霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二〇章 背進(はいしん)〔一三八三〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第53巻 真善美愛 辰の巻 篇:第4篇 神愛遍満 よみ(新仮名遣い):しんあいへんまん
章:第20章 背進 よみ(新仮名遣い):はいしん 通し章番号:1383
口述日:1923(大正12)年02月14日(旧12月29日) 口述場所:竜宮館 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年3月8日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
ヒルナ姫とカルナ姫の活躍によってバラモン軍はビク国と和睦し、ビク国軍隊の一部は刹帝利の支配となった。左守は兵馬の権を与えられて城内の秩序を保ち、タルマンは宣伝使兼内事の司に戻り、左守の家令であったエクスが右守に任命された。
城下の陣営は、バラモン軍に大部分が貸し与えられることになり、バラモン軍のビク国侵攻は一段落した。
鬼春別と久米彦両将軍は、ランチ将軍の命令通りに黄金山に攻め込めば敗北は濃厚であり、さりとてハルナの都に帰るわけにもゆかず、付近の小国を併合してここに自分たちの王国を築こうと、ビク国内に得た陣営を増築し、兵を練っていた。
二女はひきつづき将軍たちに仕えていたが、酒と弁舌にごまかして、貞節を守り続けながら、ビク国に危害が及ばないよう将軍たちを操っていた。
兵営はほぼ完成し、ビクトル山の麓の要害の地点に本営も築かれた。そうしたところ、多数のバラモン軍の騎士たちがライオン河を渡ってくると報告が届いた。
両将軍は、ランチ将軍の本隊に何かあったのではないかと疑い、思案に暮れた。両将軍が高殿より見れば、数百の味方の騎士たちがやってくるのが見えた。鬼春別と久米彦は、ランチ将軍本隊の敗兵が逃げてきたこと悟った。二女に動揺を見透かされないよう、わざと鷹揚にしている。
敗軍を率いてきた騎士は、両将軍に、ランチ将軍と片彦将軍は三五教の宣伝使・治国別に降参し、軍隊を解散したのみならず、二将軍以下ガリヤとケースの副官まで三五教の魔法を授かって、素盞嗚尊の宣伝使となってしまったことを報告した。
敗軍の将官は、三千の軍隊を率いていたランチ将軍でさえ一たまりもなく降伏したこと、やがて治国別たちがビクトル山へもやってくるだろうことも伝えた。これを聞いた鬼春別と久米彦は顔色を変え、表には強がっていても内心はすっかり恐怖心にかられてしまった。
ヒルナ姫とカルナ姫は、鬼春別と久米彦の怯えを看破したが、何食わぬ顔をして表面を包んでいた。
鬼春別と久米彦は、黄金山出征を口実として二女や部下の前に体裁を作り、一刻も早くビクトル山を引き払おうと退却を始めた。三千の兵士たちはたちまち後ろから強敵が襲ってくるような恐怖心にかられて、我先にと陣営から逃げ去ってしまった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm5320
愛善世界社版:243頁 八幡書店版:第9輯 593頁 修補版: 校定版:251頁 普及版:120頁 初版: ページ備考:
001 鬼春別(おにはるわけ)002久米彦(くめひこ)両将軍(りやうしやうぐん)連戦(れんせん)連勝(れんしよう)結果(けつくわ)003ビクの(みやこ)兵士(つはもの)(まで)(したが)へて、004自分(じぶん)部下(ぶか)としてゐたのはホンの(しばら)くの(うち)であつた。005ヒルナ(ひめ)006カルナ(ひめ)千変(せんぺん)万化(ばんくわ)秘術(ひじゆつ)(つく)しての斡旋(あつせん)に、007(やうや)くビクの(くに)軍隊(ぐんたい)一部分(いちぶぶん)刹帝利(せつていり)支配(しはい)(もと)隷属(れいぞく)し、008左守(さもり)兵馬(へいば)(けん)刹帝利(せつていり)より臨時(りんじ)委任(ゐにん)され、009城内(じやうない)秩序(ちつじよ)(たも)つこととなり、010(また)タルマンは依然(いぜん)として宣伝使(せんでんし)(けん)内事司(ないじつかさ)(つと)め、011ヱクスは抜擢(ばつてき)されて右守(うもり)となつた。012そして城下(じやうか)陣営(ぢんえい)暫時(ざんじ)バラモン(ぐん)(その)大部分(だいぶぶん)()(あた)へ、013(ここ)にビクトリヤ()とバラモン(ぐん)とは整然(せいぜん)たる区劃(くくわく)がついた。014鬼春別(おにはるわけ)015久米彦(くめひこ)両将軍(りやうしやうぐん)斎苑(いそ)(やかた)進軍(しんぐん)するのも(この)まず、016さりとてハルナへ(かへ)ることも出来(でき)ず、017黄金山(わうごんざん)(むか)はむか、018又々(またまた)敗北(はいぼく)せむは必定(ひつぢやう)である。019()(かく)ビクトル(さん)中心(ちうしん)仮陣営(かりぢんえい)(きづ)き、020此処(ここ)にて兵力(へいりよく)()り、021附近(ふきん)小国(せうこく)(きり)なびけ、022一王国(いちわうこく)建設(けんせつ)せむと兵営(へいえい)増築(ぞうちく)全力(ぜんりよく)(つく)し、023未来(みらい)希望(きばう)(いだ)いてゐた。024そしてヒルナ(ひめ)025カルナ(ひめ)(もと)(ごと)将軍(しやうぐん)(つか)へてゐた。026(しか)(なが)種々(いろいろ)辞柄(じへい)(まう)けて、027二人(ふたり)美人(びじん)両将軍(りやうしやうぐん)()(まか)せなかつた。028何時(いつ)弁舌(べんぜつ)表情(へうじやう)(さけ)とにて誤魔化(ごまくわ)し、029(ほとん)同衾(どうきん)(いとま)をなからしむべく、030両女(りやうぢよ)(たがひ)()(みだ)れて(たす)()ひつつあつた。031ビクトリヤ(わう)もハルナも両女(りやうぢよ)(こころ)()察知(さつち)し、032(すこ)しも素行(そかう)(じやう)()いては(うたがひ)をさし(はさ)まなかつたのである。033只々(ただただ)両女(りやうぢよ)()犠牲(ぎせい)にして、034(わが)国家(こくか)安泰(あんたい)(まも)(その)苦心(くしん)感謝(かんしや)するのみであつた。
035 大急(おほいそ)ぎで(つく)られた兵営(へいえい)大半(たいはん)落成(らくせい)した。036鬼春別(おにはるわけ)はビクトル(さん)(ふもと)(もつと)要害(えうがい)よき地点(ちてん)本営(ほんえい)(きづ)き、037久米彦(くめひこ)将軍(しやうぐん)(のき)(なら)べて(へい)()ることにのみ(ちから)(つく)し、038一方(いつぱう)には最愛(さいあい)のナイスを唯一(ゆゐいつ)(ちから)(たの)み、039未来(みらい)には()れて完全(くわんぜん)なる夫婦(ふうふ)たるべしと期待(きたい)してゐたのである。
040 ()かる(ところ)(あわ)ただしく入来(いりきた)るは河守(かはもり)雑兵(ざふひやう)(かう)(おつ)(へい)(さん)(にん)である。041シヤムは受付(うけつけ)事務(じむ)()つてゐると、042(さん)(にん)(いき)(はづ)ませ(なが)ら、
043申上(まをしあ)げます。044只今(ただいま)045ライオン(がは)(わた)つて、046数多(あまた)騎士(きし)此方(こなた)(むか)驀地(まつしぐら)()けつけて(まゐ)様子(やうす)(ござ)います。047()(かく)()注進(ちうしん)申上(まをしあ)げます』
048シヤム『ナニ、049沢山(たくさん)のナイトが(かは)(わた)つて()るとは、050ハテ心得(こころえ)ぬ 何者(なにもの)であらうかなア』
051(くび)(かたむ)ける。052(かふ)は、
053(かふ)『エエ(さつ)する(ところ)054旗印(はたじるし)()れば、055どれもこれも三葉葵(みつばあふひ)紋所(もんどころ)()めなし()りますれば、056(まさ)しくバラモン(けう)軍隊(ぐんたい)かと(ぞん)じます』
057シヤム『ハテ、058バラモン(けう)軍隊(ぐんたい)が、059さう沢山(たくさん)此方(こちら)(わた)(はず)はない。060ランチ将軍(しやうぐん)浮木(うきき)(もり)(ひか)()れば、061三五教(あななひけう)奴輩(やつばら)(いつは)つて、062三葉葵(みつばあふひ)(はた)()て、063()めよせ(きた)(はず)もない、064ハテ合点(がてん)()かぬことだなア。065(なに)()もあれ将軍(しやうぐん)(さま)申上(まをしあ)げむ、066(なんぢ)()(いち)()(はや)川端(かはばた)立帰(たちかへ)り、067(てき)味方(みかた)取調(とりしら)べた(うへ)報告(はうこく)せい』
068といひすて、069鬼春別(おにはるわけ)将軍(しやうぐん)居間(ゐま)(すす)んだ。070そこには(をり)よく久米彦(くめひこ)()()つた。071スパール、072エミシも(そば)()して何事(なにごと)(うれ)しげに(はな)してゐる。073そこへ(あら)はれたシヤムは鬼春別(おにはるわけ)(むか)ひ、074一寸(ちよつと)目礼(もくれい)(なが)ら、
075シヤム『将軍(しやうぐん)(さま)申上(まをしあ)げます。076只今(ただいま)川守(かはもり)報告(はうこく)()れば、077数百(すうひやく)のナイトが三葉葵(みつばあふひ)(はた)()()()()てライオン(がは)(わた)()様子(やうす)(ござ)います、078如何(いかが)取計(とりはか)らひませうかな』
079鬼春別(おにはるわけ)『ハテナ、080合点(がてん)()かぬ旗印(はたじるし)081まさかランチ将軍(しやうぐん)()げて()たのではあるまい。082久米彦(くめひこ)殿(どの)083貴殿(きでん)()意見(いけん)如何(いかが)(ござ)るか』
084久米彦(くめひこ)(さつ)する(ところ)085浮木(うきき)(もり)のランチ将軍(しやうぐん)治国別(はるくにわけ)言霊戦(ことたません)とやらに(はい)()り、086血路(けつろ)(ひら)いて()げて(まゐ)つたのでせう。087三五教(あななひけう)ならば、088左様(さやう)沢山(たくさん)同勢(どうぜい)()れては()りますまい。089ハテ(こま)つたことだなア』
090鬼春別(おにはるわけ)(なに)()もあれ、091スパール、092シヤム、093(なんぢ)(こま)(また)がり、094(いち)()(はや)(てき)味方(みかた)様子(やうす)(うかが)報告(はうこく)いたせ』
095下知(げち)すれば、096『ハツ』(こた)へて両人(りやうにん)(ただち)(こま)用意(ようい)をなし、097(ひづめ)(おと)(いさ)ましく、098川縁(かはべり)さして一目散(いちもくさん)(はし)()く。
099 両将軍(りやうしやうぐん)双手(もろて)()み、100さし(うつむ)いて、101(やや)思案(しあん)にくれてゐた。102ヒルナ(ひめ)103カルナ(ひめ)はニコニコし(なが)ら、104あどけなき(てい)(よそほ)ひ、105(こと)などをいぢつてゐる。
106鬼春別(おにはるわけ)『ヒルナ(ひめ)107(しばら)(こと)()()めてくれ、108一大事(いちだいじ)(おこ)つたからなア、109カルナ殿(どの)同様(どうやう)だ、110(こと)(どころ)(さわ)ぎぢやあるまいぞ』
111ヒルナ(ひめ)『ハイ、112(なに)()心配(しんぱい)なことが突発(とつぱつ)(いた)しましたか。113それは()()めたことで(ござ)いますねえ』
114鬼春別(おにはるわけ)『ウーン、115(べつ)心配(しんぱい)(いた)すやうな(こと)ではないが、116どうも(あや)しい報告(はうこく)(せつ)したのだ、117都合(つがふ)()つては、118吾々(われわれ)防備(ばうび)用意(ようい)(いた)さねばなるまい』
119ヒルナ(ひめ)『ホホホホホ、120防備(ばうび)なんか必要(ひつえう)はありませぬ。121(わらは)にお(ひま)(くだ)さいますれば、122(こま)(またが)つて、123()(きた)軍隊(ぐんたい)折衝(せつしよう)(いた)しませう』
124鬼春別(おにはるわけ)『イヤイヤ、125(まへ)左様(さやう)(ところ)差向(さしむ)けては、126(あん)じられる。127(また)将軍(しやうぐん)秋波(しうは)(おく)られては、128(いささ)()()めるからなア』
129ヒルナ(ひめ)『オホホホホ、130将軍(しやうぐん)(さま)仰有(おつしや)ること、131そんな柔弱(にうじやく)(をんな)ぢや(ござ)いませぬ。132ねえカルナさま、133(わらは)二人(ふたり)(こま)(またが)り、134紅裙隊(こうくんたい)指揮(しき)して、135(むら)がる(てき)をアツと()はせてやりたいものですね』
136カルナ(ひめ)本当(ほんたう)にさうですワ。137(わらは)将軍(しやうぐん)(さま)のお(ゆる)しさへあれば、138一働(ひとはたら)(いた)したいもので(ござ)いますわ』
139両女(りやうぢよ)はうまく(うま)(またが)(この)()立出(たちい)で、140……もしバラモン(ぐん)なれば是非(ぜひ)なく首将(しゆしやう)()(かへ)り、141鬼春別(おにはるわけ)()はしてやらうが、142万々一(まんまんいち)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)(また)軍隊(ぐんたい)であつたなれば(これ)(さいは)ひに(この)()()()し、143(しばら)姿(すがた)(かく)さむ……かと()せずして両人(りやうにん)(こころ)(ひらめ)いたのである。144されど両将軍(りやうしやうぐん)は、145可愛(かあい)二人(ふたり)(をんな)(きず)をさせては大変(たいへん)だと(あん)()ごして容易(ようい)出陣(しゆつぢん)(ゆる)さなかつた。
146 かかる(ところ)法螺貝(ほらがひ)(ひびき)ブーブーと(きこ)えくる。147鬼春別(おにはるわけ)はつツ()(あが)り、148眼下(がんか)見渡(みわた)せば、149数百(すうひやく)軍隊(ぐんたい)150(れつ)(みだ)して、151一生(いつしやう)懸命(けんめい)此方(こなた)(むか)つて(はし)()(その)様子(やうす)152どうも敵軍(てきぐん)とは(おも)はれない、153敗兵(はいへい)逃亡(たうばう)して()たと()()つた鬼春別(おにはるわけ)はヤツと(むね)()でおろし、
154鬼春別(おにはるわけ)『アハハハハ、155久米彦(くめひこ)将軍(しやうぐん)156あれを()られよ。157数百(すうひやく)軍隊(ぐんたい)此方(こなた)(むか)つて()(きた)様子(やうす)158(しか)(なが)吾々(われわれ)仁義(じんぎ)(もつ)主義(しゆぎ)(いた)すもの、159(けつ)して一兵卒(いつぺいそつ)(うご)かしてはなりませぬぞ。160(ただ)吾々(われわれ)(あい)(とく)()つて(てき)悦服(えつぷく)さす方法(はうはふ)あるのみですから』
161 久米彦(くめひこ)(また)高欄(かうらん)より打眺(うちなが)め、162ヤツと安心(あんしん)したものの(ごと)く、
163久米彦(くめひこ)『アハハハハ、164(おほ)せには(およ)ぶべき、165如何(いか)なる巨万(きよまん)(てき)166一斉(いつせい)押寄(おしよ)(きた)(とも)167(あい)善徳(ぜんとく)(もつ)(これ)(たい)し、168(けつ)して殺伐(さつばつ)()(かた)(いた)さぬ覚悟(かくご)(ござ)る。169(たたか)はずして(てき)悦服(えつぷく)さすは、170勇将(ゆうしやう)()くなす(ところ)171どうだ、172カルナ(ひめ)173(それがし)無抵抗(むていかう)主義(しゆぎ)174博愛(はくあい)主義(しゆぎ)(じつ)徹底(てつてい)したものだらうがなア』
175としたり(がほ)にいふ。
176カルナ(ひめ)左様(さやう)(ござ)います、177仁義(じんぎ)(いくさ)(てき)(ござ)いませぬ。178何卒(どうぞ)179何処(どこ)(まで)無抵抗(むていかう)主義(しゆぎ)抱持(はうぢ)(あそ)ばすやう()(ねがひ)(いた)します。180(ばう)(たい)するに(ばう)(もつ)てするは、181所謂(いはゆる)下賤(げせん)人民(じんみん)(いた)(ところ)182(じつ)見上(みあ)げた立派(りつぱ)将軍(しやうぐん)(さま)()(こころざし)には、183カルナも益々(ますます)感服(かんぷく)(つかまつ)りました』
184(おもて)には()つたものの、185……万一(まんいち)(てき)(おし)よせて()て、186(この)両将軍(りやうしやうぐん)(なん)とかしてくれれば都合(つがふ)()いがなア。187さうすれば根本(こんぽん)(てき)にビクの(くに)安全(あんぜん)(をさ)まるだらう……と(かんが)へてゐた。188ヒルナ(ひめ)(また)カルナと同様(どうやう)(かんが)へを()つてゐた。
189 ()かる(ところ)へスパール、190エミシに(みちび)かれ、191(いき)せき()つて(はし)(きた)りしは、192ランチ将軍(しやうぐん)部下(ぶか)(つか)へし、193テルンスであつた。194テルンスは数百(すうひやく)のナイトを引率(いんそつ)して、195此処(ここ)遁走(とんそう)()たものである。
196久米彦(くめひこ)『ヤ、197(その)(はう)はランチ将軍(しやうぐん)部下(ぶか)テルンスではないか、198(なに)様子(やうす)のあることと(さつ)する。199ランチ殿(どの)如何(いかが)(ござ)るかな』
200テルンス『これはこれは両将軍(りやうしやうぐん)(さま)()壮健(さうけん)にて、201()()づお目出(めで)たう(ぞん)じます。202申上(まをしあ)ぐるも(せん)なきこと(なが)ら、203ランチ、204片彦(かたひこ)両将軍(りやうしやうぐん)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)治国別(はるくにわけ)(ため)に、205スツカリ(かぶと)をぬぎ、206(いま)軍隊(ぐんたい)解散(かいさん)(いた)し、207(みづか)らは三五教(あななひけう)魔法(まはふ)(さづ)かり、208宣伝使(せんでんし)となつて(しま)ひました。209ランチ、210片彦(かたひこ)211ガリヤ、212ケースの錚々(さうさう)たる幹部(かんぶ)(かく)(ごと)相成(あひな)りました以上(いじやう)は、213やがて治国別(はるくにわけ)先頭(せんとう)にビクトル(さん)へも押寄(おしよ)(きた)るで(ござ)いませう。214三千(さんぜん)(にん)軍隊(ぐんたい)(かか)へたランチ将軍(しやうぐん)でさへも、215(ひと)たまりもなく降服(かうふく)(いた)したので(ござ)います。216(じつ)(おそ)るべき強敵(きやうてき)(ござ)います』
217 久米彦(くめひこ)(これ)()いて(むね)(をど)らし、218(かほ)蒼白(まつさを)()へて(しま)つた、219(たちま)(こゑ)(ふる)はせ(なが)ら、
220久米彦(くめひこ)鬼春別(おにはるわけ)殿(どの)221タタ大変(たいへん)(ござ)る。222コリヤ()うしては()られますまい。223(なん)とか工夫(くふう)をめぐらさうぢやありませぬか』
224 鬼春別(おにはるわけ)(この)報告(はうこく)にハツと(おどろ)いたが、225ヒルナ(ひめ)手前(てまへ)226(あま)卑怯(ひけふ)醜態(しうたい)()せられないので、227ワザと平気(へいき)(よそほ)ひ、
228鬼春別(おにはるわけ)『アハハハハ、229猪口才(ちよこざい)千万(せんばん)な、230仮令(たとへ)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)幾百万(いくひやくまん)(おし)よせ(きた)(とも)231拙者(せつしや)大自在天(だいじざいてん)(さま)より(さづ)けられたる妙法(めうはふ)心得(こころえ)()れば(ただ)一息(ひといき)()()ばさむは()(あた)りで(ござ)る、232()心配(しんぱい)なさるな、233アハハハハ』
234とワザとに身体(からだ)をゆすり、235(はら)(そこ)より(おこ)つて()小慄(こぶる)ひを(まぎ)らさうとする可笑(をか)しさ。
236 ヒルナ、237カルナ両女(りやうぢよ)は、238(はや)くも両将軍(りやうしやうぐん)恐怖心(きようふしん)にかられてゐることを看破(かんぱ)したが、239何食(なにく)はぬ(かほ)して、240表面(うはべ)(つつ)んでゐた。
241久米彦(くめひこ)『イヤ将軍殿(しやうぐんどの)左様(さやう)楽観(らくくわん)出来(でき)ますまい、242一時(いつとき)(はや)軍隊(ぐんたい)(ととの)へ、243黄金山(わうごんざん)()()せようぢやありませぬか。244吾々(われわれ)使命(しめい)は、245(もと)よりかやうな(ところ)籠城(ろうじやう)(いた)すべき(もの)では(ござ)らぬ。246治国別(はるくにわけ)()しよせ(きた)るとすれば、247(かれ)先立(さきだ)つて、248黄金山(わうごんざん)攻落(せめおと)し、249(とりで)によつて治国別(はるくにわけ)()()(ふせ)ぎ、250殲滅(せんめつ)(いた)さうでは(ござ)らぬか』
251(くち)では立派(りつぱ)()つてゐるが、252(その)内心(ないしん)黄金山(わうごんざん)()めよせるのは、253(もつと)両将軍(りやうしやうぐん)(おそ)るる(ところ)である。254さりとて、255ここにグヅグヅしてゐては、256何時(いつ)治国別(はるくにわけ)押寄(おしよ)(きた)るかも(はか)(がた)い、257ブザマな敗軍(はいぐん)をなし、258ヒルナやカルナに内兜(うちかぶと)()すかされ、259卑怯(ひけふ)(をとこ)(おも)はれ、260愛想(あいさう)をつかされては大変(たいへん)だと、261それ(ばか)りに()()んでゐる。
262鬼春別(おにはるわけ)成程(なるほど)……()はばビクトル(さん)陣営(ぢんえい)はホンの休養所(きうやうしよ)(ござ)る、263ここには立派(りつぱ)刹帝利(せつていり)もゐますことなれば、264吾々(われわれ)がお節介(せつかい)(いた)必要(ひつえう)(ござ)るまい。265貴殿(きでん)()意見(いけん)共鳴(きようめい)(いた)し、266(しか)らば軍隊(ぐんたい)全部(ぜんぶ)引率(ひきつ)れ、267進軍(しんぐん)用意(ようい)にかかりませう』
268()()(はら)つて()つてゐるものの、269(すで)治国別(はるくにわけ)はライオン(がは)(わた)つて、270此方(こちら)()()るのではあるまいかと()()でなかつた。271(しか)治国別(はるくにわけ)部下(ぶか)(ひき)つれ、272クルスの(もり)やテームス(たうげ)悠々(いういう)閑々(かんかん)講演会(かうえんくわい)(ひら)子弟(してい)教育(けういく)してゐたのは読者(どくしや)()(ところ)である。273水鳥(みづどり)羽音(はおと)(おどろ)いて、274(もろ)くも遁走(とんそう)した平家(へいけ)弱武者(よわむしや)(その)(まま)心理(しんり)状態(じやうたい)に、275両将軍(りやうしやうぐん)(おそ)はれてゐた。276それ(ゆゑ)(なん)となく(おち)つかない(ふう)()える。
277 ヒルナ(ひめ)落着(おちつ)(はら)つて、
278ヒルナ(ひめ)『モシ将軍(しやうぐん)(さま)279折角(せつかく)此処(ここ)まで兵営(へいえい)(きづ)()げ、280如何(いか)なる(てき)(ふせ)(だけ)準備(じゆんび)(ととの)つてるぢやありませぬか。281かやうな風景(ふうけい)()(ところ)で、282貴方(あなた)一生(いつしやう)(くら)したう(ござ)いますワ。283進軍(しんぐん)なんかおやめになつたら()うですか』
284 鬼春別(おにはるわけ)はシドロモドロの口調(くてう)にて、
285鬼春別(おにはるわけ)『ウンウン、286それもさうだが、287()(のぞ)(へん)(おう)ずるは、288三軍(さんぐん)(しやう)たる(もの)(おこな)ふべき(みち)だ。289さう心配(しんぱい)(いた)すな、290どこ(まで)其方(そなた)()れて()つてやるから、291仮令(たとへ)進軍(しんぐん)したと()つても、292吾々(われわれ)将軍(しやうぐん)だ。293矢玉(やだま)()るやうな(ところ)へは(けつ)しておかないから……サ、294其方(そなた)覚悟(かくご)をして拙者(せつしや)()いて()るのだ。295キツと心配(しんぱい)()らないよ』
296ヒルナ(ひめ)『それでも(なん)だか、297殺伐(さつばつ)()(おそ)はれるやうでなりませぬワ、298ねえカルナさま、299貴女(あなた)どう(おも)ひますか』
300カルナ(ひめ)(わらは)何時(いつ)(まで)(この)陣営(ぢんえい)において(いただ)きたう(ござ)いますがねえ、301モシ久米彦(くめひこ)さま、302どうかさうして(くだ)さいますまいかね』
303久米彦(くめひこ)左様(さやう)気楽(きらく)なことが()つて()れるか。304(てき)間近(まぢか)(おし)よせたり、305(とき)(おく)れては味方(みかた)非運(ひうん)306サ、307一刻(いつこく)(はや)くここを引上(ひきあ)進軍(しんぐん)(いた)すで(ござ)らう』
308カルナ(ひめ)『モシ、309久米彦(くめひこ)将軍(しやうぐん)(さま)310進軍(しんぐん)とは真赤(まつか)(いつは)り、311予定(よてい)退却(たいきやく)ぢや(ござ)いませぬか』
312久米彦(くめひこ)馬鹿(ばか)()へ、313(てき)黄金山(わうごんざん)()り、314かうなる(うへ)一時(いつとき)(はや)神謀(しんぼう)鬼策(きさく)(めぐ)らし、315黄金山(わうごんざん)占領(せんりやう)すべき必要(ひつえう)(おこ)つたのだ、316一時(いつとき)(はや)進軍(しんぐん)用意(ようい)(いた)さねばならぬ』
317とモジモジしてゐる。
318カルナ(ひめ)貴方(あなた)進軍(しんぐん)背進(はいしん)(ござ)いませうね、319どうでも理窟(りくつ)はつくものですね』
320久米彦(くめひこ)(なん)とまあ(くち)のいい(をんな)だなア』
321鬼春別(おにはるわけ)『サ、322(はや)(うま)用意(ようい)(いた)せ、323そして(ひめ)には牝馬(ひんば)用意(ようい)だ。324スパール、325エミシ、326テルンスは全軍(ぜんぐん)指揮(しき)して(あと)よりつづけツ、327いざ久米彦(くめひこ)殿(どの)328先鋒隊(せんぽうたい)(つかまつ)らう』
329(てい)のよい辞令(じれい)で、330(はや)くも逃仕度(にげじたく)にかかつてゐる。
331ヒルナ(ひめ)『モシ将軍(しやうぐん)(さま)332先鋒隊(せんぽうたい)斥候(せきこう)(やく)ぢやありませぬか。333貴方(あなた)(さま)(そう)司令官(しれいくわん)334最後(さいご)()ゆつくりとお(すす)みになつた(はう)安全(あんぜん)(ござ)いませう』
335鬼春別(おにはるわけ)『それもさうだが、336(さき)んずれば(ひと)(せい)すといふことがある、337(これ)兵法(へいはふ)奥義(おくぎ)だ。338(かしら)(まは)らねば()(まは)らぬといふからな。339長蛇(ちやうだ)(ぢん)()つて()くのだから、340(へび)(ある)(ごと)(あたま)(さき)()(あと)から()くのだ、341それで長蛇(ちやうだ)(ぢん)といふのだ』
342(ひめ)(まへ)体裁(ていさい)(つく)り、343自分(じぶん)卑怯(ひけふ)をかくすことにのみ(つと)めてゐる。
344 鬼春別(おにはるわけ)345久米彦(くめひこ)はヒルナ、346カルナの両美人(りやうびじん)(こま)(なら)べ、347一目散(いちもくさん)西(にし)西(にし)へと()けり()く。348(あと)(のこ)つたスパール、349エミシは周章(しうしやう)狼狽(らうばい)(あま)り、350軍隊(ぐんたい)整理(せいり)する(いとま)もなく『退却(たいきやく)々々(たいきやく)』と()ばはり(なが)ら、351(しり)()かけて、352(こま)(またが)り、353軍帽(ぐんばう)後前(うしろまへ)(かぶ)つたり、354(くつ)片足(かたあし)はいたり、355無性(むしやう)矢鱈(やたら)(うま)(けつ)(たた)いて、356敗軍(はいぐん)同様(どうやう)為体(ていたらく)()()した。357一匹(いつぴき)(うま)(くる)へば千匹(せんびき)(うま)(くる)ふとやら、358(うしろ)から強敵(きやうてき)(おそ)(きた)るやうな恐怖心(きようふしん)()られて、359三千(さんぜん)兵士(へいし)(ひと)突倒(つきたふ)()()えて、360()(さき)にと西方(せいはう)さして、361一人(ひとり)(のこ)らず()()つて(しま)つた。
362 ビクトル(さん)(もり)(しげ)みに数十羽(すうじつぱ)(ふくろ)がとまつて、
363『ウツフーウツフーオツホホ、364アホーアホーアホー』
365(こゑ)(そろ)へて()()したり。
366大正一二・二・一四 旧一一・一二・二九 於竜宮館 松村真澄録)

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