霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一五章 金玉(きんたま)(つじ)〔一二六九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第48巻 舎身活躍 亥の巻 篇:第4篇 福音輝陣 よみ:ふくいんきじん
章:第15章 金玉の辻 よみ:きんたまのつじ 通し章番号:1269
口述日:1923(大正12)年01月14日(旧11月28日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年10月25日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
治国別と玉依別(竜公)は、八衢を逍遥しながら四つ辻の辻堂の前に差し掛かった。二人はあたりの様子から、娑婆が近くなってきたことを知り、伊吹戸主神様の忠告を思い返しながら雑談にふけっている。
そこへ蠑螈別とエキスの精霊が酔っ払ってやってきた。いずれも肉体に帰ることができる精霊であるので、互いに意思疎通ができた。蠑螈別は、お民がここを通らなかったかと治国別と竜公に尋ねた。
蠑螈別は竜公が知らないと答えると、お民を隠しているに違いないと言いがかりをつけてきた。エキスはもうお民やお寅にかかわるのはこりごりだと辟易している。
蠑螈別が治国別を殴ったので、蠑螈別と竜公は喧嘩になり、蠑螈別の助太刀にはいったエキスも合せて三人とも金玉を握り合って目を回し、その場に倒れてしまった。治国別はあわてて天の数歌を上げ、鎮魂を施した。竜公は息を吹き返し、蠑螈別とエキスは起き上がると、雲を霞と逃げてしまった。
二人の耳には、アークとタールが呼ばわる声が聞こえてきた。にわかにぱっと明るくなったと思うと、治国別と竜公の身は、浮木の森の陣営のランチ将軍の居間に横たわっていた。枕元にはアークとタールが心配そうな顔をして控えていた。
アークとタールは、二人がランチと片彦の計略にかかったことに気が付き、ランチが留守の間に縄梯子を下ろして二人を引き上げ、介抱していた。四人は互いに無事を祝し、大神の前に端座して祝詞を奏上した。
治国別は蠑螈別の身の上が気にかかって探しに行き、雪が人間の形に積もって高くなっているところを発見した。治国別と竜公は、雪の中から倒れていた蠑螈別とエキスを助け出した。
治国別はさらに、ランチ、片彦両将軍をはじめお民の身の上が気にかかると、物見やぐらに向かった。蠑螈別もお民の身の上が心配だと聞いて、治国別たちと一緒に向かった。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:
愛善世界社版:213頁 八幡書店版:第8輯 668頁 修補版: 校定版:221頁 普及版:112頁 初版: ページ備考:
001 治国別(はるくにわけ)002玉依別(たまよりわけ)八衢(やちまた)をブラリブラリと逍遥(せうえう)しながら(ある)四辻(よつつじ)辻堂(つじだう)(まへ)差掛(さしかか)つた。
003治国別(はるくにわけ)さま、004どうやら玉依別(たまよりわけ)称号(しやうがう)断末魔(だんまつま)近付(ちかづ)いたやうです。005ここは浮木(うきき)(もり)十町(じつちやう)(ばか)手前(てまへ)(やぶ)(だう)ぢやありませぬか、006どうも記憶(きおく)(のこ)つてゐるやうです』
007成程(なるほど)008(かは)水音(みづおと)(まで)(きこ)えて()た。009(なん)とはなしに娑婆(しやば)(ちか)くなつた(やう)だ』
010伊吹戸主(いぶきどぬし)神様(かみさま)にキツウ(くぎ)をさされて()ました。011本当(ほんたう)吾々(われわれ)何時(いつ)()にやら、012(はな)ばかり(たか)くなつて()つたと()えますな。013(やはら)かく(きび)しくカツンとやられた(とき)(はづ)かしさ、014(くる)しさ、015(いま)(おも)()しても冷汗(ひやあせ)()ますワ』
016(あま)りお(しやべ)りが()ぎたからだ。017三五教(あななひけう)御神諭(ごしんゆ)にも……(なん)にも()らずに途中(とちう)鼻高(はなだか)が、018(はな)ばかり(たか)うして(えら)さうに(まを)して()るが、019(あま)(はな)(たか)うて(うへ)()えず、020(はな)()邪魔(じやま)(いた)して、021足許(あしもと)(なほ)()えず、022(さき)()えず、023()(どく)なものであるぞよ。024(かみ)(はな)捻折(ねぢを)りて改心(かいしん)さした(うへ)025(まこと)(こと)()かしてやるぞよ……とお(しめ)しになつてゐるが、026(いま)伊吹戸主神(いぶきどぬしのかみ)(さま)御説教(ごせつけう)()かされて、027(じつ)御神諭(ごしんゆ)(たふと)(こと)を、028今更(いまさら)(ごと)(さと)つたよ』
029『ハ、030さうですな。031(これ)から現界(げんかい)(かへ)つたら、032科学的(くわがくてき)霊学(れいがく)研究(けんきう)などと(えら)さうにホラを()いてゐる途中(とちう)鼻高(はなだか)(はな)つパチを捻折(ねぢを)つてやらぬ(こと)には、033到底(たうてい)霊界(れいかい)片鱗(へんりん)宇宙(うちう)真相(しんさう)もヨウ()けず、034亡者然(まうじやぜん)威張(ゐば)つて()始末(しまつ)()へぬ(やつ)を、035(はな)捻折(ねぢを)つて(たす)けてやりませうかな』
036『アハヽヽヽ、037自分(じぶん)(かほ)()えませぬか、038玉依別(たまよりわけ)さま、039(まへ)さまの(はな)随分(ずいぶん)(たか)うなりましたよ』
040『ヤア、041()らぬ()霊界(れいかい)ぢやと()えて、042想念(さうねん)延長(えんちやう)(きた)し、043(はな)(まで)延長(えんちやう)してゐました、044治国別(はるくにわけ)(さま)()つて(もら)つて、045これで満足(まんぞく)(かほ)になりました。046アヽ惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
047伊吹戸主神(いぶきどぬしのかみ)(さま)のお(さと)しを(わす)れちやなりませぬよ』
048『モシ(わす)れたら、049貴方(あなた)()をつけて(くだ)さいや。050(また)潜在意識(せんざいいしき)とか、051潜在神格(せんざいしんかく)となつて、052心内(しんない)(ふか)潜伏(せんぷく)(いた)しました(とき)にや、053副守(ふくしゆ)跋扈(ばつこ)して、054(また)脱線(だつせん)をするかも()れませぬから、055どうぞ(その)都度(つど)々々(つど)056御忠告(ごちうこく)(ねが)ひます』
057『ハツハヽヽ、058玉依別(たまよりわけ)さま、059(わたし)何時(いつ)(わす)れるか()れないから、060(たがひ)()をつけ()(こと)(いた)しませう』
061貴方(あなた)(わたくし)一時(いつとき)(わす)れて(しま)つたら()うなりますか』
062(いま)から(わす)れる(こと)ばかり(かんが)へなくても(よろ)しい。063(わす)れてよい(こと)(わす)れ、064(わす)れてならない(こと)(わす)れない(やう)(つと)めるのですな』
065 かく(はな)(ところ)へ、066ヅブ(ろく)()うてヒヨロリ ヒヨロリとやつて()たのは蠑螈別(いもりわけ)067エキス両人(りやうにん)精霊(せいれい)であつた。068肉体(にくたい)のある精霊(せいれい)は、069肉体(にくたい)のなき精霊(せいれい)言葉(ことば)をかけられる(とき)は、070(ただち)(けむり)(ごと)消失(せうしつ)するものだが、071四人(よにん)(とも)肉体(にくたい)(かへ)()べき精霊(せいれい)(こと)とて、072どちらも元気(げんき)がよい。073蠑螈別(いもりわけ)辻堂(つじだう)(やす)んでゐる二人(ふたり)(まへ)(あら)はれ(きた)り、
074『モシ、075(いづ)れの(かた)()りませぬが、076一寸(ちよつと)御尋(おたづ)(まを)します、077二十歳(はたち)(ばか)りの妙齢(めうれい)美人(びじん)が、078ここを通過(つうくわ)(いた)しませなんだかな』
079玉依(たまより)『ウン、080ねつから(をんな)らしい(かた)には、081牝猫(めんねこ)一匹(いつぴき)()ひませぬよ』
082『ナヽ(なん)だ、083()はぬと(まを)すか、084大方(おほかた)(その)(はう)誘拐(かどわか)して(かく)して()るのだろ。085(この)街道(かいだう)(をとこ)(をんな)(とほ)(ところ)だ。086エヽン、087ゴテゴテぬかさずに白状(はくじやう)せぬか。088なア、089エキス、090(まへ)鑑定(かんてい)()(おも)ふ』
091(なん)だか()らぬが、092(をんな)はモウ懲々(こりごり)だ、093(たみ)(こと)()ふものぢやない。094(たみ)(こと)()くと、095すぐにお寅婆(とらばば)聯想(れんさう)する。096あんな鬼婆(おにばば)(また)もや、097やつて()(はな)でも()ぢよつたら、098今度(こんど)はモウ、099サツパリだ。100()ふな()ふな、101(をんな)一疋(いつぴき)やそこら、102(なん)だい』
103貴様(きさま)にや情交上(じやうかうじやう)関係(くわんけい)がないから、104そんな平気(へいき)(かほ)して()らりようが、105(たう)御亭主(ごていしゆ)たる(おれ)には(また)特別(とくべつ)悲痛(ひつう)があるのだ。106恋知(こひし)らずの木狂漢(ぼくきやうかん)英雄(えいゆう)心事(しんじ)(わか)つてたまらうかい、107エヽーン、108大切(たいせつ)なる情婦(じやうふ)片彦(かたひこ)将軍(しやうぐん)色魔(しきま)にチヨロまかされ、109(その)(うへ)色白(いろじろ)青瓢箪男(あをべうたんをとこ)自由(じいう)にされ、110どうしてこれが(だま)つて()らりようか。111(たみ)(やつ)112とうと途中(とちう)()げて(しま)ひよつた。113キツと(しめ)(あは)せて、114どつかで()うてけつかるに(ちがひ)ない、115(おれ)はどこまでも彼奴(あいつ)所在(ありか)()()め、116(おも)存分(ぞんぶん)やらなくちや(むし)がいえねえのだ。117……ヤア貴様(きさま)治国別(はるくにわけ)ぢやないか。118こんな(ところ)へお(たみ)(あと)()うて()よつたのかな。119貴様(きさま)もヤツパリ同穴(どうけつ)(むじな)だらう、120サア所在(ありか)白状(はくじやう)(いた)せ』
121(くさ)(いき)()きかけながら、122治国別(はるくにわけ)()をグツと(にぎ)り、123()(たて)にして(にら)みつけた。124治国別(はるくにわけ)迷惑(めいわく)さうな(かほ)をしながら、
125蠑螈別(いもりわけ)さま、126見当違(けんたうちがひ)(ほど)がありますよ』
127『ナーニ、128見当違(けんたうちがひ)だと、129馬鹿(ばか)(まを)せ、130(おれ)天眼通(てんがんつう)で、131貴様(きさま)がお(たみ)をそそのかして()ることを遠隔透視(ゑんかくとうし)したのだ。132そして(ささや)いて()つた(こと)をも天耳通(てんじつう)でチヤンと調(しら)べてある。133サア何処(どこ)へかくした、134白状(はくじやう)(いた)せ』
135『アハヽヽヽ、136それ(ほど)よく天眼通(てんがんつう)()くならば、137(たみ)さまの所在(ありか)一目(ひとめ)(わか)りさうなものですなア』
138蠑螈別(いもりわけ)言葉(ことば)につまり、139(さけ)酔機嫌(よひきげん)で、140(こぶし)(かた)めて治国別(はるくにわけ)横面(よこづら)(つづ)けざまに()()つなぐつた。141治国別(はるくにわけ)(あたま)をかかへて抵抗(ていかう)もせず、142惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)』を奏上(そうじやう)しながら、143しやがんでゐる。144玉依別(たまよりわけ)はグツと(しやく)(さは)り、145蠑螈別(いもりわけ)(うしろ)(まは)り、146睾玉(きんたま)をグツと(にぎ)つて、147(うしろ)()いた。148(この)(てい)()て、149エキスは(また)もや玉依別(たまよりわけ)睾丸(きんたま)をグツと(にぎ)り、150(うしろ)()いた途端(とたん)(あし)(まへ)(すべ)り、151ドンと(にぎ)つたまま仰向(あふむ)けに(たふ)れた。152将棋倒(しやうぎだふ)しにズルズルと玉依別(たまよりわけ)153蠑螈別(いもりわけ)といふ(じゆん)()(がさ)ねとなつた。154エキスは玉依別(たまよりわけ)(おほ)きな(けつ)睾丸(きんたま)をグツと(おさ)へられ、155三人(さんにん)(とも)睾丸(きんたま)(いた)めて、156(した)をかみ()し、157()(まか)して(しま)ひ、158三人揃(さんにんそろ)うて(さん)きん交替(かうたい)睾丸(きんたま)江戸登城(えどとじやう)をやつて(しま)つた。
159 治国別(はるくにわけ)(おどろ)いて三人(さんにん)()無理(むり)(はな)し、160一人(ひとり)々々(ひとり)地上(ちじやう)横臥(わうぐわ)させ、161一生懸命(いつしやうけんめい)数歌(かずうた)(うた)()げ、162鎮魂(ちんこん)(もつ)神霊注射(しんれいちうしや)(こころ)みた。163玉依別(たまよりわけ)第一着(だいいちちやく)(いき)吹返(ふきかへ)し、
164『アイタヽヽ、165アー(えら)()()はしよつた。166ヤ、167先生(せんせい)168よう(たす)けて(くだ)さいました。169(わたし)(また)第一天国(だいいちてんごく)へただ一人(ひとり)(のぼ)りかけて()りましたら、170貴方(あなた)のお(こゑ)(あま)数歌(かずうた)(きこ)()しましたので、171(あと)ふり(かへ)()れば、172貴方(あなた)身体(からだ)より霊光(れいくわう)発射(はつしや)し、173(その)(ひかり)(つつ)まれたと(おも)へば()がつきました。174精霊界(せいれいかい)()てもヤツパリ()をまかしたり、175霊体脱離(れいたいだつり)したりするものと()えますなア』
176『アヽさうと()えるなア、177不思議(ふしぎ)なものだ。178(しか)蠑螈別(いもりわけ)さまとエキスさまが、179睾丸(きんたま)(そこ)ねてまだ()がつかない。180(はや)(たす)けてやらねばならぬ。181玉依別(たまよりわけ)さま、182(ひと)貴方(あなた)183神様(かみさま)(ねが)つて復活(ふくくわつ)さしてやつて(くだ)さい』
184成程(なるほど)185(そろ)ひも(そろ)うて睾丸病者(かうぐわんびやうしや)ばかりですな。186(ひと)(ねが)つて()ませうか。187(しか)先生(せんせい)188此奴(こいつ)ア、189貴方(あなた)(よこ)(つら)(なぐ)つた悪人(あくにん)ですから、190()つといてやりませうかい』
191(かみ)(みち)(ひと)(すく)ふのが(つと)めだ。192霊界(れいかい)()てそんな(こころ)では()けませぬぞ。193天国(てんごく)には(うらみ)もなければ(にく)みもない、194(ただ)(あい)あるのみですよ』
195『そらさうです、196(しか)しここは天国(てんごく)ぢやありませぬぞえ。197中有界(ちううかい)ですから、198(ぜん)()れば(あく)()ります。199悪人(あくにん)悪人(あくにん)(こら)してやるが社会(しやくわい)(ため)ですよ』
200『ソリヤいけませぬ。201貴方(あなた)仮令(たとへ)()中有界(ちううかい)()るとも、202(その)内分(ないぶん)には最高天国(さいかうてんごく)(ひら)けてゐるぢやありませぬか。203(その)(こころ)(もつ)御助(おたす)けなさい』
204伊吹戸主神(いぶきどぬしのかみ)(さま)中有界(ちううかい)中有界(ちううかい)205現界(げんかい)現界(げんかい)相応(さうおう)()(まも)れ、206(みだ)りに天界(てんかい)秘密(ひみつ)を、207(わけ)(わか)らぬ人間(にんげん)(しめ)すと、208(かへつ)(かみ)冒涜(ばうとく)する……と仰有(おつしや)つたぢやありませぬか』
209『ハツハヽヽ、210益々(ますます)(わか)らぬやうになりますねえ』
211『さうでせうとも、212すでに竜公(たつこう)還元(くわんげん)間際(まぎは)ですからなア。213(おほい)愛善(あいぜん)証覚(しようかく)(おとろ)へました。214(いな)内分(ないぶん)(ふさ)がりましたやうです』
215 かく()(をり)しも、216蠑螈別(いもりわけ)217エキスはムクムクと起上(おきあが)り、218二人(ふたり)(かほ)(にら)みながら、219(こは)さうに後向(うしろむ)けに(ある)()し、220五六間(ごろくけん)距離(きより)(たも)つた(とき)221(なに)(おも)うたか、222一生懸命(いつしやうけんめい)(くも)(かすみ)()()して(しま)つた。
223『ハツハヽヽ、224とうとう吾々(われわれ)霊光(れいくわう)()たれ、225(くも)(かすみ)()()せよつたな、226ヤツパリ吾々(われわれ)はどことはなしに御神力(ごしんりき)(そな)はつたとみえるワイ、227あゝ愉快(ゆくわい)々々(ゆくわい)
228玉依別(たまよりわけ)さま、229先方(むかふ)(はう)から(なん)だか、230人声(ひとごゑ)がするぢやないか』
231 玉依別(たまよりわけ)(みみ)をすませ、
232『いかにも、233あれはアーク、234タールの(こゑ)ですよ、235こんな(ところ)彼奴(あいつ)(また)(まよ)つて()よつたのですかなア』
236 二人(ふたり)(こゑ)益々(ますます)(たか)(きこ)えて()た。237(にはか)にパツと際立(きはだ)つて(あか)くなつたと(おも)へば、238治国別(はるくにわけ)239竜公(たつこう)()浮木(うきき)(もり)陣営(ぢんえい)のランチ将軍(しやうぐん)居間(ゐま)(よこ)たはつてゐた。240さうして枕許(まくらもと)にはアーク、241タールの両人(りやうにん)心配(しんぱい)さうな(かほ)をして(すわ)つてゐた。
242治国(はるくに)『あゝ、243アークさま、244タールさま、245此処(ここ)はどこだなア』
246アーク『治国別(はるくにわけ)(さま)247(しつか)りなさいませ。248貴方(あなた)片彦(かたひこ)将軍(しやうぐん)()(たく)みの(わな)(おちい)り、249(くら)井戸(ゐど)(そこ)で、250一旦(いつたん)()くなつてゐられたのですよ。251吾々(われわれ)両人(りやうにん)がランチ将軍(しやうぐん)252片彦(かたひこ)将軍(しやうぐん)()()つたのを(さいは)ひ、253(やうや)縄梯子(なはばしご)()りおろし、254此処(ここ)までお二人(ふたり)肉体(にくたい)()(はこ)び、255いろいろと介抱(かいほう)(いた)しましたら、256(やうや)くお()がついたのです』
257竜公(たつこう)『ヤア有難(ありがた)い、258何時(いつ)()睾丸握(きんたまにぎり)喧嘩(けんくわ)から、259こんな(ところ)(かへ)つたのだらうな、260アイタ、261ヤツパリ睾丸(きんたま)(いた)いワイ』
262(かほ)をしかめてゐる。
263 さて四人(よにん)(たがひ)無事(ぶじ)(しゆく)し、264大神(おほかみ)(まへ)端坐(たんざ)して、265(かた)(ごと)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)し、266(をは)つて治国別(はるくにわけ)は、267蠑螈別(いもりわけ)()(うへ)()(かか)り、268四人(よにん)一度(いちど)陣内(ぢんない)(くま)なく(さぐ)り、269(やうや)酒房(さかぐら)(まへ)()つた。270(ゆき)一尺(いつしやく)以上(いじやう)()()もり、271二人(ふたり)()てゐる(ところ)際立(きはだ)つて(たか)くなつてゐる。272アーク、273タールの両人(りやうにん)(わざ)とに治国別(はるくにわけ)()らさなかつた。274治国別(はるくにわけ)はこの()(あら)はれ、275人間(にんげん)(かたち)(ゆき)(たか)くなつてゐるのを()て、
276『アークさま、277あの(ゆき)はチツと(へん)ぢやありませぬか、278丁度(ちやうど)人間(にんげん)()てゐるやうに(たか)(つも)つてゐるでせう』
279彼奴(あいつ)あ、280ユキ(だふ)れかも()れませぬよ』
281竜公(たつこう)『こんな(ところ)()(だふ)れがあつてたまるかい。282()(だふ)れといふ(やつ)ア、283道端(みちばた)乞食(こじき)野倒死(のたれじに)したのを()ふのだ』
284アーク『それでも、285あこに蠑螈別(いもりわけ)(たふ)れて(その)(うへ)(ゆき)()もつたら、286ヤツパリユキ(だふ)れだ……ウソと(おも)ふなら、287(まへ)()つて調(しら)べて()い。288彼奴(あいつ)アな、289()ひしん(ばう)だから、290酒盗(さけぬす)みに()きよつて、291酒房(さかぐら)(そと)()ひつぶれてるのかも()れないよ』
292竜公(たつこう)(いま)幽界(いうかい)蠑螈別(いもりわけ)293エキスの両人(りやうにん)面会(めんくわい)し、294睾丸(きんたま)(つか)()ひをして()(ところ)だ。295大方(おほかた)それから(かんが)へると、296最早(もはや)肉体(にくたい)(つめ)たくなつて、297現界(げんかい)(ひと)ではないかも()れないよ』
298タール『ナニ、299俺達(おれたち)(いま)一緒(いつしよ)(たふ)れた(ところ)だ、300彼奴(あいつ)(さけ)(りやう)(おほ)いのでよく()てるのだ。301(にはか)にブチヤケるやうな(ゆき)()つて、302瞬間(またたくま)一尺(いつしやく)(つも)つたのだ。303本当(ほんたう)不思議(ふしぎ)(ゆき)だつたよ。304(なに)はともあれ、305竜公(たつこう)さま、306(まへ)冥土(めいど)知己(ちき)だから、307(ひと)()をつけてやり(たま)へ。308亡者(まうじや)卒業生(そつげふせい)だからなア、309亡者(まうじや)亡者(まうじや)(たい)するのは、310身魂相応(みたまさうおう)()によるものだからなア、311アツハツハヽヽ』
312 竜公(たつこう)(あし)(ゆき)()()けて()ると、313蠑螈別(いもりわけ)はムクムクと起上(おきあが)り、314(ゆき)(なか)胡坐(あぐら)をかき()をつぶつてゐる。315エキスも(また)竜公(たつこう)(あし)(ゆき)取除(とりのぞ)かれ、316(あたま)()られた途端(とたん)()がつき、317()(ふさ)いだまま、318(ゆき)(なか)(すわ)つて、319(くち)をムシヤ ムシヤ(うご)かしてゐる。320蠑螈別(いもりわけ)夢中(むちう)になつて奴拍子(どびやうし)()けた(こゑ)で、
321片彦(かたひこ)将軍(しやうぐん)322(たみ)(かへ)せ、323コラ色白(いろじろ)小童(こわつぱ)324(おれ)(をんな)()うしよつた。325(はや)(この)()()さぬか、326……ヤお(とら)()よつたな、327(いた)いわい(いた)いわい……睾丸(きんたま)引張(ひつぱ)りよつて、328イヽ(いた)い、329(いき)()れる、330エキス、331コラ、332竜公(たつこう)睾丸(きんたま)引張(ひつぱ)つてくれ!』
333などと千切(ちぎ)千切(ちぎ)れに(しやべ)()ててゐる。334エキスはエキスで(また)拍子抜(へうしぬ)けのした(こゑ)で、
335『アヽヽア、336(いた)(いた)(いた)い、337睾丸(きんたま)がツヽ(つぶ)れる(つぶ)れる』
338(わめ)いてゐる。339アークは(くび)(かたむ)けながら、
340(なん)とマア不思議(ふしぎ)(こと)があるものだな。341竜公(たつこう)さまが()がつくが(はや)いか、342睾丸(きんたま)(いた)いといふかと(おも)へば、343蠑螈別(いもりわけ)(また)睾丸(きんたま)々々(きんたま)といひ()す、344エキスの(やつ)までお附合(つきあひ)睾丸(きんたま)々々(きんたま)とほざいてゐよる。345此奴(こいつ)面白(おもしろ)い。346エヘヽヽヽ、347コラ睾丸(きんたま)大将(たいしやう)348(はや)()きぬかい、349(しつか)りせい』
350蠑螈別(いもりわけ)(はな)(ちから)(まか)して()ぢた。
351『イヽヽヽ(いた)(いた)い、352(また)してもお(とら)(やつ)353(おれ)(はな)(つま)みやがつて……(ゆる)(ゆる)せ』
354『ハツハヽヽ、355オイ、356蠑螈別(いもりわけ)357(おれ)(おれ)だ、358()をあけぬかい。359どこだと(おも)つてゐるのだ』
360何処(どこ)でもないワイ、361辻堂(つじだう)(まへ)だ。362(はや)(おれ)浮木(うきき)陣営(ぢんえい)()れて()つてくれ』
363『ここが浮木(うきき)(もり)陣営(ぢんえい)だ、364(あま)(さけ)(くら)ふものだから、365()(まか)しよつたのだろ』
366(ほほ)平手(ひらて)でピシヤピシヤと(なぐ)る。367蠑螈別(いもりわけ)はハツと()()四辺(あたり)()れば、368エキスが(そば)真白気(まつしろけ)になつて(すわ)つてゐる。369そして治国別(はるくにわけ)370竜公(たつこう)其処(そこ)()つてゐるのを()て、371不思議(ふしぎ)さうに()()み、
372『ハテ ハテ』
373()ひながら、374(あな)のあく(ほど)二人(ふたり)(かほ)(のぞ)()んだ。
375治国(はるくに)蠑螈別(いもりわけ)さま、376エキスさま、377此処(ここ)浮木(うきき)(もり)陣営(ぢんえい)ですよ。378(わたし)(しばら)(たましひ)肉体(にくたい)(はな)れ、379八衢(やちまた)旅行(りよかう)をやつて()ました。380(まへ)さまも八衢(やちまた)()ひましたね。381(しか)しモウ現界(げんかい)(かへ)つたのですから、382安心(あんしん)なさいませ。383それよりもランチ将軍(しやうぐん)384片彦(かたひこ)将軍(しやうぐん)(はじ)めお(たみ)さまの()(うへ)が、385どうも()にかかります。386物見櫓(ものみやぐら)(はう)(なに)変事(へんじ)突発(とつぱつ)してゐるかも()れませぬ。387サア(まゐ)りませう』
388 蠑螈別(いもりわけ)はお(たみ)危急(ききふ)()いて、389(よひ)()め、390本気(ほんき)立帰(たちかへ)り、391陣営(ぢんえい)(こま)()()り、392治国別(はるくにわけ)393竜公(たつこう)(ほか)四人(よにん)馬首(ばしゆ)(そろ)へてカツカツカツと(ひづめ)(おと)(いさ)ましく、394物見櫓(ものみやぐら)()して(ゆき)馬足(ばそく)(いん)しながら(はし)()く。
395大正一二・一・一四 旧一一・一一・二八 松村真澄録)