霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第三章 懸引(かけひき)〔一三八九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第54巻 真善美愛 巳の巻 篇:第1篇 神授の継嗣 よみ:しんじゅのけいし
章:第3章 第54巻 よみ:かけひき 通し章番号:1389
口述日:1923(大正12)年02月21日(旧01月6日) 口述場所:竜宮館 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年3月26日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
治国別は神示により、未明に松彦たちが王子・王女を連れて帰ってくることを悟り、門口を開けて湯を沸かし、座布団を並べるなどして準備して待っていた。
長年の山暮らしで髯も伸びきった王子たちに、治国別は湯を勧めた。王子たちは、三五教の宣伝使たちがビク国を救ってくれたことにお礼を述べた。王子たちは代わる代わる垢を落とし身なりを整えた。すると戻ってきたときの山男の風体とは打って変わり、みな貴公子然たる男ばかりであった。
身なりを整えたダイヤ姫は、治国別の前に手をついて再生の恩を感謝した。万公は、ダイヤ姫の美しさに心を奪われ、一同の前で姫の美貌をほめそやし、惚れてしまったと公言するありさまであった。
松彦と竜彦にたしなめられ、万公は客人の炊事の支度をすることになった。松彦と竜彦は、王子たちを無事に連れ帰ったことを王城に報告に行く役目があるので、万公一人で王子たちの世話をすることになった。
万公は、一人では手に余るのでぜひダイヤ姫に手伝いをしてほしいと頼み込んだ。治国別はまた万公に注意を与えたが、結局万公が炊事をしてダイヤ姫がその他の雑事を手伝うことになった。
松彦と竜彦は城に到着した。知らせを待っていたタルマンは、早速首尾を尋ねた。いたずら好きの竜公は、話をじらして脚色して、タルマンをやきもきさせた。
左守と右守はこの場にやってきて、タルマンの顔が土色になっているが、松彦と竜彦がニコニコと笑っているので、奉迎がうまくいったことを悟った。
一同が話していると、治別と万公に付き添われて長兄のアール王子が駕籠に乗ってやってきた。左守と右守はアールの姿を見ると、うれし涙がこみあげて一言も発せず、左右の手を取って刹帝利の居間へ案内して行った。
竜公にからかわれてやきもきしていたタルマンもようやく胸をなでおろし、アールの後を追って刹帝利の居間へ急いだ。治国別は後に残した五人が気にかかり、万公を連れてすぐに館に戻って行った。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm5403
愛善世界社版:33頁 八幡書店版:第9輯 631頁 修補版: 校定版:32頁 普及版:14頁 初版: ページ備考:
001 (あかつき)(そら)(あかね)さし、002百鳥(ももどり)(こゑ)千代千代(ちよちよ)とビクの国家(こくか)繁栄(はんゑい)(しゆく)し、003(また)ビクトリア(わう)親子(おやこ)対面(たいめん)慶事(けいじ)寿(ことほ)(ごと)く、004今朝(けさ)(なん)となく(いさ)ましく(とり)(こゑ)さへ(きこ)えて()る。
005 治国別(はるくにわけ)神示(しんじ)()つて、006今朝(こんてう)未明(みめい)松彦(まつひこ)一行(いつかう)(かへ)つて()(こと)(さと)り、007門口(かどぐち)()()(はな)ち、008()などを()かし、009座蒲団(ざぶとん)(なら)べて()つてゐた。010そこへ八男一女(はちなんいちによ)はイソイソとして(かへ)つて()た。011五人(ごにん)男兄弟(をとこきやうだい)(くま)のやうに(かほ)一面(いちめん)(ひげ)ムシヤムシヤと()やしてゐる。012一見(いつけん)した(ところ)では、013どうしても人間(にんげん)らしく()えなかつた。014(しか)して(なが)らく山住居(やまずまゐ)をしてゐたので、015体中(からだぢう)(こけ)()えたと(うたが)はるる(ばか)りに(あか)がたまつてゐる。
016松彦(まつひこ)先生様(せんせいさま)017(かげ)()りまして、018(やうや)六人(ろくにん)御兄妹(ごきやうだい)をお(むか)へして(かへ)りました』
019治国(はるくに)『ああ三人(さんにん)(とも)御苦労(ごくらう)であつた。020サアサア六人様(ろくにんさま)021こちらへお(あが)(くだ)さい。022そして()(わか)しておきましたから、023(にい)さまから順々(じゆんじゆん)湯浴(ゆあ)みをして(くだ)さい』
024アール『イヤ、025(なん)(とも)御礼(おれい)申上(まをしあげ)やうが(ござ)いませぬ。026(ちち)大変(たいへん)御厄介(ごやくかい)(あづ)かつたさうで(ござ)います。027(その)(うへ)(また)吾々(われわれ)兄妹(きやうだい)をお(すく)(くだ)さるとは、028貴方(あなた)(がた)神様(かみさま)のやうに(ぞん)じます』
029(あら)くれ(をとこ)()ず、030(うれ)(なみだ)をハラハラと(なが)してゐる。
031治国(はるくに)御礼(おれい)()はれては(おそ)()ります。032何事(なにごと)神様(かみさま)(ため)御用(ごよう)をさして(いただ)いたので(ござ)いますから、033御心配(ごしんぱい)なく御湯(おゆ)をお()(くだ)さいませ。034オイ万公(まんこう)035御湯場(おゆば)御案内(ごあんない)(いた)せ。036そして(あか)をおとして()げるのだよ』
037万公(まんこう)『ハイ承知(しようち)(いた)しました。038サ、039アールさま、040貴方(あなた)からお(はい)りなさい。041背中(せなか)(なが)しませう』
042()(なが)湯殿(ゆどの)案内(あんない)した。043松彦(まつひこ)044竜彦(たつひこ)(かは)(がは)六人(ろくにん)兄妹(きやうだい)湯浴(ゆあ)みさせ、045親切(しんせつ)(あら)うてやり、046それからスツカリと(ひげ)()りおとし、047ホーフスから(あづか)つた六人分(ろくにんぶん)衣類(いるゐ)着替(きか)へさせた。048(いづ)れも()うなつてみると、049気品(きひん)(たか)貴公子然(きこうしぜん)たる(をとこ)(ばか)りである。050ダイヤ(ひめ)(をんな)(こと)とて、051(をとこ)()(なが)(わけ)にもゆかず、052(ただ)一人(ひとり)湯浴(ゆあみ)をなし、053念入(ねんい)りに身体(からだ)(あか)をおとし、054ラブロックを整理(せいり)し、055(うる)はしき小袖(こそで)()(まと)ひ、056ニコニコし(なが)治国別(はるくにわけ)(まへ)両手(りやうて)をついて、057再生(さいせい)(おん)感謝(かんしや)した。
058 万公(まんこう)はダイヤ(ひめ)姿(すがた)()て、059(きも)(つぶ)し、
060万公(まんこう)『ヤア、061これはこれはと(ばか)(はな)吉野山(よしのやま)062(をんな)化物(ばけもの)だと()いてゐたが、063コラまアどうした(こと)だ。064小北山(こぎたやま)のお(きく)から(くら)べてみると雲泥(うんでい)相違(さうゐ)だ。065(なん)とマア立派(りつぱ)なシヤンだなア、066エヘヘヘ』
067松彦(まつひこ)『オイ万公(まんこう)068ヤツパリお(きく)(こひ)しいか、069(こま)つた(をとこ)だなア。070それではモンクになつても駄目(だめ)だぞ』
071万公(まんこう)『イヤ、072もう文句(もんく)(なに)もありませぬ。073素的滅法界(すてきめつぱふかい)(ほれ)ました、074ああ(ほれ)(ほれ)た。075われ(なが)らよう(ほれ)たものだ』
076松彦(まつひこ)『アハハハハ、077彫刻師(てうこくし)井戸掘(ゐどほり)検査(けんさ)のやうに()つてゐやがるな。078(こま)つた(をとこ)だなア。079それぢや何時(いつ)(まで)万公(まんこう)()かねばなるまい』
080万公(まんこう)万公(まんこう)同情(どうじやう)()せて、081(この)(ひめ)(さま)をお(むか)へして()たのだから、082(いづ)(この)……(なん)でせう、083(にい)さまがあるのだから、084刹帝利家(せつていりけ)()がれる(はず)はなし、085どこかへ○○をなさるお身分(みぶん)だから、086ねえ松彦(まつひこ)さま、087モウお(きく)(おも)()りますワ、088エヘヘヘヘ』
089松彦(まつひこ)『アハハハハ、090身分不相応(みぶんふさうおう)()(こと)()つてゐるか、091本当(ほんたう)(こま)つた(やつ)だなア』
092万公(まんこう)門閥(もんばつ)や、093財産(ざいさん)や、094地位(ちゐ)や、095名望(めいばう)や、096そんな(もの)(なん)になりますか。097そんな(もの)(もつ)神聖(しんせい)なる恋愛(れんあい)制肘(せいちう)せられちや(たま)りませぬワ、098キツと(わたし)のものですよ。099貴方(あなた)だつて、100万公(まんこう)にやるのは()しいでせうが、101そこは部下(ぶか)(あい)するといふ神心(かみごころ)(もつ)て、102(わたし)媒介(ばいかい)して(くだ)さるでせうなア。103(いな)キツと子弟(してい)(あい)する慈悲(じひ)(ぶか)いお(こころ)から、104周旋(しうせん)をして(くだ)さるだらうと(かた)(しん)じて()ります。105刹帝利様(せつていりさま)だつて、106一旦(いつたん)ない(もの)()めて(ござ)つたから、107つまり()へば(ひろ)(もの)ですワ。108さうだから、109キツと吾々(われわれ)がお(むか)へにいつた御褒美(ごほうび)として、110貴方方(あなたがた)周旋(しうせん)如何(いかん)()つて、111万公(まんこう)(あた)へると仰有(おつしや)るでせう。112キツと抜目(ぬけめ)なく、113先生(せんせい)114(たの)みますで……』
115ダイヤ『ホホホホ、116あのマア万公(まんこう)さまとやら、117御親切(ごしんせつ)()()つて(くだ)さいます。118(しか)(わたし)には(すで)(すで)(をつと)(ござ)います。119(とし)十一才(じふいつさい)でも(をんな)として一人前(いちにんまへ)心得(こころえ)()つて()りますからねえ』
120万公(まんこう)『これはしたり、121貴方(あなた)(をつと)といふのは何方(どなた)ですか。122まさか兄妹(きやうだい)同士(どうし)123そんな馬鹿(ばか)(こと)はなさいますまいし……』
124ダイヤ『ハイ、125先生様(せんせいさま)にお(ねが)(まを)し、126(ちち)掛合(かけあ)つて(いただ)いて、127左守司(さもりのかみ)息子(むすこ)ハルナさまと、128二三年(にさんねん)したら結婚(けつこん)するやうに(ねが)つて(いただ)きたいもので(ござ)います。129(わたし)はハルナさまが一番(いちばん)()きなので(ござ)いますからねえ』
130 万公(まんこう)(くび)(しき)りにふり、
131万公(まんこう)折角(せつかく)(なが)ら、132ハルナさまは駄目(だめ)ですよ。133(すで)(すで)にカルナ(ひめ)といふ立派(りつぱ)(おく)さまが出来(でき)ました。134そして貴女(あなた)とは(とし)(ちが)ふのですからそんな(こと)(おも)()つたが(よろ)しからう』
135ダイヤ『あれマア、136ハルナさまとした(こと)が、137一年(いちねん)()にチヤンと(おく)さまを()たれたのですか。138(わたし)139どうしませう』
140万公(まんこう)『ハハハ、141さうだから、142それ(だけ)(とし)(ちが)(をとこ)にラブしても駄目(だめ)だと()ふのですよ』
143ダイヤ『ハルナさまと(わたし)(とし)(ちが)うといつても、144(わづ)十年(じふねん)(ばか)りですよ。145貴方(あなた)三十年(さんじふねん)(ちが)ふぢやありませぬか。146そんな(かた)夫婦(ふうふ)になつたら、147世間(せけん)(ひと)がお半長右衛門(はんちやううゑもん)だと()つて(わら)ひますがな。148ホホホホ、149あのマアいけ()かないお(かほ)
150とプリンと背中(せなか)()ける。
151万公(まんこう)『ヤア此奴(こいつ)失敗(しくじ)つた。152どうしたら(とし)(わか)くなるだらうかなア。153なぜ二十年(にじふねん)(あと)から(うま)れて()なかつただらう』
154松彦(まつひこ)『アハハハハ』
155竜彦(たつひこ)『オイ万公(まんこう)156馬鹿(ばか)(こと)()はずに、157(はや)くお(きやく)さまの御飯(ごはん)用意(ようい)をするのだ。158貴様(きさま)(これ)からボーイを(めい)ずる。159(はや)台所(だいどころ)()つて(たすき)がけになつて活動(くわつどう)せぬかい』
160万公(まんこう)『ヘー、161承知(しようち)しました。162(しか)し、163これ(だけ)沢山(たくさん)のお(きやく)さまだから、164万公(まんこう)一人(ひとり)では()(まは)りませぬ。165炊事(すゐじ)(をんな)がなくてはなりませぬから、166(ひと)つダイヤさまに手伝(てつだ)つて(もら)ひませうかい。167それが(いや)なら、168竜彦(たつひこ)さまも水汲(みづく)みなつとして(もら)ひませう』
169治国(はるくに)『イヤ、170松彦(まつひこ)171竜彦(たつひこ)大変(たいへん)御用(ごよう)がある。172(これ)から種々(いろいろ)準備(じゆんび)(ととの)へホーフスへ(まゐ)り、173刹帝利様(せつていりさま)にいろいろと御相談(ごさうだん)()かねばならぬ。174御苦労(ごくらう)(なが)万公(まんこう)175(まへ)今日(けふ)(だけ)一人(ひとり)でやつてくれ。176ダイヤ(さま)(をんな)(こと)でもあり、177(しばら)手伝(てつだ)つて(いただ)けば此方(こちら)都合(つがふ)()し、178(まへ)(よろこ)ぶだらうが、179どうも万公(まんこう)では険難(けんのん)で、180さうする(わけ)にも()かず(こま)つた(もの)だ』
181万公(まんこう)先生(せんせい)182そんな御心配(ごしんぱい)はいりませぬ、183(わたし)(をとこ)です。184滅多(めつた)不調法(ぶてうはふ)はしませぬから、185何卒(どうぞ)186仮令(たとへ)半時(はんとき)でも一緒(いつしよ)仕事(しごと)をさして(くだ)さい。187きつい山坂(やまさか)(いばら)()けて往来(わうらい)し、188ヤツと此処(ここ)(まで)(かへ)つたと(おも)へば、189三助(さんすけ)をやらされる、190(また)炊事(すゐじ)まで(めい)ぜられる……といふのだから、191チツと御推量(ごすゐりやう)(くだ)さつてもよささうなものですな』
192ダイヤ『(わたし)山中(さんちう)(おい)不便(ふべん)生活(せいくわつ)をし(なが)ら、193六人分(ろくにんぶん)炊事(すゐじ)をやつて()ました経験(けいけん)(ござ)います。194(わたし)一人(ひとり)が、195そんなら炊事場(すゐじば)(あづか)りませう。196万公(まんこう)さまはお(やす)(くだ)さいませ』
197万公(まんこう)滅相(めつさう)もない、198(とし)のいかぬ(わか)(ひめ)(さま)に、199コーカー・マスターをさせては、200(をとこ)()ちませぬ。201(また)刹帝利様(せつていりさま)(きこ)えてもすみませぬから、202夫婦(ふうふ)……オツトドツコイ男女(だんぢよ)共稼(ともかせぎ)で、203コーカー・マスターを(つと)めませう。204ねえ先生(せんせい)205それで差支(さしつかへ)ありますまい』
206治国(はるくに)『ダイヤ(さま)さへ御承知(ごしようち)なればよからう。207(しか)しお(まへ)飯炊役(めしたきやく)208ダイヤ(さま)はバトラーになつて(もら)はう』
209万公(まんこう)『エエ仕方(しかた)がない。210君命(くんめい)(したが)(こと)(いた)しませう』
211万公(まんこう)はいろいろの食料品(しよくれうひん)(あつ)め、212炊事(すゐじ)(たすき)がけで取掛(とりかか)つた。213ダイヤは()()き、214(ちや)(わか)し、215チヤンと準備(じゆんび)(ととの)うて、216膳部(ぜんぶ)(はこ)び、217一々(いちいち)毒味(どくみ)(をは)座敷(ざしき)(なら)べた。218(これ)より一同(いちどう)朝飯(あさはん)(きつ)し、219ゆるゆると山中生活(さんちうせいくわつ)(はなし)や、220(また)宣伝使(せんでんし)苦労話(くらうばなし)や、221愉快(ゆくわい)(はなし)交換(かうくわん)し、222ビクトリア城内(じやうない)戦争談(せんそうだん)などを(はじ)めて、223一時(いつとき)(ばか)面白可笑(おもしろをか)しく(とき)をうつした。
224 治国別(はるくにわけ)内命(ないめい)()つて、225松彦(まつひこ)226竜彦(たつひこ)両人(りやうにん)は、227衣紋(えもん)(つく)ろひ、228ホーフスに参入(さんにふ)した。229内事司(ないじつかさ)のタルマンは二人(ふたり)叮嚀(ていねい)(むか)へ、230(おく)()(とほ)し、231茶菓(さくわ)饗応(きやうおう)(なが)ら、232六人(ろくにん)子女(しぢよ)消息(せうそく)()(かね)(やう)(たづ)()した。
233タルマン『大変(たいへん)にお()(まを)して()りましたが、234子様(こさま)消息(せうそく)如何(いかが)(ござ)いましたか』
235 竜彦(たつひこ)早速(さつそく)六人(ろくにん)無事(ぶじ)()(かへ)つたと()つては、236(あま)興味(きようみ)がない、237ここは(ひと)内事司(ないじつかさ)をぢらしてやらうと、238徒好(いたづらずき)竜彦(たつひこ)はワザと心配相(しんぱいさう)(かほ)をして、239ナフキンで(くちびる)(つばき)をふき(なが)ら、240咳払(せきばらひ)(なな)つも(やつ)つもつづけ、241()ひにくさうにモヂモヂして揉手(もみで)をし(なが)ら、
242竜彦(たつひこ)『エー、243折角(せつかく)244(まゐ)りましたが、245中々(なかなか)(もつ)て、246容易(ようい)(こと)ではありませぬ。247()れは()れは、248意外(いぐわい)にも深山幽谷(しんざんいうこく)荊蕀(いばら)(しげ)り、249(とり)(かよ)はないやうな難所(なんしよ)(ござ)いましたよ』
250タルマン『ヘー、251成程(なるほど)252大変(たいへん)(こま)りで(ござ)いましただらうな。253そして御子女(ごしぢよ)無事(ぶじ)御帰(おかへ)りになりましたか』
254竜彦(たつひこ)『サ、255そこが、256ウン、257(なん)です。258(まこと)(はや)259(ほね)()りましたよ。
 
260 月花(つきはな)(とも)次第(しだい)(ゆき)()
261 光明(くわうみやう)三日(みつか)(つき)のあとへさし
262 藪医者(やぶいしや)(けん)より(へん)()せるなり』
 
263タルマン『エ、264(なん)(おほ)せられます。265御子女(ごしぢよ)はゐられなかつたので(ござ)いますか』
266竜彦(たつひこ)『ヘー、267()られるはゐられました。268それがサ、269中々(なかなか)容易(ようい)に、270ウンと仰有(おつしや)らぬので、271猪突槍(ししつきやり)(もつ)吾々(われわれ)三人(さんにん)十重(とへ)二十重(はたへ)取囲(とりかこ)み、272(あり)()()隙間(すきま)のなき(まで)に、273()(きた)(その)猛烈(まうれつ)さ。274(わづか)血路(けつろ)(ひら)いて(くも)(かすみ)()(かへ)(さふらふ)……といふやうな為体(ていたらく)(ござ)いましたよ。275あああ、276是非(ぜひ)(ござ)いませぬ』
277タルマン『(むか)ふは六人(ろくにん)さま、278十重(とへ)二十重(はたへ)だとか、279(あり)()()隙間(すきま)もない……とか、280そんな御冗談(ごじやうだん)仰有(おつしや)らずに、281(はや)吉報(きつぱう)御聞(おき)かし(いただ)きたいもので(ござ)います』
282 松彦(まつひこ)はニコニコし(なが)ら、283(だま)つて二人(ふたり)問答(もんだふ)()いてゐる。284そして時々(ときどき)「プープー」と()()してゐた。285タルマンは()(いら)ち、286(ひざ)をすりよせ(なが)ら、
287タルマン『エ、288()らさずに(はや)()つて(くだ)さい。289キツと勝利(しようり)()られたのでせう』
290竜彦(たつひこ)吾々(われわれ)三人(さんにん)がヤツと格闘(かくとう)結果(けつくわ)291到底(たうてい)生捕(いけどり)にして(かへ)(わけ)にも()かず、292(くび)をチヨン()つて、293(やうや)凱旋(がいせん)(いた)しました。294やがて首実検(くびじつけん)(そな)へませう。295()(くま)(ごと)くに(かほ)一面(いちめん)()えて()りますから、296御見違(おみちが)ひのない(やう)にお(あらた)めを(ねが)ひます。297(いま)治国別(はるくにわけ)さまの(やかた)仮令(たとへ)(くび)(だけ)でも(おろそか)には出来(でき)ませぬから、298輿(こし)(つく)つて(かつ)いで(まゐ)りますからよくお(あらた)(くだ)さいませ』
299タルマン『左様(さやう)(こと)(たれ)御願(おねがひ)(まを)しましたか、300(もつ)ての(ほか)乱暴(らんばう)301(くび)(ばか)()つて(かへ)つて(なん)になりますか。302貴方(あなた)人殺(ひとごろし)大罪人(だいざいにん)303これから、304何程(なにほど)神徳(しんとく)(たか)きモンクだと()つても、305(ゆる)(わけ)には(まゐ)りませぬ、306覚悟(かくご)をなされ』
307顔色(かほいろ)()へて(おこ)()した。308竜彦(たつひこ)平然(へいぜん)として、
309竜彦(たつひこ)『アハハハ、310(おほ)きな(からだ)引抱(ひつかか)へて(かへ)(わけ)にも()かず、311(くび)(だけ)()つて(かへ)れば大変(たいへん)軽便(けいべん)だと(おも)ひ、312刹帝利様(せつていりさま)意志(いし)(したが)つて、313ビクの国家(こくか)(みだ)さむとする、314悪逆無道(あくぎやくぶだう)御子女(ごしぢよ)(ほろ)ぼし(かへ)つたのが、315(なに)がお不足(ふそく)(ござ)るか。316六人(ろくにん)子供(こども)(かほ)さへ()せてくれさへすれやよいと仰有(おつしや)つたでせう。317(べつ)胴体(どうたい)()せいとも、318手足(てあし)()せいとも仰有(おつしや)らなかつたでせう。319さやうな不足(ふそく)は、320吾々(われわれ)()(みみ)()ちませぬ、321アハハハハ』
322 タルマンは(あま)りの(こと)(あき)()て、323真青(まつさを)(かほ)をして(くちびる)(ふる)はせ(なが)ら、324(うら)めしげに竜彦(たつひこ)(かほ)(にら)んでゐる。325ここへ、326レーブ・アン・ルームにあつて、327治国別(はるくにわけ)返辞(へんじ)()つてゐた、328左守(さもり)右守(うもり)はどうやら竜彦(たつひこ)(こゑ)がする(やう)だと、329ドアを(はい)し、330廊下(らうか)(つた)うて(この)()(あら)はれ、331()ればタルマンは顔色(かほいろ)(つち)(ごと)くなつて(ふる)うてゐる。332二人(ふたり)はニコニコとして(わら)うてゐた。333左守(さもり)のキユービツトは(この)(てい)をみて、334……ハハア、335タルマンの(やつ)336予言者(よげんしや)だ、337宣伝使(せんでんし)だと威張(ゐば)つてゐるから、338懲戒(みせしめ)(ため)(あぶら)()られてゐるのだ、339此奴(こいつ)面白(おもしろ)い……と(おも)(なが)ら、340三人(さんにん)(まへ)(あら)はれ(きた)り、
341左守(さもり)(いま)喫煙室(きつえんしつ)(おい)様子(やうす)()けば、342どうやら、343不成功(ふせいこう)(をは)つた様子(やうす)(ござ)いますが、344イヤもう(なん)でも結構(けつこう)(ござ)います。345アールさまさへ()れて(かへ)つて(くだ)さらば、346ビクの城中(じやうちう)磐石(ばんじやく)(ごと)くで(ござ)います。347ヤ、348(まこと)にお(ほね)()らせました、349何卒(どうぞ)治国別(はるくにわけ)(さま)(よろ)しくお(れい)(まを)して(くだ)さい』
350松彦(まつひこ)(やうや)くの(こと)で、351いろいろと事情(じじやう)申上(まをしあ)げ、352一人(ひとり)(だけ)()(まを)すことに(いた)しました。353やがて治国別(はるくにわけ)(さま)駕籠(かご)にお()(まを)して御送(おおく)りになるでせう、354何卒(どうぞ)御受取(おうけと)(くだ)さいませ』
355左守(さもり)有難(ありがた)(ござ)います。356さぞ刹帝利様(せつていりさま)満足(まんぞく)(あそ)ばす(こと)でせう。357そして(その)一人(ひとり)(まを)すのは何方(どなた)(ござ)いますか』
358 竜彦(たつひこ)松彦(まつひこ)返答(へんたふ)せぬ(うち)に、
359竜彦(たつひこ)『アイヤ、360(あま)(かほ)一面(いちめん)()()えてゐるので、361(をとこ)とも(をんな)とも(あに)とも(おとうと)(とも)見当(けんたう)がつきませぬ。362(なん)だか()りませぬが、363エ、364一人(ひとり)(だけ)やうやうと引張(ひつぱつ)(かへ)りました。365何卒(どうぞ)366よくお調(しら)(くだ)さいませ』
367 かく(はな)(ところ)駕籠(かご)(かつ)がれて万公(まんこう)(さき)()ち、368やつて()たのは総領息子(そうりやうむすこ)のアールであつた。369松彦(まつひこ)は、
370松彦(まつひこ)『ヤ、371(いま)(かへ)りになりました。372サ、373(みな)さまお(むか)(いた)しませう』
374玄関口(げんくわんぐち)出迎(でむか)へた。375駕籠(かご)玄関口(げんくわんぐち)(よこ)づけとなつた。376(なか)からヌツと(あら)はれた、377(ひげ)をそりおとし、378立派(りつぱ)衣装(いしやう)をつけた貴公子(きこうし)総領息子(そうりやうむすこ)のアールであつた。379タルマン(はじ)左守(さもり)右守(うもり)はアツと(ばか)りに(おどろ)いて、380(しば)言葉(ことば)()なかつた。
381治国(はるくに)(みな)さま、382(この)(かた)御総領(ごそうりやう)のアールさまで(ござ)います』
383 左守(さもり)右守(うもり)(にはか)(うれ)(なみだ)がこみ()げて()て、384(ただ)一言(ひとこと)(はつ)()ず、385左右(さいう)()()つて、386刹帝利(せつていり)居間(ゐま)案内(あんない)して()く。387タルマンもヤツと(むね)()でおろし、
388タルマン『竜彦(たつひこ)さま(おぼ)えてゐなさい。389キツと御礼(おれい)(まを)しますから……』
390()(なが)ら、391アールの(うしろ)(したが)ひ、392(おく)()姿(すがた)(かく)した。393治国別(はるくにわけ)万公(まんこう)(ともな)逸早(いちはや)刹帝利(せつていり)にもあはず、394(わが)住家(すみか)(のこ)した五人(ごにん)()にかかるので(かへ)つて()く。
395大正一二・二・二一 旧一・六 於竜宮館 松村真澄録)