霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二章 武乱泥(ぶらんでい)〔一二五六〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第48巻 舎身活躍 亥の巻 篇:第1篇 変現乱痴 よみ:へんげんらんち
章:第2章 第48巻 よみ:ぶらんでい 通し章番号:1256
口述日:1923(大正12)年01月12日(旧11月26日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年10月25日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
浮木の館の陣営の幕僚室では、アークとタールが茶を飲みながら雑談にふけっている。二人はすっかり治国別に感化されて三五教的な視点から、ランチ将軍や蠑螈別を論評している。
そのうちに治国別の姿が見えないことに話が移り、二人はもしやランチ将軍が治国別に何か危難を加えたのではないかとあやぶんでいる。
そこへランチ将軍から、三五教の女宣伝使清照姫、初稚姫という美人がやってきたので接待するようにと呼び出しがあった。二人がランチ将軍の陣営に向かう途中、蠑螈別にであった。
二人は蠑螈別からもらったブランデーで酔っ払ってしまった。そして酔った勢いで蠑螈別とちょっとした喧嘩になり、そこへお民がやってきて蠑螈別を介抱しようとする。アークは蠑螈別を水門壺に落とそうとして自分も一緒に落ち込んでしまった。
四人は騒ぎでそれぞれ気を失い、番卒たちに介抱されることになった。正気になるまで丸一日寝込んだうえ、ようやくランチ将軍の前に顔を出した。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm4802
愛善世界社版:21頁 八幡書店版:第8輯 595頁 修補版: 校定版:22頁 普及版:11頁 初版: ページ備考:
001 浮木(うきき)(やかた)陣営(ぢんえい)()ける幕僚室(ばくれうしつ)には、002(れい)のアーク、003タールの両人(りやうにん)火鉢(ひばち)真中(まんなか)にして、004(ちや)()みながら、005雑談(ざつだん)(ふけ)つてゐる。006タールは(しき)りに土瓶(どびん)(ちや)()ぎながら、
007『オイ、008アーク、009最前(さいぜん)から大分(だいぶん)010(あま)沼矛(ぬほこ)虐使(ぎやくし)したので、011(のど)がかわき、012口角(こうかく)(あわ)非常(ひじやう)粘着性(ねんちやくせい)()びて()たぢやないか。013マア(ちや)なつと一杯(いつぱい)やり(たま)へ。014(ちや)(うつ)(さん)じ、015心気(しんき)(やしな)ひ、016(かつ)(また)心魂(しんこん)をして安静(あんせい)せしむるものだからなア』
017(ちや)には(いろ)がある。018(いろ)(すなは)()くうつらふものだ……(はな)(いろ)はうつりにけりな(いたづら)に、019わが()()にふる(なが)めせしまに……とか未来(みらい)のナイスが()つたさうだ。020(おれ)(ちや)(きら)ひだ、021それよりも(すこ)しも(いろ)なき水晶(すゐしやう)(やう)清水(しみづ)()きだ。022(その)透徹振(とうてつぶり)(まさ)自足(じそく)()(もと)むるなき君子(くんし)坦懐(たんくわい)023道交(だうかう)(へう)するものだ。024かく一杯(いつぱい)(みづ)にも、025(かみ)(めぐみ)のこもらせ(たま)以上(いじやう)は、026ポートワインの美酒(びしゆ)も、027(つひ)(およ)(がた)道味(だうみ)淡然(たんぜん)として、028(きく)して(なほ)()くるなきものがある。029仁者(じんしや)(やま)(たのし)み、030智者(ちしや)(みづ)(たのし)むとか()つてな、031吾々(われわれ)には水晶(すゐしやう)(みづ)霊相応(みたまさうおう)だよ。032(しか)して(やま)をも(みづ)をも(あは)(たのし)(この)アークさまは、033所謂(いはゆる)智者(ちしや)仁者(じんしや)典型(てんけい)だ』
034智仁(ちじん)兼備(けんび)聖人君子(せいじんくんし)()(ぬす)まうとする白昼(はくちう)野盗(やたう)035一言(いちごん)天下(てんか)掩有(えんいう)せむとする曲漢(きよくかん)036そこ(うご)くな………と一刀(いつたう)引抜(ひきぬ)き、037()つてすつべき(ところ)なれども、038今日(けふ)はランチ将軍(しやうぐん)帷幕(ゐばく)(さん)ずる顕要(けんえう)地位(ちゐ)(のぼ)つた(いはひ)として(わす)れて(つか)はす』
039『アツハヽヽ唐変木(たうへんぼく)だなア。040(ちや)()きな人間(にんげん)精神(せいしん)はヤツパリ滅茶苦茶(めちやくちや)だ。041茶目小僧的(ちやめこぞうてき)人格者(じんかくしや)だ。042そんなことでランチ将軍(しやうぐん)帷幕(ゐばく)(さん)ずるなどとは、043サツパり茶目(ちやめ)だ、044(いな)駄目(だめ)だよ』
045吾々(われわれ)殊更(ことさら)(やま)()つて(やま)(たのし)み、046(みづ)近付(ちかづ)いて(みづ)(たのし)まなくても、047人生(じんせい)一切(いつさい)客観(きやくくわん)して冷然(れいぜん)として(これ)(たい)することが出来(でき)るのだから、048紅塵万丈(こうぢんばんぢやう)(うち)049恩愛重絆(おんあいぢゆうはん)境域(きやうゐき)(なほ)其処(そこ)に、050山中(さんちう)静寂(せいじやく)清水(せいすゐ)道味(だうみ)(たのし)(こと)出来(でき)るのだ』
051随分(ずゐぶん)小理窟(こりくつ)がうまくなつたねえ』
052『きまつた(こと)だ。053治国別(はるくにわけ)さまのお仕込(しこ)みだもの、054(いま)までの狂乱痴呆兼備(きやうらんちはうけんび)勇者(ゆうしや)たる乱痴(らんち)将軍(しやうぐん)(をしへ)とは、055天地霄壌(てんちせうじやう)()があるのだからなア』
056『コリヤそんな(おほ)きな(こゑ)()ふと、057(みみ)這入(はい)るぞ、058チツとたしなまないか』
059『ナーニ何程(なにほど)(おほ)きな(こゑ)でいつた(ところ)で、060神格(しんかく)内流(ないりう)()けたる証覚者(しようかくしや)聖言(せいげん)(みみ)(とほ)気遣(きづか)ひがあるかい。061ランチ将軍(しやうぐん)(みみ)(つう)ずる言葉(ことば)は、062虚偽(きよぎ)計略(けいりやく)悪欲(あくよく)女色(ぢよしよく)(くらゐ)なものだ。063さういふ地獄的(ぢごくてき)言葉(ことば)は、064何程(なにほど)(ちひ)さい(こゑ)(ささや)いてをつても(すぐ)(きこ)えるものだ。065(えう)するに(その)内分(ないぶん)(ふさ)がり外分(ぐわいぶん)のみが(ひら)けて()るのだからなア。066世間的(せけんてき)罪悪(ざいあく)()ちたバラモン(ぐん)統率者(とうそつしや)に、067吾々(われわれ)聖言(せいげん)(きこ)える道理(だうり)はない、068()安心(あんしん)(たま)へ。069それよりも、070あの蠑螈別(いもりわけ)()よ、071本当(ほんたう)馬鹿(ばか)にしてゐよるぢやないか。072如何(いか)世間(せけん)交際(かうさい)黄金(わうごん)(おほ)からざれば(まじは)(ふか)からずと()つても、073(じつ)(あき)れたものぢやないか。074今日(こんにち)交際(かうさい)水臭(みづくさ)いと()ふよりも(むし)銅臭(どうくさ)いものだ。075(わづ)かに五千両(ごせんりやう)軍用金(ぐんようきん)献納(けんなふ)しよつて、076エキスの野郎(やらう)(かご)(おく)られ、077(くさ)つたやうな(をんな)()れて堂々(だうだう)とランチ将軍(しやうぐん)面会(めんくわい)申込(まをしこ)み、078将軍(しやうぐん)(また)(かほ)相好(さうごう)(くづ)して、079抱擁(はうよう)キツスはどうか()らぬが、080(かた)握手(あくしゆ)交換(かうくわん)したぢやないか。081(おれ)やモウ本当(ほんたう)(いや)になつて(しま)つた』
082本当(ほんたう)にさうだねえ。083黄金(わうごん)万能(ばんのう)()(なか)とは()()つたものだ。084(しか)しながら治国別(はるくにわけ)(さま)()つからお(かほ)()えぬぢやないか、085()うしたのだろ』
086(おれ)観察(くわんさつ)する(ところ)()れば、087(なん)とはなしに(あま)目出度(めでた)御境遇(ごきやうぐう)()られる(やう)(おも)はれないがなア』
088『タール、089(まへ)もさう(おも)ふか、090(おれ)(なん)だか()がかりになつて仕方(しかた)がないワ。091ヒヨツとしたら、092あの、093それ、094秘密牢(ひみつらう)へでも計略(けいりやく)(もつ)(はふ)()んで(しま)つたのぢやあるまいかな。095(いま)まで俺達(おれたち)が、096(うかが)つても、097(やかま)しい言葉(ことば)はなかつた奥座敷(おくざしき)を、098吾々(われわれ)幕僚(ばくれう)にさへ()せない(やう)にしてゐるのだから(あや)しいものだぞ。099もし治国別(はるくにわけ)(さま)危難(きなん)にお()ひなさる(やう)(こと)があつたら、100(まへ)()うする(かんが)へだ』
101一旦(いつたん)(こころ)(なか)(おい)師匠(ししやう)(あふ)いだ以上(いじやう)は、102()(もつ)(これ)(まも)(かんが)へだ。103仮令(たとへ)治国別(はるくにわけ)(さま)(ため)()んでも、104(あへ)(いと)(ところ)ではない。105()(おの)れを()(もの)(ため)()すといふからな』
106『ランチ将軍(しやうぐん)だつて、107片彦(かたひこ)将軍(しやうぐん)だつて、108ヤツパリ吾々(われわれ)主人(しゆじん)であり()ぢやないか。109()といふ(だん)になつては、110(すこ)しも(かは)りはない(はず)だ。111そして(ことわざ)にも忠臣二君(ちうしんにくん)(つか)へずといふ以上(いじやう)は、112()うしても(さき)主人(しゆじん)たるランチ将軍(しやうぐん)忠義(ちうぎ)(つく)さねばなろまい……ぢやないか』
113『そりや、114どちらも主人(しゆじん)だ。115(しか)しながらランチ将軍(しやうぐん)今迄(いままで)(つか)へて()つたのは、116(かれ)(いう)する暴力(ばうりよく)権威(けんゐ)(おそ)れたが(ため)だ。117つまり()へば表面上(へうめんじやう)主従(しゆじゆう)であつて、118精神上(せいしんじやう)から()へば仇敵(きうてき)同様(どうやう)だ。119どうして馬鹿(ばか)らしい、120精神的(せいしんてき)仇敵(きうてき)(ため)貴重(きちよう)生命(いのち)()てられようか』
121『さうだな、122(おれ)同感(どうかん)だ。123(しか)しタール、124まさかの(とき)になつたら、125(おや)(ため)(あるひ)(しゆ)(ため)師匠(ししやう)(ため)に、126()ぬこたア出来(でき)まい。127(おれ)だつてさうだ、128(しか)しながら子孫(しそん)(ため)には()んでみせてやる、129それも霊体脱離(れいたいだつり)時期(じき)()たら……だ。130アハヽヽヽ』
131『オツホヽヽヽ、132(なに)(ぬか)しやがるのだい。133(ひと)馬鹿(ばか)にして()やがる。134チツと真面目(まじめ)にならないか。135エヽー』
136(この)(やう)化物(ばけもの)横行(わうかう)する()(なか)に、137()うして真面目(まじめ)着実(ちやくじつ)にして()れようかい。138真面目(まじめ)正直(しやうぢき)仁義(じんぎ)(あつ)人間(にんげん)は、139現代(げんだい)(おい)ては(かへつ)悪人(あくにん)見做(みな)されるからなア。140天下(てんか)(ため)141社会(しやくわい)(ため)142(ひと)(ため)だと、143うまい標語(へうご)(かた)つて、144何奴(どいつ)此奴(こいつ)自己(じこ)欲望(よくばう)(たつ)せむことのみを(のぞ)んでゐる()(なか)だ。145俺達(おれたち)はさういふ贋物(にせもの)(きら)ひだ。146清明無垢(せいめいむく)小児(せうに)(ごと)き、147赤裸々(せきらら)言葉(ことば)(おこな)ひが()きなのだ』
148 かかる(ところ)一人(ひとり)従卒(じゆうそつ)(あら)はれ(きた)り、
149『モシモシ、150只今(ただいま)ランチ将軍様(しやうぐんさま)御命令(ごめいれい)(ござ)いますが、151珍客(ちんきやく)()えましたので、152御接待(ごせつたい)()(もら)()いとの(こと)(ござ)います。153どうぞ(すみやか)にお居間(ゐま)へお()(くだ)さいませ』
154アーク『ヨシヨシ、155只今(ただいま)(まゐ)りますと()つてくれ。156(しか)し、157珍客(ちんきやく)といふのは、158どこからお()でになつたのだ』
159『ハイ、160(わたし)にはどこの(かた)だか(わか)りませぬが、161随分(ずゐぶん)綺麗(きれい)女神(めがみ)さまのやうな(かた)二人(ふたり)162ズンズンと(おく)へお(とほ)りになりました。163大方(おほかた)(その)(かた)(こと)(ござ)いませう』
164『ウン、165ヨシ、166直様(すぐさま)(まゐ)ると申上(まをしあ)げてくれ』
167『ハイ』
168(こた)へて従卒(じゆうそつ)(この)()立去(たちさ)つた。169(あと)二人(ふたり)(かほ)見合(みあは)せ、
170『オイ、171タール、172どう(おも)ふか、173(この)陣屋(ぢんや)(なん)だか変梃(へんてこ)になつて()たぢやないか。174蠑螈別(いもりわけ)がお(たみ)をつれてやつて()るかと(おも)へば、175(また)二人(ふたり)美人(びじん)()たとは、176益々(ますます)合点(がてん)()かぬぢやないか』
177『ウン、178さうだなア、179大方(おほかた)化物(ばけもの)だらうよ。180これ(ほど)殺風景(さつぷうけい)陣営(ぢんえい)へ、181そんな美人(びじん)二人(ふたり)も、182大胆不敵(だいたんふてき)にも侵入(しんにふ)して()るとは、183()うしても()せない。184(しか)しながら将軍(しやうぐん)命令(めいれい)185(そむ)(わけ)にも()くまい、186()つたら()うだ』
187無論(むろん)()(つもり)だが、188(しか)大体(だいたい)様子(やうす)(かんが)へた(うへ)でなくちや、189取返(とりかへ)しのならぬ失敗(しつぱい)(えん)ずるかも()れないぞ』
190『ナーニ刹那心(せつなしん)だ、191(かま)ふものかい』
192 ()(はな)(ところ)へ、193(さけ)にズブ(ろく)()うて、194ヒヨロリ ヒヨロリと千鳥(ちどり)をふみながらやつて()たのは蠑螈別(いもりわけ)であつた。195蠑螈別(いもりわけ)(きつね)(うさぎ)(ねこ)との()をつき()ぜた(やう)(めう)目付(めつき)をしながら、196(くさ)(いき)()きつつ、
197『ヤア、198歴々(れきれき)199(なん)面白(おもしろ)(はなし)(ござ)るかな。200(ひと)(わし)にも()かして(くだ)さい』
201アーク『コレハコレハ、202蠑螈別(いもりわけ)御大将(おんたいしやう)203大変(たいへん)上機嫌(じやうきげん)()えますなア、204(はなし)(うけたま)はりたいなり、205(また)しみじみと御懇談(ごこんだん)申上(まをしあ)げたいのだが、206只今(ただいま)将軍(しやうぐん)よりお()()しになりましたので、207生憎(あひにく)ゆつくり(はなし)交換(かうくわん)出来(でき)ませぬ。208失礼(しつれい)ながら御免(ごめん)(かうむ)りませう』
209『ヤア、210(じつ)(ところ)はランチ将軍様(しやうぐんさま)使(つかひ)()たのだ。211(いま)三五教(あななひけう)清照姫(きよてるひめ)212初稚姫(はつわかひめ)といふ(すこぶ)(つき)のシヤンが、213突然(とつぜん)()つて()たので、214両将軍(りやうしやうぐん)恐悦(きようえつ)(ななめ)ならず、215従卒(じゆうそつ)(もつ)て、216アーク、217タールの幕僚(ばくれう)をお(よび)よせになつた(ところ)218(いま)()られちや、219肝腎(かんじん)性念場(しやうねんば)(だい)なしになるといふので……蠑螈別(いもりわけ)殿(どの)220彼奴等(あいつら)両人(りやうにん)中々(なかなか)(くち)達者(たつしや)理窟(りくつ)つぽい(やつ)だから、221そなた()つて、222うまく()ひとめて()(くだ)され……とのお(たの)みだ。223それ(ゆゑ)(じつ)(ところ)一時(ひととき)ばかり暇取(ひまど)らせ、224(その)(あひだ)両将軍(りやうしやうぐん)がシツポリと要領(えうりやう)()ようといふ段取(だんどり)だ。225アハヽヽヽヽ』
226『ヤア、227そりや勿怪(もつけ)(さいは)ひだ。228なア、229タール、230(ひと)つここで蠑螈別(いもりわけ)のローマンスでも()かして(もら)はうかい』
231所望(しよまう)所望(しよまう)だ』
232『ナニ、233(おれ)のローマンスを()きたいといふのかアー。234()きたくば()かしてやらう。235(しか)しながら(あま)口数(くちかず)(おほ)いので、236どの方面(はうめん)から糸口(いとぐち)をたぐつたらいいか(わか)らない。237アーア、238(こま)つた註文(ちうもん)()けたものだ。239エヘヽヽヽヽ』
240アーク『モシモシ、241(よだれ)がおちますよ』
242蠑螈別(いもりわけ)『エヘヽヽヽヽ、243イツヒツヒ』
244タール『大分(だいぶん)(うれ)しかつたと()えますね。245智者(ちしや)対者(たいしや)一言(いちごん)()いて、246(その)生涯(しやうがい)()るとか()ひましてなア、247このタールは蠑螈別(いもりわけ)さまの(その)顔面(がんめん)筋肉(きんにく)(うご)(かた)と、248エヘヽヽイヒヽヽの言霊(ことたま)によつて、249貴方(あなた)歓喜生活(くわんきせいくわつ)生涯(しやうがい)をほぼ(さと)(こと)()ました』
250アーク『ナヽ(なに)(ぬか)しよるのだ。251よう(さへづ)(やつ)だな。252貴様(きさま)がそれ(ほど)(わか)つてゐるなら、253蠑螈別(いもりわけ)さまに(かは)つて、254ここで(おれ)()かしたら()うだ』
255タール『御本人(ごほんにん)(まへ)で、256御本人(ごほんにん)講談(かうだん)如何(いか)なる名人(めいじん)でも()りにくいからなア。257講談師(かうだんし)()()(やう)(うそ)をつき……と何程(なにほど)真実(ほんたう)(かた)つても、258(あたま)から相場(さうば)をきめられちや、259折角(せつかく)骨折(ほねをり)無駄(むだ)になる。260それよりも直接(ちよくせつ)御本人(ごほんにん)から(うけたま)はつた(はう)が、261愚昧(ぐまい)貴様(きさま)(あたま)には、262余程(よほど)有難(ありがた)(かん)ずるだらう。263
264蠑螈別(いもりわけ)(じつ)(ところ)は、265ウーン、266(いま)()れて()たお(たみ)といふ(をんな)267随分(ずゐぶん)別嬪(べつぴん)でせう。268エヘヽ、269貴方(あなた)御覧(ごらん)になりましたか』
270アーク『一寸(ちよつと)横顔(よこがほ)(をが)まして(もら)ひましたが、271随分(ずゐぶん)稀体(きたい)尤物(いうぶつ)らしいですなア。272(しか)しそんなお惚気話(のろけばなし)()かして(もら)ふのは、273(じつ)ア、274有難迷惑(ありがためいわく)だ。275一杯(いつぱい)(おご)つて(もら)はなくちや(つま)らないですからなア』
276真面目(まじめ)()いて(もら)へるなら、277(この)ブランデーを(しん)ぜる』
278()ひながら、279(ふところ)からガラガラ()はせながら、280峻烈(しゆんれつ)(さけ)()つた二個(にこ)(びん)取出(とりだ)し、281二人(ふたり)一個(いつこ)づつ(わた)した。282二人(ふたり)(はなし)はそつちのけにして、283グビリグビリと(のど)をならして()(はじ)めた。284蠑螈別(いもりわけ)一生懸命(いつしやうけんめい)惚気話(のろけばなし)虚実交々(きよじつこもごも)相交(あひまじ)へて(しやべ)()てる。285二人(ふたり)馬耳東風(ばじとうふう)()(なが)し、286ブランデーに()()られて、
287『アーア、288よう()(さけ)だ、289エヽー、290(なん)(うま)いぢやないか』
291『あゝ(うま)(うま)い、292(なん)気分(きぶん)がいいなア』
293(さけ)ばかりほめてゐる。294蠑螈別(いもりわけ)一生懸命(いつしやうけんめい)にお(たみ)との情交(じやうかう)関係(くわんけい)(しやべ)()ててゐる。295そして二人(ふたり)(こゑ)(みみ)(はさ)み、
296本当(ほんたう)にお(まへ)()(とほ)り、297ウマイものだらう。298()いても気分(きぶん)がいいだらう』
299 アークは(ひたい)(しき)りに(たた)きながら、
300『あゝ()うた()うた、301(じつ)感謝(かんしや)(いた)りだ』
302本当(ほんたう)完全(くわんぜん)(こひ)のローマンスを()いて、303()うただらう。304(あたま)(たた)いて感心(かんしん)せなくちや()られまい、305本当(ほんたう)にこんな()つとき(ばなし)拝聴(はいちやう)して、306(まへ)(うれ)しかろ、307感謝(かんしや)すると()つたねえ』
308タール『エーエ、309(おれ)もモ一本(いつぽん)()しいものだなア、310本当(ほんたう)気分(きぶん)のいいものだ。311蠑螈別(いもりわけ)さま、312(ひと)(くだ)さいな』
313 蠑螈別(いもりわけ)はうつつになり、
314本当(ほんたう)気分(きぶん)のいい(をんな)だらう、315一目(ひとめ)()ても恍惚(くわうこつ)として()うたらう。316(しか)(くだ)さいと()つても、317(たみ)ばかりはやる(こと)出来(でき)ないよ。318それ(だけ)御免(ごめん)だ。319蠑螈別(いもりわけ)(いのち)(おや)だからなア』
320本当(ほんたう)百薬(ひやくやく)(ちやう)だ、321(いのち)(おや)だ、322それだから()しいといふのだ。323なア、324アーク、325エーエン、326本当(ほんたう)心持(こころもち)がよくなつたぢやないか。327こりや()うしても(この)(まま)でしまふこたア出来(でき)ない、328(たみ)さまにでもついで(もら)つて、329二次会(にじくわい)でもやらうかなア』
330『お(たみ)()うするといふのだ。331(さけ)をつがさうと()つても、332(たみ)()は、333さう易々(やすやす)貴様(きさま)(さけ)ア、334つがないぞ、335エヽン、336(この)蠑螈別(いもりわけ)(さま)一人(ひとり)(かぎ)つて、337(さけ)をつぐ(ため)製造(せいざう)してある(ゆき)(やう)なお手々(てて)だ。338()(ほど)()らぬもキリがあるぞよツ』
339呶鳴(どな)りながら、340ブランデーの空瓶(あきびん)で、341アークの前頭部(ぜんとうぶ)をカツンとやつた。342アーク、343タールの両人(りやうにん)はヒヨロヒヨロになつた(まま)344蠑螈別(いもりわけ)(むか)つて(また)もやブランデーの空瓶(あきびん)をふり()げ、345()つてかかる。346されど三人(さんにん)三人(さんにん)(とも)キツい(さけ)(あし)()られ、347彼方(あちら)へヒヨロヒヨロ此方(こちら)へヒヨロヒヨロとヒヨロつきまはつた途端(とたん)に、348(みつ)つの(あたま)一所(ひとところ)機械的(きかいてき)(あつ)まり、349(はげ)しき衝突(しようとつ)(きた)し、350パチン、351ピカピカピカと()から霊光(れいくわう)発射(はつしや)し、352ウンとばかり(その)()(たふ)れて(しま)つた。353(この)(とき)(たみ)は、354蠑螈別(いもりわけ)所在(ありか)(たづ)ねて、355(あら)はれ(きた)り、356(この)(てい)()打驚(うちおどろ)き、
357『アレ、358マア蠑螈別(いもりわけ)さま』
359()ひながら、360抱起(だきおこ)さうとする。361蠑螈別(いもりわけ)(まなこ)(くら)み、362アークをお(たみ)間違(まちが)へ、
363『コレお(たみ)364すまなかつた、365(まへ)何時(いつ)もの言葉(ことば)(かろ)んじ、366内証(ないしよう)でブランデーをやつたものだから、367足腰(あしこし)()たぬやうになつた。368こんな(ところ)将軍(しやうぐん)さまに()られちや大変(たいへん)だから、369どつかへ(かく)してくれないか。370チツト()ひが()めるまで……』
371 お(たみ)蠑螈別(いもりわけ)(かほ)(きず)()て、
372『アツ』
373(おどろ)き、374(ほとん)失心(しつしん)状態(じやうたい)になつてゐたので、375蠑螈別(いもりわけ)がアークをお(たみ)間違(まちが)へてる(こと)()がつかなかつた。376タールは()まひが()て、377(たみ)(かたはら)にリの字形(じがた)になつて(たふ)れてゐる。378アークは蠑螈別(いもりわけ)自分(じぶん)をお(たみ)間違(まちが)へてゐるなア……と(はや)くも(さと)り、379(した)のまはらぬ(くち)から(をんな)(つく)(ごゑ)をして、
380『コレ、381蠑螈別(いもりわけ)さま、382(まへ)さまは、383本当(ほんたう)にヒドイ(ひと)だよ、384いつもいつも(わたし)にこれ(だけ)心配(しんぱい)かけて、385それ(ほど)(わたし)(にく)いの、386サアもうお(ひま)(くだ)さい、387今日(けふ)(かぎ)りモウ(わたし)はアカの他人(たにん)ですよ。388エヽ(にく)らしい』
389といつては(みみ)引掻(ひつか)き、390横面(よこづら)をピシヤピシヤとなぐり、391(はな)をつまもうとすれど、392アークも(あま)()ひつぶれてゐるので、393()()うしても命令(めいれい)()かず、394蠑螈別(いもりわけ)(はな)をこすつたり、395(ほほ)べたを()でたり、396(みみ)引張(ひつぱ)つてゐる。397蠑螈別(いもりわけ)(あま)りアークの()がキツクさはらないので、398ますますお(たみ)()(しん)じ、
399『アヽお(たみ)400すまなかつた、401どつかへ(ひと)(よひ)()める(まで)かくしてくれ』
402(さけ)ぶ。403アークは(また)(つく)(ごゑ)で、
404『サ、405蠑螈別(いもりわけ)さま、406(つぎ)()押入(おしい)(なか)へかくして()げませう。407(よひ)のさめる(まで)(しづ)かにお(やす)みなさいませ』
408流石(さすが)はお(たみ)だ、409親切(しんせつ)(をんな)だなア。410(これ)だから蠑螈別(いもりわけ)(いのち)(まで)投込(なげこ)むのも無理(むり)もない。411(まへ)になら仮令(たとへ)どんな(ところ)連込(つれこ)まれても満足(まんぞく)だ。412ゲーガラガラガラ ウツプー、413あゝ(くる)しい(くる)しい』
414 アークはニタニタしながら、415蠑螈別(いもりわけ)(かた)にかけ、416水門壺(すゐもんつぼ)(まへ)まで()つて、
417蠑螈別(いもりわけ)さま、418ここが押入(おしいれ)だよ』
419()ふより(はや)く、420水門壺(すゐもんつぼ)蠑螈別(いもりわけ)()きおとさうとした。421蠑螈別(いもりわけ)一生懸命(いつしやうけんめい)(うで)(にぎ)つてはなさない。422()した(いきほひ)二人(ふたり)はヒヨロヒヨロとヨロめいて、423水門壺(すゐもんつぼ)(なか)へドブンと一緒(いつしよ)におち()んで(しま)つた。424(この)物音(ものおと)(おどろ)いて、425外面(そと)見廻(みまは)りをしてゐた二三(にさん)番卒(ばんそつ)()けより、426二人(ふたり)水門壺(すゐもんつぼ)より(すく)()げ、427()()きなどして二人(ふたり)()をつけた。428そして蠑螈別(いもりわけ)依然(いぜん)としてお(たみ)一緒(いつしよ)落込(おちこ)んだものと(しん)じてゐた。429アークもタールも、430蠑螈別(いもりわけ)もお(たみ)一度(いちど)正気(しやうき)(うしな)つて(しま)つたのだから、431番卒(ばんそつ)(ども)介抱(かいほう)(すこ)しも()らず、432()がついたのは(いづ)れも同時(どうじ)であつた(ため)に、433()らぬ(かみ)(たた)りなしで、434アーク、435蠑螈別(いもりわけ)(あひだ)に、436(この)(こと)(くわん)しては(すこ)しの紛擾(ふんぜう)(おこ)らなかつた。
437 (ここ)四人(よにん)はスツカリ(よひ)がさめ、438正気(しやうき)になる(まで)一日(いちにち)ばかり()(うへ)439(その)翌日(よくじつ)になつて、440昼狐(ひるぎつね)追出(おひだ)したやうな(かほ)をして、441ランチ将軍(しやうぐん)(まへ)にヌツクリと(かほ)()した。
442大正一二・一・一二 旧一一・一一・二六 松村真澄録)