霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第五章 変装太子(へんさうたいし)〔一七二九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第68巻 山河草木 未の巻 篇:第2篇 恋火狼火 よみ:れんかろうか
章:第5章 第68巻 よみ:へんそうたいし 通し章番号:1729
口述日:1925(大正14)年01月29日(旧01月6日) 口述場所:月光閣 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1926(大正15)年9月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
太子は、スバール姫との逢瀬のため、アリナを自分の身代わりにする。太子は労働服を着て城を抜け出し、アリナは太子の錦衣を着て太子の部屋に座り込んだ。アリナは、太子が平民生活を希望するなら、自分が代わりに王位に上ろうか、と独語している。
ところへ、アリナの父、左守が太子に会いにやってくる。妻の命日に、息子を帰宅させようと頼みにやってきたのであった。アリナははっとするが、「アリナは先に帰った」と嘘を言って、その場を切り抜ける。
アリナが、自分の父親さえも騙せた自分の手並みに一人悦にいっているうちに、夜はふけていった。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm6805
愛善世界社版: 八幡書店版:第12輯 176頁 修補版: 校定版:71頁 普及版:69頁 初版: ページ備考:
001 タラハン(じやう)太子殿(たいしでん)(おく)()には、002スダルマン太子(たいし)と、003アリナがいつもの(ごと)(むつま)しげに(くび)(あつ)めて(ある)秘密(ひみつ)(かた)()つて()る。
004アリナ『太子様(たいしさま)005昨夜(さくや)如何(いかが)(ござ)いました。006(さだ)めてスバール(ひめ)(さま)もお(よろこ)(あそ)ばしたでせう』
007 太子(たいし)(やや)(ほほ)()めながら、008アリナに(かほ)(かく)すやうな調子(てうし)で、
009太子(たいし)『いやもう本当(ほんたう)愉快(ゆくわい)だつた。010人生(じんせい)恋愛(れんあい)成就(じやうじゆ)した(とき)(くらゐ)(たの)しいものはない。011()(うま)れかへつたやうな心持(こころもち)がしたよ。012(これ)()ふのもお(まへ)尽力(じんりよく)(いた)(ところ)感謝(かんしや)して()る』
013ア『勿体(もつたい)ない014(なん)()(こと)仰有(おつしや)いますか。015臣下(しんか)(きみ)(ため)に、016所有(あらゆる)(ちから)(つく)すのは当然(あたりまへ)(ござ)います。017(しか)(なが)らタルチンの(いへ)()(かげ)もない茅屋(あばらや)018(さぞ)窮屈(きうくつ)(ござ)いましたでせう。019九五(きうご)御身(おんみ)(もつ)()のやうな(ところ)へお(かよ)(あそ)ばすやうにしたのも020(みな)(わたくし)不行(ふゆき)(とど)きからで(ござ)います』
021(たい)『それだと()つて(ほか)(ひめ)(かく)適当(てきたう)(いへ)もなし、022(まへ)としては(ちから)(いつ)ぱい(つく)して()れたのだ。023そんな心遣(こころづかひ)無用(むよう)だ。024さうしていつも(ひろ)(やかた)起臥(きぐわ)して()(わが)()は、025あのやうな風流(ふうりう)茅屋(ばうをく)大変(たいへん)()()つたよ。026平民(へいみん)生活(せいくわつ)(あぢ)(おぼ)え、027昨日(さくじつ)(はじ)めて平民(へいみん)気楽(きらく)(こと)や、028何事(なにごと)大袈裟(おほげさ)でなく簡単(かんたん)(かた)づく(こと)(あぢ)(おぼ)029(じつ)有難(ありがた)かつたよ。030(はじ)めて人間(にんげん)になつたやうな心持(こころもち)がした。031あゝ(わし)はなぜこんな身分(みぶん)(うま)れて()たのだらう、032(もん)出入(でいり)にも仰々(ぎやうぎやう)しい数多(あまた)衛兵(ゑいへい)送迎(そうげい)され、033まるきり動物園(どうぶつゑん)(とら)(おく)るやうな塩梅式(あんばいしき)だ。034出来(でき)(こと)なら035(まへ)(わし)地位(ちゐ)(かは)つて()しいものだ』
036ア『左様(さやう)思召(おぼしめ)すのも御無理(ごむり)(ござ)いませぬ。037御窮屈(ごきうくつ)御境遇(ごきやうぐう)(さつ)(たてまつ)ります。038(しか)(なが)ら、039殿下(でんか)はタラハン(ごく)君主(きみ)たるべく040使命(しめい)をもつて、0401(てん)よりお(くだ)(あそ)ばした(かみ)御子(みこ)(ござ)いますから、041(これ)(ばか)りはどうする(こと)出来(でき)ませぬ。042(それ)(ゆゑ)(わたくし)(あた)(かぎ)殿下(でんか)御自由(ごじいう)になるやうと(つと)めて()るので(ござ)います』
043(たい)(じつ)はアリナよ、044(まへ)折入(をりい)つての(たの)みがある。045(なん)()いては()れまいかなア。046()一生(いつしやう)(ねが)ひだから』
047ア『父祖(ふそ)代々(だいだい)厚恩(こうおん)()けた(わたくし)()(うへ)048如何(いか)なる(こと)でも身命(しんめい)()して(うけたま)はりませう』
049(たい)早速(さつそく)承知(しようち)満足(まんぞく)(おも)ふ。050(じつ)はアリナ051(まへ)(わし)変装(へんさう)して(しばら)(この)殿内(でんない)(をさ)まつて()(もら)()いのだ』
052ア『成程(なるほど)053妙案(めうあん)(ござ)いますな。054(わたくし)替玉(かへだま)にしておいて殿下(でんか)(ひめ)(さま)匿家(かくれが)へお(かよ)(あそ)ばすと()御考案(ごかうあん)ですか。055半日(はんにち)一日(いちにち)(ぐらゐ)()(とほ)(こと)出来(でき)るでせう。056(しか)(なが)くなりますと化狐(ばけぎつね)尻尾(しつぽ)()えますから』
057(たい)『ハヽヽヽヽ。058化狐(ばけぎつね)化狸(ばけだぬき)()らぬが、059(まへ)(かほ)()生写(いきうつ)しと()(こと)だから、060(かはら)(きん)(くわ)したやうな(こと)もあるまい。061どうか(たの)むよ』
062ア『殿下(でんか)(おほ)せなれば如何(いか)なる(こと)でも(つつし)んでお()(いた)しますが、063金玉(きんぎよく)御身(おんみ)()()ました(ところ)で、064()つた金箔(きんぱく)(すぐ)()げて仕舞(しま)ひますから、065()れは(わたくし)()つて随分(ずいぶん)重大(ぢうだい)役目(やくめ)(ござ)います。066(わたくし)今日(けふ)一日(いちにち)半日(はんにち)か、067(かり)殿下(でんか)となつて太子(たいし)気分(きぶん)(あぢ)はつて()ませう。068殿下(でんか)(しばら)平民(へいみん)気分(きぶん)(あぢ)はつて御覧(ごらん)なさいませ』
069(たい)『アヽ面白(おもしろ)い、070どうか(たの)むよ。071今日(けふ)夕方(ゆふがた)から薄暗(うすやみ)(まぎ)れて頬被(ほほかむり)をグツスリとなし、072労働服(らうどうふく)でも(まと)うて鼻歌(はなうた)でも(うた)()かけて()よう。073どうか(その)(ふく)をそつと調達(てうたつ)しておいては()れまいか』
074ア『かかる御用命(ごようめい)(かなら)(くだ)るべきものと(ぞん)じまして、075ちやんと用意(ようい)をしておきました』
076(たい)『お(まへ)労働者(らうどうしや)知己(ちき)でもあるのか』
077ア『いえ(べつ)知己(ちき)()つてはありませぬが、078横町(よこまち)古物商(ふるてや)()つておきました』
079(たい)(なに)から(なに)(まで)()()のない(をとこ)だな、080アツハヽヽヽヽ』
081ア『(わたくし)(また)(をんな)()ふものの(はだ)(ぞん)じませぬが、082殿下(でんか)()かせられてもお(はつ)(やう)(うかが)ひます。083如何(いかが)(ござ)いました。084随分(ずいぶん)趣味(しゆみ)津々(しんしん)たるものでせうなア』
085(たい)趣味(しゆみ)津々(しんしん)どころか086(てん)()もタラハン(じやう)()ふも(さら)なり、087自分(じぶん)(いのち)(まで)どこかへ吸収(きふしう)されたやうな心持(こころもち)になつたよ。088()(なか)(こひ)()ふもの(くらゐ)神聖(しんせい)尊貴(そんき)なものは()るまいと(おも)ふ。089あゝもう(たま)らなくなつて()た。090(はや)今日(けふ)()()れないかなア』
091ア『殿下(でんか)092(あま)りぢや(ござ)いませぬか。093貴方(あなた)(こひ)勇者(ゆうしや)094(わたくし)()はば(こひ)敗者(はいしや)(いな)従僕(じゆうぼく)です。095従僕(じゆうぼく)(まへ)でさう(のろ)けられては(この)アリナもやり()れませぬわ、096アツハヽヽヽヽ』
097(たい)(それ)だと()つて「どんな塩梅(あんばい)だつた」などとお(まへ)(はう)から()情緒(じやうちよ)()きずり()さうとするものだから098(こひ)には(もろ)()(たましひ)()らず()らずに()いて()たのだ。099あゝアリナ100もう()()()れなくなつて()たよ』
101ア『大変(たいへん)()()したやうですが、102(わたくし)(ひと)心配(しんぱい)()えて()たやうです。103殿下(でんか)神聖(しんせい)恋愛(れんあい)(たましひ)傾注(けいちう)されるのは大変(たいへん)結構(けつこう)では()りますが、104それが(ため)王家(わうけ)(わす)れ、105(あるひ)平民(へいみん)にならうなどの野心(やしん)(おこ)されては、106取持(とりもち)をしたこのアリナは王家(わうけ)(たい)国家(こくか)(たい)し、107()をもつて(わび)ても(およ)ばないやうな(つみ)になりますから、108そこは(あま)(ねつ)せないやう程々(ほどほど)(こひ)(あぢ)はつて(いただ)()いものです』
109(たい)王家(わうけ)王家(わうけ)110国家(こくか)国家(こくか)だ。111王家(わうけ)国家(こくか)恋愛(れんあい)とを混同(こんどう)して(もら)つては(こま)るよ。112()王位(わうゐ)(のぼ)れば(くに)(ちち)として万機(ばんき)政治(せいぢ)総攪(そうらん)し、113(また)恋愛(れんあい)としては上下(じやうげ)障壁(しやうへき)撤廃(てつぱい)し、114天成(てんせい)意志(いし)によつて(おも)存分(ぞんぶん)(あい)情味(じやうみ)(あぢ)はふ(つも)りだ』
115ア『殿下(でんか)がそこ(まで)()()(あそば)した(うへ)116到底(たうてい)(わたくし)言葉(ことば)(いま)(ところ)(みみ)にはお()(くだ)さいますまい。117(みづ)出端(でばな)118()()(さか)りは、119鬼神(きしん)(いへど)(これ)制止(せいし)する(こと)出来(でき)ぬとの(こと)120(しばら)猛烈(まうれつ)殿下(でんか)情炎(じやうえん)(やや)下火(したび)になる(まで)何事(なにごと)申上(まをしあげ)ますまい』
121(たい)『やア有難(ありがた)い、122それが()(たい)しての忠義(ちうぎ)だ。123()(いへど)(けつ)して(たましひ)(くさ)つて()ないから、124王家(わうけ)国家(こくか)()てるやうな(こと)はしないから安心(あんしん)して()れ』
125ア『(その)言葉(ことば)(うけたま)はり、126(すこ)しく(むね)()()きました。127どうか充分(じゆうぶん)注意(ちうい)(はら)つて完全(くわんぜん)(こひ)をお()(あそば)しませ』
128(たい)()()()れないのかな。129アヽどうして今日(けふ)(また)これ(ほど)()(なが)いのだらう。130一日千秋(いちじつせんしう)(おも)ひとはよく()つたものだ。131やつぱり聖人(せいじん)(うそ)()はないなア』
132ア『まだ()(どき)(ござ)います。133夕暮(ゆふぐれ)(まで)には二時(ふたとき)(あま)りも(ござ)いますから、134御悠(ごゆつく)りなさいませ』
135(たい)『どうも、136じつとしては()られないやうだ。137()(たましひ)向日(むかひ)(もり)茶坊主(ちやばうず)(やかた)(すで)(すで)訪問(はうもん)して()るやうだ。138エヽもう(たま)らない労働服(らうどうふく)()して()れ』
139ア『()れはお(やす)御用(ごよう)(ござ)いますが、140さうお()きになつても(ひる)(うち)人目(ひとめ)にかかる(おそ)れが()ります。141どうして(この)(もん)をお(くぐ)(あそ)ばしますか』
142(たい)『アツハヽヽヽ、143そんな心配(しんぱい)はして()れな。144今日(けふ)早朝(さうてう)から(うら)高壁(たかべい)()()える稽古(けいこ)をしておいた。145精神一到(せいしんいつたう)何事(なにごと)()らざらむやだ。146表門(おもてもん)裏門(うらもん)衛士(ゑいし)()つてゐるから、147()適当(てきたう)148人目(ひとめ)にかからない(ところ)から(にげ)()(つも)りだ』
149ア『万々一(まんまんいち)怪我(けが)でもあつては大変(たいへん)(ござ)いますから、150もう(しばら)くの(うち)()ちを(ねが)()いものです』
151(たい)『や、152今日(けふ)だけは自由(じいう)(まか)して()れ。153暗雲(やみくも)()()りの芸当(げいたう)(こひ)()めには()むを()まい。154アヽ、155スバール(ひめ)はどうして()るだらう。156きつと(しろ)(くび)()ばして()()姿(すがた)157(いま)(いま)かと(まど)()けて(のぞ)いて()るだらう。158アヽ可愛(かあい)いものだ。159……オイ、160スバール161(いま)()くから()つて()れ。162きつと()其方(そなた)見捨(みす)てるやうな(こと)はしない。163永久(えいきう)永久(えいきう)にミロクの()(まで)(まへ)(あい)する」と()つた(こと)滅多(めつた)反古(ほご)にはしないよ』
164 アリナは(あたま)()(なが)ら、
165ア『もし殿下(でんか)(あま)りぢや(ござ)いませぬか。166(なに)(ほど)貴方(あなた)のお(こゑ)でも向日(むかひ)(もり)(まで)(とど)きませぬよ。167そして(わたくし)(まへ)でお(のろ)けをたつぷりお()かせ(くだ)さるとは、168(ちつ)殺生(せつしやう)ぢや(ござ)いませぬか。169青春(せいしゆん)()()ゆる(わたくし)(こころ)170(ちつ)とは(さつ)して(いただ)()いもので(ござ)いますなア』
171(たい)『ウン、172それや(さつ)して()るよ。173そんな(こと)(すゐ)()かないやうな()ではない。174(まへ)(その)(うち)175どこかでスバールのやうな美人(びじん)(たづ)()し、176(つま)にしたらよいぢやないか。177一度(いちど)178どこかの(やま)来月(らいげつ)あたり(あそ)びに()つて()ようか。179(また)あんな美人(びじん)()ふかも()れない』
180ア『殿下(でんか)もう沢山(たくさん)です。181(わたくし)神妙(しんめう)御名代(ごみやうだい)(つと)めて()りますから、182殿下(でんか)変装(へんさう)(あそ)ばして(おも)()つてお(いで)なさいませ。183(すこ)夕暮(ゆふぐれ)には(はや)(ござ)いますが、184恋愛(れんあい)(かみ)のお(まも)りが()れば、185人目(ひとめ)にかからず安全(あんぜん)(ひめ)(さま)のお(そば)()かれるでせう。186サア労働服(らうどうふく)()(こと)(をし)へて()げませう。187(はや)錦衣(きんい)をお()ぎなさいませ』
188 太子(たいし)はアリナの言葉(ことば)()たり(かしこ)しと無雑作(むざふさ)錦衣(きんい)()()て、189真裸体(まつぱだか)となつて仕舞(しま)つた。190アリナは()つて()自分(じぶん)(おほ)トランクから労働服(らうどうふく)()()太子(たいし)()せた。191太子(たいし)はニコニコしながら、
192(たい)『オイ、193アリナ、194どうだ、195労働者(らうどうしや)として似合(にあ)ふかな』
196ア『如何(いか)にもよく似合(にあ)ひますよ。197金看板(きんかんばん)()きの労働者(らうどうしや)()えますよ。198殿下(でんか)はお(とく)(たか)いから、199どんな衣裳(いしやう)をお()しになつても本当(ほんたう)によく似合(にあ)ひます。200労働者(らうどうしや)としても(じつ)立派(りつぱ)なものですわ。201それではスバール(ひめ)(さま)がゾツコン恋慕(れんぼ)(あそ)ばすのも無理(むり)(ござ)いませぬ』
202(たい)一層(いつそう)(こと)203(この)衣裳(いしやう)末代(まつだい)(はな)したくない。204労働者(らうどうしや)となつて九尺二間(くしやくにけん)裏長屋(うらながや)で、205(ひめ)世話(せわ)女房(にようばう)として、206(ひと)簡易生活(かんいせいくわつ)でも(おく)つて()たいものだなア、207アツハヽヽヽ。208オイ、209アリナ、210(あと)(たの)むよ』
211()ふより(はや)身軽(みがる)になつたのを(さいは)ひ、212頬被(ほほかむり)をグツスリとしながら(ましら)(ごと)高壁(たかかべ)()()213(ふか)(ほり)(たくみ)()()して、214(しろ)馬場(ばんば)密林(みつりん)(なか)姿(すがた)(かく)して(しま)つた。215(あと)にアリナは茫然(ばうぜん)として溜息(ためいき)をつき、
216ア『アヽ(こま)つた(こと)出来(でき)()たものだわい。217どうか無事(ぶじ)茶坊主(ちやばうず)屋敷(やしき)(まで)()(あそ)ばせばよいがなア。218アヽ(これ)から(うま)れてから一度(いちど)()(こと)もない錦衣(きんい)()(まと)219明日(あす)(あさ)(まで)太子(たいし)となり()ましてやらうか』
220錦衣(きんい)(まと)自分(じぶん)着物(きもの)をトランクの(なか)(をさ)め、221わざと物々(ものもの)しく(みす)をさげ、222(きり)火鉢(ひばち)(まへ)()沢山(たくさん)坐布団(ざぶとん)()き、223バイの化物然(ばけものぜん)()まし()んで()た。
224ア『(なん)とまア(さる)にも衣裳(いしやう)とか()つて、225よく似合(にあ)うものだなア。226どれ(ひと)227(つぎ)()(かがみ)でも()()う』
228()(なが)ら、229つと()つて(かがみ)()()独語(ひとりごと)
230『ヤア(われ)(なが)見紛(みまが)(ばか)太子(たいし)()()()るわい。231これなら一生(いつしやう)()()ました(ところ)232滅多(めつた)尻尾(しつぽ)(つか)まる(こと)はない。233太子様(たいしさま)平民生活(へいみんせいくわつ)がお()きなり、234自分(じぶん)同様(どうやう)だが、235(しか)人間(にんげん)(うま)れて一度(いちど)王位(わうゐ)(のぼ)つて()るも(をとこ)らしい仕事(しごと)だ。236太子(たいし)永遠(えいゑん)(かは)つて()しいと仰有(おつしや)つたら太子(たいし)(ため)だ、237(かは)つてもあげよう。238(また)自分(じぶん)(ため)にも栄誉(えいよ)だ。239(しか)(なが)大王殿下(だいわうでんか)(ちち)左守(さもり)(その)()重臣(ぢうしん)(ども)()(うま)(くら)ます(こと)出来(でき)ようかなア。240暗雲(やみくも)()()りの芸当(げいたう)とは所謂(いはゆる)この(こと)だ。241太子(たいし)危険(きけん)ををかして恋愛(れんあい)充実(じゆうじつ)()げ、242()のアリナは(また)大危険(だいきけん)(をか)して王位(わうゐ)(のぼ)らむとするのだ。243徳川天一坊(とくがはてんいちばう)真裸足(まつぱだし)()げるだらう、244アツハヽヽヽ。245いや(しか)246何時(いつ)老臣(らうしん)(ども)御機嫌(ごきげん)(うかが)ひに()るかも()れない。247どれ、248太子(たいし)玉座(ぎよくざ)()まし()んで()らねばなるまい』
249(また)もや(かがみ)()()()でて、250太子(たいし)居間(ゐま)(なに)()はぬ(かほ)して(すわ)()んだ。251そこへ奥女中(おくぢよちう)案内(あんない)252(ちち)左守(さもり)太子(たいし)御機嫌(ごきげん)(うかが)ひと(しよう)(たづ)ねて()た。253左守(さもり)はポンポンと二拍手(にはくしゆ)しながら低頭平身(ていとうへいしん)し、
254()『エヽ老臣(らうしん)左守(さもり)255(つつし)んで殿下(でんか)御機嫌(ごきげん)(うかが)(たてまつ)ります。256父大王様(ちちだいわうさま)にも御変(おかは)らせなく御政務(ごせいむ)(みそな)はせたまふこと大慶至極(たいけいしごく)(ぞん)(たてまつ)ります。257(おそ)(なが)殿下(でんか)に、258老臣(らうしん)として王家(わうけ)()めに一応(いちおう)(まをし)(あげ)ますが、259(しん)(せがれ)アリナなるもの(あま)殿下(でんか)御寵愛(ごちようあい)(おぼ)260(おや)(おや)とも(おも)はず、261悪言暴語(あくげんばうご)(はな)ち、262デモクラシーだとか、263共産主義(きやうさんしゆぎ)だとか(わけ)(わか)らぬ(こと)(まをし)て、264(この)(ちち)手古擦(てこず)らせます。265それに(この)(ごろ)殿下(でんか)のお(そば)御用(ごよう)なりと(まを)し、266一度(いちど)(わが)(やかた)(かへ)つて(まゐ)りませぬ。267どうか今晩(こんばん)亡妻(ばうさい)命日(めいにち)(ござ)いますれば、268霊前(れいぜん)参拝(さんぱい)させ()(おも)ひますれば、269どうか明朝(みやうてう)(まで)(ひま)をお(つか)はし(くだ)さいませ。270()()つてお(ねが)ひに(まゐ)りました』
271 アリナはハツと(むね)(とどろ)かせ、272(にはか)顔色(がんしよく)(あを)ざめ(くちびる)さえビリビリと(ふる)()したが273(さすが)横着物(わうちやくもの)274臍下丹田(さいかたんでん)にグツと(いき)()め、275大胆(だいたん)至極(しごく)にも(はじ)めて太子(たいし)口真似(くちまね)をやり()した。
276ア『やア(その)(はう)老臣(らうしん)左守(さもり)(ござ)るか。277老体(らうたい)()をもつて()くも入内(にふだい)(いた)した。278()満足(まんぞく)(おも)ふぞ。279(なんぢ)(まを)(とほ)(ちち)(きは)めて健全(けんぜん)政務(せいむ)(みそなは)すによつて、280(かなら)(かなら)心痛(しんつう)(いた)すな。281もはや夜間(やかん)(こと)でもあり、282()(すこ)研究(けんきう)したい(こと)もあれば、283一時(いちじ)(はや)(この)()退却(たいきやく)せよ。284(また)明日(あす)面会(めんくわい)(ゆる)すであらう』
285()(おそ)(なが)殿下(でんか)(おほ)せを(いな)むでは(ござ)りませぬが、286如何(いか)なる御用(ごよう)(ござ)いませうとも、287今晩(こんばん)だけはアリナをおかへし(くだ)さいませ』
288ア『(その)アリナは二時(ふたとき)以前(いぜん)(ちち)(やかた)(かへ)ると(まをし)()ていつた。289(さつ)する(ところ)(なんぢ)途中(とちう)()(ちが)ひになつたのであらう』
290()『アヽ、291左様(さやう)(ござ)いましたか、292これは失礼(しつれい)(こと)(まをし)(あげ)ました。293それでは老臣(らうしん)(いそ)帰宅(きたく)(いた)しませう、294御免(ごめん)(くだ)さいませ』
295()(なが)倉皇(さうくわう)として奥女中(おくぢよちう)()()かれながら(くだ)()く。296(あと)見送(みおく)つてアリナはホツと一息(ひといき)つきながら、
297ア『アヽ、298地獄(ぢごく)(うへ)一足飛(いつそくとび)だつた。299(しか)(なが)暗雲(やみくも)()()りの第一線(だいいつせん)突破(とつぱ)したやうなものだ。300現在(げんざい)(せがれ)殿下(でんか)間違(まちが)(かへ)るやうだからもう大丈夫(だいぢやうぶ)だ。301()抜目(ぬけめ)のない狸爺(たぬきおやぢ)(わが)正体(しやうたい)看破(かんぱ)する(こと)出来(でき)ない(まで)(たくみ)()()ましたのも(まつた)(てん)御保護(ごほご)だ。302だがも(ひと)つの難関(なんくわん)大王様(だいわうさま)のお()えになつた(とき)だ。303エヽ取越苦労(とりこしくらう)禁物(きんもつ)だ。304まア(その)(とき)(また)(その)(とき)(かぜ)()くだらう。305あゝ愉快(ゆくわい)々々(ゆくわい)306もう(なん)だかタラハン(ごく)国王(こくわう)になつたやうな()がする。307イツヒヽヽヽ』
308大胆不敵(だいたんふてき)にも会心(くわいしん)(ゑみ)()らして()る。
309 (よる)(とばり)()ろされて310間毎(まごと)々々(まごと)銀燭(ぎんしよく)()(またた)()した。
311大正一四・一・六 新一・二九 於月光閣 加藤明子録)
   
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