霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一〇章 暗黒殿(あんこくでん)〔九〇一〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第32巻 海洋万里 未の巻 篇:第2篇 北の森林 よみ:きたのしんりん
章:第10章 第32巻 よみ:あんこくでん 通し章番号:901
口述日:1922(大正11)年08月22日(旧06月30日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年10月15日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
外から見たよりも広く、青畳を敷き詰めた岩窟内に高姫が感嘆していると、高子姫は、この岩窟は自分が生まれたときから自分の父が開掘し始めたもので、今年で五十六億年目になるという。
高子姫は、自分は竜宮の乙姫で夫は日の出神、ここは暗黒世界の中心点で五里霧中郷で高姫村の黒姫御殿だ、と言い出した。
高姫は自分がだまされてここに連れ込まれたことに気が付き、高子姫を詰問した。高子姫はにわかに白髪の化けものと変じて、言霊歌で高姫の執着心を責め始めた。
高姫はここからが化けもの退治の幕開きだといきがって、常彦とヨブを大声で叱咤した。しかし常彦とヨブは、高姫が草原で一人叫んでいるので不思議に思い、声をかけているのみであった。
高姫は一人、岩窟の中に居る気で高子姫とやりあい、いきりたっている。高子姫は、玉は自転倒島付近の小島にあり、雄島雌島には麻邇の宝が隠してあると明かした。そして、鷹依姫と合流して御用を勤めあげ、改心して玉照彦・玉照姫に使えるようにと高姫を諭した。
高子姫は岩窟の壁を透かして鷹依姫一行の様子を映し、高姫に見せた。鷹依姫たちは兎と鰐に取り囲まれて宴に興じていた。高姫は怒り、鷹依姫たちに詰め寄ろうとしたが、それは鏡に姿が映っていたのであった。
今度は高姫は、自分の姿が映ったのを見て驚き、常彦とヨブを呼んで、自分の姿と同じ化けものを殴りつけるようにと命じた。常彦とヨブは本物の高姫を殴りつけた。
高姫は合点が行かない様子だったが、高子姫を成敗しようと、岩窟の入り口に向かって、常彦とヨブとともに追っかけて行った。
高姫が岩窟の入り口に来ると、春彦が大笑いしている。高姫は、高子姫を追ってい行った常彦とヨブが見えなくなってしまったのだ、と春彦に言うが、春彦は高姫・常彦・ヨブはさいぜんから、泥水の葦原で転がっていたと指摘した。
そこへ三人の怪しい女たちが現れた。高姫は殴りかかるが、女たちの姿はぱっと消えて、大きな白狐が這い出し、森林に消えてしまった。
高姫はこれより翻然として悟り、玉への執着心を心の底から払拭し去った。そして時雨の森の邪神を言向け和してめでたく自転倒島に帰国することとなる。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm3210
愛善世界社版:111頁 八幡書店版:第6輯 189頁 修補版: 校定版:117頁 普及版:44頁 初版: ページ備考:
001 (そと)から()(わり)とは非常(ひじやう)(ひろ)岩窟(がんくつ)()え、002二間幅(にけんはば)隧道(つゐだう)(たか)穿(うが)たれて()る。003そこを二三丁(にさんちやう)(ばか)雄大(ゆうだい)なる岩窟(がんくつ)(あき)れつつ、004三人(さんにん)(あと)(したが)つて()く。
005高子(たかこ)『ここが(わらは)住居(すまゐ)御座(ござ)います。006どうぞ御遠慮(ごゑんりよ)なく御上(おあが)(くだ)さいませ』
007高姫(たかひめ)『ハイ有難(ありがた)う。008(なん)とマア綺麗(きれい)青畳(あをだたみ)()きつめ、009立派(りつぱ)壁掛(かべかけ)がかかつて()りますなア。010どうしてマア(この)不便(ふべん)土地(とち)に、011こんな立派(りつぱ)行届(ゆきとど)いたことが出来(でき)たでせう。012熱心(ねつしん)()ふものは(こは)いものですね。013こんな(かた)(いは)穿(うが)つて、014こんな(やかた)(こしら)へるには、015随分(ずゐぶん)時日(じじつ)(かか)つたでせうな』
016『ハイ、017(わたくし)(うま)れた(とき)から、018(わたくし)(ちち)がそろそろ開掘(かいくつ)にかかりました。019丁度(ちやうど)今年(ことし)五十六億万年(ごじふろくおくまんねん)になりますよ、020ホヽヽヽヽ』
021(なん)仰有(おつしや)る。022(まへ)さまが(うま)れた(とき)()りかけた(この)岩窟(がんくつ)023五十六億万年(ごじふろくおくまんねん)とは、024チト勘定(かんぢやう)()はぬぢやありませぬか。025(まへ)さまの(とし)はまだ十七八才(じふしちはつさい)(はな)(つぼみ)ぢやないか』
026『イエイエ、027(わたし)はそんな(わか)(をんな)では御座(ござ)いませぬよ。028芝居(しばゐ)役者(やくしや)ぢやないが、029どないにでも(をんな)()ふものは()けられますからなア。030(かほ)(しわ)白粉(おしろい)一杯(いつぱい)()めて、031(その)(うへ)(びん)つけ(あぶら)をコテコテと(らふ)のやうにぬり、032(その)(うへ)(また)白粉(おしろい)白壁(しらかべ)のやうにぬつて一寸(ちよつと)(べに)をあしらひ、033白髪(しらが)には(くろ)(しる)をぬつて、034(この)(とほ)(わか)()せて()るのですよ。035ここは(あげ)竜宮(りうぐう)で、036(わらは)乙姫(おとひめ)御座(ござ)います。037そして(わたくし)(をつと)()出神(でのかみ)(おく)高鼾(たかいびき)をかいて(やす)んで()ります。038いつも貴女(あなた)御肉体(おにくたい)借用(しやくよう)(いた)しますさうで御座(ござ)いますが、039随分(ずゐぶん)貴女(あなた)御困(おこま)りでせう。040(わたくし)貴女(あなた)家来(けらい)黒姫(くろひめ)さまの体内(たいない)をチヨイチヨイ拝借(はいしやく)(いた)竜宮(りうぐう)乙姫(おとひめ)御座(ござ)います。041竜宮(りうぐう)乙姫(おとひめ)はいつ()ても(わか)(かほ)をして()ると、042世界(せかい)人間(にんげん)(おも)うて()りますが、043(この)(とほ)()けて()るのですからなア。044(まへ)さまも大化物(おほばけもの)容器(いれもの)だから、045随分(ずゐぶん)おめかしやうによつては(わか)()えますよ。046ホヽヽヽヽ』
047(なん)合点(がてん)()かぬ(こと)仰有(おつしや)るぢやありませぬか。048チト(わたくし)合点(がてん)()きませぬがなア』
049『そらさうでせう。050此処(ここ)五里夢中郷(ごりむちうきやう)といふ暗黒(あんこく)世界(せかい)中心地点(ちうしんちてん)051高姫村(たかひめむら)黒姫御殿(くろひめごてん)()()いて()怪体(けたい)(ところ)ですよ』
052貴女(あなた)(わたし)をこんな(とこ)へうまくだまし()んで、053(たま)をやらうなぞと()つたのは、054(なに)(ひと)つの(たく)みがあるのでせう』
055『ハイ、056勿論(もちろん)のこと、057(おほ)いに目的(もくてき)があつての(こと)御座(ござ)いますワ』
058(その)目的(もくてき)とは(なん)ですか、059()かして(くだ)さい。060返答(へんたふ)次第(しだい)()つては、061(この)高姫(たかひめ)にも(ひと)了見(れうけん)がありますぞや。062化物(ばけもの)なんかに(ばか)されて、063おめおめして()るやうな高姫(たかひめ)とは(ちが)ひますぞや!』
064大声(おほごゑ)呶鳴(どな)()てた。065(つき)066(あさ)両人(りやうにん)はおチョボ(ぐち)(とが)らし、
067『ホヽヽヽヽ……』
068(わら)(あざけ)る。069高子姫(たかこひめ)姿(すがた)(にはか)白髪(はくはつ)(へん)じ、070(しわ)だらけの渋紙(しぶがみ)のやうな(つら)をヌツと(まへ)につき()し、071(とが)つた(きば)下唇(したくちびる)より一寸(いつすん)(ばか)り、072(した)まではみ()し、
073『イヒヽヽヽ、074イツ(まで)もイツ(まで)執着心(しふちやくしん)()れぬ()アさまだのー。
075ウフヽヽヽ、076ウロウロと世界中(せかいぢう)をうろたへまはる玉捜(たまさが)し、
077エヘヽヽヽ、078エヽ加減(かげん)(あきら)めたらどうだ。079改心(かいしん)したかと(おも)へば、080(たま)(こゑ)()きや、081すぐ慢心(まんしん)する(こま)つた高姫婆(たかひめば)アさま、
082オホヽヽヽ、083オソロしい負惜(まけをし)みの(つよ)い、084(かん)のきいた()アさまだのー、
085カヽヽヽヽ、086カんで()てやらうか。087イヤサ、088()んで()んで()()してやらねば、089まだ本当(ほんたう)改心(かいしん)(いた)すまい。090(なん)()つても常世姫(とこよひめ)身魂(みたま)継承(けいしよう)だから、091しぶといのも無理(むり)はないわいのう』
092高姫(たかひめ)如意宝珠(によいほつしゆ)(たま)()せると()つたぢやありませぬか。093そんな婆顔(ばばがほ)をしてだまさうと(おも)つたつて、094だまされもおどろかされも(いた)しませぬよ。095サアこれから高姫(たかひめ)岩窟(いはや)退治(たいぢ)幕開(まくびら)きだ。096……オイ常彦(つねひこ)097ヨブの両人(りやうにん)098(なに)をおぢおぢと(ふる)うてゐるのか、099千騎一騎(せんきいつき)(この)場合(ばあひ)100チツト()()けなされ』
101常彦(つねひこ)高姫(たかひめ)さま、102(この)(くさ)(ぱら)貴女(あなた)(なに)一人(ひとり)103(しやべ)くつて()るのですか』
104『お(まへ)余程(よほど)()(はう)人足(にんそく)だなア。105(この)立派(りつぱ)岩窟(いはや)がお(まへ)()にはつかぬのか』
106ヨブ『高姫(たかひめ)さま、107(むか)ふの森蔭(もりかげ)にモールバンドのやうな怪獣(くわいじう)此方(こちら)()いて(にら)んで()ますよ。108チトしつかりして(くだ)さい』
109『お(まへ)こそしつかりして()れなくちや(こま)るぢやないか。110そんなとぼけた(こと)111千騎一騎(せんきいつき)場合(ばあひ)になつて、112()うてるやうなことではどうなりませう。113(なん)(ため)にお(まへ)をはるばる()れて()たのだい。114こんな(とき)足手纏(あしてまと)ひにならうとは、115如何(いか)高姫(たかひめ)(おも)はなかつた。116……オイオイ高子姫(たかこひめ)(ぬか)化物婆(ばけものばば)ア、117(はや)金剛不壊(こんがうふゑ)如意宝珠(によいほつしゆ)()して()ないか。118()出神(でのかみ)(いつは)ると、119八万地獄(はちまんぢごく)()として、120水責火責(みづぜめひぜめ)成敗(せいばい)にあはしてやるぞよ。121三千世界(さんぜんせかい)救主(すくひぬし)(なん)心得(こころえ)()るか!』
122高子(たかこ)『オホヽヽヽ、123(たま)()たければ、124自転倒島(おのころじま)附近(ふきん)小島(こじま)(さが)しなさい。125さうして麻邇(まに)(たから)雄島(をしま)雌島(めしま)にかくしてあるぞえ。126(はや)鷹依姫(たかよりひめ)(めぐ)()ふて、127麻邇(まに)宝珠(ほつしゆ)御用(ごよう)天晴(あつぱ)(つと)()げ、128スツパリ改心(かいしん)(いた)して、129玉照彦(たまてるひこ)130玉照姫(たまてるひめ)(さま)(こころ)(そこ)から御仕(おつか)(いた)し、131我情我慢(がじやうがまん)()さぬ(やう)にしなさいよ』
132『おいて(くだ)さい、133(まへ)さま()意見(いけん)()けずとも、134チヤンと(この)高姫(たかひめ)(むね)にあるのだ。135雄島(をしま)雌島(めしま)(かく)してあるなんぞと、136そんな馬鹿(ばか)()ふものでない。137何奴(どいつ)此奴(こいつ)()()はした(やう)に、138麻邇(まに)宝珠(ほつしゆ)は、139雄島雌島(をしまめしま)(かく)してあると異口同音(いくどうおん)()ひくさる。140そんな(ふる)文句(もんく)はモウ()きあいた。141サア約束(やくそく)(どほ)り、142(たま)がなければ(ゆる)してやるから、143鷹依姫(たかよりひめ)面会(めんくわい)さしたがよからうぞ。144それをゴテゴテ()ふならば、145(この)高姫(たかひめ)千騎一騎(せんきいつき)活動(くわつどう)だ』
146 高子姫(たかこひめ)白髪(はくはつ)(みにく)()アさまの姿(すがた)になつた(まま)
147高姫(たかひめ)さま、148こちらへ御座(ござ)らつしやれ。149鷹依姫(たかよりひめ)150竜国別(たつくにわけ)151テーリスタン、152カーリンスの四人(よにん)御方(おかた)面会(めんくわい)させてあげませう』
153(さき)()つて岩窟(がんくつ)(みぎ)(まは)(ひだり)(まは)り、154うす(ぐら)(おく)(はう)まで()れて()く。
155高子(たかこ)『サア高姫(たかひめ)さま、156ここに四人(よにん)(とも)()られます。157ゆつくり御話(おはな)(くだ)さいませ』
158 ()ればガラスの(ごと)()(とほ)つた(へだ)ての(なか)に、159鷹依姫(たかよりひめ)(はじ)一同(いちどう)(うさぎ)(わに)取巻(とりま)かれ、160(うれ)しさうに果物(くだもの)(さけ)()んだり、161(うた)つたり、162(をど)つたり、163愉快(ゆくわい)さうに(たはむ)れて()る。164高姫(たかひめ)(これ)()るより、165(へだ)てのガラスのあるとは()らず、
166『コレ鷹依姫(たかよりひめ)さま、167(なん)(こと)だい。168千騎一騎(せんきいつき)(この)場合(ばあひ)169(まへ)さまは気楽(きらく)さうに、170こんな魔神(まがみ)岩窟(いはや)這入(はい)つて、171(うさぎ)(わに)相手(あひて)(さけ)()んで、172(をど)(くる)うて()るといふ(こと)がありますかいな。173(わたし)はお(まへ)(あと)(たづ)ねて、174(まへ)難儀(なんぎ)(たす)けたいと(おも)つたから、175危険(きけん)(をか)してここまでやつて()たのだ。176それ(ほど)気楽(きらく)(くら)して()るのなら、177アタ阿呆(あほ)らしい、178ここまで()るのぢやなかつたに』
179()()み、180鷹依姫(たかよりひめ)181竜国別(たつくにわけ)引摺(ひきず)()さうとする刹那(せつな)182ガラスに(かほ)()ちつけ、
183『アイタヽヽヽ、184(この)高姫(たかひめ)(おな)(やつ)向方(むかふ)一人(ひとり)這入(はい)つてゐる、185コラ化物(ばけもの)!』
186(かいな)振上(ふりあ)げると、187(むか)ふも(かいな)()()げる。188此方(こちら)()()けば、189(むか)ふも()()く。190高姫(たかひめ)(はじ)めて(かがみ)()たのである。
191『コレコレ常彦(つねひこ)192ヨブさま、193これ御覧(ごらん)! (わたし)寸分(すんぶん)(ちが)はぬ化物(ばけもの)()やがる。194一寸(ちよつと)油断(ゆだん)はなりませぬぞや。195蜃気楼(しんきろう)(やう)(わたし)姿(すがた)をソツクリ(その)(まま)(あら)はして()やがる。196油断(ゆだん)のならぬ化物(ばけもの)だぞ。197一寸(ちよつと)ここまでお()でなさい』
198 二人(ふたり)は『ハイ』と(こた)へて、199高姫(たかひめ)(そば)にすりよつた。200(また)もや常彦(つねひこ)201ヨブの(おな)姿(すがた)()つて()る。202高姫(たかひめ)二人(ふたり)見比(みくら)べて(また)もや頓狂(とんきやう)(こゑ)()し、
203(また)しても()けよつたなア。204コレコレ常彦(つねひこ)205ヨブさま、206しつかりせぬか。207(まへ)(まで)模型(もけい)をとられて(しま)つたぢやないか。208(これ)からキツト(この)化物(ばけもの)()209高姫(たかひめ)210常彦(つねひこ)211ヨブと姿(すがた)(へん)じ、212其処等(そこら)あたりを、213だま(あゆ)くに間違(まちが)ひないから、214(いま)(うち)(ほろ)ぼしておかねばなりませぬぞや。215サア高姫(たかひめ)(ちから)一杯(いつぱい)216此奴(こいつ)格闘(かくとう)してこらしめてやるから、217(まへ)はお(まへ)模型(もけい)と、218(ひと)(ちから)(くら)べをしなさい。219……コレコレ鷹依姫(たかよりひめ)220竜国別(たつくにわけ)221(まへ)化物(ばけもの)(うしろ)()るのだから、222(ひと)加勢(かせい)をしてお()れ。223さうすりや、224(わたし)姿(すがた)化州(ばけしう)(まへ)(うしろ)からはさみ()ちに、225こんな化物(ばけもの)一人(ひとり)一人(ひとり)到底(たうてい)互角(ごかく)(いきほひ)勝負(しようぶ)がつくまい。226(ひと)(くち)(うご)かせば(うご)かす真似(まね)をさらす、227稀有(けう)とい(やつ)228……コレコレ常彦(つねひこ)229ヨブ、230(まへ)(あと)まはしにして、231(わたし)模型(もけい)から(たた)きつけて御呉(おく)れ』
232 常彦(つねひこ)233ヨブの両人(りやうにん)は、
234『ハイ承知(しようち)(いた)しました』
235(かがみ)(うつ)つた高姫(たかひめ)(あたま)()がけて、236(ちから)一杯(いつぱい)になぐりつけた。237高姫(たかひめ)はビツクリ仰天(ぎやうてん)
238『アイタヽヽヽ、239コレ両人(りやうにん)(なに)をする、240(わたし)ぢやない、241向方(むかふ)化州(ばけしう)ぢやがな』
242 二人(ふたり)(かがみ)(かほ)目当(めあて)(ちから)一杯(いつぱい)なぐりつける。
243(また)しても(わたし)をなぐるのんかいな。244ソレ向方(むかふ)(やつ)ぢや』
245常彦(つねひこ)向方(むかふ)(やつ)(なぐ)つて()るぢやありませぬか。246あれを御覧(ごらん)なさいよ。247化州(ばけしう)をなぐると(おも)へばお(まへ)()らぬ()になぐられたのだ』
248『エヽ(どん)(をとこ)だなア。249それだから、250まさかの(とき)()()はぬと、251何時(いつ)()ふのだ。252……(いた)いがなア、253モウおいておくれ』
254常彦(つねひこ)『そんなら()きませうか』
255ヨブ『(どれ)だかチツとも合点(がてん)()かぬぢやないか。256エヽ仕方(しかた)がない、257(なん)()つても、258鷹依姫(たかよりひめ)259竜国別(たつくにわけ)(やつ)260(さけ)(たましひ)()られやがつて、261(うさぎ)(わに)相手(あひて)(あそ)んで()やがる。262モウかうなる(うへ)第一(だいいち)魔性(ましやう)(をんな)成敗(せいばい)(いた)せ』
263『さうぢや さうぢや』
264両人(りやうにん)高子姫(たかこひめ)(あと)()つかけて()く。265高姫(たかひめ)はブツブツ(つぶや)(なが)ら、266自分(じぶん)(おな)姿(すがた)(むか)つて()めつけ(なが)ら、267サツサと岩窟(いはや)入口(いりぐち)()して()(かへ)る。268(そと)仁王(にわう)(ごと)()つて()春彦(はるひこ)大口(おほぐち)あけて、
269『アハヽヽヽ、270オホヽヽヽ』
271哄笑(こうせう)してゐる。272高姫(たかひめ)(これ)(なが)めて、
273『コレコレ春彦(はるひこ)274(まへ)余程(よつぽど)馬鹿(ばか)ぢやなア。275(なに)気楽(きらく)さうに(わら)うてゐるのだい。276常彦(つねひこ)277ヨブの両人(りやうにん)は、278行方(ゆくへ)(わか)らなくなつて(しま)つたよ。279(まへ)もチツトしつかりせないと、280どんな(こと)(この)悪魔(あくま)岩窟(いはや)には(おこ)るか()れぬ。281エーエ腑甲斐(ふがひ)なや、282(あし)()たないのかや』
283春彦(はるひこ)『アハヽヽヽ、284高姫(たかひめ)さま、285最前(さいぜん)から随分(ずゐぶん)泥水(どろうみ)葦原(あしはら)()(をど)りましたな。286二人(ふたり)はあこに(ころ)げて()るぢやありませぬか』
287 ()かる(ところ)以前(いぜん)三人(さんにん)(をんな)288(うつく)しき姿(すがた)となつて(あら)はれ(きた)り、
289高姫(たかひめ)さま、290(まこと)()みませなんだねえ』
291高姫(たかひめ)『エヽ化物(ばけもの)()292(おも)()れ!』
293(こぶし)(かた)めて、294三人(さんにん)()がけて、295()たむとする(その)刹那(せつな)296パツと三人(さんにん)(けむり)となつて()えて(しま)つた。297白狐(びやくこ)姿(すがた)()(まへ)(みつ)つ、298のそりのそりと()()し、299あなたの森林(しんりん)()がけて一目散(いちもくさん)()()り「コンコンカイカイ」と()()てて()る。300高姫(たかひめ)(はじ)めて()がつき、301あたりを()れば、302シクシク(ばら)(どろ)まぶれとなつて、303()つて()(こと)(わか)つて()た。304(これ)より高姫(たかひめ)翻然(ほんぜん)として(さと)り、305(たま)執着心(しふちやくしん)(ことごと)(こころ)(そこ)より払拭(ふつしき)()り、306(つひ)時雨(しぐれ)(もり)邪神(じやしん)言向(ことむ)(やは)し、307目出度(めでた)自転倒島(おのころじま)をさして帰国(きこく)()()けり。
308大正一一・八・二二 旧六・三〇 松村真澄録)