霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一一章 道晴別(みちはるわけ)〔一三九七〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第54巻 真善美愛 巳の巻 篇:第3篇 猪倉城寨 よみ:いのくらじょうさい
章:第11章 第54巻 よみ:みちはるわけ 通し章番号:1397
口述日:1923(大正12)年02月22日(旧01月7日) 口述場所:竜宮館 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年3月26日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる] 主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm5411
愛善世界社版:129頁 八幡書店版:第9輯 666頁 修補版: 校定版:129頁 普及版:58頁 初版: ページ備考:
001道晴別(みちはるわけ)神素盞嗚(かむすさのを)大神(おほかみ)
002神言(みこと)(かしこ)みウブスナの
003(うづ)聖地(せいち)立出(たちい)でて
004治国別(はるくにわけ)従者(とも)となり
005河鹿峠(かじかたうげ)打越(うちこ)えて
006魔神(まがみ)のたけぶ山口(やまぐち)
007(もり)一夜(いちや)()かす(をり)
008(たちま)(うし)(とき)(まゐ)
009妖怪変化(えうくわいへんげ)出現(しゆつげん)
010(あや)しみゐたる(をり)もあれ
011松彦司(まつひこつかさ)胆力(たんりよく)
012よくよく()れば(いもうと)
013(おも)(がけ)なき楓姫(かへでひめ)
014やれ(うれ)しやと兄妹(きやうだい)
015名乗(なのり)()ぐる(とき)もあれ
016(かみ)(めぐみ)(さち)はひて
017二人(ふたり)(おや)(めぐ)()
018(ほこら)(もり)立帰(たちかへ)
019玉国別(たまくにわけ)諸共(もろとも)
020(みづ)御舎(みあらか)()(をは)
021道晴別(みちはるわけ)()(たま)
022(わが)()(きみ)(あと)()
023(やうや)此処(ここ)(きた)りけり
024(なが)れも(きよ)きライオンの
025(ひろ)河瀬(かはせ)横切(よこぎ)りて
026ビクトル(さん)右手(めて)()
027(くさ)青々(あをあを)()ひしげる
028野路(のぢ)(わた)りて(いま)ここに
029シメジ(たうげ)()きにけり
030ああ惟神(かむながら)々々(かむながら)
031(わが)()(きみ)如何(いか)にして
032いづくの(はて)にましますか
033(こころ)(いそ)一人旅(ひとりたび)
034一日(ひとひ)(はや)大御神(おほみかみ)
035()はさせ(たま)惟神(かむながら)
036(かみ)御前(みまへ)()ぎまつる』
037(うた)(なが)ら、038シメジ(たうげ)(のぼ)(ぐち)(まで)やつて()たのは道晴別(みちはるわけ)である。039道晴別(みちはるわけ)はシメジ(たうげ)急坂(きふはん)(なが)めて、040(しば)(いき)(やす)めてゐた。041()りみ、042()らずみ、043五月雨(さみだれ)(そら)(ひく)うして、044時鳥(ほととぎす)(こゑ)彼方此方(あなたこなた)森林(しんりん)より(きこ)(きた)る。045(やま)()一面(いちめん)(みどり)新装(しんさう)()らし、046(なん)とはなく()(あつ)く、047上着(うはぎ)邪魔(じやま)になる(やう)気分(きぶん)になつて()た。048道晴別(みちはるわけ)急阪(きふはん)打仰(うちあふ)(なが)ら、
049道晴(みちはる)『ああ(なん)ときつい(さか)だらう。050(わが)()(きみ)(はじ)め、051松彦(まつひこ)052竜彦(たつひこ)053万公(まんこう)最早(もはや)此処(ここ)(とほ)られたであらうか、054(この)道端(みちばた)岩石(がんせき)(もの)()ふものならば()らしてくれるだらうに、055ああ仕方(しかた)がない。056()(この)岩上(がんじやう)端座(たんざ)して瞑想(めいさう)(ふけ)り、057()(きみ)(とほ)られたか(とほ)られないか(うかが)つてみよう。058(しか)(なが)らまだ自分(じぶん)(みたま)(みが)けてゐないから、059ハツキリした(こと)(わか)らぬ、060(こま)つたものだなア』
061(つぶや)いてゐる。062そこへ二三人(にさんにん)(をとこ)()はし(さう)にスタスタと(さか)(くだ)つて()る。063三人(さんにん)岩上(がんじやう)道晴別(みちはるわけ)()て、
064(かふ)一寸(ちよつと)(もの)をお(たづ)(まを)します。065貴方様(あなたさま)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)(さま)ぢや(ござ)いませぬか』
066道晴(みちはる)『ハイ、067拙者(せつしや)はお(さつ)しの(とほ)り、068道晴別(みちはるわけ)(まを)宣伝使(せんでんし)(ござ)います。069(なん)御用(ごよう)(ござ)るかな』
070(かふ)『かやうな(ところ)でお(はなし)申上(まをしあ)げても(おそ)(おほ)(ござ)いますが、071(じつ)(ところ)はビクトル(さん)(たふと)宣伝使(せんでんし)(あら)はれ、072人民(じんみん)(くるし)みをお(たす)(くだ)さるといふ(こと)(うけたま)はり、073主人(しゆじん)命令(めいれい)()つて、074(その)(かた)にお()にかかりたいと、075吾々(われわれ)(しもべ)三人(さんにん)危険(きけん)(をか)して、076此処(ここ)(まで)(まゐ)りました』
077道晴(みちはる)『ビクトル(さん)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)がゐるといふ(はなし)がありますかな、078はてなア』
079()()み、
080道晴(みちはる)『ああ失策(しま)つた、081こんな(こと)なら、082一寸(ちよつと)道寄(みちよ)りをして()たらよかつたに、083(わが)()(きみ)がまだ(あと)にゐられたかも()れない。084(あま)(おく)れたと(おも)うて(いそ)いで()たものだから、085大方(おほかた)行過(ゆきす)ぎたのだなア』
086(ひそ)かに小声(こごゑ)(ささや)いてゐる。
087(かふ)貴方(あなた)は、088さうすると、089三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)御一行(ごいつかう)ぢや(ござ)いませぬか、090(なん)でも四人(よにん)(ばか)りゐられるといふ(こと)(ござ)いますが』
091道晴(みちはる)『ああ(その)四人(よにん)(かた)は、092(わたし)師匠(ししやう)なり友人(いうじん)だ。093ビクトル(さん)(たしか)にゐられるといふ(こと)(わか)つてゐるかな』
094(かふ)『イエイエ、095もうお()ちになつたか、096まだゐられますか、097それが判然(はつきり)(わか)らないのです』
098道晴(みちはる)『そして宣伝使(せんでんし)()ひに()くとは、099如何(いか)なる御用(ごよう)があるのかな』
100(かふ)『ハイ(じつ)(ところ)は、101(わたし)玉木村(たまきむら)豪農(がうのう)(しもべ)(ござ)いますが、102二人(ふたり)のお(ぢやう)さまが猪倉山(ゐのくらやま)山寨(さんさい)()(かま)へてゐる、103鬼春別(おにはるわけ)とか()ふバラモンのゼネラルの部下(ぶか)(とら)はれ(あそ)ばし、104御主人(ごしゆじん)夫婦(ふうふ)はいろいろ雑多(ざつた)とお(ぢやう)さまの()(うへ)(あん)じ、105(よる)(ひる)水行(すいぎやう)をして、106神様(かみさま)にお(ねがひ)(あそ)ばした(ところ)107(ゆめ)のお(つげ)に、108ビクトル(さん)には三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)()てゐられるから、109(その)(かた)にお(ねがひ)(まを)せば、110キツと取返(とりかへ)して(くだ)さるだらうとのお言葉(ことば)111それを(ちから)としてお(ねがひ)(まを)さむと、112此処(ここ)(まで)(まゐ)つたので(ござ)います』
113道晴(みちはる)『フーン、114それは()(どく)(こと)だ。115宣伝使(せんでんし)として、116こんな(こと)()いて見遁(みのが)(わけ)には()くまい。117()(かく)主人(しゆじん)(うち)案内(あんない)してくれ、118神様(かみさま)御神力(ごしんりき)でキツと取返(とりかへ)して()げるから』
119(かふ)『ハイ有難(ありがた)(ござ)います。120(さだ)めて主人(しゆじん)(よろこ)ばれる(こと)でせう。121(しか)らばお(とも)(いた)します。122(これ)から三里(さんり)(ばか)り、123(この)(たうげ)(のぼ)(くだ)(あそ)ばしたならば、124つい(ちか)くの(むら)(ござ)います。125()(かく)そこ(まで)()(くだ)さいまして、126主人(しゆじん)御緩(ごゆつく)(はなし)をして(くだ)さいませ。127(この)(たうげ)はバラモン(ぐん)雑兵(ざふひやう)徘徊(はいくわい)(いた)しますれば、128随分(ずいぶん)()をつけて()つて(くだ)さいませ、129到底(たうてい)一人(ひとり)では(とほ)れない(ところ)(ござ)いますから、130かうして三人(さんにん)(まゐ)つたので(ござ)います。131ここへ()(まで)にも、132随分(ずいぶん)危険(きけん)()()うて(まゐ)りましたので(ござ)います』
133 道晴別(みちはるわけ)は、
134道晴(みちはる)『そんならお(まへ)主人(しゆじん)(たく)()かう』
135三人(さんにん)後前(あとさき)(したが)へ、136胸突阪(むなつきざか)(あへ)(あへ)(のぼ)つて()く。
137 シメジ(たうげ)山頂(さんちやう)(やや)平坦(へいたん)地点(ちてん)がある。138そこには(かぜ)()まれて、139枝振(えだぶり)のひねた面白(おもしろ)いパインが四五本(しごほん)(なら)びゐたり。140チューニック姿(すがた)二人(ふたり)(をとこ)141一人(ひとり)はベツトと()ひ、142一人(ひとり)はフエルと()ふ。143(ちひ)さい(いし)(こし)をかけて、144四方(よも)風景(ふうけい)見下(みおろ)(なが)雑談(ざつだん)(ふけ)つてゐた。
145ベツト『オイ、146随分(ずいぶん)(この)地方(ちはう)絶景(ぜつけい)ぢやないか。147どの(やま)も、148この(やま)も、149あの(とほ)(うへ)(はう)禿頭病(とくとうびやう)(あたま)のやうになつて、150(その)(あひだ)(あを)()が、151点綴(てんてつ)してゐる(さま)(まる)()()(やう)だ。152ライオン(がは)(なが)れは(かす)かに(おび)()いたやうに()えて()るが、153俺達(おれたち)随分(ずいぶん)154あこを(わた)つた(とき)にや苦労(くらう)をしたものだ』
155フエル『成程(なるほど)156中途(ちうと)(うま)屁古垂(へこた)れて、157貴様(きさま)四五丁(しごちやう)(ばか)押流(おしなが)され、158土人(どじん)(たす)けられて屁古垂(へこた)れた(とき)のザマは(いま)()()えるやうだ。159随分(ずいぶん)(はな)をたらしやがつて、160()(ねづみ)のやうになつて、161(くちびる)まで紫色(むらさきいろ)()めて()つた(とき)のザマつて、162なかつたよ。163あの(とき)(おれ)がゐなかつたら、164貴様(きさま)土人(どじん)(さら)はれて、165嬲殺(なぶりごろ)しに()うて()つたか(わか)らぬのだ。166無類(むるゐ)()()りの悪党(あくたう)だからなア』
167ベツト『ヘン、168偉相(えらさう)()ふない、169(これ)でもバラモン(ぐん)の、170グレジナアーだ。171第一(だいいち)玉木村(たまきむら)豪農(がうのう)(むすめ)スミエル、172スガールの両人(りやうにん)(うま)くチヨロまかし、173猪倉山(ゐのくらやま)本陣(ほんぢん)()れて(かへ)つたのも、174ヤツパリ(この)ベツトだから、175(えら)(もの)だらう。176(あく)もここ(まで)徹底(てつてい)せないと貴様(きさま)のやうな(こと)では到底(たうてい)軍人(ぐんじん)にはなれやしないぞ。177ゴテゴテ(まを)さずに(おれ)命令(めいれい)服従(ふくじゆう)するのだ。178(また)(おれ)(うま)くゼネラルに取持(とりも)つて伍長(ごちやう)(ぐらゐ)にはして(もら)うてやるワイ』
179フエル『ヘン、180馬鹿(ばか)にすない、181(おれ)はかうみえても准士官(じゆんしくわん)だ、182少尉候補生(せうゐこうほせい)だ。183(きさま)はまだ軍曹(ぐんさう)ぢやないか、184(おれ)()()けて()るのを()らぬのかい』
185ベツト『ヘン、186(うま)(こと)()ふない。187(きさま)肩章(けんしやう)()れば()(わか)つてるぢやないか』
188フエル『サア、189そこが秘密(ひみつ)(やく)(おほ)せつかつてゐる(だけ)で、190エッボオーレッポの(しるし)()いてあるのだ。191モウ一月(ひとつき)もすれば、192立派(りつぱ)なユウンケルだ。193さうすれば、194(きさま)195(おれ)(あご)使(つか)つてやるのだから、196(いま)(うち)機嫌(きげん)()つておかぬと出世(しゆつせ)(さまた)げになるぞ。197(うそ)(おも)ふなら(これ)をみい』
198(えり)(ひつ)くり(かへ)して()せた。199ベツトはよくよく(のぞ)いて()ると、200ユウンケル候補生(こうほせい)(しるし)がついてゐる。201(たちま)大地(だいち)平太張(へたば)り、
202ベツト『これはこれは上官(じやうくわん)とは()らず、203(まこと)失礼(しつれい)(いた)しました』
204フエル『アハハハハ、205往生(わうじやう)したか、206バラモン(ぐん)のマーシヤル閣下(かくか)より内命(ないめい)()けて()るのだぞ。207(しか)(きさま)部下(ぶか)(とも)()(かへ)つた二人(ふたり)(をんな)は、208何時(なんどき)取返(とりかへ)しに()るか()れぬから、209ここに(ばん)をしてゐるのだ。210豪農(がうのう)テームスの(しもべ)(やつ)が、211ビクトル(さん)()三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)報告(はうこく)()きよつたら、212()れこそ大変(たいへん)だから、213(この)一筋道(ひとすぢみち)(やく)して、214一人(ひとり)(のこ)らず此処(ここ)(とほ)(やつ)取調(とりしら)べ、215(あや)しとみたならば、216(くび)()ねるのだ。217(この)頂上(ちやうじやう)(ただ)一人(ひとり)()れば、218仮令(たとへ)何万人(なんまんにん)()()ても、219一度(いちど)にかかる(わけ)には()かぬのだから、220(きさま)交替兵(かうたいへい)()(まで)神妙(しんめう)(つと)めて()るのだぞ』
221ベツト『ハイ、222承知(しようち)(いた)しました。223(しか)しどうも(わたし)一人(ひとり)では、224心細(こころぼそ)(ござ)います。225(かは)りが()(まで)226ここに(しばら)貴方(あなた)付合(つきあ)つて(もら)ひますまいか、227どうやら宣伝使(せんでんし)(こゑ)(きこ)えて()るやうですから……』
228 フエルは(かす)かに三五教(あななひけう)宣伝歌(せんでんか)(みみ)這入(はい)つたので、229(はや)くも、230ベツトを此処(ここ)におき自分(じぶん)(てい)よく逃出(にげだ)(かんが)へで、231こんな命令(めいれい)(くだ)してゐた。232宣伝歌(せんでんか)益々(ますます)(たか)(きこ)えて()た。
233フエル『オイ、234ベツト、235サア、236ここが(きさま)手柄(てがら)(あらは)(どき)だ。237(おれ)軍務(ぐんむ)都合(つがふ)()つて、238ここを退却(たいきやく)する、239(しつか)(たの)むぞ』
240ベツト『マア、241一寸(ちよつと)()つて(くだ)さい。242千騎一騎(せんきいつき)(この)場合(ばあひ)243貴方(あなた)(てい)よい(こと)()つて()げるのぢやありませぬか。244何程(なにほど)軍務(ぐんむ)(いそが)しいと()つて、245眼前(がんぜん)(てき)(ひか)へて、246大将(たいしやう)から()げると()(こと)がありますか』
247とグツと(うしろ)から、248フエルに()()き、249剛力(がうりき)(まか)せて(うご)かさぬ、250フエルは()()さうとすれ(ども)251ビクともする(こと)出来(でき)ぬ。252()げやうとする、253()がそまいとする。254(あせ)みどろになつて()みあうてゐる(ところ)へ、255(やうや)(のぼ)つて()たのは道晴別(みちはるわけ)であつた。256ベツト、257フエルは道晴別(みちはるわけ)姿(すがた)()て、258おぢけづき、259手足(てあし)はワナワナ(ふる)()し、260バタリと地上(ちじやう)(こし)(おろ)した。
261道晴(みちはる)『お(まへ)はバラモン(ぐん)兵士(へいし)()えるが、262玉木村(たまきむら)豪農(がうのう)テームスの(むすめ)263スミエル、264スガールの両人(りやうにん)猪倉山(ゐのくらやま)山寨(さんさい)(かく)してゐると()(こと)だが、265(まへ)はそれを()つてゐるか』
266ベツト『ヘーヘーヘー、267()つから(ぞん)じませぬ。268そんな(うはさ)があつたやうにも(ござ)いましたが、269よくよく調(しら)べてみますると、270(まつた)く……(うそ)(ござ)いました。271(わたし)はゼネラルの従卒(じゆうそつ)(いた)して()りましたから、272(なに)もかも陣中(ぢんちう)(こと)(ぞん)じて()りますが、273(をんな)なんかは一人(ひとり)()りませぬ』
274 (かふ)はベツトの(かほ)()て、
275(かふ)『ああお(まへ)はお(ぢやう)さまを、276(この)(あひだ)277四五人(しごにん)(をとこ)()れて()りに()大将(たいしやう)だなア……、278モシ宣伝使(せんでんし)(さま)279(この)(をとこ)(ござ)います。280此奴(こいつ)()(かへ)つたのですから、281よくお(しら)(くだ)さいませ』
282ベツト『エエ滅相(めつさう)な、283(わたし)()(かほ)沢山(たくさん)()りますから、284取違(とりちがひ)へて(もら)つては(こま)ります。285コレ、286テームスさまの(うち)(やつこ)さま、287()(わたし)(かほ)()(くだ)さい。288()(ところ)があつても、289どつかに(ちが)つた(ところ)があるだらう。290(まへ)(あま)(にはか)(こと)(おどろ)いたから間違(まちが)つたのだらう。291テームスやベリシナが、292何卒(どうぞ)(むすめ)(だけ)(こら)へて(くだ)さい。293(その)(かは)(わたし)を……と()つた(とき)に、294(かほ)もあげずに(うつむ)いて()つたぢやないか。295前達(まへたち)もさうだつたらう、296(こは)(とき)()でみたら、297キツと見違(みちが)ひするものだ』
298(かふ)『ハツハハハ、299(わたし)主人(しゆじん)()つた言葉(ことば)や、300(その)(とき)状況(じやうきやう)(まで)(いま)()つたでないか。301さうすればヤツパリお(まへ)(ちが)ひない。302先生(せんせい)303此奴(こいつ)(ござ)います。304何卒(どうぞ)(ひと)つドテライ()()はして、305(ぢやう)さまを取返(とりかへ)すやうに(めい)じて(くだ)さいませ』
306道晴(みちはる)『ウン、307よし、308オイ、309ベツト、310本当(ほんたう)(こと)()はぬと、311此方(こちら)にも(かんが)へがあるぞ』
312ベツト『エー、313(じつ)(ところ)は、314此処(ここ)(ござ)るフエルさまの命令(めいれい)()りまして、315ホンの機械的(きかいてき)(うご)いたので(ござ)います。316何卒(どうぞ)フエルさまに談判(だんぱん)をして(くだ)さいませ。317(いま)貴方(あなた)のお(こゑ)(きこ)えたので、318(この)フエルさまがビツクリして()げようとした(ところ)を、319(わたし)()()めて、320貴方(あなた)突出(つきだ)さうと(おも)ひ、321(いま)格闘(かくとう)してをつたのです。322()はば(この)(をとこ)張本人(ちやうほんにん)ですから、323(わたし)(その)張本人(ちやうほんにん)(つか)まへた御褒美(ごほうび)に、324何卒(どうぞ)(たす)けて(くだ)さいな』
325フエル『コリヤ、326ベツト、327馬鹿(ばか)()ふな、328(おれ)何時(いつ)そんな命令(めいれい)をしたか』
329ベツト『ヘヘヘヘヘ、330(うま)(こと)仰有(おつしや)いますワイ、331モシ宣伝使(せんでんし)(さま)332(この)フエルは普通兵(ふつうへい)肩章(けんしやう)をかけて()りまするが、333此奴(こいつ)(あく)証拠(しようこ)にや、334襟裏(えりうら)にユウンケル候補生(こうほせい)(しるし)()つて()ります。335それをお調(しら)べになつたら一番(いちばん)よう(わか)ります。336(わたし)御存(ごぞん)じの(とほ)軍曹(ぐんさう)ですから……』
337道晴(みちはる)『どちらが(ぜん)(あく)()らぬが、338()(かく)自分(じぶん)(つみ)上官(じやうくわん)()りつけようとする(ところ)から(かんが)へてみれば、339ヤツパリ貴様(きさま)(はう)(わる)い。340まて、341(いま)言霊(ことたま)御馳走(ごちそう)をやる、342(あく)(つよ)(やつ)言霊(ことたま)()たれようがきついから、343直様(すぐさま)(わか)るのだ』
344(かふ)『ハハハハハ、345(その)ザマ(なん)だ。346(よる)夜中(よなか)に、347四五人(しごにん)雑兵(ざふひやう)()れて()やがつて、348偉相(えらさう)威張(ゐばり)()らした(とき)権幕(けんまく)と、349今日(けふ)権幕(けんまく)とは、350まるで(おに)餓鬼(がき)(ほど)(ちが)ふぢやないか。351ザマ()やがれ。352三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)(あら)はれた以上(いじやう)は、353仮令(たとへ)バラモンに幾万(いくまん)(てき)()らうと()のお(ちや)だ、354エヘヘヘヘ、355よい気味(きみ)だな』
356道晴(みちはる)『オイ(かふ)357せうもない(こと)()ふものでない。358(まへ)(だま)つてをれば()いのだ。359バラモン(ぐん)のフエル殿(どの)360鬼春別(おにはるわけ)361久米彦(くめひこ)両将軍(りやうしやうぐん)はお達者(たつしや)(ござ)るかな』
362フエル『ハイ御親切(ごしんせつ)有難(ありがた)(ござ)います。363(きは)めて壮健(さうけん)軍務(ぐんむ)にお(つく)しになつて()ります』
364道晴(みちはる)『さうか、365それや(じつ)にバラモン(ぐん)(ため)には大慶(たいけい)だ。366(しか)しモウ()うなつては(かく)しても駄目(だめ)だから、367実地(じつち)(こと)()つて(もら)ひたい』
368フエル『ハイ、369(わたし)直接(ちよくせつ)(その)(にん)(あた)つたのぢやありませぬが、370玉木村(たまきむら)豪農(がうのう)(むすめ)スミエル、371スガールといふ美人(びじん)(たしか)にゼネラルの(そば)()りまする』
372道晴(みちはる)『あ、373さうだらう、374よう()つてくれた。375(しか)しお前達(まへたち)両人(りやうにん)は、376(この)(まま)(かへ)してやるは(やす)いが、377(また)すべての計画(けいくわく)障害(しやうがい)になると(こま)るから、378()(かく)379玉木村(たまきむら)のテームスが(いへ)まで()いて()てくれ』
380フエル『ハイ、381ソレヤ()かぬこた(ござ)いませぬが、382それよりも此処(ここ)見逃(みのが)して(くだ)さいますれば、383(うま)二人(ふたり)(むすめ)(たす)()して()ますがなア、384のう、385ベツト、386ここは思案(しあん)仕所(しどころ)だ。387一層(いつそう)(こと)388バラモン(ぐん)脱退(だつたい)して、389三五(あななひ)のお(みち)帰順(きじゆん)するお土産(みやげ)として、390二人(ふたり)玉木村(たまきむら)(かへ)さうだないか』
391ベツト『ヘーン、392そんな(こと)出来(でき)ますかな』
393 フエルは()をグツと(にら)み、
394馬鹿(ばか)だなア、395(なん)とか()とか()つてここを(たす)かるのだ、396チと()をつけぬかい』
397といふ意味(いみ)()()らした。
398ベツト『モシ道晴別(みちはるわけ)(さま)399フエルの大将(たいしやう)様子(やうす)御覧(ごらん)になれば、400どちらが(ぜん)(あく)(わか)るでせう。401()(かく)(わたし)帰順(きじゆん)(いた)します。402何卒(どうぞ)霊縛(れいばく)()いて(くだ)さい御恩返(ごおんがへ)しを(いた)しますから……』
403道晴(みちはる)『ハハハ、404(いま)霊縛(れいばく)()いたら、405一目散(いちもくさん)逃出(にげだ)すだらう。406()(かく)玉木村(たまきむら)()るがよい。407何程(なにほど)(いや)(まを)しても、408神力(しんりき)()つて引張(ひつぱ)つて()く、409どこなつと()くなら()つてみよ』
410()(なが)ら、411三人(さんにん)(やつこ)()れて、412シメジ(たうげ)急阪(きふはん)(くだ)()く。413フエル、414ベツトは(つな)をつけて引張(ひつぱ)られるやうな心地(ここち)し、415足元(あしもと)(あやふ)く、416(いや)(さう)自然的(しぜんてき)()いてゆく。417(やうや)くにして玉木村(たまきむら)(やや)(ひろ)原野(げんや)中央(まんなか)に、418老木(らうぼく)(しげ)一構(ひとかま)へがある。419ここがテームスの屋敷(やしき)であつた。420道晴別(みちはるわけ)宣伝歌(せんでんか)(うた)(なが)ら、421三人(さんにん)(やつこ)案内(あんない)され、422フエル、423ベツトを霊縛(れいばく)した(まま)門内(もんない)(まね)()れられたり。
424大正一二・二・二二 旧一・七 於竜宮館 松村真澄録)