霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一三章 岩情(がんじやう)〔一三九九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第54巻 真善美愛 巳の巻 篇:第3篇 猪倉城寨 よみ:いのくらじょうさい
章:第13章 第54巻 よみ:がんじょう 通し章番号:1399
口述日:1923(大正12)年02月22日(旧01月7日) 口述場所:竜宮館 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年3月26日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる] 主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm5413
愛善世界社版:157頁 八幡書店版:第9輯 676頁 修補版: 校定版:157頁 普及版:72頁 初版: ページ備考:
001 猪倉山(ゐのくらやま)頂上(ちやうじやう)には巨大(きよだい)なる(ゐのしし)(かたち)をした岩倉(いはくら)がある。002(これ)(もつ)猪倉(ゐのくら)()出来(でき)たのである。003(やま)五合目(ごがふめ)以上(いじやう)全部(ぜんぶ)(いは)(もつ)(かた)められ、004五合目(ごがふめ)以下(いか)(すご)いやうな密林(みつりん)である。005そして(この)(いは)には所々(ところどころ)岩窟(がんくつ)入口(いりぐち)があつて、006(その)内部(ないぶ)数里(すうり)(わた)つてゐると(うはさ)され、007(おほ)きな蝙蝠(かうもり)沢山(たくさん)()んでゐた。008(この)窟内(くつない)には所々(ところどころ)綺麗(きれい)(みづ)()いてゐて、009(すこ)しも(みづ)には不自由(ふじゆう)がない。010そして所々(ところどころ)(いは)から甘露(かんろ)のやうな(あぶら)がにじみ()し、011(これ)さへ()めて()れば、012(あま)労働(らうどう)をせぬ(かぎ)り、013二ケ月(にかげつ)三ケ月(さんかげつ)体力(たいりよく)(おとろ)へないと()ふ、014天与(てんよ)岩窟(がんくつ)である。015鬼春別(おにはるわけ)016久米彦(くめひこ)両将軍(りやうしやうぐん)部下(ぶか)兵卒(へいそつ)探険(たんけん)(ため)窟内(くつない)(ふか)(すす)ましめ、017調査(てうさ)結果(けつくわ)018(べつ)(おそ)ろしい猛獣(まうじう)()んでゐない(こと)(わか)つたので、019(いよいよ)ここを本拠(ほんきよ)(さだ)め、020五合目(ごがふめ)以下(いか)俄作(にはかづく)りの兵舎(へいしや)(つく)つて、021谷川(たにがは)(さかひ)()()もつたのである。022(この)岩窟(がんくつ)()りさへすれば、023いかに治国別(はるくにわけ)神力(しんりき)あり(とも)024(けつ)しておとす(こと)出来(でき)まい、025大雲山(だいうんざん)岩窟(がんくつ)よりも幾倍(いくばい)堅固(けんご)であり、026(かつ)(ひろ)いかも()れぬ。027両将軍(りやうしやうぐん)はここを自分(じぶん)千代(ちよ)住家(すみか)として全力(ぜんりよく)(そそ)ぎ、028(いは)()(ひろ)げたり、029いろいろ雑多(ざつた)として、030三千(さんぜん)兵士(へいし)(なか)孔鑿(こうさく)器用(きよう)なものを(えら)んで昼夜(ちうや)岩窟(がんくつ)鑿掘(さくくつ)をやつてゐた。031(あな)入口(いりぐち)(まへ)には俄作(にはかづく)りの事務所(じむしよ)があつて、032そこにはスパール、033エミシのカーネルが(かた)(まも)つてゐた。034窟内(くつない)中央(ちうあう)とも(おぼ)しき(やや)(ひろ)居間(ゐま)には鬼春別(おにはるわけ)035久米彦(くめひこ)両将軍(りやうしやうぐん)がそこら(ぢう)徴収(ちようしう)して()葡萄酒(ぶだうしゆ)(かたむ)け、036懐旧談(くわいきうだん)(ふけ)つてゐる。
037鬼春(おにはる)久米彦(くめひこ)殿(どの)038かやうな堅城鉄壁(けんじやうてつぺき)陣取(ぢんど)つた(うへ)最早(もはや)大丈夫(だいぢやうぶ)(ござ)るが、039(しか)(なが)千載(せんざい)恨事(こんじ)ともいふは、040ヒルナ、041カルナの両人(りやうにん)(のが)した(こと)だ。042此奴(こいつ)をどうかして()(かへ)工夫(くふう)はなからうかな』
043久米(くめ)『サア、044(いのち)(まと)にかけさへすれば、045()(かへ)されない(こと)はありますまいが、046あの(とほ)りライオンが、047あの(をんな)には守護(しゆご)してると()えますから、048一寸(ちよつと)(むつ)かしいでせう』
049鬼春(おにはる)(なん)()つても、050()(くら)むやうな美人(びじん)だから、051(もと)より一通(ひととほ)りの(もの)ではないと(おも)うてゐた。052大方(おほかた)あれは何神(なにがみ)かの化身(けしん)であつたに(ちがひ)ない。053ああ、054馬鹿(ばか)()()たものだ。055久米彦(くめひこ)056(まへ)()()かないものだから、057掌中(しやうちう)(たま)()られて(しま)つたのだよ。058(はな)はねぢられ、059(かほ)はかきむしられ、060イヤもうゼネラルとしての貫目(くわんめ)はゼロで(ござ)る』
061久米(くめ)(なん)()つても、062あなたが率先(そつせん)して美人(びじん)(たましひ)をぬかれ(あそ)ばすのだから、063拙者(せつしや)がのろけるのは、064()はば閣下(かくか)教育(けういく)()つたも同然(どうぜん)065仕方(しかた)がありませぬワ』
066鬼春(おにはる)馬鹿(ばか)(まを)すな。067カルナを(はじ)めて陣中(ぢんちう)引張(ひつぱ)つたのは、068貴殿(きでん)では(ござ)らぬか』
069久米(くめ)『あつて()ぎた(こと)()ふに(およ)びますまい、070それよりも今度(こんど)ぼつたくつて()た、071スミエルにスガールの両人(りやうにん)072あれを(なん)とか()きつけて、073一時(いちじ)ヒルナ、074カルナの代用品(だいようひん)にしたら如何(いかが)(ござ)る』
075鬼春(おにはる)『イヤもう(をんな)には懲々(こりごり)した。076あれは飯焚(めしたき)をさしておけば()いのだ』
077久米(くめ)(しか)らば両人(りやうにん)飯焚(めした)きをさせませう、078そしてあなたが(をんな)懲々(こりごり)なさつたとあれば、079拙者(せつしや)両人共(りやうにんとも)(いただ)(こと)(いた)しませう』
080鬼春(おにはる)『イヤさうは(まゐ)らぬ、081貴殿(きでん)勝手(かつて)(いた)(くらゐ)なら拙者(せつしや)勝手(かつて)(いた)す』
082久米(くめ)(しか)らばあなたは上官(じやうくわん)(こと)でもありますから、083(あね)のスミエルを御自由(ごじいう)になさいませ。084拙者(せつしや)はスガールを(あづか)りませう』
085鬼春(おにはる)『スガールはカルナ(ひめ)()いでの美人(びじん)086スミエルは比較的(ひかくてき)醜婦(しうふ)だ。087左様(さやう)勝手(かつて)(こと)出来(でき)ますまいぞ』
088久米(くめ)(しか)らば両人(りやうにん)自由(じいう)(まか)せ、089選択(せんたく)をさせたら如何(どう)(ござ)るかな』
090鬼春(おにはる)『ヤ、091それが()からう、092(しか)らばスガールを呼出(よびだ)して、093(まへ)どちらが()きだか……と(たづ)ねてみよう。094そしてスガールの()きだと()つた(はう)彼女(かのぢよ)自由(じいう)にするのだ、095無理往生(むりわうじやう)さしても面白(おもしろ)くない、096(また)(をとこ)らしうもないからな』
097久米(くめ)『そら面白(おもしろ)いでせう、098(しか)(なが)ら、099あなたは軍服(ぐんぷく)()れば上官(じやうくわん)だと()(こと)(わか)つて()りますから、100(をんな)といふ(もの)虚栄心(きよえいしん)(つよ)いもの(ゆゑ)101キツと地位(ちゐ)(たか)いものに(なび)くは当然(たうぜん)102それでは面白(おもしろ)くないから、103どちらもチューニックを()平服(へいふく)になり、104階級(かいきふ)高下(かうげ)(わか)らないやうにし、105(えら)ましたら()うでせう』
106鬼春(おにはる)『ウン、107そら面白(おもしろ)い、108それが本当(ほんたう)だ。109サ、110(はや)(たれ)かを()んで、111スガールを此処(ここ)召伴(めしつ)(きた)(やう)112(めい)じなさい』
113 久米彦(くめひこ)はうち(うな)づき、114(この)居間(ゐま)()て、115(つぎ)岩窟(がんくつ)(いた)り、116リウチナントのサムといふ(をとこ)に、117スガールを将軍(しやうぐん)居間(ゐま)(ひき)つれ(きた)(こと)厳命(げんめい)した。118リウチナントは『ハイ』と(こた)へて、119スガールの押込(おしこ)んである岩窟(がんくつ)一間(ひとま)(あし)(いそ)いだ。120両将軍(りやうしやうぐん)軍服(ぐんぷく)()ぎ、121平服(へいふく)着替(きか)へ、122(かほ)整理(せいり)などして、123色男(いろをとこ)競争(きやうそう)をやつて、124(いま)(おそ)しと()つてゐる。
125 (しばら)くあつてスガールは(おそ)(おそ)中尉(ちうゐ)(おく)られ、126将軍(しやうぐん)居間(ゐま)にやつて()て、127ビリビリ(ふる)うてゐる。128鬼春別(おにはるわけ)相好(さうがう)(くづ)し、
129鬼春(おにはる)『オイ、130スガール、131(まへ)随分(ずいぶん)不便(ふべん)であらうの。132(この)(はう)全軍(ぜんぐん)統率(とうそつ)する将軍(しやうぐん)だ、133ここにゐる(をとこ)(また)(おな)じく将軍(しやうぐん)だ。134部下(ぶか)(わる)(やつ)があつて、135其方(そなた)斯様(かやう)(ところ)()れて()たさうだが(じつ)不愍(ふびん)(もの)だ。136()うかしてお(まへ)(おや)(うち)(おく)つてやりたいと、137いろいろ両人(りやうにん)(ほね)()つてゐるのだが、138(なん)()つても(この)(やま)(ふもと)は、139三五教(あななひけう)軍勢(ぐんぜい)が、140幾万(いくまん)とも()れず、141押寄(おしよ)せて()てゐるのだから、142険難(けんのん)(おく)つてやる(わけ)にも()かず、143(しばら)くマア此処(ここ)時節(じせつ)()つたがよからう、144そして不自由(ふじゆう)(こと)があつたら、145どんな(こと)でも()いてやるから、146遠慮(ゑんりよ)なく()うたがいいぞ』
147スガール『ハイ、148(おも)ひもよらぬ御親切(ごしんせつ)149有難(ありがた)(ぞん)じます』
150 久米彦(くめひこ)鬼春別(おにはるわけ)(をんな)()()(さう)(こと)(ばか)り、151(さき)()はれて(しま)ひ、152自分(じぶん)()(こと)がないので、153()うしようかなアと(むね)(いた)めつつ(かんが)()んだ。154どうやら鬼春別(おにはるわけ)にスガールは思召(おぼしめし)がありさうに(おも)はれるので、155()()でならず、
156久米(くめ)『ああ其方(そなた)スガールといふ玉木(たまき)(むら)でも有名(いうめい)美人(びじん)だ、157本当(ほんたう)悪者(わるもの)()にかかつて、158かやうな(ところ)()るとは、159不愍(ふびん)(もの)だなア、160(おれ)同情(どうじやう)(なみだ)にくれてゐるのだ、161どうかして、162一時(いちじ)(はや)玉木(たまき)(むら)(おく)つてやりたいのだが、163(いま)将軍(しやうぐん)のいはれた(とほ)り、164敵軍(てきぐん)取囲(とりかこ)んでゐるから、165ここ(しばら)くは辛抱(しんばう)してくれねばなるまい、166バラモン(ぐん)(とら)はれてゐなければ三五軍(あななひぐん)(とら)はれてゐるのだ、167それを(おも)へば、168(まへ)(じつ)仕合(しあは)せだよ。169キツト(てき)退散(たいさん)させてみる心算(つもり)だから、170何事(なにごと)(この)(はう)(まを)(こと)(しん)じて、171(たのし)んで()つてゐるが()いワ。172なア、173スガール、174かう()えても、175随分(ずいぶん)親切(しんせつ)(をとこ)だらう』
176スガール『ハイ、177御両人様(ごりやうにんさま)178御親切(ごしんせつ)によう()うて(くだ)さりました。179どうぞ(よろ)しう御願(おねがひ)(まを)します』
180鬼春(おにはる)『オイ、181スガール、182(まへ)(この)将軍(しやうぐん)さまと(わたし)何方(どちら)(やさ)しい(をとこ)(おも)ふか、183それが(ひと)()きたいものだなア』
184スガール『ハイ、185どちら(さま)も、186人情深(にんじやうぶか)いお(かた)(ござ)います。187(しか)(なが)ら、188(なん)だか()りませぬが、189一口(ひとくち)でも(さき)へ、190(やさ)しい言葉(ことば)をおかけ(くだ)さつたお(かた)(うれ)しう(ござ)います』
191鬼春(おにはる)『アハハハハ、192さうすると、193(この)髭面(ひげづら)(はう)()()つたと()ふのかな』
194スガール『ハイ、195(べつ)()()るといふ(こと)(ござ)いませぬが、196()(かく)御親切(ごしんせつ)御方(おかた)だと(よろこ)んで()ります』
197鬼春(おにはる)『ウン、198親切(しんせつ)(わか)つてゐるが、199もし()りにお(まへ)(をつと)()つとしたらば、200何方(どちら)(をつと)()つか、201それが()きたいものだ』
202スガール『どうぞ、203そんな(こと)仰有(おつしや)つて(くだ)さいますな、204(わらは)軍人(ぐんじん)なんか(をつと)()()(ござ)いませぬ』
205鬼春(おにはる)軍人(ぐんじん)()()らねば軍人(ぐんじん)をやめてもよい、206そしたらお(まへ)()うするか』
207スガール『ハイ、208御両人様(ごりやうにんさま)一度(いちど)軍人(ぐんじん)をやめて、209普通(ふつう)人間(にんげん)にお()(あそ)ばした(とき)には(わらは)はあとのお(かた)(もら)つて(いただ)きます。210(しか)(なが)らモツトモツト、211綺麗(きれい)()()いた(をとこ)世間(せけん)にはありませうから、212さうあわてるには(およ)びませぬ』
213久米(くめ)『コリヤ、214(をんな)215(まへ)(とし)にも似合(にあ)はず大胆(だいたん)(こと)()(やつ)だなア、216(しか)(なが)拙者(せつしや)()きだと()つたな、217エヘヘヘヘ、218鬼春別(おにはるわけ)さま、219すみませぬが、220御約束通(おやくそくどほり)拙者(せつしや)頂戴(ちやうだい)(いた)しませう、221あなたはスミエルさまで御辛抱(ごしんばう)なさいませ』
222鬼春(おにはる)『オイ、223スガール、224実際(じつさい)(こと)()つてくれ、225(おれ)にも(かんが)へがあるから』
226スガール『ハイ、227実際(じつさい)(こと)(まを)しましたら、228御両人様(ごりやうにんさま)がお立腹(りつぷく)(あそ)ばしますでせう、229マア()ひますまい』
230久米(くめ)本当(ほんたう)(こと)()つてくれ、231(けつ)して喧嘩(けんくわ)はしない、232何程(なにほど)将軍(しやうぐん)御立腹(ごりつぷく)(あそ)ばしてもお(まへ)意見(いけん)できまるのだから、233武士(ぶし)言葉(ことば)二言(にごん)はないのだから、234サ、235ここで、236スツパリと久米彦(くめひこ)さまが()きなら、237()つたがよからうぞ』
238スガール『バラモン(ぐん)(かしら)をして(ござ)るやうなお(かた)には、239()んでも()(まか)(こと)出来(でき)ませぬ。240あなたは人民(じんみん)(かたき)です、241かやうな(ところ)へつれ()まれ、242あなた(がた)の、243(けだもの)弄物(おもちや)になるのなら、244()んだがマシで(ござ)います、245(ふたた)(おや)(うち)(かへ)らうなどとそんな未練(みれん)()ちませぬ、246エエ(けが)らはしい、247どうぞ(ころ)して(くだ)さいませ』
248鬼春(おにはる)『アハハハハ久米彦(くめひこ)殿(どの)249如何(いかが)(ござ)る。250(あま)り、251得意(とくい)になつて、252ホラも()けますまい』
253久米(くめ)『エエ仕方(しかた)がない、254牢獄(らうごく)へぶち()んでやろ、255()しからぬ(こと)()(やつ)だ。256そして(その)(はう)(かんが)(ひと)つに()つて、257(あね)のスミエルも如何(いか)なる運命(うんめい)(おちい)るか()れぬから覚悟(かくご)をせい』
258荒々(あらあら)しく呶鳴(どな)()(なが)ら、259久米彦(くめひこ)はスガールの()無理(むり)(ひつ)ぱつて、260(なが)隧道(とんねる)(つた)うて()く。261鬼春別(おにはるわけ)双手(もろて)をくみ、262(くび)をうなだれて、263独言(ひとりごと)
264『ああ(この)(みち)(ばか)りは如何(いか)なる権力(けんりよく)強迫(きやうはく)駄目(だめ)だなア、265(しか)(なが)一旦(いつたん)()()した(こと)266(この)(まま)ひつ()んでは(をとこ)()たぬ、267(また)久米彦(くめひこ)占領(せんりやう)されては、268尚々(なほなほ)(かほ)()たない、269(なん)とか工夫(くふう)をめぐらして、270スガールの(こころ)(うご)かす方法(はうはふ)はあるまいかなア』
271小声(こごゑ)(ささや)いてゐた。272一方(いつぱう)久米彦(くめひこ)牢獄(らうごく)(とう)ずると()(なが)ら、273(なが)隧道(とんねる)をくぐつて、274(まが)(かど)(くら)(ところ)()つた(とき)
275久米(くめ)『オイ、276スガール、277(まへ)本気(ほんき)であんな(こと)()つたのか』
278スガール『本気(ほんき)です(とも)279(わらは)(いのち)()しくはないんですから、280(いのち)()()してゐるのですもの』
281久米(くめ)『フーム、282さうか、283(おれ)(ため)(いのち)()()すと()ふのだな、284ヤ、285心底(しんてい)がみえた、286感心(かんしん)々々(かんしん)287(おれ)(その)つもりで(かげ)から可愛(かあい)がつてやろ』
288スガール『エエ気色(きしよく)(わる)い、289(たれ)があんたなんかに(いのち)差出(さしだ)(もの)がありますか、290(あく)張本人(ちやうほんにん)291馬賊(ばぞく)親方(おやかた)みたいな(をとこ)に、292()んでも(なび)きませぬワ』
293久米(くめ)『ハハハハハ、294ヒルナ、295カルナの(やつ)には()れたやうな(かほ)をして、296(うま)(だま)されたが、297此奴(こいつ)(また)あべこべだ。298()んな(やつ)本当(ほんたう)のものがあるのだ、299ここが(ひと)(ほね)折所(をりどころ)だ』
300自惚(うぬぼ)(なが)ら、301スガールの背中(せなか)()で、302(ねこ)なで(ごゑ)()して、
303久米(くめ)『オイ、304スガール、305さう(はら)()てるものぢやない、306(まへ)(わし)()(とほ)りにすれば何事(なにごと)都合好(つがふよ)くゆくのだ。307キツとお(まへ)のお(とう)さまやお(かあ)さまに()はしてやるから、308(わし)()(とほ)りになるのだ、309()いか、310よく(もの)(かんが)へてみよ』
311 スガールはとても抵抗(ていかう)した(ところ)(のが)れない、312一時(いつとき)のがれに(なん)とかゴマかしておかうと(にはか)思案(しあん)(さだ)め、313ワザと(うれ)しげに、
314スガール『ハイ、315本当(ほんたう)(わたし)精神(せいしん)はお(さつ)(くだ)さいませ、316将軍様(しやうぐんさま)(まへ)(ござ)いますから、317あのやうに()つてみたので(ござ)いますよ』
318久米(くめ)『アハハハハ、319ヤツパリ(わし)()(くろ)い、320さうだらう。321ヨシ、322それなら(わし)のここに特別室(とくべつしつ)があるから、323ここへ這入(はい)つて()れ、324将軍(しやうぐん)(はう)へは、325(まへ)牢獄(らうごく)へぶち()んだと(うま)()つておくから……』
326スガール『それは有難(ありがた)(ござ)いますが、327どうぞ(ねえ)さまと一緒(いつしよ)において(くだ)さいな、328別々(べつべつ)()るのも(さび)しう(ござ)いますから、329(わらは)(しん)(あい)して(くだ)さるのなら、330(こひ)しい(ねえ)さまと一緒(いつしよ)において(くだ)さるでせうねえ』
331久米(くめ)『さうだ、332二人(ふたり)おくのはチツと都合(つがふ)(わる)いけれど、333(ほか)ならぬお(まへ)(こと)だから、334()げて(ねがひ)(かな)へてやろ、335どうだ(うれ)しいか』
336スガール『ハイ(うれ)しう(ござ)います、337サ、338(はや)く、339何卒(どうぞ)(ねえ)さまを()んで()(くだ)さいませ』
340 久米彦(くめひこ)(うち)うなづき(なが)ら、341自分(じぶん)居間(ゐま)にスガールを(しの)ばせおき、342スミエルを牢屋(ひとや)から(ひつ)ぱり()し、343自分(じぶん)寝室(しんしつ)()(かへ)つた。
344スガール『あれマア(ねえ)さま、345()ひたう(ござ)いました。346()うしてゐらつしやいましたの』
347スミエル『ハ、348(くら)(くら)(ところ)一人(ひとり)()れられて、349モウ()なうかモウ()なうかと覚悟(かくご)してをつた(ところ)へ、350(あはれ)(ぶか)将軍様(しやうぐんさま)がお()(くだ)さいまして、351(いもうと)()はしてやらうと仰有(おつしや)つて此処(ここ)()れて()(くだ)さつたのよ。352将軍様(しやうぐんさま)353有難(ありがた)(ござ)います』
354久米(くめ)『ヨシヨシ、355モウ心配(しんぱい)はいらぬ、356(また)時機(じき)をみて、357(おや)(うち)(おく)つてやる。358前等(まへたち)二人(ふたり)(おほ)きな(こゑ)()さずに、359此処(ここ)(かく)れてゐるが(よろ)しい、360(また)鬼春別(おにはるわけ)将軍(しやうぐん)見付(みつ)かると大変(たいへん)だから、361(わし)一寸(ちよつと)軍務(ぐんむ)都合(つがふ)()つて、362陣営(ぢんえい)巡視(じゆんし)してくるから』
363()(なが)らピタリと()をしめ、364(そと)から(かぎ)をおろして、365どつかへ()つて(しま)つた。
366大正一二・二・二二 旧一・七 於竜宮館 松村真澄録)