霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一六章 盲亀(まうき)浮木(ふぼく)〔八一六〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第28巻 海洋万里 卯の巻 篇:第3篇 光明の魁 よみ:こうみょうのさきがけ
章:第16章 盲亀の浮木 よみ:もうきのふぼく 通し章番号:816
口述日:1922(大正11)年08月09日(旧06月17日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年8月10日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
三五教軍のためにいったんは退けられたセールス姫、シャーカルタン、トロレンスらの一派は、三派同盟を作って泰安城に攻め寄せた。泰安城はひとたまりもなく落城し、カールス王をはじめ重臣らは捕らえられ、牢獄につながれて責め苦を受けることになった。
セールス姫は泰安城の女王となり、魔軍を率いて今度は三五教の拠点を奪おうと、軍勢を率いて玉藻山の湖水近くまで攻め寄せた。
マリヤス姫はユリコ姫に命じて、鏡で敵軍を照らさせた。敵軍はたちまち眼くらみ心がおののいて将棋倒しに倒れてしまった。敵将のセウルスチン、サアルボース、ホーロケースらは命からがら逃げてしまった。
その場に倒れて苦しんでいる敵兵たちに向かって、マリヤス姫は宣伝歌を歌った。兵卒たちは「惟神霊幸倍坐世」を幾度となく唱えると、目を開いて立つことができた。兵卒たちはマリヤス姫の前にひざまづき、三五教軍に帰順して泰安城の言霊戦に従軍することになった。
泰安城にて、八千代姫、照代姫の鏡に照らされた敵軍の両翼は、眼を奪われてたちまち降伏した。マリヤス姫は日楯と月鉾を率いて城の正面から攻めかけ、セールス姫に対して赤・白の宝玉を射照らせた。
セールス姫はたちまち金毛九尾の悪狐の正体を表し、雲を起こしてどこかへ逃げてしまった。
マリヤス姫は泰安城を守り、八千代姫らに聖地を守らせると、日楯と月鉾は牢獄につながれた人々の救出に向かった。カールス王をはじめ、ヤーチン姫、真道彦命、そして重臣たちは二人の手によって救い出され、泰安城に戻っていった。カールス王は真道彦命の息子たちに救い出されて感謝の念を表し前非を悔いた。
泰安城に戻ると、セールス姫軍の兵卒らは、まだ鏡の威徳に打たれて盲目のまま倒れ苦しんでいた。カールス王がこの有様を尋ねると、日楯は琉球で授けられた神宝の威徳と言霊戦の様子を物語った。
日楯は倒れている敵軍の兵卒に向かって、言霊歌を宣し与え、懺悔を呼びかけた。数万の兵卒たちはたちまち目を開き、一同の前に感謝の涙を流して帰順した。日楯は兵卒たちに三五教の道を説き聞かせておのおの家に帰らせた。そして自らは王をはじめ、重臣たちと泰安城に入って行った。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:
愛善世界社版:193頁 八幡書店版:第5輯 423頁 修補版: 校定版:200頁 普及版:89頁 初版: ページ備考:
001 一旦(いつたん)三五教(あななひけう)真道彦(まみちひこ)神軍(しんぐん)(ため)潰走(くわいそう)し、002各地(かくち)潜伏(せんぷく)して、003捲土重来(けんどぢうらい)時機(じき)(うかが)ひゐたるシヤーカルタン、004トロレンス、005セールス(ひめ)006サアルボース、007ホーロケース、008セウルスチン、009タールス、010ツーレンス、011ナンダールス、012ビヤセールの一派(いつぱ)三角同盟軍(さんかくどうめいぐん)(つく)つて泰安城(たいあんじやう)夜陰(やいん)(じやう)じ、013(とき)(つく)つて()めかけ、014石火矢(いしびや)(はな)ち、015さしも堅固(けんご)なる金城鉄壁(きんじやうてつぺき)も、016一夜(ひとよ)さの(うち)(もろ)くも(おちい)り、017カールス(わう)(はじ)めテールスタン、018ホールサース、019ホーレンス、020ユートピヤール、021ツーレンス、022シーリンス、023エール、024ハーレヤール、025オーイツク、026ヒユーズ、027アンデーヤール、028ニユージエール、029ハール、030カントン、031マルチル、032ウラール、033キングス、034トーマス、035マーシヤール、036ヤールス(ひめ)037カーネール(ひめ)大将株(たいしやうかぶ)(はじ)(ことごと)捕虜(ほりよ)となり、038淡渓(たんけい)上流(じやうりう)なるカールス(わう)一旦(いつたん)陣取(ぢんどり)ゐたる岩窟城(がんくつじやう)(くら)牢獄(らうごく)(のこ)らず(つな)がれ、039日夜(にちや)苛酷(かこく)なる責苦(せめく)(くるし)めらるることとなつて(しま)つた。
040 一旦(いつたん)取返(とりかへ)されたる泰安城(たいあんじやう)は、041セールス(ひめ)女王(ぢよわう)(あふ)ぎ、042シヤーカルタン、043トロレンスは左守(さもり)044右守(うもり)(かみ)となり、045サアルボース、046ホーロケース、047セウルスチンは各重要(かくぢうえう)(しよく)()き、048(ふたた)新高山(にひたかやま)以北(いほく)()政権(せいけん)掌握(しやうあく)し、049(いきほひ)(じやう)じて三五教(あななひけう)聖地(せいち)日月潭(じつげつたん)(はじ)め、050国魂神(くにたまがみ)(まつ)りたる宮殿(きうでん)占領(せんりやう)し、051バラモン(けう)勢力(せいりよく)樹立(じゆりつ)せむと、052セウルスチンを(しやう)となし、053サアルボース、054ホーロケースは副将(ふくしやう)となり、055数万(すうまん)軍卒(ぐんそつ)(ひき)ゐ、056アーリス(ざん)を、057旗鼓(きこ)堂々(だうだう)として乗越(のりこ)え、058(いま)玉藻(たまも)湖水(こすい)間近(まぢか)くまで押寄(おしよ)せて()た。
059 (ここ)玉藻山(たまもやま)聖地(せいち)よりは、060マリヤス(ひめ)神軍(しんぐん)(しやう)となし、061日楯(ひたて)062月鉾(つきほこ)063ユリコ(ひめ)064テーリン(ひめ)065照代姫(てるよひめ)066八千代姫(やちよひめ)(わづか)従者(じゆうしや)(とも)に、067(この)大軍(たいぐん)(むか)つて、068言霊戦(ことたません)開始(かいし)すべく立向(たちむか)うた。069(てき)先鋒隊(せんぽうたい)三五軍(あななひぐん)一隊(いつたい)とは玉藻湖(たまもこ)(ほとり)出会(でつくわ)し、070セウルスチンの(ひき)ゆる数多(あまた)軍卒(ぐんそつ)は、071少数(せうすう)(てき)(あなど)りて、072マリヤス(ひめ)小部隊(せうぶたい)(むか)つて、073竹槍(たけやり)穂先(ほさき)(そろ)へ、074獅子(しし)奮迅(ふんじん)(いきほひ)にて吶喊(とつかん)(きた)物凄(ものすご)さ。075マリヤス(ひめ)(ただち)にユリコ(ひめ)(めい)(くだ)し、076大蛇(をろち)(かがみ)取出(とりだ)さしめ、077()()猛卒(まうそつ)(むか)つて射照(いて)らさしめた。078ユリコ(ひめ)取出(とりだ)したる(かがみ)(たちま)強度(きやうど)光輝(くわうき)(はつ)し、079敵軍(てきぐん)一人(ひとり)(のこ)らず、080(まなこ)(くら)み、081(こころ)(おのの)き、082(もろ)くも一戦(いつせん)をも(まじ)へずして、083(その)()将棋倒(しやうぎだふ)しとなつて(たふ)れて(しま)つた。
084 セウルスチンは(かがみ)威徳(ゐとく)(まなこ)(くら)み、085生命(いのち)カラガラ部下(ぶか)(たす)けられ、086何処(どこ)ともなく遁走(とんそう)して(しま)つた。087大将(たいしやう)セウルスチンの(この)見苦(みぐる)しき戦敗(せんぱい)()て、088左右(さいう)副将(ふくしやう)サアルボース、089ホーロケースは軍容(ぐんよう)(みだ)し、090()(さき)にと泰安城(たいあんじやう)()して、091一目散(いちもくさん)退却(たいきやく)して(しま)つた。
092 先鋒隊(せんぽうたい)として此処(ここ)(すす)みたる猛卒(まうそつ)は、093(ほとん)五六千人(ごろくせんにん)(およ)んで()た。094一人(ひとり)(のこ)らず()(うしな)ひ、095(ところ)()(まで)打倒(うちたふ)れて呻吟(しんぎん)しつつ、096手探(てさぐ)り、097足探(あしさぐ)りに()()かむとしては、098(たに)顛落(てんらく)し、099(たがひ)衝突(しようとつ)して混乱(こんらん)(きは)め、100(その)惨状(さんじやう)()(あて)られぬ(ばか)りであつた。101マリヤス(ひめ)(ただ)ちに言霊(ことたま)(もつ)彼等(かれら)帰順(きじゆん)せしめむと、102(こゑ)(すず)しく宣伝歌(せんでんか)(うた)()したり。
103(かみ)(おもて)(あら)はれて
104(ぜん)(あく)とを立分(たてわ)ける
105(この)()(つく)りし神直日(かむなほひ)
106(こころ)(ひろ)大直日(おほなほひ)
107(ただ)何事(なにごと)(ひと)()
108直日(なほひ)見直(みなほ)聞直(ききなほ)
109()(あやま)ちは()(なほ)
110朝日(あさひ)()(とも)(くも)(とも)
111(つき)()(とも)()くる(とも)
112仮令(たとへ)大地(だいち)(しづ)(とも)
113セールス(ひめ)軍勢(ぐんぜい)
114如何(いか)(いきほひ)(たけ)(とも)
115仮令(たとへ)幾万(いくまん)()()(とも)
116(まこと)(かみ)御教(みをしへ)
117(まも)りて()てる三五(あななひ)
118(かみ)(いくさ)(ことごと)
119()()(てき)打払(うちはら)
120(こころ)(まなこ)(うしな)ひし
121セウルスチンを(はじ)めとし
122セールス(ひめ)(ひき)ゐたる
123(もも)(いくさ)(ことごと)
124(こころ)(まなこ)のみならず
125(にく)(まなこ)(うしな)ひて
126玉藻(たまも)湖畔(こはん)呻吟(しんぎん)
127のた(うち)まはる(あは)れさよ
128(まこと)(かみ)()(すく)
129(われ)はマリヤス(ひめ)(かみ)
130セウルスチンの軍人(いくさびと)
131(わが)言霊(ことたま)()()けて
132(まこと)(ひと)つの三五(あななひ)
133(かみ)(をしへ)立返(たちかへ)
134正義(せいぎ)刃向(はむか)(やいば)なし
135(かみ)吾等(われら)(とも)()
136(なんぢ)()にも(かみ)ゐます
137一時(いちじ)(はや)真心(まごころ)
138なりて前非(ぜんぴ)大神(おほかみ)
139御前(みまへ)()いよ諸人(もろびと)
140(ひと)(もと)より(かみ)御子(みこ)
141(かみ)()けたる(その)身魂(みたま)
142(みが)けば(もと)(かへ)るなり
143あが言霊(ことたま)曲耳(まがみみ)
144(かよ)ひし(もの)逸早(いちはや)
145三五教(あななひけう)大神(おほかみ)
146(たふと)御名(みな)(つつし)みて
147()めよ(たた)へよ(かみ)御子(みこ)
148(かみ)(まこと)(かよ)ひなば
149(なんぢ)(まなこ)(たちま)ちに
150月日(つきひ)(ごと)(あき)らけく
151(よろづ)(もの)(なが)()
152あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
153御霊(みたま)(さち)はひましませよ』
154(うた)(をは)るや、155数千(すうせん)()(うしな)ひたる軍卒(ぐんそつ)(かな)はぬ(とき)神頼(かみだの)み………と()(やう)按配式(あんばいしき)で、156一生懸命(いつしやうけんめい)両手(りやうて)(あは)せ、157(こゑ)(そろ)へて、
158惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
159幾回(いくくわい)となく、160繰返(くりかへ)繰返(くりかへ)奏上(そうじやう)した。161(その)(こゑ)四辺(あたり)山岳(さんがく)動揺(どうえう)するかと(ばか)(おも)はれた。162(しばら)くにして()(うしな)ひたる(てき)将卒(しやうそつ)は、163(のこ)らず()(ひら)き、164マリヤス(ひめ)(その)()神軍(しんぐん)(むか)つて(ひざま)づき、165感謝(かんしや)(なみだ)(たき)(ごと)(なが)(なが)帰順(きじゆん)()(へう)(つひ)には三五軍(あななひぐん)(したが)ひ、166泰安城(たいあんじやう)言霊戦(ことたません)従軍(じゆうぐん)する(こと)となつた。
167 マリヤス(ひめ)168日楯(ひたて)169月鉾(つきほこ)は、170偉大(ゐだい)なる言霊(ことたま)(ちから)今更(いまさら)(ごと)(よろこ)()(おどろ)(なが)ら、171(にはか)数千人(すうせんにん)味方(みかた)()て、172十曜(とえう)神旗(しんき)秋風(あきかぜ)(ひるがへ)し、173旗鼓(きこ)堂々(だうだう)として泰安城(たいあんじやう)立向(たちむか)(こと)となつた。
174 二男五女(になんごによ)神将(しんしやう)先頭(せんとう)に、175数千(すうせん)帰順者(きじゆんしや)()()れ、176泰安城(たいあんじやう)間近(まぢか)押寄(おしよ)するや、177サアルボース、178ホーロケースは複横陣(ふくわうぢん)()つて、179防戦(ばうせん)(つと)めた。180(この)(とき)八千代姫(やちよひめ)右翼(うよく)のサアルボースの(ぐん)(むか)つて、181大蛇(をろち)(かがみ)射照(いて)らし、182照代姫(てるよひめ)はホーロケースの左翼軍(さよくぐん)(むか)つて、183(おな)じく大蛇(をろち)(かがみ)差向(さしむ)射照(いて)らせば、184(また)もや一人(ひとり)(のこ)らず盲目(まうもく)となり、185ホーロケース、186サアルボース(まで)も、187(まなこ)くらみて(その)()平伏(へいふく)し、188(ひと)りも(のこ)らず帰順(きじゆん)(へう)した。
189 されどマリヤス(ひめ)両軍(りやうぐん)平伏(へいふく)する(あひだ)()()れず、190(ただち)表門(おもてもん)(むか)ひ、191城中(じやうちう)日楯(ひたて)192月鉾(つきほこ)(したが)へ、193(ふか)(すす)()り、194セールス(ひめ)(その)()侍臣(じしん)()(むか)つて、195(あか)196(しろ)宝玉(ほうぎよく)差出(さしだ)し、197()れを射照(いて)らせば、198セールス(ひめ)(たちま)金毛九尾(きんまうきうび)悪狐(あくこ)還元(くわんげん)し、199(その)()侍臣(じしん)()(のこ)らず、200悪鬼(あくき)201悪狐(あくこ)となつて、202(くも)(おこ)し、203何処(いづこ)ともなく、204中空(ちうくう)(けぶり)(ごと)()えて(しま)つた。
205 これよりマリヤス(ひめ)城内(じやうない)(とど)まり、206照代姫(てるよひめ)207八千代姫(やちよひめ)208ユリコ(ひめ)209テーリン(ひめ)(とも)玉藻(たまも)湖畔(こはん)にて帰順(きじゆん)したる兵士(つはもの)(とも)に、210警固(けいご)(にん)(あた)り、211日楯(ひたて)212月鉾(つきほこ)をして淡渓(たんけい)上流(じやうりう)なる岩窟(がんくつ)牢獄(らうごく)(つか)はし、213カールス(わう)(はじ)め、214ヤーチン(ひめ)215真道彦命(まみちひこのみこと)(すく)ふべく出張(しゆつちやう)(めい)じた。
216 ()217(つき)兄弟(きやうだい)帰順(きじゆん)せし兵士(つはもの)四五百人(しごひやくにん)(ばか)引率(ひきつ)れ、218岩窟(がんくつ)牢獄(ろうごく)()して(すす)()り、219数十(すうじふ)番卒(ばんそつ)(かた)(ぱし)より(たま)威徳(ゐとく)帰順(きじゆん)せしめ、220(みづか)牢獄内(らうごくない)()りて、221()第一(だいいち)にカールス(わう)(すく)()だした。222カールス(わう)(ひげ)蓬々(ぼうぼう)(なが)()び、223(いろ)(あを)ざめ、224身体骨立(しんたいこつりつ)して、225(あたか)死人(しにん)(ごと)く、226()るも(あは)れな姿(すがた)となつてゐた。227日楯(ひたて)228月鉾(つきほこ)(この)(てい)()て、229同情(どうじやう)(ねん)()(がた)く、230(わが)(ちち)(さき)幽閉(いうへい)したる(にく)きカールス(わう)として、231今迄(いままで)(うら)()たりし(こころ)もどこへやら()()せ、232(ただ)同情(どうじやう)(なみだ)にくるるのみであつた。
233 カールス(わう)真道彦命(まみちひこのみこと)二人(ふたり)()(すく)はれ、234一層(ひとしほ)(その)慈愛(じあい)(ふか)兄弟(きやうだい)(こころ)(かん)じ、235(かた)二人(ふたり)()(にぎ)つて涕泣(ていきふ)感謝(かんしや)(とき)(うつ)した。236カールス(わう)(やうや)くにして、237(いさぎよ)(くち)(ひら)き、
238カールス『(なんぢ)日楯(ひたて)239月鉾(つきほこ)両人(りやうにん)(あら)ざるか。240(なんぢ)(ちち)真道彦命(まみちひこのみこと)壮健(さうけん)なりや』
241()ひかけた。242二人(ふたり)(くち)(そろ)へて、
243両人(りやうにん)『ハイ、244(わが)(ちち)はあなたに幽閉(いうへい)されてより、245(いま)(この)牢獄(らうごく)呻吟(しんぎん)(いた)()様子(やうす)御座(ござ)います』
246カールス『(はや)(なんぢ)(ちち)(すく)()せよ』
247 二人(ふたり)(この)言葉(ことば)(この)()(はな)れ、248彼方(あなた)此方(こなた)牢屋(らうや)(そと)(めぐ)(なが)ら、
249両人(りやうにん)日楯(ひたて)250月鉾(つきほこ)兄弟(きやうだい)251(ちち)真道彦命(まみちひこのみこと)(すく)はむ(ため)(まゐ)(さふらふ)252(ねが)はくは在処(ありか)()らせ(たま)へ……』
253()ばはつた。254(この)(こゑ)にヤーチン(ひめ)間近(まぢか)獄室(ごくしつ)より、255(ほそ)()をさし(いだ)(なが)ら、
256ヤーチン(ひめ)『ヤアそなたは()257(つき)兄弟(きやうだい)258()くマア(すく)ひに()(くだ)さつた。259真道彦命(まみちひこのみこと)(さま)(この)隣室(りんしつ)におゐで(あそ)ばします。260どうぞ(はや)(すく)()して()げて(くだ)さい』
261 二人(ふたり)(ちち)在処(ありか)(わか)りたると、262ヤーチン(ひめ)(こゑ)とを()きて、263(かつ)(よろこ)(かつ)(おどろ)(なが)ら、264(ただち)牢獄(らうごく)(ぢやう)捩切(ねぢき)り、265ヤーチン(ひめ)(すく)()し、266(つぎ)(ちち)牢獄(らうごく)()をねぢ()け、267(すす)()つて()れば、268(かな)しや、269真道彦命(まみちひこのみこと)痩衰(やせおとろ)へ、270呼吸(こきふ)さへも(ろく)(かよ)つて()ない(やう)瀕死(ひんし)状態(じやうたい)(おちい)つてゐた。271二人(ふたり)(ちち)手足(てあし)()()き、272あたりを(はばか)らず、273(うれ)しさと(かな)しさに号泣(がうきふ)するのであつた。274(この)(こゑ)(かす)かに真道彦命(まみちひこのみこと)(みみ)(つう)じけむ、275やつれ()てたる()(おこ)して、276(ちから)なげに()見開(みひら)き、
277真道彦(まみちひこ)『アヽそなたは日楯(ひたて)278月鉾(つきほこ)両人(りやうにん)279()くマアどうして此処(ここ)()られたか。280……アヽやつぱり、281(ゆめ)ではあるまいか』
282不思議(ふしぎ)(さう)兄弟(きやうだい)(かほ)()つめてゐる。283兄弟(きやうだい)は、
284両人(りやうにん)父上様(ちちうへさま)285(けつ)して(ゆめ)でも(うつつ)でも御座(ござ)いませぬ。286……(じつ)斯様(かやう)々々(かやう)(わけ)……』
287()りし次第(しだい)を、288こまごまと物語(ものがた)つた。289真道彦(まみちひこ)はこれを()いて、290(にはか)元気(げんき)づき、291旱天(かんてん)草木(さうもく)(あめ)()ひたる(ごと)く、292(かほ)(いろ)さへ(にはか)()えて()た。293それよりカールス(わう)294ヤーチン(ひめ)295真道彦命(まみちひこのみこと)日楯(ひたて)保護(ほご)(もと)に、296泰安城(たいあんじやう)一先(ひとま)入城(にふじやう)する(こと)となり、297数百(すうひやく)軍卒(ぐんそつ)(おく)られて、298(この)牢獄(らうごく)立去(たちさ)つた。
299 月鉾(つきほこ)はテールスタン、300ホーレンスを(はじ)め、301(その)()のカースル(わう)(つか)()たる重臣(ぢうしん)(ども)を、302(ことごと)牢獄(らうごく)より(すく)(いだ)し、303泰安城(たいあんじやう)()して(かへ)()く。
304 日楯(ひたて)はカールス(わう)305ヤーチン(ひめ)306真道彦命(まみちひこのみこと)(まも)つて、307(やうや)泰安城(たいあんじやう)馬場(ばば)(ちか)くになつた。308ホーロケース、309サアルボースの軍勢(ぐんぜい)大蛇(をろち)(かがみ)()らされて()(うしな)つたまま、310()()ひとなつて、311(あり)のたかつた(やう)馬場(ばんば)()(まは)つてゐる。312カールス(わう)(この)(てい)()て、313不審(ふしん)()へず、
314カールス『(かれ)何者(なにもの)なりや』
315日楯(ひたて)(たづ)ねた。316日楯(ひたて)(ただ)ちに、
317『ハイ、318(かれ)はセールス(ひめ)家来(けらい)にして、319ホーロケース、320サアルボースの部下(ぶか)軍卒(ぐんそつ)御座(ござ)います。321向陽山(こうやうざん)大蛇(をろち)(かがみ)威徳(ゐとく)()らされて盲目(めくら)となり、322進退(しんたい)(きは)まつて、323あの(とほ)盲目(めくら)(まま)324暗路(やみぢ)(まよ)うてゐる亡者(まうじや)(ども)御座(ござ)います。325吾々(われわれ)向陽山(こうやうざん)常楠仙人(つねくすせんにん)より(たま)はりたる赤色(せきしよく)(たま)(もつ)て、326折伏(しやくふく)(つるぎ)応用(おうよう)し、327(おとうと)月鉾(つきほこ)白色(はくしよく)(たま)(もつ)摂受(せつじゆ)(つるぎ)応用(おうよう)し、328数万(すうまん)(てき)()(ごと)く、329一人(ひとり)(のこ)さず、330(かみ)威徳(ゐとく)降服(かうふく)させ、331セールス(ひめ)金毛九尾(きんまうきうび)悪狐(あくこ)正体(しやうたい)(あら)はし、332空中(くうちう)(たか)姿(すがた)()しました。333(じつ)稀代(きたい)神宝(しんぽう)御座(ござ)います。334(この)神宝(しんぽう)さへあらば、335カールス(わう)泰安城(たいあんじやう)にあつて、336()(をさ)(たま)ふは(じつ)易々(いい)たる事業(じげふ)御座(ござ)います』
337(たま)338(かがみ)効用(かうよう)(ほぼ)物語(ものがた)つた。339(わう)(はじ)めヤーチン(ひめ)340真道彦命(まみちひこのみこと)(くび)(かたむ)け、341(この)(はなし)(かん)()たれて()いて()る。
342 (ここ)日楯(ひたて)数万(すうまん)盲軍(まうぐん)(むか)つて言霊歌(ことたまうた)()(あた)へた。343(その)(うた)
344(かみ)(おもて)(あら)はれて
345(ぜん)(あく)とを立別(たてわけ)
346(この)()(つく)りし神直日(かむなほひ)
347(こころ)(ひろ)大直日(おほなほひ)
348(ただ)何事(なにごと)(ひと)()
349直日(なほひ)見直(みなほ)聞直(ききなほ)
350()(あやま)ちは()(なほ)
351朝日(あさひ)()るとも(くも)るとも
352(つき)()つとも()くるとも
353仮令(たとへ)大地(だいち)(しづ)むとも
354(まこと)(ひと)つの言霊(ことたま)
355(うづ)(ちから)()(すく)
356(かみ)吾等(われら)(とも)にあり
357(ひと)(かみ)()(かみ)(みや)
358(かみ)(こころ)(かな)ひなば
359仮令(たとへ)数万(すうまん)曲津神(まがつかみ)
360(とき)(つく)つて一散(いつさん)
361(いきほひ)(たけ)()()とも
362いかで(おそ)れむ敷島(しきしま)
363(かみ)(めぐみ)(たちま)ちに
364(わが)()(うへ)(くだ)りまし
365(ただち)(ひら)(むね)(やみ)
366(たま)(かがみ)(あら)ずとも
367(こころ)(たま)(みが)きあげ
368(かみ)(たま)ひし胸中(きようちう)
369真澄(ますみ)(かがみ)()らしなば
370(いま)()(ごと)曲神(まがかみ)
371一人(ひとり)(のこ)らず神力(しんりき)
372(おそ)れて大地(だいち)平伏(へいふく)
373(かみ)御前(みまへ)帰順(きじゆん)して
374(うぶ)(こころ)立帰(たちかへ)
375(こころ)(めくら)(たちま)ちに
376(ひら)けて(にく)(まなこ)さへ
377月日(つきひ)(ごと)()(わた)
378あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
379(かみ)御稜威(みいづ)()のあたり
380カールス(わう)やヤーチン(ひめ)
381(うづ)(みこと)御前(おんまへ)
382只今(ただいま)()かし(たてまつ)
383あゝ諸人(もろびと)諸人(もろびと)
384(なれ)(こころ)(ひそ)みたる
385(しこ)曲霊(まがひ)()(いだ)
386(かみ)より()けし真心(まごころ)
387直日(なほひ)(たま)立返(たちかへ)
388国治立大神(くにはるたちのおほかみ)
389(まも)(たま)ひし三五(あななひ)
390(まこと)(みち)(まつろ)ひて
391(あや)しき(こころ)()(なほ)
392あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
393あが言霊(ことたま)一息(ひといき)
394咫尺(しせき)(べん)ぜぬ盲目(まうもく)
395(なや)みは(たちま)()(わた)
396真如(しんによ)(つき)汝等(なんぢら)
397(こころ)(うみ)(かがや)かむ
398朝日(あさひ)()るとも(くも)るとも
399(つき)()つとも()くるとも
400仮令(たとへ)大地(だいち)(しづ)むとも
401(かみ)御前(みまへ)二心(ふたごころ)
402(かなら)(おこ)(こと)(なか)
403あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
404御霊(みたま)(さち)はひましませよ』
405(こゑ)(すず)しく(うた)(をは)るや、406今迄(いままで)大地(だいち)盲目(めくら)となつて呻吟(しんぎん)しゐたる数万(すうまん)軍勢(ぐんぜい)は、407一斉(いつせい)()(ひら)き、408四人(よにん)(まへ)両手(りやうて)(あは)せ、409天津神(あまつかみ)降臨(かうりん)かと感謝(かんしや)(なみだ)(むせ)びつつ、410(こころ)(そこ)より帰順(きじゆん)するのであつた。
411 日楯(ひたて)一同(いちどう)(むか)つて、412三五(あななひ)(みち)(をしへ)細々(こまごま)()(さと)し、413各々(おのおの)一先(ひとま)家路(いへぢ)(かへ)らしめ、414カールス(わう)(その)()(とも)泰安城(たいあんじやう)奥殿(おくでん)悠々(いういう)として(すす)()るのであつた。
415大正一一・八・九 旧六・一七 松村真澄録)
416(昭和一〇・六・八 王仁校正)