霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一五章 騒淫(さういん)ホテル〔一八二一〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第64巻下 山河草木 卯の巻下 篇:第3篇 開花落花 よみ:かいからっか
章:第15章 第64巻下 よみ:そういんほてる 通し章番号:1821
口述日:1925(大正14)年08月20日(旧07月1日) 口述場所:丹後由良 秋田別荘 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年11月7日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる] 主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm64b15
愛善世界社版:201頁 八幡書店版:第11輯 570頁 修補版: 校定版:204頁 普及版:63頁 初版: ページ備考:
001 守宮別(やもりわけ)はお(はな)形勢(けいせい)如何(いかに)と、002(いき)(ころ)して(かんが)へて()たが、003(あま)低気圧(ていきあつ)襲来(しふらい)もないので、004安心(あんしん)して翌日(よくじつ)十時(じふじ)(すぎ)まで(つぶ)れるやうに()(しま)つた。005(はな)はどこやら(ひと)()()ちぬ(ところ)があるので、006一目(ひとめ)(ねむ)らず角膜(かくまく)()ばしらして、007朝間(あさま)(はや)くから、008ヤクをたたき(おこ)し、009(つぎ)()()をしめて、010(やや)小声(こごゑ)になり、
011『これ、012ヤクさま、013昨夕(ゆふべ)(まへ)綾子(あやこ)()(むすめ)があると()ひましたねえ』
014 ヤクは……ウツカリ吾子(わがこ)(こと)(しやべ)り、015()守宮別(やもりわけ)との関係(くわんけい)があらうものなら、016板挟(いたばさ)みになつて此家(ここ)()(こと)出来(でき)ない。017これや(ほう)けるに(かぎ)る……と(はら)をきめ、
018『ハイ()ひました。019(しか)しありや(うそ)ですよ。020つい座興(ざきよう)にアンナ(こと)()つて()たのですよ。021ナアニ、022(わたし)(やう)(もの)半分(はんぶん)でも(むすめ)があつて(たま)るものですか。023(むすめ)さへ()りや、024コンナ難儀(なんぎ)はしませぬからな』
025 お(はな)長煙管(ながきせる)火鉢(ひばち)(ふち)(たた)(なが)ら、026(かしら)左右(さいう)()り、
027『イエイエ駄目(だめ)ですよ。028(はな)()一目(ひとめ)(にら)みたら、029何程(なにほど)(かく)しても駄目(だめ)ですよ。030サアちやつと()ふて(くだ)さい。031()()だからなア』
032何程(なにほど)()()だと仰有(おつしや)つても独身(どくしん)ものの(わたし)033()()(わる)()も、034(かか)女房(にようばう)もカカンツも、035媽村屋(かかむらや)(なに)もありませぬわい』
036(なん)()つても、037(まへ)(かほ)は、038一寸(ちよつと)渋皮(しぶかは)のむけた姫殺(ひめころ)しだよ。039(たて)から()ても(よこ)から()ても、040(をんな)にちやほやされるスタイルだ。041(やなぎ)眉毛(まゆげ)にキリリとした目許(めもと)042(くろ)ぐろしい()(たま)043(はな)恰好(かつかう)()口許(くちもと)()ひ、044(まへ)のやうな美男子(びなんし)を、045()てる(をんな)があるものかいなア。046随分(ずゐぶん)女殺(をんなごろし)をやつたやうな(かほ)だよ。047サアサアほんとに()つて(くだ)さい。048(けつ)して守宮別(やもりわけ)さまに不足(ふそく)()はない、049(まへ)迷惑(めいわく)になるやうな(こと)はせぬから。050守宮別(やもりわけ)さまのひいきばかりせずに、051(はな)のひいきも(ちつ)とはして(くだ)さつては如何(どう)ぢやいな』
052『アーアー(うるさ)(こと)だな。053(まへ)さまの()()れば旦那(だんな)さまの()()らず、054旦那様(だんなさま)(ため)(おも)へばお(まへ)さまに()められるなり、055(わたし)()()がありませぬわ』
056『ホヽヽヽ、057()御覧(ごらん)なさい。058(かへる)(くち)から、059たうとう白状(はくじやう)なさつたぢやありませぬか。060綾子(あやこ)()芸者(げいしや)一体(いつたい)何処(どこ)()いてあるのだい』
061『ハイ、062もう仕方(しかた)がありませぬから(まをし)ますわ。063(しか)(わたし)()つた()めに、064夫婦(ふうふ)喧嘩(げんくわ)でもやられちや、065此処(ここ)()()すより(ほか)はありませぬ。066さうすりや、067主人(しゆじん)(うしな)つた野良犬(のらいぬ)同様(どうやう)068ルンペンするより(ほか)ありませぬ。069さうすれや可愛(かあい)(むすめ)(はぢ)にもなりますし、070まさかの(とき)保証(ほしよう)をして(もら)はにや()(こと)出来(でき)ませぬ』
071『ホヽヽヽ、072(なん)如才(じよさい)()(をとこ)だこと。073(しか)しお(まへ)立場(たちば)とすりや無理(むり)もない(こと)だ。074それなら、075どつとはり()みて百円札(ひやくゑんさつ)一枚(いちまい)()げるから(なに)()()ふのだよ』
076()(なが)ら、077ヤクの(ふところ)蟇口(がまぐち)から百円札(ひやくゑんさつ)一枚(いちまい)()()してそつと捻込(ねじこ)む。
078『ハ、079(さすが)はお(はな)さま、080三千世界(さんぜんせかい)救世主(きうせいしゆ)081シオンの(むすめ)082木花咲耶姫(このはなさくやひめ)生宮(いきみや)083アヤメのお花様(はなさま)084有難(ありがた)頂戴(ちやうだい)(いた)します。085帰命頂礼(きめいちやうらい)謹請再拝(ごんじようさいはい)謹請再拝(ごんじようさいはい)
086『これこれ辛気(しんき)(くさ)い、087ソンナ(こと)どうでもよいぢやないか。088(はや)事実(じじつ)()つて(くだ)さいな。089グヅグヅしとると守宮別(やもりわけ)さまが()きて()るぢやないか』
090『ハイ、091それなら(まを)します。092(たしか)綾子(あやこ)()(むすめ)(ござ)います。093サアこれで(こら)へて(くだ)さい』
094『それ御覧(ごらん)095(むすめ)があるだらう。096(わし)()(ちが)ふまいがな』
097『いや(まこと)にはや、098(おそ)()りまして(ござ)います。099生宮様(いきみやさま)御明察(ごめいさつ)100到底(たうてい)匹夫下郎(ひつぷげらう)のわれわれには、101御心底(ごしんてい)測知(そくち)する(こと)出来(でき)ませぬワイ、102エヘヽヽヽ』
103『その綾子(あやこ)(いつ)たい何処(どこ)()るのだい』
104『ヘエ、105居所(ゐどころ)(まで)申上(まをしあげ)ると約束(やくそく)はして(ござ)いませぬがな』
106『この(ひろ)()(なか)107(たしか)()があると()つた(ところ)で、108居所(ゐどころ)(わか)らぬやうな(こと)(なん)になりますか。109さう意茶(いちや)つかさずと、110とつとと()つて(くだ)さいな』
111『ソンナラドツとはり()んで、112神秘(しんぴ)(とびら)(ひら)きませう。113(じつ)はその(なん)です。114(ある)(ところ)(つと)奉公(ほうこう)をやつて()ますよ。115それはそれは別嬪(べつぴん)ですよ。116(おや)(くち)より()ふのは(なん)ですが失礼(しつれい)(なが)らお(はな)さまのやうな別嬪(べつぴん)でも到底(たうてい)(そば)へは()れませぬな』
117(なに)118別嬪(べつぴん)だと、119そりや大変(たいへん)だ。120その別嬪(べつぴん)何処(どこ)()ると()ふのだい』
121(ある)(ところ)(たしか)()りますがな』
122(ある)(ところ)()つたつて、123地名(ちめい)()はにや(わか)らぬぢやないか』
124()(ところ)()るに(きま)つてゐますがな。125()(ところ)()りさうな(はず)(ござ)いませぬもの』
126『どこの(くに)何処(どこ)(まち)()ると()(こと)()つて(くだ)さい』
127成程(なるほど)128(しか)しコンナ(こと)()ひますと、129旦那様(だんなさま)におつ()()されますわ。130(その)(とき)用意(ようい)にモウ百両(ひやくりやう)(くだ)さいな』
131『エヽ(よく)(ふか)(をとこ)だな、132それ百円(ひやくゑん)
133(また)()()す。
134『エヘヽヽヽヽ、135(たしか)頂戴(ちやうだい)(いた)しました。136三千世界(さんぜんせかい)救世主(きうせいしゆ)137(おほ)ミロクの生宮(いきみや)
138『これこれヤク。139ソンナ(なが)たらしい(こと)はどうでもよい。140(はや)簡単(かんたん)所在(ありか)()ふて(くだ)さいな。141(たす)けて(もら)つたお(れい)にも()かねばならぬからな』
142『ハイ、143パレスチナの(くに)()ります』
144成程(なるほど)145さうだろ さうだろ、146(ところ)はどこだい』
147(ところ)ですかいな。148(ところ)がお(まへ)さま、149(ところ)をすつかり(わす)れて(しま)つたのですよ』
150『これヤク、151百円(ひやくゑん)(かへ)してお()れ。152もうお(まへ)のやうな(たよ)りない(かた)とは掛合(かけあ)つても駄目(だめ)だ。153これから警察署(けいさつしよ)()つて(さが)して(もら)う。154()さへ(わか)ればよいのだから、155(その)百円(ひやくゑん)をお(かへ)し』
156とグツと胸倉(むなぐら)をつかむ。
157『メヽヽヽ滅相(めつさう)な、158これや(わたし)(かね)です。159たとへ(てん)()になつてもこの(かね)(わた)しませぬ』
160『それならもつと(くは)しく()はないかいな』
161『それならもう百円(ひやくゑん)(くだ)さいな。162(くは)しく()ひますから』
163『エヽ仕方(しかた)がない、164これで三百円(さんびやくえん)だよ』
165(じつ)は、166かう()ふて千円(せんゑん)(ばか)りせしめようと(おも)ひましたが、167(にはか)良心(りやうしん)(やつ)弱音(よわね)()いて、168肉体(にくたい)()(どく)がらしますから、169三百円(さんびやくえん)辛抱(しんばう)しておきませう。170(じつ)はステーション街道(かいだう)有明家(ありあけや)綾子(あやこ)()つたら、171界隈(かいわい)()つての美人(びじん)ですよ。172サアもう此処迄(ここまで)いつたら(こら)へて(くだ)さい。173もう(この)(うへ)材料(ざいれう)(ござ)いませぬからな』
174『いや、175よう()ふて(くだ)さつた。176(まへ)ならこそ、177三百円(さんびやくえん)(やす)いものだよ。178サアこれから三百円(さんびやくえん)とこ守宮別(やもりわけ)をとつ()めてやらねばなるまい』
179()(なが)他愛(たあい)もなく()()守宮別(やもりわけ)のポケットに()()れて(さぐ)つて()ると(ちひ)さい名刺(めいし)(あら)はれた。180(はな)はそつと(わが)居間(ゐま)(かへ)老眼鏡(らうがんきやう)をかけてよく()れば、181六号(ろくがう)活字(くわつじ)で、182有明家(ありあけや) 綾子(あやこ)』と(しる)してある、183さうして(よこ)(はう)(ちひ)さい写真(しやしん)がついてゐる。184(はな)(にはか)(かしら)()がのぼり、185卒倒(そつたう)せむ(ばか)りに()(おどろ)いたが(さすが)豪傑女(がうけつをんな)186グツと()()(なほ)し、187()(ふる)はせ(なが)名刺(めいし)(うら)(かへ)して()ると、188(うす)鉛筆(えんぴつ)文字(もじ)(なに)かクシヤクシヤと(しる)してある。189(はな)()(くら)み、190この文字(もじ)()(こと)出来(でき)ず、191たうとう(その)()卒倒(そつたう)して仕舞(しま)つた。192其処(そこ)へボーイの案内(あんない)につれて十七八(じふしちはち)(はな)(あざむ)美人(びじん)(あら)はれ(きた)り、
193漆別(うるしわけ)さまのお部屋(へや)此方(こちら)(ござ)いますか。194有明家(ありあけや)綾子(あやこ)一寸(ちよつと)()にかかり()いとお(つた)(くだ)さいませ』
195 ヤクは一目(ひとめ)()るより吃驚(びつくり)し、
196『ヤ、197(まへ)綾子(あやこ)ぢやないか。198オイ、199コンナ(ところ)()()れては大変(たいへん)だ。200どうか(かへ)つて()大変(たいへん)だからな』
201『イエ、202(わたし)漆別(うるしわけ)さまに(よう)があつて()たのですもの。203何程(なんぼ)(おや)だとて、204(むすめ)恋愛(れんあい)(まで)圧迫(あつぱく)する権利(けんり)(ござ)いますまい』
205『これ(むすめ)206(おや)()(こと)をなぜ()かぬのか』
207『ヘン、208(えら)さうに親顔(おやがほ)して(くだ)さいますなや。209(かあ)さまが()くなつてから後妻(ごさい)(もら)つて(わらは)をいぢめさせ、210沢山(たくさん)財産(ざいさん)(みな)()くして仕舞(しま)つて、211一人(ひとり)(むすめ)高等(かうとう)教育(けういく)()けさせず、212十一(じふいち)やそこらで茶屋(ちやや)売飛(うりと)ばすと()ふやうな無情(むじやう)冷酷(れいこく)(おや)何処(どこ)にありますか、213(なん)仰有(おつしや)つても(わたし)漆別(うるしわけ)さまに()はねばなりませぬ』
214漆別(うるしわけ)さまなぞと、215ソンナお(かた)()られないよ。216アタ()つともない、217(をんな)(をとこ)(たづ)ねると()(こと)()るか、218(はや)(かへ)つて()れ。219のう、220(わし)(たす)けると(おも)つて』
221漆別(うるしわけ)さまが()なくても(かま)ひませぬ。222第一号室(だいいちがうしつ)のお(きやく)さまに()ひさへすればいいのですもの』
223第一号室(だいいちがうしつ)は、224三千世界(さんぜんせかい)生神(いきがみ)225シオンの(むすめ)226木花咲耶姫(このはなさくやひめ)尊様(みことさま)(まつ)つてあるのだ。227人間(にんげん)なぞは()ないから、228サアサア、229とつとと(かへ)つて()れ』
230一号室(いちがうしつ)差支(さしつかへ)れや二号室(にがうしつ)でも三号室(さんがうしつ)でも(かま)ひませぬワ』
231『あゝ(こま)つたな、232(はな)さまが(いま)卒倒(そつたう)しとるので()やうなものの、233コンナ(こと)になつて()たら、234何事(なにごと)(おこ)るか()れやしないわ。235アヽ一層(いつそう)面倒(めんだう)(おこ)らぬ(うち)()()さうかな』
236()()さうと()()すまいと、237貴方(あなた)勝手(かつて)になさいませ。238(わたし)夫婦(ふうふ)約束(やくそく)(まで)した漆別(うるしわけ)さまに()ひさへすれば()いのですもの』
239(なに)240夫婦(ふうふ)約束(やくそく)(まで)したと、241ヤ、242こいつは(こま)つたな。243蔭裏(かげうら)(まめ)時節(じせつ)()れば(はな)()油断(ゆだん)のならぬは(むすめ)とはよく()つたものだわい』
244(きま)つた(こと)ですよ。245(あさ)から(ばん)(まで)色餓鬼(いろがき)(ちまた)へ、246(とう)さまが()()んだのですもの、247修学院(しうがくゐん)(すずめ)蒙求(もうぎう)(さへづ)り、248門前(もんぜん)小僧(こぞう)(まな)ばずに(きやう)()道理(だうり)249(わたし)だつて十三(じふさん)(とし)から恋愛(れんあい)(さと)つて()りますわ。250ホヽヽ、251エヽコンナ没分暁漢(わからずや)のデモお(とう)さまに掛合(かけあ)つても駄目(だめ)だ。252二世(にせ)(ちぎ)つた漆別(うるしわけ)さまに()へばよいのだよ』
253矢庭(やには)にヤクの()()(はな)三号室(さんがうしつ)侵入(しんにふ)した。254()れば、255白粉(おしろい)をベツタリことつけた五十(ごじふ)(あま)りの()アさまが仰向(あふむ)けに(たふ)れて()る。
256(なん)だ、257怪体(けつたい)(ところ)だな』
258()(なが)ら、259第二号室(だいにがうしつ)のドアを()けて這入(はい)つて()ると、260グウグウと夜半(よは)(ゆめ)()(こひ)しい(をとこ)(ねむ)つて()るので、261綾子(あやこ)(そば)により、
262『これ(もう)漆別(うるしわけ)(さま)263綾子(あやこ)(ござ)います。264どうか(おき)(くだ)さい。265もう何時(なんどき)だと(おも)ふていらつしやるの』
266 守宮別(やもりわけ)綾子(あやこ)(なまめか)しい(こゑ)(みみ)()つたと()えてムクムクと()(あが)り、
267『ヤ、268(まへ)綾子(あやこ)だつたか、269(こは)(ゆめ)()た。270一寸(ちよつと)(おれ)はホテル(まで)(かへ)つて()るわ』
271『ホヽヽヽ、272これ旦那(だんな)さま、273(なに)寝呆(ねぼ)けて()らつしやるの。274此処(ここ)はカトリック僧院(そうゐん)ホテルの第二号室(だいにがうしつ)ですよ』
275成程(なるほど)さうだつたな。276(まへ)(また)どうして(たづ)ねて()たのだい』
277女房(にようばう)(をつと)(ところ)(たづ)ねて()るのが(わる)(ござ)いますか、278貴方(あなた)(あんま)(わたし)馬鹿(ばか)にして(くだ)さいますなや。279どうも貴方(あなた)挙動(きよどう)(あや)しいと(おも)つて(かんが)へて()()れば、280(つぎ)()怪物(くわいぶつ)のやうな(をんな)()かしてあるのでせう。281あれや大方(おほかた)貴方(あなた)のレコでせう。282エー(くや)しや残念(ざんねん)やな』
283守宮別(やもりわけ)顔面(がんめん)目蒐(めが)けて(ところ)(かま)はず()きむしる。284守宮別(やもりわけ)(かほ)には(なが)爪創(つめきづ)(あめ)(あし)(やう)額口(ひたひぐち)から咽喉(いんこう)にかけて蚯蚓膨(みみずば)れが出来(でき)(しま)つた。
285『あゝ(ゆる)(ゆる)せ、286さう()きむしられちや、287(いた)くて(たま)らないぢやないか』
288『エヽ、289(とし)(わか)未通娘(おぼこむすめ)だと(おも)つて、290(わたし)馬鹿(ばか)にしよつたな。291サアもう死物狂(しにものぐる)ひだ。292喉首(のどくび)(くら)ひついて、293(いのち)()らねばおきませぬぞや』
294 ヤクはドアの(そと)から様子(やうす)(かんが)へて()たが、295(なん)とはなしに形勢(けいせい)不穏(ふおん)なので、296()けて(はい)らうとすれど、297内部(ないぶ)より(ぢやう)(おろ)してあるので、298一歩(いつぽ)(すす)(こと)出来(でき)ず、299ドアの(そと)地団駄(ぢだんだ)()んで()る。300内部(ないぶ)では守宮別(やもりわけ)綾子(あやこ)両人(りやうにん)がチンチン喧嘩(げんくわ)真最中(まつさいちう)301守宮別(やもりわけ)種茄子(たねなす)(ちから)(かぎ)()めつけられ、302……勘忍々々(かんにんかんにん)人殺(ひとごろし)……と(わめ)きつつ、303やつとの(こと)(ぢやう)(はづ)第三号室(だいさんがうしつ)(まで)(いのち)辛々(からがら)()()した。304(この)物音(ものおと)卒倒(そつたう)して()たお(はな)()がつき()れば守宮別(やもりわけ)(わか)(をんな)()んづほぐれつ、305(つか)みあつて()る。306(はな)は、307かつと(いか)り、
308『コラすべた(をんな)()309(ひと)(をとこ)()りよつて、310覚悟(かくご)せい。311(この)(はな)死物狂(しにものぐる)ひだ』
312綾子(あやこ)(たぶさ)(つか)んで(ひき)づり(まは)す。313綾子(あやこ)守宮別(やもりわけ)とお(はな)両方(りやうはう)から苛嘖(さいな)まれ、
314人殺々々(ひとごろしひとごろし)315(とう)さま(たす)けてお()れ』
316()(さけ)ぶ。317(さすが)のヤクも(わが)()危難(きなん)()るに(しの)びず、
318『この淫乱(いんらん)婆々(ばば)()
319(こぶし)(かた)めお(はな)(かしら)(かほ)区別(くべつ)なく、320丁々発矢(ちやうちやうはつし)()()ゑる。321キヤーキヤー ガタガタ バタンバタン、322ドタンドタンと(とき)ならぬ異様(いやう)(ひび)きに僧院(そうゐん)ホテルのボーイ(れん)も、323吾先(われさき)にと階段(かいだん)(のぼ)(きた)り、324此奴(こいつ)(また)()(みだ)れて(なぐ)(なぐ)られ、325いつ()つるとも()れざれば、326ヤクは一層(いつそう)(こと)327警察(けいさつ)(うつた)()応援(おうゑん)()はむと、328階段(かいだん)()()りる(をり)329(あやま)つて転落(てんらく)し、330()()いて(かへる)をぶつつけたやうにフンノビて仕舞(しま)ひける。
331 (この)騒動(さうだう)も、332ホテルの支配人(しはいにん)(なか)(はい)つて、333やつと(をさ)まり、334綾子(あやこ)有明家(ありあけや)(わた)され、335(はな)(しば)負傷(ふしやう)(なほ)(まで)336エルサレムの病院(びやうゐん)収容(しうよう)される(こと)となりにける。
337大正一四・八・二〇 旧七・一 於由良秋田別荘 加藤明子録)