霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一八章 月下(げつか)(つゆ)〔一七二〇〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第67巻 山河草木 午の巻 篇:第4篇 山色連天 よみ:さんしょくれんてん
章:第18章 第67巻 よみ:げっかのつゆ 通し章番号:1720
口述日:1924(大正13)年12月28日(旧12月3日) 口述場所:祥雲閣 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1926(大正15)年8月19日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
シャカンナは岩屋を引き払い、娘スバール姫と部下コルトンだけを従え、朝倉谷へ隠れた。
一ヶ月ほどしたある夜、山道に迷ったスダルマン太子とアリナが小屋へやってくる。
コルトンは天狗と間違えて追い払おうとするが、シャカンナは二人を小屋へ泊める。
世情を伺う話の中から、太子とアリナの素性が明らかになり、またシャカンナがアリナの父の元政敵であったことがわかる。
アリナはシャカンナに父の罪を謝し、太子はシャカンナに帰城を勧めるが、断られる。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm6718
愛善世界社版: 八幡書店版:第12輯 117頁 修補版: 校定版:237頁 普及版:68頁 初版: ページ備考:
001 シャカンナはタニグクの(やま)(ふもと)なる岩窟(いはや)附属(ふぞく)せる建物(たてもの)全部(ぜんぶ)(やき)(はら)ひ、002スバール(ひめ)とコルトンを(したが)へ、003朝倉谷(あさくらだに)(かく)れ、004()(しの)んで一ケ月(いつかげつ)(ばか)りも(さび)しき月日(つきひ)(おく)つた。005十五夜(じふごや)満月(まんげつ)頭上(づじやう)(たか)(かがや)いてゐる。006シャカンナ(および)スバール(ひめ)室内(しつない)(よこ)たはり、007(はや)くも(いびき)(こゑ)さへ屋外(をくぐわい)(きこ)えてゐる。008コルトンは()()つて(ねむ)られず、009谷川(たにがは)(なが)れに(つき)(かげ)(うつ)つて、010面白(おもしろ)(くだ)けて(なが)るる(さま)()(きよう)()つてゐた。011そこへ(うへ)(はう)(やま)から012小柴(こしば)をペキペキ()(をり)(なが)ら、013うら(わか)二人(ふたり)貴公子(きこうし)(くだ)つて()た。
014貴公子(きこうし)『エ、015一寸(ちよつと)(もの)をお(たづ)(まをし)ますが、016ここは(なん)といふ(ところ)(ござ)いますか』
017コル『此処(ここ)山奥(やまおく)だ。018そして谷川(たにがは)(ほとり)だ。019(むかし)から(ひと)()(こと)のない場所(ばしよ)だから、020名前(なまへ)などあるものか。021マア、022ココ()をつけておけば()いのだ。023一体(いつたい)(いま)ごろにウロウロと、024(この)山奥(やまおく)(なに)してゐるのだ。025そしてお(まへ)(なん)()()だ。026()かしてくれ』
027()『ハイ(わたし)はアリナと(まを)します。028一人(ひとり)(かた)(わたくし)御主人(ごしゆじん)(ござ)いますが、029つい山野(さんや)風光(ふうくわう)(あこが)れて、030()らず()らずに斯様(かやう)(ところ)(まよ)()み、031(この)(やま)(うへ)因果腰(いんぐわごし)をきめて野宿(のじゆく)をせうと(おも)ふて()りました(ところ)032猛獣(まうじう)(こゑ)(しき)りに(きこ)えて()る。033コリヤ()うしては()られないと谷底(たにぞこ)()れば、034()()(かす)かな火影(ほかげ)がまたたいてゐたので、035これは(たしか)(ひと)住居(すまゐ)してゐる(いへ)だらう。036(なに)()もあれ、037あの()目当(めあて)辿(たど)りついて、038一夜(いちや)宿(やど)(ねが)ひたいと、039主従(しゆじゆう)二人(ふたり)(いばら)にひつかかり(あし)(きず)づけ、040(あるひ)(すべ)(ころ)げなどしてヤツと此所(ここ)(まで)(まゐ)りました。041どうか一夜(いちや)宿(やど)をお(ねが)(まを)したう(ござ)います』
042コル『此処(ここ)(そま)小屋(ごや)だから、043(おれ)(ほか)(たれ)もゐないのだ。044そして一夜(ひとよさ)宿(やど)宿泊(しゆくはく)さして()めてくれと()つた(ところ)で、045食物(しよくもつ)()(もの)もなし、046夜具(やぐ)蒲団(ふとん)もなし、047どうする(こと)出来(でき)やしない。048こんな穢苦(むさくる)しい(うち)厄介(やくかい)になるよりも三里(さんり)(ばか)り、049此処(ここ)(ひがし)(むか)つて()かつしやい。050其処(そこ)には(おほ)きな岩窟(いはや)があると()(こと)だ。051(ひら)真平(まつぴら)御免(ごめん)(かうむ)りますワ』
052アリナ『左様(さやう)では(ござ)いませうなれど、053今日(けふ)三日三夜(みつかみよさ)054(ろく)食物(しよくもつ)もとらず、055身体(しんたい)(なは)(ごと)(つか)()て、056(いのち)カラガラ、057(この)あかり目当(めあて)(まゐ)つたので(ござ)います。058此処(ここ)貴方(あなた)(ことわ)られては、059大変(たいへん)御主人(ごしゆじん)(ちから)(おと)されます。060(わたし)だつて、061最早(もはや)一歩(いつぽ)(すす)勇気(ゆうき)(ござ)いませぬ。062どうか(そま)小屋(ごや)(なか)一夜(いちや)()(くだ)さいませぬか』
063コル『エー、064しつこい(をとこ)だな。065(いや)()つたら、066どこ(まで)(いや)だ。067(まへ)のやうな天狗(てんぐ)狗賓(ぐひん)()めてたまるものか。068サアサアとつとと帰宅(きたく)して(かへ)つて(くだ)さい。069茅屋(あばらや)なれど(すなは)(えう)するに、070(とり)(なほ)さず、071(この)家屋(かをく)(いへ)は、072(おれ)拙者(せつしや)(ぼく)住居(ぢうきよ)(すま)場所(ばしよ)だ』
073 太子(たいし)は『ハヽヽヽ』と(ちから)なき(こゑ)(わら)ふ。
074コル『オイ天狗(てんぐ)狗賓(ぐひん)075(なに)可笑(をか)しう(ござ)いますか。076(べつ)面白(おもしろ)生活(せいくわつ)(くら)しでもなし、077(そま)木挽(こびき)(ただ)一人(ひとり)078(ひと)りで、079営々(えいえい)(かせ)いでをるのですよ。080アタ(いや)らしい(わら)ひをして(くだ)さるな。081エー、082一月前(ひとつきまへ)から(ろく)なこた、083チツとも出来(でき)やしないワ。084玄真坊(げんしんばう)がやつて()やがつて、085それからあんな悲惨(ひさん)なみじめな(ざま)になり、086ヤツと此処(ここ)(まで)遁走(とんそう)して()げて()て、087厭世(えんせい)して(かく)れてをれば、088(やま)天狗(てんぐ)狗賓(ぐひん)がソロソロかぎつけて、089一夜(いちや)一夜(ひとよさ)を、090宿泊(しゆくはく)させて()めてくれなんて、091たまつたものぢやありませぬ。092玄真坊(げんしんばう)一夜(いちや)()めた(ばか)りで、093あんな大騒動(おほさうどう)大騒(おほさわ)ぎが(おこ)つたのだ。094モウ客人(きやくじん)(ひと)()めるのはコリコリだ。095どうか、096(ほか)をお(たづ)(くだ)さい。097(わたし)(ぼく)拙者(せつしや)(これ)から就寝(しうしん)して()ます。098左様(さやう)なら……』
099()ふより(はや)(そま)小屋(ごや)(うち)姿(すがた)をかくし、100(なか)から()(ぱり)をかうて(しま)つた。
101 二人(ふたり)最早(もはや)歩行(ほかう)する勇気(ゆうき)もなく、102(そら)(あふ)いで(つき)(おもて)(なが)(なが)ら、103述懐(じゆつくわい)(うた)つてゐる。
104太子(たいし)大空(おほぞら)三五(さんご)(つき)(かがや)けど
105(こころ)(そら)(くも)(つつ)まる。
106いかにせむ火影(ほかげ)(たの)みて()てみれば
107げにもすげなき(そま)()はぢき』
108アリナ『あゝ()れは太子(たいし)(きみ)諸共(もろとも)
109(この)山奥(やまおく)(ほろ)びむとぞする。
110(はら)はすき(あし)はだるみて(ちから)なく
111(つき)(かげ)のみ(ちから)とぞ(おも)ふ。
112(この)宿(やど)(あるじ)(こころ)あるならば
113今宵(こよひ)(やす)(いき)つがむものを』
114太子(たいし)『あゝ、115アリナ116(わたし)張詰(はりつ)めた勇気(ゆうき)が、117どこへやら()()せ、118ガツカリとして()た。119()(なか)(なん)()無情(むじやう)なものだらうな』
120アリ『御尤(ごもつと)もで(ござ)います。121(いま)()(なか)はおちぶれ(もの)()れば、122(あし)げにして(とほ)るといふ極悪(ごくあく)世界(せかい)(ござ)いますから、123人情(にんじやう)うすき(こと)(かみ)(ごと)く、124到底(たうてい)(この)()にも、125()めてはくれますまい。126(しか)しながら最早(もはや)一歩(いつぽ)(あゆ)めませぬから、127谷川(たにがは)(なが)れを(なが)(なが)月下(げつか)(ねむ)りませう』
128 屋内(をくない)にはシャカンナの(こゑ)
129シャ『オイ、130コルトン、131(きさま)132(いま)(そと)で、133(なに)(ひと)(ごと)()つてゐたのだ』
134コル『ヘー、135(べつ)(ひと)(ごと)()つてゐたのぢや(ござ)いませぬ。136天狗(てんぐ)狗賓(ぐひん)二人(ふたり)もやつて()ましてアダをするし、137宿泊(しゆくはく)さして()めてくれの、138(なん)のと()ふものですから、139極力(きよくりよく)(ちから)(かぎ)拒否(きよひ)して(こば)んでゐたのです。140中々(なかなか)執拗(しつえう)なしぶとい、141代物(しろもの)(ござ)いましたよ』
142シャ『それでも、143(きさま)144人間(にんげん)(こゑ)(もの)()つてゐたぢやないか。145よもや天狗(てんぐ)ぢやあるまい。146()(かく)147()めてやつたらどうだ』
148コル『メヽ滅相(めつさう)な、149あんな怪物(くわいぶつ)化物(ばけもの)屋内(をくない)(いへ)(なか)()れてたまりますか。150恐怖心(きようふしん)(おそ)ろしがつて、151手足(てあし)戦慄(せんりつ)して(ふる)ひます。152どうか、153そんな(こと)()はない(やう)にして(くだ)さい』
154シャ『()()て、155(おれ)一遍(いつぺん)(しら)べて()る。156(きさま)では(わけ)(わか)らぬ』
157()(なが)ら、158粗末(そまつ)(しば)()(おし)あけ、159屋外(をくぐわい)()()れば、160(ゆき)(あざむ)白面(はくめん)青年(せいねん)二人(ふたり)161顔面(がんめん)(つき)(てら)され(なが)ら、1611(はや)くも(よこ)たはつてゐる。
162シャ『(いづ)れの(かた)かは()らぬが、163そんな(ところ)()てゐては、164夜露(よつゆ)がかかつて、165身体(からだ)衛生(ゑいせい)()くない。166むさ(くる)しい茅屋(あばらや)なれど、167(かま)ひなくば、168(とま)りなさつたら()うです』
169 (この)(こゑ)二人(ふたり)天使(てんし)(すく)ひの御声(みこゑ)(ごと)(うち)(よろこ)び、170やをら()(おこ)し、171丁寧(ていねい)辞儀(じぎ)をし(なが)ら、172(ちから)なき(こゑ)にて、
173アリ『(わたくし)はタラハン(じやう)()んでゐる若者(わかもの)(ござ)いますが、174つい山野(さんや)風光(ふうくわい)(あこが)れ、175(つぎ)から(つぎ)へと景勝(けいしよう)(さぐ)(うち)176(みち)()(まよ)ふて今日(けふ)三日(みつか)(あひだ)パンも()はず、177(この)山中(さんちう)(まよ)()み、178(やうや)(かす)かな火光(くわくわう)(みと)めて、179此処(ここ)(まで)辿(たど)りつきましたので(ござ)います。180当家(たうけ)(わか)(かた)にいろいろと御願(おねが)(いた)しましたけれど、181手厳(てきび)しく拒絶(きよぜつ)されましたので、182主従(しゆじゆう)困果腰(いんぐわごし)をすゑ、183庭先(にはさき)(やす)まして(いただ)いてをつた(ところ)(ござ)います』
184シャ『(なに)185タラハン()住人(ぢうにん)とな。186フーン、187(しか)(なが)()(かく)(とま)つて(くだ)さい。188(なか)がすいて()れば、189パンの一片(ひときれ)二片(ふたきれ)はありますから、190それを(しん)ぜませう。191(ちや)(さいは)いあつう()いて()ります』
192 二人(ふたり)(よろこ)びは(たと)ふるに(もの)なく、193(その)親切(しんせつ)簡単(かんたん)感謝(かんしや)(なが)ら、194(あるじ)(あと)()いて(きは)めて(ちひ)さき茅屋(ばうをく)入口(いりぐち)(くぐ)り、195ヤツと安心(あんしん)して()であんだ(とこ)(うへ)(かや)()いてある座敷(ざしき)(こし)(うち)かけ、196ホツと一息(ひといき)をついた。
197シャ『オイ、198スバール、199(この)二人(ふたり)(かた)にパンをあげてくれ。200そして松明(たいまつ)()(あか)くしてあげてくれ。201(ちや)()むのだよ』
202 スバールは『ハイ』といひ(なが)ら、203(はづ)かしげにパンを取出(とりだ)し、204(うるは)しい(たま)(やう)(てのひら)にのせて、205二人(ふたり)(まへ)(つき)()した。206二人(ふたり)は、
207『ハイ有難(ありがた)う』
2071といふより(はや)く、208餓鬼(がき)(ごと)くに(ほほ)ばつて(しま)つた。209スバールは(ちや)()んで、2091(まへ)におき(なが)ら、210(しば)()んだ衝立(ついたて)(かげ)にかくれて(しま)つた。
211シャ『お(まへ)さまは、212最前(さいぜん)タラハン()住人(ぢうにん)だと()つたが、213(この)(ごろ)人気(にんき)はどんな(もの)ですかな』
214アリ『ハイ、215どうも不景気風(ふけいきかぜ)()きまくつて、216経済界(けいざいかい)(ほとん)行詰(ゆきづま)りです。217それに金価(きんか)三割(さんわり)暴騰(ばうとう)したものですから、218紙幣(しへい)下落(げらく)し、219経済界(けいざいかい)混乱(こんらん)()つたら、220(じつ)にみじめなものです。221(おほ)きな商店(しやうてん)がバタバタと(つぎ)から(つぎ)(たふ)れて()有様(ありさま)です。222そこへバラモン(ぐん)(ちか)(うち)()めて()るといふ(うはさ)人心(じんしん)恟々(きようきよう)として、223(うへ)(した)への大混雑(だいこんざつ)(ござ)います』
224シャ『(この)(かた)(をんな)のやうな綺麗(きれい)な、225気品(きひん)(たか)御人(ごじん)だが、226ヤハリ、227タラハン()御生(おうま)れですかな』
228アリ『ハイ、229(わたくし)主人(しゆじん)(ござ)います』
230シャ『お()(なん)()ふかな』
231アリ『ヘーエ、232(この)(かた)はアリナさまと(まをし)ます。233そして(わたし)()はバイタと(まをし)ます』
234シャ『ハハア、235アリナさまにバイタさま。236(なん)()()ですこと、237(とき)にカラピン王様(わうさま)壮健(さうけん)にしてゐられますか』
238アリ『貴方(あなた)はこんな山奥(やまおく)()つて、239カラピン王様(わうさま)(こと)御存(ごぞん)じで(ござ)いますか』
240シャ『(なに)(ほど)山奥(やまおく)()つても、241此所(ここ)はヤツパリ、242カラピン王様(わうさま)御領分(ごりやうぶん)だ。243(その)領分(りやうぶん)()んでゐる人間(にんげん)として、244王様(わうさま)御名(おんな)()らいでなるものか、245ハヽヽヽ』
246アリ『(なん)と、247(わう)威勢(ゐせい)といふものは(えら)いもので(ござ)いますな。248こんな(ところ)(まで)御威勢(ごゐせい)(とど)いてゐるとは(ゆめ)にも(ぞん)じませなんだ。249今晩(こんばん)此処(ここ)御厄介(ごやくかい)になるのも、250カラピン王様(わうさま)御余光(ごよくわう)(よく)したやうなもので(ござ)いますな』
251シャ『さうです(とも)252普天(ふてん)(もと)率土(そつど)(ひん)253(みな)王身(わうしん)王土(わうど)にあらざるなし」と()ふぢやありませぬか』
254アリ『王様(わうさま)御布令(ごふれい)が、255かやうな山奥(やまおく)まで、256とどいてゐるので御座(ござ)いますか』
257シャ『ナアニ、258王様(わうさま)御布令(ごふれい)(とど)かなくつても、259王様(わうさま)ある(こと)(こころ)にとめて()りさへすればそれで天下(てんか)太平(たいへい)だ。260斯様(かやう)猛獣(まうじう)(ほえ)(たけ)山奥(やまおく)(さび)しい生活(せいくわつ)をして()つても、261心強(こころづよ)(その)()(おく)つて()くのは、262タラハン(じやう)王様(わうさま)がゐられるといふ(こと)(ちから)にしてゐるから()んで()けるのですよ。263(とき)左守(さもり)のガンヂー殿(どの)や、264右守(うもり)のサクレンス殿(どの)達者(たつしや)にして()られますか』
265アリ『()くマア(くは)しい(こと)御承知(ごしようち)(ござ)いますな。266(わたし)(じつ)(ところ)267左守(さもり)(せがれ)(ござ)います』
268 シャカンナは(うち)(おどろ)いた(やう)(かほ)して、269(こゑ)(ふる)はせ(なが)ら、
270シャ『ナアニ、271(まへ)があの左守(さもり)(せがれ)であつたか。272フーム、273(こころ)(きたな)左守(さもり)にも()ず、274(まへ)容貌(ようばう)といひ、275(こゑ)(いろ)といひ、276(じつ)見上(みあ)げたものだ。277丁度(ちやうど)(とび)(たか)()んだやうなものだなア。278そしてお(まへ)御主人(ごしゆじん)()つた以上(いじやう)は、279(この)御方(おかた)はカラピン(わう)太子様(たいしさま)におはさぬか。280どこ(とも)なしに気品(きひん)(たか)い、281姿(すがた)だから……』
282アリ『イヤ、283もう()うなれば、284(なに)もかも(まをし)()げます。285(さつ)しの(とほ)りで(ござ)います。286そして貴方(あなた)何方(どなた)(ござ)いますか』
287シャ『十年(じふねん)以前(いぜん)には、288カラピン王様(わうさま)左守(さもり)(つか)へてゐた、289(わたし)はシャカンナだ。290王妃(わうひ)(きみ)悪霊(あくれい)誑惑(けうわく)され、291日々(ひび)残虐(ざんぎやく)行為(かうゐ)(あそ)ばされ、292国民(こくみん)怨府(ゑんぷ)となり、293(すで)にクーデター(まで)(おこ)らむとした。294(その)危機(きき)(すく)はむ(ため)に、295女房(にようばう)(とも)に、296()(をか)して直諫(ちよくかん)(たてまつ)つた(ところ)297カラピン王様(わうさま)大変(たいへん)御立腹(ごりつぷく)(あそ)ばし、298大刀(だいたう)(ひき)()いて、299(この)左守(さもり)()りすてむと(あそ)ばした刹那(せつな)300(わが)女房(にようばう)身代(みがは)りとなつて、301(その)()(いのち)をおとし、302(わたし)(しろ)裏門(うらもん)より(にげ)()し、303やうやう六才(ろくさい)になつた(むすめ)()()うて、304(この)(やま)(にげ)()んで、305(とき)(いた)るを()つてゐたのだ。306(まへ)(そば)で、307こんなことは()ひたくないが、308(まへ)(ちち)のガンヂーは右守(うもり)となつて(つか)へてゐたが、309残虐非道(ざんぎやくひだう)行為(かうゐ)(あそ)ばす王妃様(わうひさま)をおだて()げ、310益々(ますます)国難(こくなん)(まね)き、311(ほと)んど収拾(しうしふ)(べか)らざる、312国家(こくか)破目(はめ)(おちい)つたのだ。313(いま)(わたし)(あと)(おそ)ふて左守(さもり)(かみ)となり、314国民(こくみん)(みち)()いて、315大変(たいへん)人気(にんき)ださうだ。316それを()いて自分(じぶん)も、317(すこ)(ばか)国家(こくか)(ため)安心(あんしん)はしてゐるが、318(なん)とかしてガンヂーを(いまし)め、319モウ一層(いつそう)320()人間(にんげん)になつて、321国政(こくせい)をとらせたいと、322それ(ばか)りを(ねん)じてゐるのだ』
323アリ『(うけたま)はれば(うけたま)はる(ほど)324(おそ)()つた(こと)(ばか)り、325(おどろ)きに()へませぬ。326貴方(あなた)のお(せつ)(とほり)327(わたし)(ちち)(あま)(こころ)()(ひと)だとは(ぞん)じませぬ。328(しか)(なが)大王様(だいわうさま)御親任(ごしんにん)(あつ)きが(ため)に、329(やうや)沢山(たくさん)役人(やくにん)(ども)統一(とういつ)し、330国家(こくか)(あま)(おほ)きな騒動(さうだう)もなく、331細々(ほそぼそ)(おさ)まつて()ります。332(しか)(なが)何時(いつ)事変(じへん)突発(とつぱつ)するか(わか)らないと()つて、333若君様(わかぎみさま)(わたし)とが始終(しじう)(なげ)いてゐるので(ござ)います』
334シャ『若君様(わかぎみさま)335ムサ(くる)しい(ところ)(ござ)いますけれど、336どうかおくつろぎ(くだ)さいませ。337(まこと)失礼(しつれい)(いた)しました』
338(たい)『イヤ()結構(けつこう)だ。339どうぞ心配(しんぱい)をしてくれな』
340シャ『ハイ、341有難(ありがた)(ござ)います。342(とき)にアリナさま、343(まへ)(おや)にも()ず、344誠忠(せいちう)無比(むひ)青年(せいねん)だ。345どうか、346(わたし)(この)(やう)世捨人(よすてびと)になり、347最早(もはや)国政(こくせい)参与(さんよ)することは出来(でき)ないから、348(まへ)若君様(わかぎみさま)(たす)けて、349立派(りつぱ)政治(せいぢ)をやつて(くだ)さい』
350アリ『いろいろと御親切(ごしんせつ)なお言葉(ことば)351さぞ(わたし)(ちち)貴方(あなた)御迷惑(ごめいわく)をかけたで(ござ)いませうが、352(その)(いか)りもなく、353(わたし)(たい)斯様(かやう)親切(しんせつ)言葉(ことば)をおかけ(くだ)さいまする、354公平(こうへい)無私(むし)貴方(あなた)赤心(まごころ)355(じつ)感謝(かんしや)()へませぬ』
356シャ『(よる)余程(よほど)()けた(やう)でもあり、357若君様(わかぎみさま)もお(つか)れだらうから、358今晩(こんばん)はゆつくり(とま)つて(いただ)いて、359明日(あす)ゆるゆるとお(はなし)()かして(いただ)きませう。360サア、361若君様(わかぎみさま)362(やす)(くだ)さいませ』
363(たい)『あゝお(まへ)忠臣(ちうしん)(ほまれ)(いま)(のこ)してゐる左守(さもり)のシャカンナであつたか。364(てん)(いま)だタラハン(ごく)()てさせ(たま)はぬとみえる。365どうぢや。366(まへ)367モウ一度(いちど)(おも)(なほ)して、368(いま)(ほろ)びむとするタラハン(ごく)(すく)うてくれる()はないか』
369シャ『御勿体(ごもつたい)ない、370太子(たいし)(きみ)のお言葉(ことば)371かやうな老骨(らうこつ)372最早(もはや)()には()ひませぬ。373それよりも(この)アリナを(おも)(もち)(あそ)ばして、374王家(わうけ)基礎(きそ)(かた)め、375国家(こくか)泰山(たいざん)(やす)きにおいて(くだ)さいませ。376それが、377せめてもの(わたくし)老後(らうご)(たの)みで(ござ)います』
378(たい)『あゝ()(かく)379(あま)りくたぶれたから(やす)まして(もら)はう。380シャカンナ381(ゆる)せよ』
382()(なが)ら、383ゴロリと(よこ)になり、384(はや)くも(らい)(ごと)(いびき)をかいてゐる。385コルトンは(この)(はなし)()いて吃驚(びつくり)し、386(ゆか)(した)にもぐり()んで蜘蛛(くも)()だらけになつて、387一眠(ひとねむ)りも()せず()をあかして(しま)つた。388十個(じつこ)鼻口(はなくち)より出入(しゆつにふ)する空気(くうき)(おと)389(あたか)鍛冶師(かぢし)(ふいご)(やう)(きこ)えてゐた。390(はる)()容赦(ようしや)もなく()けてゆく。391大空(おほぞら)(つき)満面(まんめん)(ゑみ)(たた)へて、392(この)不思議(ふしぎ)なる主従(しゆじゆう)数奇(すうき)(きは)まる邂逅(かいごう)(きよ)(てら)してゐる。
393大正一三・一二・三 新一二・二八 於祥雲閣 松村真澄録)
   
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