第四七章 夫婦の大道〔一四七〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第3巻 霊主体従 寅の巻
篇:第11篇 新規蒔直し
よみ(新仮名遣い):しんきまきなおし
章:第47章 夫婦の大道
よみ(新仮名遣い):ふうふのだいどう
通し章番号:147
口述日:1921(大正10)年12月09日(旧11月11日)
口述場所:
筆録者:谷村真友
校正日:
校正場所:
初版発行日:1922(大正11)年3月3日
概要:
舞台:
あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:辞職した真心彦は謹慎していたが、やがて精神に異常をきたして自刃して果てた。
神々らは真心彦の長子・広宗彦を天使に推し、国祖に承認された。広宗彦は仁慈をもって下に臨んだため、神界はこれまでにないほどよく平和に治まった。
真心彦の未亡人・事足姫は後添えを迎え、桃上彦をもうけた。桃上彦も仁慈深い神であったため、広宗彦はこの父違いの弟を自分の補佐として抜擢した。
しかし時が経つにつれて桃上彦は邪神に魅入られ、兄の地位を奪おうと画策するにいたった。桃上彦は民には偽りの慈悲を施し、自分に反対するものは容赦なく排除した。そのために次第に神人らは律法を軽んずるようになり、たちまち世は乱れてしまった。
これは八王大神が邪神を桃上彦に憑依させ、国祖の治世を足元から転覆させようという企みであった。しかし桃上彦の母・事足姫も、不貞によって桃上彦を生んだために、桃上彦の精神に邪悪な影響を及ぼしたことも原因であった。
これはげに、律法を軽んじて体主霊従の心持・行いをなした結果である。
桃上彦は八十猛彦、百猛彦を寵愛して野心をますますたくましくしていた。後に神界では、桃上彦を大曲津神と呼ぶに至ることになる。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]:
備考:
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データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :rm0347
愛善世界社版:277頁
八幡書店版:第1輯 358頁
修補版:
校定版:280頁
普及版:126頁
初版:
ページ備考:
001 真心彦は職を辞し、002固く門戸を閉ざして他人との接見を断ち、003謹慎の意を表しつつありしが、004つひにはその精神に異状を呈し、005一間に入りて、006ひそかに短刀を抜きはなち、
007『惟神霊幸倍坐世』
008と神語を唱へ自刃して帰幽したりける。009妻事足姫をはじめ、010長子広宗彦、011次子行成彦の悲歎と驚きはたとふるにものなく、012七日七夜は蚊の泣くごとくなりけり。013八百万の神人も涙の雨に袖をしぼらぬはなく、014同情の念はことごとく清廉潔白なる真心彦の御魂に集まりぬ。015八百万の神人は命の生前の勲功を賞揚し、016長子広宗彦をして、017父の後を襲ぐべく神司らは一致して、018国治立命に願ひ出でたり。
019 ここに広宗彦は仁慈をもつて下万民に臨みければ、020神界現界は実に無事泰平に治まり、021したがつて国治立命の神世を謳歌する声は六合に轟きわたりたり。022国治立命をはじめ、023地の高天原の神人の威勢は旭日昇天のごとく隆々として四海を圧するにいたり、024開闢以来かくのごとくよく治まりし神世は空前絶後の聖代と称せられける。025要するに、026清廉にして無欲、027かつ仁慈深き真心彦の血を享け継ぎたる広宗彦の経綸よろしきを得たる結果なるべし。
028 ここに真心彦の未亡人なる事足姫は、029夫の心を察せず、030数年を経てつひに夫の恩徳を忘れ、031春永彦といふ後の夫をもち、032夫婦のあひだに桃上彦といふ一柱の男子を生みけり。033桃上彦はまた仁慈ふかく下の神人をあはれみ、034かつ上にたいして忠実至誠の実をあげ、035衆の評判も非常に好かりけるより、036兄の広宗彦はおほいに歓び、037自分の副役として神務を輔佐せしめたり。
038 然るに星移り月を閲するにしたがひ、039最初きはめて善良なる性質の桃上彦も、040つひに常世国の魔神にその心魂を誑惑せられ、041漸次悪化邪遷して体主霊従の行動をなし、042上位の命を奉ぜず、043他神人の迷惑も心頭におかず、044自己本位を旨とし、045驕慢心日々に増長して、046つひには兄の地位を奪ひ、047みづから天使の位置に昇り、048神政の全権を掌握せむと計り、049ひたすら下万民の望みを一身に集中することのみに砕心焦慮したりけり。050それゆゑ下万民の桃上彦にたいする勢望は一時は非常なるものにてありき。051つひに桃上彦は兄を排斥し、052みづからその地位につき仁政を世界に布き、053大いに神政のために心身を傾注しける。054下々の神人も最初はその仁政を口をきはめて謳歌しつつありしが、055つひにはその恩になれて余りに有りがたく思はざるにいたり、056放縦安逸の生活をのみ企て、057天地の律法をもつて無用の長物と貶するにいたり、058聖地の重なる神司も侍者も漸次聖地を離れて四方に各自思ひおもひの方面に散乱したり。059而して桃上彦にむかいて忠告を与ふる神人あらば怒つてこれを排除し、060かつ罪におとしいれ、061乱暴狼藉いたらざるなく、062瞬くうちに聖地は冬の木草のごとき荒涼たる状況となり了りける。063これぞ常世彦、064常世姫があまたの邪神を使役して、065神政を紊乱せしめ、066国治立命を漸次排除する前提として、067大樹を伐らむとせば先づその枝を伐るの戦法を用ゐたるゆゑなり。068国治立命は枝葉をきられた大樹のごとく、069手足をもぎとられし蟹のごとく、070二進も三進もならざるやうに仕むけられたまひて、071神の権威はまつたく地に落ちにける。072これぞ体主霊従の大原因となり、073天地の律法は根底より破壊さるるの状態を馴致したるなりき。
074 事足姫は、075空閨の淋しさに忍びきれず、076婦女のもつとも大切なる貞節を破り、077後の夫をもちて夫の霊にたいし無礼を加へたるごとき、078体主霊従の精神より生れいでたる桃上彦なりければ、079最初の間はきはめて身、080魂ともに円満清朗にして、081申分なき至誠の神人なりしかども、082母の天則を破りたる、083不貞の水火の凝結したる胎内を借りて出生したる結果、084つひにはその本性あらはれ、085放縦驕慢の精神萠芽せむとする、086その間隙に乗じて邪神の容器と不知不識のあひだに化りかはり、087つひには分外の大野心をおこし、088あたら大神の苦辛して修理固成されたる天地の大経綸を、089根底より破滅顛覆せしむるにいたりける。090神諭に、
091『世の乱れる原因は、092夫婦の道からであるぞよ』
093と示されあるごとく、094夫婦の道ほど大切なもの又と外になかるべし。095国家を亡ぼすも、096一家を破るも、097一身を害ふも、098みな天地の律法に定められたる夫婦の大道を踏みあやまるよりきたるところの災なり。099神界の神々は申すもさらなり、100地上の人類は神に次ぐところの結構なる身魂なるを知りて、101第一に夫婦の関係に注意すべきものなり。
102 かくのごとく事足姫の脱線的不倫の行為より、103ひいてはその児の精神に大なる影響をおよぼし、104つひには神界も混乱紛糾の極に達し、105現界の人類にいたるまで、106この罪悪に感染し、107現代のごとく邪悪無道の社会を現出するに立いたりたるなり。
108 これを思へば神人ともに、109体主霊従の心行を改め、110根本より身魂の立替立直しに全力をささげ、111霊主体従の天授の大精神に立かへり、112神の御子たるの天職を奉仕し、113毫末といへども体主霊従に堕するがごときことなきやう、114たがひに慎み、115天地の律法を堅く守らざるべからざるを強く深く感ずる次第なり。
116 天地の律法を破りて、117自由行動を取りたる二神人の子と生れたる桃上彦が、118大なる野心を起しその目的を達せむため、119下の神人にたいして人望を買はむとし、120八方美人主義を発揮したるために、121かへつて下々の神人より軽侮せられ、122愚弄され、123綱紀は弛緩し、124上の命ずるところ下これを用ゐざる不規則きはまる社会を現出せしめたるなり。125神界にては桃上彦を大曲津神と呼ばるるにいたりける。126神諭に、
127『慢神と誤解と夫婦の道と欲ほど恐いものは無い』
128と示されたるとほり、129桃上彦の失敗を処世上の手本として、130神人ともに日々の行動を慎み、131天授の精魂を汚さざるやう努力せざるべからず。132また桃上彦は八十猛彦、133百猛彦を殊のほか寵愛し、134両人を頤使してますます野心をたくましうし、135神政をもち荒したる結果は、136現界にもその影響波及し、137持ちも降しもならぬ澆季の世を招来したりしなり。
138(大正一〇・一二・九 旧一一・一一 谷村真友録)
139(第四四章~第四七章 昭和一〇・一・一八 於宮崎市神田橋旅館 王仁校正)