霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一六章 三番叟(さんばそう)〔一一二〇〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第41巻 舎身活躍 辰の巻 篇:第3篇 北光神助 よみ:きたてるしんじょ
章:第16章 第41巻 よみ:さんばそう 通し章番号:1120
口述日:1922(大正11)年11月12日(旧09月24日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年6月15日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
いざ二人きりになると、ヤスダラ姫は思いのたけを王にぶつけ、自分とサマリー姫のどちらを取るか、王に迫った。
王は当惑して、ヤスダラ姫の誘惑が北光神の耳に入っていないかとあたりをうかがおうとしたとき、ヤスダラ姫は王の手を引いた。王は不意をつかれて倒れ、人事不省になってしまった。
ヤスダラ姫は狂気に陥り、懐剣を抜いて自害しようとした。リーダーはとっさに室内に入り、姫の剣を奪い、姫を叱咤して正気付かせた。その間に王は呻きながら蘇生した。
王とヤスダラ姫は、北光神は二人の心を見透かしていると観念し、何事も北光神の指示に任せることにした。王と姫は北光神への面会を依頼すべくリーダーを使者に立てた。
リーダーは王と姫の仲を茶化しながら、北光神の居間へ進んで行った。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm4116
愛善世界社版:224頁 八幡書店版:第7輯 612頁 修補版: 校定版:235頁 普及版:105頁 初版: ページ備考:
001 北光(きたてる)(かみ)竹野姫(たけのひめ)002竜雲(りううん)003テームス、004リーダー(たち)()きつれ、005()()かして一間(ひとま)引上(ひきあ)げて(しま)つた。006(あと)にセーラン(わう)007ヤスダラ(ひめ)(しば)沈黙(ちんもく)(まく)をつづけてゐた。008ヤスダラ(ひめ)心臓(しんざう)鼓動(こどう)金剛力(こんがうりき)()して鎮静(ちんせい)しながら、009(かほ)にパツと紅葉(もみぢ)()らし、010覚束(おぼつか)口調(くてう)にて、
011『セーラン王様(わうさま)012(ひさ)しう(ござ)いました。013御壮健(ごさうけん)なお(かほ)(はい)(うれ)しう(ぞん)じます』
014(わづか)()つたきり、015(はづか)しさうに(うつ)むいて(かほ)をかくす。016セーラン(わう)()をしばたたきながら、
017貴女(あなた)随分(ずゐぶん)(つら)(おも)ひをしたでせうなア。018(わたし)もテルマンの(くに)(そら)(なが)めて、019(わた)()(かり)(おも)ひを(おく)つたことは幾度(いくたび)()れませぬ。020(わたし)真心(まごころ)貴女(あなた)精霊(せいれい)(つう)じたでせうなア』
021『ハイ、022一夜(ひとよ)さも王様(わうさま)御夢(おゆめ)()ないことはありませぬ。023今日(けふ)ここで貴方(あなた)にお()にかかるのは(ゆめ)(やう)(ござ)います。024(ゆめ)両人(ふたり)()()るのではありますまいか。025(ゆめ)なら(ゆめ)で、026どこまでも()めない(やう)にあつて()しいものですワ』
027(けつ)して(ゆめ)ではありますまい、028現実(げんじつ)でせう、029(しか)(なが)二人(ふたり)(あひだ)(ゆめ)より果敢(はか)ないもので(ござ)いました。030(いま)北光(きたてる)神様(かみさま)からいろいろと御理解(ごりかい)(うけたま)はり、031今後(こんご)どうしたらよからうかと思案(しあん)にくれてゐる(ところ)です』
032仮令(たとへ)天律(てんりつ)(やぶ)つてもかまはぬぢやありませぬか。033一分間(いつぷんかん)でも自分(じぶん)本能(ほんのう)満足(まんぞく)させることが出来(でき)れば、034()んでも()ちても(かま)ひませぬ。035二人(ふたり)()(くに)(そこ)(くに)へおとされようとも、036貴方(あなた)()()()うてゆくのならば、037(かま)はぬぢやありませぬか』
038とマサカの(とき)になれば、039大胆(だいたん)なは(をんな)である。040ヤスダラ(ひめ)最早(もはや)(かみ)(をしへ)(なに)(わす)れて(しま)ひ、041捨鉢(すてばち)気味(ぎみ)になつて、042(わう)決心(けつしん)煽動(せんどう)したり(うなが)したりしてゐる。
043成程(なるほど)044貴女(あなた)(こころ)としてはさう(おも)はれるのも(もつと)もです。045(わたし)だつて貴女(あなた)(おも)(こころ)(けつ)して(おと)りませぬ。046(しか)(なが)ら、047そこを(こら)(しの)ぶのが人間(にんげん)(つと)めだ。048(つき)村雲(むらくも)(はな)(あらし)049(おも)ふやうにゆかぬは浮世(うきよ)(つね)050如何(どう)なりゆくも神様(かみさま)御摂理(ごせつり)051かうして半時(はんとき)()でも、052一生(いつしやう)()はれないと(おも)つてゐた相思(さうし)男女(だんぢよ)()うて、053(こころ)のたけを(かた)()うのも、054神様(かみさま)(ふか)きお(なさけ)055(わたし)はこれで最早(もはや)一生(いつしやう)()ふことが出来(でき)なくても、056(けつ)して神様(かみさま)(うら)んだり、057()(なげ)いたりは(いた)しますまい』
058貴方(あなた)(こひ)(じつ)淡白(たんぱく)なものですなア。059それで貴方(あなた)最早(もはや)満足(まんぞく)なされましたか。060エヽ(なさけ)ない、061そんな御心(おこころ)とは(ゆめ)にも()らず、062(なん)とかして貴方(あなた)(めぐ)()ひ、063海山(うみやま)(はなし)(たがひ)打明(うちあ)け、064(あら)ゆる艱難(かんなん)妨害(ばうがい)()へ、065仮令(たとへ)(とら)(おほかみ)()(たけ)深山(みやま)(おく)でも、066夫婦(ふうふ)となつて(こひ)本望(ほんまう)()げねばおかぬと、067矢竹心(やたけごころ)(はげ)まされ、068剣呑(けんのん)荒野原(あらのはら)をわたり、069イルナの(みやこ)()(かへ)途中(とちう)070神様(かみさま)御引合(おひきあは)せにてここに(たす)けられたので(ござ)います。071どうぞそんな()(よわ)いことを仰有(おつしや)らずに金剛不壊的(こんごうふゑてき)大度胸(だいどきよう)()して、072両人(りやうにん)目的(もくてき)貫徹(くわんてつ)(はか)つて(くだ)さいませ。073貴方(あなた)にはサマリー(ひめ)(さま)といふ最愛(さいあい)奥様(おくさま)がお(ひか)(あそ)ばして(ござ)るのですから、074無理(むり)(ござ)いますまい。075イヤ(わたし)(まよ)うて()りました。076最早(もはや)貴方(あなた)(こころ)昔日(せきじつ)(こころ)では(ござ)いますまい。077(まこと)にすまないことを申上(まをしあ)げました。078どうぞサマリー(ひめ)(さま)幾久(いくひさ)しく偕老同穴(かいらうどうけつ)をお(ちぎ)りなさいませ。079(わたし)幽界(あのよ)とやらへ(まゐ)つて、080御夫婦(ごふうふ)のお()(うへ)(まも)りませう』
081()(はな)ち、082ワツとばかりに(わう)(ひざ)()(くづ)れる。083(わう)はハタと当惑(たうわく)し、084(いま)泣声(なきごゑ)がもしや北光(きたてる)神様(かみさま)のお(みみ)()つては()ないであらうかと、085ツと()つて(へだ)ての()押開(おしひら)き、086あたりに(ひと)のあるか、087なきかを(しら)べむとするを、088ヤスダラ(ひめ)(わう)(われ)見捨(みす)てて()()(たま)ふならむと早合点(はやがつてん)し、089(ちから)(まか)せて(わう)()をグツと(うしろ)()いた。090(わう)不意(ふい)(ひめ)()をひかれた途端(とたん)に、091タヂタヂと二足三足(ふたあしみあし)(あと)しざりし、092(ひめ)(ひざ)(つまづ)き、093パタリと(その)()(たふ)れ、094岩壁(がんぺき)(あたま)()ち、095ウンと一声(ひとこゑ)096人事不省(じんじふせい)(おちい)つて(しま)つた。097ヤスダラ(ひめ)(この)(さま)()るより、
098『あゝ如何(どう)しよう 如何(どう)しよう』
099狂気(きやうき)(ごと)室内(しつない)()(めぐ)り、100(わう)(かしら)()()て、
101『モシ、102王様(わうさま)103(ゆる)して(くだ)さいませ。104(けつ)して貴方(あなた)をこかさうと(おも)つたのぢや(ござ)いませぬ。105怪我(けが)(ござ)います。106貴方(あなた)ばかり(けつ)して(ころ)しは(いた)しませぬ。107(わたし)もキツトお(あと)(した)ひます』
108()ひながら、109スラリと懐剣(くわいけん)(さや)(はら)ひ、110つくづくと打眺(うちなが)め、
111果敢(はか)なきは(ゆめ)浮世(うきよ)()りながら
112かかるなげきは(おも)はざりけり。
113恋慕(こひした)(きみ)()ひしと(おも)()
114()()(この)()(わか)れとなるか。
115(かな)しさは(ちひ)さき(むね)()ちあふれ
116()(なみだ)さへ()でぬ(われ)なり。
117ゆるしませセーラン(わう)神司(かむづかさ)
118やがてはわれも御供(みとも)(つか)へむ。
119北光(きたてる)(かみ)(みこと)よヤスダラ(ひめ)
120(こころ)(いや)しとさげすみ(たま)ふな』
121()ひながら、122アワヤ(わが)(のど)につき()てむとするを、123(この)(とき)戸外(こがい)()つて様子(やうす)(うかが)ひゐたるリーダーは(あわただ)しく飛込(とびこ)(きた)り、124矢庭(やには)(ひめ)懐剣(くわいけん)(うば)()り、125(こゑ)(はげ)まし、
126『ヤスダラ(ひめ)殿(どの)127狂気(きやうき)()されたか、128かかる神聖(しんせい)なる霊場(れいぢやう)(おい)て、129無理心中(むりしんぢう)とは(なん)のこと、130天則違反(てんそくゐはん)大罪(だいざい)となる(こと)をお(わきま)へなさらぬか。131そんな御心(おこころ)とは()らず、132貴女(あなた)御身(おんみ)保護(ほご)し、133テルマン(ごく)(いのち)カラガラ逃出(にげだ)し、134猛獣(まうじう)(たけ)(くる)荒野原(あらのはら)をやうやう()えて此処(ここ)(まで)(とも)をしながら、135勿体(もつたい)なや王様(わうさま)(ころ)し、136貴女(あなた)(また)ここで御自害(ごじがい)をなさるとは(なん)()(なさけ)ないお(こころ)(ござ)いますか。137八岐(やまた)大蛇(をろち)金毛九尾(きんまうきうび)悪狐(あくこ)憑依(ひようい)され、138そんな悪心(あくしん)をお()しなさつたのでせう。139モウかうなる(うへ)(この)リーダーが承知(しようち)(いた)しませぬ。140王様(わうさま)(かたき)()たねばおきませぬ』
141(こゑ)(ふる)はせ、142(しか)りつける(やう)()ふ。143(わう)は「ウンウン」と(うめ)きながら、144(あたま)をかかへて起上(おきあが)り、
145『あゝヤスダラ(ひめ)146そこに()たか、147(なに)()いてゐる。148ヤア(なんぢ)何者(なにもの)だ、149凶器(きやうき)(もつ)(ひめ)脅迫(けうはく)せむとするか。150不届(ふとど)至極(しごく)痴者(しれもの)151(ゆる)しは(いた)さぬぞ。152そこ(うご)くな』
153(こゑ)(とが)らせ()めつければ、154リーダーは(わう)蘇生(そせい)(うれ)しさと誤解(ごかい)(おそ)ろしさに、155狼狽(うろた)へながら、
156『メヽ滅相(めつさう)な、157ここ(まで)(とも)して()(ひめ)(さま)(なに)しに(ころ)しませう。158そんな誤解(ごかい)をして(もら)つちや、159(この)リーダーの立場(たちば)(ござ)いませぬ。160(ひめ)(さま)狂気(きやうき)(あそ)ばして貴方様(あなたさま)(ころ)し、161自分(じぶん)自害(じがい)なさる覚悟(かくご)だと(おも)飛込(とびこ)んで、162たつた(いま)(ひめ)(さま)短刀(たんたう)(うば)ひ、163意見(いけん)申上(まをしあ)げてゐた(ところ)(ござ)います』
164王様(わうさま)165(うれ)しや()がつきましたか、166(この)リーダーは(けつ)して悪人(あくにん)では(ござ)いませぬ。167どうぞ(ゆる)してやつて(くだ)さいませ』
168『あゝさうであつたか、169(まこと)にすまなかつた。170リーダーとやら(まつた)誤解(ごかい)だから(ゆる)してくれ』
171『ハイ有難(ありがた)(ござ)います、172(わか)りになればこんな結構(けつこう)なことは(ござ)いませぬ』
173『こんな(さわ)ぎは北光(きたてる)神様(かみさま)()れたら大変(たいへん)だが、174もしやお(わか)りになつては()なからうかなア』
175『ヘーヘー、176スツカリと(わか)つて()ります。177北光(きたてる)神様(かみさま)竹野姫(たけのひめ)さまも竜雲(りううん)さまも、178(つぎ)()貴方(あなた)(がた)二人(ふたり)のお(はなし)(みみ)をすましてお()きになつてゐる……とは(まを)しませぬ……だらうと(かんが)へます』
179立聞(たちぎ)きは不道徳(ふだうとく)(きは)みだ。180あれ(くらゐ)神人(しんじん)がどうしてそんなことを(あそ)ばすものか。181ヤスダラ(ひめ)182安心(あんしん)をしたがよからうよ』
183北光(きたてる)神様(かみさま)天眼通力(てんがんつうりき)()たる生神様(いきがみさま)184何程(なにほど)(とほ)(へだ)たつて()りましても、185()()(ごと)くに御覧(ごらん)になつて()ります。186(また)吾々(われわれ)(げん)得意(とくい)天耳通(てんじつう)一言(ひとこと)()らさず、187()きになつてをるでせう。188あゝ(はづか)しいことになつて()ました』
189北光(きたてる)神様(かみさま)天耳通(てんじつう)190天眼通(てんがんつう)(わか)つてゐるのなら、191なぜ其方(そなた)はあの(やう)大胆(だいたん)なことを()つたのだ』
192(わたし)()はなくても、193北光(きたてる)神様(かみさま)(こころ)のドン(ぞこ)まで()すかしてゐられますから、194()つても()はいでも(おな)じことですワ』
195(はづか)しいことだなア。196イルナの国王(こくわう)北光(きたてる)神様(かみさま)(まへ)()ては(ざう)(たい)する(ねづみ)のやうなものだ。197いかにもこんなことでは、198あの(ちひ)さい(くに)でさへも(をさ)まりさうなことがない。199国王(こくわう)だと()つても(わづ)かに五万(ごまん)六万(ろくまん)人間(にんげん)(かしら)だから(ちひ)さいものだ。200北光(きたてる)神様(かみさま)諸王(しよわう)超越(てうゑつ)し、201天地(てんち)意志(いし)代表(だいへう)なさる生神様(いきがみさま)だから(たい)したものだ。202モウ(この)(うへ)(はぢ)外聞(ぐわいぶん)もいつたものでない、203何事(なにごと)北光(きたてる)神様(かみさま)御指図(おさしづ)(まか)さうではないか』
204『ハイ、205さう(いた)しませう、206(しか)(なが)吾々(われわれ)二人(ふたり)都合(つがふ)よく()はして(くだ)さるでせうか』
207(また)そんな(こと)()つてはいけませぬ。208リーダーが()いてゐるぢやありませぬか』
209王様(わうさま)210(この)リーダーは()もあれば(なみだ)もあり、211(なさけ)()つて()円満(ゑんまん)具足(ぐそく)下僕(しもべ)(ござ)います。212ヤスダラ(ひめ)(さま)(こと)ならどんな(こと)でも(いと)ひませぬ。213(なん)なと仰有(おつしや)いませ、214(ただ)一言(ひとこと)だつて御両人(ごりやうにん)秘密(ひみつ)()らすやうな野呂馬(のろま)では(ござ)いませぬ。215シヤールの主人(しゆじん)(そむ)き、216(ひめ)(さま)御意志(ごいし)賛成(さんせい)して、217(いのち)がけの仕事(しごと)をやつて()(くらゐ)(ござ)いますから、218大丈夫(だいぢやうぶ)です。219なア(ひめ)(さま)220貴女(あなた)(わたし)(こころ)をよく御存(ごぞん)じで(ござ)いませう』
221『ハア、222()(わか)つてゐる。223北光(きたてる)神様(かみさま)の、224(まへ)(ひと)都合(つがふ)(うかが)つて()てくれないか、225(これ)から御面会(ごめんくわい)がしたいから……』
226『ハイ承知(しようち)(いた)しました』
227とニタリと(わら)ひ、228(この)()立出(たちい)で、229二三間(にさんげん)ばかり()つた(ところ)で、230一寸(ちよつと)()()まり、
231(なん)(うま)くおまき(あそ)ばしますワイ。232(ひさ)しぶりにお二人(ふたり)対面(たいめん)(あそ)ばし、233(あま)(なか)がよすぎて()ぬの(はし)るの(ひま)をくれのと、234恋仲(こひなか)にはありがちの痴話喧嘩(ちわげんくわ)を、235面白(おもしろ)半分(はんぶん)にやつて(ござ)つた真最中(まつさいちう)に、236(おれ)()()かないものだから、237本当(ほんたう)喧嘩(けんくわ)だと(おも)つて飛込(とびこ)んだのが間違(まちが)ひだ。238(うま)(おれ)をまいて、239意茶(いちや)つきをやらうといふのだなア。240ヨシ合点(がつてん)だ。241そんなことの()()かぬリーダーぢやない。242そんな(あたま)(わる)呑込(のみこ)みの(わる)粗製(そせい)濫造(らんざう)頭脳(づなう)とは(ちが)ひますワイ。243イヒヽヽヽ、244さぞ(わか)れて(ひさ)しき二人(ふたり)逢瀬(あふせ)245()いつ口説(くど)いつ、246(いだ)いたり、247()ねたり、248つめつたり、249(たた)いたり、250(おも)存分(ぞんぶん)(ひさ)しぶりでイチヤつかして()げようかい。251(はや)北光(きたてる)神様(かみさま)御都合(ごつがふ)(うかが)つて()いなんて、252(うま)辞令(じれい)(とほ)ざけようといふ賢明(けんめい)行方(やりかた)だ。253コリヤあわてて正直(しやうぢき)()くと(かへ)つて御迷惑(ごめいわく)になるかも()れぬ、254三足(みあし)()つては二足(ふたあし)(もど)り、255二足(ふたあし)()つては三足(みあし)(もど)り、256オツトヽヽそんな(こと)して()ては、257何時(いつ)(まで)(おな)(ところ)()らねばなるまい。258(しか)(なが)ら、259そこが(すゐ)といふものだ。260さぞ(たの)しい(うれ)しいことだらうなア。261(おれ)(なん)だか(うれ)しうなつて()た。262ウツフヽヽヽ』
263隧道(すゐだう)停立(ていりつ)して、264(ひと)(ささや)いてゐる。265ヤスダラ(ひめ)()(とが)めたか、266リーダーが立聞(たちぎき)して()つては(はづか)しいと()をまはし、267()をガラリとあけて(そと)(のぞ)けば、268リーダーは二三間(にさんげん)(はな)れた(ところ)停立(ていりつ)して、269(しき)りに(くび)(たて)にふり、270(よこ)にふり、271(した)()したり、272眉毛(まゆげ)()でたりやつてゐる。273ヤスダラ(ひめ)(ほそ)(こゑ)で、
274『コレコレ、275リーダー、276(なに)をしてゐるのだい。277(はや)くお使(つか)ひに()つて()(くだ)さらぬか。278(こま)るぢやありませぬか、279王様(わうさま)がお待兼(まちかね)ぢやのに』
280『ハイ、281承知(しようち)(いた)しました。282()いては(こと)仕損(しそん)ずる。283()かねば(こと)()()はぬ。284あちら()てればこちらが()たぬ。285両方(りやうはう)()てれば()()たぬといふ、286(まこと)(なさけ)との締木(しめぎ)にかかり、287(やや)思案(しあん)にくれにけり……といふ為体(ていたらく)(ござ)います。288本当(ほんたう)(いそ)いで()つてもいいのですか、289(ひめ)(さま)290御迷惑(ごめいわく)になりは(いた)しませぬか。291正直(しやうぢき)結構(けつこう)ですが、292(あま)融通(ゆうづう)()かぬ正直(しやうぢき)(かへつ)迷惑(めいわく)をするものですからなア』
293『コレ、294リーダー、295そんな御親切(ごしんせつ)はやめて(くだ)さい。296前等(まへら)下司(げす)(こひ)とは行方(やりかた)(ちが)ひますぞや。297阿呆(あはう)らしい、298仕方(しかた)のない(をとこ)だなア』
299『ヘン仰有(おつしや)いますワイ。300下司(げす)(こひ)だと……コヒ()いて(あき)れますワイ。301(こひ)(どころ)(こし)まで鮒々(ふなふな)になつてゐるくせに、302(こひ)上下(じやうげ)(へだ)てなしといふぢやないか。303上司(じやうす)(こひ)下司(げす)(こひ)もあつたものか、304(こひ)はヤツパリ(こひ)だ。305リーダーはヤツパリ、306リーダーだ』
307『コレコレ、308(はや)()つて()(くだ)さらぬか、309(なに)をブツブツ()つて()るのだい』
310『ハイ、311何分(なにぶん)岩窟(がんくつ)(なか)(みづ)()れて()るものですから、312(こひ)(ふな)(およ)ぎにくうて早速(さつそく)游泳(いうえい)出来(でき)ませぬワイ。313(こひ)(うみ)游泳術(いうえいじゆつ)上手(じやうづ)貴女(あなた)ならば()らぬこと、314(なん)だか(めう)怪体(けつたい)()になつて、315(わたし)(こし)(まで)が……ドツコイ……シヨのドツコイシヨ、316フナフナになつて、317(おも)(やう)(ある)けませぬがなア』
318『エヽ勝手(かつて)にしなさい、319モウ(よろ)しい、320大方(おほかた)法界悋気(ほふかいりんき)でもしてゐるのであらう』
321とピシヤツと岩戸(いはと)()めて(しま)つた。
322『アハヽヽヽ、323今頃(いまごろ)(いろ)(くろ)(じやう)どのと(しろ)(うば)どのが、324()()るとも、325(くも)るとも、326()アるは(たき)(みづ)(たき)(みづ)327たアきを(のぼ)りゆく(こひ)のみち、328(こひ)上下(じやうげ)(へだ)てなし、329法界悋気(ほふかいりんき)をするぢやないが、330(まへ)(わたし)二人(ふたり)(よろこ)びは、331ほうかいへはやらじ、332おんはカタカタ、333エンはカタカタと三番叟(さんばそう)最中(さいちう)だらう。334エヘヽヽヽ、335イヒヽヽヽ、336ウフヽヽヽ』
337(めう)(こし)をブカつかせながら、338北光(きたてる)(かみ)居間(ゐま)をさして、339チヨコチヨコ(ばし)りに(すす)()く。
340大正一一・一一・一二 旧九・二四 松村真澄録)