第三五章 波上の宣伝〔二三五〕
インフォメーション
著者：出口王仁三郎
巻：霊界物語 第5巻 霊主体従 辰の巻
篇：第6篇 聖地の憧憬
よみ（新仮名遣い）：せいちのどうけい
章：第35章 波上の宣伝
よみ（新仮名遣い）：はじょうのせんでん
通し章番号：235
口述日：1922（大正11）年01月12日（旧12月15日）
口述場所：
筆録者：外山豊二
校正日：
校正場所：
初版発行日：1922（大正11）年4月15日
概要：
舞台：
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です（一部加筆訂正してあります）。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]：祝部神の教示を聞いていたかの酋長は、もし宇宙の独一真神である大国治立尊が存在するならば、何ゆえ天変地妖をを鎮めて地上の神人らを安堵しないのか、と尋ねた。
祝部神はこともなげに、全知全能の大神の経綸は、我々の知るところではない、と言い放ち、吉凶禍福は神の命じるところであり、我々はただ神の教示に従って霊主体従の行動を取ればよいのだ、と喝破した。
祝部神は雲の出現と行く末さえも、我々は予知することができない、と続け、ただ大神の意思に従順にしたがうのみである、と宣伝した。船中の神人らは大神の無限絶対の霊威に感嘆し、「惟神霊幸倍坐世」と高唱した。
おりから寒風が強く吹いて霰が船に降り注ぎ始めた。祝部神は立ち上がり、宣伝歌を歌って船中の神人らを勇気付けて宣伝を続けた。
船は荒れ狂う海を越えて、かろうじて西南の岸に着いた。ここは埃（え）の宮、または埃（え）の港という。一行は勇んで上陸した。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]：
備考：
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データ凡例：
データ最終更新日：2020-04-30 16:04:51
OBC ：rm0535
愛善世界社版：209頁
八幡書店版：第1輯 591頁
修補版：
校定版：211頁
普及版：90頁
初版：
ページ備考：
001 この教示を、002首を傾けて聞き入つた彼の酋長は、003吐息を吐きながら再び口を開いて云ふ。
004『天地の間に、005果して貴下の仰せのごとき独一真神なる大国治立尊の坐しますとせば、006何故に斯のごとき天変地妖を鎮静せず、007地上の神人をして恐怖畏縮せしめ、008傍観の態度を取り給ふか。009いづくんぞ全智全能の神力を発揮して、010世界を救助し給はないのでせうか。011吾々は真の神の存在について、012大に疑ひを抱くものであります』
013と云つて祝部神の教示を待つた。
014 祝部神は、015事もなげに答へて云ふ。
016『宇宙万有を創造し給うた全智全能の大神の経綸は、017吾々凡夫の窺知する所ではない。018吾らは唯々神の教示に随つて、019霊主体従の行動を執ればよい。020第一に吾々神人として、021最も慎むべきは貪欲と瞋恚と愚痴である。022また第一に日月の高恩を悟らねばならぬ。023徒に小智浅才を以て、024大神の聖霊体を分析し、025研究せむとするなどは以ての外の僻事である。026すべて吾々の吉凶禍福は、027神の命じたまふ所であつて、028吾々凡夫の如何とも左右し難きものである。029之を惟神といふ。030諸神人らはわが唱ふる宣伝歌を高唱し、031天津祝詞を朝夕に奏上し、032かつ閑暇あらば「惟神霊幸倍坐世」と繰返すのが、033救ひの最大要務である。034吾々はこれより外に、035天下に向つて宣伝する言葉を知らない』
037 折しも再び日は西山に姿を没し、038半円の月は頭上に輝き始めた。039この時又もや東北の天に当つて一塊の怪しき雲片が現はれた。040祝部神は神人らに向ひ、
041『彼の怪しき雲を見られよ』
042 神人らは一斉に東北の天を仰いで視た。043祝部神は尚も語をついで、
044『すべて神のなす業は、045斯くの如きものである。046今まで蒼空一点の雲翳もなく、047月は皎々として中天に輝き、048星は燦爛として満天に列を正し、049各大小強弱の光を放つてゐる。050地上の吾々凡夫は、051実に無知識無勢力である。052何時までも天空に明月輝き、053星光燦爛たるべきものと、054心に期する間もなく、055忽然として一塊の怪雲現はれしは、056果して何物の所為であらうか。057変幻出没窮まりなく、058神機無辺の活動はこれ果して何物の所為であらうか。059すべて宇宙間一物と雖も、060原因なく因縁なくして現はるるものはない。061しかしてその原因、062因縁は到底凡夫の究めて究め尽す限りではない。063諸神人の中に、064果して彼の一塊の怪雲は如何に変化するかを知れる者ありや。065恐らく一柱として之を前知したまふ神人はあらざるべし。066吾々は天地の神の教を説く宣伝使の身としても、067一分先の黒雲の結果いかになりゆくかを覚ること能はず、068かくのごとき暗昧愚蒙の知識力を以て、069神明の聖霊を云為し、070神の存否を論争するがごときは、071あたかも夏の虫の冬の雪を知らざるがごとき愚蒙のものである。072視られよ、073彼の黒雲を、074次第々々に四方に向つて拡大するに非ずや。075其の結果は雨か、076嵐か、077果た雪か、078地震か、079雷鳴か、080天地の鳴動か、081吾々の知識力にては、082到底感知する事能はず、083唯地上の神人は、084宇宙の大原因たる天主大国治立尊の意思に柔順に随ふのみである』
085と舌端火を吐いて諄々と宣伝した。
086 神人らは祝部神の教示に耳をすませ、087今更のごとく、088神の無限絶対の霊威と力徳と、089其の犯すべからざる御聖体の不可測なるを感嘆しつつ『惟神霊幸倍坐世』と一斉に高唱した。
090 前日の喧騒を極めたる此の船は、091今は全く祝詞の声清き祭場と化して了つた。092折しもまばらなる雨、093ぼつぼつと石を投げるごとく船中の神人らの身体を打つた。094俄然、095寒風吹くよと見る間に、096雨は拳のごとき霰を混へて降り注ぎ、097これに打たれて負傷する神人さへあつた。098このとき祝部神は立上り、099又もや、
100『朝日は照るとも曇るとも 103誠の神は世を救ふ 104誠の神は世を救ふ 105勇みて暮せ、神の造りし神の世ぢや 106神から生れた神の子ぢや 110雨風荒き海原も 111地震かみなり火の車 112何の恐れも荒浪の 114神の恵みの御試し 115喜び勇め神の恩 116讃めよ称へよ神の徳 117天地は神の意のままぞ 121神の力を崇むることぞ 122如何なる災難来るとも 123神に抱かれし吾々は 126救ひの船に身を任せ 128千尋の海も何のその 129海の底にも神坐せば 132讃めよ称へよ祈れよ歌へ 133歌ふ心は長閑なる 134春の花咲く神心 135神の心になれなれ一同 136一度に開く梅の花 137一度にひらく梅の花』
138と歌まじりの宣伝を、139又もや手真似、140足真似しながら、141際限もなく説き立てる。
142 船は辛うじて西南の岸に着いた。143ここを埃の宮と云ひ、144また埃の港とも云ふ。145一行は勇んで上陸した。146海面を見渡せば、147山岳の如き荒浪、148見るも凄じき音を立てて踊り狂うてゐる。
149（大正一一・一・一二 旧大正一〇・一二・一五 外山豊二録）
霊界物語.ネット～出口王仁三郎 大図書館～