霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第四章 銀杏姫(いてふひめ)〔一八一三〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第72巻 山河草木 亥の巻 篇:第1篇 水波洋妖 よみ:すいはようよう
章:第4章 第72巻 よみ:いちょうひめ 通し章番号:1813
口述日:1926(大正15)年06月29日(旧05月20日) 口述場所:天之橋立なかや別館 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1929(昭和4)年4月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
杢助は船から飛び込んだ際、元の妖幻坊の正体をあらわし、獅子と虎のあいのこの恐ろしい姿となって、高姫を連れ、離れ島に漂着した。
妖幻坊は自分の姿の言い訳として、高姫を救うために魔術を使ったといってごまかす。
妖幻坊は、自分の姿が完全に元の妖怪に戻ってしまいそうになったので、高姫に隠れて変化の術を使おうと、竹やぶに飛び込んだ。
しかし、その竹やぶには恐ろしい蟻が住んでおり、たちまちに体中を噛み付かれて苦しみ倒れてしまった。
高姫はそのありさまを見て驚くが、竹やぶの後ろの大銀杏の祠に男女がいるのを目ざとく見つけ、彼らの着衣と船を失敬して妖幻坊を助け出そうとする。
二人の男女、フクエと岸子は、家の事情で仲を裂かれそうになり、銀杏の神のご利益を頼ってお参りにきていたのであった。
高姫は銀杏の女神の声色を使って二人をだまし、着物を献上させた上、竹やぶに飛び込んで妖幻坊を救うように仕向ける。
妖幻坊と高姫は、蟻に責められる二人を捨て置いて、さっさと逃げてしまう。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm7204
愛善世界社版: 八幡書店版:第12輯 620頁 修補版: 校定版:44頁 普及版:14頁 初版: ページ備考:
001 杢助(もくすけ)()けた妖幻坊(えうげんばう)(およ)千草(ちぐさ)高姫(たかひめ)002高砂丸(たかさごまる)破壊(はくわい)沈没(ちんぼつ)(いのち)(ばか)りは(たす)からむものと、003両人(りやうにん)(とも)手早(てばや)着衣(ちやくい)()ぎすて、004真裸体(まつぱだか)となつて海中(かいちう)()()んだ(さい)005妖幻坊(えうげんばう)(まつた)(もと)正体(しやうたい)(あら)はし006獅子(しし)(とら)との混血児(あひのこ)たる(おそ)ろしき姿(すがた)となつて(しま)つた。007高姫(たかひめ)真裸体(まつぱだか)となつて()だらけの妖幻坊(えうげんばう)(くび)(くら)ひつき、008(なみ)のままに(ただよ)(なが)老木(らうぼく)(しげ)れる(ひと)つの(はな)(じま)漂着(へうちやく)した。
009 高姫(たかひめ)はホツト一息(ひといき)(なが)ら、
010『アヽこれ杢助(もくすけ)さま、011大変(たいへん)暴風雨(しけ)()ひ、012(わたし)はもう(いのち)()くなるかと(おも)つて()ましたのに、013(まへ)さまの変身(へんしん)(じゆつ)()荒湖(あらうみ)乗切(のりき)り、014(かげ)(いのち)(たす)かりました。015(なん)とマア貴方(あなた)(えら)(かく)(げい)をもつて()らつしやるのですねえ』
016 妖幻坊(えうげんばう)高姫(たかひめ)正体(しやうたい)見附(みつ)けられ、017大変(たいへん)(こころ)(いた)め、018如何(どう)()(わけ)をして胡魔化(ごまくわ)さうかと(おも)つて()矢先(やさき)019高姫(たかひめ)(はう)から(かへ)つて感賞(かんしやう)言葉(ことば)()け、020(こころ)(そこ)から善意(ぜんい)(かい)して()(こと)(さと)つたので、021わざと得意(とくい)(つら)をしやくり(なが)ら、
022『オイ、023千草(ちぐさ)高姫(たかひめ)024(おれ)魔術(まじゆつ)(えら)いものだらうがな、025まさかの(とき)になれば獅子(しし)とも(とら)とも(わか)らぬ()ういふ怪体(けつたい)形相(ぎやうさう)変化(へんげ)するのだもの、026天下(てんか)(おそ)れるもの(ひと)つも()しだ。027(おれ)()()美人(びじん)女房(にようばう)にして()以上(いじやう)は、028(ひと)つの不思議(ふしぎ)妙術(めうじゆつ)使(つか)つてお(まへ)信用(しんよう)()ておかないと、029何時(いつ)東助(とうすけ)野郎(やらう)鞍替(くらがへ)せらるるか(わか)らない危険区域(きけんくゐき)()かれて()るのだから、030(まへ)(たす)ける(ため)()()(みにく)肉体(にくたい)変化(へんげ)して031千草(ちぐさ)高姫(たかひめ)女帝(によてい)忠勤(ちうきん)(はげ)んで()たのだよ、032アハヽヽヽ』
033高姫(たかひめ)『アタ(にく)らしい杢助(もくすけ)さまだこと、034(ふた)()には東別(あづまのわけ)だの東助(とうすけ)だのと、035そんな(ふる)めかしい(はなし)()めて(もら)ひませうかい。036東助(とうすけ)なんて淡路(あはぢ)洲本(すもと)船頭稼(せんどうかせ)ぎをやつて()つた、037渋紙面(しぶかみづら)をして(いろ)(くろ)独活(うど)大木(たいぼく)みたよな体見倒(がらみだふ)しですよ。038何一(なにひと)(はな)(わざ)()つて()ると()ふでもなし、039八島(やしま)(わけ)のお(ひげ)(ちり)(はら)ひ、040(しり)(にほひ)()いで(よろこ)んで()るやうな代物(しろもの)は、041仮令(たとへ)十千万両(とちまんりやう)(かね)()んで(さかさ)になつて(ある)いて()せても(なび)千草(ちぐさ)高姫(たかひめ)ぢやありませぬよ。042東助(とうすけ)なんて()ふのは勿体(もつたい)ない、043彼奴(あいつ)豆腐(とうふ)(すけ)結構(けつこう)だ。044(この)高姫(たかひめ)(ゆび)一本(いつぽん)で、045(つぶ)さうと(めが)うと自由自在(じいうじざい)ですもの、046オホヽヽヽ』
047(えう)『これ(たか)チヤン、048随分(ずいぶん)法螺(ほら)()くぢやないか、049斎苑(いそ)(やかた)東助(とうすけ)肱鉄砲(ひぢてつぱう)()()され(もろ)くも敗北(はいぼく)し、050()()河鹿峠(かじかたうげ)(わた)つて(ほこら)(もり)()()み、051()果無(はかな)むで(くす)ぼつて()たぢやないか、052(ちつ)頬桁(ほほげた)()ぎるぞや』
053(たか)頬下駄(ほほげた)()くのは呆助(はうすけ)(くらゐ)適当(てきたう)ですよ。054いや朴下駄(ほほげた)でも東助(とうすけ)なら()ぎて()る、055この千草(ちぐさ)高姫(たかひめ)はトルマン(ごく)女帝(によてい)だから、056(きり)下駄(げた)伽羅(きやら)下駄(げた)(しやう)()つて()るのですよ。057ヘン、058朴下駄(ほほげた)()ぎるなんて(あま)(ひと)軽蔑(けいべつ)して(もら)ひますまいかい』
059(えう)『オイオイ(たか)チヤン、060さう()(ちがひ)をして(もら)つては(いささ)迷惑(めいわく)だ。061(はなし)脱線(だつせん)して仕舞(しま)つたよ、062ほうげた()ぎると()つたのはお(まへ)(くち)()ぎると()つたのだ』
063(たか)『ヘン、064(くち)()ぎるなんて馬鹿(ばか)にしなさるな、065(わたし)だつて(くち)すぎ(くらゐ)立派(りつぱ)(いた)しますよ、066(をとこ)一匹(いつぴき)二匹(にひき)(くらゐ)(あそ)ばして(やしな)つてやりますワ』
067(えう)『アハヽヽヽ、068益々(ますます)(わか)らぬぢやないか』
069(たか)益々(ますます)(わか)らぬの、070(わか)れぬのと、071それや(なに)()ふのですか、072(まへ)さまは(この)高姫(たかひめ)(わか)れようと(おも)つてゐらつしやるのでせう。073盛装(せいさう)()らし(かみ)立派(りつぱ)()つて074白粉(しろい)でもつけて()姿(すがた)()て、075(まへ)さまは岡惚(をかぼれ)をやつて()たのだらう。076()難船(なんせん)して保護色(ほごしよく)衣類(きもの)(なみ)(さら)はれ、077(かみ)はサンバラに(みだ)れ、078要塞地帯(えうさいちたい)丸出(まるだ)しになつた姿(すがた)()愛想(あいそ)()きたのでせう。079ヘン、080これでも、
081都々逸(どどいつ))お(まへ)(いや)でも(また)()(ひと)
082 ()けれや(わたし)()()たぬ
083()俗謡(ぞくえう)(とほ)084(をとこ)のすたり(もの)はあつても(をんな)のすたり(もの)三千世界(さんぜんせかい)何処(どこ)(さが)しても滅多(めつた)()りませぬぞや。085ヘン、086(いや)なら(いや)ときつぱりと()つて(くだ)さい、087此方(こつち)にも(かんが)へがありますからな』
088(えう)『アヽ益々(ますます)(こま)つた(こと)()ふぢやないか、089ハハー(わか)つた! ()めた! この杢助(もくすけ)妖術(えうじゆつ)使(つか)()ぎ、090()んな姿(すがた)()けた姿(すがた)女帝(によてい)のお()(とま)り、091秋風(あきかぜ)()いたのだな、092よし、093それならそれで(この)(はう)にも(かんが)へる余地(よち)十分(じふぶん)にある(はず)だ』
094(たか)(また)しても、095(まへ)さまは(わたし)(じゆつ)()がらすのかいなア、096エヽ(はら)(わる)(ひと)だこと、097そしてあの曲輪(まがわ)(たま)如何(どう)なさいましたか。098よもや(うみ)(おと)しはなされますまいなア』
099(えう)『ウン、100それや心配(しんぱい)すな、101(うみ)()()(さい)(はら)(なか)()()んでおいたから大丈夫(だいぢやうぶ)だ』
102(たか)『マアマア()()んだのですか、103ヘーン、104何故(なぜ)(わたし)()まして(くだ)さらないの、105本当(ほんたう)貴方(あなた)水臭(みづくさ)いお(かた)だワ』
106(えう)『お(まへ)()ましたいは山々(やまやま)だが、107咄嗟(とつさ)場合(ばあひ)108そんな余裕(よゆう)があつて(たま)らうかい、109失礼(しつれい)(なが)杢助(もくすけ)高天原(たかあまはら)にチヤンと(をさ)めておいたから、110何時(いつ)(また)()()(とき)があるであらう、111さう心配(しんぱい)はするに(およ)ばないよ』
112(たか)成程(なるほど)113抜目(ぬけめ)のない杢助(もくすけ)さまだこと、114それでこそ高姫(たかひめ)最愛(さいあい)(をつと)115末代(まつだい)(まで)旦那様(だんなさま)だワ。116(しか)杢助(もくすけ)さま、117(この)(しま)()くは()いたが、118()(はだか)では道中(だうちう)出来(でき)ないし、119曲輪(まがわ)(はふ)でも使(つか)つて立派(りつぱ)着物(きもの)一枚(いちまい)(こしら)へて(くだ)さる(わけ)には()きますまいかなア。120貴方(あなた)だつてさう()だらけの変化姿(へんげすがた)では人中(ひとなか)へも()られますまい』
121(えう)成程(なるほど)122(まへ)()(とほ)りだ、123(おれ)()(とほ)りだ。124雨蛙(あまがへる)()()まつて()(とほ)りだ、125()()しは(みぎ)(とほ)りだ。126(おれ)(この)(とほ)りだ、127両手(りやうて)(つち)について(まさ)高姫(たかひめ)(きみ)(あやま)(まゐ)らする(とほ)りだ。128アハヽヽヽ』
129(たか)『これ(もく)チヤン、130(わら)うて()場合(ばあひ)ぢやありませぬよ。131(なに)(ほど)(はる)ぢやと()つても()(さむ)くつては、132やりきれないぢやありませぬか、133(なん)とか工夫(くふう)御座(ござ)いますまいかなア』
134(えう)『ヤア、135此処(ここ)(ふね)一艘(いつそう)(つな)いである。136これから(かんが)へると、137(たれ)(この)(しま)上陸(じやうりく)して()人間(にんげん)がある(はず)だ。138(ひと)其奴(そいつ)(かは)()いて、139(まへ)(おれ)とが()(まと)(こと)とせうでは()いか』
140(たか)全然(まるつき)追剥(おひはぎ)のやうな(こと)をするのですか、141それでは時置師(ときおかし)宣伝使(せんでんし)とは()はれますまい。142(わたし)だつて(なに)(ほど)(さむ)くつても泥棒(どろばう)した衣類(きもの)()(まと)(こと)(いや)です。143そんな(こと)をすれや日出神(ひのでのかみ)神格(しんかく)薩張(さつぱり)()()ちて仕舞(しま)ひますワ』
144(えう)『てもさても馬鹿正直(ばかしやうぢき)女帝様(によていさま)だなア。145(むかし)から(たとへ)にも()(はら)()へられぬと()ふぢやないか。146大善(だいぜん)をなさむとすれば、147小悪(せうあく)(とき)場合(ばあひ)により()むを()ないだらうよ。148アヽ(さむ)(さむ)い、149()(にはか)(きつ)(かぜ)()いて()ては、150(おれ)(たま)らない。151何処(どこ)かに()竹藪(たけやぶ)でもあれば、152すつこんで(かぜ)()けたいものだ』
153()(なが)ら、154高姫(たかひめ)(つづ)け」と一声(ひとこゑ)(のこ)し、155篠竹(しのだけ)のシヨボシヨボと()えて()竹藪(たけやぶ)(なか)()(かく)して仕舞(しま)つた。156(その)(じつ)(やうや)くに(かほ)だけ人間(にんげん)らしく(ばけ)()るものの、157()一片(いつぺん)布片(ふへん)(まと)つて()ないので(くる)しくつて(たま)らず、158(かほ)までが(もと)妖怪(えうくわい)還元(くわんげん)しさうなので、159そんなエグイ(つら)()せては、160流石(さすが)高姫(たかひめ)愛想(あいそ)をつかすだらうと(おも)ひ、161この竹藪(たけやぶ)()()第二(だいに)変化術(へんげじゆつ)(ほどこ)()めであつた。162(この)(やぶ)百坪(ひやくつぼ)(ばか)りの面積(めんせき)があつて、163(その)(なか)()るや(いな)(たちま)白胡麻(しろごま)のやうな(あり)(むれ)数知(かずし)れず(のぼ)りつき、164如何(いか)なる人間(にんげん)(いへど)身体中(からだぢう)()(やぶ)り、165(たちま)身体(からだ)(はれ)(あが)痛痒(いたかゆ)うて(たま)らない。166さうこうして()(うち)に、167(あし)一尺(いつしやく)もある(あや)しい蜘蛛(くも)幾万(いくまん)ともなくやつて()(しり)から粘着性(ねんちやくせい)(つよ)(いと)()し、168身体(からだ)をぎりぎり(まき)にして仕舞(しま)ふと()(おそ)ろしい()(もり)である。169それとも()らず妖幻坊(えうげんばう)()()んだのだから(たま)らない。170(あら)くたい()(あひだ)幾万(いくまん)とも()れない(あり)()みつく(いた)さ、171(さすが)妖幻坊(えうげんばう)悲鳴(ひめい)をあげて(とら)(うな)るやうな呻吟声(うめきごゑ)高姫(たかひめ)(すく)ひを(もと)めて()る。172高姫(たかひめ)(その)(こゑ)()きつけて(やぶ)(そば)()()(なか)(のぞ)いて()れば、173妖幻坊(えうげんばう)(あり)()められ七転八倒(しちてんはつたう)(くる)しみの真最中(まつさいちう)であつた。174高姫(たかひめ)()転倒(てんたう)せむ(ばか)()(おどろ)(なが)竹藪(たけやぶ)(うしろ)(はう)(まは)つて()ると、175一寸(ちよつと)小高(こだか)(つか)()つて、176(その)(うへ)周囲(しうゐ)三丈(さんぢやう)もある大銀杏(おほいてふ)(てん)()して()つて()る。177銀杏(いてふ)根本(ねもと)には(ちひ)さい(ほこら)()つて()て、178(わか)男女(だんぢよ)何事(なにごと)(すすりな)きしながら(いの)つて()た。179()()のない高姫(たかひめ)は、180(はや)くも男女(だんぢよ)二人(ふたり)着衣(ちやくい)失敬(しつけい)して東助(とうすけ)(なん)(すく)自分(じぶん)着用(ちやくよう)せむものと、181銀杏(いてふ)()(うしろ)(かく)れて両人(りやうにん)(はなし)()いて()た。
182(をんな)『もしフクエさま、183どう(いた)しませう。184(なに)(ほど)貴方(あなた)(わたし)(こひ)におちて(なや)んで()ましても、185強欲(がうよく)継母(ままはは)が、186貴方(あなた)との(こひ)(ゆる)して()れないのですもの。187スガの(みなと)呉服屋(ごふくや)(よめ)()けと、188煙管(きせる)(たたみ)(たた)いての日夜(にちや)折檻(せつかん)189(うみ)両親(りやうしん)(すで)にこの()()り、190継母(けいぼ)()(そだ)てられた(わたし)191その恩義(おんぎ)(おも)へばどうして(こひ)しい貴方(あなた)と、192天下(てんか)()れて()(こと)出来(でき)ませう。193(また)(わたし)(いへ)はスガの呉服屋(ごふくや)さまに大変(たいへん)借金(しやくきん)があり、194それを(かへ)さなけれやなりませず、195(かへ)(かね)はなし、196(はは)大変(たいへん)心配(しんぱい)(いた)して()ります。197()(わたし)縁談(えんだん)(ことわ)りでもせうものなら、198(こひ)しきスガの(さと)()(こと)出来(でき)ませぬ。199だと()つて貴方(あなた)(おも)()(こと)如何(どう)しても出来(でき)ませぬ、200(なん)とか()銀杏(いてふ)神様(かみさま)御利益(ごりやく)によつて円満(ゑんまん)解決(かいけつ)をつけて(もら)ひたいもので御座(ござ)います』
201(また)もや(すすりな)く。
202フクエ『オイ岸子(きしこ)203さう悲観(ひくわん)したものぢやない。204(この)神様(かみさま)女神様(めがみさま)だと()(こと)だから、205きつとお(まへ)同情(どうじやう)して(くだ)さるに相違(さうゐ)ない。206(わし)ぢやとて()主人持(しゆじんもち)()(うへ)207どうする(こと)出来(でき)ぬみじめな有様(ありさま)だが、208(まへ)(わか)れる(くらゐ)なら、209一層(いつそ)ハルの(うみ)()()げて()んだが()しだよ』
210岸子(きしこ)(この)神様(かみさま)一切(いつさい)衣服(いふく)をお(そな)へすれば211屹度(きつと)(ねがひ)(かな)へて(くだ)さると()ふぢやありませぬか、212上衣(うはぎ)だけなりとお(そな)へして(かへ)りませうか』
213フクエ『成程(なるほど)214上衣(うはぎ)一枚(いちまい)(ぐらゐ)(そな)へしたつて(べつ)(くる)しくはない』
215 ()(はな)(をり)しも、216銀杏(いてふ)木蔭(こかげ)より、217(やさ)しき(をんな)(こゑ)
218(をんな)(わらは)こそは、219銀杏姫(いてふひめ)(みこと)御座(ござ)るぞや、220(いま)より千五百年(せんごひやくねん)(むかし)221恋男(こひをとこ)()はむ()(たらひ)(ふね)()つて、222この(はな)(じま)()()(かよ)ひ、223折柄(をりから)暴風雨(しけ)()ひ、224()しき(いのち)(うみ)藻屑(もくづ)となし、225(その)精霊(せいれい)()つて(ここ)裸姫(はだかひめ)となり、226()銀杏ケ姫(いてふがひめ)(みこと)(あらた)め、227衣類(いるゐ)一切(いつさい)(われ)(けん)ずるものには、228如何(いか)なる(こひ)(かな)()させむ229縁結(えんむす)びの守護神(しゆごじん)であるぞや。230そち(たち)両人(りやうにん)(こひ)はこの千草(ちぐさ)オツトドツコイ銀杏姫(いてふひめ)(みこと)請合(うけあ)うて(かな)へてやらう(ほど)に、231衣類(いるゐ)一切(いつさい)此処(ここ)()()て、232(その)(うへ)この()(やぶ)()()んで、233(なや)める(ひと)つの生物(いきもの)真裸(まつぱだか)(まま)(すく)()せよ。234さすれば其方(そち)願望(ぐわんまう)(かなら)(かなら)今日(こんにち)只今(ただいま)より(かな)へて(つかは)すぞや、235夢々(ゆめゆめ)(うたが)(なか)れ、236夢々(ゆめゆめ)(うたが)(なか)れ』
237()(こゑ)千草(ちぐさ)高姫(たかひめ)である。238二人(ふたり)男女(だんぢよ)(まこと)(かみ)言葉(ことば)(しん)じ、239両人(りやうにん)一度(いちど)惜気(をしげ)もなく、240下着(したぎ)(まで)(のこ)らず()()銀杏姫(いてふひめ)(みこと)(たてまつ)り、241神勅(しんちよく)(ごと)()(やぶ)()()んで、242白蟻(しろあり)(なや)(くる)しめる妖幻坊(えうげんばう)をやつとの(こと)()()して仕舞(しま)つた。243不思議(ふしぎ)にも白蟻(しろあり)(やぶ)(そと)一歩(いつぽ)()づるや(いな)や、244一匹(いつぴき)(のこ)らず、245身体(からだ)より()ちて藪中(やぶなか)逸早(いちはや)姿(すがた)(かく)して仕舞(しま)つた。246二人(ふたり)男女(だんぢよ)甘々(うまうま)高姫(たかひめ)計略(けいりやく)にかかり真裸(まつぱだか)にせられ、247(その)(うへ)妖幻坊(えうげんばう)(すく)ふべく藪中(やぶなか)()()んだ(ため)248身体(からだ)一面(いちめん)白蟻(しろあり)(たか)られ身動(みうご)きならず、249七転八倒(しちてんばつたう)(くる)しみをして()る。
250(たか)『ホヽヽヽヽ、251オイそこな(わか)二人(ふたり)(はう)(ども)252こなさまは銀杏姫(いてふひめ)(みこと)でも(なん)でもないんだよ。253よつく(みみ)(さら)へて()いておきや、254ウラナイ(けう)大教主(だいけうしゆ)千草(ちぐさ)高姫(たかひめ)さまだよ。255二人(ふたり)真裸(まつぱだか)白蟻(しろあり)()(ころ)されるのも前世(ぜんせ)因縁(いんねん)だ。256その(かは)(いさぎよ)(あり)(ども)()つて(もら)つて()になさい、257屹度(きつと)最奥第一(さいあうだいいち)天国(てんごく)258()(にせ)銀杏姫(いてふひめ)衣類(きもの)(けん)じた(とく)によつて(すく)()げてやらぬ(こと)もないぞや、259……これ(もく)チヤン、260(なに)(とぼ)けて()るのぢや、261(しつか)りなさらぬかいな』
262(えう)『ヤア高姫(たかひめ)263よう(たす)けて()れた。264(おも)はず()らず()(もり)()()んで(ひと)つよりない(いのち)(ぼう)()(ところ)だつた。265(まへ)縦横無尽(じうわうむじん)智略(ちりやく)によつて()杢助(もくすけ)一命(いちめい)(たす)かつたやうなものだ。266いや感謝(かんしや)するよ』
267(たか)『ホヽヽヽヽ、268これ(もく)チヤン、269曲輪(まがわ)(たま)神力(しんりき)如何(どう)なつたのですか、270まさか白蟻(しろあり)(やつ)()られたのぢやありますまいなア。271神変不思議(しんぺんふしぎ)妙術(めうじゆつ)使(つか)ふお(まへ)さまが、272(あり)なんかにしてやられるとは、273()つと均衡(つりあひ)()れぬぢやありませぬか』
274(えう)(あま)いものには(あり)(たか)る、275(から)(やつ)には(あり)(たか)らぬと()ふぢやないか。276()(かく)(おれ)人間(にんげん)としては最上等(さいじやうとう)だ、277さうして(をんな)(あま)いだらう。278血液(けつえき)人一倍(ひといちばい)(あま)いなり、279何分(なにぶん)身魂(みたま)(すぐ)れて()いものだから(あり)(やつ)280有難(ありがた)がつて()いついたら(はな)れぬのだよ。281(まへ)だつて(おれ)()ひついたら容易(ようい)(はな)して()れまいがな』
282(たか)成程(なるほど)283道理(だうり)()けば御尤(ごもつと)千万(せんばん)284()つかり(もく)チヤンは、285これから(あり)()(ところ)へは()つて(もら)はないやうにせねばなりませぬワ。286(わたし)だつて287きつと(あり)につかれる(からだ)(ちが)ひありませぬからなア』
288(えう)『それやさうかも()れぬ、289いつも喋々喃々(てふてふなんなん)(あま)(ささや)きを()かして()れるからなアー。290(しか)(おれ)(たす)けて()れた二人(ふたり)男女(だんぢよ)可愛(かあい)さうだから(たす)けてやらうぢやないか。291(なん)()うても(おれ)(いのち)(おや)だからのう』
292(たか)(もく)チヤン、293それや(なに)()ふのですか、294(まへ)さまの正体(しやうたい)見附(みつ)けられた以上(いじやう)295こんな(もの)()いては後日(ごじつ)(さまたげ)になるぢやありませぬか。296あの(とほ)(あり)()はしておけば、2961(べつ)人殺(ひとごろし)(つみ)にもならず、297(あり)(よろこ)んで(はら)(ふく)らすなり、298(あり)()めには吾々(われわれ)救世主(きうせいしゆ)ですよ。299(あり)だつて人間(にんげん)だつて(おな)(こと)ですよ、300たつた人間(にんげん)二人(ふたり)(いのち)(かは)りに数百万(すうひやくまん)(あり)(いのち)(すく)へば、301何程(いくら)功徳(くどく)になるか()れませぬよ。302そんな宋襄(そうじやう)(じん)はおよしなさい。303折角(せつかく)(よろこ)んで()(あり)(こま)りますよ。304サアサア二人(ふたり)衣類(きもの)胡魔化(ごまくわ)して()いたから、305貴方(あなた)(をとこ)(はう)をお()けなさい。306(わたし)(いや)だけれど阿魔女(あまつちよ)(はう)暫時(ざんじ)()てやりますワ、307(なん)智慧(ちゑ)(ほど)()(たふと)いものがあらうか、308杢助(もくすけ)さま、309千草(ちぐさ)高姫(たかひめ)器量(きりやう)はちと(わか)りましたか』
310(えう)烏賊(いか)にも、311(かに)にも(たこ)にも(あし)四人前(よにんまへ)だ、312ヤア感心々々(かんしんかんしん)313(まへ)腕前(うでまへ)には時置師(ときおかし)杢助(もくすけ)(おそ)入谷(いりや)鬼子母神(きしもじん)だ。314(あき)(がへる)(つら)(みづ)だ、315ウフヽヽヽ』
316フクエ『もしもし(わたくし)(たす)けて(くだ)さいな、317(あま)殺生(せつしやう)ぢや御座(ござ)いませぬか』
318 高姫(たかひめ)(あご)をしやくり(なが)ら、
319(たか)『ヘン頓馬野郎(とんまやらう)()320それや(なに)()ふのだ。321最前(さいぜん)あれだけ丁寧(ていねい)引導(いんだう)(わた)して()いたぢやないか、322マア(ゆつく)りと其処(そこ)両人(りやうにん)()(くは)れて()たらよからう、323有難(ありがた)うと感謝(かんしや)しなさい、324(まへ)(からだ)(たちま)蟻ケ塔(ありがたふ)になるぞや、325(あさ)から(ばん)(まで)(はたら)いても(はたら)いても()へぬ()(なか)326()とつて(くは)れるとは幸福(かうふく)人間(にんげん)だ、327オホヽヽヽ』
328(にく)らしげに(あご)()()し、329(しり)()()(たた)いて一目散(いちもくさん)杢助(もくすけ)(とも)船着場(ふなつば)()(かへ)り、330二人(ふたり)(つな)いでおいた小船(こぶね)()(まか)せ、331(なみ)なぎ(わた)(はる)湖面(こめん)鼻歌(はなうた)(うた)(なが)(あま)(ささや)きをつづけて何処(いづく)ともなく()いで()く。
332大正一五・六・二九 旧五・二〇 於天之橋立なかや旅館 加藤明子録)
   
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