霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一二章 妖瞑酒(えうめいしゆ)〔一三九八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第54巻 真善美愛 巳の巻 篇:第3篇 猪倉城寨 よみ:いのくらじょうさい
章:第12章 妖瞑酒 よみ:ようめいしゅ 通し章番号:1398
口述日:1923(大正12)年02月22日(旧01月7日) 口述場所:竜宮館 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年3月26日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる] 主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:
愛善世界社版:144頁 八幡書店版:第9輯 671頁 修補版: 校定版:144頁 普及版:65頁 初版: ページ備考:
001 (かふ)(おつ)(へい)三人(さんにん)はベツト、002フエルの両人(りやうにん)(くら)(なか)()()みおき、003(かは)(がは)入口(いりぐち)(ぢやう)をおろして(ばん)をする(こと)となつた。004(この)屋敷(やしき)祖先(そせん)代々(だいだい)から、005玉木(たまき)(むら)里庄(りしやう)(つと)めてゐる豪農(がうのう)で、006(くら)(かず)二十戸前(にじつとまへ)(なら)んでゐた。007ここへ()れへおけば、008絶対(ぜつたい)()のつく(はず)がない、009(まど)から(みづ)食料(しよくれう)(はふ)()んで、010(むすめ)(かへ)(まで)011二人(ふたり)をここに監禁(かんきん)する(こと)としたのである。012そして二人(ふたり)のチユーニツクはスツカリはがせ、013相当(さうたう)衣類(いるゐ)(あた)へておいたのである。014(かふ)()はシーナといふ。015(この)(をとこ)はテームス()譜代(ふだい)家来(けらい)であつて、016テームス()一切(いつさい)家政(かせい)(つかさど)つてゐた。
017 さて道晴別(みちはるわけ)はシーナに(みちび)かれ、018テームス、019ベリシナ夫婦(ふうふ)(まへ)(あら)はれて、020シメジ(たうげ)頂上(ちやうじやう)でベツト、021フエルに()うた(こと)(あるひ)(その)神力(しんりき)()たれて此処(ここ)(まで)引張(ひつぱ)られて()(こと)などを、022(くは)しく物語(ものがた)つた。023テームス夫婦(ふうふ)非常(ひじやう)(よろこ)んで茶菓(さくわ)などを()し、024()(わか)せて風呂(ふろ)案内(あんない)し、025宣伝服(せんでんふく)着替(きがへ)させ、026客室(きやくしつ)(しやう)じ、027(むすめ)危難(きなん)事情(じじやう)物語(ものがた)つた。
028テームス『貴方(あなた)(おと)名高(なだか)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)(さま)029()くマア()(くだ)さいました。030(しか)(なが)何千(なんぜん)といふ軍隊(ぐんたい)(なか)二人(ふたり)(むすめ)(さら)はれて(まゐ)つたので(ござ)いますから、031いかに御神力(ごしんりき)(つよ)貴方様(あなたさま)でも、032容易(ようい)取返(とりかへ)して(いただ)(こと)(むつ)かしう(ござ)いませうなア』
033(かほ)(のぞ)いた。034道晴別(みちはるわけ)少時(しばし)双手(もろて)()んで思案(しあん)(てい)であつたが、035(なに)確信(かくしん)あるものの(ごと)微笑(ほほゑ)(なが)ら、
036道晴(みちはる)『ああ(けつ)して御心配(ごしんぱい)なさりますな。037到底(たうてい)一通(ひととほ)りや二通(ふたとほり)りでは()きますまいが、038(なん)とか工夫(くふう)(いた)しまして、039敵中(てきちう)(しの)()み、040(ぢやう)さまを()(かへ)ることに(いた)しませう。041(しか)(なが)()(かへ)つた(ところ)で、042(また)もや取返(とりかへ)しに()られては(なん)にもなりませぬ、043此奴(こいつ)徹底的(てつていてき)(てき)改心(かいしん)させるか、044(ただし)追散(おひち)らすか(いた)さねば駄目(だめ)でせう』
045ベリシナ『どうか、046老夫婦(らうふうふ)(くび)(あつ)めて日夜(にちや)心配(しんぱい)(いた)して()りますから、047神様(かみさま)御神力(ごしんりき)()つて御助(おたす)(くだ)さいますやう、048御願(おねがひ)(まを)します』
049道晴(みちはる)当家(たうけ)はウラル(けう)()えますが、050貴方(あなた)三五教(あななひけう)信仰(しんかう)する()はありませぬか』
051ベリシナ『ハイ、052神様(かみさま)(もと)一株(ひとかぶ)053祖先(そせん)(まつ)つた神様(かみさま)(にはか)子孫(しそん)()へるといふのは、054(なん)だか先祖(せんぞ)(たい)してすまないやうな()(いた)します。055貴方(あなた)信仰(しんかう)(あそ)ばす三五(あななひ)神様(かみさま)をお(まつ)(いた)しても神罰(しんばつ)(あた)りますまいかな』
056道晴(みちはる)神様(かみさま)一株(ひとかぶ)だから、057ウラル(けう)にならうが、058三五教(あななひけう)にならうがそんな(ちひ)さい(こと)仰有(おつしや)神様(かみさま)ぢやありませぬ、059そして(もつと)神徳(しんとく)(たか)(いつは)りのない(まこと)(ひと)つの(をしへ)信仰(しんかう)するが祖先(そせん)(たい)しての孝行(かうかう)(ござ)いませう。060()第一(だいいち)三五(あななひ)神様(かみさま)をお(まつ)(いた)し、061(その)御神徳(ごしんとく)()つて、062二人様(ふたりさま)(いのち)(たす)かるやう、063(ねが)はうぢやありませぬか。064それとも、065どうしてもウラル(けう)(あらた)めるのが(いや)仰有(おつしや)るならば、066それで(よろ)しい、067(けつ)してお(すす)めは(いた)しませぬから……』
068テームス『(ばば)意見(いけん)(なん)(まを)すか()りませぬが、069これ(だけ)(あさ)から(ばん)(まで)070ウラルの神様(かみさま)信仰(しんかう)(なが)ら、071こんなに(くる)しい()()ふので(ござ)いますから、072ウラル(けう)神様(かみさま)(この)(ごろ)はどうかして(ござ)るだらうと(うたが)つて()ります。073(げん)にビクの(くに)のビクトリア王様(わうさま)もウラル(けう)でゐらつしやるのに、074あの(やう)大難(だいなん)にお()ひなされ、075三五(あななひ)神様(かみさま)(たす)けられたとの(うはさ)()つて()りまする。076何卒(どうぞ)(よろ)しう御願(おねが)(いた)します。077ベリシナ、078(まへ)もヨモヤ異存(いぞん)はあるまいなア』
079ベリシナ『貴方(あなた)がさう仰有(おつしや)るのならば、080女房(にようばう)(わたし)(けつ)して異議(いぎ)(まを)しませぬ。081どうぞ(まつ)つて(もら)つて(くだ)さいませ』
082道晴(みちはる)(しか)らば三五教(あななひけう)神様(かみさま)と、083ウラル(けう)守護(しゆご)(あそ)ばす盤古神王様(ばんこしんのうさま)(なら)べて(まつ)(こと)(いた)しませう。084神様(かみさま)(もと)(ひと)つで(ござ)いますからなア』
085テームス『いかにも(おほせ)(とほ)り、086(じつ)公平(こうへい)無私(むし)なお言葉(ことば)087()第一(だいいち)神様(かみさま)をお(まつ)(いた)し、088(その)(うへ)(むすめ)(すく)つて(いただ)(こと)(ねが)ひませう』
089とここに(いよいよ)090夫婦(ふうふ)決心(けつしん)(さだ)まつたので、091道晴別(みちはるわけ)(にはか)神殿(しんでん)(つく)り、092簡単(かんたん)なお(まつり)をすませ、093いよいよ猪倉山(ゐのくらやま)(むか)つて、094スミエル、095スガールの姉妹(きやうだい)取返(とりかへ)さむと(すす)()用意(ようい)(とり)かかつた。096(さいはひ)097ベツト、098フエルの軍服(ぐんぷく)があるので、099道晴別(みちはるわけ)とシーナの両人(りやうにん)(これ)着用(ちやくよう)(およ)び、100(よる)(まぎ)れて陣中(ぢんちう)(すす)()(こと)となつた。
101 シーナは(ちか)くの(こと)とて、102猪倉山(ゐのくらやま)地理(ちり)()()つて()つた。103谷川(たにがは)激流(げきりう)(みぎ)()()え、104(ひだり)(わた)り、105(やうや)くにして東北西(とうほくせい)三方(さんぱう)深山(しんざん)(つつ)まれた一方口(いつぱうぐち)(ひろ)谷間(たにあひ)()いた。106三千人(さんぜんにん)(ばか)りの兵卒(へいそつ)(なか)へ、107(おな)軍服(ぐんぷく)()(まぎ)()んだのだから、108(うへ)役人(やくにん)ならば()につくが、109軍曹(ぐんさう)平兵(ひらへい)(ふく)では容易(ようい)見破(みやぶ)られる気遣(きづか)ひがないのである。
110 (つき)(ひがし)(やま)()(のぞ)いて、111谷川(たにがは)(ひかり)()げてゐる。112彼方此方(あなたこなた)若葉(わかば)(あひだ)から時鳥(ほととぎす)(こゑ)面白(おもしろ)(きこ)えて()る。113見上(みあ)ぐる(ばか)りの大岩(おほいは)(ふもと)四五人(しごにん)のバラモン(へい)趺座(あぐら)をかいて夜警(やけい)(つと)めてゐる。114(いづ)れも(みな)(さけ)()うてゐるらしい。
115(かふ)『オイ、116(てき)もないのに、117毎日(まいにち)日日(ひにち)夜警(やけい)(ばか)りやらされて()つては、118つまらぬぢやないか。119夜警(やけい)(この)(ごろ)はヤケクソになつて、120ヤケ(ざけ)でも()まなくちややり()れない。121すつぱい(くさ)つたやうな(さけ)を、122カーネル()123……これは夜警(やけい)()ませ……なんて(ぬか)しやがつて、124自分等(じぶんら)()みさし(ばか)りをまはして()るのだから、125本当(ほんたう)にむかつくだないか』
126(おつ)『だつて()まないよりマシだ。127(べつ)(これ)()まねば軍規(ぐんき)(はん)すると()つて厳命(げんめい)したのでもなし、128退屈(たいくつ)だらうから、129(これ)でも(かま)はねば()んだらどうだと()つて、130カーネルさまが()げて(くだ)さつたのだ、131チツといたみた(さけ)でも(もら)はぬよりマシぢやないか』
132(かふ)『さうだと()つて、133自分(じぶん)(たち)芳醇(はうじゆん)(さけ)にくらひ(よひ)134ホフクー、135ゲスラートだと()つて、136(よう)もないのに、137小田原評定(をだはらひやうじやう)(ばか)りやりやがつて、138スミエル、139スガールの(すこぶ)別嬪(べつぴん)(しやく)をさせ、140ヤニ(さが)つてゐやがるのだもの、141俺達(おれたち)雑兵(ざふひやう)(ほとん)人間扱(にんげんあつかひ)をされてゐないのだからな』
142(おつ)馬鹿(ばか)()ふな、143そこが辛抱(しんばう)だ。144辛抱(しんばう)さへしてゐれば、145時節(じせつ)()たら(はな)()くのだ。146(これ)からゼネラルの命令(めいれい)()つて、147猪倉山(ゐのくらやま)城寨(じやうさい)完成(くわんせい)した(うへ)は、148近国(きんごく)(あら)(まは)り、149馬蹄(ばてい)蹂躙(じうりん)し、150大共和国(だいきようわこく)建設(けんせつ)するのだ。151さうなれば()うしても人物(じんぶつ)必要(ひつえう)だ、152何程(なにほど)雑兵(ざふひやう)だつて、153(きさま)でもキヤプテン(くらゐ)には登庸(とうよう)されるよ』
154(かふ)『ヘン、155大尉(たいゐ)(くらゐ)になつたつて、156(なに)結構(けつこう)だ、157貧乏(びんばふ)少尉(せうゐ)の、158ヤリクリ中尉(ちうゐ)の、159ヤツトコ大尉(たいゐ)()ふぢやないか、160そんな(こと)()うして(かか)(やしな)へるか。161せめてユウンケル(くらゐ)にしてくれりや、162骨折(ほねを)つても()いのだが。163三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)三人(さんにん)四人(よにん)恐怖(きようふ)して、164こんな(ところ)籠城(ろうじやう)するやうな大将(たいしやう)だから、165(さき)()えてゐるワ、166(なん)()つても、167鬼春別(おにはるわけ)168久米彦(くめひこ)両将軍(りやうしやうぐん)馬鹿(ばか)だからなア』
169(おつ)『オイそんな(おほ)きな(こゑ)()ふな。170(へい)(てい)(ぼう)居眠(ゐねむ)つたやうな(つら)して()いてるぞ。171人間(にんげん)(こころ)()ふものは(わか)つたものぢやない。172いつ俺達(おれたち)(うら)をかいて、173(おそ)(なが)らと、174ゼネラルの(まへ)密告(みつこく)するか(わか)りやしないぞ』
175(かふ)『ナニ、176こんな(やつ)がそんな(こと)(ども)(いた)してみよれ、177(たちま)ちウーンだ』
178(おつ)『ウンとは(なん)だい、179(また)(ふん)パツだな、180そんな(ところ)でウンをやられちや(くさ)くてたまらないワ』
181(かふ)『ハハハハ、182(わか)らぬ(やつ)だな。183三五教(あななひけう)言霊(ことたま)で、184ウーンとやつてやるのだい』
185(おつ)(きさま)(もと)三五教(あななひけう)だな、186此奴(こいつ)油断(ゆだん)のならぬ(やつ)だ』
187(かふ)油断(ゆだん)がなるまい。188(おれ)はチヤンとビクトリア(じやう)治国別(はるくにわけ)がやつて()(とき)に、189(もん)(そと)にすくんで、190どんな(こと)やりよるかと(かんが)へてゐたら、191両手(りやうて)()んで、192ウーンとやるが最後(さいご)193何奴(どいつ)此奴(こいつ)(からだ)(うご)けぬやうになつたのだ。194そして(あし)(ばか)りは自由(じいう)(うご)くものだから(みな)()げよつたのだ。195(その)呼吸(こきふ)をチヤンと()()んでゐる。196グヅグヅいふと一寸(ちよつと)やつてやらうか』
197(おつ)『ソレヤ面白(おもしろ)い、198(ひと)此所(ここ)でやつてみよ』
199(かふ)『やらいでかい、200マアみて()れ、201(きさま)(ひと)霊縛(れいばく)をかけてやらう』
202()(なが)ら、203両手(りやうて)()んで、204一生懸命(いつしやうけんめい)にウンウンと(うな)つてゐる。205(あま)(うな)つたので(うな)つた拍子(ひやうし)にブウブウと裏門(うらもん)一二発(いちにはつ)破裂(はれつ)した。
206(おつ)『アハハハハ、207たうとう屁古垂(へこた)れやがつたな。208大方(おほかた)そんな(こと)だと(おも)うて()つたのだ。209(あま)りホラを()くものぢやないぞ』
210(かふ)俺達(おれたち)は、211ヘーたれさまだ、212(くち)からホラを()いて(しり)からラツパを()くのが職掌(しよくしやう)だ』
213(おつ)『オイ、214(へい)(てい)(ぼう)215(はや)()きぬかい。216(なん)だか、217(むか)ふの(はう)から二人(ふたり)やつてくる(やう)だ。218モシや治国別(はるくにわけ)片割(かたわ)れぢやなからうかな』
219 治国別(はるくにわけ)といふ(こゑ)()いて、220三人(さんにん)泥酔者(よひどれ)(にはか)起上(おきあが)り、221ソロソロ逃仕度(にげじたく)をしかけた。
222(おつ)『コレヤ、223まだ(てき)味方(みかた)(わか)らぬ(さき)から()仕度(じたく)をする(やつ)があるかい。224卑怯者(ひけふもの)だな』
225(へい)(わか)つてから()げた(ところ)仕方(しかた)がないぢやないか、226(わか)らぬ(さき)()げるのが兵法(へいはふ)(おく)()だ。227モシ(てき)でもあつてみよ、228()(さし)がならぬぢやないか』
229(おつ)『モシ(てき)()()たら、230俺達(おれたち)撃退(げきたい)するやうに、231一歩(いつぽ)此所(ここ)より(なか)()れないやうに(ばん)をしてゐるのぢやないか、232肝腎(かんじん)(とき)()げる(やつ)がどこにあるかい。233しつかりせぬかい』
234 かかる(ところ)道晴別(みちはるわけ)235シーナの両人(りやうにん)はチューニック姿(すがた)(のぼ)つて()た。
236(かふ)(たれ)だア、237()名乗(なの)れツ』
238呶鳴(どな)りつける。
239道晴(みちはる)(おれ)はバラモン(ぐん)軍曹(ぐんさう)240デクといふものだ』
241シーナ『(おれ)はシーナといふ軍人(ぐんじん)だ。242ゼネラル(さま)命令(めいれい)()つて汝達(きさまたち)がよく(つと)めてるか(つと)めてゐないかを巡検(じゆんけん)()たのだ、243(その)ザマは一体(いつたい)(なん)だ』
244(おつ)『ヘ、245(まこと)()みませぬ。246(しか)(なが)貴方(あなた)もウスウス御存(ごぞん)じでせうが、247ゼネラルから(たまは)つた(この)(さけ)248退屈(たいくつ)ざましに(いただ)いて()つたのです』
249シーナ『(いただ)いた(さけ)なら、250()むなと()はぬが、251軍務(ぐんむ)差支(さしつかへ)ないやうに(いた)さぬと(こま)るぢやいか』
252(おつ)『ハイ、253チツと()ごしましたが、254よう(かんが)へて御覧(ごらん)なさい、255(べつ)(てき)()るでもなし、256さうシヤチ()つて()つた(ところ)で、257暖簾(のれん)脛押(すねお)しするやうなものです。258(わたし)(ばか)りぢやありませぬ、259(みな)附近(あたり)民家(みんか)()つて、260色々(いろいろ)のドブ(ざけ)徴発(ちようはつ)し、261勝手(かつて)気儘(きまま)()んでるぢやありませぬか』
262シーナ『かう軍規(ぐんき)(みだ)れては、263()うも仕方(しかた)がない、264これからチツと監督(かんとく)厳重(げんぢう)にせなくちやなりませぬなア、265デクさま』
266デク『ウン、267さうだ、268チツと(これ)から(きび)しくやらう。269オイ雑兵(ざふひやう)(ども)270(この)(かは)(はし)()け』
271(おつ)『ヘー、272()けないこた(ござ)いませぬが、273カーネルさまの御命令(ごめいれい)()れば、274……(この)(はし)()けちや()かない……と()つて(おと)されたのですから、275一寸(ちよつと)(うかが)つた(うへ)でなくては、276軍曹(ぐんさう)さま(くらゐ)命令(めいれい)では()(こと)出来(でき)ませぬからなア』
277デク『(おれ)(この)肩章(けんしやう)()たら(わか)るが、278一人(ひとり)伍長(ごちやう)だ。279伍長(ごちやう)(いへど)も、280(きさま)らの上官(じやうくわん)だぞ、281なぜ上官(じやうくわん)命令(めいれい)()かないか』
282(おつ)『ヘー、283そんなら仕方(しかた)がありませぬ、284私達(わたしたち)(はし)になつて向方(むかふ)へお(わた)(まを)しませう。285(とき)軍曹様(ぐんさうさま)286マアゆつくりなさいませ。287ここに、288(なん)ならスツパイ御神酒(おみき)がチツと(ばか)(のこ)つてゐますがなア』
289デク『そんな(さけ)(おれ)()みたくない、290(いま)玉木村(たまきむら)豪農(がうのう)291テームスの(たく)闖入(ちんにふ)して、292かやうな結構(けつこう)(さけ)(もら)つて()たのだ。293(なん)なら、294(きさま)295これを一杯(いつぱい)()んだら()うだい』
296 (ちなみ)(この)(さけ)非常(ひじやう)苛性的(かせいてき)狂乱(きやうらん)(おこ)(くすり)(はい)つてゐたのである。297一寸(ちよつと)一口(ひとくち)()むと、298(なん)とも()れぬ(した)ざはりである。299(おつ)は、
300『ヤア、301軍曹殿(ぐんさうどの)302(はな)せますなア、303ヤツパリ泥棒軍(どろぼうぐん)上官(じやうくわん)(だけ)あつて、304()()いてますワイ』
305デク『上官(じやうくわん)(むか)つて、306泥坊(どろばう)とは(なん)だ』
307(おつ)『それでも、308(ひと)(うち)(はい)つて、309(おど)かして(もら)つて()るのは泥坊(どろばう)でせう、310ヘヘヘヘ』
311デク『マ一杯(いつぱい)()んで()よ、312(さかづき)()せい』
313(おつ)(さかづき)なんか、314()()いたものはありませぬ、315ここに竹製(たけせい)臨時盃(りんじさかづき)がありますから、316何卒(どうぞ)これに()いで(くだ)さい。317竹筒(たけづつ)()いだ(さけ)(また)格別(かくべつ)(うま)いものですよ』
318()ひながら、319竹筒(たけづつ)をつき()す。320デクは(ひさご)からドブドブと()(あた)へ、
321デク『オイ(きさま)一人(ひとり)()んでは()かないぞ。322これは妖瞑酒(えうめいしゆ)というて、323一口(ひとくち)()めば三十年(さんじふねん)(いのち)()びるのだ。324二口(ふたくち)()めば三十年(さんじふねん)寿命(じゆみやう)がちぢまるのだ。325それだから、326(これ)五人(ごにん)()(まは)すのだ』
327(おつ)(なん)(むつ)かしい、328()のじゆつない(さけ)ですなア』
329()(なが)ら、330一口(ひとくち)より()めぬといふので、331十分(じふぶん)(くち)にくくんだ。332(なん)とも()れない()(あぢ)がする、333一口(ひとくち)()みたくて仕方(しかた)がないが、334三十年(さんじふねん)寿命(じゆみやう)(ちぢ)まるのも(をし)いと(おも)つたか、335(をし)(さう)(かふ)(わた)した。336(かふ)一口(ひとくち)()んで(その)風味(ふうみ)(かん)じ、337(また)(いや)(さう)(へい)(てい)(ぼう)()みまはした。338(ぼう)(くち)(まは)つた時分(じぶん)は、339ホンの(した)がぬれる(ほど)より()かつた。340五人(ごにん)(にはか)(をど)()し、341息苦(いきぐる)しくなり、342(かは)飛込(とびこ)んだり、343()(あが)つたり、344(わけ)(わか)らぬ(こと)(しやべ)()して、345一目散(いちもくさん)陣中(ぢんちう)駆込(かけこ)んだ。346非常(ひじやう)猛烈(まうれつ)(にほひ)がする、347(この)(にほひ)()いだものは(たちま)感染(かんせん)し、348軍服(ぐんぷく)()ぎすて、349赤裸(まつぱだか)になつて、350川中(かはなか)()()むのが特色(とくしよく)である。351(つぎ)から(つぎ)伝染(でんせん)して、352三千人(さんぜんにん)軍隊(ぐんたい)大半(たいはん)(けん)谷川(たにがは)(なげ)すて、353チューニックを()いで、354()(また)谷川(たにがは)(はふ)()み、355赤裸(まつぱだか)となつて、356ワイワイと(わけ)(わか)らぬ(こと)(さへづ)(はじ)めた。357(つぎ)から(つぎ)へと伝染(でんせん)して、358スボスボと赤裸(まつぱだか)になる(もの)(ばか)りなので、359カーネルのマルタは(これ)()(おどろ)き、360()(かく)将軍(しやうぐん)注進(ちうしん)せむと本陣(ほんぢん)()して一目散(いちもくさん)駆込(かけこ)んだ、361赤裸(まつぱだか)沢山(たくさん)軍人(ぐんじん)(わけ)(わか)らぬ(こと)をガアガアと(さへず)(なが)ら、362(れつ)(つく)つて、363将軍(しやうぐん)陣営(ぢんえい)()して突喊(とつかん)()く。
364大正一二・二・二二 旧一・七 於竜宮館 松村真澄録)