第三八章 回春の歓〔二三八〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第5巻 霊主体従 辰の巻
篇:第6篇 聖地の憧憬
よみ(新仮名遣い):せいちのどうけい
章:第38章 回春の歓
よみ(新仮名遣い):かいしゅんのよろこび
通し章番号:238
口述日:1922(大正11)年01月12日(旧12月15日)
口述場所:
筆録者:加藤明子
校正日:
校正場所:
初版発行日:1922(大正11)年4月15日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:祝部神は、めそめそする奴は大嫌いだ、と言い放つと、杉高彦、祝彦とともに面白歌を歌って踊り始めた。
その歌は、鷹住別と春日姫の仲をからかう滑稽な歌であった。この面白い歌に車上の鷹住別は思わず立ち上がって足を踏みとどろかせて一緒に舞い踊った。
鷹住別の足が立ったのを見て、春日姫はうれし泣いた。祝部神はまた、泣く奴は大嫌いと言って面白い歌を歌って踊り、溝の中に落ちた。落ちながらもまだ歌い踊っていた。
その様を見て一同はどっと笑い転げた。難病の足が治ったのも、ひとえに笑いと勇みの効果である。
天地の間のことはすべて、言霊によって左右されるものであれば、笑い勇んで暮らすべきである。万物の霊長と生まれた人間が、この世を呪い悲しむべきではない。この世を怒り憂い悲しむ禍津の心を取り直し、いかなる大難にあっても決して悔い悲しむべきではない。
勇めば勇むだけ神徳が備わるべき人間として生まれさせられているのである。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:2017-03-04 13:05:53
OBC :rm0538
愛善世界社版:229頁
八幡書店版:第1輯 598頁
修補版:
校定版:232頁
普及版:97頁
初版:
ページ備考:
001 祝部神は車上鷹住別がさめざめと男泣きに泣き出づる姿を見て、002眉をしかめ、
003『吾々は男子の癖に吠面かわく奴は、004大大大の大嫌ひで御座る』
005と事もなげに云つて退け、006且つ心中には鷹住別の今日の窮状に満腔の同情を寄せながら、007態と潔く彼が心を引き立てむとして、008またもや面白き歌をつくり、009杉高彦、010祝彦と共に手を取り合うて巴のごとく渦をつくりて、011くるくると左旋し始めた。012その歌、
013『鮒や諸鱗は止めても止まる 014止めて止まらぬ鯉の道
016鯉に上下の隔てはなかろ
018誰も好くのは色の鱶鮫 019腰は鮒々女の刺身で
021れこの赤貝に夜昼蛤
022この世のせと貝は鰆々
025他神に意見を鰯ておいて
029口に任して鰤々怒るな
033辛抱も寿留女がやくだよ
034赤鱏年でもない身で居ながら
036間には鮎ない屁理屈よ
038尼鯛鱒から蟹して下さい 039黄頴しいらねば泥溝貝なとしたがよい
040お前に油女頭の数の子
042一度死んだら二度とは死なない
044小鮒浮世に生蝦したとて 045針魚がないから命は鰆に
048白魚もやして海豚より鱒だが 049塩魚ぐしには戸が立てられない
050乾海鼠隣の手前も耻かし 051ぷんぷん香うた腐つた魚の
052腐つた鯉に鼻ぴこつかせて 053春日の狐、油揚さらへた鷹住別の
054窶れた姿のかます面 055鯉に上下の隔てはないと
056エラソにエラソに小塩鯛いふ故に 057鰶ものは六ケ敷と神々にいやがられ
058こちからより付かぬが鰆ぬ神に
060平家蟹見たよな鱚ごい顔付 061烏賊にさごしが鯖けて居たとて
062鱓の仕打ちが鰶ないゆゑ
064さすれば栄螺に散子太刀魚 065春日は刺身よ鷹住は好き身よ
066祝部神が今かます 067鼬の最後屁喰つて見よ
068臭い臭いと夕月夜 069月夜を呪ふ恋仲の
071嗚呼邪魔くさい邪魔くさい
072四十九才の尻の穴』
073と滑稽諧謔止め途もなく、074歌を謠つて踊り狂うた。075車上の鷹住別はこの面白き歌に霊魂を抜かれて、076奇怪なる身振足振りに感染してか、077足萎の身も打ち忘れ、078車上に忽ち立ち上り、079共に手を拍ち足踏み轟かせ踊り狂ふ。
080 春日姫はこの光景を見て嬉し泣きに泣き伏した。081鷹住別は始めて吾が足の立ちしに気がつき、082またもや声を放つて嬉し泣きに泣き出した。083祝部神は又もや、
084『泣く奴は大大大の大嫌ひ』
087と春日姫は慌てて口を押へた。088祝部神は鼻の上に拳を載せ、089またその上に左の手の拳を重ね、090漸次代るがはる抜いては重ね、091抜いては重ね、092鼻高神の真似をしながら、
093『躄が立つた、094足立つた 立つた、095立つたはたつた今
096 さあさあこの場を逸早く 聖地を指して立つて行かう』
097と元気さうに又もや踊り狂ひ、098傍の細溝に足踏み外し、
101と又もや気楽さうに溝の中に落ちたまま踊り狂ふと、102五柱の神司は一時にどつと笑ひ転た。
103 彌ここに心の岩戸は開け初めて、104さしも難病の躄の足の立つたのも、105笑ひと勇みの効果である。106神諭にも、
107『勇んで笑うて暮せ』
108と示されてある。109笑ふ門には福来る。110泣いて鬱いで悔んで暮すも一生なら、111笑うて勇んで神を崇めてこの世を楽しみ暮すも一生である。112天地の間は凡て言霊によつて左右さるるものである以上は、113仮にも万物の霊長として生れ出でたる人間は、114この世を呪ひ或は悲しみ、115或は怒り憂ひ艱みの禍津の心を取り直し、116如何なる大難に遇ふも迫害に会するも決して悔み悲しむべきものでない。117勇めば勇むだけの神徳が備はるべき人間と生れさせられて居るのである。
118(大正一一・一・一二 旧大正一〇・一二・一五 加藤明子録)