、233相手(あひて)(とほ)()ひたがつて仕様(しやう)がありませぬ。234この肉体(にくたい)(なに)()ひませぬ。235副守(ふくしゆ)(やつ)(なに)()をつけてやつて(くだ)さい。236(たもと)(おも)ければ(おも)(ほど)都合(つがふ)(よろ)しいで。237少々(せうせう)重味(おもみ)(くらゐ)()せた(ところ)で、238中々(なかなか)(つよ)(やつ)ですからなア』
239高姫(たかひめ)『マアマア成功(せいこう)(のち)240御注文通(ごちうもんどほ)りボーナス(棒茄子(ぼうなす))なつと、241ボーウリ(棒瓜(ぼううり))なつと、242干瓢(かんぺう)なつと()げませうかい』
243常彦(つねひこ)『そいつはなりませぬぞ。244何事(なにごと)前銭(さきぜに)()して註文(ちうもん)して()かねば、245何程(なにほど)変換(へんがへ)されても仕方(しかた)がありますまい。246証拠金(しようこきん)とか手付金(てつけきん)とか(さき)(いただ)いて公証役場(こうしようやくば)()つて、247公正証書(こうせいしようしよ)でも()つて()きませうかな。248アハヽヽヽ』
249高姫(たかひめ)『コレ常彦(つねひこ)さま、250冗談(ぜうだん)もよい加減(かげん)にしなさい。251……千騎一騎(せんきいつき)(この)場合(ばあひ)ぢやありませぬか』
252常彦(つねひこ)『ソラさうでせう。253あなたにとつては千騎一騎(せんきいつき)254吾々(われわれ)(およ)ばず(なが)麻邇宝珠(まにほつしゆ)御迎(おむか)へを御勤(おつと)(まを)し、255一寸(ちよつと)休養(きうやう)(たま)はつて()るところですから、256(きは)めて悠々閑々(いういうかんかん)たるものです。257()(かく)(ひと)苦労(くらう)(とく)をとらうと()ふのは、258(かへつ)(ほね)()れるものですワイ。259(しか)しこれは世間(せけん)(はな)しですよ。260(まへ)さまは()(はや)いから(すぐ)自分(じぶん)(こと)()つて(おこ)(くせ)があるから剣呑(けんのん)だ』
261高姫(たかひめ)(なに)仰有(おつしや)る。262それは(おほ)きな(こゑ)()はれぬが、263言依別命(ことよりわけのみこと)(こと)でせうがなア』
264常彦(つねひこ)『あんたはさう(おも)つてますか。265それで安心(あんしん)だ……。266なア夏彦(なつひこ)さま』
267夏彦(なつひこ)『オホヽヽヽ、268イヤモウ()うも感心(かんしん)いたしました』
269 ()かる(ところ)()閑寂(かんじやく)(やぶ)つて宣伝歌(せんでんか)(こゑ)(きこ)えて()た。
270(かみ)(おもて)(あら)はれて
271(ぜん)(あく)とを立別(たてわ)ける
272(この)()(つく)りし神直日(かむなほひ)
273(こころ)(ひろ)大直日(おほなほひ)
274(ただ)何事(なにごと)(ひと)()
275直日(なほひ)見直(みなほ)聞直(ききなほ)
276()(あやま)ちは()(なほ)
277頑迷不霊(ぐわんめいふれい)高姫(たかひめ)
278執着(しふちやく)(ふか)黒姫(くろひめ)
279(あめ)(つち)との御水火(みいき)より
280(あら)はれませる(かみ)御子(みこ)
281神素盞嗚大神(かむすさのをのおほかみ)
282仁慈無限(じんじむげん)御心(みこころ)
283()みとりまして言依別(ことよりわけ)
284(みづ)御魂(みたま)八尋殿(やひろどの)
285麻邇(まに)御珠(みたま)(おく)(ふか)
286(をさ)(たま)ひて高姫(たかひめ)
287黒姫(くろひめ)さまの(かへ)るまで
288拝観(はいくわん)する(こと)ならないと
289言葉(ことば)(きび)しく()(つた)
290高姫(たかひめ)さまの一行(いつかう)
291聖地(せいち)()して(かへ)()
292その吉日(きちにち)()(たま)
293(おも)へば(ふか)(かみ)(おん)
294(あふ)げば(たか)御恵(おんめぐ)
295(つゆ)だも()らぬ高姫(たかひめ)
296聖地(せいち)(かへ)()(なが)らも
297(にしき)(みや)大前(おほまへ)
298(いま)(まう)でし(さま)()
299玉照彦(たまてるひこ)玉照姫(たまてるひめ)
300(かみ)(はしら)()ふも(さら)
301神素盞嗚大神(かむすさのをのおほかみ)
302(うづ)御子(おんこ)とあれませる
303五十子(いそこ)(ひめ)梅子姫(うめこひめ)
304わけて(たふと)英子姫(ひでこひめ)
305言依別(ことよりわけ)教主(けうしゆ)()
306(いま)一度(いちど)挨拶(あいさつ)
307便(たよ)りもきかぬうたてさよ
308あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
309御霊(みたま)幸倍(さちはへ)ましまして
310執着心(しふちやくしん)片意地(かたいぢ)
311とりからまれし両人(りやうにん)
312高山彦(たかやまひこ)身魂(みたま)をば
313(かみ)御稜威(みいづ)にさらさらと
314(きよ)(たま)ひて片時(かたとき)
315()(すむや)けく大前(おほまへ)
316(まう)(きた)りて神業(かむわざ)
317参加(さんか)なさしめ(たま)へかし
318如何(いか)高姫(たかひめ)黒姫(くろひめ)
319頑強不霊(ぐわんきやうふれい)()(なが)
320(かみ)御裔(みすえ)方々(かたがた)
321無礼(ぶれい)(つみ)(かさ)ぬるは
322(じつ)(かな)しき(こと)ぞかし
323(をしへ)(みち)友彦(ともひこ)
324一度(いちど)(つか)はし()たれども
325金門(かなど)(まも)安公(やすこう)
326()退(やら)はれて()らず(ぐち)
327(たた)いて(やかた)立帰(たちかへ)
328(つら)(ふく)らせブツブツと
329小言(こごと)(かぎ)(なら)()
330とりつく(しま)なき(わか)
331われは亀彦(かめひこ)宣伝使(せんでんし)
332英子(ひでこ)(ひめ)御言(みこと)もて
333高姫(たかひめ)黒姫(くろひめ)両人(りやうにん)
334(いま)(むか)へに(きた)りけり
335(つき)御空(みそら)皎々(かうかう)
336(かがや)(わた)万有(ばんいう)
337(めぐ)みの(つゆ)(たま)へども
338(こころ)(そら)村雲(むらくも)
339十重(とへ)二十重(はたへ)(つつ)まれて
340黒白(あやめ)()かぬ(むね)(やみ)
341()らし(たま)へよ天津神(あまつかみ)
342国津神(くにつかみ)(たち)八百万(やほよろづ)
343三五教(あななひけう)(まも)ります
344皇大神(すめおほかみ)御前(おんまへ)
345万代(よろづよ)(いは)亀彦(かめひこ)
346(つつし)(うやま)()(まつ)
347あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
348御霊(みたま)幸倍(さちはへ)ましませよ』
349(うた)ひつつ高姫館(たかひめやかた)()して次第(しだい)々々(しだい)(ちか)づき(きた)る。
350 亀彦(かめひこ)(もん)(ひら)きあるを(さいは)ひ、351つかつかと(すす)(きた)り、
352亀彦(かめひこ)『モシモシ夜中(やちう)にお邪魔(じやま)(いた)しまするが、353(わたし)亀彦(かめひこ)宣伝使(せんでんし)御座(ござ)りまする。354江州(ごうしう)竹生島(ちくぶしま)より英子姫(ひでこひめ)(さま)同道(どうだう)にて聖地(せいち)(まゐ)つて()りまする。355(うけたま)はりますれば高姫(たかひめ)(さま)356黒姫(くろひめ)(さま)357高山彦(たかやまひこ)(とも)にお(かへ)(あそ)ばしたとのこと、358御機嫌(ごきげん)をお(うかが)ひに(まゐ)りました。359差支(さしつかへ)なくばお(とほ)(くだ)さいませ』
360高姫(たかひめ)『ヤア貴方(あなた)亀彦(かめひこ)さまか。361よくマア竹生島(ちくぶしま)(おい)国依別(くによりわけ)さまと東西(とうざい)相応(あひおう)じ、362御親切(ごしんせつ)(なに)から(なに)まで御注意(ごちうい)(くだ)さいまして有難(ありがた)御座(ござ)います。363(わたし)一度(いちど)英子姫(ひでこひめ)(さま)(はじ)め、364貴方(あなた)(たち)にもお(れい)のためにお(うかが)(いた)したいと(おも)つて()ましたが、365(なん)とは()しに貧乏(びんばふ)(ひま)なしで御無礼(ごぶれい)(いた)して()りまする。366(しか)(なが)今日(けふ)来客(らいきやく)がありますので、367失礼(しつれい)(なが)らお(かへ)(くだ)さいませ。368只今(ただいま)宣伝歌(せんでんか)拝聴(はいちやう)いたしましたが、369随分(ずゐぶん)立派(りつぱ)なお(こゑ)でお(ふし)もお上手(じやうづ)になられました。370丁度(ちやうど)竹生島(ちくぶしま)(やしろ)(うしろ)(あら)はれ(たま)うた女神様(めがみさま)のお(こゑ)その(まま)でしたよ。371オホヽヽヽ』
372亀彦(かめひこ)御差支(おさしつかへ)とあれば是非(ぜひ)御座(ござ)いませぬ。373左様(さやう)ならば、374(いとま)(いた)しませう』
375()ひつつ(つき)(ひかり)()(なが)足早(あしばや)(かへ)()く。376(あと)見送(みおく)つて高姫(たかひめ)は、
377高姫(たかひめ)『オホヽヽヽ、378やつぱり()(とが)めると()えますワイなア。379……黒姫(くろひめ)さま、380高山彦(たかやまひこ)さま、381あの亀彦(かめひこ)(こは)(さう)(かへ)(やう)382計略(けいりやく)(うら)をかかれて、383コソコソと(ねずみ)のやうになつて()げたぢやありませぬか』
384黒姫(くろひめ)『ウフヽヽヽ』
385高山彦(たかやまひこ)『アハヽヽヽ』
386大正一一・七・二二 旧閏五・二八 外山豊二録)
   
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