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第70巻(酉の巻)
第71巻(戌の巻)
第72巻(亥の巻)
特別編 入蒙記
天祥地瑞
第73巻(子の巻)
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第75巻(寅の巻)
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第3巻(寅の巻)
序文
凡例
総説
第1篇 国魂の配置
01 神々の任命
〔101〕
02 八王神の守護
〔102〕
第2篇 新高山
03 渓間の悲劇
〔103〕
04 鶴の首
〔104〕
第3篇 ロツキー山
05 不審の使神
〔105〕
06 籠の鳥
〔106〕
07 諷詩の徳
〔107〕
08 従神司の殊勲
〔108〕
第4篇 鬼城山
09 弁者と弁者
〔109〕
10 無分別
〔110〕
11 裸体の道中
〔111〕
12 信仰の力
〔112〕
13 嫉妬の報
〔113〕
14 霊系の抜擢
〔114〕
第5篇 万寿山
15 神世の移写
〔115〕
16 玉ノ井の宮
〔116〕
17 岩窟の修業
〔117〕
18 神霊の遷座
〔118〕
第6篇 青雲山
19 楠の根元
〔119〕
20 晴天白日
〔120〕
21 狐の尻尾
〔121〕
22 神前の審判
〔122〕
第7篇 崑崙山
23 鶴の一声
〔123〕
24 蛸間山の黒雲
〔124〕
25 邪神の滅亡
〔125〕
26 大蛇の長橋
〔126〕
第8篇 神界の変動
27 不意の昇天
〔127〕
28 苦心惨憺
〔128〕
29 男波女波
〔129〕
30 抱擁帰一
〔130〕
31 竜神の瀑布
〔131〕
32 破軍の剣
〔132〕
第9篇 隠神の活動
33 巴形の斑紋
〔133〕
34 旭日昇天
〔134〕
35 宝の埋換
〔135〕
36 唖者の叫び
〔136〕
37 天女の舞曲
〔137〕
38 四十八滝
〔138〕
39 乗合舟
〔139〕
第10篇 神政の破壊
40 国の広宮
〔140〕
41 二神の帰城
〔141〕
42 常世会議
〔142〕
43 配所の月
〔143〕
第11篇 新規蒔直し
44 可賀天下
〔144〕
45 猿猴と渋柿
〔145〕
46 探湯の神事
〔146〕
47 夫婦の大道
〔147〕
48 常夜の闇
〔148〕
49 袖手傍観
〔149〕
第12篇 霊力体
50 安息日
〔150〕
岩井温泉紀行歌
余白歌
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第3巻
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第一〇章
無分別
(
むふんべつ
)
〔一一〇〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第3巻 霊主体従 寅の巻
篇:
第4篇 鬼城山
よみ(新仮名遣い):
きじょうざん
章:
第10章 無分別
よみ(新仮名遣い):
むふんべつ
通し章番号:
110
口述日:
1921(大正10)年11月15日(旧10月16日)
口述場所:
筆録者:
有田九皐
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年3月3日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
須賀彦は眉目秀麗な美男子であった。鬼城山に颯爽と乗り付けると、竜宮城の直使として門を開かせた。
美山彦も須賀彦の雷のような言霊に打たれた感があったが、美山彦・国照姫の娘である小桜姫の色香に迷い、ついには夫婦の間柄となってしまった。
須賀彦はあろうことか、敵方の婿養子になってしまい、地の高天原へも復命することはなかった。後に須賀彦は、どこからともなく飛んできた白羽の矢にあたり、悶死を遂げることになる。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2020-04-28 15:24:07
OBC :
rm0310
愛善世界社版:
62頁
八幡書店版:
第1輯 282頁
修補版:
校定版:
64頁
普及版:
27頁
初版:
ページ備考:
001
天使長
(
てんしちやう
)
大八洲彦
(
おほやしまひこの
)
命
(
みこと
)
の
命
(
めい
)
により、
002
須賀彦
(
すがひこ
)
は
第二
(
だいに
)
の
使者
(
ししや
)
として、
003
伴
(
とも
)
をも
連
(
つ
)
れずただ
一騎
(
いつき
)
竜馬
(
りうめ
)
にまたがり
蹄
(
ひづめ
)
の
音
(
おと
)
高
(
たか
)
く、
004
鬼城山
(
きじやうざん
)
にむかひて
出馬
(
しゆつば
)
したりけり。
005
須賀彦
(
すがひこ
)
は、
006
容貌
(
ようばう
)
うるはしく
眉目
(
びもく
)
清秀
(
せいしう
)
にして、
007
あくまで
色
(
いろ
)
白
(
しろ
)
く
肌
(
はだ
)
滑
(
なめ
)
らかにしてあたかも
天女
(
てんによ
)
の
再来
(
さいらい
)
かと
疑
(
うたが
)
はるるばかりの
美男子
(
びだんし
)
なりけり。
008
須賀彦
(
すがひこ
)
は
鬼城山
(
きじやうざん
)
の
城門
(
じやうもん
)
を
何
(
な
)
ンの
憚
(
はばか
)
る
色
(
いろ
)
もなく、
009
竜馬
(
りうめ
)
に
鞭
(
むち
)
うち
奥
(
おく
)
ふかく
侵入
(
しんにふ
)
し、
010
玄関先
(
げんくわんさき
)
に
馬
(
うま
)
をすて
奥殿
(
おくでん
)
に
進
(
すす
)
みいり、
011
大音声
(
だいおんじやう
)
をあげていふ。
012
『
我
(
われ
)
こそは、
013
地
(
ち
)
の
高天原
(
たかあまはら
)
を
司
(
つかさど
)
りたまふ
国治立
(
くにはるたちの
)
命
(
みこと
)
、
014
天使
(
てんし
)
大八洲彦
(
おほやしまひこの
)
命
(
みこと
)
の
直使
(
ちよくし
)
として
出馬
(
しゆつば
)
せり、
015
言
(
い
)
ひ
渡
(
わた
)
すべき
仔細
(
しさい
)
あり。
016
美山彦
(
みやまひこ
)
はあらざるか、
017
国照姫
(
くにてるひめ
)
は
何処
(
いづこ
)
ぞ。
018
すみやかに
我
(
わ
)
が
眼前
(
がんぜん
)
にまかり
出
(
い
)
で、
019
直使
(
ちよくし
)
の
命
(
めい
)
を
承
(
うけたまは
)
れ』
020
と
呼
(
よ
)
ばはりし。
021
その
言霊
(
ことたま
)
の
力
(
ちから
)
は、
022
実
(
じつ
)
に
雷鳴
(
らいめい
)
のごとく
轟
(
とどろ
)
きわたり
何
(
なん
)
となくすさまじき
中
(
なか
)
にも
優
(
やさ
)
しみありき。
023
美山彦
(
みやまひこ
)
は
須賀彦
(
すがひこ
)
の
言霊
(
ことたま
)
にのまれ、
024
やや
恐怖
(
きようふ
)
の
念
(
ねん
)
にかられて
躊躇
(
ちうちよ
)
逡巡
(
しゆんじゆん
)
の
色
(
いろ
)
見
(
み
)
えにける。
025
この
時
(
とき
)
国照姫
(
くにてるひめ
)
は
一室
(
いつしつ
)
より
走
(
はし
)
りいで、
026
須賀彦
(
すがひこ
)
の
容姿
(
ようし
)
端麗
(
たんれい
)
にして、
027
どことなく
権威
(
けんゐ
)
に
充
(
み
)
てるその
態度
(
たいど
)
に
荒肝
(
あらぎも
)
をひしがれ、
028
何
(
なん
)
の
言葉
(
ことば
)
もなく
頭
(
かしら
)
を
垂
(
た
)
れて
黙視
(
もくし
)
するのみなりしが、
029
又
(
また
)
もや
静
(
しづか
)
に
入
(
い
)
りきたる
女性
(
ぢよせい
)
あり。
030
須賀彦
(
すがひこ
)
は
一目
(
ひとめ
)
見
(
み
)
るよりハツタと
睨
(
にら
)
み、
031
『
反逆
(
はんぎやく
)
不忠
(
ふちう
)
の
口子姫
(
くちこひめ
)
、
032
見
(
み
)
るもけがらはし、
033
片時
(
かたとき
)
も
早
(
はや
)
くこの
場
(
ば
)
を
立
(
た
)
ち
去
(
さ
)
れよ』
034
とにらみつけられ、
035
口子姫
(
くちこひめ
)
は
恨
(
うら
)
めしげに
須賀彦
(
すがひこ
)
の
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
あげ、
036
袖
(
そで
)
をもつてしたたる
涙
(
なみだ
)
をふきながら
四辺
(
あたり
)
に
眼
(
め
)
を
配
(
くば
)
り、
037
わが
胸
(
むね
)
を
押
(
おさ
)
へ、
038
何事
(
なにごと
)
か
口
(
くち
)
には
出
(
いだ
)
さざれど
秘密
(
ひみつ
)
のこもれることを
暗示
(
あんじ
)
する
様子
(
やうす
)
なりける。
039
美山彦
(
みやまひこ
)
の
一女
(
いちぢよ
)
に
小桜姫
(
こざくらひめ
)
といふ
絶世
(
ぜつせい
)
の
美
(
うつく
)
しき
若
(
わか
)
き
女性
(
ぢよせい
)
あり。
040
この
小桜姫
(
こざくらひめ
)
は
最前
(
さいぜん
)
よりの
須賀彦
(
すがひこ
)
の
容貌
(
ようばう
)
端麗
(
たんれい
)
なるを、
041
戸
(
と
)
の
陰
(
かげ
)
より
垣間見
(
かいまみ
)
つつ
心臓
(
しんざう
)
に
劇
(
はげ
)
しき
波
(
なみ
)
を
打
(
う
)
たせゐたるが、
042
つひに
耐
(
た
)
へかねて
顔
(
かほ
)
を
赤
(
あか
)
らめながら
戸
(
と
)
を
押
(
お
)
しひらき、
043
静々
(
しづしづ
)
と
須賀彦
(
すがひこ
)
の
立
(
た
)
てる
前
(
まへ
)
にはづかしげに
両手
(
りやうて
)
をつき、
044
慇懃
(
いんぎん
)
に
述
(
の
)
ぶる
挨拶
(
あいさつ
)
も
口
(
くち
)
ごもるそのしほらしさ。
045
小桜姫
(
こざくらひめ
)
は
思
(
おも
)
ひきつて
面
(
おもて
)
をもたぐるその
刹那
(
せつな
)
、
046
須賀彦
(
すがひこ
)
とたがひに
視線
(
しせん
)
は
合致
(
がつち
)
せり。
047
いづれ
劣
(
おと
)
らぬ
花紅葉
(
はなもみぢ
)
、
048
色香
(
いろか
)
争
(
あらそ
)
ふ
美人
(
びじん
)
と
美人
(
びじん
)
、
049
両者
(
りやうしや
)
の
眼
(
め
)
は
何事
(
なにごと
)
かを
物語
(
ものがた
)
るやうに
見
(
み
)
へにける。
050
このとき
美山彦
(
みやまひこ
)
、
051
国照姫
(
くにてるひめ
)
、
052
口子姫
(
くちこひめ
)
はその
場
(
ば
)
に
現
(
あら
)
はれ、
053
山海
(
さんかい
)
の
珍味
(
ちんみ
)
をもちだし
須賀彦
(
すがひこ
)
を
丁寧
(
ていねい
)
に
饗応
(
きやうおう
)
し、
054
ここに
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
神司
(
しんし
)
は
互
(
たが
)
ひに
打
(
う
)
ちとけ
談話
(
だんわ
)
を
交換
(
かうくわん
)
したりける。
055
須賀彦
(
すがひこ
)
はおもむろに
使者
(
ししや
)
のおもむきを
伝
(
つた
)
へ、
056
美山彦
(
みやまひこ
)
の
返答
(
へんたふ
)
を
促
(
うなが
)
しければ、
057
美山彦
(
みやまひこ
)
は、
058
『
使者
(
ししや
)
のおもむき、
059
たしかに
拝承
(
はいしよう
)
し
奉
(
たてまつ
)
る。
060
しかしながら、
061
城内
(
じやうない
)
の
諸神司
(
しよしん
)
をあつめ
一
(
ひと
)
まづ
協議
(
けふぎ
)
を
遂
(
と
)
ぐるまで、
062
数日
(
すうじつ
)
の
猶予
(
いうよ
)
を
与
(
あた
)
へたまはずや』
063
と
顔
(
かほ
)
をやや
左方
(
さはう
)
にかたむけ、
064
須賀彦
(
すがひこ
)
の
返答
(
へんたふ
)
いかにとその
顔
(
かほ
)
を
見上
(
みあ
)
げたり。
065
須賀彦
(
すがひこ
)
はその
請求
(
こひ
)
を
許
(
ゆる
)
し、
066
数日
(
すうじつ
)
城内
(
じやうない
)
に
滞在
(
たいざい
)
し
返事
(
へんじ
)
を
待
(
ま
)
ちゐたり。
067
国照姫
(
くにてるひめ
)
は
小桜姫
(
こざくらひめ
)
に
命
(
めい
)
じ、
068
須賀彦
(
すがひこ
)
の
身辺
(
しんぺん
)
に
侍
(
じ
)
せしめ
用務
(
ようむ
)
を
便
(
べん
)
ぜしめける。
069
遠
(
とほ
)
きやうでも
近
(
ちか
)
く、
070
難
(
かた
)
きに
似
(
に
)
て
易
(
やす
)
きは
男女
(
だんぢよ
)
の
道
(
みち
)
とかや。
071
ここに
須賀彦
(
すがひこ
)
、
072
小桜姫
(
こざくらひめ
)
は
人目
(
ひとめ
)
の
関
(
せき
)
を
破
(
やぶ
)
りて
割無
(
わりな
)
き
仲
(
なか
)
となり
終
(
をは
)
りぬ。
073
この
様子
(
やうす
)
をうかがひ
知
(
し
)
りたる
国照姫
(
くにてるひめ
)
、
074
口子姫
(
くちこひめ
)
はおほいに
喜
(
よろこ
)
び、
075
須賀彦
(
すがひこ
)
をとどめて
婿
(
むこ
)
となさむと
思
(
おも
)
ひ、
076
種々
(
しゆじゆ
)
心
(
こころ
)
を
配
(
くば
)
りゐたりける。
077
それより
須賀彦
(
すがひこ
)
と
小桜姫
(
こざくらひめ
)
は
両親
(
りやうしん
)
の
黙認
(
もくにん
)
のもとに
夫婦
(
ふうふ
)
きどりになり、
078
緊要
(
たいせつ
)
なる
大神
(
おほかみ
)
の
使命
(
しめい
)
を
忘却
(
ばうきやく
)
するにいたりけるぞ
歎
(
うた
)
てけれ。
079
須賀彦
(
すがひこ
)
は
小桜姫
(
こざくらひめ
)
に
魂
(
たましひ
)
をうばはれ
日夜
(
にちや
)
姫
(
ひめ
)
を
相手
(
あひて
)
に
淫酒
(
いんしゆ
)
にふけり、
080
あまたの
城内
(
じやうない
)
の
神司
(
かみ
)
とともに
花見
(
はなみ
)
の
宴
(
えん
)
を
催
(
もよほ
)
したるに、
081
諸神司
(
しよしん
)
は
酒
(
さけ
)
に
酔
(
よ
)
ひつぶれ、
082
かつ
庭前
(
ていぜん
)
にいまを
盛
(
さか
)
りと
咲
(
さ
)
き
香
(
にほ
)
ふ
桜木
(
さくらぎ
)
の
下
(
した
)
に、
083
あるひは
謡
(
うた
)
ひあるひは
舞
(
ま
)
ひ、
084
鐘
(
かね
)
や
太鼓
(
たいこ
)
の
拍子
(
へうし
)
に
乗
(
の
)
つて
踊
(
をど
)
りくるひ、
085
かつ
須賀彦
(
すがひこ
)
の
手
(
て
)
をとり、
086
「
貴下
(
きか
)
も
謡
(
うた
)
ひたまへ、
087
舞
(
ま
)
ひたまへ」と、
088
諸手
(
もろで
)
をとつて
大桜木
(
おほさくらぎ
)
の
下
(
した
)
に
誘
(
さそ
)
ひ、
089
春風
(
しゆんぷう
)
に
散
(
ち
)
る
花吹雪
(
はなふぶき
)
を
浴
(
あ
)
びつつ
愉快気
(
ゆくわいげ
)
に、
090
須賀彦
(
すがひこ
)
は
酒
(
さけ
)
の
威力
(
ちから
)
を
借
(
か
)
りてうたひ
出
(
だ
)
しけり。
091
その
意味
(
いみ
)
の
大要
(
たいえう
)
を、
092
今様式
(
いまやうしき
)
にここに
挙
(
あ
)
ぐれば
左
(
さ
)
の
意味
(
いみ
)
の
籠
(
こも
)
れる
歌
(
うた
)
なりける。
093
『
花
(
はな
)
の
顔色
(
かんばせ
)
月
(
つき
)
の
眉
(
まゆ
)
094
富士
(
ふじ
)
の
額
(
ひたひ
)
に
雪
(
ゆき
)
の
肌
(
はだ
)
095
天津
(
あまつ
)
乙女
(
をとめ
)
の
再来
(
さいらい
)
か
096
小野
(
をの
)
の
小町
(
こまち
)
か
照手
(
てるて
)
の
姫
(
ひめ
)
か
097
ネルソンバテーか
万竜
(
まんりう
)
か
098
欣々
(
きんきん
)
女史
(
ぢよし
)
か
楊貴妃
(
やうきひ
)
か
099
褒似
(
ほうじ
)
の
姫
(
ひめ
)
か
難波江
(
なにはえ
)
の
100
よしもあしきも
判
(
わ
)
きかぬる
101
富田屋
(
とんだや
)
八千代
(
やちよ
)
も
丸跣
(
まるはだし
)
102
年
(
とし
)
は
二八
(
にはち
)
か
二九
(
にく
)
からぬ
103
小桜姫
(
こざくらひめ
)
の
微笑
(
ほほゑみ
)
は
104
天下
(
てんか
)
の
城
(
しろ
)
も
傾
(
かたむ
)
けむ
105
鬼神
(
おに
)
もおそるる
幽庁
(
いうちやう
)
の
106
閻魔
(
えんま
)
も
よだれ
を
流
(
なが
)
すらむ
107
優
(
みや
)
び
姿
(
すがた
)
は
海棠
(
かいだう
)
の
108
雨
(
あめ
)
の
湿
(
うる
)
ほふごとくなり
109
かかる
美人
(
びじん
)
がまたと
世
(
よ
)
に
110
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
にあるものか
111
有明月
(
ありあけづき
)
のまるまると
112
背
(
せ
)
は
高
(
たか
)
からず
低
(
ひく
)
からず
113
一度
(
いちど
)
にひらく
紅梅
(
こうばい
)
の
114
露
(
つゆ
)
に
綻
(
ほころ
)
ぶ
姿
(
すがた
)
かや
115
口
(
くち
)
より
見
(
み
)
する
歯
(
は
)
の
光
(
ひかり
)
116
光明姫
(
くわうみやうひめ
)
か
衣通姫
(
そとほりひめ
)
の
117
美
(
うま
)
し
命
(
みこと
)
の
再生
(
さいせい
)
か
118
すずしき
声
(
こゑ
)
は
鈴虫
(
すずむし
)
か
119
さては
弥生
(
やよひ
)
の
鶯
(
うぐひす
)
か
120
松
(
まつ
)
の
神代
(
かみよ
)
に
遇
(
あ
)
ふよりも
121
小桜姫
(
こざくらひめ
)
ともろともに
122
仲
(
なか
)
も
吉野
(
よしの
)
の
山
(
やま
)
ふかく
123
竹
(
たけ
)
の
柱
(
はしら
)
に
茅
(
かや
)
の
屋根
(
やね
)
124
虎
(
とら
)
狼
(
おほかみ
)
の
住家
(
すみか
)
をも
125
なぞか
厭
(
いと
)
はむ
糸桜
(
いとざくら
)
126
夜半
(
よは
)
の
嵐
(
あらし
)
に
散
(
ち
)
るとても
127
散
(
ち
)
らぬ
両人
(
ふたり
)
の
恋衣
(
こひごろも
)
128
恋
(
こひ
)
に
上下
(
じやうげ
)
の
隔
(
へだ
)
てなし
129
隔
(
へだ
)
てないのが
恋
(
こひ
)
の
道
(
みち
)
130
隔
(
へだ
)
てないのが
恋
(
こひ
)
の
道
(
みち
)
131
心
(
こころ
)
須賀彦
(
すがひこ
)
須賀
(
すが
)
々々
(
すが
)
と
132
八雲
(
やくも
)
の
琴
(
こと
)
の
須賀掻
(
すがかき
)
も
133
シヤツチン シヤツチン シヤツチンチン
134
シヤツチン シヤツチン シヤツチンチン』
135
と
二弦
(
にげん
)
の
琴
(
こと
)
を
弾
(
だん
)
じながら、
136
あたりかまはず
土堤
(
どて
)
を
切
(
き
)
らして
踊
(
をど
)
り
狂
(
くる
)
ふ。
137
かくして
須賀彦
(
すがひこ
)
は、
138
つひに
恋
(
こひ
)
の
虜
(
とりこ
)
となり、
139
地
(
ち
)
の
高天原
(
たかあまはら
)
への
復命
(
ふくめい
)
をなさず、
140
敵城
(
てきじやう
)
の
養子婿
(
やうしむこ
)
となりすまして
不義
(
ふぎ
)
の
臣
(
しん
)
とはなりにける。
141
楽
(
たの
)
しき
鴛鴦
(
をしどり
)
の
契
(
ちぎり
)
もつかのま、
142
いづこよりとも
知
(
し
)
らず
白羽
(
しらは
)
の
矢
(
や
)
は
飛
(
と
)
び
来
(
きた
)
りて
須賀彦
(
すがひこ
)
の
胸
(
むね
)
を
貫
(
つら
)
ぬきたれば、
143
あはれ
悶死
(
もんし
)
を
遂
(
と
)
げにけり。
144
あゝ、
145
実
(
じつ
)
に
慎
(
つつし
)
むべきは
男女
(
だんぢよ
)
の
道
(
みち
)
にこそあれ。
146
(
大正一〇・一一・一五
旧一〇・一六
有田九皐
録)
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