霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一五章 曲角狸止(まがつのりと)〔一二〇五〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第45巻 舎身活躍 申の巻 篇:第4篇 鬼風獣雨 よみ:きふうじゅうう
章:第15章 曲角狸止 よみ:まがつのりと 通し章番号:1205
口述日:1922(大正11)年12月13日(旧10月25日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年9月12日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
五三公は皆から先生とあだ名され、調子に乗ってしまう。タクからウラナイ教の小北山の因縁について聞かれ、解説を始めた。
常世の国から渡ってきた古狐が、野狐や古狸を引率して高姫に憑依し、国治立大神を看板にして世界を思うとおりに乱そうとしたのが始まりだと説いた。狐どもは変性女子に見抜かれるたびに憑依する肉体を替えながら、三五教を打ち壊そうと計画し狙っているのがこの小北山という場所なのだという。
松姫と松彦は、その小北山を抑えるために神様が派遣したのだという。五人がこんな話をする間に、蠑螈別はまた酒を飲み始めた。お寅は蠑螈別のお酌をお菊におしつけて行ってしまった。
蠑螈別は酔いが回ってお寅の悪口を言い、高姫を懐かしむ歌を歌いだした。外に出てきたお寅は、立ち聞きしている五人を見咎めたが、五三公はとっさに蠑螈別をほめたたえてお寅の矛先をかわした。
お寅は一同を連れて神前に行き、曲津祝詞を上げる。万公はそのでたらめさに茶々を入れるが、うまくお寅をかわし、寝に就くことになった。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:
愛善世界社版:237頁 八幡書店版:第8輯 334頁 修補版: 校定版:249頁 普及版:93頁 初版: ページ備考:
001 五三公(いそこう)観物三昧経(くわんぶつさんまいきやう)説明(せつめい)のおかげで、002四人(よにん)連中(れんちう)からたうとう先生(せんせい)といふ仇名(あだな)をつけられて(しま)つた。003五三公(いそこう)先生(せんせい)()はれてよい()になり、004ウンウンと返詞(へんじ)をすることになつて(しま)つた。005そしてアク(こう)中上(ちうじやう)先生(せんせい)仇名(あだな)し、006万公(まんこう)中下(ちうげ)先生(せんせい)(とな)へ、007タクは番外(ばんぐわい)先生(せんせい)008テクはチヨボチヨボ先生(せんせい)(たがひ)()びなす(やう)になつた。
009タク『モシ先生(せんせい)010小北山(こぎたやま)(かみ)因縁(いんねん)()いては最前(さいぜん)(とら)()アさまの(まへ)でお(うた)ひになりましたが、011如何(どう)して(また)こんなバカなことが出来(でき)たものでせうかな』
012五三(いそ)(これ)(つい)ては随分(ずゐぶん)面白(おもしろ)秘密(ひみつ)があるのだ。013所謂(いはゆる)一輪(いちりん)秘密(ひみつ)だ。014常世(とこよ)(くに)から(わた)つて()大変(たいへん)(ふる)斑狐(まんだらぎつね)(しろ)(きつね)二匹(にひき)015古狸(くろさん)三疋(さんびき)016それから野狐(やかん)幾疋(いくひき)ともなく引率(いんそつ)して、017波斯(フサ)(くに)北山村(きたやまむら)本山(ほんざん)(あら)はれ、018バラモン(けう)一寸(ちよつと)(くび)突出(つきだ)してゐた精神上(せいしんじやう)欠陥(けつかん)のあるヒポコンデル患者(くわんじや)高姫(たかひめ)といふ(をんな)憑依(ひようい)して、019(この)()(みだ)し、020国治立(くにはるたち)大神様(おほかみさま)看板(かんばん)にして、021自分(じぶん)世界(せかい)にせうと(かんが)へたのが(おこ)りだ。022そした(ところ)023(この)高姫(たかひめ)(わか)(とき)随分(ずゐぶん)情交(いろごと)()きで、024(その)斑狐(はんこ)サンが(おも)(やう)肉体(にくたい)使(つか)ふことが出来(でき)なかつたものだから、025やむを()ず、026ネタ(くま)といふ(わか)(をとこ)(たい)をかり、027上谷(かみだに)といふ(ところ)で、028謀反(むほん)(たく)みかけたのだ。029そした(ところ)030変性男子(へんじやうなんし)御霊(みたま)と、031変性女子(へんじやうによし)御霊(みたま)(あら)はれて審神(さには)(あそ)ばしたものだから、032斑狐(はんこ)サンたまりかね、033部下(ぶか)狐狸(こり)(ども)(ひき)つれ、034小北(こぎた)(やま)一目散(いちもくさん)逃帰(にげかへ)つて(しま)つたのだ。035さうすると、036ネタ(くま)肉体(にくたい)小北山(こぎたやま)()なくなり、037二三日(にさんにち)逗留(とうりう)する(うち)に、038神罰(しんばつ)(かうむ)つて国替(くにがへ)をして(しま)つた。039それから今度(こんど)斑狐(はんこ)サン、040(また)もや坂熊(さかくま)といふ(をとこ)肉体(にくたい)()ぐひ、041金勝要神(きんかつかねのかみ)肉宮(にくみや)()()れ、042変性女子(へんじやうによし)(しりぞ)け、043一芝居(ひとしばゐ)やらうと(おも)うた(ところ)044(また)もや女子(によし)御霊(みたま)看破(かんぱ)され、045ゐたたまらなくなつて、046アーメニヤへ逃出(にげいだ)し、047ウラル(けう)沈没(ちんぼつ)して(しま)つた。048そこで今度(こんど)執念(しふねん)(ぶか)斑狐(はんこ)サンは、049石高(いしたか)といふ(をとこ)肉体(にくたい)()をくみ、050変性女子(へんじやうによし)(むか)うを()り、051日出神(ひのでのかみ)名乗(なの)つて、052三五教(あななひけう)蹂躙(じうりん)せむとした(ところ)053今度(こんど)変性男子(へんじやうなんし)054女子(によし)看破(かんぱ)され、055これ(また)キツイ神罰(しんばつ)肉体(にくたい)国替(くにがへ)したので、056今度(こんど)はミソ(きう)といふ山子男(やまこをとこ)肉体(にくたい)をかつた、057そして(また)女子(によし)大反対(だいはんたい)をやつてみたが、058目的(もくてき)(たつ)せず、059此奴(こいつ)もアーメニヤの方面(はうめん)逃失(にげう)せて(しま)つた。060それから(また)種熊(たねくま)肉体(にくたい)使(つか)ひ、061大奮闘(だいふんとう)をやつて女子(によし)手古(てこ)づらせ、062たうとう此奴(こいつ)神罰(しんばつ)国替(くにがへ)をして(しま)つた。063それから今度(こんど)(うつ)つたのが蠑螈別(いもりわけ)さまだ、064蠑螈別(いもりわけ)には斑狐(はんこ)サンが籠城(ろうじやう)(あそ)ばし、065左右(さいう)のお脇立(わきだち)白狐(はくこ)サンは、066伴鬼世(ばんきよ)067角鬼世(つのきよ)068味噌勘(みそかん)069石黒彦(いしぐろひこ)070坂虫(さかむし)071などに眷族(けんぞく)をうつして、072四方(しはう)八方(はつぱう)から三五教(あななひけう)(うち)こわさむと、073(いま)計画(けいくわく)真最中(まつさいちう)なのだ、074(しか)(なが)悪神(あくがみ)のすることはいつも(しり)(むす)べないから(さい)河原(かはら)子供(こども)(いし)をつむ(はなし)(やう)なものだよ』
075万公(まんこう)『さうすると(この)小北山(こぎたやま)容易(ようい)ならない(ところ)だ。076根本的(こんぽんてき)改革(かいかく)して世界(せかい)(わざはひ)をたたねばダメだなア、077先生(せんせい)
078五三(いそ)『さうだから、079松彦(まつひこ)(さま)がお()でになつたのだ。080神様(かみさま)(えら)いものだ、081チヤンと松姫(まつひめ)(さき)派遣(はけん)しておかれたのだからなア、082悪神(あくがみ)といふ(もの)は、083自分(じぶん)より(うへ)(はう)()(こと)出来(でき)ないので、084松姫(まつひめ)さまの(はら)(なか)()らず、085本当(ほんたう)唯一(ゆゐいつ)神柱(かむばしら)出来(でき)たと(よろこ)んで(たてまつ)つてゐるのだよ』
086万公(まんこう)『アハヽヽヽ、087其奴(そいつ)面白(おもしろ)い、088さうすると、089松姫(まつひめ)さまを(しん)から上義姫(じやうぎひめ)だと(おも)つてゐるのだなア』
090五三(いそ)松姫(まつひめ)(さま)は、091上義姫(じやうぎひめ)(さま)誠生粋(まこときつすゐ)(にく)宮様(みやさま)確信(かくしん)してるから面白(おもしろ)いのだ、092そして松彦(まつひこ)さまをユラリ彦命(ひこのみこと)だと(かた)(しん)じてゐる(ところ)がこちらの附目(つけめ)だ、093最早(もはや)落城(らくじやう)したも同様(どうやう)だよ』
094万公(まんこう)益々(ますます)愉快(ゆくわい)でたまらなくなつた、095なア中上(ちうじやう)先生(せんせい)096番外(ばんぐわい)先生(せんせい)097チヨボチヨボ先生(せんせい)098怪体(けたい)ぢやないか、099エヽー』
100アク『アク(まで)アクの()()()り、101万公末代(まんこうまつだい)五三々々(ごさごさ)せぬ(やう)(まこと)(みち)開拓(かいたく)し、102テクテク()(すす)めるとするのだなア、103ハツハヽヽヽ』
104 五人(ごにん)はこんな(はなし)(うつつ)をぬかし、105蠑螈別(いもりわけ)居室(きよしつ)窓外(さうぐわい)自分(じぶん)()つてゐる(こと)(わす)大声(おほごゑ)(しやべ)つて(しま)つた。106蠑螈別(いもりわけ)はお(きやう)をすませ、107(また)もやグイグイと(さけ)()(はじ)めたらしい。108ケチン、109ケンケラケンと燗徳利(かんどつくり)(さかづき)のかち()(おと)(きこ)えてゐる。110(とら)五人(ごにん)立話(たちばなし)一伍一什(いちぶしじふ)()いて(しま)つた。
111 お(とら)蠑螈別(いもりわけ)(さけ)用意(ようい)をなし、112(なに)くはぬ(かほ)で、
113(とら)『サア蠑螈別(いもりわけ)さま、114ドツサリおあがりなさいませ。115一寸(ちよつと)(わたし)はお広前(ひろまへ)まで御礼(おれい)にいつて(まゐ)ります、116コレお(きく)117教祖様(けうそさま)のお(さけ)相手(あひて)をするのだよ』
118(きく)『あたえ、119(いや)だワ、120(さけ)のお給仕(きふじ)はお()アさまの(やく)だよ。121あたえはお広間(ひろま)(まゐ)つて()ますから、122()アさまは教祖(けうそ)さまのお給仕(きふじ)をして()げて(くだ)さいな、123そして(つめ)つたり(はな)をねぢたりせぬ(やう)にして(くだ)さい、124あたえ心配(しんぱい)でならないワ』
125(とら)(わたし)がお給仕(きふじ)をしてゐると(また)あんなランチキ(さわ)ぎが(おこ)つちや大変(たいへん)だから、126それでお(まへ)にお給仕(きふじ)をしてくれと()つたのだよ』
127(きく)『さうだつて、128あたえ、129(いや)なのよ。130教祖(けうそ)さまは腋臭(わいが)だから、131()アさまにねぢられなくても、132(あたえ)(はな)(ひと)りでねぢ(まが)るのよ』
133(とら)『エヽ(くち)(わる)()だな、134そんな失礼(しつれい)なことを()つちやすまないよ、135蠑螈別(いもりわけ)さま、136どうぞ子供(こども)()ふことだから()にかけない(やう)にして(くだ)さいよ』
137 蠑螈別(いもりわけ)(ほそ)()をつり()げ、138(くち)(とが)らして(はな)背比(せくら)べさせ(なが)ら、
139蠑螈(いもり)『ウフヽヽヽ、140これお(きく)141マア()いぢやないか、142おれの腋臭(わいが)でも(よろこ)(ひと)があるのだもの、143そうムゲにこきおろすものだない』
144(きく)『さうよ、145教祖(けうそ)さまの腋臭(わいが)()きな(ひと)高姫(たかひめ)さまかお()アさまだよ、146オホヽヽヽ』
147(とら)『コレコレ(なに)()ふのだ。148(しか)(なが)らお(まへ)()(とほ)り、149蠑螈別(いもりわけ)さまは高姫(たかひめ)さまの腋臭(わいが)()きなのだからねえ、150(わたし)もどうかして腋臭(わいが)になりたいのだけれど、151不器用(ぶきよう)(うま)れつきだから、152チツとも持合(もちあは)せがないのよ。153ホツホヽヽヽ』
154蠑螈(いもり)『お(とら)さまは腋臭(わいが)(かは)りにトベラだから、155マアそれでバランスが()れるといふものだ』
156(きく)『ホヽヽヽヽ、157腋臭(わいが)にトベラ、158(なん)とマアいいコントラストだこと、159(かみ)さまも随分(ずゐぶん)皮肉(ひにく)だね、160イヒヽヽヽ』
161(とら)蠑螈別(いもりわけ)さま、162一寸(ちよつと)(これ)から御神前(ごしんぜん)(まゐ)つて()ます、163ぢきに(かへ)りますから』
164蠑螈(いもり)『ウン、165独酌(どくしやく)(はう)(かへつ)興味(きようみ)がある、166トベラの(にほ)ひが(さけ)混合(こんがふ)すると(あま)りうまくないからなア』
167(とら)『わいがの(にほ)ひが混合(こんがふ)するといいんだけれど、168ヘン』
169()(なが)ら、170ツンとして立上(たちあが)り、171(たたみ)(きびす)でポンと(ひと)威喝(ゐかつ)させ(なが)(おもて)飛出(とびだ)した。172蠑螈別(いもりわけ)はお(きく)相手(あひて)にグヅグヅと(くち)(おく)(わか)らぬことを(しやべ)りつつお(きく)につがせては八百万(やほよろづ)(かみ)にお(そな)へしてゐる。
173(きく)『ホツホヽヽヽ、174(なん)とマア青白(あをじろ)(かほ)だこと、175(まる)文助(ぶんすけ)さまの何時(いつ)()いてゐらつしやる(かぶら)目鼻(めはな)つけたよな(かほ)だワ。176それでも大根(だいこん)(やう)(かたち)した(しろ)燗徳利(かんとくり)がお()きだからねえ。177ホヽヽヽヽ、178そして(この)朝顔型(あさがほがた)(さかづき)高姫(たかひめ)さまの口元(くちもと)()とるんだから面白(おもしろ)いワ、179教祖(けうそ)さま、180サア、181(この)(さかづき)(ひと)つキツスなさいませ。182随分(ずゐぶん)よい(あぢ)(いた)しますよ』
183蠑螈(いもり)『ヤア朝顔型(あさがほかた)(さかづき)は、184危険視(きけんし)されるから()めておこう』
185(きく)『さうですねえ、186よう(たた)(さかづき)ですなア。187あたえも(この)(さかづき)みるとゾツとするワ、188(また)つねられたり、189(はな)(ねぢ)られたり、190(いき)()をとめられたりするよなことを突発(とつぱつ)させるのだから、191本当(ほんたう)(にく)らしい猪口才(ちよこざい)猪口(ちよこ)ですねえ、192(この)猪口(ちよこ)のおかげでチヨコチヨコと腋臭(わいが)とトベラの直接(ちよくせつ)行動(かうどう)(はじ)まるのだから、193本当(ほんたう)(この)(さかづき)こそ過激(くわげき)思想(しさう)包蔵(はうざう)してゐるのだワ』
194蠑螈(いもり)『お(まへ)もお(とら)(むすめ)(だけ)あつて、195随分(ずゐぶん)(くち)()(をんな)だ、196(こま)つた(もの)だのう』
197(きく)(なに)貴方(あなた)(こま)(はず)はないワ、198(いぬ)もくはない喧嘩(けんくわ)煽動(せんどう)するのは(この)猪口(ちよこ)だから、199(こま)るのは(そば)()てゐる(この)(きく)だワ』
200蠑螈(いもり)『そんなら此処(ここ)にある菊型(きくがた)(さかづき)一杯(いつぱい)やつたら安全(あんぜん)だろ、201なアお(きく)
202(きく)『イヤですよ、203(わたし)()()(さかづき)(くち)()てて(もら)うこた、204真平御免(まつぴらごめん)だ』
205()(なが)ら、206(うす)(ひら)たい陶器(すへもの)(さかづき)をグツとひん(にぎ)矢庭(やには)(たもと)へかくして(しま)つた。
207 蠑螈別(いもりわけ)はソロソロ(よひ)がまはり()した。
208高姫山(たかひめやま)から谷底(たにそこ)()れば
209(とら)(やつ)めがウロウロと
210(きく)小虎(ことら)(ひき)つれて
211(いぬ)()はない(もち)()
212ホンに浮世(うきよ)はこしたものか
213(おも)へば(おも)へば自烈(じれつ)たい。
214世界(せかい)(をんな)沢山(たくさん)あれど
215トベラの(をんな)(くら)ぶれば
216腋臭(わいが)(つよ)(たか)チヤンは
217蠑螈別(いもりわけ)(いのち)(おや)だ。
218()きは()()(いや)()
219ホンに浮世(うきよ)(まま)ならぬ。
220わしと(たか)ちやんはお(くら)(こめ)
221いつか()()てママとなる。
222ままになるならトベラの()さま
223どつかへ嫁入(よめい)りさして()たい。
224八木(やぎ)()()米国(べいこく)(べい)
225()()といふ()日本(にほん)()()
226蠑螈別(いもりわけ)さまは日出神(ひのでのかみ)
227(ひかり)()()けママとなる。
228 デツカンシヨウ デツカンシヨウ……だ。229オイお(きく)230(まへ)随分(ずゐぶん)(くち)八釜(やかま)しい(をんな)だから、231(とら)直様(すぐさま)密告(みつこく)するだらうなア』
232(きく)(いま)(うち)十分(じふぶん)悪口(あくこう)をついておきなさい。233(わたし)(けつ)して()ひませぬ。234(しか)貴方(あなた)がお(さけ)()ふと後先(あとさき)()ずに、235()アさまの(まへ)でそんなこと仰有(おつしや)るからホンにオロオロするワ、236末代日(まつだいひ)王天(わうてん)大神様(おほかみさま)がおこし(あそ)ばしてるに、237みつともない、238イチヤ(つき)喧嘩(けんくわ)をおつぱじめるなんて、239()くびつた(ひと)ですねえ』
240蠑螈(いもり)『お(まへ)さへ()はなきやそれで()い、241(おれ)()るべく()はぬ(つも)りだ。242(しか)しあのお(とら)といふ(やつ)ア、243(まへ)のお()アだから、244エヽこんなこといつたら(わる)からうが、245(かほ)にも似合(にあ)はぬ助平(すけべえ)だよ、246おりやモウ、247スーツカリと(いや)になつちやつたのだ。
248いやで(さいは)()かれてなろか
249愛想(あいさう)づかしをまつわいな。
250いやぢや いやぢやと(くち)では()へど
251(えん)()るとなりや(また)いやだ』
252(きく)『ホヽヽヽヽ、253いいかげんに若後家(わかごけ)をつかまへて、254てらしておきなさい』
255蠑螈(いもり)『ハヽヽヽヽ、256ちつと()いてゐやがるなア、257若後家(わかごけ)だといの、258(をとこ)()つた(おぼ)えもないのに、259若後家(わかごけ)とはふるつてる、260さうするとお(きく)(まへ)純粋(じゆんすゐ)処女(しよぢよ)ではないなア、261(たれ)にハナヅルを()れて(もら)つたのだ』
262(きく)(うし)(なん)ぞの(やう)(はな)づるなんて、263バカにして(くだ)さいますな、264油断(ゆだん)のならぬは(むすめ)ですよ。265かげ(うら)(まめ)もハヂける(とき)()れば、266自然(しぜん)にハヂけますわ。267ホツホヽヽヽ』
268 (かく)(ごと)くお(きく)相手(あひて)水色(みづいろ)のうす(よご)れた昼夜(ちうや)着替(きがへ)なしの木綿着物(もめんぎもの)()たまま、269クビリクビリと(とき)(うつ)るも()らず、270(さかづき)(かず)(かさ)ねて()る。271一方(いつぱう)(とら)門口(かどぐち)()つてゐる五人(ごにん)(をとこ)(みと)め、
272(とら)『コレ(みな)さま、273そんな(ところ)(なに)してゐらつしやるの、274(なに)立聞(たちぎき)でもしてゐなさつたのだありませぬかい』
275五三(いそ)『ハイ立聞(たちぎき)をさして(いただ)きました。276あの教祖様(けうそさま)がお()げになつて()つたのは観物三昧経(くわんぶつさんまいきやう)でしたね。277声音(こはね)といひ(ふし)まはしと()ひ、278本当(ほんたう)調子(てうし)がよく()つて、279()らず()らず吾々(われわれ)身体(からだ)躍動(やくどう)し、280(その)言霊(ことたま)(とく)吸引(きふいん)されて、281何時(いつ)()にやら(まど)(そと)まで(ひき)よせられて(しま)つたのですよ、282(なん)とマア(えら)先生(せんせい)ですね』
283とうまく五三公(いそこう)はさばいた。284(とら)怪訝(けげん)()()はつて、285(いささ)不機嫌(ふきげん)(てい)であつたが、286蠑螈別(いもりわけ)(こゑ)がよいとか、287(ふし)上手(じやうづ)だとか()つて()めた(ことば)(うれ)しさの(あま)り、288(なに)もかも打忘(うちわす)れ、289ニコニコし(なが)ら、
290(とら)『さう(きこ)えましたかなア、291本当(ほんたう)によい(こゑ)でせうがな、292サアお広間(ひろま)(まゐ)りませう』
293万公(まんこう)『ハイ、294有難(ありがた)う、295(とも)(いた)しませう』
296 お(とら)得意(とくい)(はな)うごめかし(なが)ら、297機嫌(きげん)よげに(さき)()つ。298アクは小声(こごゑ)で、
299アク『成程(なるほど)あの(にご)つた言霊(ことたま)でああやられちや、300(まこと)(かみ)(きら)つて()()(たま)はず、301せうもないガラクタ(がみ)密集(みつしふ)するのは当然(あたりまへ)だ、302言霊(ことたま)といふものは(つつし)まねばならぬものだなア』
303とウツカリ(あと)(はう)(おほ)きく()つて(しま)つた。304(とら)()(まる)くし、305(あと)ふり(かへ)り、
306(とら)『エヽ(なん)仰有(おつしや)ります、307蠑螈別(いもりわけ)さまの言霊(ことたま)(にご)つてゐるのですか』
308アク『イエイエ(にご)つた(ところ)もあり澄切(すみき)つた(ところ)もあります、309それだから(えら)いお(かた)()つたのですよ。310大海(たいかい)濁川(だくせん)()れて(その)(いろ)(へん)ぜずとかいひましてなア、311清濁(せいだく)(あは)()蠑螈別(いもりわけ)(さま)度量(どりやう)には随分(ずゐぶん)感服(かんぷく)(いた)しましたよ』
312 お(とら)(また)機嫌(きげん)(なほ)して、
313(とら)本当(ほんたう)にさうですね』
314テク『オイ、315アク、316(いや)中上(ちうじやう)先生(せんせい)317清濁(せいだく)(あは)()むといふのは(なに)か、318清酒(せいしゆ)濁酒(だくしゆ)一所(いつしよ)蠑螈別(いもりわけ)さまはおあがりなさるかい』
319アク『バカツ、320スツ()んで()れ』
321テク『へン、322偉相(えらさう)仰有(おつしや)るワイ、323イヒヽヽヽだア』
324(とら)『サア、325(みな)さま、326一同(いちどう)(そろ)うて御礼(おれい)(いた)しませう』
327神殿(しんでん)(まへ)仔細(しさい)らしくすわる。328(とら)四拍手(しはくしゆ)(なが)(こゑ)(たか)らかに曲津祝詞(まがつのりと)を、
329『かかまの(はら)餓鬼(がき)つまります。330かん徳利(どくり)(かん)ざましのみこともちて、331(すずめ)親方(おやかた)332かんたか(ひめ)(みこと)333(うそ)をつくしの()()の、334高姫(たかひめ)のおいどのクサギが(はら)に、335味噌(みそ)すり(はら)(たま)(とき)に、336()きませる、337金払戸(かねはらひど)狼達(おほかみたち)338モサクサの間男(まをとこ)339(つみ)(けが)れを(はら)(たま)(きよ)(たま)へと()(まを)すことの(よし)を、340曲津神(まがつかみ)341クダケ(がみ)342山子万(やまこよろづ)(おほかみ)(とら)(とも)に、343馬鹿(うましか)(みみ)ふるひ()てて、344おみききこしめせと、345カチコメ カチコメ(まを)す。346ウラナイの雀大御神(すずめおほみかみ)347(まが)(たま)(さか)らへ(たま)へ、348ポンポン』
349万公(まんこう)『アハヽヽヽ』
350(とら)『コレ何方(どなた)()らぬが、351曲津祝詞(まがつのりと)()げてる(とき)(わら)ふとは何事(なにごと)ですか、352チツと(つつし)んで(くだ)さい、353ここは(おほかみ)(まへ)ですよ、354(おほかみ)さまにお(とら)祝詞(のりと)()げて()るのだ』
355万公(まんこう)(とら)(おほかみ)356(なん)とよい対照(たいせう)だなア、357ここがウラナイ(けう)のウラナイ(けう)たる所以(ゆゑん)だ』
358 お(とら)一生懸命(いつしやうけんめい)(いの)()した。
359(うそ)つきの狼様(おほかみさま)360ヤク()狼様(おほかみさま)361曲津日(まがつひ)(たま)362イタチ(てん)狼様(おほかみさま)363落滝津速川(おちたきつはやかは)狼様(おほかみさま)364てん手古舞(てこまひ)(おほかみ)さま、365リントウ鉢巻(はちまき)ビテングの狼様(おほかみさま)366木曽義仲姫(きそうよしなかひめ)狼様(おほかみさま)367上杉謙信姫(うへすぎけんしんひめ)狼様(おほかみさま)368生羽(いきば)ぬかれ(ひこ)神社(じんしや)狼様(おほかみさま)369(いは)テコ(ひめ)狼様(おほかみさま)370五六七成就(みろくじやうじゆ)邪魔(じやま)狼様(おほかみさま)371夕日(ゆふひ)豊栄下(とよさかくだ)りの狼様(おほかみさま)372不義理天上内(ふぎりてんじやううち)から()()狼様(おほかみさま)373軽業師玉(かるわざしたま)のり(ひめ)狼様(おほかみさま)374バカの大将軍様(だいしやうぐんさま)375蠑螈別(いもりわけ)のおね()(まも)(たま)ふお床代姫(とこよひめ)狼様(おほかみさま)376種物神社御夫婦様(たねものじんしやごふうふさま)377悪魔(あくま)根本地(こつぽんち)十六柱(じふろくはしら)狼様(おほかみさま)378(さかひ)神政松(しんせいまつ)御神木様(ごしんぼくさま)379何卒々々(なにとぞなにとぞ)(あさ)(ゆふ)なの御神徳(ごしんとく)(かうむ)りまして、380蠑螈別(いもりわけ)がヨクの熊高姫(くまたかひめ)(おも)()りますやうに、381そして(この)丑寅婆(うしとらばあ)サン姫命(ひめのみこと)此上(こよ)なきものとめでいつくしみくれます(やう)に、382(その)(つぎ)にはお菊姫命(きくひめのみこと)383万公(まんこう)因縁(いんねん)(ござ)りまするならば、384どうぞ一時(いちじ)(はや)()はしておやり(くだ)さいませ、385ハン()さんの、386どこ(まで)正体(しやうたい)(あら)はれませぬ(やう)387御注意(ごちうい)(くだ)さいますやう、388これが第一(だいいち)御願(おねがひ)(ござ)います。389そして末代火(まつだいひ)王天(わうてん)大神様(おほかみさま)肉宮(にくみや)390不情誼姫(ふじやうぎひめ)(さま)肉宮(にくみや)が、391どこ(まで)(この)小北山(こぎたやま)(しづ)まり(あそ)ばして、392吾々(われわれ)心性不浄自由(しんせいふじやうじいう)目的(もくてき)(たつ)します(やう)に、393(ふたた)素盞嗚尊(すさのをのみこと)があばれ()しませぬ(やう)に、394(あま)岩戸(いはと)(ひら)けます(やう)に、395(いろ)(くろ)尉殿(じようどの)(しろ)尉殿(じやうどの)が、396(てん)屋敷(やしき)にお(なほ)(さふら)ふやうに、397誤醜護(ごしうご)御願(おねがひ)申上(まをしあ)げます、398ポンポンポンポン。
399 (みな)さま、400御苦労(ごくらう)(ござ)いました。401サア(これ)今晩(こんばん)御自由(ごじいう)にお(やす)(くだ)さいませ。402御広間(おひろま)夜具(やぐ)(なら)べさせますから』
403万公(まんこう)『イヤどうぞ心配(しんぱい)して(くだ)さいますな、404自分(じぶん)のことは自分(じぶん)にせなくてはなりませぬ。405夜具(やぐ)在処(ありか)さへ()かして(もら)へば、406自分(じぶん)(とこ)をのべて(やす)まして(もら)ひます』
407(とら)『あゝそんなら(この)押入(おしいれ)(ふすま)をあけると、408チツと(いた)いけれど、409()(まくら)もある(なり)410蒲団(ふとん)沢山(たくさん)にあるから、411万公(まんこう)412(まへ)(みな)さまに(とこ)()いて()(もら)(やう)世話(せわ)をやいて(くだ)さい』
413万公(まんこう)『ハイ(なに)もかも()()みました。414どうぞ(はや)くお(かへ)(くだ)さいませ。415教祖様(けうそさま)(さび)しがつてゐられますからなア』
416(とら)『ホヽヽヽヽ、417(なに)から(なに)(まで)418よう()のつく(をとこ)だこと。419ヤア五三公(いそこう)さま、420(その)(ほか)御一同(ごいちどう)さま、421どうぞ()ゆるりと明日(あす)(あさ)(まで)(やす)(くだ)さいませ』
422()(なが)ら、423(あわ)ただしく蠑螈別(いもりわけ)居間(ゐま)()して(かへ)()く。
424大正一一・一二・一三 旧一〇・二五 松村真澄録)