第三七章 天女の舞曲〔一三七〕
インフォメーション
著者:出口王仁三郎
巻:霊界物語 第3巻 霊主体従 寅の巻
篇:第9篇 隠神の活動
よみ(新仮名遣い):いんしんのかつどう
章:第37章 天女の舞曲
よみ(新仮名遣い):てんにょのぶきょく
通し章番号:137
口述日:1921(大正10)年12月07日(旧11月09日)
口述場所:
筆録者:近藤貞二
校正日:
校正場所:
初版発行日:1922(大正11)年3月3日
概要:
舞台:
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備考:
タグ:土熊別?(牛熊別)
データ凡例:
データ最終更新日:2018-05-20 15:36:57
OBC :rm0337
愛善世界社版:219頁
八幡書店版:第1輯 338頁
修補版:
校定版:223頁
普及版:98頁
初版:
ページ備考:
001 八咫の大広間の大酒宴の中に立ちて、002旭姫は長袖いとしとやかに舞ひつ踊りつ、003口づから歌ひはじめたり。004その歌、
005『朝日は豊栄昇りまし
008世は永遠に長高の
010花は咲けども百鳥の
011声は長閑に謳へども 012月に叢雲花に風
013常世の国より吹きおくる
016木草は倒れ花は散り
017神人一度に泣き叫ぶ 018その声今に長高の
019山の尾の上を轟かし 020常世の暗の世とならむ
023角の生えたる牛熊や
025真寸美の鏡に照し見よ
027炎は今に燃え上がる
030長高山も末世姫
031末世澆季の世をてらす 032国直姫の御使
034太刀抜き振ふは今の内
035角折りこらすはこの砌 036大道別や八島姫
039一時の猶予は千歳の 040悔いを残さむささ早く』
041 清照彦は旭姫の諷歌を聞くや、042侍臣に命じてその場に牛熊別を縛せしめむとせしに、043さすがの牛熊別も大酒をすごせしため身体自由ならず、044やすやすと部下の神司のために前後左右より取り囲まれ縛につきぬ。045このとき山下に聞ゆる鬨の声。046清照彦は突つ立ち上り、
047『反逆者の襲来ならむ。048神将らは武装を整へ防戦にむかへ』
049と下知すれども、050酒に酔ひつぶれて正体なく、051ただただ寝耳に水の恐怖心にかられ、052右往左往に城内を奔りまはるのみ。053一人として戦場にむかふ勇者は無かりけり。
054 時しも鬼丸は、055陣頭に立ちあまたの魔軍を引率し、056城内に侵入しきたり、
057『鬼丸これにあり、058清照彦命に見参せむ。059吾こそは常世国の重臣にして、060鬼丸とは世を忍ぶ仮の名、061実は八王大神の密偵、062鷹虎別なるぞ。063長高山を占領せむと身をやつし牛熊別としめし合せ、064本城を根底より覆へさむとの吾が計略、065天運ここに循環して、066日ごろの大望成就の暁はきたれり。067もはや叶はぬ清照彦は、068本城を開けわたし、069常世の国に従ふか、070ただしはこの場で切腹あるか。071返答いかに』
072と阿修羅王の荒れたるごとく、073奥殿目がけて攻めきたるを、074清照彦、075末世姫は、076強弓に矢を番へ、077立ち出でて鷹虎別にむかひ、078一矢を発たむとする時しも、079いかがはしけん、080弓弦はプツリと断ち切れて双方とも用をなさず、081進退きはまり夫婦は最早切腹の余儀なきをりしも、082旭姫は牛熊別を縛のまま、083その前に曳出しきたり、084短刀を牛熊別の胸に擬し、085鬼丸にむかひ、
086『汝吾が主にむかつて危害を加へむとせば、087妾はいま汝の主を刺殺さむ』
088と睨めつけたるにぞ、089鷹虎別は仁王立ちとなりしまま歯がみをなし、090手を下すによしなく溜息つくをりしも、091表の方よりにはかに聞ゆる数多の足音。092鬼丸はふと後を振返る一刹那、093旭姫は短刀の鞘を払ふより早く、094鬼丸の胸につき立てしが、095鬼丸はアツと一声、096その場に倒れこときれにけり。
097 山麓に押しよせたる鬼丸の部下をさんざんに打ち悩ませ、098敵を四方に散乱せしめ勝に乗じて山上に登り、099城内の危急を救はむとして入り来れる大道別の雄姿は、100今この場に現はれ、101鐘のごとき大声を放ちて、102神助の次第を報知したりける。
103 旭姫はおほいに悦び、104奥に進み入りて清照彦、105末世姫に戦捷の次第を物語り、106かつ大道別の功績を逐一物語りたり。107清照彦はただちに大道別を引見し、108その勲功を感謝し、109ただちにわが地位を捨てて大道別、110八島姫に譲り、111かつ、
112『吾ら夫妻は、113貴下の従臣として永く奉仕せむ』
114と赤心を面に表はして、115しきりに慫慂したりける。
116 案に相違の大道別は、117大いに迷惑を感じ、118直ちに偽の聾唖を装ひ、119痴呆を真似て清照彦の言を馬耳東風と葬り去りぬ。120旭姫は口をきはめて道彦の力量のみ徒に強くして、121治世の能力なき痴呆者たる事を宣明したれば、122清照彦は止むを得ずこれを断念したりけり。
123 これより清照彦は、124領内の正しき神人を下級より選抜し、125重任に就かしめたりしより、126その後は一回の紛擾もおこらず、127長高山はその名のごとく、128世は長く栄え神徳は高く四方に輝きわたり、129常世の邪神はつひにその影を没したりける。
130 大道別は長高山を煙のごとく消え失せ、131八島姫もまた何時のまにか、132姿を隠したりける。133雲のごとく現はれ、134霞のごとく消え去りし二人の神変不可測の行動、135高倉、136旭の二白狐の変現出没の神妙奇蹟は、137今後の物語りによつて判明するならむ。
138(大正一〇・一二・七 旧一一・九 近藤貞二録)