第四章 奇縁万状〔二〇四〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第5巻 霊主体従 辰の巻
篇:第1篇 動天驚地
よみ(新仮名遣い):どうてんきょうち
章:第4章 奇縁万状
よみ(新仮名遣い):きえんばんじょう
通し章番号:204
口述日:1922(大正11)年01月04日(旧12月07日)
口述場所:
筆録者:外山豊二
校正日:
校正場所:
初版発行日:1922(大正11)年4月15日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:盤古大神の信書には、塩光彦と玉春姫の間柄の経緯がのべられ、玉春姫を読めとしてつかわすように、と書かれていた。
常世彦は、娘が主上である盤古大神の息子の妃となるのは、立身であるとして、承諾することとなった。そして、自分の息子の常治彦には、盤古大神の娘・塩治姫をめあわすように、と要求した。
盤古大神夫妻は娘に対し、常治彦の妃となるよう言い渡した。塩治姫は悲しんで、ついにエデンの園の宮殿を飛び出してしまった。
いつまで経っても塩治姫がやってこないので、常治彦はみずから盤古大神の宮殿に出向いた。宮殿内は、塩治姫を捜索する神々で騒然としていた。
常治彦はこの様子に身の危険を感じて引き返した。常治彦がエデンの河辺までやってくると、人々が騒いでいる。何事かと聞いてみると、盤古大神の娘・塩治姫が河に飛び込んでしまった、という。
騒ぎを聞きつけて、宮殿から塩光彦と玉春姫もやってきた。常治彦は妹の玉春姫を認めると、聖地へ帰ろうと言って小脇に抱えると、共にエデンの大河に飛び込んでしまった。
塩光彦は玉春姫が奪われたことを悲しんでいたが、白雲が降りてくると、雲の中から玉春姫が現れた。塩光彦は喜んで手をとって宮殿に帰還した。
一方、聖地エルサレムには常治彦が塩治姫を携えて無事に帰還していた。本物の常治彦はエデンの大河に妹と飛び込んでしまっている。聖地に帰還した常治彦と塩治姫は、一体何者であろうか。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :rm0504
愛善世界社版:29頁
八幡書店版:第1輯 528頁
修補版:
校定版:31頁
普及版:15頁
初版:
ページ備考:
001 盤古大神の信書の趣きは、
002『わが長子塩光彦は貴下の娘玉春姫の愛に溺れ、003もはや膠漆不離の間となり、004いかに理義を説き諭すといへども、005恋に上下の隔てなしとかや、006吾々としては之をいかんともすること能はず、007願はくは貴下の娘玉春姫をつかはされたし』
009 常世彦は外ならぬ盤古大神の要求といひ、010かつ娘の立身なりとして常世姫と謀り、011これを承諾することとなつた。012その代償として、
013『わが長子常治彦に、014貴下の御娘塩治姫を妻として与へ給はむことを』
016 盤古大神は妻の塩長姫と謀り、017塩治姫を一間に招いて、
018『八王大神の長子常治彦の妻たるべし』
019と厳命した。020塩治姫は卒倒せむばかりに驚き呆れ、021ただ目をギロつかせて父母両親の顔を視守るのみ。022口はひきつけて一言も発すること能はず、023両眼よりは滝のごとき涙が滴るのであつた。024盤古大神夫妻は、025最愛なる娘のこの様子を見て、026胸に釘、027鎹を打たるる思ひであつた。
028 八王大神の請求は、029日に日に急を加へた。
030『万一貴下にして塩治姫を下し給はずば、031わが最愛の娘玉春姫を一時も早く、032聖地に帰させたまへ』
033と進退ならぬ強談判である。034塩治姫は七日七夜泣き叫んで、035つひには声も得上げなくなつた。036一方常治彦は、037深き大なる冠を被りて角を覆ひ、038エデンの大河を渡り、039四五の侍者を随へ、040盤古大神の返事の煮え切らぬのに業を煮やし、041自ら直接談判せむと進み入つた。
042 このとき塩治姫は、043父母両親の強要に堪まりかね、044門内より脱出し、045いづこにか身を匿さむとして河辺に馳せ着いた。046このとき常治彦は、047塩治姫に河辺にて都合よく出会した。048されど窶れはてたる姫の姿に誤られ、049他の者と思つてエデン城に進み入つた。
050 常治彦はただちに盤古大神夫妻に面会を求め、051塩治姫をわが妻に下したまはむことを懇請した。052この時エデンの宮殿内は、053姫の姿の見えざるに驚き、054数多の侍者は右往左往に広き園内隈なく捜索の真最中である。055常治彦はこの光景を見て、
056『われ自ら鬼のごとく、057角の生じたる身を隠し来りたるを以て、058姫はわれを嫌ひ、059姿をかくし、060あまたの侍者は、061われを打ち殺さむとして、062かくのごとく騒げるならむ。063永居は恐れあり、064一先づ聖地に立ち帰り、065あまたの神軍を率ゐてエデンの宮殿を攻め滅さむ』
066と心中深く意を決し、067勃然として踵をかへし、068宮殿を後にエデンの河辺に帰つて来た。
069 河辺に来てみれば、070あまたの神人は河の両岸に立騒いでゐる。
072と訊ねて見た。073神人は口を揃へて、
074『ただいま盤古大神の姫御子塩治姫、075河中に投身したまひ、076その御姿さへも見えざれば、077吾らは如何にもして救ひまゐらせむと騒いでゐるのだ』
079 急報によつて盤古大神は、080あまたの神人を随へ河辺に走り着き、081河をながめて号泣した。082塩光彦、083玉春姫も後を追つて、084その場に現はれた。085そこには兄神の常治彦が、086河をながめて茫然と立つてゐる。087玉春姫は、
089と声をかけた。090常治彦は妹の声に驚き振返つて、
091『おう、092玉春姫か、093われと共に聖地に帰れ』
094と言ふより早く、095姫を小脇に拘へ、096河中へザンブと飛び込んだまま、097その姿は見えなくなつた。
098 アヽこの三柱の神はどうなつたであらうか。
099 塩光彦は最愛の妻を失ひ、100茫然自失、101天を仰いで、102その不遇を歎くをりしも、103忽然として白雲その前に来るよと見るまに、104入水せし玉春姫は、105莞爾として立ち現はれ、106固く命の手を握り、107宮殿に勇ましげに導き帰つた。
108 盤古大神夫婦も、109この光景をみて大いに喜び、110宮殿に立帰り、111天地の神明に感謝したのである。112アヽ今現はれたる玉春姫は、113はたして何者であらうか。
114 聖地ヱルサレムの宮殿においては、115八王大神常世彦は、116常治彦の帰りの遅きに欠伸しながら、117大門の前に出た。118前方よりは数多の神人に送られ、119常治彦は塩治姫の手を携へて、120さも睦じ気に、121莞爾として帰つて来た。122アヽこの二神は、123何神の化身であらうか。
124(大正一一・一・四 旧大正一〇・一二・七 外山豊二録)
125(序文~第四章 昭和一〇・三・二九 於吉野丸船室 王仁校正)