第三一章 万波洋々〔二三一〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第5巻 霊主体従 辰の巻
篇:第5篇 宇宙精神
よみ(新仮名遣い):うちゅうせいしん
章:第31章 万波洋々
よみ(新仮名遣い):ばんぱようよう
通し章番号:231
口述日:1922(大正11)年01月11日(旧12月14日)
口述場所:
筆録者:加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:1922(大正11)年4月15日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:船中の宣伝使は、祝部神であった。一方、これに対抗して立ち上がったのは、ウラル彦の宣伝使・牛雲別であった。
祝部神はかまわず、牛雲別を揶揄するこっけい歌を歌って挑発した。船中の神人らは祝部神の大胆さにあきれて様子を見守っていた。
牛雲別は大口を開けてがぶがぶ酒を飲みながら、酒を賛美し祝部神を罵る歌を歌って、船中の神人らに酒を振舞った。神人らは牛雲別の酒を振舞われて、酒を賛美する歌を歌って踊った。
祝部神は元来酒好きであったが、ここは神の試練とぐっとこらえて、声を張り上げ宣伝歌をふたたび歌い始めた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:2020-04-30 15:52:08
OBC :rm0531
愛善世界社版:184頁
八幡書店版:第1輯 582頁
修補版:
校定版:185頁
普及版:80頁
初版:
ページ備考:
001 阿修羅王のごとく閻羅王のごとき形相凄じき神は、002巨眼を開き、003船中の神人らを睨めつけながら、
004牛雲別『神人らよ、005余が宣示を耳をさらへてよく承はれよ』
006と頭上より浴びせかけるやうに呶鳴りつけた。007
008 此方の宣伝使は例の祝部神である。009彼は無雑作に打ち笑ひながら、
010祝部神『一二三四五六七八九十百千万 011百の千種も万のものも
012天地の神の御恵に 013洩れたるものは塵程もなし
015山の尾上も河の瀬も
016光りに光る今の世を 017何と思ふか盲神
019苦しき報いは目のあたり
020あたるは罰と河豚の肉 021辺り構はず吠え猛る
023角の生えたる牛雲別の
025身の果こそは哀れなり』
026と又もや手を振り足踏み鳴らして、027四辺構はず傍若無神の挙動の大胆さに、028何れも呆れて祝部神の全身に目を注いだ。
029 牛雲別は、030アーメニヤの野に、031螢火のごとき光を現はすウラル彦の命により、032宣伝使として此処に現はれた。033彼は強烈なる酒を大口開いてがぶがぶと牛飲しながら、034あまたの神人らに見せつけ、
035牛雲別『酒は百薬の長と云う
037飲めば心は面白い 038寿命長久千秋万歳楽のこの薬
039飲まぬは天下の大馬鹿者よ
042酒を飲んだら顔の色
043朝日の豊栄昇るごと 044輝き渡る血色清し
045空に輝く月の夜に
049酒は命の親神ぞ
051親を知らぬは鬼子ぞや
053酒の肴は祝部の 054神の舌をば引き抜いて
056暗い暗いと吐かす奴
057酒を飲んで見よ赤くなる 058赤い心は神心
059赤い心は神心 060暗い心の祝部が
061真赤な虚言を月読の
067遠慮会釈も梨地の盃に 068盛つて飲め飲め飲んだら酔へよ
069酔うたら管まけ管まきや機が 070織れるか織れぬかおりや知らぬ
071知らぬが仏ほつとけ捨てとけ
073暗の後には月が出る
075声はすれども姿は見せぬ 076見せぬ姿は鬼か魔か
077鬼の念仏わしや鬼来
081袋の底を叩いて見たら 082誰の心も同じ事
084済まし顔して負け惜しみ
085豪そな面して力むより
087仏に地獄で会うたよな 088この甘酒の味を知れ
093と頻りに祝部神の宣示にたいして防禦線を張り、094座席の傍より二樽の強き酒を出し、095数多の盃を船中にふり撒いた。
096 神人らは猫に鼠を見せたごとく喉をごろごろ鳴らし、097唇に唾をため、098羨ましげに酒樽に目を注いだ。099中には狐が油揚を見せつけられたやうな心地となつて、100牛雲別の樽の鏡を開くを待たず、101飢虎のごとく樽を目がけて飛びつく上戸の神人も現はれた。102俄に船中は春めき渡り、103酔の廻るにつれて、104神人らは平手をもちて舷を叩き、105拍子をとり舞ひ始めた。
106神人ら『来るか来るかと浜へ出て見れば 107浜の松風音もせぬ
108音に聞えた竜宮海の 109乙姫さまでも呼んで来て
110酌をさしたら面白からう 111癪に触るは祝部神よ
112癪にさはるは祝部神よ 113杓で頭を砕いてやろか』
114 ポンポンポンと舷をたたき、115遂には両手で自分の額を無性矢鱈に叩いて踊り狂うた。
116 祝部神は元来酒が好きである。117喉から手の出るやうにその盃が取りたくなつた。118喉の辺りに腹の虫が込み上つて、119ぐうぐうと吐かすのである。120祝部神はこれこそ神の試みとわれとわが心を制し、121思はず知らず指を喰へ、122遂には激昂してわれとわが指を喰ひ切り、123始めて気がつき、124又もや声張り上げて、125「三千世界一度に開く云々」の歌をうたひ始めた。
126(大正一一・一・一一 旧大正一〇・一二・一四 加藤明子録)