霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一七章 ()岩戸(いはと)〔一七四一〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第68巻 山河草木 未の巻 篇:第4篇 月光徹雲 よみ:げっこうてつうん
章:第17章 第68巻 よみ:ちのいわと 通し章番号:1741
口述日:1925(大正14)年01月30日(旧01月7日) 口述場所:月光閣 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1926(大正15)年9月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
宣伝歌を歌っていたのは、白馬にまたがった梅公別であった。
神示により、水車小屋の地下に立派な人が押し込められていることを知り、地下室に降りて行く。
梅公別は、天の数歌の神力により牢獄の岩戸を解き放ち、太子とスバール姫を救い出す。
太子は、スバール姫との恋愛を貫こうと、城へは戻りたくないと宣伝使に頼むが、事情を聞いた梅公別は、自分が仲人をしようと太子を諭す。
恋愛、父との和解、国家の建て直し、これらすべてを全うする道を、梅公別は示す。
太子・スバール姫は、梅公別にすべてを任せて、城に帰る決心をする。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm6817
愛善世界社版: 八幡書店版:第12輯 236頁 修補版: 校定版:235頁 普及版:69頁 初版: ページ備考:
001 三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)梅公別(うめこうわけ)白馬(はくば)(またが)り、002渺茫(べうばう)として(てん)(つづ)くデカタン高原(かうげん)大原野(だいげんや)003(ひがし)(ひがし)へと那美山(なみやま)南麓(なんろく)目当(めあて)(すす)(きた)り、004(ふる)ぼけた水車(すいしや)小屋(ごや)(まへ)(こま)(とど)独言(ひとりごと)
005梅公(うめこう)『ハテ、006(いぶ)かしや、007(いま)この附近(あたり)人声(ひとごゑ)(たしか)(きこ)えたやうだ。008(こま)(はや)めて近寄(ちかよ)()れば(ひと)()みさうにもないこの破屋(あばらや)(ひと)つ。009水車(すいしや)はあれど運転(うんてん)中止(ちうし)有様(ありさま)010(なに)かこの小屋(こや)には秘密(ひみつ)(ひそ)んでゐるに相違(さうゐ)ない。011どれ(ひと)調(しら)べて()よう』
012(こま)をヒラリと()()り、013水車(すいしや)小屋(ごや)(はしら)(しば)りつけおき(なが)ら、014いろいろと四辺(あたり)(みみ)をすまして(うかが)つて()た。015どこともなしに(ひと)(こゑ)(きこ)えて()る。016()(そこ)のやうでもあり、017(また)(うへ)(はう)から(きこ)えて()(やう)でもあり、018(こゑ)出所(でどころ)(わか)らぬ。019梅公別(うめこうわけ)(こも)()きて端坐(たんざ)瞑目(めいもく)して祈願(きぐわん)()めた(その)結果(けつくわ)は、020地下室(ちかしつ)立派(りつぱ)(ひと)()()まれて()る」と()(こと)(わか)つて()た。021四辺(あたり)をよくよく調(しら)()れば、022(わらぢ)()りみがかれた床板(ゆかいた)がある。023グツと()をかけ一枚(いちまい)めくつて()ると、024地下室(ちかしつ)相当(さうたう)階段(かいだん)(とほ)つてゐる。025梅公別(うめこうわけ)はこの階段(かいだん)四五間(しごけん)(ばか)(みぎ)(ひだり)()(まが)(なが)(くだ)つて()くと、026其処(そこ)二人(ふたり)(をとこ)()()うて(ふる)つて()る。
027『やア(その)(はう)何者(なにもの)だ。028(さつ)する(ところ)029(なに)()からぬ秘密(ひみつ)伏在(ふくざい)する魔窟(まくつ)()える。030有体(ありてい)(まをし)()げろ』
031サ『ハイ、032ワヽヽ(わたし)はサヽサーマンと()ふヒヽヽ一人(ひとり)人間(にんげん)(ござ)います。033(なに)(べつ)(わる)悪事(あくじ)(いた)した(おぼ)えは(さら)(ござ)いませぬ。034右守(うもり)司様(かみさま)御命令(ごめいれい)()りまして、035此処(ここ)(つと)めて()るので(ござ)います。036どうぞ今日(けふ)(ところ)見逃(みのが)して(くだ)さいませ。037慈悲(じひ)です、038(なさけ)です、039(たの)みます。040コヽコラ、041カーク、042貴様(きさま)もチヽ(ちつ)()(わけ)弁解(べんかい)(いた)さぬか』
043カ『いや(まを)宣伝使(せんでんし)(さま)044(わたし)はカークと(まをし)まして(あま)(わる)くもない、045()くもない世間(せけん)(なみ)人間(にんげん)(ござ)います。046(じつ)(ところ)右守(うもり)(かみ)大変(たいへん)謀叛(むほん)(たく)らみ、047カラピン(わう)太子(たいし)スダルマン太子(たいし)を、048二千円(にせんゑん)懸賞付(けんしやうつき)()(つか)まえて()れと、049内々(ないない)御命令(ごめいれい)(くだ)りましたので、050二十人(にじふにん)のものが、051ソヽその百円(ひやくゑん)づつ(たしか)(まう)けさして(いただ)きました。052どうぞ御量見(ごれうけん)(くだ)さいませ。053何時(いつ)でも054()(かね)()つたのですから、055太子様(たいしさま)何時(いつ)でもお(かへ)(まをし)ます。056のうサーマン、057ソヽさうぢやないか』
058サ『ソヽそれでも太子様(たいしさま)をコヽ(この)(ひと)(わた)さうものなら、059(おれ)(たち)のクヽ(くび)()ぶぢやないか』
060(うめ)『お(まへ)(たち)()(こと)(ちつ)とも要領(えうりやう)()ない。061(えう)するにタラハン(じやう)太子様(たいしさま)右守(うもり)(たの)まれて何処(どこ)かへ(かく)したと(まを)すのだな』
062サ『ハイ、063(その)(とほ)りで(ござ)います。064毛頭(まうとう)相違(さうゐ)(ござ)いませぬ。065何処(どこ)かへ(かく)しまして(ござ)います』
066(うめ)何処(どこ)かでは(わか)らぬぢやないか。067かつきり在所(ありか)()つたらどうだ』
068サ『ハイ、069たうとう……(ところ)(かく)しました』
070(うめ)(なん)()(ところ)(かく)したのだ』
071サ『ハイ、072チヽチのつく(ところ)です。073オイ、074カークお(まへ)半分(はんぶん)()へ。075(おれ)秘密(ひみつ)(あか)しては責任(せきにん)があるからなア。076一口(ひとくち)づつ()はうぢやないか』
077カ『ハイ、078宣伝使(せんでんし)(さま)079(つつ)まず(かく)さず申上(まをしあ)げます。080カーに(かく)しました』
081サ『シーに(かく)しました』
082カ『ツーに(かく)しました』
083(うめ)(なに)084チーとカーとシーとツーと、085アヽ地下室(ちかしつ)か。086地下室(ちかしつ)()へば此処(ここ)ではないか』
087サ『サーで(ござ)います』
088カ『ヨーで(ござ)います』
089(うめ)『オイ、090邪魔(じやま)(くさ)い。091左様(さやう)(ござ)いますと()へば()いぢやないか』
092サ『こんな秘密(ひみつ)(まをし)(あげ)やうものなら、093右守(うもり)(かみ)から()(くび)()はされますから、094()れで(わざ)(わか)らぬやうに言葉(ことば)()けて(まを)しました。095御推察(ごすいさつ)(くだ)さいませ、096貴方(あなた)明敏(めいびん)頭脳(づなう)でお(かんが)(くだ)されば(わか)るでせう』
097(うめ)成程(なるほど)098それも一理(いちり)がある、099面白(おもしろ)い。100それでは二人(ふたり)()けて(はな)して()れ。101自分(じぶん)言霊別(ことたまわけ)だから一言(ひとこと)()けば大抵(たいてい)(わか)る。102さうして(この)地下室(ちかしつ)()()まれて()(かた)一人(ひとり)二人(ふたり)かどうだ』
103 二人(ふたり)(たがひ)一言(ひとこと)づつ、
104『フ、105タ、106リ、107サ、108マ、109デ、110ゴ、111ザ、112リ、113マ、114ス。115ソ、116シ、117テ、118ヒ、119ト、120リ、121ハ、122ス、123ダ、124ル、125マ、126ン、127タ、128イ、129シ、130サ、131マ、132ヒ、133ト、134リ、135ハ、136ス、137バー、138ル、139ヒ、140メ、141サ、142マ、143デ、144ゴ、145ザ、146イ、147マ、148ス。149ミ、150ツ、151カ、152マ、153ヘ、154カ、155ラ、156ナ、157ニ、158モ、159ク、160ハ、161ズ、162ノ、163マ、164ズ、165ニ、166オ、167シ、168コ、169メ、170ラ、171レ、172ク、173ル、174シ、175ン、176デ、177イ、178ラ、179レ、180マ、181ス』
182(うめ)『ヤ、183もう(わか)つた。184貴様(きさま)(たち)此処(ここ)(ちつ)とも(うご)(こと)はならぬぞ』
185カ『ハイ(うご)けと仰有(おつしや)いましても(この)(とほ)(こし)()けて仕舞(しま)つたものですから、186(うご)(こと)出来(でき)ませぬ』
187(うめ)荒金(あらがね)(つち)洞穴(ほらあな)(そこ)(ふか)
188(つな)がれ(たま)(きみ)(すく)はむ。
189(われ)こそは三五(あななひ)(みち)神司(かむつかさ)
190(きみ)(すく)はむと(しの)()にけり』
191 太子(たいし)石牢(いしらう)(なか)よりさも(さはや)かなる(こゑ)にて、
192惟神(かむながら)(かみ)(めぐみ)(さち)はひて
193岩戸(いはと)(ひら)(とき)()にけり。
194三五(あななひ)(かみ)(つかさ)御恵(みめぐみ)
195(つゆ)(うるほ)若緑(わかみどり)かな。
196(わぎ)妹子(もこ)(となり)牢屋(ひとや)(つな)がれぬ
197とく(すく)ひませ(われ)より(さき)に』
198 スバール(ひめ)最前(さいぜん)から(この)様子(やうす)(かんが)へて()たが、199地獄(ぢごく)(ほとけ)()うたる心地(ここち)200(よろこ)びに()えず、201さも(うれ)()に、
202(いぶ)かしきこれの牢屋(ひとや)にとらはれて
203()()らしけり吾等(われら)二人(ふたり)は。
204皇神(すめかみ)(うづ)御光(みひかり)(あら)はれて
205常夜(とこよ)(やみ)()らす(うれ)しさ』
206 梅公別(うめこうわけ)牢獄(らうごく)(かぎ)(さが)せども207何処(どこ)にも(かぎ)らしきものが見当(みあた)らないので、208両人(りやうにん)(むか)(きび)しく訊問(じんもん)して()ると209牢獄(らうごく)(かぎ)右守(うもり)(かみ)()つて(かへ)つたとの(こた)である。210梅公別(うめこうわけ)途方(とはう)()(なが)一生懸命(いつしやうけんめい)(あま)数歌(かずうた)奏上(そうじやう)(いの)(はじ)めた。211不思議(ふしぎ)牢獄(らうごく)(いは)()自然(しぜん)にパツと(ひら)けて212五色(ごしき)光明(くわうみやう)室内(しつない)射照(いてら)した。213太子(たいし)もスバール(ひめ)(ころ)ぶが(ごと)牢獄(らうごく)(はし)()で、214梅公別(うめこうわけ)(からだ)前後(ぜんご)より(くら)ひつき(うれ)(なみだ)にかきくれ、215少時(しばし)言葉(ことば)さえ()()なかつた。
216(うめ)(うけたま)はれば殿下(でんか)はタラハン(じやう)太子様(たいしさま)217(また)貴女(あなた)はスバール(ひめ)(さま)との(こと)218どうしてまア()(やう)(ところ)()()められ(たま)うたので(ござ)いますか』
219(たい)(はづか)(なが)吾々(われわれ)二人(ふたり)(こひ)におち城内(じやうない)(ひそか)()()で、220山奥(やまおく)(やぶ)(でら)(はい)つて(かく)(しの)んで()りました(ところ)221(こころ)(きた)なき右守(うもり)のサクレンスなるもの、222王家(わうけ)(うば)はむ(たく)みより、223吾々(われわれ)邪魔者(じやまもの)見做(みな)し、224悪漢(わるもの)(めい)(かね)(あた)へてふん(じば)らせ、225斯様(かやう)(ところ)()(まゐ)り、226(われ)()二人(ふたり)()(ころ)さむとの(たく)み、227もはや決心(けつしん)(ほぞ)()めて()りましたが、228(おも)ひも()らぬ貴方(あなた)のお(たす)け、229斯様(かやう)(うれ)しい(こと)(ござ)いませぬ』
230ス『宣伝使(せんでんし)(さま)231有難(ありがた)(ござ)います。232(かげ)(いのち)(すく)うて(いただ)きました。233(この)御恩(ごおん)はミロクの()(まで)(わす)れは(いた)しませぬ。234(いのち)(おや)神司様(かむづかささま)235(かたじけ)なふ(ぞん)じます』
236(うめ)(ひと)(すく)ふは宣伝使(せんでんし)(やく)237(その)(やう)(れい)()はれては(かへ)つて迷惑(めいわく)(いた)します。238神様(かみさま)(わたし)(たい)(とほ)して貴方(あなた)(がた)をお(すく)(あそ)ばしたのですから、239国祖(こくそ)国常立大神(くにとこたちのおほかみ)(さま)240豊雲野大神(とよくもぬのおほかみ)(さま)にお(れい)仰有(おつしや)つて(くだ)さいませ。241サア(わたし)一緒(いつしよ)(こゑ)(そろ)へてお(れい)(いた)しませう』
242『ハイ、243有難(ありがた)う』
244両人(りやうにん)梅公別司(うめこうわけつかさ)(とも)に、245(こころ)のどん(ぞこ)より満腔(まんこう)赤誠(せきせい)(ささ)げて、246感謝(かんしや)()大神(おほかみ)奏上(そうじやう)(をは)り、247梅公別(うめこうわけ)両人(りやうにん)(むか)ひ、
248(うめ)『サア(みな)さま、249かやうな(ところ)永居(ながゐ)(おそ)れが(ござ)います。250これから(わたし)がタラハン(じやう)へお(おく)(いた)しませう。251(いま)(まで)間違(まちが)つた(こころ)()(なほ)城内(じやうない)へお(かへ)(あそ)ばし、252大王殿下(だいわうでんか)宸襟(しんきん)をお(やす)(あそ)ばしませ』
253(たい)『ハイ、254(なに)から(なに)(まで)255御親切(ごしんせつ)有難(ありがた)(ござ)います。256(しか)(なが)(この)(をんな)(ちち)には内証(ないしよう)()れて()りますので、257此女(これ)()れて(かへ)(わけ)には(まゐ)りませぬ。258それだと()つて今更(いまさら)()ててゆく(こと)可愛(かあい)さうで出来(でき)ませぬ。259(また)(わたし)恋愛至上主義(れんあいしじやうしゆぎ)より()ても()てる(わけ)には()きませぬから、260何卒(どうぞ)慈悲(じひ)此処(ここ)から二人(ふたり)をお見捨(みす)(くだ)さいませ。261一生(いつしやう)のお(ねがひ)(ござ)います』
262(うめ)『アーそれは間違(まちが)つたお(かんが)へ、263どうあつても(わたし)がお(とも)(いた)しませう。264さうしてお二人(ふたり)恋愛(れんあい)(やぶ)れないやうに(わたくし)媒介(なかうど)となつて、265父王殿下(ちちわうでんか)御承諾(ごしようだく)()(こと)(いた)しませう。266(かなら)御心配(ごしんぱい)なくお(やかた)へお(かへ)りなさいませ』
267(たい)(ちち)大変(たいへん)頑固(ぐわんこ)(ござ)いますから、268神司(かむつかさ)のお言葉(ことば)(いへど)到底(たうてい)承知(しようち)(いた)しますまい』
269(うめ)『それは貴方(あなた)(こころ)偏見(ひがみ)(まを)すもの。270(あめ)(した)()(あい)せない(おや)(ござ)いませうか。271貴方(あなた)がこのスバール(さま)(あい)して()られるよりも百層倍(ひやくそうばい)(まし)272貴方(あなた)父上(ちちうへ)貴方(あなた)(あい)して()られますよ。273(あい)する貴方(あなた)(こころ)(なぐさ)むる恋人(こひびと)をどうしてお(にく)(あそ)ばしませう。274宣伝使(せんでんし)言葉(ことば)二言(にごん)はありませぬ。275生命(せいめい)()しても貴方(あなた)(こひ)完全(くわんぜん)成功(せいこう)させませう。276(うけたま)はればタラハン(ごく)紛擾(ふんぜう)絶間(たえま)()277国家(こくか)危機(きき)(ひん)して()るやうです。278御父(おんちち)殿下(でんか)御心配(ごしんぱい)折柄(をりから)279(てん)にも()にも一人子(ひとりご)太子様(たいしさま)のお行衛(ゆくゑ)(わか)らないやうな(こと)では280層一層(そういつそう)父殿下(ちちでんか)御心配(ごしんぱい)()(ばか)り、281国家(こくか)擾乱(ぜうらん)()()うて激烈(げきれつ)()(ばか)りです。282その(きよ)(じやう)じて悪臣(あくしん)(ども)非望(ひばう)(くはだ)283()一日(いちにち)修羅(しゆら)(ちまた)となる(ばか)りでせう。284是非(ぜひ)(わたくし)()いてお(かへ)りなさいませ』
285(たい)『ハイ(かさ)(がさ)ねの御教訓(ごけうくん)有難(ありがた)(ござ)います。286そんならお言葉(ことば)(したが)一先(ひとま)城内(じやうない)(かへ)(こと)決心(けつしん)(いた)します。287(まこと)()みませぬが、288どうか(おく)つて(くだ)さいますやう』
289(うめ)『やア早速(さつそく)御承知(ごしようち)290(さすが)はタラハン(ごく)太子様(たいしさま)291(わたくし)満足(まんぞく)(いた)しました』
292ス『(わらは)もお言葉(ことば)(あま)へ、293宣伝使(せんでんし)(さま)のお(とも)(いた)しまして294太子様(たいしさま)(とも)(まゐ)らして(いただ)きませう。295どうか宜敷(よろし)うお(ねが)(いた)します』
296(うめ)『や、297御心配(ごしんぱい)(あそ)ばすな。298きつと円満(ゑんまん)解決(かいけつ)をつけてお()にかけませう。299何事(なにごと)神様(かみさま)にお(まか)(まを)せば大丈夫(だいぢやうぶ)ですから。300(しか)太子様(たいしさま)301(この)両人(りやうにん)はどう(あそ)ばしますか』
302(たい)『ハイ、303(ゆる)(がた)悪人(あくにん)(ござ)いますれば、304(この)両人(りやうにん)牢獄(らうごく)へぶち()(こら)しめてやり()いは山々(やまやま)(ござ)いますが、305(わたし)牢獄生活(らうごくせいくわつ)(くる)しみを(あぢ)はひましたので、306(わが)()(つめ)つて(ひと)(いた)さを()れとやら、307どうも可憐(かはい)さうで()()んでやる()(いた)しませぬ。308この処置(しよち)については宣伝使(せんでんし)(さま)御判断(ごはんだん)(まか)せませう』
309カ『アヽ、310もしもし宣伝使(せんでんし)(さま)311(けつ)して(わたし)(この)()(おい)悪事(あくじ)(いた)しませぬから、312どうぞ牢獄(らうごく)()れる(こと)だけは(ゆる)して(くだ)さいませ。313その(かは)りお(うま)別当(べつたう)でも(なん)でも(いた)します』
314(うめ)(ひと)(たす)けるは宣伝使(せんでんし)(やく)だ。315(しか)(なが)(おそ)(おほ)くも太子殿下(たいしでんか)(くる)しめ(たてまつ)つた(その)(はう)(ども)なれば、316一人(ひとり)だけ(たす)けてやらう。317一人(ひとり)()(どく)ながら(この)牢獄(らうごく)()()んでおく(つも)りだ。318太子様(たいしさま)319どちらが比較的(ひかくてき)善人(ぜんにん)(ござ)いますか』
320(たい)『ハイ、321(わたし)としては(かふ)(おつ)区別(くべつ)がつきませぬ。322(そろ)ひも(そろ)つて(わる)(やつ)(ござ)いますから』
323サ『もし太子様(たいしさま)324(わたし)何時(いつ)貴方(あなた)(たい)同情(どうじやう)()つて()たぢや(ござ)いませぬか。325このカークと()(やつ)326(わたし)が「太子様(たいしさま)にお(なか)()くだらうから、327焼甘藷(やきいも)(へた)でも()つて()てソツと()げたらどうだらう」と()うた(ところ)328大悪党(だいあくたう)のカークの(やつ)329(わし)はそんな宋襄(そうぜう)(じん)はやらない、330断乎(だんこ)として(みづ)一杯(いつぱい)()ます(こと)出来(でき)ない。331右守(うもり)(かみ)にそんな(こと)(きこ)えたら、332(おれ)(くび)()ぶ」と極端(きよくたん)自己愛(じこあい)発揮(はつき)した(やつ)(ござ)いますから、333どうか(わたし)をお(たす)(くだ)さいませ』
334(うめ)『アツハヽヽヽ、335オイ、336カーク、337(まへ)はサーマンが(いま)()つたやうな(こと)(まを)したのか』
338カ『ハイ、339是非(ぜひ)(ござ)いませぬ。340神様(かみさま)(まへ)(かく)したつて駄目(だめ)(ござ)います。341あの(とほ)(まを)しました。342(まこと)(いま)となつて(おも)へば申訳(まをしわけ)のない(こと)(いた)しました。343どうか(わたし)牢獄(らうごく)()()んで(かへ)つて(くだ)さいませ。344サーマンは女房(にようばう)()(こと)なり、345(わたし)一人身(ひとりみ)346どうなつても(かま)ひませぬ。347(つま)()く、348()()く、349何時(いつ)()んでも()(もの)さえ(ござ)いませぬから』
350(うめ)『ハヽヽヽ、351(わり)とは正直(しやうぢき)(やつ)だ。352どうやらお(まへ)(はう)善人(ぜんにん)らしい。353さう有体(ありてい)白状(はくじやう)した(うへ)はお(まへ)(つみ)()えて(しま)つた。354()(どく)(なが)らサーマンを牢屋(らうや)()()むより仕方(しかた)()からう。355太子様(たいしさま)356殿下(でんか)のお(かんが)へは如何(いかが)(ござ)いますかなア』
357(たい)『や、358それは面白(おもしろ)いでせう。359(ひと)秘密(ひみつ)(あか)して自分(じぶん)(たす)からうと()ふやうな悪人(あくにん)(こら)しめの()360何時(いつ)(まで)(つめ)たい牢獄(らうごく)()()んでおくが宜敷(よろし)いでせう』
361サ『もし太子様(たいしさま)362殿下様(でんかさま)363どうぞ(いま)(まで)悪事(あくじ)大目(おほめ)にみて(くだ)さいませ。364(その)(かは)殿下(でんか)()めならば、365(いま)()ねと仰有(おつしや)つても()にますから』
366(たい)『やア面白(おもしろ)い。367(しか)らば牢獄(らうごく)()()(こと)(ゆる)してやらう。368どうぢや(うれ)しいか』
369サ『ハイ(うれ)しう(ござ)います。370ようまアお(たす)(くだ)さいました。371今後(こんご)殿下(でんか)()めなら何時(いつ)でも(いのち)()()します』
372(たい)『やア()(やつ)だ。373そんなら()身代(みがは)りとなつて(いま)此処(ここ)()んで()れ。374(なんぢ)(くび)()げて右守司(うもりのかみ)(まへ)差出(さしだ)し、375スダルマン太子(たいし)生首(なまくび)(まを)し、376首桶(くびをけ)()れて進物(しんもつ)にいたす(かんが)へだから』
377サ『メメ滅相(めつさう)な、378(いま)此処(ここ)(いのち)()られては(たす)けて(もら)つた甲斐(かひ)(ござ)いませぬ』
379(たい)『ハヽヽヽヽ、380(きさま)(ごと)生首(なまくび)がどうして()身代(みがは)りにならうか。381(かはら)(きん)(かは)りにはなるまい。382あゝ(すべ)人間(にんげん)(こころ)(みな)こんなものだらう。383父王殿下(ちちわうでんか)御側(おそば)(した)しく(つか)(はべ)老臣(らうしん)(ども)は「大王殿下(だいわうでんか)()めならば何時(いつ)でも(いのち)(まと)(はたら)きます」と、384臆面(おくめん)もなく口癖(くちぐせ)のやうに(まをし)()たが、385五月五日(ごぐわついつか)大騒擾(だいさうぜう)勃発(ぼつぱつ)した(とき)は、386左守(さもり)387右守(うもり)(はじ)重臣(ぢうしん)(ども)四方(よも)(にげ)()り、388(ただ)一人(いちにん)参内(さんだい)したものは()かつた。389高禄(かうろく)(やしな)はれた重臣(ぢうしん)でさへも(その)(とほ)りだから、390匹夫(ひつぷ)(なんぢ)(いのち)(をし)むのは無理(むり)もない。391()宣伝使(せんでんし)(すく)はれた(いはひ)として、392汝等(なんぢら)両人(りやうにん)立派(りつぱ)放免(はうめん)する。393何処(どこ)へなりと勝手(かつて)()つたがよからうぞ』
394 太子(たいし)のこの(なさけ)()もつた言葉(ことば)()くより、395(いま)(まで)(こし)()かして()両人(りやうにん)はムクムクと()(あが)り、396長居(ながゐ)(おそ)(また)もや御意(ぎよい)(かは)らぬ(うち)にと()つたやうな調子(てうし)で、397「ア、398リ、399ガ、400ト、401ウ、402サ、403マ」と(たがひ)一言(ひとこと)づつ謝辞(しやじ)()べながら、404一目散(いちもくさん)階段(かいだん)(のぼ)405(くも)(かすみ)(わが)()をさして(はせ)(かへ)()く。406梅公別(うめこうわけ)(はるか)原野(げんや)(あそ)んで()二頭(にとう)野馬(やば)(とら)(きた)つて両人(りやうにん)(すす)めた。407スバール(ひめ)騎馬(きば)経験(けいけん)がないので、408梅公別(うめこうわけ)()(きた)つた鞍付(くらつき)(うま)()せ、409二人(ふたり)(をとこ)荒馬(あらうま)(またが)(なが)(こま)(ひづめ)土埃(つちぼこり)()て、410東北(とうほく)(そら)目当(めあて)()けて()く。
411(とら)はれし太子(よつぎ)御子(みこ)三五(あななひ)
412(かみ)(めぐみ)(はな)たれてけり。
413大正一四・一・七 新一・三〇 於月光閣 加藤明子録)
   
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