第二三章 思ひ奇や その一〔一七三〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第4巻 霊主体従 卯の巻
篇:第4篇 天地転動
よみ(新仮名遣い):てんちてんどう
章:第23章 思ひ奇やその一
よみ(新仮名遣い):おもいきや その一
通し章番号:173
口述日:1921(大正10)年12月23日(旧11月25日)
口述場所:
筆録者:外山豊二
校正日:
校正場所:
初版発行日:1922(大正11)年3月30日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:常世姫は、八王大神の見舞いに来る神々たちの応対を、道彦にさせることに決めた。
モスコーの道貫彦がやってきたとき、常世城の春日姫の正体を疑っていた道貫彦は、出迎えた姫を妖怪変化として扱った。
また、道貫彦は道彦が化けた八王大神に面会するや、下あごのほくろによって、それが道彦(道貫彦に使えていた大道別)であることを即座に見抜いた。そして道彦に討ってかかった。
道貫彦は、従者たちに止められたが、八王大神に化けた道彦は人払いをして道貫彦と二人だけになった。道彦はかつての主人の前に手をついて挨拶し、正体を明かした。そして、常世城の秘密と自分たちの使命を明かした。
道貫彦は常世城の春日姫が本物の姫であることを知ったが、使命のため、親子の情を抑えてそ知らぬ顔をして姫の前を通り過ぎた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:2020-03-01 17:07:20
OBC :rm0423
愛善世界社版:147頁
八幡書店版:第1輯 425頁
修補版:
校定版:155頁
普及版:67頁
初版:
ページ備考:
001 道彦は神人の推薦によりて、002八王大神の衣冠束帯を着用し、003ここに偽常世彦となりすましたり。004常世姫の意見によりて、005立派なる別殿を与へられ、006殿中に数多の従者をしたがへて収まりかへりゐたり。007奸黠なる常世姫は、008思ふところありて八王、009八頭にたいし八王大神に面会することを許したり。
010 春日姫、011八島姫は、012玄関の間に盛装をこらして、013八王の病気伺ひにたいし、014応接の役にあたりゐたりしが、015ここにモスコーの城主道貫彦は病気を見舞ふべく別殿を訪ひたるに、016玄関には娘の春日姫が、017花のごとき姿を現はしあふるるばかりの愛嬌をたたへて控へをるにぞ、018道貫彦は思はず知らず大声を発し、
020と叫びながら、021春日姫の顔を穴のあくほど見つめゐたり。022春日姫は言葉静かに、
023『父上様、024おなつかしう存じます』
025と叮嚀に頭を下げたるが、026その顔には悲喜交々まじり、027両眼からは涙さへ滲み出ゐたり。028姫は立ちてその手をとり、029奥殿に案内せむとするや、030道貫彦は驚いてその手を振りはなち、031眼を刮と見ひらき、
032『油断のならぬ大化物、033その手は喰はぬぞ』
034と一喝したるに、035春日姫は強てその手をとり、036親切に奥へ導かむとするを、037右手に持てる杖にて春日姫の面上を力かぎりに打据ゑたり。038姫は悲鳴をあげてその場に打仆れける。
039 道貫彦は杖の先にて姫の全身を衝いたり、040叩いたりしながら、
041『コン畜生、042何時までも馬鹿にしてやがる』
043と怒り狂ひつつ姫には目もくれず、044悠々として杖を曳きながら、045奥殿に進み入りぬ。046奥殿には八王大神端然として神々に取りまかれ控へゐたり。
047 道貫彦は叮嚀に敬礼しながら、048ふと見上げるとたんに、049八王大神の下顎の裏の黒子に気がつき、050合点ゆかじと目を円くして見つめてゐたるが、051道貫彦は思はず、
052『汝は八王大神とは真赤な偽り、053先年吾に仕へたる大道別に非ずや。054汝不届にもこの常世の国に渡り、055神変不思議の魔術をつかひ、056畏れ多くも稚桜姫命の第三女常世姫を籠絡し、057八王大神と僣越にも自称して、058反逆無道の欲望を貫徹せむとし、059世界の八王をはじめ、060有力なる国魂をここに参集せしめたる、061その伎倆や感ずるにあまりあり。062されど邪は正に敵しがたく、063開会以来の議場の怪を見よ。064これ全く国祖大神の御神慮に反し、065神明の罰をうけ汝が目的の大望も九分九厘にて幾回ともなく打ち覆され、066つひには諸神環視の壇上にて急病を発し、067大失態を演じたるに非ずや。068かくのごとく覿面なる神罰を蒙むりながら、069なほ未だ目ざめず、070あくまで反逆心を貫徹せむとし、071ふたたび議場に現はれむとするか。072われは開会の当日より汝の面体を熟視して疑団晴れざりしが、073いま汝に接近してその化けの皮を感知せり。074あらそはれぬ証拠は汝が下顎下の黒子を見よ。075他神人はいざ知らず、076われは汝を宰相として永く使用したれば、077如何に隠すとも隠されまじ。078また春日姫なるものは汝が魔術によつて現はれたる悪狐の化身なり。079われいま玄関口において彼女を打仆しおきたり。080さぞ今ごろは彼女が正体を現はし、081身体一面に毛を生じ仆れをるならむ。082汝もまた或ひはその狐なるやも計りがたし、083化の皮を現はしてくれむ』
084といふより早く、085携へたる杖にて面上目がけて打据ゑむとするや、086この時数多の従臣は、
088と云ひながら、089前後左右よりとりまき、090その杖をもぎとりにけり。091八王大神は目をもつて、092神司らに何か合図をなしければ、093常世姫はじめ従者は一柱も残らず席を避けたり。
094 あとには八王大神と道貫彦とただ二柱のみ。095ここに八王大神は座を立つて下座に降り、096一別以来の挨拶を声低に述べをはり、097かつ常世城の一切の秘密および春日姫が、098命の真の娘なることを打明け、099固く口外せざることを約しける。100道貫彦は始めて実の娘なることを悟り、101心も心ならず、102急ぎこの場を立つて玄関に出たり。
103 春日姫は少しく面部に負傷しながら、104依然として玄関に控へゐる。105道貫彦は真の吾が娘なることを覚り、106飛びつきて抱へたき心持したれど、107大事の前の小事と動く心をみづから制し、108目に物言はせながら素知らぬ顔に、109この場を立去りにける。
110(大正一〇・一二・二三 旧一一・二五 外山豊二録)