霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一七章 茶粕(ちやかす)〔一八二三〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第64巻下 山河草木 卯の巻下 篇:第4篇 清風一過 よみ:せいふういっか
章:第17章 第64巻下 よみ:ちゃかす 通し章番号:1823
口述日:1925(大正14)年08月21日(旧07月2日) 口述場所:丹後由良 秋田別荘 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1925(大正14)年11月7日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる] 主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm64b17
愛善世界社版:229頁 八幡書店版:第11輯 581頁 修補版: 校定版:232頁 普及版:63頁 初版: ページ備考:
001 ブラバーサの親切(しんせつ)罵詈(ばり)叱咤(しつた)(もつ)(むく)ひ、002(はうき)掃出(はきだ)さむ(ばか)りの待遇(たいぐう)をして追返(おひかへ)した。003その翌日(よくじつ)004狭苦(せまくる)しい霊城(れいじやう)()(まる)掛軸(かけぢく)(まへ)に、005オコリが(なほ)つたやうな調子(てうし)でお(とら)はチョコナンと(すわ)り、006祝詞(のりと)奏上(そうじやう)(はじ)めたり。
007(祝詞)『小北(こぎた)(やま)(はじ)めエルサレムの霊城(れいじやう)(かみ)つまります、008底津岩根(そこついはね)大弥勒(おほみろく)大神(おほかみ)009日出神(ひのでのかみ)(みこと)もちて、010三千世界(さんぜんせかい)救世主(きうせいしゆ)011寅子姫命(とらこひめのみこと)012つまらぬ餓鬼(がき)腹立(はらた)(れん)の、013ヤクザ身魂(みたま)(ため)に、014身禊払(みそぎはら)(たま)はむとして、015(あら)はれませる荒井戸(あらゐど)四柱(よはしら)大神(おほかみ)016もろもろの曲事(まがこと)(つみ)(けがれ)(はら)(たま)(きよ)(たま)へ、017ブラバーサ、018(はな)悪魔(あくま)退(しりぞ)(たま)へと(まを)(こと)(よし)を、019(てん)大神(おほかみ)()大神(おほかみ)020底津岩根(そこついはね)神達(かみたち)(とも)に、021徳利(とくり)(きこ)()せと(かしこ)みも(まを)す。022ミロク成就(じやうじゆ)大神様(おほかみさま)023上義姫(じやうぎひめ)大神様(おほかみさま)024義理天上日出大神(ぎりてんじやうひのでのおほかみ)(さま)025大広木正宗彦命(おほひろきまさむねひこのみこと)(さま)026木曽義仲姫命(きそよしなかひめのみこと)(さま)027朝日(あさひ)豊阪昇(とよさかのぼ)姫命(ひめのみこと)(さま)028岩根木根立彦命(いはねきねたちひこのみこと)(さま)029(あめ)岩倉放(いはくらはな)彦命(ひこのみこと)(さま)030(いづ)千別彦命(ちわきひこのみこと)(さま)031四方(よも)国中彦命(くになかひこのみこと)(さま)032(あら)ぶる神様(かみさま)033貞子姫命(さだこひめのみこと)(さま)034言上姫命(ことじやうひめのみこと)(さま)035その(ほか)()()ちて御苦労(ごくらう)(あそ)ばした神々様(かみがみさま)036一時(いつとき)(はや)()にお()まし(くだ)さいまして、037神政(しんせい)成就(じやうじゆ)038万民安堵(ばんみんあんど)神世(かみよ)()ちますやう、039(ひとへ)にお(ねがひ)(まを)します。040あゝ惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
041 ポンポンポンポンと四拍手(しはくしゆ)(をは)り、
042『これトンクさま、043もうお(ちや)()いただらうな』
044『ハイ、045夜前(やぜん)から()いて()りますよ』
046『さうかいな、047ソンナラ一寸(ちよつと)048ここへ()つて()ておくれ。049(ひさ)()りで大神様(おほかみさま)にお祝詞(のりと)をあげたものだから、050(のど)(ひつ)ついて仕方(しかた)がない。051あんまり(あつ)いと(した)をやけどするから、052そこは()みかげんにして、053トツトと()つて()ておくれや』
054『ハイ、055(いま)()つて(さん)じます。056オイ、057テクの(やつ)058(はや)土瓶(どびん)をかけぬかい』
059土瓶(どびん)をかけと()つたつて、060(ゆふ)べの(さわ)ぎで、061(てん)にも()にも掛替(かけがへ)のない土瓶君(どびんくん)062切腹(せつぷく)して(しま)つたぢやないか』
063『エー、064()()かぬ、065(いま)(うち)に、066それ(おもて)瀬戸物屋(せとものや)()つて()つて()るのだ。067(おな)(こと)なら白湯(さゆ)()いたのがあつたら、068白湯(さゆ)ぐち()つて()ればいいぢやないか。069サアサア、070ソツトソツト、071足音(あしおと)(しの)ばせて』
072 テクは小便(せうべん)しに()くやうな(かほ)してソツと(おもて)()(しま)つた。
073『これこれ、074(なに)愚図々々(ぐづぐづ)してゐるのだい。075(はや)くお(ちや)をおくれと()ふのに』
076『ハイ、077(いま)差上(さしあ)げます。078一寸(ちよつと)()つて(くだ)さいや』
079(なん)とまア、080早速(さつそく)()()はぬ(をとこ)だこと。081あまりの愚図(ぐづ)で、082可笑(をか)しうて(へそ)がお(ちや)()かしますぞや』
083(わたし)だつて(ゆふ)べの生宮様(いきみやさま)と、084ブラバーサとの掛合(かけあひ)()いて()つて、085(へそ)(ゆふべ)から(ちや)()かして()りますよ。086本当(ほんたう)にブラバーサの(ざま)つたら、087なかつたぢやありませぬか』
088 トンクは(はなし)横道(よこみち)()らし、089一寸(ちよつと)でも(ひま)()れて、090テクが(かへ)つて()時間(じかん)(たも)とうとして()る。091(とら)はブラバーサの攻撃(こうげき)らしい(こと)をトンクが()つたので、092(のど)(かわ)いたのも(わす)れて(しま)ひ、
093『そら、094さうだろ。095(まへ)だつてのう、096トンク、097あの(ざま)()たら(へそ)がお(ちや)()かす(どころ)か、098睾玉(きんたま)まで洋行(やうかう)するだらう』
099『ヘーヘー、100そらさうですとも。101(きも)(つぶ)れて、102おつたまげる(どころ)睾丸(きんたま)はまひ(あが)る、103へそ(はら)がやける(ほど)104(あつ)(ちや)()かします。105イヤ、106モウ、107茶々無茶(ちやちやむちや)(ござ)いましたわい。108チヤンチヤラ可笑(をか)しい。109何程(なにほど)(えら)さうに()つても生宮様(いきみやさま)(まへ)(あら)はれたら、110丁度(ちやうど)(ねこ)(そば)(ねずみ)()たやうなものですが、111ニャーんともチュのおろしやうが(ござ)いませぬわい。112エー、113テクの(やつ)114()()かない野郎(やらう)だな。115土瓶(どびん)折角(せつかく)()つて()(ところ)()()()五分(ごふん)十分(じつぷん)かかるだらうし、116(この)(あひだ)(なん)()つてごまかしておかうかな』
117(くち)(なか)(つぶや)いてゐる。
118『これこれトンクさま、119(いま)(ちひ)さい(こゑ)()つた(こと)120いま一度(いちど)121()つて(くだ)さい。122ごまかすとは、123ソラ、124(たれ)をごまかすのだい』
125『ヘー、126(なん)(ござ)います。127ブラバーサも立派(りつぱ)宣伝使(せんでんし)だと威張(ゐば)つてゐますが、128生宮様(いきみやさま)(はな)(いき)に、129もろくも()つた(ところ)(かんが)へて()ますと、130籾粕(もみかす)胡麻(ごま)かすか、131かるい代物(しろもの)だなア……、132とこのやうに()ふたのですわい』
133『ホヽヽヽ、134籾粕(もみかす)ぢやのうて、135()()すのだらう。136胡麻粕(ごまかす)ぢや()うて、137うまい(こと)生宮(いきみや)を、138ごまかす(つも)りだらうがな。139ソンナ(うそ)()ふやうな生宮(いきみや)ぢや(ござ)いませぬぞや』
140『イエイエ、141(けつ)して(けつ)して、142勿体(もつたい)ない、143大弥勒様(おほみろくさま)生宮(いきみや)を、144ごまかすなぞと、145人民(じんみん)分際(ぶんざい)として、146そんな(だい)それた(こと)出来(でき)ますものか。147第一(だいいち)148(わたし)(あたま)()(なか)悪潮流(あくていりう)に、149もみにもみ(つぶ)され、150悪者(わるもの)(ども)に、151ごまかされ、152脳髄(なうずゐ)が、153ひつからびて、154カスカスになつてゐますもの、155どうして生宮様(いきみやさま)のやうに当意即妙(たういそくめう)智慧(ちゑ)()ますものかい』
156『これ、157トンク、158(はや)くお(ちや)を、159おくれぬかいな』
160『ハイ承知(しようち)(いた)しました。161(じつ)(ところ)土瓶(どびん)(やつ)162あの、163(なん)です。164ブラバーサの態度(たいど)(あき)れたものと()えまして、165(あご)(はづ)し、166(はら)(まで)(やぶ)つて、167てこね()るのですよ。168それだから、169(もつと)(あたら)しい、170真新(まつさら)な、171清新(せいしん)土器(どき)()つて()て、172今日(けふ)初水(はつみづ)()かし、173(しん)()いと(ぞん)じまして、174(いま)テクに()ひにやつた(ところ)(ござ)います。175どうぞ一寸(ちよつと)176()(くだ)さいませ』
177『いかにも、178そりや結構(けつこう)だ、179いい(ところ)()がついた。180(なん)()つても生宮様(いきみやさま)のお(あが)(あそ)ばす土瓶(どびん)と、181トンク、182テクの奴連中(やつこれんちう)と、183今迄(いままで)のやうに(ひと)つの土瓶(どびん)(ちや)()かして()つたのが間違(まちがひ)だ。184今日(けふ)から(あたら)しくなつて、185イヤ(まこと)結構(けつこう)だ。186神様(かみさま)もさぞ御満足(ごまんぞく)(あそ)ばすだらう』
187『それに、188生宮様(いきみやさま)189よう(かんが)へて御覧(ごらん)なさい。190半狂人(はんきちがひ)曲彦(まがひこ)や、191(はな)さまが使(つか)つてゐた土瓶(どびん)ですもの。192(ゆふ)べの(さわ)ぎで、193生宮様(いきみやさま)のお(いど)使(つか)ひ、194神様(かみさま)がお土瓶(どびん)(さま)を、195滅茶々々(メチヤメチヤ)にお()(あそ)ばしたのだと、196(わたし)はこのやうに、197おかげを(いただ)かして(もら)ひますわ』
198成程(なるほど)199(まへ)()(とほ)り、200(わし)()(とほ)り、201チツとも間違(まちがひ)ありますまい。202ホヽヽヽ』
203 かかる(ところ)へ、204テクは青土瓶(あをどびん)をひつ()げて(かへ)り、
205『イヤ、206これはこれは、207(はや)(ござ)います。208サアお(ちや)()きました。209どうぞお(あが)(くだ)さいませ』
210『これテクさま、211(さら)土瓶(どびん)()つて()(くだ)さつて(まこと)結構(けつこう)だが、212()()かすのなら、213(なん)だよ、214(はじ)めてだから、215あまり(あつ)いお()()かすと、216(しり)()れますぞや。217そして(くす)べぬやうにせないと、218(すぐ)(まへ)(かほ)のやうに真黒(まつくろ)になるからな。219上等(じやうとう)炭火(すみび)()かして(くだ)さいや』
220『ヘー、221瀬戸物屋(せとものや)(おやぢ)222仲々(なかなか)()()いた(やつ)で、223(さら)土瓶(どびん)()()かすのは仲々(なかなか)むつかしい、224商売柄(しやうばいがら)225(ひと)(をし)へてあげませう、226()ひましてな、227それはそれは立派(りつぱ)唐木(からき)(つく)つた角火鉢(かくひばち)(うへ)に、228ソツとのせて、229上等(じやうとう)のお(ちや)をチヨツトつまみ、230ガタガタガタと()かして()れました。231本当(ほんたう)()加減(かげん)ださうで(ござ)いますよ』
232『そりや仲々(なかなか)()()いてゐる。233サア(ひと)つこのコツプについで(くだ)さい』
234『ハイ、235承知(しようち)(いた)しました』
236路地口(ろぢぐち)でソツと()()んでゐた小便(せうべん)(しる)七分(しちぶ)(ばか)りついで、237(うやうや)しく手盆(てぼん)()せ、238おち()(はら)つてお(とら)(まへ)につき()す。239(とら)(のど)(かわ)いてゐるので、240小便(せうべん)とは()()かず、241()びつくやうにして、242グイグイグイと()(をは)り、
243『ハ、244(なん)だか、245(めう)(にほひ)がするぢやないか』
246(なん)()つても、247土瓶(どびん)(さら)(ござ)いますから、248(くすり)(にほひ)がチツトは()るさうです。249どうです、250一杯(いつぱい)251つぎませうか』
252『イヤ、253もう結構(けつこう)だ、254とは()ふものの、255コンナ結構(けつこう)なお土瓶(どびん)のお(さら)のお(ちや)をお粗末(そまつ)にお取扱(とりあつかひ)する御訳(おわけ)にはお()(まを)さぬから、256一杯(いつぱい)ついで(くだ)さい』
257『ヘー承知(しようち)(いた)しました』
258()(なが)(また)もやコツプに今度(こんど)九分五厘(くぶごりん)(まで)()いで()た。
259『ホヽヽヽヽ、260(なん)と、261(いろ)よう()てゐること、262エー今日(けふ)御褒美(ごほうび)大弥勒(おほみろく)太柱(ふとばしら)263日出神(ひのでのかみ)生宮(いきみや)のお(さが)りを、264(まへ)にも()まして()げやう。265結構(けつこう)結構(けつこう)なお(ちや)(さま)ぢやぞえ。266サア、267テクさま、268(いただ)いて(くだ)さい。269滅多(めつた)生宮様(いきみやさま)(くち)のついたお茶碗(ちやわん)(いただ)くと()(こと)出来(でき)ませぬよ』
270『イヤ、271もう沢山(たくさん)(ござ)います。272今日(けふ)(なん)だか(はら)()つて()りますので、273水気(みづけ)一切(いつさい)274()しくは(ござ)いませぬ』
275『このお(ちや)さまはな、276御供水(ごくすい)同然(どうぜん)だ。277生宮(いきみや)(いただ)けと()つたら、278(そむ)(こと)出来(でき)ませぬぞや』
279『どうか、280おかげを、281トンクに(ゆづ)つてやつて(くだ)さいませぬか』
282 トンクは、283テクの(やつ)どうも(あや)しい、284途中(とちう)小便(せうべん)でもこいておきやがつたのぢやあるまいかと、285やや(うたが)(はじ)めてゐた最中(さいちう)なので、
286『ヤー、287(おれ)結構(けつこう)だ。288今日(けふ)水気(みづけ)一切(いつさい)()()くない。289テク、290(まへ)生宮様(いきみやさま)から(いただ)かして(もら)つたのだから一滴(ひとしづく)もこぼさず、291御神徳(おかげ)だ、292グツと、293(おも)()つてやつておき(たま)へ。294(おれ)としては、295どうも、296何々(なになに)ぢや、297マア自業自得(じごうじとく)だ。298サアサア(いただ)いた(いただ)いた』
299『これほど結構(けつこう)なお(ちや)(さま)が、300()()らぬのかいな。301ソンナラ仕方(しかた)がない、302このお(ちや)さまは、303()げて、304あげる。305イヤ、306(ちや)さまは()かしなさい。307そして、308土瓶(どびん)(はひ)でスツクリ(なか)から(そと)(まで)()(まで)309(みが)いておくのだよ』
310『ハイ、311承知(しようち)(いた)しました』
312匆々(さうさう)裏口(うらぐち)溝溜(どぶたま)りへ(はな)皺寄(しわよ)(なが)()ちあけ、313(はい)(みづ)(ささら)とで大清潔法(だいせいけつはふ)(おこな)ひ、314チヤンと(はし)りの(たな)安置(あんち)しておいた。
315『これ、316テク、317トンクの両人(りやうにん)318(には)かに、319干瓢(かんぺう)()しくなつたから、320(まち)()一斤(いつきん)(ほど)()つて()(くだ)さいな』
321『ハイ、322エー、323(わたし)一人(ひとり)使(つかひ)(まゐ)ります。324()()りのトンクは、325どうかお(そば)(おい)てやつて(くだ)さい』
326『イヤイヤお(まへ)のやうな口穢(くちぎたな)いものは、327一人(ひとり)やると、328(みち)干瓢(かんぺう)をしがみて(しま)ふから目方(めかた)()つて大変(たいへん)損害(そんがい)だ。329口近(くちちか)いものはヤツパリ行儀(ぎやうぎ)のよい、330トンクに()つて()(もら)はう。331その(かは)りにお(まへ)一寸(ちよつと)使(つかひ)()つて(くだ)さい。332エルサレムのお(みや)へ、333(わたし)病気(びやうき)本復(ほんぷく)したのでお礼詣(れいまゐ)りにだよ』
334 テクとトンクは『ハイハイ』と(ふた)返事(へんじ)小銭(こぜに)を、335()ツつかみ()つて()く。336干瓢(かんぺう)はツヒ(ちか)くの(みせ)にあるので、337十分(じつぷん)たたぬ()にトンクは一斤(いつきん)(ほど)買求(かひもと)めて(かへ)つて()た。
338生宮様(いきみやさま)339えらう(おそ)うなつて()みませぬ』
340『おそい(どころ)か、341(まへ)(なつ)牡丹餅(ぼたもち)だよ。342本当(ほんたう)(あし)(はや)いぢやないか。343使(つかひ)(ある)きは、344(まへ)(かぎ)るよ。345今日(けふ)は、346この生宮(いきみや)干瓢(かんぺう)()いて神様(かみさま)にお(そな)へをしたり、347(まへ)にも(いただ)かしたいから()づから、348料理(れうり)をしませう。349テクの(やつ)350エルサレムのお(みや)(まゐ)れと()つておいたのに、351(また)どこに、352()れて()くか(わか)らないから、353(まへ)354御苦労(ごくらう)だが一寸(ちよつと)調(しら)べて()(くだ)さらないか』
355成程(なるほど)356委細(ゐさい)承知(しようち)(いた)しました』
357()ふより(はや)く、358窮屈(きうくつ)皺苦茶婆(しわくちやばば)アの小言(こごと)()いて()るより、359(そと)空気(くうき)()れた(はう)面白(おもしろ)いと、360匆々(さうさう)()でて()く。361その(あと)でお(とら)干瓢(かんぺう)(かつを)のだしを()れ、362グツグツと(ふく)れる(ところ)(まで)()()げ、363神様(かみさま)にもお(そな)へをし、364自分(じぶん)とトンクとの(ぶん)をしまひおき、365あとの(のこ)つた干瓢(かんぺう)を、366(しば)らく(みづ)(ひた)し、367甘味(あまみ)をぬいて(しま)ひ、368(ふたた)土瓶(どびん)(なか)へつツ()み、369シスセーナをやつて、370(ふたた)火鉢(ひばち)土瓶(どびん)をかけ、371グツグツグツとたぎらし、372テクの(ぜん)()して、373(さら)一杯(いつぱい)()つておいた。374(しばら)くすると、375トンク、376テクは(こは)さうに(かへ)つて()た。
377『もし生宮様(いきみやさま)378エー途中(とちう)でテクに出会(であ)ひまして、379無事(ぶじ)(かへ)りまして(ござ)います』
380『アヽそれはそれは御苦労(ごくらう)千万(せんばん)381さア(はら)()つただらう、382朝御飯(あさごはん)(あが)つて(くだ)さい。383(わたし)もお(まへ)さまと一緒(いつしよ)御飯(ごはん)(あが)らうと(おも)つて、384空腹(すきばら)をかかへて()つて()つたのだよ』
385『それはそれは。386炊事(すゐじ)(まで)生宮様(いきみやさま)にさせまして、387オイ、388テク、389(いただ)かうぢやないか。390大弥勒様(おほみろくさま)のお()づからの御料理(ごれうり)だ。391コンナ光栄(くわうえい)は、392滅多(めつた)にあるまいぞ』
393今日(けふ)生宮(いきみや)炊事(すゐじ)をするけれど、394明日(あす)からはトンクさまに(ねが)ひますよ』
395『はい、396承知(しようち)(いた)しました』
397三人(さんにん)食卓(しよくたく)(かこ)み、398干瓢(かんぺう)副食物(ふくしよくぶつ)で、399朝飯(あさはん)をパクつき(はじ)めた。
400(なん)とマア、401干瓢(かんぺう)(あぢ)がいいぢやありませぬか。402(なん)ともかとも()れぬ(あぢ)(いた)しますワ』
403『ン、404うまいな、405(しか)し、406チツと(くさ)いぢやないか』
407(なに)408(くさ)いのが価値(ねうち)だ、409(かつを)()だし(かをり)だよ』
410『さうだらうかな』
411()(なが)ら、412(とら)もトンクも、413(うま)さうに()つてゐるので、414自分(じぶん)(あや)しいと(おも)(なが)ら、415一切(ひとき)れも(のこ)さず(たひら)げて(しま)つた。
416『ホヽヽヽヽ、417これテク、418どうだつたい。419(まへ)には特別(とくべつ)御守護(ごしゆご)(あた)へてあるのだよ。420最前(さいぜん)返礼(へんれい)にな。421チツと(ばか)り、422(むく)いしたのだから、423(わる)(おも)つて(くだ)さるなや、424ホヽヽヽヽ』
425 テクは小田(をだ)(かへる)の、426()きそこねたやうな(つら)をし(なが)ら、427ダマリ()んで(しま)つた。428そこへスタスタ(かへ)つて()たのはツーロであつた。
429御免(ごめん)なさい。430えらう(おそ)くなつて()みませぬ。431只今(ただいま)かへりました。432ヤア、433トンク、434テクお(まへ)は、435もう(かへ)つてゐるのかい』
436トンク『貴様(きさま)437どこへ()つて()つたのだい。438生宮様(いきみやさま)大変(たいへん)立腹(りつぷく)して(ござ)つたぞ。439まるで鉄砲玉(てつぱうだま)のやうな(やつ)だな。440()たら(かへ)(こと)()らないのだから、441(こま)つたものだよ』
442『ナニ、443大変(たいへん)(ひま)がいつて、444すまなかつたが、445その(かは)生宮様(いきみやさま)(たい)し、446ドツサリとお土産(みやげ)()つて()たのだ。447釈迦様(しやかさま)でも御存(ごぞん)じないやうな、448秘密(ひみつ)(さぐ)つて()たのだからなア』
449『これ、450ツーロ、451(わし)におみやげとは、452ドンナ(こと)ぢやいな。453大方(おほかた)(はな)大広木(おほひろき)さまとの秘密(ひみつ)でも(さぐ)つて()たのだらう』
454『イヤ、455御賢察(ごけんさつ)(おそ)()ります。456(わたし)(じつ)は、457ヤクの(あと)をおつかけて(まゐ)りました(ところ)458行衛(ゆくゑ)()れないので申訳(まをしわけ)がないと(ぞん)じ、459二三日(にさんにち)アメリカン・コロニーの食客(しよくきやく)をやつてゐましたが、460大広木正宗(おほひろきまさむね)さまとお(はな)さまとが、461カトリックの僧院(そうゐん)ホテルで(しん)ウラナイ(けう)()てられると()(こと)()き、462ソツと()()つた(ところ)463ヤクの(やつ)464階子段(はしごだん)(した)(だい)()になつて、465フンのびてゐるぢやありませぬか。466大勢(おほぜい)のボーイがよつて、467ワイワイ(さわ)いでゐる、468医者(いしや)()()る、469大変(たいへん)騒動(さうだう)でしたよ』
470(なん)と、471マア天罰(てんばつ)()ふものは、472(おそ)ろしいものだな。473(この)生宮(いきみや)面態(めんてい)泥箒(どろばうき)でなぐつた(むく)ひだらうよ。474それで一寸(ちよつと)475溜飲(りういん)(さが)りました。476どうも(かみ)さまと()ふものは、477(えら)いものだわい。478そしてお(はな)大広木正宗(おほひろきまさむね)さまの様子(やうす)()いて()なかつたかい』
479『ヘーヘー、480()くの()かぬのつて、481大変(たいへん)(こと)(おこ)つて()ります。482守宮別(やもりわけ)大広木(おほひろき)さまはお(はな)さまと結婚式(けつこんしき)()げ、483新宗教(しんしうけう)()てやうとして(ござ)つた(ところ)へ、484有明家(ありあけや)綾子(あやこ)()白首(しらくび)()ひに()たものですから、485(はな)さまと大喧嘩(おほけんくわ)(おこ)り、486大広木(おほひろき)さまは種茄子(たねなす)引張(ひつぱ)られて()をまかすやら、487(はな)さまは(あたま)(なぐ)られて発熱(はつねつ)し、488囈言(うさごと)(ばか)()ふので、489博愛(はくあい)病院(びやうゐん)入院(にふゐん)しました』
490『ホヽヽヽ、491(なん)とマア(かみ)さまは(えら)いお(かた)だな。492(まこと)さへ(まも)りて()りたら(かみ)(かたき)()つてやるぞよと、493いつも日出(ひので)さまが仰有(おつしや)るが、494ヤツパリ(あく)(ぜん)には(かな)ひますまいがな、495(しか)有明家(ありあけや)綾子(あやこ)()(をんな)496()()いた(やつ)だ。497蹴爪(けづめ)()えたお(はな)喧嘩(けんくわ)するなぞと、498本当(ほんたう)末頼(すゑたの)もしい。499ドーレ、500それでは、501守宮別(やもりわけ)さまの御見舞(おみまひ)()かねばなるまい。502所在(ありか)(わか)つた以上(いじやう)は、503一刻(いつこく)猶予(いうよ)出来(でき)ぬ。504トンク、505テク、506(まへ)神妙(しんめう)にお留守(るす)をしてゐて(くだ)さい。507(かなら)小便茶(せうべんちや)なぞを()かしてはなりませぬぞや。508これツーロ、509案内(あんない)しておくれ』
510『ハイ、511承知(しようち)(いた)しました』
512(さき)()()でて()く。513(とら)はダン(じり)をプリンプリンと中空(ちうくう)に、514ブかつかせ(なが)ら、515表街道(おもてかいだう)()て、516ツーロと(とも)自動車(じどうしや)(やと)ひ、517カトリックの僧院(そうゐん)ホテルを()して(いそ)()く。
518大正一四・八・二一 旧七・二 北村隆光録)