霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一一章 仲裁(ちゆうさい)〔一二〇一〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第45巻 舎身活躍 申の巻 篇:第3篇 裏名異審判 よみ:うらないしんぱん
章:第11章 仲裁 よみ:ちゅうさい 通し章番号:1201
口述日:1922(大正11)年12月12日(旧10月24日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年9月12日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
教主の間では、蠑螈別、魔我彦、お寅、熊公が酒を酌み交わしている。熊公の目的は、こうして酒にありつこうということだった。熊公は舌がもつれだしてどら声を張り上げ、歌いだした。
熊公は、これからは自分は蠑螈別のお付きとなって酒を飲み明かすのだと怒鳴りたてる。魔我彦がたしなめると、熊公は難癖をつけて脅しにかかった。その権幕に蠑螈別と魔我彦は小さくなってしまう。
熊公は若いころにお寅と夫婦関係にあったことを持ち出し、さらに蠑螈別を脅しにかかる。蠑螈別は、お寅に未練はないから連れて帰ってくれと返答し、怒ったお寅にまた押さえつけられそうになって畳にかじりついて叫んでいる。
とうとう熊公は刺青だらけの腕を振り回し、蠑螈別とお寅に手切れ金を要求し始めた。エスカレートする熊公に、蠑螈別と魔我彦は引け腰になってお金を渡して手切れしようと言い出すが、お寅は一人承知せず、逆に熊公に食って掛かる。
熊公は怒ってお寅のたぶさをつかんで引きずり回し、怒鳴りつけた。蠑螈別と魔我彦はすっかり肝をつぶし、奥の間の長持の中へ身を隠してしまう。
この騒ぎを聞きつけて、万公、五三公、アク、タク、テクの五人はどやどやと走ってきて仲裁に立った。五三公は大親分、アクはバラモン軍の片彦将軍のふりをして芝居を打ち、位の高い者の仲裁という態を取って、千両で熊公とウラナイ教の間の手切れ話をまとめ上げた。
熊公はこの仲裁に満足し、千両を懐にねじ込んでさっさと帰ってしまった。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:
愛善世界社版:183頁 八幡書店版:第8輯 315頁 修補版: 校定版:193頁 普及版:71頁 初版: ページ備考:
001 教主(けうしゆ)()には蠑螈別(いもりわけ)002魔我彦(まがひこ)003(とら)004熊公(くまこう)四人(よにん)胡坐(あぐら)をかき、005無礼講(ぶれいかう)(てい)でグビリグビリと(さけ)()()はして()る。006無性(むしやう)矢鱈(やたら)にお(とら)熊公(くまこう)にきつい(さけ)をすすめる。007下地(したぢ)()きなり御意(ぎよい)はよし、008何条(なんでう)(もつ)(ことわ)るべき、009(のど)(むし)がクウクウと催促(さいそく)して(たま)らない。010(ねこ)鰹節(かつをぶし)()びついた(やう)011(はじ)めの権幕(けんまく)何処(どこ)へやら、012(にはか)恵比須顔(ゑびすがほ)となつてグイグイと、013()うた(とき)笠脱(かさぬ)(しき)でやり(はじ)めた。014熊公(くまこう)群集(ぐんしふ)(なか)大声(おほごゑ)()蠑螈別(いもりわけ)(さけ)攻撃(こうげき)したのも、015(こころ)(そこ)(なん)とか()つて甘酒(うまざけ)にありつかうと()算段(さんだん)だつたから(わた)りに(ふね)016得手(えて)()()好都合(かうつがふ)だ。017熊公(くまこう)はソロソロ(した)(もつ)()銅羅声(どらごゑ)()して(うた)()した。
018()めよ(さわ)げよ一寸先(いつすんさき)(やみ)
019(やみ)(あと)には(つき)()
020つきはつきぢやが(さけ)づきぢや
021チヨビチヨビ()むのは邪魔(じやま)(くさ)
022土瓶(どびん)(くち)からデツカンシヨ
023()()のタンクへ直輸入(ぢきゆにふ)
024(ただち)雪隠(せんち)卸売(おろしうり)
025面白(おもしろ)うなつておいでたな
026(さけ)酒屋(さかや)に、よい(ちや)茶屋(ちやや)
027(わか)いナイスは(この)(やかた)
028(とら)()さまぢや一寸(ちよつと)(ふる)
029それでも蠑螈別(いもりわけ)さまが
030(ほそ)()をして(いだ)きつき
031()ひつき()きつき獅噛(しが)みつき
032笑壺(ゑつぼ)()つて(ござ)るのだ
033ドツコイシヨ、デツカンシヨ
034応対(おうたい)づくなら仕様(しやう)がない
035(さけ)()むなと(かみ)さまが
036野暮(やぼ)(こと)をば仰有(おつしや)るまいぞ
037御神酒(おみき)(あが)らぬ(かみ)はない
038(この)熊公(くまこう)(これ)からは
039蠑螈別(いもりわけ)のお(そば)づき
040(さけ)御用(ごよう)なら何時(いつ)(まで)
041天地(てんち)(かみ)()ふも(さら)
042八岐大蛇(やまたをろち)醜狐(しこぎつね)
043(おに)でも(きつね)でも(たぬき)でも
044(なん)でも(かま)はぬやつて()
045(まへ)(かは)りに(おれ)()
046仮令(たとへ)(きつね)()んだとて
047矢張(やつぱり)(おれ)(のど)(とほ)
048(その)(とき)(おれ)(うま)いぞや
049デツカンシヨ デツカンシヨ』
050魔我(まが)『こりやこりや(くま)さま、051そんな(おほ)きな(こゑ)(うた)ふものぢやない。052大広前(おほひろまへ)(きこ)えるぢやないか。053チツと()()かしたら如何(どう)だ』
054熊公(くまこう)折角(せつかく)機嫌(きげん)よう()んだ(さけ)(なに)ゴテゴテ()ふんでえ、055(だま)つて(ぬす)んで(さけ)()(やう)にチヨビリチヨビリと()んだつて(なに)面白(おもしろ)い。056(さけ)()めば()ふにきまつてる。057()うたら(さわ)ぐにきまつてる。058(まへ)結構(けつこう)(さけ)(ころ)して()めと()ふのか。059エーン、060なア蠑螈別(いもりわけ)さま、061熊公(くまこう)()(こと)(ちが)ひますかな』
062蠑螈(いもり)『アハヽヽヽチツとも(ちが)ひはせぬ』
063熊公(くまこう)(大声)『それ()たか魔我彦(まがひこ)064教祖様(けうそさま)(ちが)はぬと仰有(おつしや)つたぢやないか』
065 魔我彦(まがひこ)(あを)くなり、
066魔我(まが)『これ、067(くま)さま、068(なん)ぼどうでも体裁(ていさい)()(こと)(かんが)へて()れなくちや(この)(しろ)がもてぬぢやないか』
069熊公(くまこう)(さけ)()うたものに体裁(ていさい)(くそ)もあるものかい。070体裁(ていさい)(つく)らうものなら(さけ)()まれぬぢやないか、071さうすりやウラナイ(けう)には(うら)がないと()つたが矢張(やつぱり)(うら)があるのだなア。072(おもて)には鹿爪(しかつめ)らしい(こと)(ほざ)(なが)(なん)でい。073(おく)這入(はい)れば(あさ)から(ばん)まで甘酒(うまざけ)()ひつぶれ、074(かみ)(をしへ)其方(そつち)()けにして肝腎(かんじん)教祖(けうそ)さまからお(とら)()アさまと意茶(いちや)つき喧嘩(けんくわ)をしたり、075(つめ)つたり(たた)いたりするのだからな、076(あき)れたものだ』
077(とら)『これ(くま)さま、078(まへ)悪酒(わるざけ)だから本当(ほんたう)(こま)つて(しま)ふよ。079チツとは教祖様(けうそさま)御心中(ごしんちう)(さつ)(わし)(こころ)()んで()れたら如何(どう)だい。080結構(けつこう)(さけ)(いただ)(なが)ら、081ここの迷惑(めいわく)になる(やう)(こと)()つても(よろ)しいのか。082チツとは義理(ぎり)()(こと)(かんが)へて(くだ)さいな』
083熊公(くまこう)『ワツハヽヽヽそらア、084(なに)(ぬか)しやがるんだい。085不義理(ふぎり)天上(てんじやう)086日出神(ひのでのかみ)(さま)御入来(ごじゆらい)だ。087エーン、088こりやお(とら)089貴様(きさま)大分(だいぶん)老耄(おいぼれ)たねえ、090浮木(うきき)(もり)女侠客(をんなけふかく)091丑寅(うしとら)()つたら一時(いちじ)()(とり)(おと)(やう)豪勢(がうせい)(いきほひ)だつたが、092何時(いつ)()にやらウラナイ(けう)沈没(ちんぼつ)してフニヤフニヤになつて(しま)つたぢやないか。093こりやお(とら)094(むかし)(こと)をまだ(わす)れては()めえな。095エーン、096(この)熊公(くまこう)はお(まへ)(たい)しては十分(じふぶん)駄々(だだ)()ねるだけの権利(けんり)具備(ぐび)してるのだ。097蠑螈別(いもりわけ)(まへ)だから素破抜(すつぱぬ)くのは(よし)とくが、098ここ(まで)()つたら蠑螈別(いもりわけ)だつて馬鹿(ばか)でない(かぎ)りは大抵(たいてい)合点(がてん)()くだらう。099(この)熊公(くまこう)信者(しんじや)(なか)(まぎ)()み、100(とら)行衛(ゆくゑ)をつきとめむと(うで)(より)をかけ()つて()るのも()らずに聖人面(せいじんづら)(つら)ねて、101よくもまア演壇(えんだん)()ちやがつたな。102(とら)(おほかみ)野干(やかん)(くわ)して卿相雲客(けいしやううんかく)となるとは、103よく()つたものだ。104()(なか)比較的(ひかくてき)馬鹿者(ばかもの)(おほ)いものだなア。105アツハヽヽヽ』
106(とら)『これこれ(くま)さま、107あまりぢやありませぬか。108()()(こと)があるなら(あと)でしつぽり()かして(くだ)さんせ。109蠑螈別(いもりわけ)(まへ)ぢや(ござ)いませぬか』
110熊公(くまこう)『アハヽヽヽ、111チツと都合(つがふ)(わる)いかの。112其方(そちら)都合(つがふ)(わる)けりや此方(こつち)都合(つがふ)がよい。113其方(そちら)都合(つがふ)()けりや此方(こつち)面工(めんく)(わる)い。114(なん)でも()でも()(なか)(こと)(あが)つたり()がつたり唐臼拍子(からうすびやうし)()くものだ。115二世(にせ)(ちぎ)つた(この)熊公(くまこう)が、116それ()(うる)さいのか。117うんよし、118大方(おほかた)貴様(きさま)蠑螈別(いもりわけ)(ふて)(こと)をやつてゐやがるのだらう。119サア有態(ありてい)白状(はくじやう)せい(この)(まま)には(かへ)らないぞ、120エーン』
121蠑螈(いもり)(くま)さま、122何卒(どうぞ)(とら)さまを貴方(あなた)御自由(ごじいう)()れて(かへ)つて(くだ)さい。123(けつ)して(わたし)には未練(みれん)はありませぬからナア』
124(とら)『これ蠑螈別(いもりわけ)さま、125貴方(あなた)(なん)()水臭(みづくさ)(こと)仰有(おつしや)るのだ。126(わたし)にも量見(れうけん)がありますぞや。127(また)(はな)(ねぢ)()げませうか』
128()(あが)強力(がうりき)(まか)せて蠑螈別(いもりわけ)(はな)(ねぢ)やうとする。129蠑螈別(いもりわけ)はお(とら)鼻抓(はなつま)みには懲々(こりごり)してゐるから両手(りやうて)(かほ)(かく)俯向(うつむ)いて(たたみ)にかぶりついたまま、
130蠑螈(いもり)(くま)さま(たす)けて()れえ(たす)けて()れえ』
131(はぢ)外聞(ぐわいぶん)(わす)れて(さけ)んでゐる。132熊公(くまこう)はお(とら)首筋(くびすぢ)をグツと(にぎ)(うしろ)()いた。133途端(とたん)にお(とら)はドスンと尻餅(しりもち)()く。
134(とら)『アイタヽヽヽ(なん)とひどい(こと)をする(をとこ)(こと)135これ、136(くま)さま、137(まへ)ここを(なん)心得(こころえ)()る。138ここは神様(かみさま)のお(あつ)まり(あそ)ばす聖場(せいぢやう)(ござ)んすぞえ、139斯様(かやう)(ところ)呶鳴(どな)つたり、140(ひと)(こか)したり、141そんな乱暴(らんばう)をなすつちや()みますまい。142チツと心得(こころえ)(くだ)さんせえな。143これ魔我彦(まがひこ)144(なに)をグヅグヅして()るのだ。145(はや)末代様(まつだいさま)(この)(こと)(まを)()(くま)さまの乱暴(らんばう)()()()(かへ)して(くだ)さいな』
146熊公(くまこう)『アハヽヽヽお(とら)(やつ)147到頭(とうとう)(よわ)りよつたな。148蠑螈別(いもりわけ)(あさ)から(ばん)まで意茶(いちや)つき喧嘩(けんくわ)をして()(くせ)に、149こんな聖場(せいぢやう)喧嘩(けんくわ)する(こと)アやめて()れえなんて、150ケヽヽヽヽ(けつ)(あき)れるわい。151いや、152チヤンチヤラ可笑(をか)しいわい。153ワツハヽヽヽ』
154(とら)『これ(くま)さま、155(たの)みだから機嫌(きげん)ようお(さけ)()んで、156今日(けふ)(かへ)つて(くだ)さいな。157そして(また)(さけ)()みたくなつたら()(くだ)さい。158さうしておとなしう()んで(くだ)さつたら(さけ)(くらゐ)何程(いくら)でも振舞(ふるま)つてあげますから』
159熊公(くまこう)振舞(ふるま)つてくれるとは、160そりや()しからぬ、161(をつと)女房(にようばう)(ところ)()振舞(ふるま)ふも、162振舞(ふるま)はぬもあつたものかい。163貴様(きさま)(おれ)置去(おきざ)りにして浮木(うきき)(もり)(まで)()()せ、164(がら)にもない女侠客(をんなけふかく)となり沢山(たくさん)野郎(やらう)(ども)()ひやがつて、165虚勢(きよせい)()つてゐよつただないか。166(おれ)貴様(きさま)(うち)()()され、167浮木(うきき)(むら)間誤(まご)ついてゐる(とき)168幾度(いくど)門口(かどぐち)()つたか(わか)らない。169その(とき)(くさ)つた(やう)親爺(おやぢ)()ち、170(この)(くま)さまを多勢(おほぜい)(ちから)()つて袋叩(ふくろだた)きに(いた)した(こと)幾度(いくど)もあるぢやないか。171貴様(きさま)亭主(ていしゆ)としてゐた田子公(たごこう)(やつ)172(おれ)当身(あてみ)(くら)つて、173それが()(つき)となり(もろ)くも国替(くにがへ)をしたと、174(うはさ)()いた(とき)(うれ)しさ、175いや愉快(ゆくわい)さ、176溜飲(りういん)三斗(さんど)ばかり()りた(やう)にあつたわい。177ウワツハヽヽヽ、178もう今日(けふ)となつては貴様(きさま)()(すゑ)だ。179婆嬶(ばばかかあ)子供(こども)相手(あひて)(いた)し、180寅婆(とらばあ)サンと威張(ゐば)つてゐる(やう)では(この)熊公(くまこう)指一本(ゆびいつぽん)()える(こと)出来(でき)やしめえ。181(おれ)(をとこ)だ。182女房(にようばう)肱鉄(ひぢてつ)()らはされて(ふたた)女房(にようばう)になれとは()はねえ。183いや(たの)まれても此方(こちら)からお(ことわ)りだ。184(しか)(なが)魚心(うをごころ)あらば水心(みづごころ)だ。185(なん)とか挨拶(あいさつ)をして(もら)()えものだなア』
186(とら)挨拶(あいさつ)をせえと()ふのはお(かね)でも強請(ゆす)らうと()ふのかい。187(かね)なんか、188神様(かみさま)(みち)にありやせないわ』
189熊公(くまこう)『アハヽヽヽ(とぼ)けな(とぼ)けな、190これ()(ふて)屋台骨(やたいぼね)をしやがつて何程(いくら)ないと()つても(かね)千両(せんりやう)万両(まんりやう)()()いて()(はず)だ。191手切(てぎ)れに綺麗(きれい)薩張(さつぱり)()して(もら)ひませうかい。192蠑螈別(いもりわけ)だつて(おれ)女房(にようばう)自由(じいう)にしたかせぬか()らぬが(ことわ)りなく使(つか)つて()るのだから、193否応(いやおう)()えまい』
194両肌(もろはだ)()入墨(いれずみ)だらけの(かいな)()りまはし、195生地(きぢ)(あら)はして白浪(しらなみ)言葉(ことば)(しき)りに連発(れんぱつ)しだした。
196魔我(まが)『お(とら)さま、197()うなつちや容易(ようい)(かた)づきますまいぜ。198(けち)(こと)()はずに、199それ、200あの一万両(いちまんりやう)(かね)(わた)したら如何(どう)です。201常時(じやうじ)こんな(こと)()つて()(もら)うては(うるさ)いぢやありませぬか』
202(とら)『これこれ魔我彦(まがひこ)203(まへ)(ゆめ)でも()たのか。204何処(どこ)にそんな(たい)した(かね)がありますか。205万両(まんりやう)()つたら庭先(にはさき)(あか)()のなつてる植木(うゑき)(くらゐ)なもんだよ。206しやうもない(こと)()つて(こま)るぢやないか。207(つつし)みなさい。208仮令(たとへ)あつた(ところ)でここは蠑螈別(いもりわけ)のお(やかた)だ。209(わたし)自由(じいう)になりますか』
210熊公(くまこう)『アハヽヽヽ到頭(とうとう)一万両(いちまんりやう)所在(ありか)()つけ()した(やう)なものだ。211サアもう()うなる(うへ)は、212一万両(いちまんりやう)だ、213()(じや)でも一万両(いちまんりやう)だ。214(この)(くま)さまを追払(おつぱら)ふのもヤツパリ一万両(いちまんりやう)だ。215(うる)さい因縁(いんねん)()つて(もら)ふのもヤツパリ一万両(いちまんりやう)だ』
216(とら)『これこれ(くま)さま、217(ひと)()ふては一万両(いちまんりやう)218(ひと)()ふては一万両(いちまんりやう)とそりや(なに)()ふのだい。219あんまり馬鹿(ばか)にしなさんな、220最前(さいぜん)からお(まへ)()(こと)()いて()りや五万両(ごまんりやう)()るぢやないか。221(まへ)一万両(いちまんりやう)でも一銭(いつせん)でもあげる(かね)があれや、222八幡(はちまん)さまに奉納(ほうなふ)(いた)しますわいな。223そんな(よく)(こと)(かんが)へてをると八万地獄(はちまんぢごく)()ちますぞや』
224熊公(くまこう)八万地獄(はちまんぢごく)(どころ)十万億土(じふまんおくど)旅立(たびだち)(たのし)んで()(この)熊公(くまこう)だ。225熊公(くまこう)(おも)正真正銘(しやうしんしやうめい)悪魔公(あくまこう)だよ。226悪魔払(あくまばら)ひに一万両(いちまんりやう)(やす)いものだ。227サアサアキリキリ(はら)うたり(はら)うたり(はら)(たま)へ、228(きよ)(たま)へだ』
229(とら)『そんなヤンチヤを()はずにトツとと(かへ)つて(くだ)さい。230(たの)みだから』
231熊公(くまこう)『そんなら五万両(ごまんりやう)割引(わりびき)して一万両(いちまんりやう)にまけておく。232一万両(いちまんりやう)(やす)いものだらう』
233(とら)()かぬたらしい。234これ(くま)さま、235(なに)()ふのだい。236(わし)(この)ウラナイ(けう)入信(にふしん)した(とき)237()めて()いた一万両(いちまんりやう)(かね)(この)(とほ)立派(りつぱ)なお(みや)()てたのだ。238(その)一万両(いちまんりやう)(ほつ)しければ、239あの(いし)(みや)さまを(ふところ)()れてなつと、240(かつ)いでなつと勝手(かつて)()んで(くだ)さい。241(かね)なんぞ、242ありやせないよ』
243 蠑螈別(いもりわけ)は、244(ちひ)さい(こゑ)(した)をもつらせ(なが)ら、
245蠑螈(いもり)『おいお(とら)246(うるさ)いから()()()つて()なしたらどうだ。247そして今後(こんご)文句(もんく)()はないと書付(かきつ)けをとつておくのだな』
248(とら)『これ蠑螈別(いもりわけ)さま、249(なん)()()(よわ)(こと)仰有(おつしや)るのだ。250生命(いのち)懸替(かけがへ)の、251あの一万両(いちまんりやう)(わた)(くらゐ)なら()んだがましぢやないか。252()うしてお(まへ)さまと(わたし)(この)(さき)やつて()くのだい。253(だま)つて()なさい。254溝壺(どぶつぼ)()てる(かね)()つても(くま)さまなんかへ(わた)(かね)はありませぬぞ。255こんな(ところ)へヌツケリコとやつて()(おも)はぬ苦労(くらう)をかけやがつて、256これ熊公(くまこう)257(この)(とら)さまを(なん)心得(こころえ)てる。258浮木(うきき)(もり)女侠客(をんなけふかく)丑寅(うしとら)サンと()つたら、259ヘン、260(はばか)(なが)(この)(ねえ)さまだ。261前達(まへたち)(やう)一羽鶏(いちはどり)(おびや)かされて屁古垂(へこた)れる(やう)(ねえ)さまぢやありませぬぞや』
262棄鉢(すてばち)気分(きぶん)になり、263入墨(いれずみ)のした(うで)をグツと(まく)り、264一方(いつぱう)(あし)立膝(たてひざ)(なが)(あわ)()()ばし呶鳴(どな)りつけた。265熊公(くまこう)(たけ)(くる)うてお寅婆(とらばば)(たぶさ)()(つか)力限(ちからかぎ)引張(ひつぱ)りまはす。266蠑螈別(いもりわけ)267魔我彦(まがひこ)(この)権幕(けんまく)(きも)(つぶ)し、268(おく)()長持(ながもち)(なか)()(かく)し、269(ふる)(をのの)いてゐる。270(この)(こゑ)()きつけて万公(まんこう)271五三公(いそこう)272アク、273タク、274テクの五人(ごにん)はドヤドヤと(はし)(きた)り、
275万公(まんこう)()つた()つた、276()てと(まを)せば()つたが()からうぞ』
277五三(いそ)何事(なにごと)(もつ)れか()らねえが、278(この)()仲裁(ちゆううさい)(この)五三公(いそこう)(あづ)かりやせう』
279故意(わざ)とに白浪(しらなみ)言葉(ことば)使(つか)つて(おど)しにかかる。
280熊公(くまこう)『アハヽヽヽ小童子(こわつぱ)野郎(やらう)()んな(ところ)()()し、281俺達(おれたち)喧嘩(けんくわ)仲裁(ちゆうさい)するとは片腹痛(かたはらいて)え、282弥之助人形(やのすけにんぎやう)空威張(からゐば)り、283そんな(こと)屁古垂(へこた)れて、284酔泥(よひどれ)熊公(くまこう)のお(かほ)()つと(おも)ふかエーン、285小童子武者(こわつぱむしや)()(まく)ぢやない。286すつこんで(ござ)れ』
287アク『あいや酔泥(よひどれ)熊公(くまこう)とやら、288(しばら)()つたがよからうぞ。289(われ)こそはバラモン(けう)大目付(おほめつけ)片彦(かたひこ)将軍(しやうぐん)(ござ)るぞ。290(なに)血迷(ちまよ)うて斯様(かやう)(ところ)乱暴(らんばう)にやつてうせたか、291()しからぬ代物(しろもの)だ。292おい家来(けらい)(ども)293大自在天(だいじざいてん)より(さづ)かりし金縛(かなしば)りの妙法(めうはふ)(もつ)(この)乱暴者(らんばうもの)手痛(ていた)くふン(じば)れ』
294五三(いそ)『もしもし片彦(かたひこ)将軍(しやうぐん)(さま)295腹立(はらだ)ちは御尤(ごもつと)(なが)様子(やうす)()かず、296ふン(じば)るとは無慈悲(むじひ)(まを)すもの、297何卒(なにとぞ)イルナの侠客(けふかく)五三公(いそこう)サンに(この)()はお(まか)(くだ)さる(わけ)には()きますめえか』
298アク『飽迄(あくまで)(につく)(やつ)なれど、299当時(たうじ)売出(うりだ)しの侠客(けふかく)(その)(はう)(まを)(こと)300無下(むげ)(ことわ)(わけ)にも()くまい。301そんなら(その)(はう)(この)()解決(かいけつ)一任(いちにん)する。302万一(まんいち)ゴテゴテ(ぬか)すに()いては容赦(ようしや)はならぬぞ』
303五三(いそ)『ハイ、304委細(ゐさい)承知(しようち)(つかまつ)りやした。305(わたし)当時(たうじ)売出(うりだ)しの侠客(けふかく)306(いのち)()へても(この)()落着(らくちやく)をつけて御覧(ごらん)()れやせう。307万々一(まんまんいち)()かねば(この)()割腹(かつぷく)(いた)して()せやせう。308さすれば貴方(あなた)御自由(ごじいう)御成敗(ごせいばい)(あそ)ばしやせえ』
309アク『(しか)らば(しばら)別間(べつま)(ひか)へて()る。310万公(まんこう)311タク、312テク、313()(うしろ)(したが)つて()い。314五三公(いそこう)親分(おやぶん)315さらばで(ござ)る』
316(ひぢ)()悠々(いういう)として(わら)ひを(しの)(なが)大広間(おほひろま)さして()つて()く。
317(とら)『これはこれは片彦(かたひこ)将軍(しやうぐん)(さま)318(たふと)御身(おんみ)(もつ)()らせられました。319これと(まを)すも神様(かみさま)御神徳(ごしんとく)320いやもう()(がた)(ござ)います』
321五三(いそ)『ハルナの(くに)(とき)めき(たま)大黒主(おほくろぬし)右守(うもり)(かみ)(きこ)えたる鬼春別(おにはるわけ)将軍(しやうぐん)部下(ぶか)322片彦(かたひこ)将軍(しやうぐん)は、323(いま)数万(すうまん)軍勢(ぐんぜい)()()斎苑(いそ)(やかた)進軍(しんぐん)途中(とちう)324小北山(こぎたやま)神徳(しんとく)325いやちこなりと()戦勝(せんしよう)祈願(きぐわん)のため、326浮木(うきき)(もり)軍隊(ぐんたい)(とど)め、327(すこ)しの部下(ぶか)(ともな)参詣(さんけい)(いた)したもの、328(かみ)のお(しめ)しによればアバ()(をとこ)熊公(くまこう)なるもの、329(かみ)(つかさ)蠑螈別(いもりわけ)殿(どの)330(その)()(とら)殿(どの)(むか)つて無体(むたい)脅迫(けうはく)(こころ)みしと()き、331()るものも()(あへ)ず、332此処(ここ)()()れば、333不都合(ふつがふ)千万(せんばん)(この)始末(しまつ)334片彦(かたひこ)将軍(しやうぐん)(さま)(れい)(もつ)(この)五三公(いそこう)(れい)(つた)(たま)うた。335片彦(かたひこ)将軍(しやうぐん)御身魂(おみたま)宿(やど)つた(この)五三公(いそこう)(さま)仲裁(ちゆうさい)()つても、336よもや不足(ふそく)ぢやあるめえ、337のう、338熊公(くまこう)とやら』
339熊公(くまこう)『ハイ、340貴方(あなた)(ごと)(たふと)きお(かた)仲裁(ちゆうさい)(らう)(わづら)はし、341(まこと)光栄(くわうえい)(ぞん)じます。342いやもう今日(こんにち)(かぎ)りスツパリ(こころ)(あらた)め、343今後(こんご)(けつ)して(この)(やかた)足踏(あしぶ)みを(いた)しませぬ。344何卒(どうぞ)御安心(ごあんしん)(くだ)さいませ』
345五三(いそ)早速(さつそく)納得(なつとく)346いや片彦(かたひこ)将軍(しやうぐん)神霊(しんれい)五三公(いそこう)哥兄(あにい)もズンと満足(まんぞく)いたした。347()いてはお(とら)殿(どの)348蠑螈別(いもりわけ)殿(どの)349わつちも侠客(けふかく)だ。350片手落(かたてお)ちの(こと)はやられねえ。351当座(たうざ)草鞋銭(わらぢせん)だと(おも)つて(この)(くま)サンに一千両(いつせんりやう)(かね)をスツパリとお(わた)しなせえ。352蠑螈別(いもりわけ)さまもこれで解決(かいけつ)つくならば(やす)いものだらう。353ほんの(つま)(せん)だ。354アハヽヽヽ』
355(とら)親方(おやかた)さまの御仲裁(ごちゆうさい)356(なに)しに(そむ)きませう。357(わたし)も、358もとは女侠客(をんなけふかく)359侠客(けふかく)意地(いぢ)はよく()()んで()ります。360そんなら貴方(あなた)のお(かほ)(めん)じて千両(せんりやう)(かね)(わた)しますから、361今後(こんご)(くま)さまが(なん)にも()つて()ない(やう)にして(くだ)さいませ』
362五三(いそ)『いや承知(しようち)(いた)しやした。363流石(さすが)姐貴(あねき)だ。364スツパリしたものだ。365おい熊公(くまこう)366如何(どう)だ。367これで文句(もんく)はあるめえな』
368熊公(くまこう)『いやもう有難(ありがた)(ござ)ります。369千両(せんりやう)(かね)さへあれば五年(ごねん)十年(じふねん)(うめ)(さけ)(いただ)けます。370いやもう有難(ありがた)(ござ)りやした』
371 お(とら)(つぎ)()から小判(こばん)千両(せんりやう)とり()し、
372(とら)『さあ五三公(いそこう)親分(おやぶん)さま、373これを引替(ひきか)へに証文(しようもん)()つて()いて(くだ)さいませ』
374五三(いそ)『アハヽヽヽ証文(しようもん)をとるのは未来(みらい)人間(にんげん)のする(こと)だ。375(をとこ)一旦(いつたん)約束(やくそく)をした(こと)万古末代(まんごまつだい)磐石(ばんじやく)(ごと)(けつ)して(うご)くものぢやねえ。376熊公(くまこう)如何(どう)だ』
377熊公(くまこう)『はいはい、378(わたし)(をとこ)です、379如何(どう)してゴテゴテ(まを)しませう。380おい、381(とら)382安心(あんしん)して()れ。383有難(ありがた)え、384(まへ)が、385ありや、386こりや()けりや、387こりや、388うまいお(さけ)()めるのだ。389チヨイ チヨイ チヨイの頂戴(ちやうだい)だ』
390両手(りやうて)(あは)(てのひら)仰向(あふむ)けにして上下(うへした)(ゆす)つて()る。
391五三(いそ)『それ、392千両(せんりやう)だ。393(たしか)受取(うけと)れ』
394熊公(くまこう)『ハイ、395有難(ありがた)う。396万古末代(まんごまつだい)397あんたの御恩(ごおん)(わす)れませぬ。398そしてお(とら)(こと)只今(ただいま)(かぎ)(わす)れます』
399()ふより(はや)(ふところ)捻込(ねぢこ)長居(ながゐ)(おそ)れと()はぬばかりトントントンと坂道(さかみち)()()(ごと)(かへ)()く。
400大正一一・一二・一二 旧一〇・二四 北村隆光録)