霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一九章 玉山嵐(たまやまあらし)〔一〇八四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第39巻 舎身活躍 寅の巻 篇:第5篇 馬蹄の反影 よみ(新仮名遣い):ばていのはんえい
章:第19章 玉山嵐 よみ(新仮名遣い):たまやまあらし 通し章番号:1084
口述日:1922(大正11)年10月29日(旧09月10日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年5月5日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
黄金姫たち一行は、フサの国のライオン河に着いた。橋がないので、馬に乗ったまま河を泳いで渡らなければならない。二人は水馬の心得があったので騎乗のまま一里ばかりの河を渡り切った。
レーブたちも泳いで河を渡りきり、休息していたところへ、バラモン教の釘彦・片彦の騎馬隊がやってきた。騎馬隊は一行には目もくれずに河に入って向こう岸へ行ってしまった。
レーブは釘彦・片彦が蜈蚣姫と小糸姫を捜索している先遣隊であることを知っていたので、彼らが気が付かずに行ってしまったことに胸をなでおろした。しかし黄金姫はなぜか、レーブたちにここで別れようと切り出した。
レーブは仕方なく、二人と別れることにした。もう一人の馬子は物も言わずに森林に姿を隠してしまった。すると、先に河を渡った騎馬隊のうち二三が、引き返してきてレーブに二人の女について問いただした。
レーブは、騎馬武者たちを足止めして黄金姫、小糸姫を先に逃がそうと話をはぐらかし、またこの先の山道は細くて馬が詰まってしまうから、徒歩で追いかけるしかないと言って引き留めた。
武者たちは、レーブが鬼熊別の部下であることを認めた。レーブは、自分も蜈蚣姫と小糸姫を探しているのだが、先の女たちはひどい人相で、人違いだったと証言した。武者たちはあきらめて帰って行った。
レーブはそれを見届けると、黄金姫と清照姫の後を追って行った。途中、道端で休んでいた黄金姫が走っていくレーブを見かけて声をかけた。黄金姫は、もう一人の馬方がスパイだと見抜いてわざとレーブと別行動をして引き離したのであった。
そこへ、人馬・矢叫び・軍鼓の音がものすごく響いてきた。黄金姫は立ち上がり、神軍と魔軍の戦いに備えて清照姫とレーブに覚悟を呼びかけた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-11-23 12:41:59 OBC :rm3919
愛善世界社版:270頁 八幡書店版:第7輯 378頁 修補版: 校定版:283頁 普及版:120頁 初版: ページ備考:
001三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)
002秋野(あきの)(いろ)どる黄金姫(わうごんひめ)
003(かみ)(つかさ)(はじ)めとし
004月日(つきひ)四方(よも)清照姫(きよてるひめ)
005(うづ)(みこと)(ただ)二人(ふたり)
006(くも)つく(やま)(こま)()
007(やうや)頂上(ちやうじやう)にいざり()
008二人(ふたり)馬子(まご)(おく)られて
009胸突坂(むなつきざか)(くだ)りつつ
010()()についでフサの(くに)
011ライオン(がは)()きにける。
012レーブ『モシ奥様(おくさま)013ここが有名(いうめい)波斯(フサ)のライオン(がは)(ござ)います。014橋梁(けうりやう)()し、015如何(どう)しても(うま)()さねばなりませぬが、016(わたし)馬丁(べつとう)(こと)ですから、017(むか)ふへ(およ)(わた)りを(いた)します。018どうぞ(この)(うま)()つて(むか)(ぎし)へお(わた)(くだ)さい。019水馬(すゐば)()るのはお心得(こころえ)でせうが、020(うま)腹帯(はらおび)(ゆる)め、021手綱(たづな)一方(いつぱう)()にグツと(にぎ)り、022一方(いつぱう)()(はな)して、023(うま)(ひと)(みづ)()(つな)(たてがみ)とを一緒(いつしよ)(にぎ)つて(わた)らねば、024(かは)()(なか)溺没(できぼつ)する(おそれ)があります、025(その)(つもり)(わた)つて(くだ)さい』
026黄金姫(わうごんひめ)(わたし)もエデンの(かは)水馬(すゐば)稽古(けいこ)した(おぼえ)がある、027(わたし)大丈夫(だいぢやうぶ)だが、028清照姫(きよてるひめ)はまだ水馬(すゐば)経験(けいけん)がないから(あん)じられたものだ。029(なん)とか()工夫(くふう)はあるまいかな』
030清照姫(きよてるひめ)(けつ)して(けつ)して()心配(しんぱい)(くだ)さるな、031(わたし)地恩城(ちおんじやう)(おい)時々(ときどき)エーリス(がは)(うま)()せ、032水馬(すゐば)(あそ)びをやつた経験(けいけん)があります』
033黄金姫(わうごんひめ)『アヽそれなら安心(あんしん)だ、034サア用意(ようい)(とり)かからう』
035レーブ『(その)(まま)にしてゐて(くだ)さい、036腹帯(はらおび)(わたし)(ゆる)めます』
037河渡(かはわた)りの準備(じゆんび)(ととの)へ、038レーブは両馬(りやうば)(しり)(むち)にて力限(ちからかぎ)りにぶちすゑた。039駻馬(かんば)(をど)(あが)つて、040さしもの激流(げきりう)にザンブと(ばか)飛込(とびこ)み、041(くび)(だけ)(あら)はして(なん)なく横巾(よこはば)(いち)()(ばか)りの大河(おほかは)(むか)ふへ(わた)つて(しま)つた。042二人(ふたり)馬子(まご)(うま)(あと)(したが)つて(やうや)向岸(むかふぎし)(わた)りつき、043各自(かくじ)着衣(ちやくい)(しぼ)り、044(うま)休養(きうやう)させてゐた。
045 其処(そこ)数十(すうじふ)(にん)部下(ぶか)(ひき)つれてやつて()たのは大黒主(おほくろぬし)股肱(ここう)(たの)釘彦(くぎひこ)046久米彦(くめひこ)両人(りやうにん)である。047采配(さいはい)打振(うちふ)打振(うちふ)り、048荒馬(あらうま)(またが)つてライオン(がは)(きし)()がけて一目散(いちもくさん)にかけ(きた)り、049その(いきほひ)(じやう)じて、050ザバザバザバと数十騎(すうじつき)騎馬隊(きばたい)黄金姫(わうごんひめ)一行(いつかう)姿(すがた)()もかけず、051向岸(むかふぎし)(わた)つて(しま)つた。052レーブは(これ)(なが)めて(むね)なでおろし、
053レーブ『アヽ大変(たいへん)(こと)になる(ところ)だつたが、054(かみ)(さま)のおかげで貴女(あなた)捜索(そうさく)してゐる釘彦(くぎひこ)一隊(いつたい)(むか)ふへ(わた)りました。055(しか)(なが)彼奴(あいつ)先鋒隊(せんぽうたい)(ちが)ひありませぬ。056まだまだ油断(ゆだん)はなりますまい。057浮木(うきき)(もり)失敗(しつぱい)回復(くわいふく)せむと、058大軍(たいぐん)(ひき)つれてやつて()たのでせう、059()はば(いま)(わた)つた(やつ)斥候(せきこう)(けん)先鋒隊(せんぽうたい)のやうな(やく)まはりです。060これから此処(ここ)(うま)()てて乞食(こじき)姿(すがた)()けて無事(ぶじ)難関(なんくわん)通過(つうくわ)し、061タルの(みなと)まで(まゐ)りませう』
062清照姫(きよてるひめ)『レーブ、063さう心配(しんぱい)するには(およ)ばぬ。064吾々(われわれ)には(たふと)(かみ)()(まも)りがある。065無限(むげん)絶対(ぜつたい)無始(むし)無終(むしう)神力(しんりき)具備(ぐび)(たま)国治立(くにはるたちの)(みこと)(あつ)()(まも)りあれば如何(いか)なる(てき)(けつ)して(おそ)るるには(およ)びますまい。066臆病風(おくびやうかぜ)(おそ)はれ、067水禽(みづどり)羽音(はおと)(おどろ)くやうな()(まな)んでは、068宣伝使(せんでんし)としての貫目(くわんめ)はゼロです。069ナアお()アさま、070(けが)らはしい乞食(こじき)(ふう)なんかして()くよりも、071正々(せいせい)堂々(だうだう)三五教(あななひけう)宣伝歌(せんでんか)(うた)ひ、072四辺(あたり)木魂(こだま)(ひび)かせ(なが)(すす)まうぢやありませぬか』
073黄金姫(わうごんひめ)『お(まへ)()(とほ)り、074(こころ)(よわ)くては猛獣(まうじう)(たけ)(くる)荒野(あらの)(はら)横断(わうだん)する(こと)出来(でき)ない。075レーブ、076(まへ)はモウこれから(かへ)つてくれ、077イヤ自由(じいう)行動(かうどう)()つたがよかろ、078万一(まんいち)途中(とちう)(おい)て、079数万(すうまん)(てき)出会(でつくは)した(とき)足手纏(あしてまとひ)になつて、080(かへつ)味方(みかた)不利(ふり)だから……』
081レーブ『モシ奥様(おくさま)082それは(あんま)惨酷(ざんこく)ぢやありませぬか、083(わたし)をここまでお(とも)さしておき(なが)ら、084見限(みかぎ)(あそ)ばしたのぢや御座(ござ)いませぬか。085(なん)仰有(おつしや)つても(あし)(つづ)(だけ)はお(とも)(いた)します』
086黄金姫(わうごんひめ)(すべ)(いくさ)といふものは大多数(だいたすう)味方(みかた)(もつ)(てき)(むか)ふか、087さなくば(ただ)一人(ひとり)(てき)(むか)つて()()(はう)大変(たいへん)利益(りえき)だ。088獅子(しし)奮迅(ふんじん)勇気(ゆうき)(ふる)ふには一人(ひとり)(かぎ)る、089手当(てあた)次第(しだい)090()つた(やつ)(みな)(てき)だ。091(あま)(あわ)てて味方(みかた)()りはせぬかといふやうな気遣(きづか)ひがあつては、092到底(たうてい)充分(じうぶん)活動(くわつどう)出来(でき)ない、093ここの道理(だうり)聞分(ききわ)けて、094どうぞ(わか)れて(くだ)さい。095ハルナの(みやこ)でお()にかからうから……』
096レーブ『あなたは一人(ひとり)(はう)()いと仰有(おつしや)つたが清照姫(きよてるひめ)(さま)如何(どう)なさるのですか』
097黄金姫(わうごんひめ)清照姫(きよてるひめ)(をんな)だから、098何程(なにほど)(いくさ)(なか)でも()につき(やす)い、099メツタに同士討(どうしうち)をする気遣(きづか)ひはないが、100(まへ)()二人(ふたり)(をとこ)だから、101モシ間違(まちが)つてお(まへ)(たふ)しでもしやうものなら大変(たいへん)だ。102喧嘩(けんくわ)一人(ひとり)(もつと)利益(りえき)だ。103鬼熊別(おにくまわけ)女房(にようぼう)蜈蚣姫(むかでひめ)や、104(むすめ)小糸姫(こいとひめ)はバラモン(けう)寄手(よせて)(たい)し、105馬丁(べつとう)加勢(かせい)をさしたといはれては、106末代(まつだい)まで武勇(ぶゆう)(けが)れになる。107どうぞ(たの)みぢやから(わか)れて(くだ)さい』
108レーブ『さやうならば是非(ぜひ)(およ)びませぬ、109(わか)(いた)しませう。110(しか)主従(しゆじゆう)(えん)()らぬやうに(ねが)ひます』
111黄金姫(わうごんひめ)(たがひ)了解(れうかい)した(うへ)(わか)れだから安心(あんしん)して(くだ)さい、112(けつ)してお(まへ)()てませぬから……』
113レーブ『ハイ有難(ありがた)う、114左様(さやう)なれば、115ここでお(わか)(いた)します。116随分(ずゐぶん)道々(みちみち)()をつけてお()でなさいませ。117(ひめ)(さま)左様(さやう)なれば、118奥様(おくさま)のお()(うへ)をどうぞ()注意(ちうい)(くだ)さいますやうに』
119清照姫(きよてるひめ)『ハア(よろ)しい、120気遣(きづか)ひしてくれな、121(わたし)()いて()れば大丈夫(だいぢやうぶ)だ、122否々(いないな)(かみ)(さま)がついて御座(ござ)るから、123大磐石(だいばんじやく)だよ。124サアお()アさま(まゐ)りませう』
125(さき)()つて(すす)()く。126(あと)にレーブは二人(ふたり)姿(すがた)のかくるるまで見送(みおく)つてゐた。127一人(ひとり)馬子(まご)(もの)をも()はず、128(なん)(かん)じてか、129(かたはら)森林(しんりん)手早(てばや)姿(すがた)をかくした。130レーブは双手(もろて)()んで、131独言(ひとりごと)()つてゐる。
132レーブ『アヽ(また)(わたし)一人(ひとり)になつて(しま)つた。133よくよく(つれ)(えん)()(をとこ)だなア、134(しか)(なが)らどうも奥様(おくさま)(ひめ)(さま)(こと)()(かか)つて仕方(しかた)がないワ。135ハテ如何(どう)したらよからうかなア』
136双手(もろて)()大地(だいち)胡坐(あぐら)をかいて、137(うつ)むいたまま(くび)左右(さいう)()つてゐる。
138 かくする(ところ)以前(いぜん)(むか)ふへ(わた)つた騎馬隊(きばたい)(うち)二三(にさん)(にん)(をとこ)139一鞭(ひとむち)あてて(ふたた)(かは)飛込(とびこ)此方(こなた)()して(わた)()る。140レーブは……『ハテ不思議(ふしぎ)だ、141無事(ぶじ)此処(ここ)(わた)りよつたと(おも)つたら、142釘彦(くぎひこ)(やつ)143奥様(おくさま)嬢様(ぢやうさま)姿(すがた)()つけ、144召捕(めしと)らむと引返(ひきかへ)して()よつたのだらう。145()げた(ところ)仕方(しかた)がない、146此方(こちら)徒歩(とほ)だ、147(むか)ふは馬上(ばじやう)148到底(たうてい)()つつかれずには()られない。149それよりも自分(じぶん)がここに頑張(ぐわんば)つて、150(かれ)()行進(かうしん)(さまた)げ、151二人(ふたり)(さま)一足(ひとあし)でも(てき)(とほ)ざかり(あそ)ばすやうに、152(ひま)()らせるのが(おれ)(つとめ)だ。153こんな(こと)があらうとて、154奥様(おくさま)(わか)れてくれと仰有(おつしや)つたのだなア、155なんと(えら)いものだなア。156矢張(やつぱり)凡人(ぼんじん)とはどことはなしに(かは)つてゐるワイ………』
157感心(かんしん)(なが)一人(ひとり)(つぶや)いてゐる。158そこへ(さん)(にん)騎馬(きば)武者(むしや)159(ひづめ)(おと)をカツカツと(ひび)かせ(なが)(すす)(きた)り、160レーブの姿(すがた)()て、
161武士『オイ、162(その)(はう)(いま)ここで(はな)して()つた(をんな)何者(なにもの)であつたか、163逐一(ちくいち)陳述(ちんじゆつ)(いた)せ』
164 レーブは(なん)とか()つて(ひま)()らせようと(おも)ひ、165ワザと空呆(そらとぼ)けて、
166レーブ『ハイ、167(なん)でも人間(にんげん)(やう)(ござ)いました』
168武士(ぶし)馬鹿(ばか)169そんな(こと)(たづ)ねてゐるのぢやない、170(なん)といふ(をんな)だかそれを()かせといふのだ』
171 レーブは(しばら)思案(しあん)をして(やうや)くに(かほ)をあげ、172ポカンとした阿呆面(あはうづら)をさらして、
173レーブ『ハーイ、174()アといふ(をんな)(むすめ)といふ(をんな)二人(ふたり)(とほ)りました』
175武士(ぶし)馬鹿(ばか)(やつ)だなア、176姓名(せいめい)(なん)(まを)すか』
177レーブ『ハイ、178姓名(せいめい)ですか、179姓名(せいめい)生命(いのち)(まを)します。180(いのち)あつての物種(ものだね)181(まへ)さまも(ひと)つここで一服(いつぷく)しなさい、182(なが)月日(つきひ)(みじか)(いのち)だ、183生命(せいめい)肝腎(かんじん)だよ。184清明(せいめい)無垢(むく)(たふと)(かみ)のお(みち)(つか)(たま)ふバラモン(けう)神司(かむづかさ)ぢやありませぬか』
185武士(ぶし)『エヽ辛気(しんき)(くさ)い、186貴様(きさま)天下(てんか)一品(いつぴん)馬鹿者(ばかもの)だな』
187レーブ『ハイ、188(うま)(うへ)鹿(しか)()つて()ります、189それは鹿馬者(かばもの)(まを)します。190鹿(しか)(うへ)(うま)()つた(やつ)馬鹿者(ばかもの)です』
191武士(ぶし)『エヽグヅグヅしてゐると、192(とき)(おく)れては一大事(いちだいじ)だ』
193(こま)(むちう)()()さうとするを、194レーブは先頭(せんとう)()つた(うま)(くつわ)をグツと(にぎ)り、
195レーブ一寸(ちよつと)()つて(くだ)さい、196こんな(ほそ)(みち)197さうあわてると(あぶ)なう(ござ)いますで、198(なん)なら(うま)此処(ここ)()()ててお(のぼ)りなさつたらどうですか、199()(やま)中々(なかなか)キツイ(やま)(うま)(すべ)りこけた途端(とたん)に、200あなたも一緒(いつしよ)谷底(たにぞこ)へでも()ちようものなら、201それこそ大変(たいへん)です。202最前(さいぜん)()アといふ(をんな)も、203ここに(うま)()()てて(のぼ)つた(くらゐ)ですから……』
204武士(ぶし)(なん)()つても人間(にんげん)(ある)くより(うま)(はう)(はや)い、205グヅグヅしてると、206(をんな)見失(みうしな)つちや大変(たいへん)だ。207ヤアお二方(ふたかた)208(わたし)(かま)はず、209さきへ(うま)()つて(くだ)さい、210二人(ふたり)姿(すがた)見失(みうしな)はぬ(うち)に……』
211レーブ『ハヽヽヽ、212(さき)()かうと()つたつて、213こんな羊腸(やうちやう)小路(こみち)214(しか)胸突坂(むなつきざか)()てゐるのだから、215(さき)(うま)(とま)つた以上(いじやう)には乗越(のりこ)(わけ)には()きますまい。216(この)(うま)はレーブさまが(くつは)(にぎ)つた以上(いじやう)は、217一時(ひととき)(ばか)りは微躯(びく)とも(うご)かさぬのだ。218(その)(あひだ)()げて(くだ)さると()いのだけれどなア』
219小声(こごゑ)(つぶや)く。
220武士(ぶし)『エヽ仕方(しかた)のない(やつ)だ、221(おのおの)(がた)222ここに(うま)をつないで一走(ひとはし)り、223()つかけませうか』
224レーブ『アヽさうなされませ、225それの(はう)余程(よほど)安全(あんぜん)(よろ)しい。226(しか)しあんな()アや(むすめ)()つかけて如何(どう)なさる()(かんが)へですか、227大方(おほかた)あなたはあの(ばば)アや(むすめ)蜈蚣姫(むかでひめ)228小糸姫(こいとひめ)(さま)だと(おも)つて、229()つかけてお()でなさるでせう。230それならばお()めになさつた(はう)がよかろ、231(じつ)(わたし)鬼熊別(おにくまわけ)(さま)家来(けらい)で、232母子(おやこ)(かほ)見覚(みおぼ)えてゐるのを(さひは)ひ、233旦那(だんな)(さま)から女房(にようばう)(むすめ)(さが)して()たならば、234褒美(ほうび)(のぞ)次第(しだい)仰有(おつしや)つたので、235ここ(まで)(さが)しに(まゐ)りました。236(ところ)がよう()(ばば)237(むすめ)だと(おも)ひ、238出世(しゆつせ)をする時節(じせつ)()たのだと、239雀躍(こをど)りし(なが)ら、240(かは)横切(よこぎ)(わた)つて()()れば、241(あに)(はか)らむや、242(いもうと)(はか)らむや、243一目(ひとめ)()てもゾツとするやうな、244人品(じんぴん)骨柄(こつがら)(いや)しい菊石(あばた)だらけの(しらみ)()うた糞婆(くそばば)乞食(こじき)(むすめ)245イヤもう(わたし)もガツカリして(しま)ひました。246こんな(つま)らぬ(こと)(ござ)いませぬ。247あの母子(おやこ)(はた)して蜈蚣姫(むかでひめ)248小糸姫(こいとひめ)さまならば、249(わたし)手柄(てがら)になるのだから、250あなた(がた)のお(ちから)()つて一緒(いつしよ)(とら)へたいのだが、251(あま)りの(こと)(あき)れて、252(ばば)アの(あたま)()()つくらはし、253乞食(こじき)(むすめ)(しり)(なぐ)りつけて、254オイオイメソメソと吠面(ほえづら)かわかせおき、255ここに呆然(ばうぜん)として失望(しつばう)落胆(らくたん)(ふち)(しづ)んでる(ところ)(ござ)います』
256武士(ぶし)『お(まへ)鬼熊別(おにくまわけ)(さま)部下(ぶか)(もの)だなア、257矢張(やつぱり)鬼熊別(おにくまわけ)(さま)女房(にようばう)()行方(ゆくへ)(たづ)ねてゐられるのかなア』
258レーブ『そらさうでせうかい、259(てん)にも()にも一人(ひとり)よりない女房(にようばう)(むすめ)()らなくては、260何程(なにほど)()出世(しゆつせ)をなさつても()(なか)(さび)しい、261妻子(つまこ)憧憬(あこが)(あそ)ばすのは(もつと)もでせう』
262武士(ぶし)如何(いか)にもさうだ、263(まへ)()(とほり)ならば、264(かれ)()母子(おやこ)鬼熊別(おにくまわけ)(さま)女房(にようばう)()ではあるまい、265エーエ、266()らぬ苦労(くらう)をして(かは)(わた)つたものだ、267ヤアお邪魔(じやま)をした。268二方(ふたかた)269コレから(もと)引返(ひきかへ)しませう』
270馬背(ばはい)(むち)()ち、271(いきほひ)(じやう)じて、272ライオン(がは)驀地(まつしぐら)三騎(さんき)(くび)(なら)べて(わた)()く。
273 (あと)見送(みおく)つてレーブは大口(おほぐち)をあけ、
274レーブ『アツハヽヽヽイヒヽヽヽウフヽヽヽ(なん)とマア、275(かみ)(さま)()仕組(しぐみ)(たい)したものだナ。276結構(けつこう)手柄(てがら)をさして(くだ)さつた。277何事(なにごと)悧巧(りかう)()しては失敗(しくじ)るぞよ、278阿呆(あはう)になつてゐて(くだ)されよといふ、279三五教(あななひけう)神諭(みさとし)今更(いまさら)(ごと)(おも)()されて有難(ありがた)いワイ。280()(なか)阿呆(あはう)になつてゐるに(かぎ)る、281大賢(たいけん)()なるが(ごと)し、282愚者(ぐしや)賢人(けんじん)(ごと)しとは此処(ここ)のことだ。283(おれ)天下(てんか)一品(いつぴん)極端(きよくたん)阿呆(あはう)になつて、284(しん)智恵(ちゑ)(はたら)かすことが出来(でき)た。285ヤア(かたじけ)ない(この)役目(やくめ)()んだ以上(いじやう)は、286これより(あと)()つかけて、287奥様(おくさま)嬢様(ぢやうさま)について()つても、288(なん)とも仰有(おつしや)るまい、289ヤア大分(だいぶ)(とき)()つた、290モウ余程(よほど)()かれただらう。291サア(いそ)がう』
292独言(ひとりごと)いひ(なが)一目散(いちもくさん)峻坂(しゆんぱん)をかけ(のぼ)り、293(たうげ)(たたず)み、294ハーハースースーと(いき)(やす)め、
295レーブ『あれ(だけ)(てき)(うま)撒散(まきち)らし、296抜群(ばつぐん)功名(こうみやう)手柄(てがら)(あら)はして(この)山頂(さんちやう)(のぼ)りつめ、297四方(よも)景色(けしき)見下(みお)ろす(とき)心持(こころもち)(また)格別(かくべつ)だ。298サアもうこれから(くだ)(ざか)299(はし)ろまいと(おも)つても(はし)れるワイ、300(しか)(なが)(あま)屈曲(くつきよく)があるから(いきほひ)(まか)して谷底(たにそこ)へでも飛込(とびこ)んぢや(たま)らない。301(ひと)足拍子(あしびやうし)()つておりてやらうかな』
302(おび)()(なほ)鉢巻(はちまき)をグツと(かた)め、303両手(りやうて)(こぶし)をグツと(にぎ)爪先(つまさき)まで(ちから)()れ、304ボツボツと(くだ)()した。305レーブは道々(みちみち)(うた)ふ。
306レーブ『ウントコドツコイ玉山(たまやま)
307(ちひ)さい(たうげ)といひ(なが)
308意外(いぐわい)にキツイ坂路(さかみち)
309(をとこ)でさへも(この)(とほ)
310(あゆ)みに(こま)坂路(さかみち)
311さぞや(おく)さまお(ぢやう)さま
312困難(こんなん)(あそ)ばしましたらう
313(みち)(ため)とは()(なが)
314鬼熊別(おにくまわけ)奥様(おくさま)
315ならせ(たま)ひし()(もつ)
316荒野(あらの)(わた)(かは)()
317いろいろ雑多(ざつた)()艱難(かんなん)
318()苦労(くらう)なさるも(かみ)(ため)
319世人(よびと)(ため)()くからは
320感謝(かんしや)(なみだ)()いて()
321鬼熊別(おにくまわけ)(かみ)(さま)
322大事(だいじ)大事(だいじ)にされた(おれ)
323()恩返(おんがへ)しの万分一(まんぶいち)
324何時(いつ)しか(むく)はななるまいと
325(おも)ひつめたる真心(まごころ)
326いよいよ(あら)はれ()づる(とき)
327あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
328(かみ)(まも)りの(ふか)くして
329二方(ふたかた)をば(はじ)めとし
330レーブの(やつ)諸共(もろとも)
331何卒(なにとぞ)無事(ぶじ)(つき)(くに)
332ハルナの(みやこ)易々(やすやす)
333「ウントコドツコイきつい(さか)
334(いきほひ)(あま)つて谷川(たにがは)
335スツテンコロリと()ちかけた
336(かへ)らせ(たま)へバラモンの
337梵天(ぼんてん)帝釈(たいしやく)自在天(じざいてん)
338大国彦(おほくにひこ)(おん)(まへ)
339(つつし)(ゐやま)()(まつ)
340ライオン(がは)(よこ)わたり
341奥様(おくさま)嬢様(ぢやうさま)二人(ふたり)
342(ひま)(もら)つた怪訝顔(けげんがほ)
343(つら)ふくらした(とき)もあれ
344大黒主(おほくろぬし)(つか)へてる
345釘彦(くぎひこ)久米彦(くめひこ)両人(りやうにん)
346手下(てした)(やつ)ばら(ただ)三人(みたり)
347駻馬(かんば)(むちう)荒河(あらかは)
348(わた)(きた)れる(おそ)ろしさ
349此奴(こいつ)あテツキリお二人(ふたり)
350姿(すがた)をみとめて(とら)へむと
351やつてうせたに(ちがひ)ない
352一時(ひととき)なりと暇取(ひまと)らせ
353二人(ふたり)(さま)安全(あんぜん)
354(まも)らむものと真心(まごころ)
355(かぎ)りを(つく)して阿呆(あはう)()
356スツタ()んだと馬鹿口(ばかぐち)
357(たた)いた揚句(あげく)村肝(むらきも)
358(こころ)にもなき(いつは)りを
359ベラベラ(しやべ)つた(その)おかげ
360追手(おつて)(やつ)らは(たちま)ちに
361レーブの(べん)(あざむ)かれ
362失望(しつばう)落胆(らくたん)(なが)らも
363(かは)(わた)つて(かへ)()
364(その)可笑(おか)しさに()へかねて
365(おも)はず()らずアハヽヽヽ
366イヒヽヽヽヽヽヒウフヽヽヽ
367(わら)(あふ)れて面白(おもしろ)
368あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
369これ(だけ)(かしこ)智慧(ちゑ)あれば
370これから何事(なにごと)あらう(とも)
371(けつ)して(おそ)るる(こと)はない
372「ウントコ ドツコイ ドツコイシヨ
373コラマアきつい(さか)ぢやなア」
374これ(だけ)(いそ)いで(くだ)るなら
375キツと二人(ふたり)のお姿(すがた)
376(とき)(うつ)さず(をが)むだろ
377あゝ有難(ありがた)有難(ありがた)
378二人(ふたり)(さま)今頃(いまごろ)
379悠々然(いういうぜん)鼻唄(はなうた)
380(うた)うてレーブの(こと)()
381(いさ)(すす)んで(ござ)るだろ
382あゝ面白(おもしろ)面白(おもしろ)
383一伍(いちぶ)一什(しじふ)有様(ありさま)
384二人(ふたり)(さま)にこまごまと
385報告(はうこく)(まを)()げたなら
386キツと(よろこ)びなさるだろ
387これが第一(だいいち)(たのし)みだ
388あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
389御霊(みたま)(さち)はひましませよ』
390(うた)ひつつ、391ドンドンドンと地響(ぢひびき)うたせ、392さしもの峻坂(しゆんばん)()()(ごと)(くだ)つて()く。393道端(みちばた)(いは)母子(おやこ)二人(ふたり)腰打(こしうち)かけ、394(いき)(やす)めてゐるのも()がつかず、395大声(おほごゑ)呶鳴(どな)(なが)(くだ)()くのを、396黄金姫(わうごんひめ)は、
397黄金姫『オーイオーイ レーブ(しばら)()て』
398大音声(だいおんじやう)()()めた。399(この)(こゑ)()くよりレーブは(おどろ)いて()まらうとすれども、400急坂(きふはん)(くだ)()つた速力(そくりよく)惰力(だりよく)容易(ようい)()まらず、401十間(じつけん)(ばか)りズルズルと石道(いしみち)(からだ)()めようとして(たふ)れ、402(ころ)()ち『アイタタ』と(かほ)をしかめ、403(こし)のあたりを()(なが)ら、404エチエチと二人(ふたり)(まへ)引返(ひきかへ)(きた)り、
405レーブ奥様(おくさま)嬢様(ぢやうさま)406有難(ありがた)(ござ)いました』
407黄金姫(わうごんひめ)『アヽ()苦労(くらう)であつたなア、408(わたし)もお(まへ)がキツと追返(おひかへ)しただろと(おも)うて、409ここに(ゆつ)くりとお(まへ)()るのを()つてゐたのだ。410一人(ひとり)馬方(うまかた)(うま)まいただらうなア』
411レーブ『ハイ自分(じぶん)(はう)から勝手(かつて)森林(しんりん)(なか)沈没(ちんぼつ)して(しま)ひました。412(さん)(にん)騎馬(きば)(さむらひ)奥様(おくさま)嬢様(ぢやうさま)(とら)へむと、413(ふたた)(かは)(わた)つてやつて()ましたが、414(にはか)(わたし)馬鹿(ばか)となつて(うま)()(かへ)してやりました』
415黄金姫(わうごんひめ)『アヽさうだろ、416(まへ)身魂(みたま)見込(みこ)んであゝ()つたのだ。417本当(ほんたう)(こと)()つてやりたかつたが、418(あや)しい(やつ)がついてゐたので、419あんなスゲない(こと)()つたのだから、420()(わる)うせないでおいて(くだ)さい』
421レーブ『どうしてどうして()勿体(もつたい)ない、422()(わる)(いた)しませうかい、423サア(これ)から(まゐ)りませう』
424(はな)(をり)しも、425吹来(ふきく)(かぜ)につれて(きこ)()人馬(じんば)物音(ものおと)426金鼓(きんこ)(ひびき)427矢叫(やさけ)びの(こゑ)428物凄(ものすご)くも此方(こなた)(むか)つて(すす)()る。429黄金姫(わうごんひめ)立上(たちあが)り、
430黄金姫『サアこれからが本当(ほんたう)神軍(しんぐん)魔軍(まぐん)との戦争(せんそう)だ。431清照姫(きよてるひめ)用意(ようい)をなされ。432レーブ、433覚悟(かくご)はよいか………』
434大正一一・一〇・二九 旧九・一〇 松村真澄録)
435(昭和一〇・六・一〇 王仁校正)

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10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
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