霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第六章 舞踏怪(ぶたふくわい)〔一三二一〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第51巻 真善美愛 寅の巻 篇:第1篇 霊光照魔 よみ:れいこうしょうま
章:第6章 舞踏怪 よみ:ぶとうかい 通し章番号:1321
口述日:1923(大正12)年01月25日(旧12月9日) 口述場所: 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年12月29日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
松姫の館には、お千代とお菊と三人が集まって何事かささやいていた。勇敢なスマートが松姫の危難をすくったことなどが話題に上った。
するとどやどやと表に人の足音が聞こえてきた。妖幻坊と高姫は、初と徳が酒の勢いで杢助と高姫の名をかたり、勝手に乱暴を働いたことにして、見せしめに二人の尻を三百叩くという芝居をしにやってきたのであった。妖幻坊と高姫は、数を数えながら二人の尻を叩くふりをして、地面をたたいた。
そのうちに、妖幻坊と高姫の手が狂って、棍棒が初と徳の尻に当たりだした。二人は悲鳴を上げ文句を言ったが、妖幻坊と高姫は辛抱するようにと言うだけで芝居を続けた。
お菊とお千代は何事かと思って外に出てみれば、右のとおりの様子であった。二人は手を叩いて面白がり、八百長だとはやし立てて、面白い芝居だと言って松姫を呼んだ。松姫は気がかりで外に出てきた。
妖幻坊と高姫は、八百長だと思われないように力を込めて二人の尻を叩きだした。たちまち二人の尻は腫れ上がり、身動きできずに目を回してしまった。松姫は驚いて妖幻坊と杢助を押しとどめた。
高姫と松姫は再会の挨拶を交わし、妖幻坊も杢助のふりをして松姫に挨拶した。初と徳は、ようやく松姫の仲裁によって制裁を免除された。松姫はお千代とお菊に二人の介抱を命じると、高姫と妖幻坊を館に招き入れた。
高姫はさっそく、神様の命令で、小北山は自分が教主になることになり、松姫は自転倒島の生田の森の司に任じられたのだ、と松姫に迫った。松姫はいったんは斎苑の館の教主・八島主の辞令を見せるように求めたが、高姫が押すと、あっさり奉告祭をしてここの事務を高姫に引き継ぐと引き下がった。
松姫は早速、文助をはじめ小北山の役員に引き継ぎの奉告祭の準備をさせ、松姫、高姫、妖幻坊は新しい衣装に身を包んで上段の石の宮に上ってきた。
たちまち神饌は踊りだし、宙に舞い狂い始めた。高姫は、神徳が高い者が御用をするとこのような規制が起こるのだ、と得意がっている。妖幻坊は渋い顔をして、神前に出て頭痛がするのをこらえている。
松姫は高姫の言葉に乗り、これほど神様がお勇みになっているから、神様の御社の扉を開けさせていただこうと提案した。高姫は得意になって松姫に扉の開帳を命じた。
松姫はすっと神前に進み、中の社の扉をぱっと開いた。妖幻坊と高姫はその霊光に打たれ、アット叫んでよろよろと七歩八歩後ずさりをした。とたんに、断崖絶壁から逆さまにギザギザの岩の上に転落した。
妖幻坊は怪しい悲鳴を上げると、痛さをこらえて高姫を呼び、坂道を逃げ出した。初と徳は尻の痛さも忘れて、二人の後を追って逃げ出した。妖幻坊は、ヨボヨボと階段を上がってくる文助に突き当たり、顔を引っ掻いて飛ぶように駆けて行ってしまった。その後を高姫、また初と徳が追いかける。
逃げる妖幻坊の耳に、スマートの唸り声が聞こえてきた。こうして、スマートは松姫の返書を首にくくりつけられ、初稚姫に事の顛末を報告すべく祠の森に帰って行った。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:
愛善世界社版:84頁 八幡書店版:第9輯 296頁 修補版: 校定版:87頁 普及版:40頁 初版: ページ備考:
001 松姫(まつひめ)(やかた)には、002千代(ちよ)003(きく)(をんな)三人(さんにん)(くび)(あつ)め、004ひそびそと何事(なにごと)(ささや)いて()る。005勇敢(ゆうかん)なスマートが、006松姫(まつひめ)危難(きなん)(たす)けて()れた(こと)などが無論(むろん)話頭(わとう)(のぼ)つた。007スマートは(にはか)()(ごと)姿(すがた)()して仕舞(しま)つた。
008千代(ちよ)『あれまア、009可愛(かあい)いスマートが何処(どこ)へやら()つて仕舞(しま)つたわ、010(わたし)どうしませう』
011松姫(まつひめ)『スマートは神様(かみさま)のお使(つかひ)吾々(われわれ)危難(きなん)(たす)けに()(くだ)さつたのだから、012もうお(かへ)りになつたかも()れないよ』
013『それだつて(わたし)014あのスマートが()きで(たま)らないのよ。015(かあ)さまの危難(きなん)(たに)(むか)ふからよく探知(たんち)して(たす)けに()()れたのだもの。016そして(かしこ)(いぬ)(わたし)とお友達(ともだち)にならうと()うて約束(やくそく)して()いたのだもの』
017(ここ)(しばら)くスマートさまの(こと)()うてはいけませぬよ、018どんなお仕組(しぐみ)があるか()れないからねえ』
019『だつてスマートは(こひ)しい(いぬ)だわ。020なア、021(きく)さま、022ほんたうに貴女(あなた)だつて()きでせう』
023(きく)(わたし)024貴女(あなた)(つぎ)にスマートが()きのよ』
025()んな(はなし)をして()ると、026(おもて)にどやどやと(ひと)足音(あしおと)(きこ)えて()た。
027妖幻(えうげん)『こりや(はつ)028(とく)029エエ貴様(きさま)不届(ふとど)きの(やつ)だ。030サア(しり)(まく)れ、031なぜ松姫(まつひめ)(さま)御無礼(ごぶれい)(はたら)いたか。032(これ)から(この)杢助(もくすけ)(その)(はう)(しり)()(たた)いて(こら)しめて()れる。033(あく)(むく)いだと(おも)うて観念(くわんねん)せい』
034(はつ)『ハイ(まこと)(まこと)()まぬ(こと)(ござ)いました。035貴方(あなた)のお()()りまして、036松姫(まつひめ)さまを(おど)かしましたのは重々(ぢゆうぢゆう)(わる)(ござ)いました。037(けつ)して(ころ)さうなぞと(おも)うては()ませぬ。038つい(さけ)(きよう)()つて狂言(きやうげん)をかいたのですから、039何卒(どうぞ)(こら)へて(くだ)さいませ』
040馬鹿(ばか)(まを)せ、041そんな(こと)(まを)しても松姫(まつひめ)(さま)御無礼(ごぶれい)(くは)へ、042(この)(はう)()(かた)つたのだから了簡(れうけん)はならぬ、043(しり)(まく)れ』
044高姫(たかひめ)『これ(はつ)045(とく)両人(りやうにん)046(まへ)杢助(もくすけ)さまや(わたし)()(かた)つて松姫(まつひめ)さまに御無礼(ごぶれい)をしたぢやないか、047(なん)()つても松姫(まつひめ)さまに()まないから、048(まへ)(しり)を、049千切(ちぎ)れても(かま)はぬから三百(さんびやく)ばかり(たた)いて()げよう、050徳公(とくこう)さまは(わたし)()(かた)つたのだから(わたし)(たた)いてあげる。051初公(はつこう)杢助(もくすけ)さまの()(かた)つたのだから杢助(もくすけ)さまに(たた)いて(もら)ひなさい。052サア(はや)(しり)をまくりなされ』
053(とく)『ハイ仕方(しかた)(ござ)いませぬ。054どうぞソツと(たた)いて(くだ)さい。055三百(さんびやく)もそんな(ふと)(つゑ)でやられては(いのち)がなくなりますから』
056(いのち)がなくなつたつて仕方(しかた)がないぢやないか、057(まへ)松姫(まつひめ)(さま)(いのち)()らうとしたのだから。058サア杢助(もくすけ)さま、059貴方(あなた)初公(はつこう)をお(たた)きなさい、060オイ(とく)061もうかうなつては駄目(だめ)だ、062(はや)(しり)()さぬか』
063(やかた)(なか)(きこ)えるやうな(こゑ)四人(よにん)八百長芝居(やほちやうしばゐ)(はじ)めかけた。
064 両人(りやうにん)(むち)()()げながら、065二人(ふたり)(しり)(たた)くやうな(かほ)をして大地(だいち)(たた)く。
066妖幻(えうげん)(ひと)つ、067(ふた)つ』
068『キヤツ、069キヤツ』
070高姫(たかひめ)(ひと)つ、071(ふた)つ』
072『アイタタタ、073アイタタタ』
074()ツ、075(いつ)ツ、076(むつ)ツ、077(なな)ツ、078(やつ)ツ、079(ここの)ツ、080(とを)
081『キヤツ、082キヤツ、083キヤツ、084アイタタタタ、085アンアンアン』
086 手許(てもと)(くる)うて、087妖幻坊(えうげんばう)(ちから)(いつ)ぱい()(おろ)した(ぼう)初公(はつこう)(しり)にビウと(あた)つた。088初公(はつこう)はキヤツと()つて(その)()(たふ)れた。089妖幻坊(えうげんばう)090高姫(たかひめ)両人(りやうにん)は、091持場(もちば)(さだ)めて、092(なほ)(つづ)()ちに(かず)をかぞへながら()つて()る。
093(はつ)『これ杢助(もくすけ)さま、094約束(やくそく)(ちが)ふぢやありませぬか、095本当(ほんたう)(たた)かれるのなら、096もう()めですわ、097アア(いた)いワ』
098高姫(たかひめ)『これ(はつ)さま、099(だま)つて()なさらぬか、100あいさには(ふた)つや(みつ)()(くる)うたつて仕方(しかた)がないぢやないか』
101『それだと()つて(いた)いわな』
102二十(にじふ)103二十一(にじふいち)104二十二(にじふに)105二十三(にじふさん)106二十四(にじふし)
107『アイタタタアイタ、108キヤア、109キヤツキヤツ』
110高姫(たかひめ)(いた)かろ(いた)かろ、111(いた)いやうに(なぐ)るのだ。112かうせねばお(まへ)(つみ)(ほろ)びず、113(わたし)(うたがひ)()れぬから、114弁慶(べんけい)でさへも御主人(ごしゆじん)(あたま)(なぐ)つた(こと)(おも)へば辛抱(しんばう)をしなさい』
115(とく)本当(ほんたう)高姫(たかひめ)さま、116(なぐ)つちや(たま)りませぬわ、117約束(やくそく)(ちが)ふぢやありませぬか。118(なん)ぼお(まへ)さまの弁慶(べんけい)の(弁解(べんかい)の)ためだと()つてもやりきれませぬわ』
119 (なん)だか屋外(をくぐわい)にザワザワ(おと)がするので、120(きく)121千代(ちよ)両人(りやうにん)()()でて()れば(みぎ)体裁(ていさい)である。122両人(りやうにん)一度(いちど)()(たた)いて、
123『ああ面白(おもしろ)面白(おもしろ)い、124芝居(しばゐ)ぢや芝居(しばゐ)ぢや、125(いた)くもないのに(さる)のやうに初公(はつこう)徳公(とくこう)()いて()るわ。126ありや八百長(やほちやう)だよ。127(かあ)さま、128一寸(ちよつと)()御覧(ごらん)129面白(おもしろ)芝居(しばゐ)(はじ)まつて()ますよ』
130 松姫(まつひめ)気掛(きがか)りでならぬので、131千代(ちよ)言葉(ことば)()かれて(そと)()()た。132杢助(もくすけ)133高姫(たかひめ)両人(りやうにん)八百長(やほちやう)()られちや大変(たいへん)だと(おも)ひ、134真剣(しんけん)(ちから)をこめてビウビウと(なぐ)()したから(たま)らない、135(たちま)臀部(でんぶ)紫色(むらさきいろ)腫上(はれあが)()(にじ)()した。136二人(ふたり)(うご)きもならず、137()()かして仕舞(しま)つた。138松姫(まつひめ)(おどろ)いて(その)()(はし)()両手(りやうて)(ひろ)げて、
139『ヤア高姫(たかひめ)(さま)140杢助様(もくすけさま)141如何(いか)なる(こと)(ぞん)じませぬが、142どうぞ(しばら)くお()(くだ)さいませ』
143高姫(たかひめ)『イヤ、144(まへ)さまは松姫(まつひめ)さま、145(なが)らくお()(かか)りませぬ、146(この)両人(りやうにん)吾々(われわれ)()(かた)つてお(まへ)さまを(くる)しめたさうですから、147(いま)折檻(せつかん)(くは)へて()(ところ)です。148何卒(どうぞ)()(くだ)さいますな。149これ杢助(もくすけ)さま、150もつと()つてやりなさい。151こんな(やつ)()んだつて(かま)ふものか』
152杢助(もくすけ)さま、153高姫(たかひめ)さま、154(はら)()ちませうが、155これら両人(りやうにん)小北山(こぎたやま)役員(やくゐん)156如何(いか)なる(こと)(ござ)いませうとも、157(わたし)()つて(くだ)されば(なん)とか(いた)しますから、158まアまア()つて(くだ)さいませ』
159妖幻(えうげん)『イヤ(はじ)めてお()(かか)ります。160貴女(あなた)松姫(まつひめ)さまで(ござ)いましたか、161えらいお()()ませまして(おそ)()ります。162(ゆる)(がた)(やつ)なれども、163貴女(あなた)のお言葉(ことば)(めん)(ゆる)してやりませう。164これ高姫(たかひめ)165(まへ)(ゆる)してやりなさい』
166高姫(たかひめ)『エエ(わたし)はどうしても(ゆる)しませぬ。167三百(さんびやく)(むち)(くは)へなくてはなりませぬ。168(わたし)貴方(あなた)()(かた)つて悪事(あくじ)をなした代物(しろもの)だから、169以後(いご)のみせしめ、170(いき)()まる(ところ)まで(なぐ)つてやりませう』
171とピシヤピシヤと(なぐ)りつけた。172徳公(とくこう)(いき)()れむばかりになつてヒーヒーとひしつて()る。173(やうや)くにして松姫(まつひめ)仲裁(ちうさい)によつて(むち)(くは)へることだけはやめて(しま)つた。174松姫(まつひめ)は、175千代(ちよ)176(きく)(めい)(みづ)(はこ)ばせ、177両人(りやうにん)()ませ()(しり)(みづ)をかけてやつた。178二人(ふたり)無我夢中(むがむちう)になつて()(あが)り、179(しり)(いた)さに(ひぢ)をついて(には)(よこ)たはつて()る。
180松姫(まつひめ)『まア可愛(かあい)さうに、181(ひど)いことなされますなア、182貴方(あなた)(がた)()(つよ)いのには(わたし)感心(かんしん)(いた)しました』
183高姫(たかひめ)(わたし)だつて斯様(かやう)(こと)はしたくはありませぬが、184杢助(もくすけ)さまと(わたし)貴女(あなた)(ころ)して()いといつたやうに(まを)して乱暴(らんばう)(はたら)いた悪者(わるもの)ですから、185以後(いご)のみせしめに(むち)(くは)へたのです。186松姫(まつひめ)さま、187何卒(どうぞ)(うたが)はないやうにして(くだ)さい、188こんな(けだもの)(なに)(まを)すか()れませぬからなア』
189『ハイ何卒(どうぞ)気遣(きづか)(くだ)さいますな。190善悪(ぜんあく)神様(かみさま)御存(ごぞん)じですから、191私等(わたしら)善悪(ぜんあく)(さば)(ちから)はありませぬ。192サア何卒(どうぞ)此処(ここ)門先(かどさき)……(うち)(はい)つて(くだ)さいませ。193これお千代(ちよ)や、194(きく)さまと二人(ふたり)195初公(はつこう)196徳公(とくこう)(そば)(むしろ)をもつて()つて(その)(うへ)()かせ、197前等(まへたち)世話(せわ)をして()げて(くだ)さい。198(かあ)さまは一寸(ちよつと)二人(ふたり)さまとお(はなし)があるから』
199二人(ふたり)介抱(かいほう)二人(ふたり)少女(せうぢよ)(めい)()き、200高姫(たかひめ)201杢助(もくすけ)居間(ゐま)()()れた。
202松姫(まつひめ)高姫(たかひめ)(さま)203(ひさ)しう(ござ)います。204貴女(あなた)生田(いくた)(もり)神司(かむつかさ)として、205(りう)(たま)御守護(ごしゆご)(あそ)ばすとか(うけたま)はり、206(うらや)ましい(こと)だと(ぞん)じて()りました。207(この)(ごろ)(また)斎苑(いそ)(やかた)へお()しになつて()たさうで(ござ)いますねえ』
208『ハイ、209一寸(ちよつと)都合(つがふ)があつて斎苑(いそ)(やかた)(まゐ)りましたが、210神様(かみさま)命令(めいれい)()つて、211(この)小北山(こぎたやま)高姫(たかひめ)系統(ひつぽう)蠑螈別(いもりわけ)(ひら)いたのだから、212(その)(はう)()つて教主(けうしゆ)となり、213松姫(まつひめ)さまは生田(いくた)(もり)()つて(もら)へとの(こと)(ござ)います。214つまり()へば更迭(かうてつ)ですな、215自転倒島(おのころじま)(また)景色(けしき)のよい(ところ)ですな、216高城山(たかしろやま)からは(わづ)三十里(さんじふり)(ばか)りの(ところ)(ござ)いますからな』
217『それは神界(しんかい)御都合(ごつがふ)とあれば是非(ぜひ)(およ)びませぬが、218(しか)貴女(あなた)斎苑(いそ)(やかた)八島主(やしまぬし)命様(みことさま)から御命令(ごめいれい)()けてお()でになりましたか、219神様(かみさま)命令(めいれい)()つても、220現界(げんかい)仕事(しごと)矢張(やつぱり)現界(げんかい)法則(はふそく)(まも)らねばなりませぬ。221ついては御辞令(ごじれい)(ござ)いませう。222一寸(ちよつと)拝見(はいけん)さして(いただ)きませう』
223馬鹿(ばか)(こと)仰有(おつしや)るな、224松姫(まつひめ)さまにも似合(にあ)はぬ愚問(ぐもん)(はつ)するぢやありませぬか。225三五教(あななひけう)人民(じんみん)(をしへ)()てる(ところ)ぢやありますまい。226神様(かみさま)御命令(ごめいれい)(はたら)(ところ)でせう。227(わたし)(まこと)義理天上様(ぎりてんじやうさま)御命令(ごめいれい)(いそが)しくして仕方(しかた)がない()を、228小北山(こぎたやま)神司(かむつかさ)となつて()たのですよ。229(まへ)さまは神様(かみさま)御命令(ごめいれい)()いて生田(いくた)(もり)()つて(もら)ひたい、230(もと)はお(まへ)さまの師匠(ししやう)ですから、231(わたし)()(こと)()くでせうね、232そして杢助(もくすけ)さまは生田(いくた)(もり)(ござ)つたけれど、233(いま)斎苑(いそ)(やかた)総務(そうむ)234(この)(かた)(ござ)つた以上(いじやう)辞令(じれい)(なに)()りますまい。235つまり八島主(やしまぬし)さまの意見(いけん)杢助(もくすけ)さまの意見(いけん)236杢助(もくすけ)さまの意見(いけん)八島主(やしまぬし)さまの意見(いけん)237(また)八島主(やしまぬし)さまの意見(いけん)義理天上(ぎりてんじやう)意見(いけん)238義理天上(ぎりてんじやう)意見(いけん)高姫(たかひめ)意見(いけん)ぢやぞえ』
239『いや(わか)りました、240それなら(おほせ)(したが)貴女(あなた)事務(じむ)引継(ひきつぎ)(いた)しませう。241それについては(わたし)解職(かいしよく)奉告祭(ほうこくさい)242貴方(あなた)(がた)新任(しんにん)奉告祭(ほうこくさい)をなさらなくてはなりますまい。243それでなくては神様(かみさま)御用(ごよう)引継(ひきつ)ぎは出来(でき)ませぬからなア』
244『イヤ(もつと)もで(ござ)います。245(まへ)さま立派(りつぱ)引渡(ひきわた)して(くだ)さるか、246(えら)いものだなア。247(その)(かは)生田(いくた)(もり)()つて(くだ)さい、248(また)生田(いくた)(もり)転任(てんにん)辞令(じれい)がないと仰有(おつしや)るだらうが、249現在(げんざい)此処(ここ)杢助(もくすけ)さまが(ござ)るから、250生証文(いきしようもん)だ。251どうか安心(あんしん)して()つて(くだ)さいや』
252左様(さやう)ならば事務(じむ)引継(ひきつ)ぎを(いた)しませう、253(ぜん)(いそ)げと(まを)しますから、254一時(いちじ)(はや)くお(そら)大神様(おほかみさま)参拝(さんぱい)(いた)し、255奉告祭(ほうこくさい)(おこな)はうぢやありませぬか』
256『それは(まこと)結構(けつこう)(ござ)います。257杢助(もくすけ)さま、258(まへ)さまも、259何程(なにほど)霊界(れいかい)天人(てんにん)だからといつて、260今日(けふ)新任(しんにん)奉告祭(ほうこくさい)だから(まゐ)らねばなりませぬぞや』
261『ウン仕方(しかた)が……ウンない、262イヤ結構(けつこう)だ、263(わたし)奉告祭(ほうこくさい)参列(さんれつ)させて(もら)ひませう』
264松姫(まつひめ)『それでは貴方(あなた)(がた)にお装束(しやうぞく)をつけて(いただ)きたう(ござ)ります。265(また)それ(まで)神饌(しんせん)用意(ようい)祓戸(はらひど)(しき)をせなくてはなりませぬから、266役員(やくゐん)にその準備(じゆんび)(いた)させませう。267肝腎(かんじん)(はつ)(とく)貴方(あなた)(がた)(むち)()てられ、268八百長芝居(やほちやうしばゐ)()()ぎて、269あの(とほ)平太(へた)つて()ますから、270(ほか)役員(やくゐん)(めい)じませう。271これ、272千代(ちよ)や、273(まへ)はお(きく)さまに二人(ふたり)介抱(かいほう)(たの)み、274文助(ぶんすけ)さまに祭典(さいてん)用意(ようい)(めい)じて(くだ)さい』
275 お千代(ちよ)は、
276『ハイ』
277一言(ひとこと)(あと)(のこ)して、278文助(ぶんすけ)松姫(まつひめ)命令(めいれい)(くだ)すべく階段(かいだん)(くだ)()く。279文助(ぶんすけ)早速(さつそく)四五(しご)役員(やくゐん)(めい)じ、280祭典(さいてん)準備(じゆんび)(ととの)へしめた。281(いよいよ)祓戸(はらひど)()神饌(しんせん)()んだ。282松姫(まつひめ)283高姫(たかひめ)284杢助(もくすけ)(あたら)しき衣装(いしやう)着替(きか)へ、285悠然(いうぜん)として上段(じやうだん)(いし)(みや)(まへ)(あら)はれた。
286 (たちま)神饌(しんせん)(をど)()し、287(そな)へた()()などは空中(くうちう)(ぶと)()(ごと)()(くる)うて()る、288さうして人参(にんじん)大根(だいこん)(やま)(いも)蜜柑(みかん)川魚(かはうを)もピンピン()()(をど)()した。289高姫(たかひめ)(くび)(かたむ)けて非常(ひじやう)感心(かんしん)をして()る。
290(なん)とまア神徳(しんとく)(たか)(もの)御用(ごよう)をする(こと)になると(えら)いものだなア、291神様(かみさま)大変(たいへん)にお(いさ)みだと()えて、292(そな)(もの)中天(ちうてん)()(あが)り、293(みな)(をど)つて()る。294これ松姫(まつひめ)さま、295(えら)いもので(ござ)いませうがな。296あれ御覧(ごらん)なさいませ。297神様(かみさま)四辺(あたり)()(うへ)(すず)なりになつて()られませうがな、298エエ()えませぬか、299修業(しゆげふ)()らぬものは仕方(しかた)(ござ)いませぬな。300義理天上(ぎりてんじやう)さまが、301松姫(まつひめ)をおつぽり()せ……いや生田(いくた)(もり)(つか)はせと仰有(おつしや)つたのも、302()んな仕組(しぐみ)があつたからだらう。303ああ宙空(ちうくう)八百万(やほよろづ)神様(かみさま)(いさ)んでお()でになることわいなア。304ネーブルなどは、305あの(とほ)()(とど)かぬ(ところ)まで(あが)つて舞踏(ぶたふ)をやつて()ます。306(なん)神徳(しんとく)()ふものは(あらそ)はれぬものだなア』
307 杢助(もくすけ)(なん)とも()へぬ(しぶ)(かほ)をして(あたま)(いた)いのを(こら)へて()る。308高姫(たかひめ)益々(ますます)調子(てうし)()つて法螺(ほら)()いて()る。
309松姫(まつひめ)『これ高姫(たかひめ)さま、310これ(ほど)神様(かみさま)がお(いさ)みになつて()るのですから、311一遍(いつぺん)312ユラリ(ひこ)(つき)大神(おほかみ)313()大神様(おほかみさま)のお(とびら)()けさせて(いただ)きませうか』
314『ああそれが肝腎(かんじん)だ。315(まへ)さま、316()けて(くだ)さい、317(わたし)神様(かみさま)直接(ちよくせつ)にお(はな)(いた)しますから。318(さぞ)神様(かみさま)高姫(たかひめ)にお給仕(きふじ)をして(もら)ひ、319杢助(もくすけ)さまに(かま)うて(もら)へば御満足(ごまんぞく)なさるだらう。320大神様(おほかみさま)321斎苑(いそ)(やかた)杢助(もくすけ)義理天上(ぎりてんじやう)()出神(でのかみ)が、322今日(けふ)から御世話(おせわ)をさして(いただ)きますぞや』
323 松姫(まつひめ)はスツと神前(しんぜん)(すす)み、324(なか)(やしろ)(とびら)をパツと(ひら)いた。325杢助(もくすけ)326高姫(たかひめ)二人(ふたり)はアツと(さけ)んで(その)霊光(れいくわう)()たれ、327ヨロ ヨロ ヨロと七歩(ななあし)八歩(やあし)(あと)すざりをした途端(とたん)に、328断岩絶壁(だんがんぜつぺき)から(さか)とんぼりに、329キザキザの(いは)(うへ)顛落(てんらく)し「ウン、330キヤツ」と(あや)しき(こゑ)()てながら、331(いた)さを(こら)へ、
332高姫(たかひめ)(きた)れ』
333一生懸命(いつしやうけんめい)坂道(さかみち)()()した。334初公(はつこう)335徳公(とくこう)両人(りやうにん)(これ)()るより(しり)(いた)さも(わす)れ、336トントントンと二人(ふたり)(あと)(したが)一生懸命(いつしやうけんめい)()()す。337(をり)からヨボヨボと階段(かいだん)(あが)つて()文助(ぶんすけ)()きあたり、338妖幻坊(えうげんばう)文助(ぶんすけ)(かほ)()つかき(さか)(した)()げつけながら、339()ぶが(ごと)くに(くも)(かすみ)()(いだ)す。340高姫(たかひめ)金切声(かなきりごゑ)()()てながら(かみ)()(みだ)し、341でつかい(しり)()りながら可愛(かあい)(をとこ)()がしちや大変(たいへん)だと、342一町(いつちやう)(ばか)間隔(かんかく)(たも)ち、343一本橋(いつぽんばし)(わた)怪志(あやし)(もり)()して()げて()く。344(また)一町(いつちやう)(ばか)(おく)れて、345(はつ)346(とく)両人(りやうにん)が、
347『オイオイ』
348(さけ)びながら、349青草(あをくさ)芽含(めぐ)んだ野路(のぢ)()()けて()く。350小北山(こぎたやま)(いただき)から、
351『ウーウーワウ ワウ ワウ』
352とスマートの(こゑ)353(らい)(ごと)くに杢助(もくすけ)妖幻坊(えうげんばう)(みみ)()る。
354 (これ)より、355スマートは松姫(まつひめ)返書(へんしよ)(くび)(くく)りつけられ、356初稚姫(はつわかひめ)報告(はうこく)すべく(ほこら)(もり)をさして(かへ)()く。
357大正一二・一・二五 旧一一・一二・九 加藤明子録)