霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一四章 暗窟(あんくつ)〔一四〇〇〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第54巻 真善美愛 巳の巻 篇:第3篇 猪倉城寨 よみ:いのくらじょうさい
章:第14章 暗窟 よみ:あんくつ 通し章番号:1400
口述日:1923(大正12)年02月22日(旧01月7日) 口述場所:竜宮館 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年3月26日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる] 主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2016-11-01 15:18:29
愛善世界社版:169頁 八幡書店版:第9輯 681頁 修補版: 校定版:170頁 普及版:78頁 初版: ページ備考:
001 鬼春別(おにはるわけ)双手(もろて)()み、002失望(しつばう)落胆(らくたん)(いろ)(うか)べて(なに)思案(しあん)(しづ)んでゐる。003そこへ(いさぎよ)くやつて()たのは久米彦(くめひこ)であつた。
004久米(くめ)将軍殿(しやうぐんどの)将軍殿(しやうぐんどの)
005()(こゑ)にハツと()がつき、
006鬼春(おにはる)『ヤア久米彦(くめひこ)殿(どの)007如何(いかが)(ござ)つたかな』
008久米(くめ)『いやもう、009()うにも、010()うにも仕方(しかた)のない阿婆摺(あばず)(をんな)(じつ)手古摺(てこず)りました。011()むを()(もつと)(ふか)暗窟(あんくつ)()()みました。012(さだ)めて今頃(いまごろ)(くたば)つて()るでせう』
013鬼春(おにはる)『それは(をし)(こと)(いた)したものだ。014そして(あね)のスミエルは如何(いかが)なさつたか』
015久米(くめ)彼奴(あいつ)荒縄(あらなは)(くく)つて暗窟(あんくつ)一緒(いつしよ)()()みました。016(さて)(さて)心地(ここち)のよい(こと)(ござ)いましたワイ。017アハハハハ』
018鬼春(おにはる)『ヤア、019それは(をし)(こと)(いた)したものだ。020(しか)しここでは(なん)だか気持(きもち)(わる)い。021一度(いちど)貴殿(きでん)御居間(おゐま)(うかが)はうと(おも)つてゐた(ところ)だ。022(これ)から(なに)かの御相談(ごさうだん)があるから貴殿(きでん)(しつ)まで(まゐ)りませう』
023 久米彦(くめひこ)自分(じぶん)(しつ)二人(ふたり)姉妹(しまい)(かく)して()(なが)ら、024(くら)陥穽(おとしあな)()()んで(ころ)して(しま)つたと(いつは)つたのだから、025鬼春別(おにはるわけ)()られては(たちま)露顕(ろけん)(おそれ)がある。026はて(こま)つた(こと)出来(でき)たワイ……と(おも)うたが流石(さすが)曲物(くせもの)027故意(わざ)平気(へいき)(かほ)をして、
028久米(くめ)吾々(われわれ)(ごと)(もの)(むさ)くるしい(うち)へお()(くだ)さるのは、029(じつ)(おそ)()ります。030()うか貴方(あなた)御居間(おゐま)(うかが)はして(もら)(わけ)には(まゐ)りますまいかな』
031鬼春(おにはる)『いや拙者(せつしや)居間(ゐま)(をとこ)ばかりで、032(なに)かにつけて不都合(ふつがふ)(ござ)る。033貴殿(きでん)居間(ゐま)(まゐ)れば女手(をんなで)二人(ふたり)(そろ)うてゐるのだから、034(まこと)(もつ)都合(つがふ)()いと(ぞん)じ、035それで貴殿(きでん)居間(ゐま)拝借(はいしやく)しようと(まを)したのだ』
036 久米彦(くめひこ)はハツと(かほ)(あか)らめ、037……鬼春別(おにはるわけ)何時(いつ)()にか自分(じぶん)居間(ゐま)二人(ふたり)(かく)してあるのを(さと)つたのかな、038こいつア大変(たいへん)だ……と(むね)(をど)らせ(なが)故意(わざ)空恍(そらとぼ)けて、
039久米(くめ)『ハハハハハ将軍殿(しやうぐんどの)随分(ずいぶん)(うたがひ)(ふか)(かた)(ござ)るな。040吾々(われわれ)もバラモン(ぐん)統率者(とうそつしや)041左様(さやう)卑怯(ひけふ)(こと)(いた)しませぬ。042何卒(どうぞ)人格(じんかく)見損(みそこな)はない(やう)にして(いただ)()いものですな』
043鬼春(おにはる)『ハハハハハ(いま)(まで)貴殿(きでん)人格(じんかく)見損(みそこな)つてゐたのだ。044今日(こんにち)(いよいよ)人格(じんかく)程度(ていど)(わか)つたので(ござ)る。045さう(おほ)せらるるなれば拙者(せつしや)(うたがひ)()らすために、046一度(いちど)貴殿(きでん)居間(ゐま)()けて()せて(もら)ひませう』
047久米(くめ)拙者(せつしや)居間(ゐま)拙者(せつしや)権利(けんり)(うち)(ござ)る。048如何(いか)上官(じやうくわん)だつて捜索(そうさく)する(わけ)には(まゐ)りますまい。049こればかりは(ひら)にお(ことわ)(まを)します』
050鬼春(おにはる)『いや、051(なん)()はれても拙者(せつしや)権利(けんり)(もつ)室内(しつない)捜索(そうさく)(いた)す』
052()(なが)らスタスタと隧道(すゐだう)(くぐ)つて久米彦(くめひこ)居間(ゐま)(すす)()く。
053 久米彦(くめひこ)は……(いま)露顕(あらは)れたが最後(さいご)054一悶錯(ひともんさく)(おこ)るか、055(ただし)自分(じぶん)(くび)にならねばなるまい。056一層(いつそう)(こと)057鬼春別(おにはるわけ)(うしろ)から一思(ひとおも)ひにやつつけて(しま)はうか。058いやいや将軍(しやうぐん)にも股肱(ここう)家来(けらい)沢山(たくさん)ある。059うつかり手出(てだ)しも出来(でき)まい、060ぢやと()つて(わが)居間(ゐま)(のぞ)かれたが最後(さいご)061(たちま)露顕(ろけん)するのだ。062はて、063如何(どう)したら()からうか……と刻々(こくこく)(せま)(むね)(くるし)みを(おさ)へて、064()(かく)れに()いて()く。
065 鬼春別(おにはるわけ)(すで)(すで)にドアーの入口(いりぐち)()いた。066そしてドアーに(みみ)()せて(なか)様子(やうす)(かんが)へてゐる。067スミエル、068スガールの姉妹(おとどひ)は、069そんな(こと)とは(ゆめ)にも()らず、070両親(りやうしん)のことや、071自分(じぶん)()不運(ふうん)(なげ)いて(なみだ)(そで)(うるほ)(なが)ら、072一生懸命(いつしやうけんめい)盤古大神(ばんこだいじん)(すく)(たま)へ、073(たす)(たま)へと(いの)つてゐる。
074 鬼春別(おにはるわけ)(かぎ)()つてゐないので、075()けて這入(はい)(わけ)にも()かず、076(また)部下(ぶか)(めい)じて()けさしては(かへつ)自分(じぶん)人格(じんかく)声望(せいばう)(おと)(おそ)れがあるので、077(こひ)(やつこ)となつた(かれ)は、078一生懸命(いつしやうけんめい)(くび)(かたむ)けて室内(しつない)様子(やうす)()いてゐる。079されど(なん)だかワンワンと(ひび)きがするばかりで(すこ)しも()きとれなかつた。
080 久米彦(くめひこ)将軍(しやうぐん)(やうや)くここに(あら)はれ、
081久米(くめ)鬼春別(おにはるわけ)(さま)082拙者(せつしや)室内(しつない)には(なに)(あや)しきものが()様子(やうす)ですかな』
083鬼春(おにはる)(たしか)(あや)しう(ござ)る。084さア(はや)(かぎ)()してここをお()()され。085さすれば貴殿(きでん)(うたがひ)()れ、086両人(りやうにん)(あひだ)確執(かくしつ)()けて結構(けつこう)(ござ)らう』
087久米(くめ)『なるほど、088それは結構(けつこう)(ござ)いますが、089生憎(あいにく)(かぎ)(おと)しましたので、090這入(はい)(わけ)にもゆきませぬ』
091鬼春(おにはる)(かぎ)がなくても(たた)(やぶ)れば()いのだ。092金鎚(かなづち)(なに)()つて()なさい』
093久米(くめ)(これ)()しからぬ。094拙者(せつしや)居間(ゐま)金鎚(かなづち)(もつ)(たた)(やぶ)るとは、095(けつ)して武士(ぶし)()るべき(みち)では(ござ)るまい。096いざ戦場(せんぢやう)()場合(ばあひ)()(かく)097平常(へいじやう)(おい)他人(ひと)居室(ゐま)(たた)(やぶ)るとは(じつ)乱暴狼藉(らんばうろうぜき)(まを)すもの、098(これ)ばかりは如何(いか)上官(じやうくわん)(めい)とても、099久米彦(くめひこ)承知(しようち)する(こと)出来(でき)ませぬ』
100鬼春(おにはる)『さうすると、101ヤツパリ(うたが)はしい物臭(ものぐさ)(こと)をしてゐられると()える。102拙者(せつしや)命令(めいれい)をお()きなくば、103只今(ただいま)より上官(じやうくわん)職権(しよくけん)(もつ)将軍職(しやうぐんしよく)(めん)じますから(その)覚悟(かくご)をなさい』
104久米(くめ)拙者(せつしや)(けつ)して貴殿(きでん)命令(めいれい)によつて将軍(しやうぐん)になつたのでは(ござ)らぬ、105大黒主(おほくろぬし)(さま)より(めい)()けて将軍(しやうぐん)(にん)ぜられたのだから、106いかいお世話(せわ)(ござ)る。107公務上(こうむじやう)(こと)()(かく)108私行上(しかうじやう)(まで)上官(じやうくわん)()(まは)理由(りいう)はありますまい。109久米彦(くめひこ)110(だん)じて(この)室内(しつない)()けさせませぬ』
111 かく両人(りやうにん)(あらそ)(ところ)へ、112(あわ)ただしく(はし)つて()たのはカーネルのマルタであつた。
113マルタ『将軍様(しやうぐんさま)114大変(たいへん)(こと)出来(しゆつたい)(いた)しました』
115鬼春(おにはる)大変(たいへん)とは(なん)だ』
116マルタ『ハイ、117三千(さんぜん)兵士(へいし)118一人(ひとり)(のこ)らず真裸体(まつぱだか)となり、119(なん)だか(わけ)(わか)らぬ(こと)(まを)しまして事務所(じむしよ)(たた)(やぶ)槍剣(さうけん)()(いし)()乱暴狼藉(らんばうろうぜき)(およ)んでゐます。120愚図々々(ぐづぐづ)してゐれば(この)室内(しつない)にも(はい)るかも()れませぬから何卒(なにとぞ)両将軍様(りやうしやうぐんさま)御威勢(ごゐせい)によりまして御鎮圧(ごちんあつ)(ねが)ひます、121到底(たうてい)吾々(われわれ)(ちから)には(およ)びませぬ。122(おも)ふに三五教(あななひけう)(やつ)魔法(まはふ)使(つか)つて(わが)(ぐん)(なや)ますものと(かんが)へます』
123 (この)注進(ちうしん)鬼春別(おにはるわけ)124久米彦(くめひこ)両将軍(りやうしやうぐん)私行上(しかうじやう)争論(いさかひ)はケロリと(わす)れ、125一目散(いちもくさん)岩窟(いはや)入口(いりぐち)()()し、126四辺(あたり)()れば三千(さんぜん)軍隊(ぐんたい)八九分通(はちくぶどほ)真裸体(まつぱだか)となり、127(わけ)(わか)らぬ(こと)をガヤガヤ(さへづ)(なが)ら、128半永久的(はんえいきうてき)建物(たてもの)小口(こぐち)から、129メリメリメリ バチバチバチと(たた)(つぶ)してゐる。130両将軍(りやうしやうぐん)大喝(たいかつ)一声(いつせい)『コラツ』と()(なが)大勢(おほぜい)(なか)()()んだ。131妖瞑酒(えうめいしゆ)(をか)された一同(いちどう)両将軍(りやうしやうぐん)姿(すがた)()るより吾先(われさき)にと(むら)がり(きた)り、132『ヨイシヨ ヨイシヨ』と()(なが)胴上(どうあ)げをしたり、133地上(ちじやう)()げたり、134あらむ(かぎ)りの乱暴狼藉(らんばうろうぜき)をなし、135(つひ)両将軍(りやうしやうぐん)大勢(おほぜい)(もの)身体中(からだぢう)()(にじ)られ、136(ほと)んど(いき)()()えむばかりになつてゐた。
137 そこへチュウニック姿(すがた)のデク、138シーナの両人(りやうにん)(いかめ)しく(けん)()(なが)悠々(いういう)として(あら)はれ(きた)り、139遠慮会釈(ゑんりよゑしやく)もなく岩窟内(がんくつない)(しの)()り、140スミエル、141スガール両人(りやうにん)所在(ありか)何処(いづこ)ぞと(さが)してゐる。142岩窟内(がんくつない)(ひそ)んでゐた数多(あまた)のバラモン(ぐん)二人(ふたり)服装(ふくさう)()(べつ)(あや)しみもせず、143(おのおの)軍務(ぐんむ)従事(じゆうじ)してゐる。144(また)もや真裸体(まつぱだか)半狂乱軍(はんきやうらんぐん)はドヤドヤと岩窟内(がんくつない)()(きた)り、145(あた)るを(さいは)暴狂(あれくる)ふ。146(やうや)くにして妖瞑酒(えうめいしゆ)()ひも()め、147一同(いちどう)軍人(ぐんじん)正気(しやうき)(ふく)し、148()てた(けん)(ひろ)()げたり、149谷川(たにがは)(なが)した衣類(いるゐ)彼方此方(あちらこちら)(かか)つてゐるのを(ひろ)ひあげ、150日光(につくわう)()(かわ)かし両将軍(りやうしやうぐん)(たす)けて(もと)居間(ゐま)(おく)(とど)けた。151一時(いちじ)妖瞑酒(えうめいしゆ)(いきほひ)狂態(きやうたい)(えん)じた数多(あまた)軍隊(ぐんたい)(いよいよ)()()めて一層(いつそう)軍規(ぐんき)厳重(げんぢう)にする(こと)となつた。152道晴別(みちはるわけ)のデク、153(およ)びシーナは(やうや)くにしてスミエル、154スガールの所在(ありか)(さぐ)り、155門扉(もんぴ)(たた)()つて(なか)()()り、156両人(りやうにん)(たす)けて室内(しつない)()()さうとする(とき)157前後左右(ぜんごさいう)隧道(すゐだう)より(あつ)まり(きた)つたバラモン(ぐん)(もろ)くも(しば)られ、158四人(よにん)別々(べつべつ)(くら)岩窟(いはや)(なか)(おと)()まれて(しま)つた。
159 鬼春別(おにはるわけ)160久米彦(くめひこ)(はじ)めスパール、161エミシ、162シヤム、163マルタの幹部連(かんぶれん)は、164岩窟内(いはやない)(もつとも)(ひろ)将軍事務室(しやうぐんじむしつ)(あつま)つて、165今度(こんど)変事(へんじ)()種々(しゆじゆ)(その)原因(げんいん)調(しら)べてゐる。
166鬼春(おにはる)三千(さんぜん)軍隊(ぐんたい)(ほとん)九分九里(くぶくりん)(まで)真裸体(まつぱだか)になり、167(かく)(ごと)狂態(きやうたい)(えん)じたのは(けつ)して普通(ふつう)(こと)ではあるまい。168(これ)には(なに)かの原因(げんいん)があるだらう。169汝等(なんぢら)よく調査(てうさ)をして、170(ふたた)びかかる不始末(ふしまつ)がない(やう)注意(ちうい)して()れたがよからうぞ』
171スパール『左様(さやう)(ござ)います。172(なん)とも合点(がつてん)()かぬ(こと)ばかり、173大方(おほかた)三五教(あななひけう)治国別(はるくにわけ)一派(いつぱ)が、174妖術(えうじゆつ)でも使(つか)つて(わが)軍営(ぐんえい)攪乱(かくらん)させ、175将軍(しやうぐん)生捕(いけどり)にする計劃(けいくわく)ではあるまいかと(ぞん)じて()ります』
176エミシ『(はじ)めの(うち)(わづ)かの四五人(しごにん)発狂者(はつきやうしや)でありましたが、177次第々々(しだいしだい)伝染(でんせん)してあの(やう)になつたのです。178三五教(あななひけう)には妖術(えうじゆつ)(など)はありませぬ。179(おそ)らく(この)(やま)()妖幻坊(えうげんばう)一味(いちみ)がなせしもので(ござ)りませう。180()第一(だいいち)にバラモン(がみ)(まつ)一生懸命(いつしやうけんめい)祈願(きぐわん)()らさねば、181(また)斯様(かやう)(こと)出来(でき)ては危険(きけん)ですからな』
182久米(くめ)『あの(あや)しき二人(ふたり)軍人(ぐんじん)183牢獄(らうごく)(とう)じて()いた(やつ)184もしや三五教(あななひけう)間諜(まはしもの)では(ござ)るまいか』
185鬼春(おにはる)『ハハハハハ、186これだけ沢山(たくさん)軍隊(ぐんたい)(もつ)(かた)めた(ところ)へ、187一人(ひとり)二人(ふたり)間諜(まはしもの)這入(はい)つて()(ところ)(なに)出来(でき)るものか。188(この)(はう)(さつ)する(ところ)によれば、189玉木村(たまきむら)豪農(がうのう)テームスの(いへ)から(さら)つて()たと()ふスミエル、190スガールの二人(ふたり)(をんな)こそ(あや)しきものだと(おも)ふ。191その証拠(しようこ)には(かれ)牢獄(らうごく)へぶち()んだ最後(さいご)192味方(みかた)兵士(へいし)狂態(きやうたい)恢復(くわいふく)したではないか』
193エミシ『成程(なるほど)194さう(うけたま)はればさうに間違(まちが)ひは(ござ)りませぬ。195陣中(ぢんちう)(をんな)引入(ひきい)れる(ごと)きは(かみ)(ゆる)(たま)はざる(ところ)なれば、196大自在天(だいじざいてん)(さま)(いまし)めの()めに、197ああ()手続(てつづ)きを()吾々(われわれ)一同(いちどう)()をつけて(くだ)さつたのかも()れませぬ。198それについても、199あの二人(ふたり)兵士(へいし)(わが)(ぐん)服装(ふくさう)して()りますれど、200あれも(なん)だか(あや)しいものです。201(この)(やま)(ぬし)(ばけ)てゐるのかも(わか)りますまい』
202鬼春(おにはる)(けつ)して彼等(かれら)四人(よにん)相手(あひて)になつてはならぬぞ。203ああして押込(おしこ)めて()けば、204(ふたた)悪戯(いたづら)(いた)しますまい。205久米彦(くめひこ)殿(どの)如何(いかが)(ござ)る。206御意見(ごいけん)(うけたま)はり()い』
207久米(くめ)成程(なるほど)208どう(かんが)へても合点(がつてん)()かぬ(こと)(ござ)る。209将軍(しやうぐん)(おほ)せの(ごと)彼等(かれら)はいらはぬ(こと)(いた)して、210()(かく)軍隊(ぐんたい)緊粛(きんしゆく)(はか)り、211如何(いか)なる(てき)()(きた)るとも、212天与(てんよ)要害(えうがい)(やく)(これ)だけの味方(みかた)があれば大丈夫(だいぢやうぶ)ですから、213軍隊(ぐんたい)一般(いつぱん)注意(ちうい)(あた)ふる(こと)(いた)しませう』
214 さていろいろと()んだり(くづ)したり、215ラートの結果(けつくわ)(たがひ)相戒(あひいまし)めて(かは)つたものが()たら(ちか)づけない(こと)()めて一先(ひとま)会議(くわいぎ)()ぢた。216それより(たがひ)相戒(あひいまし)軍規(ぐんき)厳粛(げんしゆく)(この)要害(えうがい)上下一致(しようかいつち)(うへ)死守(ししゆ)する(こと)となつた。
217大正一二・二・二二 旧一・七 於竜宮館 北村隆光録)