第二四章 思ひ奇や その二〔一七四〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第4巻 霊主体従 卯の巻
篇:第4篇 天地転動
よみ(新仮名遣い):てんちてんどう
章:第24章 思ひ奇やその二
よみ(新仮名遣い):おもいきや その二
通し章番号:174
口述日:1921(大正10)年12月23日(旧11月25日)
口述場所:
筆録者:桜井重雄
校正日:
校正場所:
初版発行日:1922(大正11)年3月30日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:南高山の大島別・玉純彦の主従は、常世城の八島姫を疑い、玉純彦は姫に斬りつけようとした。
常世城の従神たちは二人を捕らえようとした。大島別は捕らえられたが、玉純彦の獅子奮迅の勢いに逆に追い散らされてしまった。
玉純彦はそのまま道彦の八王大神に打ってかかったが、逆にその強力によって取り押さえられてしまう。道彦は大島別の縄を解くと、二人に自分たちの使命と計略を明かした。
大島別・玉純彦は始めてこれまでのことに合点が行き、常世城の姫が本物であることを知った。
しかし、このことを八十枉彦が聞いてしまっていた。玉純彦は八十枉彦に飛び掛ってその場に切り捨ててしまった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :rm0424
愛善世界社版:152頁
八幡書店版:第1輯 427頁
修補版:
校定版:160頁
普及版:69頁
初版:
ページ備考:
001 南高山の八王大島別は、002八王大神に拝顔せむと玉純彦を従へ、003玄関口に現はれたるに、004ここには、005春日姫、006八島姫の二女性が受付兼応接の役にあたりゐたりければ、007大島別は二女の姿を見て、008呆然として立ちとまり、009みづから我が頬をつねり眉毛に唾をつけ、010玄関の階段めがけて、
011『またもや白狐には非ざるか』
012としきりに杖の先にて突き試みけり。013玉純彦は声を荒らげ、
014『八島の古狐またもや八島姫と身を変じ、015吾を誑かさむとするか。016ここは立派なる玄関口と見せかけをるも、017擬ふかたなき泥田の中、018吾が天眼力にてこれを看破せり。019速に正体を露はし、020尻尾を曲げ降伏するか。021さなくば汝春日姫、022八島姫と称する悪狐、023目に物見せてくれむ』
024と言ふより早く、025腰の一刀を引きぬき、026頭上より梨割りに斬りつけむとしたるに、027二女は驚きて体をかはし、028そのまま奥殿に走りいり、029道彦の前に致つて救ひを乞ひぬ。030大島別、031玉純彦は二女の後を追ひ杖を打ち揮ひ、032長刀を閃かしながら乱入する。
033 このとき常世姫以下数多の神司は、034大いに驚き、035各自得物をとつて、036前後左右より大島別および玉純彦に打つてかかりぬ。037大島別は老身のこととて、038たちまち取り押へられ縛されたり。039玉純彦はこれを見てますます怒り、040獅子奮迅の勢を以て、041当るを幸ひ前後左右に斬りまくる。042その勢に辟易したる常世姫以下は、043倉皇として蜘蛛の子を散らすごとく逃げ散り、044姿をかくしたり。045後には八王大神高座に八重畳を敷き悠然として、046この光景を見守りゐたり。
047 玉純彦は八王大神にむかひ、
048『常世の国の邪神の変化思ひ知れや』
049と、050またもや打つてかかれば、051八王大神は少しも騒がず、052玉純彦の利き腕をぐつと握りしめたり。053玉純彦は強力の大神につかまれて、054その場に顔をしかめて平伏したりけり。055八王大神はただちに立つて、056大島別の縛を解き、057慇懃にその背をなでさすり、058四辺をはばかりながら小声になりて、059常世城における一切の秘密を物語り、060かつ真正の八王大神は急病のため今は九死一生、061命旦夕に迫る旨を耳うちし、062自分は一旦聾唖痴呆となりゐたる大道別にして春日姫は真の八王道貫彦の娘なること、063および八島姫は真の大島別の娘にして、064南高山にある八島姫は白狐旭の化身なることを詳細に物語り、065かつ今後の議場におけるすべての計画を打合せたり。
066 大島別、067玉純彦は、068はじめて疑ひ晴れ、069かつ大道別の智謀絶倫なるを感嘆し、070二神司は喜び勇みて、071その場を退場せむとする時、072物蔭より現はれ出でたる八十枉彦は、
073『聞く神なしと思ふは、074汝ら愚者の不覚、075この由、076常世姫に報告せむ』
077と足早に走り出むとするを、078玉純彦はうしろより飛びかかり、079長刀を抜き、080背部よりただ一刀のもとに斬り付けたれば、081八十枉彦は七転八倒、082手をもがき足を動かせ、083虚空をつかんで脆くも絶命したりける。
084 ここに八島姫、085春日姫は赤き布をもつて八十枉彦の遺骸をつつみ、086その上をふたたび白布をもつておほひ、087玉純彦の背にしつかとくくりつけたり。
088 玉純彦は素知らぬ顔にヤツコス気取りにて、089大島別の後にしたがひ、090六方を踏みながら足音高く城内を面白き歌を唄ひつつ退出したりける。
091 玉純彦は背の荷物を夜陰にまぎれて、092草原の野井戸にひそかに投げ込み、093素知らぬ風を装ひゐたり。094このことは常世城の何人も知る者なかりしといふ。
095(大正一〇・一二・二三 旧一一・二五 桜井重雄録)