霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一三章 (かはづ)(くち)〔一七三七〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第68巻 山河草木 未の巻 篇:第3篇 民声魔声 よみ:みんせいませい
章:第13章 第68巻 よみ:かわずのくち 通し章番号:1737
口述日:1925(大正14)年01月30日(旧01月7日) 口述場所:月光閣 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1926(大正15)年9月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
右守宅へ、女中頭のシノブが勅旨を装いたずねてくる。
シノブは、恋人のアリナを王に立てて、自分は王妃に上ろうとしていた。そのために邪魔になる太子を亡き者にしようと、右守に協力を乞いにたってきたのであった。
右守はシノブの計画に賛意を表明したように見せかけるが、その実は、シノブから太子・アリナ両人の居場所を聞き出して亡きものにし、自分の計画を推し進めようとの腹であった。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm6813
愛善世界社版: 八幡書店版:第12輯 215頁 修補版: 校定版:173頁 普及版:69頁 初版: ページ備考:
001 五月五日(ごぐわついつか)城下(じやうか)騒乱(さうらん)勃発(ぼつぱつ)恐怖心(きようふしん)極端(きよくたん)(いだ)きたる右守(うもり)(かみ)サクレンスの邸宅(ていたく)は、002衛兵警吏(ゑいへいけいり)数十人(すうじふにん)(もつ)(きび)しく警固(けいご)され、003(あや)しきものの(かげ)だにも近寄(ちかよ)るを(ゆる)さなかつた。004かかる物々(ものもの)しき警戒裡(けいかいり)(もん)(くぐ)つて悠然(いうぜん)()(きた)一人(ひとり)(をんな)005殿中(でんちう)(ふか)(つか)へたる女中頭(ぢよちうがしら)のシノブであつた。006(かれ)(なん)(おそ)るる(いろ)もなく殿中(でんちう)奉仕(ほうし)するという権威(けんゐ)(かた)にふりかざし(なが)ら、007玄関口(げんくわんぐち)立現(たちあら)はれ、
008シノブ『右守様(うもりさま)009殿中(でんちう)のお使(つかひ)(ござ)います。010(とほ)つても(よろ)しう(ござ)いますか』
011(おとの)うてゐる。
012 玄関番(げんくわんばん)のサールは丁寧(ていねい)(かしら)をさげ(なが)ら、
013(これ)はシノブ(さま)014よくマア()らせられました。015只今(ただいま)御主人(ごしゆじん)(つた)へて(まゐ)りますから、016暫時(しばらく)ここにお()ちを(ねが)ひます』
017()()てコソコソと(おく)()(すす)()つた。018少時(しばし)あつて右守(うもり)はニコニコし(なが)()(きた)(ゑみ)満面(まんめん)(うか)べ、019いとも慇懃(いんぎん)口調(くてう)にて、
020右守(うもり)『ヤアこれはこれはシノブ(さま)(ござ)いましたか。021サア何卒(どうぞ)(おく)へお(とほ)(くだ)さいませ。022御用(ごよう)(おもむき)(うけたま)はりませう』
023 (この)シノブの職掌(しよくしやう)右守(うもり)()して非常(ひじやう)低級(ていきふ)ではあるが、024大王殿下(だいわうでんか)御居間(おゐま)(ちか)(つか)(まつ)()なるを(もつ)て、025どことなく権威(けんゐ)(そな)はり、026(かつ)(また)左守(さもり)027右守(うもり)(いへど)028殿中(でんちう)女官(ぢよくわん)(たい)しては(つね)一歩(いつぽ)(ゆづ)らねばならなくなつてゐた。029万一(まんいち)女官(ぢよくわん)(いか)りに()れやうものなら、030(たちま)影響(えいきやう)各自(かくじ)地位(ちゐ)(およ)ぼすの(おそ)れあるを(もつ)てである。031奸侫邪智(かんねいじやち)()けたる流石(さすが)右守(うもり)も、032(とく)(この)女中頭(ぢよちうがしら)たるシノブに(たい)しては、033あらむ(かぎ)りの(こび)(てい)し、0331追従(つゐしよう)(いた)らざるなく、034()にもおかぬ待遇(もてなし)()りを発揮(はつき)するのが(つね)である。035シノブは悠然(いうぜん)として右守(うもり)(みちび)かれ(には)植込(うゑこみ)をすかして、036彼方(あなた)()ゆる、037(あま)(ひろ)からねども、038どこともなく瀟洒(せうしや)たる別間(べつま)案内(あんない)され、039宣徳(せんとく)火鉢(ひばち)(なか)において二人(ふたり)(あたま)(あつ)密談(みつだん)(ふけ)る。
040()『これはこれは早朝(さうてう)より御入来(ごじゆらい)(くだ)さいまして有難(ありがた)(ござ)います。041ツイ寝坊(ねばう)をかわきまして屋内(をくない)掃除(さうぢ)行届(ゆきとど)かず、042(この)(あひだ)騒動(さうだう)によつて下男(げなん)下女(げぢよ)(など)逃走(たうそう)(いた)し、043(まこと)不都合(ふつがふ)(きは)まる(ところ)御来臨(ごらいりん)(あふ)ぎ、044(じつ)汗顔(かんがん)(いた)りで(ござ)います。045さうして今日(こんにち)()(あそ)ばした御用(ごよう)(おもむき)は、046如何(いか)なる(こと)(ござ)いませうか。047(おほ)()けられ(くだ)さいますれば(まこと)有難(ありがた)(ござ)います』
048 シノブは儼然(げんぜん)として威儀(ゐぎ)(ただ)049言葉(ことば)もやや荘重(さうちよう)右守(うもり)見下(みくだ)(なが)()ふ、
050今日(こんにち)(まゐ)りしは()()(あら)ず、051大王殿下(だいわうでんか)勅使(ちよくし)として右守(うもり)殿(どの)(まを)(わた)()(こと)これあれば、052(つつし)んで(うけたま)はり()され』
053 右守(うもり)はハツと(かしら)()二足(ふたあし)三足(みあし)054後退(あとしざ)りし(なが)ら、
055御勅使様(おちよくしさま)には御苦労(ごくらう)千万(せんばん)056殿下(でんか)より御諚(ごぢやう)(おもむき)057(つつし)んで拝承(はいしよう)(つかまつ)りまする』
058シノブ『今日(こんにち)(わらは)059勅使(ちよくし)として(まゐ)りしは()()(あら)ず。060(なんぢ)()(ごと)くスダルマン太子(たいし)(きみ)行衛不明(ゆくへふめい)()り、061大王殿下(だいわうでんか)()かせられても御病気(ごびやうき)折柄(をりから)062御煩慮(ごはんりよ)最中(さいちう)063(また)もや王女(わうぢよ)バンナ(ひめ)(さま)064昨夜(さくや)より御行衛(おゆくへ)見失(みうしな)ひ、065殿中(でんちう)(うへ)(した)への御混雑(ごこんざつ)066(をり)()しくも左守(さもり)(かみ)先日(せんじつ)罹災(りさい)()つて、067胸骨(きようこつ)()病床(びやうしやう)呻吟(しんぎん)いたし、068(いま)参内(さんだい)(いた)さず069()むを()警官(けいくわん)四方(しはう)()し、070()(てつ)して捜索(そうさく)すれども、071(いま)(なに)手掛(てがか)りも()し。072(なんぢ)右守(うもり)病気中(びやうきちう)とは()けど、073今日(こんにち)場合(ばあひ)074少々(せうせう)病気(びやうき)隠忍(いんにん)し、075勇気(ゆうき)()して参内(さんだい)せよ」との御諚(ごぢやう)(ござ)る。076右守(うもり)殿(どの)077御返答(ごへんたふ)如何(いかが)(ござ)る』
078()『ハイ、079(おそ)(おほ)くも御勅使(おちよくし)(おもむき)080拝承(はいしよう)(つかまつ)りました。081直様(すぐさま)082()(きよ)め、083身拵(みごしら)へをなして参内(さんだい)(いた)しますれば、084大王殿下(だいわうでんか)御前(ごぜん)085よろしく御取(おとり)なしを(ねがひ)()(たてまつ)ります』
086シ『早速(さつそく)承引(しよういん)087大王殿下(だいわうでんか)()かせられても088右守(うもり)誠忠(せいちう)御満足(ごまんぞく)(あそ)ばさるるであらう。089(しか)らばこれにてお(わか)(まを)す』
090言葉(ことば)(をは)ると(とも)091ツと立上(たちあが)(はや)くも帰路(きろ)につかむとする。092右守(うもり)低頭平身(ていとうへいしん)093敬意(けいい)(へう)(なが)ら、094勅使(ちよくし)玄関(げんくわん)()づる(まで)見送(みおく)つてゐた。
095 シノブは一旦(いつたん)表門(おもてもん)(まで)立出(たちい)(ふたた)引返(ひきかへ)(きた)り、096(また)もや玄関口(げんくわんぐち)()つて、
097右守(うもり)司様(かみさま)098御在宅(ございたく)(ござ)いますか。099(わらは)女中頭(ぢよちうがしら)のシノブと(まを)しまして(いや)しき身分(みぶん)のもので(ござ)いますが、100(をり)()つてお(ねがひ)申上(まをしあ)()(こと)(ござ)いますれば、101どうか玄関番様(げんくわんばんさま)102別格(べつかく)御詮議(ごせんぎ)(もつ)て、103右守様(うもりさま)面会(めんくわい)出来(でき)ますやう御取次(おとりつぎ)(ねがひ)(あげ)(たてまつ)りまする』
104 (いま)(まで)玄関(げんくわん)(つぎ)()出張(でば)つて(かしら)(かたむ)思案(しあん)にくれてゐたサクレンスは、105(この)(こゑ)()くより(へだ)ての(ふすま)をサツと(ひき)あけ、106(あら)はれ(きた)り、
107()『やア其女(そなた)はシノブ殿(どの)か。108ようまア(ござ)つた。109どうか(おく)(とほ)つて(くだ)さい。110いろいろと相談(さうだん)もし()いからな』
111シ『やア(これ)(これ)右守(うもり)司様(かみさま)112御壮健(ごさうけん)なお(かほ)(はい)し、113大慶至極(たいけいしごく)(ぞん)じます。114(わらは)のやうな不束者(ふつつかもの)(あさ)(はや)うからお(おどろ)かせ(いた)しまして(まこと)申訳(まをしわけ)(ござ)いませぬ』
115()『いや、116その御挨拶(ごあいさつ)には(おそ)()る。117さう七難(しちむつかし)()はれずに(おく)別室(はなれ)においで(くだ)さい。118内々(ないない)相談(さうだん)があるから』
119シ『ハイ有難(ありがた)う。120左様(さやう)ならば遠慮(ゑんりよ)なく、121(おく)(とほ)らして(いただ)きませう』
122()(なが)右守(うもり)(あと)について別室座敷(はなれざしき)一間(ひとま)()(しめ)た。123右守(うもり)は、124さも鷹揚(おうやう)(てい)にて巻煙草(まきたばこ)(くゆ)らし(なが)ら、
125()『ハヽヽヽ、126シノブ殿(どの)127(この)(あひだ)騒動(さうだう)には随分(ずいぶん)()()んだでせうね』
128シ『はい、129()()むの()まないのつて、130(くち)(まを)すやうな(こと)では(ござ)いませぬワ。131最前(さいぜん)もお勅使(ちよくし)(まを)された(とほ)り、132殿内(でんない)大騒動(おほさうどう)御座(ござ)いますよ。133さうしてアリナ(さま)(まで)行衛不明(ゆくゑふめい)()られたのですから、134(わらは)心配(しんぱい)(まを)したら一通(ひととほ)りや二通(ふたとほ)りでは(ござ)いませぬ』
135()『ハヽヽヽ、136貴女(あなた)(もつと)()にかかるのはアリナさまと()えますな』
137シ『ホヽヽヽヽ、138そらさうですとも、139二世(にせ)(ちぎ)つた(をつと)ですもの。140女房(にようばう)(わらは)141これがどうしてジツとしてゐられませうか。142御推量(ごすゐりやう)(ねが)ひまする』
143()『イヤ、144これは(おそ)()つた。145(べつ)結婚(けつこん)御披露(ごひろう)もあつたやうでもなし、146何時(いつ)()情約締結(じやうやくていけつ)をなさつたのですかい』
147シ『どうかお(さつ)しを(ねが)ひます。148年頃(としごろ)(をんな)(たい)()ほり()ほりお()(あそ)ばすのはチと惨酷(ざんこく)ぢやありませぬか、149ホヽヽヽヽ』
150(ちつ)(かほ)(あか)らめ(そで)(かほ)をかくす。
151()貴女(あなた)はかかる混乱(こんらん)(さい)にも(かかは)らず、152恋愛味(れんあいみ)充分(じゆうぶん)(あぢ)はひ(あそ)ばす余裕(よゆう)がおありなさるのですから、153(じつ)偉大(ゐだい)女傑(ぢよけつ)ですよ。154この右守(うもり)驚愕(きやうがく)155(いな)感服(かんぷく)(つかまつ)りました。156(とき)にシノブさま、157最前(さいぜん)御勅使(ごちよくし)のお(つた)へによれば、158バンナ(ひめ)(さま)御行衛不明(おゆくゑふめい)との(こと)159太子様(たいしさま)()ひ、160二人(ふたり)(とも)肝腎(かんじん)(かた)御不在(ごふざい)では、161城内(じやうない)重鎮(ぢうちん)(うしな)ひ、162王家(わうけ)前途(ぜんと)のため(じつ)憂慮(いうりよ)()へないぢやありませぬか』
163シ『その(てん)(わらは)も、164貴郎(あなた)同感(どうかん)(ござ)います。165(しか)(なが)太子様(たいしさま)王女様(わうぢよさま)貴族生活(きぞくせいくわつ)大変(たいへん)()(きら)つて()らつしやつたから、166()騒動(さうだう)(さいは)ひ、167何処(どこ)かの山奥(やまおく)にでも(かく)れて、168簡易生活(かんいせいくわつ)(おく)らるる御所存(ごしよぞん)のやうに(うかが)ひます』
169()『ヤアーかかる王家(わうけ)一大事(いちだいじ)をシノブ殿(どの)は、170(あま)()(かい)してゐられないやうだが、171殿中(でんちう)(ふか)(つか)ふる臣下(しんか)()として、172(あま)りに不都合(ふつがふ)ぢやありませぬか』
173シ『不都合(ふつがふ)でも仕方(しかた)がないぢやありませぬか。174(なに)()つても肝腎(かんじん)(かた)()られ()いのですもの、175沢山(たくさん)警官(けいくわん)やスパイは四方(しはう)八方(はつぱう)()(まは)り、176()()177(たか)()捜索(そうさく)しても見当(みあた)らないもの、178もう(この)(うへ)人力(じんりよく)如何(いかん)ともすべき(ところ)では(ござ)いますまい。179何事(なにごと)神様(かみさま)のなさるままですわ』
180()『イヤ、181(あき)れましたね。182(しか)(なが)拙者(せつしや)はお(まへ)さまの(こころ)(そこ)看破(かんぱ)してゐるのだが、183何事(なにごと)(つつ)(かく)さず、184ここで打割(うちわ)つて(あか)して(もら)へますまいか。185(るゐ)(とも)()ぶとか()つて、186(この)右守(うもり)とても(はら)(たた)けばお(まへ)さまも(おな)(こと)187(あまり)(こころ)(しろ)うない(をとこ)ですよ、188アツハヽヽヽ』
189シ『右守様(うもりさま)190貴方(あなた)のお(こころ)(そこ)も、191(わらは)にはよく(わか)つて()ります。192貴方(あなた)弟御(おとうとご)のエールさまを(この)(さい)王位(わうゐ)(のぼ)せバンナ(さま)(めあは)し、193貴方(あなた)外戚(ぐわいせき)となつて国務(こくむ)総攬(そうらん)し、194大望(たいまう)()げむとして、195種々(いろいろ)劃策(くわくさく)(めぐ)らしてゐらつしやるでせう』
196(ほし)をさされて、197右守(うもり)(やや)たぢろぎ(なが)流石(さすが)曲者(くせもの)198わざとケロリとした(かほ)()()し、
199()『ハヽヽヽ、200シノブさま、201(まへ)さまの天眼通(てんがんつう)落第(らくだい)ですよ。202どうしてそんな野心(やしん)()ちませう。203よく(かんが)へて(くだ)さい、204拙者(せつしや)平素(へいそ)行動(かうどう)を』
205シ『ホヽヽヽ、206右守様(うもりさま)白々(しらじら)しいお言葉(ことば)207(わらは)平素(へいそ)貴方(あなた)御行動(ごかうどう)によつて(かく)(ごと)推定(すゐてい)したので(ござ)いますよ。208(なに)(ほど)秘密(ひみつ)()かし(あそ)ばしても、209(わらは)(けつ)して口外(こうぐわい)(いた)しませぬから御安心(ごあんしん)(くだ)さいませ』
210()『エー、211拙者(せつしや)(こと)は、212おつて(まをし)()げませう。213種々(いろいろ)(いた)くない(はら)(さぐ)られては、214この右守(うもり)もやりきれませぬからな、215ハヽヽヽ。216それよりもシノブさま、217(まへ)さまの(こころ)秘密(ひみつ)を、218スツパ()きませうかな』
219 シノブは(おも)はずビクツとしたが、220こいつも曲者(くせもの)221ワザと平気(へいき)(よそほ)ひ、222片頬(かたほほ)(ゑみ)(たた)(なが)ら、
223シ『サア(なん)なつと(おつ)しやつて(くだ)さいませ。224(わらは)(こころ)はあく(まで)清浄潔白(しやうじやうけつぱく)225只一点(ただいつてん)野心(やしん)もなければ欲望(よくばう)もありませぬ』
226()『どこ(まで)(おし)(つよ)貴女(あなた)のやり(くち)には、227流石(さすが)右守(うもり)(した)をま()ました。228(まへ)さまは左守(さもり)(せがれ)アリナ殿(どの)王位(わうゐ)につかせ、229自分(じぶん)王妃(わうひ)となつて栄耀栄華(えいえうえいぐわ)にタラハン(ごく)名花(めいくわ)(うた)はれ(くら)すつもりで(ござ)いませうがな』
230シ『右守様(うもりさま)231何事(なにごと)かと(おも)へば()(おぼ)えもない232(いや)233(こころ)にも()せない(めう)(こと)仰有(おつしや)いますな。234(わらは)は、235左様(さやう)陰謀(いんぼう)(たく)むやうな悪人(あくにん)では(ござ)いませぬよ』
236()『アツハヽヽヽ、237それ()けの度胸(どきよう)があれば、238一国(いつこく)王妃(わうひ)として(はづか)しからぬ人格者(じんかくしや)だ。239(また)左守(さもり)(せがれ)アリナ殿(どの)近来(きんらい)(まれ)なる才子(さいし)だ。240寛仁大度(くわんじんたいど)にして慈悲(じひ)(わきま)へ、2401人情(にんじやう)(つう)じ、241その(うへ)容色(ようしよく)端麗(たんれい)にして美男子(びだんし)(ほまれ)(たか)く、242一国(いつこく)主権者(しゆけんしや)として、243吾等(われら)(かしら)(いただ)いても(はづか)しからぬ人材(じんざい)244いゝ(ところ)へシノブさまは()がつきましたね。245ヤア右守(うもり)もズツと感心(かんしん)(いた)しました。246御存(ごぞん)じの(とほ)り、247(ほとん)暗黒(あんこく)(ひと)しい今日(こんにち)国状(こくじやう)248アリナさまの胆勇(たんゆう)と、249シノブさまの度胸(どきよう)(もつ)て、2491国政(こくせい)総攬(そうらん)をなさつたら、250キツト国家(こくか)安全(あんぜん)無事(ぶじ)(をさ)まるでせう。251(じつ)右守(うもり)(おい)ても大賛成(だいさんせい)(ござ)います。252その(かは)り、253アリナさまと貴方(あなた)目的(もくてき)達成(たつせい)した(うへ)は、254この右守(うもり)抜擢(ばつてき)して、255国務総監(こくむそうかん)左守(さもり)(やく)使(つか)つて(くだ)さるでせうな』
256と、257うまく()()んで(かはづ)(はらわた)暴露(ばくろ)させむと(こころ)みた。258(かしこ)いやうでも流石(さすが)(をんな)259さも(うれ)しげに(こた)へて()ふ、
260シ『流石(さすが)賢明(けんめい)なる右守(うもり)殿(どの)261その天眼力(てんがんりき)には敬服(けいふく)(いた)しました。262御推量(ごすゐりやう)(とほ)りで(ござ)います。263さうしてアリナ(さま)太子様(たいしさま)とお約束(やくそく)()んで()ります。264それ(ゆゑ)アリナ(さま)太子(たいし)()られるのは(べつ)(なん)不思議(ふしぎ)(ござ)いませぬ』
265()成程(なるほど)266(うけたま)はれば(うけたま)はる(ほど)267万事万端(ばんじばんたん)268注意(ちうい)行届(ゆきとど)き、269(みづ)()らさぬ御経綸(ごけいりん)270(いよいよ)右守(うもり)271(すゑ)(たの)もしく欣喜(きんき)()へませぬ。272ついては、273ここに(ひと)つの大妨害物(だいばうがいぶつ)(ござ)いますが、274(これ)(なん)とかして排除(はいじよ)せねばなりますまい』
275シ『妨害物(ばうがいぶつ)仰有(おつしや)るのは何物(なにもの)(ござ)いますか』
276()(ほか)でも(ござ)らぬ、277太子(たいし)(きみ)(この)(まま)放任(はうにん)して()いては後日(ごじつ)迷惑(めいわく)278仮令(たとへ)太子殿下(たいしでんか)(おい)て、279(ふたた)王位(わうゐ)()かむとする念慮(ねんりよ)(おこ)らないにしても、280金枝玉葉(きんしぎよくえふ)御方(おかた)なれば、281(また)()からぬ不逞団(ふていだん)太子(たいし)擁立(ようりつ)し、282王統(わうとう)連綿(れんめん)真理(しんり)(はた)(ひるが)へし押寄(おしよ)(きた)らば、283折角(せつかく)貴女(あなた)幸福(かうふく)も、2831(ゆめ)となるぢやありませぬか。284貴女(あなた)太子(たいし)のお行衛(ゆくゑ)御存(ごぞん)じの(はず)285()(この)方面(はうめん)から処置(しよち)(いた)さねば()りますまい』
286シ『如何(いか)にもお(せつ)(とほ)り、287将来(しやうらい)邪魔者(じやまもの)は、288太子様(たいしさま)御座(ござ)います。289(さいは)(わらは)御所在(おありか)(ぞん)じて()りますれば、290(なん)ならお()らせ(まを)しても(よろ)しう(ござ)います』
291()大王様(だいわうさま)御存(ごぞん)じでいらつしやるのかな』
292シ『イエイエ、293どうしてどうして御存(ごぞん)じが(ござ)いませうぞ。294(わらは)はアリナ(さま)から(くは)しう(うけたま)はつて()ります』
295()成程(なるほど)296ア、297そりやおでかしなさつた。298それでは太子(たいし)捕虜(ほりよ)となし、299(ふたた)(この)()(あが)()いやうに取計(とりはから)ひ、300一時(いちじ)(はや)くアリナさまを(むか)へて王位(わうゐ)()かせ、301(あらた)華燭(くわしよく)(てん)()げさせ、302国政(こくせい)重任(ぢうにん)背負(せお)つて()つて(いただ)かねばなりませぬから、303どうぞお二方(ふたかた)所在(ありか)明細(めいさい)にお()らせ(くだ)さいませ』
304シ『これ右守様(うもりさま)305(たか)うは()はれませぬ。306(てん)(くち)307(かべ)(みみ)308どうかお(みみ)をお()(くだ)さいませ』
309()(なが)右守(うもり)耳許(みみもと)にて何事(なにごと)かクシヤクシヤと(ささや)いた。310右守(うもり)(わが)計略(けいりやく)()(あた)れりと心中(しんちう)雀躍(こをど)りし(なが)らワザと真面目(まじめ)(よそほ)ひ、
311()『イヤ承知(しようち)(いた)しました。312シノブ殿(どの)313御安心(ごあんしん)(くだ)さいませ。314大王(だいわう)手前(てまへ)315よしなにお()(はか)らひを(ねが)ひます。316そして拙者(せつしや)御存(ごぞん)じの(とほ)()(わる)(あし)(わる)く、317(かつ)(この)(ごろ)流行(りうかう)感冒(かんぱう)(をか)されて()りますれば、318到底(たうてい)ここ二三日(にさんにち)参内(さんだい)(かな)はないだらうと、319そこは、320それ、321(よろ)しく()つておいて(くだ)さい。322(なに)よりも太子(たいし)処分(しよぶん)し、323アリナさまをお(むか)(まを)すのが焦眉(せうび)一大急務(いちだいきふむ)ですからな』
324 シノブは(こころ)(なか)にて、
325『しすましたり、326右守(うもり)(かみ)比較的(ひかくてき)(くみ)しやすき人物(じんぶつ)だ。327(よく)(まよ)うて(わが)弁舌(べんぜつ)翻弄(ほんろう)され、328本音(ほんね)()き、329()(わらは)がためによくも(あざむ)かれよつたな』
330微笑(ほほゑ)みつつ自分(じぶん)(だま)されてゐるのを、331うまく(だま)してやつたと得意(とくい)になつてゐる。332(じつ)にうすつぺらの智慧(ちゑ)持主(もちぬし)である。333盤古神王(ばんこしんわう)334もし(この)()御降臨(ごかうりん)あらば(かれ)(こころ)(あはれ)み、335(かつ)(わら)はせ(たま)ふであらう。
336 シノブは欣然(きんぜん)として右守(うもり)(わか)れを()げ、337(あし)もイソイソ殿内(でんない)さして(かへ)()く。338 (あと)見送(みおく)つて右守(うもり)()()し、
339『アツハヽヽヽヽ、340到頭(たうとう)341シノブの古狸(ふるだぬき)征服(せいふく)してやつた。342(なに)(ほど)利口(りこう)()えて()つても(をんな)(をんな)だ。343華族(くわぞく)女学校(ぢよがくかう)校長(かうちやう)(つと)天下一(てんかいち)才女(さいぢよ)()はれてゐる(をんな)でさへも344葦野(あしの)(ごと)怪行者(くわいぎやうしや)頤使(いし)され345(なさけ)(たね)(まで)宿(やど)馬鹿(ばか)天下(てんか)(さら)()(なか)だから、346(なに)(ほど)(えら)いと()つても、347(をんな)はヤツパリ(をんな)だ、348アツハヽヽヽ。349たうとうこの右守(うもり)智慧(ちゑ)(ひかり)(くらま)され、350最愛(さいあい)(をつと)難儀(なんぎ)になる(こと)()らず、351本音(ほんね)()いて(かへ)りよつたわい、352イツヒヽヽヽ』
353 かく一人(ひとり)笑壺(ゑつぼ)()つてゐる。354其処(そこ)(ふすま)をソツと(おし)あけ()(きた)りしはサクラン(ひめ)であつた。
355旦那様(だんなさま)356天晴(あつぱれ)々々(あつぱれ)357それでこそ(わらは)(をつと)358右守(うもり)司様(かみさま)ですわ。359(いな)(ちか)将来(しやうらい)における国務総監(こくむそうかん)(さま)360本当(ほんたう)に、361知識(ちしき)宝庫(はうこ)とは旦那様(だんなさま)(こと)ですね。362(わらは)363只今(ただいま)掛合(かけあひ)(ふすま)(へだ)てて一伍一什(いちぶしじう)(うけたま)はり、364旦那様(だんなさま)の、365非凡(ひぼん)端倪(たんげい)すべからざる御智慧(おちゑ)には366ゾツコン(ほれ)(しま)つたのですよ、367ホヽヽヽ』
368 右守(うもり)威猛高(ゐたけだか)になり、
369『エツヘヽヽヽ、370(おれ)腕前(うでまへ)は、371まア、372ザツと(この)(とほ)りだ。373(おれ)今後(こんご)活動(くわつどう)刮目(くわつもく)して()つてゐるがよからう、374イツヒヽヽヽ』
375(うで)()んだまま、376上下(じやうげ)身体(しんたい)()すり、377床板(ゆかいた)(まで)もメキメキと()かしてゐる。
378大正一四・一・七 新一・三〇 於月光閣 北村隆光録)