霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第七章 六道(ろくだう)(つじ)〔一二六一〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第48巻 舎身活躍 亥の巻 篇:第2篇 幽冥摸索 よみ:ゆうめいもさく
章:第7章 六道の辻 よみ:ろくどうのつじ 通し章番号:1261
口述日:1923(大正12)年01月12日(旧11月26日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年10月25日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
精霊界は善霊・悪霊が集合する天界と地獄の中間的境域である。人の死後、八街の中心にある関所に来るためにはいろいろの道をたどることになる。
東から来る者は良い方の精霊たちである。西から来るものはやや魂が曇っており、剣の山を渡ってくる。北から来るものは氷の橋を渡ってくる。南から来るものは燃えている山を通ってくる。
東北東からは身を没するばかりの雪の中を、東南からは枯れ野原を、西南からはけわしい岩山を、西北からはとがった小石の道を足を痛めながらやってくる。こうして苦しみながら八街へ来るのは、いずれも地獄へ行く副守護神の精霊ばかりである。
善霊はいずれの方面から来ても、生前に尽くした愛善と信真の徳によって、精霊界をやすやすと歩いていくことができる。
八街の関所は、正守護神も副守護神もすべてのものの会合するところであって、ここで善悪真偽を調べられ、あるいは修練をさせられ、ある一定の期間を経て地獄に落ちたり天国へ昇ったりするのである。
片彦は針の山を通って八街の関所やってきた。関所の守衛は片彦を呼び止め、身柄を拘束した。片彦は金剛力を出して綱を引きちぎり、館の戸を無理に押しあけて走ってきて門の敷居に躓いて倒れてしまった。
ランチ将軍、副官のガリヤ、ケースが東の方からやってきた。三人は殺したと思った片彦が倒れているのを見つけて揺り起こした。片彦はランチ将軍と二人の副官を認めると、怒って挑みかかった。
ランチ将軍は、いさかいの元になった美人たちは妖怪であり、自分たちも高殿から川に落ち込んでここへやってきたのだ、と経緯を説明した。そしてこうなった上はまた旧交をあたためようと仲直りを申し出た。
そこへお民がやってきて合流した。お民はここは死後の八街の関所だと伝えるが、ランチたちは信じない。そこへ十人ばかりの守衛たちが得物を手にしていかめしく五人の周りを取り囲んだ。
ランチはまだ自分が生きている気になって守衛たちを威嚇するが、逆に守衛に一喝され、ようやくもろ手を組んでいぶかり始めた。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:
愛善世界社版:89頁 八幡書店版:第8輯 620頁 修補版: 校定版:93頁 普及版:45頁 初版: ページ備考:
001 精霊界(せいれいかい)善霊(ぜんれい)悪霊(あくれい)集合(しふがふ)する天界(てんかい)地獄(ぢごく)中間的(ちうかんてき)境域(きやうゐき)にして、002(これ)(あめ)八衢(やちまた)といふ(こと)(すで)()べた(ところ)である。003さて八衢(やちまた)仏教者(ぶつけうしや)()六道(ろくだう)(つじ)(やう)なものである。004(また)(ひと)死後(しご)(この)八衢(やちまた)中心(ちうしん)なる関所(せきしよ)(きた)るには、005いろいろの(みち)辿(たど)るものである。006東西南北(たうざいなんぼく)乾坤巽艮(いぬゐひつじさるたつみうしとら)と、007各精霊(かくせいれい)八方(はつぱう)より(この)関所(せきしよ)中間(ちうかん)として(あつ)まり(きた)るものである。008(ひがし)から(きた)(もの)大抵(たいてい)精霊(せいれい)(うち)でも()(はう)部分(ぶぶん)であり、009さうして三途(せうづ)(かは)(なが)れてゐる。010どうしても(この)関所(せきしよ)(とほ)らなければならないのである。011(また)西(にし)から(きた)(もの)(やや)(たましひ)(くも)つたものが()()(ところ)であつて、012(はり)()てたやうな、013所謂(いはゆる)(つるぎ)(やま)(わた)つて()(もの)である。014ここを(わた)るのは(わづか)(あし)()るるだけの(ほそ)(みち)がまばらに足型(あしがた)(だけ)(のこ)つて()つて、015一寸(ちよつと)油断(ゆだん)をすればすぐに(あし)(やぶ)り、016(つまづ)いてこけでもしようものなら、017(からだ)一面(いちめん)に、018(はり)()されて(くる)しむのである。019(また)(きた)から(きた)(もの)(つめ)たい(こほり)(はし)(わた)つて()る。020(すこ)しく油断(ゆだん)をすれば幾千丈(いくせんぢやう)とも()れぬ(ふか)泥水(どろみづ)(なが)れへ()()み、021そして(その)(はし)(した)には(なん)とも()へぬ(いや)らしい怪物(くわいぶつ)が、022(わに)(やう)(くち)をあけて、023()ちくる(ひと)()まむと()つてゐる。024そして(その)(うへ)(ほね)(きざ)(ごと)(さむ)(かぜ)()きまくり、025手足(てあし)(こご)えて、026(ほとん)生死(せいし)(ほど)(わか)らぬやうな(くる)しい(おも)ひに(みた)されるのである。027(また)(みなみ)(はう)から(きた)精霊(せいれい)は、028(やま)一面(いちめん)()()えてゐる(なか)を、029(ほのほ)(けむり)をくぐつて()なくてはならない。030(これ)(すこ)しく油断(ゆだん)をすれば(けむり)にまかれ、031衣類(いるゐ)()かれ、032大火傷(おほやけど)をなして(くる)しまなくてはならぬ。033(しか)しながら十分(じふぶん)注意(ちゆうい)をすれば、034火傷(やけど)(なん)(のが)れて八衢(やちまた)中心地(ちうしんち)(きた)(こと)()るのである。035(また)東北方(とうほくはう)より(きた)(もの)寒氷道(かんぴようだう)()つて、036(ゆき)()(ぼつ)するばかり(さむ)(つめ)たい(ところ)を、037野分(のわき)()かれながら、038こけつまろびつ、039死物狂(しにものぐる)ひになつて数十里(すうじふり)(なが)(みち)(わた)り、040(やうや)くにして八衢(やちまた)中心地(ちうしんち)へつくのである。041(また)東南(とうなん)より(きた)精霊(せいれい)は、042満目蕭然(まんもくせうぜん)たる枯野ケ原(かれのがはら)(ただ)一人(ひとり)トボトボとやつて()る。043そして泥田(どろた)やシクシク(ばら)(あや)しき(むし)()(なか)を、044(から)うじて中心地(ちうしんち)(むか)ふのである。045(また)西南(せいなん)より(きた)精霊(せいれい)は、046崎嶇(きく)たる山坂(やまさか)(いは)(うへ)をあちらへ()此方(こちら)()び、047種々(いろいろ)怪物(くわいぶつ)時々(ときどき)(おそ)はれながら、048手足(てあし)(きず)つけ、049()んだり(ころ)げたりしながらに、050(やうや)八衢(やちまた)中心地(ちうしんち)()()るものである。051(また)西北(せいほく)より(きた)精霊(せいれい)は、052赤跣足(まつぱだし)になり、053(とが)つた小石(こいし)(みち)(あし)(いた)めながら、054(やうや)くにして(いのち)カラガラ八衢(やちまた)(きた)るものである。055(しか)しながら(かく)(ごと)(くる)しみを()各方面(かくはうめん)より(これ)(あつ)まり(きた)精霊(せいれい)は、056(いづ)れも地獄(ぢごく)()くべき暗黒(あんこく)なる副守護神(ふくしゆごじん)精霊(せいれい)ばかりである。057(しか)して各方面(かくはうめん)(ちが)苦痛(くつう)()(ちが)ふのは、058(その)精霊(せいれい)(あく)虚偽(きよぎ)との度合(どあひ)如何(いかん)()るものである。059(また)善霊(ぜんれい)(すなは)正守護神(せいしゆごじん)精霊(せいれい)は、060(いづ)れの方面(はうめん)より(きた)るも、061(あま)(くる)しからず、062(あだか)春秋(はるあき)()心地(ここち)よげに旅行(りよかう)する(やう)なものである。063これは生前(せいぜん)(つく)した愛善(あいぜん)(とく)信真(しんしん)(とく)によつて、064精霊界(せいれいかい)易々(やすやす)跋渉(ばつせふ)する(こと)()るのである。065(ぜん)精霊(せいれい)八衢(やちまた)()して()(とき)は、066(ほとん)風景(ふうけい)よき現世界(げんせかい)原野(げんや)()(ごと)く、067(あるひ)(うる)はしき(かは)(わた)り、068海辺(うみべ)(つた)ひ、069(もし)くは(うる)はしき(はな)()(やま)()え、070(あるひ)大河(たいが)(ふね)にて易々(やすやす)(わた)り、071(また)風景(ふうけい)よき谷道(たにみち)(のぼ)りなどして(やうや)八衢(やちまた)()くものである。072正守護神(せいしゆごじん)通過(つうくわ)する(この)八衢街道(やちまたかいだう)は、073(ほとん)最下層天国(さいかそうてんごく)状態(じやうたい)相似(さうじ)してゐるのである。074(しか)して八衢(やちまた)関所(せきしよ)正守護神(せいしゆごじん)副守護神(ふくしゆごじん)も、075(すべ)てのものの会合(くわいがふ)する(ところ)であつて、076此処(ここ)にて善悪(ぜんあく)真偽(しんぎ)(しら)べられ、077(かつ)修練(しうれん)をさせられ、078いよいよ(あく)改善(かいぜん)をする見込(みこみ)のなきものは、079(ある)一定(いつてい)期間(きかん)()地獄界(ぢごくかい)()ち、080善霊(ぜんれい)(その)(とく)()(おう)じて、081各段(かくだん)天国(てんごく)へそれぞれ(のぼ)()るものである。
082 (はり)(やま)()えて(やうや)此処(ここ)(いき)()()えにやつて()たのは、083バラモン(けう)先鋒隊(せんぽうたい)片彦(かたひこ)将軍(しやうぐん)であつた。084片彦(かたひこ)赤門(あかもん)(まへ)意気(いき)揚々(やうやう)と、085ヤレ(らく)だといふやうな()になつてやつて()ると、086(あか)(しろ)守衛(しゆゑい)は、
087(しばら)()てツ』
088()びとめた。089片彦(かたひこ)物見櫓(ものみやぐら)(うへ)から谷底(たにそこ)真逆様(まつさかさま)()()まれ、090肉体(にくたい)()んだことは(すこ)しも()がつかず、091依然(いぜん)として現界(げんかい)()るものの(ごと)(しん)じてゐた。092それ(ゆゑ)守衛(しゆゑい)一喝(いつかつ)()ひ、093(すこ)しも(さわ)がず、
094拙者(せつしや)大自在天(だいじざいてん)大国彦神(おほくにひこのかみ)(をしへ)(ほう)じ、095()数多(あまた)軍勢(ぐんぜい)(ひき)ゐて斎苑(いそ)(やかた)進軍(しんぐん)途中(とちう)096浮木ケ原(うききがはら)陣営(ぢんえい)をかまへて、097戦備(せんび)をととのへゐる、098宣伝使(せんでんし)(けん)征討(せいたう)将軍(しやうぐん)片彦(かたひこ)(ござ)る。099(それがし)酩酊(めいてい)(あま)り、100(みち)にふみ(まよ)ひ、101(じつ)(はげ)しき(はり)(ごと)草木(さうもく)(しげ)れる(しも)(やま)(とほ)り、102(やうや)此処(ここ)までやつて()たもので(ござ)る。103此処(ここ)(なん)といふ(ところ)(ござ)るか、104少時(しばらく)休息(きうそく)(いた)すによつて、105(はら)余程(よほど)()つたなり、106(からだ)(つか)れたから、107(さけ)でもふれまつてくれまいか、108あつい(ちや)があれば、109一杯(いつぱい)(いただ)きたいものだ』
110 (あか)守衛(しゆゑい)()をギロリと()き、
111当関所(たうせきしよ)霊界(れいかい)八衢(やちまた)にて、112伊吹戸主神(いぶきどぬしのかみ)御関所(おせきしよ)だ。113(その)(はう)浮木(うきき)(もり)陣営(ぢんえい)(おい)て、114ランチ将軍(しやうぐん)副官(ふくくわん)後手(うしろで)(しば)られ、115谷川(たにがは)へほり()まれ、116絶命(ぜつめい)(いた)して此処(ここ)(まよ)うて()精霊(せいれい)だ。117精霊(せいれい)(なか)でも(もつと)(にく)むべき、118(なんぢ)悪霊(あくれい)だ。119サア此処(ここ)(おい)て、120(その)(はう)(つみ)軽重(けいぢゆう)(しら)べてやらう』
121『ヘヽー、122(なに)(ぬか)しよるのだ。123馬鹿(ばか)にするな。124(おれ)(さけ)にこそチツとばかり()うたが、125()んだ(おぼえ)はない。126一体(いつたい)ここは何処(どこ)だ。127本当(ほんたう)(こと)(まを)さぬと、128(この)(まま)にはすまさないぞ。129大方(おほかた)(その)(はう)往来(ゆきき)路人(ろじん)をかすめる泥棒(どろばう)だらう』
130馬鹿(ばか)だなア、131(しつか)(いた)さぬか、132そこらの光景(くわうけい)()よ。133これでも()がつかないか』
134(べつ)にどこも(かは)つた(ところ)がないぢやないか、135世間並(せけんなみ)樹木(じゆもく)もあれば、136道路(だうろ)もある。137(ちひ)さい(いけ)もあれば(かは)(なが)れてゐる。138人間(にんげん)道々(みちみち)沢山(たくさん)出会(であ)つて()た。139左様(さやう)(こと)(まを)して、140吾々(われわれ)脅迫(けうはく)しようと(いた)しても、141いつかな いつかな(たぶらか)されるやうな片彦(かたひこ)将軍(しやうぐん)ではないぞ。142左様(さやう)不都合(ふつがふ)(こと)(まを)すと、143ふん(じば)つて陣営(ぢんえい)につれ(かへ)り、144火炙(ひあぶ)りの(けい)(しよ)してやらうか、145エエーン』
146 (あか)片彦(かたひこ)()をグツと(うしろ)(まは)し、147(てつ)(ひも)にてクルクルとまきつけ、148伊吹戸主(いぶきどぬし)審判廷(しんぱんてい)()()てた。
149『ヤア此処(ここ)(なん)だか(めう)(ところ)だ。150(おれ)をかやうな(ところ)へ、151(しば)つてつれて()るとは何事(なにごと)だ』
152()()つてゐろ、153これから地獄行(ぢごくゆき)言渡(いひわた)しがあるから……』
154()ひすて、155青色(あをいろ)守衛(しゆゑい)片彦(かたひこ)(まか)せおき、156(あわただ)しく(おもて)()()した。157少時(しばらく)あつて、158青赤(あをあか)衣類(いるゐ)をつけたる、159いかめしき守衛(しゆゑい)獄卒(ごくそつ)(ごと)(もの)ドカドカと()(きた)り、160片彦(かたひこ)身辺(しんぺん)取巻(とりま)き、161どこへもやらじと厳重(げんぢゆう)警戒(けいかい)してゐる。162片彦(かたひこ)金剛力(こんがうりき)()して、163(てつ)(つな)()きちぎり、164片方(かたへ)腰掛(こしかけ)をグツと()()るより(はや)く、165前後左右(ぜんごさいう)にふりまはし、166(やかた)()無理(むり)押開(おしあ)け、167八衢(やちまた)赤門前(あかもんまへ)驀地(まつしぐら)(はし)(きた)り、168(もん)敷居(しきゐ)(つまづ)きパタリと(たふ)れ、169(しば)しは人事不省(じんじふせい)(おちい)つて(しま)つた。
170 (しばら)くするとランチ将軍(しやうぐん)(およ)びガリヤ、171ケースの三人(さんにん)は、172(ひがし)(はう)からスタスタと足早(あしばや)(はし)(きた)り、
173ランチ『オイ両人(りやうにん)174此処(ここ)はどこだ、175そこに門番(もんばん)()る。176一寸(ちよつと)(たづ)ねて()い』
177ガリヤ『ハイ、178承知(しようち)しました。179(なん)だか、180四辺(あたり)情況(じやうきやう)(あや)しう(ござ)います。181どうぞ、182貴方(あなた)はケースと(とも)少時(しばらく)ここにお()ちを(ねが)ひます』
183()()て、184門口(もんぐち)(ちか)(すす)()つた。185()れば一人(ひとり)(をとこ)(たふ)れてゐる。186何人(なにびと)ならむと近寄(ちかよ)つて(かほ)をのぞき()れば、187豈計(あにはか)らむや片彦(かたひこ)将軍(しやうぐん)であつた。188ガリヤは(おどろ)いて、189ツカツカと元来(もとき)(みち)引返(ひつかへ)し、
190『モシ、191将軍様(しやうぐんさま)192不思議(ふしぎ)(こと)があるものです。193物見台(ものみだい)から谷底(たにそこ)投込(なげこ)んで(ころ)してやつた片彦(かたひこ)将軍(しやうぐん)が、194あの(もん)(なか)べらに(たふ)れて()ります。195片彦(かたひこ)将軍(しやうぐん)はいつの()にこんな(ところ)()げて()たのでせうか』
196成程(なるほど)197ここから()ても、198よく()てゐる(やう)だ。199ハヽー、200(たれ)かに(たす)けられ、201此処(ここ)まで()げて()よつたのだなア。202大方(おほかた)(さけ)にでも()うてゐるのだらう。203(なに)はともあれ、204(ちか)づいて(しら)べてみよう』
205といひながらランチは(すす)みよつた。206そしてよくよく()れば、207(うたがひ)もなき片彦(かたひこ)将軍(しやうぐん)である。208ランチは(かた)(しき)りにゆすり、
209『オイオイ片彦(かたひこ)210貴様(きさま)命冥加(いのちみやうが)のある(やつ)だ。211(はや)()きぬかい、212かやうな(ところ)でイビキをかいて()()るといふ(こと)があるか』
213 片彦(かたひこ)(この)(こゑ)にハツと()がつき、214ムクムクと()(あが)り、
215『ヤア、216(その)(はう)はランチ将軍(しやうぐん)217ガリヤ、218ケースの三人(さんにん)だなア。219ヤア()(ところ)()うた。220(この)(はう)高殿(たかどの)から突落(つきおと)しよつたのを(おぼ)えて()るか。221()くなる(うへ)最早(もはや)了簡(れうけん)相成(あひな)らぬ。222サア尋常(じんじやう)勝負(しようぶ)(いた)せ』
223『アハヽヽヽヽ、224蟷螂(たうろう)(おの)をふるつて竜車(りうしや)(むか)ふとは(その)(はう)(こと)だ。225こちらは武勇絶倫(ぶゆうぜつりん)勇士(ゆうし)三人(さんにん)226如何(いか)(なんぢ)鬼神(きじん)をひしぐ(ゆう)ありとも、227到底(たうてい)(なんぢ)一人(いちにん)(ちから)(およ)ばむや、228左様(さやう)無謀(むぼう)(たたか)ひを(いど)むよりも、229(てい)よく(わが)軍門(ぐんもん)(くだ)つたら()うだ』
230馬鹿(ばか)(まを)せ、231(この)(はう)谷底(たにそこ)投込(なげこ)んだのみならず、232最愛(さいあい)清照姫(きよてるひめ)233初稚姫(はつわかひめ)まで横奪(わうだつ)した(こひ)(あだ)234モウ()うなる(うへ)片彦(かたひこ)死物狂(しにものぐるひ)235(いのち)をすてた(この)(はう)236サア、237かかるならかかつてみよ』
238『ヤ、239片彦(かたひこ)240あの美人(びじん)妖怪(えうくわい)(ござ)つたぞや。241拙者(せつしや)もあの美人(びじん)(とら)とも(きつね)とも(おほかみ)とも譬方(たとへがた)ない形相(ぎやうさう)をして、242拙者(せつしや)(にら)みつけた(とき)は、243本当(ほんたう)(きも)をつぶし、244ヨロヨロとヨロめいた途端(とたん)に、245高殿(たかどの)欄干(らんかん)三人(さんにん)一時(いちじ)にぶつ(たふ)れ、246(その)はづみに高欄(かうらん)はメキメキとこはれ、247泡立(あわだ)(ふち)(むか)つて三人(さんにん)急転(きふてん)落下(らくか)(やく)()ひ、248(すで)溺死(できし)せんとする(ところ)249命冥加(いのちみやうが)があつたと()え、250吾々(われわれ)三人(さんにん)(きし)(およ)ぎつき、251無我無夢(むがむちう)になつて此処(ここ)まで(はし)()()れば、252(もん)(かたはら)一人(ひとり)行倒(ゆきだふ)れ、253(すく)ひやらむと、254ガリヤを(つか)はし調(しら)べて()れば片彦(かたひこ)将軍(しやうぐん)()き、255()るものも取敢(とりあへ)救助(きうじよ)(むか)つたのだ。256最早(もはや)()(をんな)妖怪(えうくわい)であり、257(また)拙者(せつしや)貴殿(きでん)同様(どうやう)258高殿(たかどの)より水中(すゐちう)におち、259双方(さうはう)無事(ぶじ)(いのち)(たも)()たのは、260(まつた)大自在天(だいじざいてん)(さま)御守護(ごしゆご)(いた)(ところ)だ。261モウ()うなる(うへ)は、262今迄(いままで)(うらみ)をスツパリと(みづ)(なが)し、263旧交(きうかう)(あたた)めようぢやないか』
264『さうだ、265拙者(せつしや)()うして(いのち)(つな)げた(かぎ)りは、266貴殿(きでん)(べつ)赤目(あかめ)つり()うて(あらそ)ふにも(およ)ぶまい。267何分(なにぶん)(よろ)しく御頼(おたの)(まを)す。268(しか)しランチ殿(どの)269此処(ここ)不思議(ふしぎ)(ところ)(ござ)る。270この門内(もんない)高大(かうだい)なる(やかた)があり、271数多(あまた)番卒(ばんそつ)(ども)立籠(たてこも)り、272拙者(せつしや)軍法(ぐんぱふ)会議(くわいぎ)()せむと(いた)しよつた。273そこで拙者(せつしや)後手(うしろで)(しば)られた(てつ)(つな)剛力(がうりき)(まか)せて切断(せつだん)し、274(もん)()押破(おしやぶ)逃来(にげきた)途中(とちう)275(もん)(しきゐ)(つまづ)顛倒(てんたう)して、276(しばら)()をまはしてゐたのでござる。277そこを貴殿(きでん)がお(たす)(くだ)さつたのだから、278(いのち)御恩人(ごおんじん)279最早(もはや)(うら)みは(すこ)しも御座(ござ)らぬ、280(これ)より浮木(うきき)(もり)方角(はうがく)(たづ)ね、281一時(いちじ)(はや)陣営(ぢんえい)(かへ)らうでは(ござ)らぬか、282さぞ軍卒(ぐんそつ)(ども)心配(しんぱい)(いた)して()りませう』
283 ()かる(ところ)へ、284ヒヨロリ ヒヨロリとやつて()たのはお(たみ)であつた。
285片彦(かたひこ)『ヤア其方(そなた)はお(たみ)どのぢや(ござ)らぬか、286ようマア拙者(せつしや)(あと)(たづ)ねて()(くだ)さつた。287ヤア感謝(かんしや)(いた)す』
288『ハイ、289ここは何処(どこ)(ござ)いますか』
290『サア地名(ちめい)がサツパリ(わか)らないのだ。291最前(さいぜん)(あか)(つら)した(やつ)一人(ひとり)やつて()よつて、292八衢(やちまた)だとか関所(せきしよ)だとか(おど)かしよつたが、293(おれ)(いきほひ)辟易(へきえき)して、294何処(どこ)ともなく()()せて(しま)ひよつた。295アツハヽヽヽヽ、296(しか)しお(たみ)297(おれ)(した)(こころ)何処(どこ)までも(はな)れぬと()えて、298こんな()()れない(ところ)まで、299よくついて()てくれた。300イヤ本当(ほんたう)(やさ)しい(をんな)だ』
301『あの片彦(かたひこ)(さま)自惚様(うぬぼれやう)わいのう。302(わたし)には蠑螈別(いもりわけ)さまといふ立派(りつぱ)(をつと)(ござ)いますよ。303あなたは(ひと)(かみ)()将軍(しやうぐん)()でゐながら、304(ぬし)ある(をんな)恋慕(れんぼ)するとは(あんま)りぢやありませぬか、305チツと心得(こころえ)なされませ』
306()はしておけば、307(をんな)分際(ぶんざい)として、308()くに()へざる雑言無礼(ざふごんぶれい)309いよいよ軍法(ぐんぱふ)会議(くわいぎ)にまはし、310(その)(はう)(おも)刑罰(けいばつ)(しよ)してやるから、311覚悟(かくご)(いた)したがよからう』
312『ホヽヽヽヽ、313あなたも余程(よほど)常識(じやうしき)のない(かた)ですね。314軍人(ぐんじん)でもないもの、315(しか)軍隊(ぐんたい)何一(なにひと)関係(くわんけい)のない(この)(をんな)一人(ひとり)をつかまへて、316軍法(ぐんぱふ)会議(くわいぎ)にまはすなんて、317(あま)常識(じやうしき)がなさ()ぎるぢやありませぬか、318ねえランチ将軍(しやうぐん)(さま)319まるで片彦(かたひこ)将軍(しやうぐん)八衢人足(やちまたにんそく)みたやうな(かた)ですねえ。320ホツホヽヽヽ』
321『サア、322どうかなア』
323『コリヤお(たみ)324(なん)といふ無礼(ぶれい)(こと)(まを)すか、325八衢人足(やちまたにんそく)とは(なん)だ。326(おそれおほ)くも大自在天(だいじざいてん)(さま)御恩寵(ごおんちやう)()けた、327万民(ばんみん)天国(てんごく)(すく)ひ、328()世界(せかい)動乱(どうらん)をしづめる宣伝(せんでん)将軍様(しやうぐんさま)だぞ。329八衢(やちまた)にさまよふ(やつ)は、330(その)(はう)蠑螈別(いもりわけ)(ごと)人足(にんそく)だ』
331『ホツホヽヽヽヽ、332(わたし)八衢人足(やちまたにんそく)なら、333あなた(がた)(みな)さうですワ。334(げん)八衢(やちまた)関所(せきしよ)(まよ)つて()てゐるぢや(ござ)いませぬか。335あれ御覧(ごらん)なさい、336あすこに(やかた)(ござ)いませう。337あこが閻魔(えんま)さまのお(やかた)(ござ)いますよ。338(いづ)れここで、339(わたし)もあなた(がた)取調(とりしら)べられるにきまつてゐます。340(その)(とき)になれば(わたし)天国(てんごく)()くか、341あなた(がた)地獄(ぢごく)へお()(あそ)ばすか、342ハツキリと(わか)りませうから、343マア(たのし)んでお()ちなさいませ』
344『コリヤお(たみ)345(その)(はう)狂気(きやうき)(いた)したか、346()んでるのぢやないぞ。347(いま)から亡者(まうじや)気取(きど)りになつて(なん)とする。348コレコレ ランチ殿(どの)349(たみ)()つけを()ましたいと(おも)ひますが、350生憎(あひにく)途中(とちう)にて肝腎(かんじん)(くすり)遺失(ゐしつ)(いた)しました。351(すこ)しばかり貴方(あなた)(ぶん)(あた)へてやつて(くだ)さい』
352拙者(せつしや)(かは)落込(おちこ)んだ刹那(せつな)353肝腎(かんじん)霊薬(れいやく)(かは)(おと)したと()えます、354仕方(しかた)がありませぬワ』
355『ホヽヽヽヽ、356(わたし)(はう)から気付(きつけ)()げたい(くらゐ)だが、357(わたし)生憎(あいにく)持合(もちあは)せがないので、358仕方(しかた)がありませぬ。359(しか)しながら(いま)赤鬼(あかおに)さまがお調(しら)(くだ)さるでせうから、360(その)(とき)になつてビツクリなさいますなや、361本当(ほんたう)にお()(どく)さまですワ。362あなたの霊衣(れいい)浮木(うきき)(もり)陣営(ぢんえい)(ござ)つた(とき)とは大変(たいへん)(うす)くなつてゐますよ。363()(どく)運命(うんめい)が、364あなた(がた)頭上(づじやう)にふりかかつて()てるやうに(おも)へてなりませぬワ』
365()(ちが)つた(をんな)といふものは、366どうも仕方(しかた)がないものだなア』
367 ()(はな)(ところ)へ、368今度(こんど)十人(じふにん)ばかりの赤面(あかづら)守衛(しゆゑい)突棒(つきぼう)369刺股(さすまた)などを(たづさ)へ、370いかめしき装束(しやうぞく)をして、371バラバラと五人(ごにん)周囲(まはり)取巻(とりま)いた。
372拙者(せつしや)はバラモンの先鋒軍(せんぽうぐん)373ランチ将軍(しやうぐん)(ござ)る。374(その)(はう)何者(なにもの)なるや()らねども、375(その)いかめしき形相(ぎやうさう)何事(なにごと)ぞ。376それがしを護衛(ごゑい)(ため)か、377(ただし)召捕(めしと)(かんが)へか、378直様(すぐさま)返答(へんたふ)(いた)せ』
379守衛(しゆゑい)の一『ここは霊界(れいかい)八衢(やちまた)だ、380其方等(そのはうら)(すで)肉体(にくたい)(はな)れ、381ここに生前(せいぜん)(ごふ)(むく)いによつて、382(いま)審判(しんぱん)()けねばならぬ()(うへ)となつてゐるのだ。383サア神妙(しんめう)冥土(めいど)御規則(ごきそく)(したが)ひ、384(この)(はかり)(うへ)一人(ひとり)々々(ひとり)()つたがよからう、385(つみ)軽重大小(けいぢゆうだいせう)によつて、386(その)(はう)()くべき(ところ)(さだ)めねばならぬ。387サ、388キリキリと(この)(はかり)にかかれ』
389 ランチは双手(もろて)()み、
390『ハーテナア』
391大正一二・一・一二 旧一一・一一・二六 松村真澄録)