霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二四章 大活躍(だいくわつやく)〔五五〇〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第13巻 如意宝珠 子の巻 篇:第5篇 膝栗毛 よみ:ひざくりげ
章:第24章 第13巻 よみ:だいかつやく 通し章番号:550
口述日:1922(大正11)年03月21日(旧02月23日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年10月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
六人の宣伝使と弥次彦、与太彦は、途中林の中で野宿をした。しかし起きてみると、音彦、弥次彦、与太彦を残して五人の宣伝使の姿が消えてしまった。
弥次彦と与太彦は騒ぎ出すが、音彦は慌てず、追ってフサの都に歩いて行こう、と先を促す。弥次彦と与太彦はおかしなやり取りをしている。
すると、にわかに人馬の物音が聞こえ、三人はウラル教の捕り手たちに囲まれてしまった。弥次彦と与太彦はものすごい勢いで拳をふるって血路を開き、駆け出した。音彦はその後を宣伝歌を歌いながらゆうゆうと進んで行く。
ウラル教の捕り手頭は、三人を捕らえるように下知するが、捕り手たちは口ごたえして動かない。捕り手頭は一人で追いかけようとするが、馬に振り落とされて帰幽してしまった。
捕り手の一人・八公は仕方なく、一人で峠を下って宣伝使らを追いかける。
音彦らは丸木橋を渡って逃げるが、さらにウラル教徒らに囲まれてしまい、逃げ出す。荒男の館に迷い込んでまたそこから逃げ、泥田にはまりこんでまたそこから逃げる。
最後に小鹿峠に追い込まれ、数百人の捕り手に囲まれた三人は、決死の覚悟で断崖の谷間に飛び降りた。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm1324
愛善世界社版:283頁 八幡書店版:第3輯 134頁 修補版: 校定版:283頁 普及版:124頁 初版: ページ備考:
001 (ここ)六人(ろくにん)宣伝使(せんでんし)は、002田子(たご)(まち)()けるお(たけ)宿(やど)騒動(さうだう)鎮定(ちんてい)し、003弥次彦(やじひこ)004与太彦(よたひこ)宣伝使(せんでんし)扈従(こじゆう)して、005コーカス(ざん)(むか)(こと)となつた。006六人(ろくにん)馬上(ばじやう)(またが)り、007二人(ふたり)徒歩(とほ)のままテクテクとフサの(みやこ)()して(すす)()く。008タカオ山脈(さんみやく)連続(れんぞく)せる猿山峠(さるやまたうげ)(ふもと)()いた。
009 (なが)春日(はるひ)(はや)()()てて、010四辺(あたり)(もや)(つつ)まれた。011一行(いつかう)八人(はちにん)はとある(はやし)(なか)(みの)()(しん)()いた。012(いづ)れも長途(ちやうと)(たび)(つか)()て、013前後(ぜんご)()らず寝入(ねい)るのであつた。014夜中(やちう)弥次彦(やじひこ)()()まし、015あたりを()れば、016(おぼろ)(つき)頭上(づじやう)()()(とほ)して(かがや)いて()る。017六人(ろくにん)宣伝使(せんでんし)のうち五人(ごにん)姿(すがた)は、018何時(いつ)()にか()()せて、019附近(あたり)(ひと)気配(けはい)もない。
020弥次彦(やじひこ)『モシモシ宣伝使(せんでんし)(さま)021()きて(くだ)さい、022(ひと)紛失(ふんしつ)いたしました』
023音彦(おとひこ)『ナニ、024人間(にんげん)紛失(ふんしつ)した?、025ソンナ(こと)があるものか、026(まへ)(ゆめ)でも()たのだらう』
027弥次彦(やじひこ)『イヤ(けつ)して(けつ)して(ゆめ)ではありませぬ、028マア()()けてご(らん)なさい、029(うま)()りませず、030宣伝使(せんでんし)のお姿(すがた)何処(どこ)かへ、031蒙塵(もうぢん)されたやうな塩梅(あんばい)ですワ』
032 音彦(おとひこ)()(こす)りながら、033附近(あたり)()まはし、
034音彦(おとひこ)『ヤアこれは殺生(せつしやう)だ、035到頭(たうと)()てられて(しま)つた。036エー仕方(しかた)がない、037何事(なにごと)神直日(かむなほひ)大直日(おほなほひ)見直(みなほ)聞直(ききなほ)しだ。038吾々(われわれ)鞭撻(べんたつ)しようと(おも)つて、039鷹彦(たかひこ)宣伝使(せんでんし)が、040熟睡(じゆくすゐ)(すき)(ねら)つて発足(はつそく)されたのだらう。041()れにしてもご苦労(くらう)(こと)だ、042自分(じぶん)()うして夜中(やちう)(ゆめ)()()るのに、043五人(ごにん)宣伝使(せんでんし)は、044夜露(よつゆ)(をか)して夜中(やちう)行軍(かうぐん)045大抵(たいてい)(こと)であるまい。046音彦(おとひこ)大変(たいへん)草臥(くたび)れて()るから、047マアゆつくりと(やす)ましてやらうと()つて、048一足先(ひとあしさき)へお()でになつたのだらう。049(いづ)れフサの(みやこ)手前(てまへ)()つて()(くだ)さるであらう』
050弥次彦(やじひこ)『モシモシ宣伝使(せんでんし)(さま)051ソンナ気楽(きらく)(こと)()つてる(ところ)ぢやありませぬで、052あなたの(うま)()ないぢやありませぬか、053この(へん)には大変(たいへん)(おほ)きい大蛇(をろち)が、054夜分(やぶん)横行(わうかう)しますから、055宣伝使(せんでんし)(うま)一緒(いつしよ)()んで(しま)つて(はら)(ふく)らし、056()満足(たんのう)をしよつて、057吾々(われわれ)呑残(のみのこ)しにしたのかも(わか)りませんよ』
058音彦(おとひこ)『マア心配(しんぱい)なさるな、059(かみ)(みち)(つた)ふる宣伝使(せんでんし)060神様(かみさま)がご守護(しゆご)(あそ)ばすから、061大蛇(だいじや)がどうして()(こと)出来(でき)よう。062キット(さき)()つて、063吾々(われわれ)()るのを()つて()(くだ)さるだらうから』
064弥次彦(やじひこ)『オイ与太(よた)065()きぬか、066ナンダ、067大変事(だいへんじ)勃発(ぼつぱつ)して()るのに、068グウグウと()()(どころ)か、069サアサアこれから手配(てくば)りをして、070宣伝使(せんでんし)在処(ありか)(さが)さねばならないぞ』
071与太彦(よたひこ)『ムニヤムニヤムニヤ、072アーねむた、073折角(せつかく)()(ゆめ)()()つたのに、074(おこ)されて()しい(こと)をした、075掌中(しやうちう)(たま)(うば)はれたやうな()がするワイ』
076弥次彦(やじひこ)()しい(ゆめ)つて、077ドンナ(ゆめ)だい、078(かね)でも(ひろ)つた(ゆめ)()たのだろう』
079与太彦(よたひこ)『どうしてどうして、080ソンナ(ゆめ)ぢやない、081三日間(みつかかん)(ひと)()ふなと()(こと)だ、082(ゆめ)()られると(こま)るから、083ここ三日間(みつかかん)(ゆめ)(たい)して無言(むごん)(ぎやう)だ』
084弥次彦(やじひこ)大体(だいたい)(ゆめ)ぢやないか、085たとへ実現(じつげん)するにした(ところ)で、086(まへ)(おれ)との(なか)だ、087(ひと)つの(もの)(ふた)つに()つて()()ふやうな、088昵懇(ぢつこん)(なか)で、089(ゆめ)(をし)んで(はな)さないと()(こと)があるか。090(まへ)(もの)(おれ)(もの)091(おれ)(もの)はやつぱり(おれ)(もの)だ』
092与太彦(よたひこ)『アハヽヽヽ、093それだから()はれぬのだ、094取込(とりこみ)思案(しあん)ばかりしよつて、095抜目(ぬけめ)のない(をとこ)だから』
096弥次彦(やじひこ)貴様(きさま)はよつぽど水臭(みづくさ)(をとこ)だよ、097綺麗(きれい)さつぱりと白状(はくじやう)して(しま)へ。098大方(おほかた)(となり)(かかあ)何々(なになに)する(ところ)()すり(おこ)されたのだらう、099それだから(おれ)()はれないのだらう。100百尺(ひやくしやく)竿頭(かんとう)一歩(いつぽ)(すす)めて露骨(ろこつ)()へば、101(おれ)(かかあ)に○○しようと(おも)つた(ところ)(おこ)されたのだらう』
102与太彦(よたひこ)(なに)()ふのだ、103あまり馬鹿(ばか)にするない、104(はら)()つわ。105これほど昵懇(ぢつこん)にして()るのに、106(おれ)日頃(ひごろ)精神(せいしん)が、107貴様(きさま)(わか)らぬのか。108エー残念(ざんねん)な、109腹立(はらだ)たしや、110ソンナ(こと)()うと(おれ)()んだら()けて()てやるぞ』
111弥次彦(やじひこ)(はら)()つなら()はぬかい。112(おれ)貴様(きさま)間柄(あひだがら)ぢや、113二人(ふたり)(なか)(へだ)てや秘密(ひみつ)があつては親友(しんいう)()(こと)出来(でき)ぬぢやないか、114ナアもし宣伝使(せんでんし)(さま)115さうでせう、116朋友(ほういう)といふものは(たがひ)相信(あひしん)じ、117相助(あひたす)けるのが朋友(ほういう)(みち)でせう』
118音彦(おとひこ)『さやうぢや、119(たがひ)打解(うちと)けた間柄(あひだがら)()(もの)気分(きぶん)()いものですなア。120与太(よた)サン、121元来(ぐわんらい)(ゆめ)だ、122さう弥次(やじ)サンの()()まさずに()つて()げなさい』
123与太彦(よたひこ)『アー仕方(しかた)がない、124宣伝使(せんでんし)(さま)のお言葉(ことば)125(くび)千切(ちぎ)れても、126三日間(みつかかん)女房(にようばう)にだつて()はないのが(ゆめ)規則(きそく)だけれど、127天則(てんそく)(やぶ)つて一伍一什(いちぶしじふ)展開(てんかい)いたしませう。128……(そもそ)(ゆめ)顛末(てんまつ)といへば、129古今(ここん)比類(ひるゐ)(ぜつ)したる(だい)大吉(だいきち)祥瑞(しやうずゐ)大霊夢(だいれいむ)だ。130一富士(いちふじ)二鷹(にたか)三茄子(さんなすび)つて(ゆめ)(なか)でも(わう)さまだ。131与太公(よたこう)が、132何処(どこ)だつたか、133(ところ)(わす)れたが、134(みち)(ある)いて()ると立派(りつぱ)葬礼(さうれん)(とほ)りました。135葬礼(さうれん)(ゆめ)(なに)()落着(らくちやく)すると()つて、136(こと)墓行(はかゆき)(はこ)ぶと()(こと)137それから芽出度(めでた)(たか)(ゆめ)だ、138ヤア立派(りつぱ)葬礼(さうれん)だなと()()ると()うと、139そこへパツパツパツと、140飛行機(ひかうき)(やう)にやつて()結構(けつこう)なお(かた)があるのだ。141それは(たか)三匹(さんびき)与太公(よたこう)(まへ)()りて、142与太公(よたこう)(かほ)()ては一寸(ちよつと)(うつぶ)き、143また()げては(うつぶ)き、144一生懸命(いつしやうけんめい)にアヽ与太(よた)さまは立派(りつぱ)(をとこ)だナアと()はぬ(ばか)りの(かほ)をして見惚(みと)れて()ました。145(わたくし)(なん)だか気分(きぶん)()いので、146ジツとして(たか)(にら)みつくらをして()ると、147どこからともなく一本(いつぽん)()五六升(ごろくしよう)()がなつた(やう)(きび)がそこヘバサと()ちて()た、148一粒万倍(ひとつぶまんばい)()つて(かず)()える(きび)(ゆめ)だから、149あの(とほ)(たから)()えるのであらう。150本当(ほんたう)気分(きぶん)()(ゆめ)だらう、151ナア弥次彦(やじひこ)152コンナ(ゆめ)聖人君子(せいじんくんし)でなければ、153到底(たうてい)()(こと)出来(でき)ないよ』
154弥次彦(やじひこ)『そら大変(たいへん)だ、155貴様(きさま)()()けないといかぬぞ』
156与太彦(よたひこ)大変(たいへん)だらう、157本当(ほんたう)()()けぬと、158結構(けつこう)(ゆめ)実現(じつげん)を、159他人(たにん)横領(わうりやう)されては、160糠喜(ぬかよろこ)びになるからナ』
161弥次彦(やじひこ)『まだソンナ(こと)()つて()よる、162葬礼(さうれん)(たか)三匹(さんびき)163(きび)といふぢやないか、164その(ゆめ)大凶兆(だいきようてう)だ、165災難(さいなん)前提(ぜんてい)だ、166(ばく)()はせ(ばく)()はせ』
167与太彦(よたひこ)『コンナ結構(けつこう)(ゆめ)(ばく)()はしてたまらうか、168(おれ)()うのだ』
169弥次彦(やじひこ)本当(ほんたう)大悪夢(だいあくむ)だよ、170そうれ、171三鷹(みたか)172よい(きび)だ、173アハヽヽ』
174与太彦(よたひこ)『エー言霊(ことたま)(わる)い、175()(なほ)()(なほ)せ』
176音彦(おとひこ)『ヤア、177()いと()へば()(ゆめ)だ、178(わる)いと()へば(わる)(ゆめ)だ。179()(ゆめ)()たと()つて、180油断(ゆだん)をすれば、181(きち)(へん)じて(きよう)となり、182(わる)(ゆめ)()ても、183心得(こころえ)やうに()つては、184(きよう)(へん)じて(きち)となるものだ。185マアマア油断(ゆだん)大敵(たいてき)186得意(とくい)(とき)には()てして(わざはひ)(たね)()くものだ。187災厄(わざはひ)(なや)(とき)こそ(かへつ)喜悦(よろこび)(たね)()(とき)だ。188善悪(ぜんあく)不二(ふじ)189吉凶(きつきよう)同根(どうこん)だ、190ヤア各自(めんめ)()()けねばなりませぬワイ』
191 ()かる(ところ)人馬(じんば)物音(ものおと)ザワザワと、192数十人(すうじふにん)(くろ)(かげ)193三人(さんにん)(まへ)(せま)()たる。
194『ヤアそこに()せり()三人(さんにん)(もの)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)一行(いつかう)であらう、195(われ)こそはウラル(けう)大目付役(おほめつけやく)196鷹掴(たかつかみ)源五郎(げんごらう)だ。197此処(ここ)()せたは(なんぢ)(うん)(つき)198サア尋常(じんじやう)()(まは)せ』
199弥次彦(やじひこ)『それ()たか与太彦(よたひこ)200貴様(きさま)精神(せいしん)(わる)いから、201(ろく)でもない(ゆめ)()よつて、202(またた)(うち)実現(じつげん)して()たぢやないか、203コンナ(ゆめ)ならモウ分配(ぶんぱい)して不用(いら)ぬワイ』
204与太彦(よたひこ)『エー(ゆめ)どころの(はなし)かい、205大変(たいへん)だ。206モシモシ宣伝使(せんでんし)(さま)207コラ一体(いつたい)全体(ぜんたい)どうなるのでせう』
208音彦(おとひこ)『アハヽヽヽ、209(ゆめ)浮世(うきよ)だ、210ウラル(けう)大目付役(おほめつけやく)もやつぱり人間(にんげん)だ、211(ひと)善言美詞(ぜんげんびし)言霊(ことたま)(もつ)言向和(ことむけやは)しませう、212………高天原(たかあまはら)(かみ)(つま)ります………』
213源五郎(げんごらう)『ヤアまがふ(かた)なき三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)214ヤアヤア家来(けらい)者共(ものども)215()かるな、216一度(いちど)()びかかつて、217()()めて(しま)へ』
218弥次彦(やじひこ)『エー仕方(しかた)がない、219血路(けつろ)(ひら)いて一目散(いちもくさん)韋駄天(ゐだてん)(ばし)りだ、220与太公(よたこう)(つづ)けツ』
221()ひながら、222(むら)がる群集(ぐんしふ)(なか)(むか)つて、223鉄拳(てつけん)打振(うちふ)りながら、224一目散(いちもくさん)駆出(かけだ)した。225猛虎(まうこ)(ごと)(すさま)じき(いきほひ)に、226ウラル(けう)捕手(とりて)は、227パツと左右(さいう)(わか)れた。228二人(ふたり)一生懸命(いつしやうけんめい)()()す。229音彦(おとひこ)はその(あと)悠々(いういう)として、230宣伝歌(せんでんか)(うた)ひながら(すす)()く。
231源五郎(げんごらう)『ヤアヤア部下(ぶか)奴共(やつども)232(なん)()腰抜(こしぬけ)だ、233(むか)うは(わづか)三人(さんにん)234五十人(ごじふにん)()ながら、235()(にが)すとは不届(ふとど)きな(やつ)だ、236どうしてウラル(ひこ)神様(かみさま)申訳(まをしわけ)をするのだ、237愚図々々(ぐづぐづ)いたさず、238(おれ)(つづ)いてやつて()い、239今度(こんど)生命(いのち)(まと)進撃(しんげき)するのだ』
240『ヤア御大将(おんたいしやう)241責任(せきにん)はあなたにありますで、242あなたの策戦(さくせん)計画(けいくわく)(よろ)しきを()ないから、243折角(せつかく)(てき)取逃(とりに)がしたのだ。244吾々(われわれ)はその()(かぎ)りの傭人足(やとひにんそく)だけの(こと)より出来(でき)ませぬワイ。245(まへ)さまは、246沢山(たくさん)手当(てあて)(もら)つて御座(ござ)るのだ、247吾々(われわれ)五十人(ごじふにん)(ぶり)もお手当(てあて)(もら)つて()りながら、248あた強欲(がうよく)な、249みなの(あたま)()つて、250栄耀栄華(えいようえいぐわ)(くら)して()るものだから、251たーれも真剣(しんけん)に、252阿呆(あほう)らしくて生命(いのち)がけの仕事(しごと)出来(でき)るものか、253(だけ)(だけ)254(だけ)(はたら)きだ。255(まへ)さまも(だけ)(はたら)きをしなさい。256………オイ(みな)(やつ)257馬鹿気(ばかげ)とるぢやないか、258アンナ(やつ)()ひかけてでも()かうものなら、259それこそ(おれ)ばつかりの難儀(なんぎ)ぢやない、260一家(いつか)親類(しんるゐ)兄弟(きやうだい)(まを)すに(およ)ばず、261女房(にようばう)子供(こども)までが、262どれだけ(なげ)(こと)だらう。263阿呆(あほう)らしい、264目腐(めくさ)(がね)(もら)つて、265この()(なが)いのに、266(あさ)から(ばん)まで酷使(こきつか)はれて、267おまけに夜業(やげふ)まで強制(きやうせい)されて(たま)るものか。268ノー(みな)(やつ)……』
269(おつ)『オーさうださうだ、270なにほど大将(たいしやう)威張(ゐば)つた(ところ)で、271石亀(いしがめ)地団駄(ぢだんだ)だ、272おつつかないワ、273………モシモシ源五郎(げんごらう)親方(おやかた)274(これ)から()けなら()きますが、275ヤツパリ(だけ)(だけ)ぢや、276(だけ)()して(くだ)さらぬか』
277源五郎(げんごらう)現金(げんきん)(やつ)だナア、278(はや)()つて手柄(てがら)(いた)せ、279滅多(めつた)使(つか)ひボカシは(いた)さぬぞ。280ソンナ勘定(かんぢやう)(あと)にして、281危急(ききふ)存亡(そんばう)場合(ばあひ)だ、282(はや)(すす)まぬかし
283(へい)『ヤア前賃(さきちん)(もら)はなくちや、284(はたら)(せい)がないワイ、285モシモシ大将(たいしやう)286幾許(いくら)()しますか』
287源五郎(げんごらう)『エー煩雑(うるさ)(やつ)だな、288愚図々々(ぐづぐづ)して()ると、289(とほ)逃去(にげさ)つて(しま)うワイ』
290(へい)(はし)るのが(いく)ら、291(つか)まへるのが(いく)らですか、292少々(せうせう)(たか)くつても、293つかまへるのはお(ことわ)りしたいものですな』
294源五郎(げんごらう)(はし)つたつて、295ナニ(やく)()つか、296(つか)まへるのが目的(もくてき)だ』
297(へい)(わたくし)(つか)まへるのが目的(もくてき)だ、298(はや)(つか)まへさしなさい。299ドツサリと………何時(いつ)大将(たいしやう)は、300また(あと)から(あと)からと月並式(つきなみしき)仰有(おつしや)るけれど、301(あと)はケロリと(おこり)()ちた(やう)(かほ)して何度(なんべん)催促(さいそく)しても歯切(はぎ)れのせぬ御返辞(ごへんじ)302ヌラリクラリと(うなぎ)でも(つか)むやうに、303(つか)まへ(どころ)のないお(かた)ぢや、304(わたくし)確乎(しつかり)(つか)まへた(うへ)でなければ、305(つか)まへる(こと)はマア()きませうかい。306この(ねむ)たいのに、307生命懸(いのちがけ)仕事(しごと)をしたつて、308(まへ)さまが沢山(たくさん)褒美(ほうび)(もら)つて、309吾々(われわれ)骨折損(ほねをりぞん)草疲儲(くたびれまう)け、310(まか)(ちが)へば(ひと)つよりない生命(いのち)(ぼう)()らねばならぬのだからナア』
311源五郎(げんごらう)『エー(わか)らぬ(やつ)ぢや、312急場(きふば)()()はないぞ、313(はや)(すす)まぬか、314宣伝使(せんでんし)()げてから、315(なに)ほど(はし)つたつて仕方(しかた)がないぞ』
316(かふ)『こちらが一足(ひとあし)(はし)れば(むか)うも一足(ひとあし)(はし)る、317どこまで()つたつてお(つき)さまを(おひ)かけて()くやうなものだ。318マアそれほど大将(たいしやう)319(いそ)ぐには(およ)びませぬワイ、320(いそ)がずば()れざらましを旅人(たびびと)の、321あとより()るる野路(のぢ)夕立(ゆふだち)」……やがて(あめ)()れませう、322あまり(あわ)てるものぢやない、323()いては(こと)仕損(しそん)ずる、324()かねば(こと)()()はぬ、325アーア彼方(あちら)()てれば此方(こちら)()たぬ、326此方(こちら)()てれば彼方(あちら)()たぬ、327両方(りやうはう)()てれば()()たぬ、328(なん)だか()らぬが、329気乗(きの)りがせぬので、330一向(いつかう)(こころ)引立(ひきた)たぬ』
331(おつ)『モウ今頃(いまごろ)には、332大分(だいぶ)(てき)(とほ)()つたであらう』
333(へい)『ナーニ、334さう(とほ)くは()つては()まい、335(きみ)はまだ(とほ)くは()かじ吾袖(わがそで)の、336(たもと)(なみだ)かわき()てねば」まだ(はし)つて()(あせ)(ろく)(かわ)(ひま)()いのだから、337さう五里(ごり)十里(じふり)()つて()気遣(きづかひ)はないワ、338(しか)しこれ(だけ)距離(きより)があれば、339(なに)ほど(はし)つても追付(おひつ)気遣(きづかひ)がないから大丈夫(だいぢやうぶ)だよ』
340源五郎(げんごらう)『エー(かしら)(まは)らな()がまはらぬ………コラ(うま)(やつ)341(あたま)をこちらへ()けぬかい、342()一緒(いつしよ)(まは)すのだぞ……ハイハイ……「カツカツ」……ヤア(みな)(やつ)343源五(げんご)(つづ)け』
344(かふ)『ヘン偉相(えらさう)大将面(たいしやうづら)をしよつて、345源五(げんご)(つづ)けツ……(なに)(ぬか)しよるのだ、346表向(おもてむき)こそ貴様(きさま)()つて()痩馬(やせうま)馬士(まご)ぢやないが、347へーへー、348ハイハイ()つて()れば、349よい()になりよつて、350源五(げんご)野郎(やらう)351言語(げんご)(ぜつ)する(やう)横柄(わうへい)言葉(ことば)使(つか)つて()やがらア。352吾々(われわれ)(もと)より三代相恩(さんだいさうおん)(しゆ)でもなければ、353身内(みうち)でもない、354露骨(ろこつ)()へばアカの他人(たにん)だ。355エー仕方(しかた)がない、356()いて()つたろか、357(これ)もやつぱり銭儲(ぜにまう)けだから………』
358(おつ)(うま)から()ちて(こし)でも()りよると()いのだけれどナ、359彼奴(あいつ)免職(めんしよく)したら、360その後釜(あとがま)此方(こな)さまだ、361とも(かく)(あたま)がつかへて、362吾々(われわれ)栄達(えいたつ)(みち)封鎖(ふうさ)して()るものだから、363()加減(かげん)交迭(かうてつ)しても()かり(さう)なものだ……オイオイ(みな)(やつ)364仕方(しかた)がない(すす)(すす)め』
365 源五郎(げんごらう)馬上(ばじやう)より、366(あと)()(かへ)り、
367『ヤア(みな)(やつ)368(なに)をグヅグヅして()るのか、369(あし)(よわ)(やつ)だな(はや)(つづ)かぬか』
370(へい)『お(まへ)()(あし)371こちらは二本足(にほんあし)だ、372どう勘定(かんぢやう)しても半分(はんぶん)より(ある)けないのは道理(だうり)だ、373こちらは一足(いつそく)そちらは二足(にそく)だ、374二足三文(にそくさんもん)腰抜(こしぬけ)大将(たいしやう)375()加減(かげん)にスツテンコロリと()つくりかへつて()ちて(しま)はぬかいナア』
376 源五郎(げんごらう)烈火(れつくわ)(ごと)(いきどほ)り、377(うま)(かしら)立直(たてなほ)大勢(おほぜい)(なか)()(かへ)(きた)大音声(だいおんぜう)
378『ヤア貴様(きさま)(たち)は、379今日(けふ)(かぎ)つて主人(しゆじん)吾々(われわれ)(たい)して無礼(ぶれい)千万(せんばん)暴言(ばうげん)()(やつ)380今日(こんにち)ただ(いま)より(ひま)(つか)はすから、381さう心得(こころえ)よ』
382『ヤアご立腹(りつぷく)御尤(ごもつと)も、383何時(いつ)もコンナ(こと)は、384()つた(こと)(おも)つた(こと)もございませぬが今日(けふ)(かぎ)つて(なん)だか、385(はら)(なか)から勝手(かつて)にアンナ(こと)喋舌(しやべ)りよるのです。386(けつ)して(けつ)して(はち)や、387(ろく)や、388(しち)()うた(こと)ぢやございませぬ、389(はら)(なか)副守護神(ふくしゆごじん)(ささや)きですから、390(あし)からず、391神直日(かむなほひ)大直日(おほなほひ)見直(みなほ)聞直(ききなほ)し、392(うま)から()ちたら、393また痩馬(やせうま)になつと()(なほ)(くだ)さいませ……』
394『ハテ合点(がてん)()かぬ(こと)だ、395貴様(きさま)三五教(あななひけう)のやうな(こと)()(やつ)だナ』
396(かふ)三五教(あななひけう)眷属(けんぞく)が、397吾々(われわれ)(くち)()つてご託宣(たくせん)(あそ)ばすのだ……コリヤコリヤ源五郎(げんごらう)398その(はう)今日(けふ)より免職(めんしよく)()(わた)す、399その(うま)(はつ)チヤンを()せて、400その(はう)(うま)口取(くちとり)(いた)せ』
401『ハテ、402けつたいな(こと)になつて()たワイ、403何奴(どいつ)此奴(こいつ)も、404両手(りやうて)()んで身体(からだ)(ゆす)つて()よる……ハハア此奴(こいつ)あ、405神懸(かむがか)りになりよつたな。406こりや(たま)らぬ、407如何(どん)珍事(ちんじ)突発(とつぱつ)するやも(はか)(がた)し、408君子(くんし)(あやふ)きに近寄(ちかよ)らず、409(てき)(なか)にも味方(みかた)あり、410味方(みかた)(なか)大敵(たいてき)ありだ』
411無性(むしやう)矢鱈(やたら)(うま)(むちう)ち、412一生懸命(いつしやうけんめい)駆出(かけだ)した。413(うま)(なに)(おどろ)いたか、414(にはか)前足(まへあし)()かして直立(ちよくりつ)し、415(いきほひ)あまつて仰向(あふむけ)にドサンと転倒(てんたう)した。416源五郎(げんごらう)(うま)()(おさ)へられ、417(かはず)をぶつつけた(やう)手足(てあし)をビリビリと(ふる)はし、418二声(ふたこゑ)三声(みこゑ)ウンウンと()つたぎり縡切(ことき)れにけり。
419八公(はちこう)『ヤアまるで(かへる)()たいなものだ、420フン()びて()るワ、421(ふたた)生蛙(いきかへる)()気遣(きづか)ひはないワ、422アーア人間(にんげん)()うなると(もろ)いものだナ、423万物(ばんぶつ)霊長(れいちやう)だナンテ威張(ゐばり)()らして()つても、424()(あし)背中(せなか)(おさ)へられて、425ウンと一声(ひとこゑ)この()(わか)れ、426(いや)冥途(めいど)死出(しで)(たび)427(あは)れなりける次第(しだい)なりだ。428………ヤア(うま)()いた、429サア(これ)から(おれ)大将(たいしやう)だ、430(みな)(やつ)431この(はち)大将(たいしやう)(つづ)いて(きた)れ』
432六公(ろくこう)(つづ)いて()かぬ(こと)もないがやつぱり(だけ)(だけ)ぢや』
433八公(はちこう)『また神懸(かみがか)りになりよつたな、434エー仕方(しかた)がない、435(ひと)使(つか)へば()使(つか)ふ、436自分(じぶん)一人(ひとり)これから(はし)つて、437あの宣伝使(せんでんし)(つか)まへねばなるまい』
438(うま)()(すて)て、439裸足(はだし)(まま)440(しり)ひつからげて、441(たうげ)()がけて駆出(かけだ)したり。
442 (はなし)(かは)つて音彦(おとひこ)弥次彦(やじひこ)443与太彦(よたひこ)(とも)に、444爪先(つまさき)(あが)りの坂路(さかみち)()けて、445右手(みぎて)()り、446原野(げんや)正中(まんなか)韋駄天(ゐだてん)(ばし)りにトントンと、447マラソン競争(きやうさう)をやつて()た。448ピタリと大河(おほかは)行詰(ゆきつ)まつた。449両岸(りやうがん)断巌絶壁(だんがんぜつぺき)(かこ)まれ、450河幅(かははば)(わり)には非常(ひじやう)(ふか)く、451(かつ)急流(きふりう)にして、452水音(みなおと)囂々(がうがう)(とどろ)いて()る。
453音彦(おとひこ)『アヽ此奴(こいつ)大変(たいへん)だ、454どこぞ(はし)がありさうなものだナア』
455とキヨロキヨロと(かは)上流(じやうりう)下流(かりう)(なが)めて()た。456二三丁(にさんちやう)下手(しもて)(あた)つて丸木橋(まるきばし)()える。
457音彦(おとひこ)『ヨー彼処(あこ)(はし)(かか)つて()るぞ』
458(また)もや三人(さんにん)はトントントンと(はし)()した。459橋詰(はしづめ)()()れば、460一抱(ひとかか)へもあらうと(おも)丸木橋(まるきばし)架々(かか)つて()る。461三人(さんにん)(いきほ)ひを()てて一散走(いつさんばし)りに無難(ぶなん)(むか)(ぎし)(わた)り、462(てき)追跡(つゐせき)遮断(しやだん)するため、463丸木橋(まるきばし)(おと)して(しま)つた。464さうする(うち)に、
465『オーイオーイ』
466八公(はちこう)一隊(いつたい)(はるか)後方(こうはう)より()んで()る。
467弥次彦(やじひこ)『アハヽヽ、468モウ大丈夫(だいぢやうぶ)だ、469この(はし)さへ(おと)しておけば、470()()気遣(きづか)ひはない。471マアゆつくりと、472宣伝使(せんでんし)(さま)一服(いつぷく)(いた)しませうか』
473音彦(おとひこ)()からう、474(まへ)たちも(あし)草臥(くたび)れただらう、475三人(さんにん)此処(ここ)でゆつくりと休息(きうそく)して、476(てき)襲来(しふらい)するのを見物(けんぶつ)しようかい』
477『コリヤ面白(おもしろ)い』
478三人(さんにん)(こし)芝草(しばくさ)(うへ)に、479ドカリと()ろし、480大船(おほふね)()つた(やう)心持(こころもち)になつて、481()(よこ)たへて()る。482(かたはら)雑草(ざつさう)(しげ)みより、483覆面(ふくめん)した四五人(しごにん)(をとこ)ヌツト(あら)はれ、
484『サア貴様(きさま)三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)485吾等(われら)計略(けいりやく)(わな)にかかつたのは、486汝等(なんぢら)(うん)()き、487サア尋常(じんじやう)()(まは)せ』
488弥次彦(やじひこ)宣伝使(せんでんし)(さま)489神言(かみごと)()つて(くだ)さいナ』
490音彦(おとひこ)『コンナ四足(よつあし)人間(にんげん)神言(かみごと)()つた(ところ)で、491(めくら)(へび)()ぢずだ、492勿体(もつたい)ないことを()らぬ(やつ)(なに)()つたつて駄目(だめ)だ、493三十六計(さんじふろくけい)(おく)()だ』
494()(なが)(また)もやトントントンと駆出(かけだ)した。495黒頭巾(くろづきん)大男(おほをとこ)は、496一丁(いつちやう)(ばか)(おく)れて追跡(つゐせき)して()る。497ピタツと行当(ゆきあた)つた一棟(ひとむね)()なり(おほ)きな(やかた)がある、498三人(さんにん)矢庭(やには)(もん)(くぐ)つて、499(なか)よりピシヤリと()()(ぢやう)をおろし、500(おく)(すす)んで()く。501()れば、502かなり(おほ)きな土間(どま)があつて、503七八人(しちはちにん)荒男(あらをとこ)()()()(したた)出刄(でば)(たづさ)へ、504(なん)だか料理(れうり)をして()る。
505(をとこ)『ヤアいい(ところ)椋鳥(むくどり)()んで()よつた、506サア三人(さんにん)()らぬと(おも)つて()(ところ)507有難(ありがた)いものだ、508都合(つがふ)()(とき)はコンナもの、509ドーレ早速(さつそく)料理(れうり)をやらうかい』
510 その(うち)一人(ひとり)(をとこ)511一方(いつぱう)板戸(いたど)()(そそ)ぎ、512三人(さんにん)(むか)つて目配(めくば)せした。513音彦(おとひこ)合点(がてん)だと板戸(いたど)()せば、514()もなくプリンと()いた。515三人(さんにん)矢庭(やには)()(うち)駆込(かけこ)んだ。516さうして(なか)より(かぎ)をかけて追跡(つゐせき)(ふせ)ぎつつ、517四辺(あたり)()れば、518(ひろ)大道(だいだう)(つう)じて()る。
519音彦(おとひこ)『ヤア有難(ありがた)い、520(てき)(なか)にも味方(みかた)があるとはこの(こと)だ、521弥次(やじ)サン、522与太(よた)サン、523(わたし)(つづ)いてお(いで)
524一生懸命(いつしやうけんめい)駆出(かけだ)し、525四五丁(しごちやう)(すす)めば、526(みち)両側(りやうがは)には、527泥深(どろふか)沼田(ぬまた)(なら)んで()る。
528『ヤア此奴(こいつ)一筋道(ひとすぢみち)だ、529(すす)(すす)め』
530七八丁(しちはつちやう)(さき)(すす)んだ。531弥次彦(やじひこ)532与太彦(よたひこ)はどうした(はづみ)沼田(ぬまた)(なか)()()み、533着物(きもの)(なん)にも(どろ)まぶれになり、534(おも)たくて身動(みうご)きが出来(でき)ぬ、535()むを()二人(ふたり)真裸(まつぱだか)となる。536(むか)ふの(はう)より(いろ)(くろ)()(たか)い、537(かほ)(とが)つた(をとこ)一人(ひとり)(あら)はれ(きた)り、538三人(さんにん)姿(すがた)をジロジロと()まはして()る。
539音彦(おとひこ)『ヤアお(まへ)はウラル(けう)目付(めつけ)だらう、540邪魔(じやま)ひろぐと(ため)にはならぬぞ』
541 (をとこ)(いや)らしき笑顔(ゑがほ)(なが)ら、
542『モウ()うなつては駄目(だめ)だよ、543観念(かんねん)したがよからう』
544 (あと)振返(ふりかへ)()れば数十人(すうじふにん)捕手(とりて)545突棒(つくぼう)546叉股(さすまた)547手鎗(てやり)(ひつさ)げ、548一筋道(ひとすぢみち)()ひかけ(きた)る。549この(あひだ)距離(きより)わづかに四五丁(しごちやう)(ばか)りである。550音彦(おとひこ)二人(ふたり)(はだか)(とも)に、551目付(めつけ)(をとこ)沼田(どろた)(なか)押込(おしこ)みながら、552爪先(つまさき)(あが)りの一間巾(いつけんはば)(くらゐ)(みち)をトントントンと駆出(かけだ)した。553(にはか)(けは)しい坂路(さかみち)になつて()た。554一丁(いつちやう)(ばか)(すす)んで(いき)()れむとする(とき)555(また)もや三人(さんにん)(をとこ)(あら)はれ()たり、
556『ヤア()つて()()(ところ)()た、557(おれ)はウラル(けう)目付役(めつけやく)だぞ』
558音彦(おとひこ)『ナンダ、559ウラル(けう)目付役(めつけやく)とな、560ゴテゴテ(ぬか)すと(ため)にならぬぞ、561スツコメ スツコメ』
562目付(めつけ)此処(ここ)はどこだと(かんが)へて()る、563小鹿峠(こしかたうげ)四十八坂(しじふはちさか)(ひと)つだ。564これから(さき)()けば()(ほど)565(みち)(さか)しくなつて()る、566ウラル(けう)目付(めつけ)数百人(すうひやくにん)567手具脛(てぐすね)ひいて貴様(きさま)()つて()るのだ、568あれ()よ、569(あと)からは沢山(たくさん)捕手(とりて)があの(とほ)りやつて()る、570(さき)には沢山(たくさん)待構(まちかま)へて()る、571グヅグヅ(いた)すより、572(てい)よく(おれ)降参(かうさん)(いた)して、573吾等(われら)手柄(てがら)にさして()れ、574冥途(めいど)土産(みやげ)だ、575キツト極楽(ごくらく)陥落(かんらく)するだらう』
576音彦(おとひこ)『エー面倒(めんだう)だ、577モウ()うなつては善言美詞(ぜんげんびし)もあつたものぢやない、578(ひと)大法螺(おほぼら)()いて(おどろ)かしてやらう………この(はう)こそは閻魔(えんま)(ちやう)より(あら)はれ()でたる艮彦(うしとらひこ)大神(おほかみ)だぞ、579失敬(しつけい)千万(せんばん)な、580三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)とは、581(なん)()見当違(けんたうちがひ)(こと)(まを)す、582この(はう)(ひと)四股(しこ)()めば、583小鹿峠(こしかたうげ)(またた)()にガラガラガラ、584(ひだり)(あし)をドンと()()らせば、585貴様(きさま)(やう)端下(はした)人足(にんそく)千人(せんにん)万人(まんにん)一度(いちど)(かぜ)()()()(ごと)く、586中天(ちうてん)舞上(まひあが)り、587バラバラバラ、588泥田(どろた)(なか)にズツテンドウと()逆様(さかさま)だ』
589弥次彦(やじひこ)(てん)から(くだ)つた(かみ)弥次彦(やじひこ)さまだ、590裸百貫(はだかひやくかん)地上(ちじやう)(やつ)(ぬか)せども、591(おれ)(ちから)百万貫(ひやくまんくわん)だ、592二人(ふたり)(あは)して二百万貫(にひやくまんくわん)593サアどうぢや、594(みぎ)(あし)四股(しこ)()まうか、595(ひだり)(あし)()まうか()んだが最後(さいご)596小鹿峠(こしかたうげ)(いは)(たまご)(くだ)くやうにガラガラとも、597メチヤメチヤとも()はず、598ピシヤリと(ねぎ)のやうに平茶張(へちやば)つて(しま)うぞ、599それでも貴様(きさま)合点(がつてん)か』
600目付(めつけ)『ヤアヤア大変(たいへん)豪傑(がうけつ)()よつたものだ、601オイオイじつとしたじつとした、602(あし)(うご)かすな、603(ある)くのなら、604さし(あし)だ、605ぬき(あし)だ』
606弥次彦(やじひこ)(ひと)四股(しこ)(ふン)だらうか』
607音彦(おとひこ)『ヤア()つた()つた、608(あぶ)ないぞ(あぶ)ないぞ、609(あと)がないぞ(あと)がないぞ、610ハツケヨイヤ、611ハー』
612弥次彦(やじひこ)『アハヽヽヽ、613()(した)開山(かいざん)蛇塚(へびづか)蛇五左衛門(じやござゑもん)614横綱(よこづな)()つた摩利支天(まりしてん)再来(さいらい)だ、615仕方(しかた)がない、616貴様(きさま)(たす)けるためにソーツと(ある)いて()つてやらう、617有難(ありがた)(おも)へ……』
618三人(さんにん)(わざ)と、619ノソリノソリと(のぼ)つて()く。620前方(ぜんぱう)よりは数百(すうひやく)人数(にんず)621()()柄物(えもの)(たづさ)(くだ)つて()る。622後方(こうはう)よりは(また)もや数十人(すうじふにん)捕手(とりて)刻々(こくこく)近付(ちかづ)いて()る。623一方(いつぱう)屏風(びやうぶ)()てた(やう)岩壁(がんぺき)624一方(いつぱう)千仭(せんじん)谷間(たにま)625進退(しんたい)()(きは)まり、626()げるにも()げられず、
627『エー仕方(しかた)がない、628モウ()うなる(うへ)は、629(やぶ)(かぶ)れだ。630サア()勝負(しようぶ)
631三人(さんにん)一度(いちど)拳骨(げんこつ)(かた)め、632捕手(とりて)(なか)(あば)()んで(あた)るを(さいは)(なぐ)()てる。633数多(あまた)捕手(とりて)(むらが)(きた)つて、634(いま)三人(さんにん)(とら)へむとする(とき)635三人(さんにん)逃路(にげみち)(うしな)ひ、636()()()つの(こゑ)諸共(もろとも)637決死(けつし)覚悟(かくご)谷間(たにま)()がけて飛込(とびこ)みたり…その途端(とたん)(おどろ)いて()()けば、638瑞月(ずゐげつ)高熊山(たかくまやま)巌窟(がんくつ)(よこ)たはり()たり。639二月(にぐわつ)十五日(じふごにち)太陽(たいやう)煌々(くわうくわう)として中天(ちうてん)(かがや)(わた)りける。
640大正一一・三・二一 旧二・二三 松村真澄録)
   
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