霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
目 次設 定
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
フォント

ルビの表示



アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注 [?][※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]


文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色 [?]底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。[×閉じる]
外字1の色 [?]この設定は現在使われておりません。[×閉じる]
外字2の色 [?]文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。[×閉じる]

  

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。


【新着情報】サイトの全面改修に伴いサブスク化します。詳しくはこちらをどうぞ。(2023/12/19)
マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。

【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034  アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。

          

第八章 異心(いしん)泥信(でいしん)〔一六六四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第65巻 山河草木 辰の巻 篇:第2篇 地異転変 よみ(新仮名遣い):ちいてんぺん
章:第8章 異心泥信 よみ(新仮名遣い):いしんでいしん 通し章番号:1664
口述日:1923(大正12)年07月16日(旧06月3日) 口述場所:祥雲閣 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1926(大正15)年4月14日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる] 主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm6508
愛善世界社版:93頁 八幡書店版:第11輯 643頁 修補版: 校定版:97頁 普及版:44頁 初版: ページ備考:
001 治道(ちだう)居士(こじ)はベル、002バット、003カークス、004ベースの()(にん)(とも)に、005うす(ぐら)(いし)牢獄(らうごく)(なげ)()まれ、006セールの厳命(げんめい)()りて、007飲食物(いんしよくぶつ)()たれて(しま)つた。008されど(こころ)(うち)にて治道(ちだう)居士(こじ)帰順(きじゆん)してゐる牢番(らうばん)のヤク、009エールは010いろいろと苦心(くしん)して()(にん)(ため)飲食(いんしよく)供給(きようきふ)し、011あらむ(かぎ)りの便宜(べんぎ)(あた)へた。012親分(おやぶん)のセールはヤク、013エールを(ふか)信任(しんにん)し、014一度(いちど)牢獄(らうごく)見舞(みまひ)()なかつた。015そして自分(じぶん)大将軍(だいしやうぐん)(あふ)いでゐた治道(ちだう)居士(こじ)には(なん)だか(はづか)しいやうな、016(おそ)ろしいやうな()がして、017()(こと)(ほつ)しなかつた。018()治道(ちだう)居士(こじ)一隊(いつたい)両人(りやうにん)(まか)しておき、019()子分(こぶん)四方(しはう)派遣(はけん)し、020財物(ざいぶつ)収集(しうしふ)全力(ぜんりよく)(そそ)一方(いつぱう)021自分(じぶん)二人(ふたり)美人(びじん)を、022(なん)とかして自分(じぶん)(もの)にせうと、023それのみに、024(うつつ)をぬかしてゐた。
025 ヤク、026エールの両人(りやうにん)は、027治道(ちだう)居士(こじ)とブラヷーダ、028デビス(ひめ)(あひだ)の、029郵便夫(ゆうびんふ)(やう)(やく)(ひそ)かに(つと)めてゐた。030牢獄(らうごく)(なか)では、031治道(ちだう)居士(こじ)真中(まんなか)に、032()(にん)改心組(かいしんぐみ)が、033いろいろと小声(こごゑ)(はな)()つてゐる。
034ベル『オイ、035(おれ)(たち)(なん)だかチツと(ばか)不安(ふあん)気分(きぶん)になつたぢやないか。036()自由(じいう)(ばく)された(かご)(とり)同然(どうぜん)037生殺(せいさつ)権利(けんり)親分(おやぶん)(にぎ)られてゐるのだから、038何程(なにほど)治道(ちだう)居士(こじ)(さま)法力(ほふりき)()ると()つても、039(この)牢獄(らうごく)経文(きやうもん)(ちから)に、040(うち)(やぶ)つて(くだ)さらぬ以上(いじやう)は、041険呑(けんのん)(もの)だないか。042治道(ちだう)居士(こじ)(さま)平気(へいき)平左(へいざ)で、043心身(しんしん)休養(きうやう)だとか()つて、044温泉(をんせん)にでも(はい)つた(やう)気分(きぶん)で、045前後(ぜんご)不覚(ふかく)(ねむ)つて(ござ)るが、046(おれ)(たち)()うも、047そんな()になれないわ。048(まへ)(たち)049(なん)とか工夫(くふう)をこらして、050ここを(とび)()(かんが)へはないか』
051バット『(なに)心配(しんぱい)するな。052サアといへば、053ヤク、054エールが牢番(らうばん)してるから、055何時(いつ)でも()けてくれるよ。056(いま)彼奴(あいつ)()けないのは(ふか)思案(しあん)があつての(こと)だ。057(なに)しろこれ(だけ)人数(にんず)(あつ)まつて()るから、058下手(へた)(こと)をやると虻蜂(あぶはち)とらずになつて(しま)ふ。059治道(ちだう)居士(こじ)(さま)はそこを見込(みこ)んで、060平気(へいき)()てゐらつしやるのだ。061何事(なにごと)惟神(かむながら)(まか)して()くが一番(いちばん)安全(あんぜん)だ』
062ベル『それだと()つて、063(ひと)(こころ)(わか)らないよ。064ヤク、065エールの両人(りやうにん)が、066()しも心機(しんき)一転(いつてん)して親分(おやぶん)(はう)(かた)()たうものなら、067それこそ(おれ)(たち)は、068(はうき)(おさ)へられた蝶々(てふてふ)のやうなものだ。069モウ(すこ)治道(ちだう)居士(こじ)(さま)法力(ほふりき)があると、070(おれ)(たち)安心(あんしん)だけれどなア』
071バット『ナアニ、072(かま)ふものかい。073マア安心(あんしん)せい。074ここへ()てから、075まだ一夜(いちや)逗留(とうりう)した(だけ)ぢやないか。076仮令(たとへ)三日(みつか)四日(よつか)(くらゐ)077ここへ(はい)つた(ところ)で、078一片(ひときれ)のパンを()はなくつても辛抱(しんばう)出来(でき)るよ。079()楽隠居(らくいんきよ)だと(おも)つて、080(からだ)休養(きうやう)させ、081(いよいよ)となつたら岩窟(いはや)退治(たいぢ)をやるのだな。082何奴(どいつ)此奴(こいつ)も、083軍人(ぐんじん)(あが)りで、084(みな)()()いてるから、085(おれ)(たち)()(にん)()(にん)(あば)れたつて仕方(しかた)()いからな』
086ベル『オイ、087バット、088(きさま)089さう楽観(らくくわん)してゐるが、090寸善(すんぜん)尺魔(しやくま)()つて、091吾々(われわれ)()()()(とら)へられてゐるのだから、092(ちつ)とは(しり)()をまはして()かねばなるまいぞ。093ナア、094カークス、095ベース、096(まへ)()(おも)ふか』
097カークス『何事(なにごと)(おれ)たちは(かみ)(さま)にお(まか)せしてゐるのだ。098それよりも()祈念(きねん)をするが一等(いつとう)だなア』
099ベース『そりやさうだ。100カークスの()(とほ)り、101(この)天地間(てんちかん)はすべて(かみ)(さま)()意志(いし)(まま)だから、102何程(なにほど)(おれ)たちが(さわ)いだつて駄目(だめ)だ。103()うして牢獄(らうごく)蟄居(ちつきよ)してゐるのもセールがしたのでない。104(かみ)(さま)深遠(しんゑん)()経綸(けいりん)()つて、105修養(しうやう)させられてゐるのだ。106(あま)りクヨクヨ(おも)ふな』
107ベル『(おれ)もう(なん)だか信仰(しんかう)土台(どだい)がグラついて()たやうだ。108オイ、109一層(いつそう)(こと)○○を○○して、110○○の()機嫌(きげん)()り、111牢屋(らうや)()(のが)れて(ふたたび)○○に逆転(ぎやくてん)したら()うだ。112何程(なにほど)()(ため)だとか、113死後(しご)生活(せいくわつ)(ため)だとか()つても、114(たちま)現在(げんざい)がやりきれないぢやないか。115(すゑ)(ひやく)より(いま)五十(ごじふ)だ。116何程(なにほど)死後(しご)世界(せかい)があると()つたつて、117(くも)(つか)むやうな(はなし)だからのう』
118 治道(ちだう)居士(こじ)は、119ベルが自分(じぶん)殺害(さつがい)し、120セールに裏返(うらがへ)らうといふ意味(いみ)(ほのめ)かしてゐるのを、121(いびき)をかいてゐる(ふり)して()いてゐた。
122バット『オイ、123ベル、124左様(さやう)(こと)(ぬか)すと、125(おれ)ヤもう了見(れうけん)はせぬぞ。126(きさま)を○○して、127○○へ○○するが()うだ』
128ベル『ヤ、129コリヤ(ひと)つお(まへ)(たち)(こころ)()いて()(だけ)だ。130(たれ)がそんな勿体(もつたい)ない(こと)をするものかい。131これでお(まへ)(たち)意志(いし)(わか)つて(おれ)安心(あんしん)したのだ』
132(にはか)(そら)トボケてみせる。133カークス、134ベースは治道(ちだう)居士(こじ)(ゆす)(おこ)した。135治道(ちだう)居士(こじ)()むた(さう)(かほ)をして(おき)(なほ)り、136(こぶし)(にぎ)つて(うへ)(はう)へグツと(つき)()し、137「あゝあ」と大欠伸(おほあくび)無雑作(むざふさ)にし(なが)ら、
138治道(ちだう)『アハヽヽヽ、139あ、140(ゆめ)だつたか。141ベルの(やつ)142(この)治道(ちだう)居士(こじ)を○○して○○の機嫌(きげん)をとり、143(もと)の○○へ逆転(ぎやくてん)しよつたと(おも)へば、144ヤツパリ(ゆめ)だつたワイ。145アハヽヽヽヽ。146どうも人間(にんげん)(こころ)といふものは(あて)にならないものだなア。147一切(いつさい)欲望(よくばう)()て、148(いのち)(まで)すてた(この)治道(ちだう)居士(こじ)でさへも、149矢張(やつぱり)どつかに、150(いのち)(をし)いと()副守(ふくしゆ)(のこ)つてゐると()えて、151こんな()(たい)(ゆめ)()たのだなア』
152カークス『モシ治道(ちだう)(さま)153ソリヤ(ゆめ)ぢや(ござ)いませぬ。154(げん)にベルの(やつ)155貴方(あなた)熟睡(じゆくすゐ)(あそ)ばしたのを奇貨(きくわ)とし、156あなたに(たい)し、157叛逆(はんぎやく)(くはだ)てようとしたのですよ。158用心(ようじん)なさいませ』
159治道(ちだう)『ハヽヽヽ猪口才(ちよこざい)千万(せんばん)な、160蚯蚓(みみづ)のやうな(たましひ)蛟竜(かうりう)身辺(しんぺん)(うかが)ふとは、161(じつ)()(ほど)()らずだなア。162ベルも(また)此処(ここ)這入(はい)つて()てから、163臆病神(おくびやうがみ)()()かれよつたとみえる。164ても()ても(あはれ)むべき代物(しろもの)だな。165オイ、166ベル、167()うだ。168(わし)(いのち)()りたいか。169とりたくば(いく)らでも()らしてやる。170さあモウ一寝入(ひとねい)りするから、171(その)()(わし)(くび)でもかいて、172セールの親分(おやぶん)()潔白(けつぱく)(しめ)し、173(ふたたび)泥棒(どろばう)親分(おやぶん)使(つか)つて(もら)ふがよからう。174遠慮(ゑんりよ)はいらぬ。175(まへ)(くび)をかかれて天国行(てんごくゆき)をするのも、176(ひと)つは(かみ)(さま)(おん)思召(おぼしめし)かも()れない』
177ベル『メヽ滅相(めつさう)もない。178勿体(もつたい)ない。179()うしてそんな(こと)出来(でき)ませうか。180どうぞ(わたし)赤心(まごころ)諒解(りやうかい)して(くだ)さいませ』
181治道(ちだう)赤心(まごころ)悪魔(あくま)のマぢやないか、182(まこと)のマもあれば、183間男(まをとこ)のマもあり、184閻魔(えんま)のマもあり、185悪魔(あくま)のマもあり、186マといふ(もの)何事(なにごと)にも(つき)()ふものだから……、187オイ(さん)(にん)(もの)188()()けよ。189(とら)(おほかみ)同居(どうきよ)してゐるやうな(もの)だからのう』
190 かかる(ところ)へヤク、191エールは二三(にさん)(にん)泥棒(どろばう)(とも)に、192牢獄(らうごく)検分(けんぶん)がてらやつて()た。
193ヤク『コリヤコリヤ、194(しづか)(いた)さぬか、195(いま)(なに)(さへづ)つてゐたか』
196ベル『ハイ、197治道(ちだう)居士(こじ)(はじ)(さん)(にん)(やつ)が、198(この)ベルを○○せうと()ふのです。199どうぞ(わたし)別牢(べつらう)()れて(くだ)さいな。200険呑(けんのん)(たま)りませぬから……』
201ヤク『ハツハヽヽヽ、202(まへ)(たち)(いのち)旦夕(たんせき)(せま)つてゐるのだ。203親分(おやぶん)(ころ)されるか、204治道(ちだう)居士(こじ)(ころ)されるか、205どつちみち(ころ)される身分(みぶん)だ。206マア安心(あんしん)して四人(よつたり)連中(れんちう)から、207(ちから)一杯(いつぱい)(いぢ)められたがよからうぞ。208オツホヽヽヽ。209(きさま)(この)(なか)でも一番(いちばん)悪党(あくたう)だからのう』
210ベル『モシ、211ヤクさま、212(わたし)(けつ)してそんな悪人(あくにん)ぢや(ござ)いませぬ。213(じつ)(ところ)治道(ちだう)居士(こじ)改心(かいしん)したと()せかけ、214此奴(こいつ)()()(にん)秘密(ひみつ)(さぐ)つて(おん)大将(たいしやう)報告(はうこく)する(ため)215(いま)(まで)()けてゐたのですから、216どうぞ親分(おやぶん)にさう()つて(くだ)さい』
217カークス『ハツハヽヽ、218本当(ほんたう)此奴(こいつ)(わる)(やつ)だ。219(ねこ)()(ほど)クレクレとかへる(やつ)だから、220治道(ちだう)居士(こじ)(さま)暗殺(あんさつ)しようとしよつた(ふと)(やつ)だ。221こんな(もの)(おな)牢獄(らうごく)(なか)()ると、222ゆつくり()(こと)出来(でき)ない。223もし、224ヤクさま、225どうかベルを請求(せいきう)(どほり)226別室(べつしつ)()いて(くだ)さいな』
227ヤク『ヨシヨシ、228こんな(やつ)一所(いつしよ)()いておくと(ため)になるまい。229……(また)(おれ)都合(つがふ)(わる)い……』
230小声(こごゑ)()(なが)錠前(ぢやうまへ)(はづ)し、231ベルの()(ひき)()てて、232(もつと)(くら)(ふか)岩壁(がんぺき)(かこ)んだ牢獄(らうごく)()()んで(しま)つた。233ヤク、234エールの両人(りやうにん)は、235ベルの(ため)自分(じぶん)()計画(けいくわく)暴露(ばくろ)せむ(こと)(おそ)れたからである。
236 ヤクは(さん)(にん)盗人(ぬすびと)(とも)にベルを(ひき)()てて(この)()()つた。237(あと)にエールは牢番(らうばん)として一人(ひとり)(のこ)つてゐた。
238治道(ちだう)『オイ、239エール、240岩窟(いはや)様子(やうす)()うだ。241セールは(いま)(なに)をしてゐるか』
242 エールは小声(こごゑ)になつて、
243エール『ハイ、244二人(ふたり)(をんな)(うつつ)をぬかし、245(よだれ)をくつて()りますが、246肝心(かんじん)(をんな)悪口(わるくち)(ばか)()つて(おう)じないものですから、247泥坊(どろばう)商売(しやうばい)はそつち退()けにして、248(あたま)(なや)めて()ります。249それはそれは()られた(ざま)ぢや(ござ)いませぬワ』
250治道(ちだう)『ハヽヽ、251あの(しや)(つら)では(をんな)にはもてまい。252(こま)つた(やつ)だなア。253そして(その)(をんな)といふのは何処(どこ)(もの)だ』
254エール『(なん)でも(おほ)きな(こゑ)では()へませぬが、255三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)だと()(こと)です』
256治道(ちだう)『ハテなア、257そして(その)()(なん)()つたか』
258エール『ハイ、259(なん)でもブラブラ()アさまだとか、260エベスだとか大黒(だいこく)だとか()きました。261随分(ずいぶん)美人(びじん)ですよ』
262治道(ちだう)『ハア、263それではブラヷーダにデビス(ひめ)(こと)だらう。264ア、265其奴(そいつ)可哀相(かあいさう)だ。266(まへ)()苦労(くらう)だが、267治道(ちだう)居士(こじ)此処(ここ)()ると()(こと)を、268(なん)とかして()らして()れまいか』
269エール『ハイ、270機会(きくわい)(かんが)へて(まをし)()げませう』
271治道(ちだう)屹度(きつと)(たの)むよ。272(わし)(いま)此処(ここ)手紙(てがみ)()くから、273(これ)をソツと(わた)してくれ』
274エール『承知(しようち)(いた)しました』
275治道(ちだう)(なに)か……(ふで)(すみ)(かみ)()して(もら)()いものだな』
276エール『(かしこ)まりました。277暫時(しばらく)()(くだ)さいませ』
278四辺(あたり)(うかが)(なが)ら、279何処(どこ)からか筆紙墨(ひつしぼく)用意(ようい)して()た。280治道(ちだう)居士(こじ)はバットに(すみ)をすらせ、281何事(なにごと)かスラスラと()(したた)(をは)り、
282治道(ちだう)『サア、283エール、284(この)二通(につう)手紙(てがみ)一通(いつつう)づつ両人(りやうにん)にソツと(わた)してくれ。285どちらでも(かま)はぬ。286(おな)(こと)()いてあるのだから』
287エール『ハイ承知(しようち)(いた)しました』
288手紙(てがみ)(ふところ)(ねぢ)()み、289いろいろ苦心(くしん)して、290二人(ふたり)牢獄(らうごく)(まへ)(うかが)()つた。291()れば(くら)がりに一人(ひとり)(をとこ)()つてゐる。
292(をとこ)(たれ)だ。293(なに)しに()たのだ。294ここへは()(こと)はならぬと、295あれ(ほど)(やかま)しう()ふてあるのぢやないか』
296エール『ハイ、297(わたし)はエールで(ござ)いますが、298治道(ちだう)居士(こじ)牢番(らうばん)をして()りました(ところ)299()まぬ(こと)(なが)ら、300フラフラと居眠(ゐねむ)りまして、301方角(はうがく)取違(とりちが)ひ、302斯様(かやう)(ところ)へやつて()まして、303(まこと)()みませぬ』
304(わざ)とに(おほ)きな(こゑ)して、305治道(ちだう)居士(こじ)()てゐる(こと)を、306二人(ふたり)(をんな)()かさうとしてゐる。
307(をとこ)『コリヤ、308エール、309チボ乞食(こじき)()うしたといふのだ』
310とワザとにセールは二人(ふたり)治道(ちだう)居士(こじ)(こと)()かそまいと、311(ことば)(にご)さうとする。312エールは(わざ)とに(その)()(かい)せざるものの(ごと)く、
313エール『もし親方(おやかた)(さま)314チボ乞食(こじき)ぢや(ござ)いませぬ。315三五教(あななひけう)比丘(びく)治道(ちだう)居士(こじ)(こと)(ござ)いますよ』
316セール『馬鹿(ばか)ツ、317(はや)(さが)れツ。318そして自分(じぶん)職務(しよくむ)忠実(ちうじつ)(まも)るのだ。319一時(いつとき)(はや)()けツ。320(きさま)()ると邪魔(じやま)になる』
321 エールは『ハイ』と()(なが)(くら)がりを(さいは)ひ、322牢獄(らうや)(まど)から手紙(てがみ)一通(いつつう)づつ、323ソツと()()んで(しま)つた。
324ブラヷーダ『あの治道(ちだう)居士(こじ)さまも、325此処(ここ)(とら)はれて()られますか。326そりや本当(ほんたう)心地(ここち)のよい(こと)ですね。327彼奴(あいつ)随分(ずいぶん)(わたし)無体(むたい)(こと)()つた(やつ)だから、328天罰(てんばつ)(めぐ)()たのでせう、329ホヽヽヽ。330モシ(となり)のデビス(ひめ)(さま)331貴女(あなた)(わたし)をひどい()()はしよつた、332あの治道(ちだう)居士(こじ)といふ比丘(びく)(とら)へられて()てると()(こと)ですワ。333本当(ほんたう)気分(きぶん)()いぢやありませぬか。334ホヽヽヽ』
335デビス『本当(ほんたう)にねえ、336(わたし)溜飲(りういん)(さが)りましたワ』
337 エールは不思議(ふしぎ)(こと)だと、338(くび)をひねり(なが)ら、339(くら)隧道(すいだう)(かへ)つて()く。
340セール『アハヽヽヽ、341オイ両人(りやうにん)342(まへ)(なに)治道(ちだう)居士(こじ)迫害(はくがい)()けたのだなア。343ヨシ、344(おれ)がお(まへ)仇討(あだうち)をしてやるから、345安心(あんしん)したがよからう。346(その)(かは)りに(おれ)()(こと)()くだらうな』
347ブラ『(ねえ)さま、348どうしまほうか、349本当(ほんたう)に、350(ひと)つここで(うらみ)()らさなくちや、351(をんな)意地(いぢ)()たぬぢやありませぬか』
352デビス『そらさうですワ、353(なん)とかして彼奴(あいつ)此処(ここ)()()んで(いただ)き、354二人(ふたり)よつて両方(りやうはう)から(なぶり)(ごろし)にさして(くだ)されば(うれ)しいですがな。355さうすりや親分(おやぶん)さまの()註文(ちゆうもん)(くらゐ)には(よろこ)んで(おう)じますけれどなア』
356ブラ『(ねえ)さまが(その)(かんが)へなら、357(わたし)だつて賛成(さんせい)ですワ。358あたい(をつと)(ころ)した(やつ)ですもの。359(にく)うて(にく)うて(たま)らないワ、360その(あだ)親方(おやかた)さまの同情心(どうじやうしん)()つて、361()たして(くだ)さるやうな(こと)なら、362御恩(ごおん)(ほう)じにどんな(こと)でも、363親方(おやかた)()(こと)()かうと(おも)ひますワ』
364セール『ウツフヽヽヽ。365オイ(をんな)366(まへ)(ねがひ)(きき)(とど)けた。367(その)(かは)りに(わし)()(こと)(なん)でも()くだらうなア』
368 両人(りやうにん)一度(いちど)に、
369『ヘーヘー()きますとも、370貴方(あなた)仰有(おつしや)(こと)()うして()かずに()れませうか……。371(ふた)つも立派(りつぱ)(みみ)()つて()るのだもの……』
372(ちひ)さい(こゑ)(あと)()けた。373セールは(こゑ)(まで)()へて、
374セール『ウンウンヨシヨシ、375可愛(かあい)いお(まへ)(ねがひ)だから、376(なん)でも()いてやる。377(おも)存分(ぞんぶん)さいなんだがよからうぞ』
378 両人(りやうにん)一度(いちど)に、
379有難(ありがた)(ござ)います。380(いち)()(はや)くお(たの)(まを)します』
381セール『ヨシヨシ、382(これ)から牢番(らうばん)(まをし)()けて治道(ちだう)をここへ()()てて()るから、383(まへ)()きなやうにしたがよからう』
384()()て、385自分(じぶん)居間(ゐま)(かへ)つて()く。
386 セールは自分(じぶん)居間(ゐま)(かへ)り、387ニコニコし(なが)独言(ひとりごと)
388セール『ヤア、389(これ)(おれ)願望(ぐわんまう)成就(じやうじゆ)だ。390ウマイウマイ、391矢張(やつぱり)(をんな)といふ(もの)(なに)(ひと)刺戟(しげき)(あた)へないと駄目(だめ)だワイ。392まだ(ふところ)調(しら)べてゐないが、393あの治道(ちだう)は○を沢山(たくさん)()つて()るに(ちが)ひない。394それに(うらみ)のある(やつ)()てるによつて、395(おれ)にも都合(つがふ)がよいといふものだ。396(なに)しろ(つき)(はな)にもまがふ美人(びじん)だからな。397エヘヽヽヽ。398両手(りやうて)(はな)とは(おれ)(こと)だ。399二人(ふたり)(つま)()()かれ、400黄金(こがね)(はし)(わた)るといふ()(おき)は、401(いま)実現(じつげん)しさうだワイ。402ウツフヽヽヽ』
403四辺(あたり)(ひと)()きを(さいは)ひ、404(ひと)笑壺(ゑつぼ)()つて()る。
405大正一二・七・一六 旧六・三 於祥雲閣 松村真澄録)

王仁三郎が著した「大作」がこれ1冊でわかる!
飯塚弘明・他著『あらすじで読む霊界物語』(文芸社文庫)
絶賛発売中!

目で読むのに疲れたら耳で聴こう!
霊界物語の朗読 ユーチューブに順次アップ中!
霊界物語の音読まとめサイト
オニド関連サイト最新更新情報
10/22【霊界物語ネット】王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)』をテキスト化しました。
5/8【霊界物語ネット】霊界物語ネットに出口王仁三郎の第六歌集『霧の海』を掲載しました。
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス
合言葉「みろく」を入力して下さい→