霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
目 次設 定
設定
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
フォント

ルビの表示



アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注 [?][※]や[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。まだ少ししか付いていませんが、目障りな場合は「表示しない」設定に変えて下さい。ただし[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]


文字の色
背景の色
ルビの色
傍点の色 [?]底本で傍点(圏点)が付いている文字は、『霊界物語ネット』では太字で表示されますが、その色を変えます。[×閉じる]
外字1の色 [?]この設定は現在使われておりません。[×閉じる]
外字2の色 [?]文字がフォントに存在せず、画像を使っている場合がありますが、その画像の周囲の色を変えます。[×閉じる]

  

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。


マーキングパネル
設定パネルで「全てのアンカーを表示」させてアンカーをクリックして下さい。

【引数の設定例】 &mky=a010-a021a034  アンカー010から021と、034を、イエローでマーキング。

          

第九章 (たま)黒点(こくてん)〔九五〇〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第34巻 海洋万里 酉の巻 篇:第2篇 有情無情 よみ:うじょうむじょう
章:第9章 第34巻 よみ:たまのこくてん 通し章番号:950
口述日:1922(大正11)年09月13日(旧07月22日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年12月10日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
筑紫ヶ岳の山脈の中心である高山峠に、四五人の男たちが車座になって座っている。
玉公という男は、昔父親が日の出神の案内をした際にいただいた家宝の水晶玉に、このごろ黒い点が現れて、水晶玉による判じものの邪魔をして困っていると言う。黒姫が筑紫の島にやってきたことが国魂に悪い影響を与えているのではないかと疑っている。
一方、建日別命の一人娘である建能姫にこのごろ立派な婿ができ、建野ヶ原の神館に後継ぎができた慶事があったことを噂し合っていた。また、玉公は黒姫は国魂に災いを及ぼす人間に違いないからといきり立っている。
そこへ黒姫が山道を一人でやってきて、筑紫の島に高山彦という宣伝使が来ていないかを尋ねた。男たちの一人・虎公は、高山彦は筑紫の島で日の出の勢いで活動しており、愛子姫という若い奥方をもらって暮らしていると答えた。
黒姫はそれを聞いてはらはらと涙をこぼし、男たちに自分が黒姫であり、高山彦の本妻であると告げた。しかし男たちは、筑紫の島の高山彦は若い男であり、釣り合わないと不審に思う。
それでも玉公は、自分は黒姫を滅ぼそうと思っていたが、神徳高い高山彦の本妻であったとなると手出しをするわけにはいかないと、黒姫にいきさつを糾す。
虎公は、黒姫が三十五年前に生き別れた男の子がいるという話を聞いて、建野ヶ原の後継ぎ婿になった建国別は、ちょうど孤児であり年のころも一致することに思い至り黒姫に告げた。黒姫は、建国別が自分の息子かもしれないと思い至る。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm3409
愛善世界社版:115頁 八幡書店版:第6輯 403頁 修補版: 校定版:121頁 普及版:47頁 初版: ページ備考:
001 筑紫ケ岳(つくしがだけ)山脈(さんみやく)中心(ちうしん)002高山峠(たかやまたうげ)頂上(ちやうじやう)四五人(しごにん)(をとこ)003車座(くるまざ)になつて何事(なにごと)(ささや)(なが)ら、004白黒(しろくろ)(いし)(すな)(うへ)(なら)べ、005烏鷺(うろ)(あらそ)うてゐる。
006(かふ)『どうも()うも(この)(くろ)がしぶとうて、007邪魔(じやま)んなつて仕方(しかた)がない。008此奴(こいつ)(ひと)(ころ)して(しま)ふと(あと)大勝利(だいしようり)になるんだがなア』
009(おつ)馬鹿(ばか)()へ、010(この)()(なか)苦労(くらう)(くろ))が肝腎(かんじん)だ。011苦労(くらう)なしに物事(ものごと)成就(じやうじゆ)すると(おも)ふか』
012(かふ)『すべての汚濁(をだく)(くも)りや、013(ちり)(あくた)(のぞ)()つた純白(じゆんぱく)(この)(いし)は、014(まる)神様(かみさま)御霊(みたま)(やう)なものだ。015()()よ、016(なか)(まで)水晶(すゐしやう)(やう)()(とほ)つてゐるぢやないか。017(おれ)(おやぢ)(むかし)()出神(でのかみ)(さま)()(くに)御出(おい)でになつた(とき)018御案内(ごあんない)(まを)した御礼(おれい)として、019水晶玉(すいしやうだま)(くだ)さつたが、020(いま)(おれ)(とこ)家宝(かほう)として、021大切(たいせつ)保存(ほぞん)してあるが、022(その)水晶玉(すいしやうだま)(まへ)()つて、023(なん)でも御尋(おたづ)ねすると、024宇宙(うちう)森羅万象(しんらばんしやう)がスツカリ(うつ)るのだ。025それに(この)(ごろ)如何(どう)したものか、026二三日前(にさんにちまへ)から水晶玉(すいしやうだま)一部(いちぶ)黒点(こくてん)出来(でき)よつて、027非常(ひじやう)()つともなくなり、028九分九厘(くぶくりん)()(ところ)(まで)何事(なにごと)判然(はんぜん)(わか)らして(もら)へるが、029(その)一厘(いちりん)黒点(こくてん)(ため)遺憾(ゐかん)(なが)ら、030十分(じふぶん)判断(はんだん)がつかなくなつて(しま)つたのだ。031それだから(くろ)面白(おもしろ)くない、032(ころ)して(しま)へと()ふのだよ。033(くろ)(やつ)(ろく)なものがあるかい、034三五教(あななひけう)黒姫(くろひめ)とかいふ真黒(まつくろ)けの(ばば)アが、035(なん)でも(この)筑紫島(つくしじま)(わた)つて()よつたに(ちがひ)ないのだ。036さうでなければ、037国玉(くにたま)とも(たと)ふべき水晶玉(すいしやうだま)黒点(こくてん)(あら)はれる(はず)がない。038それで(いま)此処(ここ)でお前達(まへたち)白黒(しろくろ)勝負(しようぶ)(たたか)はしたのも、039(ひと)つは水晶玉(すいしやうだま)如何(どう)なるか、040黒姫(くろひめ)(はた)して(この)(くに)邪魔(じやま)をするか……と()(こと)(うら)なつたのだ。041どうしても(この)(くろ)(いし)邪魔(じやま)になつて仕方(しかた)がないワイ』
042(へい)(この)(くろ)(いし)(ころ)すと()つたつて、043(もと)から鉱物(くわうぶつ)だ。044動植物(どうしよくぶつ)(ちが)つて、045生命(いのち)をとる(わけ)にも()かず、046()(たふ)して()らす(わけ)にも()かぬぢやないか』
047(かふ)『それよりも、048建野ケ原(たけのがはら)神館(かむやかた)建能姫(たけのひめ)さまは、049(この)(ごろ)立派(りつぱ)婿様(むこさま)出来(でけ)たぢやないか。050(なん)でも建国別(たけくにわけ)()立派(りつぱ)宣伝使(せんでんし)だと()いたがなア』
051(へい)建能姫(たけのひめ)さまは建日(たけひ)岩窟(がんくつ)(やかた)(かま)へて御座(ござ)つた建日別命(たけひわけのみこと)一人娘(ひとりむすめ)で、052(なが)らく神様(かみさま)(みち)宣伝(せんでん)してゐられたが、053(あま)(をとこ)沢山(たくさん)参拝(さんぱい)して(さけ)()うた揚句(あげく)054(その)美貌(びばう)(うつつ)をぬかし、055(なん)だかだと()()つて、056蒼蝿(うるさ)くて()まらないから、057独身(どくしん)主義(しゆぎ)()つて()られた建能姫(たけのひめ)さまも、058到頭(たうとう)決心(けつしん)なさつて、059建野ケ原(たけのがはら)宿替(やどが)へをなされたのだよ』
060(おつ)貴様(きさま)建能姫(たけのひめ)肱鉄(ひぢてつ)()はされた一人(ひとり)だらう……(いや)一人(ひとり)でなくて猥褻(わいせつ)行為(かうゐ)犯人(はんにん)だらう、061アハヽヽヽ』
062(へい)馬鹿(ばか)()ふない。063建能姫(たけのひめ)さまは体中(からだぢう)から(なん)とも()へぬ水晶玉(すいしやうだま)(やう)(ひかり)()えず放射(はうしや)してゐるのだから、064到底(たうてい)吾々(われわれ)凡夫(ぼんぶ)がお(そば)へでも()りつかうものなら、065()れこそ()(つぶ)れて(しま)ふワ。066(なん)でも(いろ)(くろ)い、067(はな)(まが)がつた(をとこ)が、068水晶玉(すいしやうだま)(ふところ)()れて()きよつてなア、069建能姫(たけのひめ)さまに面会(めんくわい)し……これは(わが)()(つた)はる重宝(ぢうほう)御座(ござ)います、070これを貴女(あなた)献上(けんじやう)(いた)します……としたり(がほ)差出(さしだ)した(ところ)071建能姫(たけのひめ)(さま)(いや)(さう)顔付(かほつき)(なが)ら、072ソツと()受取(うけと)り、073クルクルと(ころ)がして()て……ハハー(この)水晶玉(すいしやうだま)には恋慕(れんぼ)()執着心(しふちやくしん)黒点(こくてん)(あら)はれてゐるから、074折角(せつかく)(なが)御返(おかへ)(まを)します……と無下(むげ)につき(かへ)された馬鹿者(ばかもの)があると()(こと)だ。075それで(その)(をとこ)(たま)黒点(こくてん)()になつて(たま)らず、076()うぞして(この)黒点(こくてん)()れたならば、077建能姫(たけのひめ)(さま)(たてまつ)り、078歓心(くわんしん)()うて、079ソツと婿(むこ)にならうと()野心(やしん)があるのだ。080(その)野心(やしん)()れぬ(あひだ)は、081何程(なにほど)()出神(でのかみ)から(いただ)いた水晶玉(すいしやうだま)でも(その)黒点(こくてん)()れはせないよ』
082()(なが)ら、083(やや)冷笑(れいせう)気味(ぎみ)(かふ)(かほ)をグツと見上(みあ)げる。084(かふ)電気(でんき)にでも()たれた(やう)(むね)(とどろ)かせ(なが)ら、085(かほ)(あか)らめて沈黙(ちんもく)()る。
086(てい)『それで玉公(たまこう)が、087黒姫(くろひめ)がどうの()うのと()つて()やがるのだな。088白石(しろいし)()けて黒石(くろいし)()つた(とき)089掌中(しやうちう)(たま)()られた(やう)顔色(がんしよく)をしよつたと(おも)うたら、090そんな深遠(しんゑん)計略(けいりやく)があつたのか、091アハヽヽヽ、092……(しの)ぶれど(いろ)()にけり(わが)(こひ)は、093(もの)(おも)うと(ひと)()(まで)……とか()百人一首(ひやくにんいつしゆ)(うた)そつくりだな』
094(おつ)『オイ玉公(たまこう)095そんな(くも)りのある水晶玉(すいしやうだま)は、096貴様(きさま)(とこ)不吉(ふきつ)だから、097いい加減(かげん)(かは)へでも()()んで(しま)つたら如何(どう)だ。098(わざはひ)(きた)(まへ)にはキツト(たから)(おもて)(くろ)(かげ)がさすと()(こと)だ。099人間(にんげん)面体(めんてい)だつて、100凶事(きようじ)(きた)(まへ)は、101どこともなしに、102(くろ)ずんだ斑点(はんてん)(あら)はれるのだからなア』
103 (かふ)(ちから)()げに、
104玉公(たまこう)()てよといつた(ところ)で、105(おやぢ)()()け、106どんな(こと)があつても、107(この)(たま)(わが)()()(こと)出来(でき)ぬ。108それ(とも)(たふと)神様(かみさま)(あら)はれなさつたならば献上(けんじやう)して()いが、109(けつ)して(ひと)()つたり(ゆづ)つたり、110()てちやならぬと、111()んだ(おやぢ)遺言(ゆゐごん)だから、112(おれ)自由(じいう)にはならないのだ。113建能姫(たけのひめ)(さま)御受取(おうけと)(くだ)さらねば、114もう仕方(しかた)がない、115(この)(たま)黒点(こくてん)()れる(まで)116御祈願(ごきぐわん)をこらして()(つつし)むより、117(おれ)には方法(はうはふ)がないのだ。118(しか)(おれ)(かんが)ヘでは、119如何(どう)しても(この)筑紫島(つくしじま)黒姫(くろひめ)がやつて()たに(ちがひ)ない、120本当(ほんたう)(こま)つた(やつ)()たものだ。121()出神(でのかみ)(さま)のやうな(かた)がお()でになれば、122(この)(たま)益々(ますます)(ひか)(かがや)くのだが、123黒点(こくてん)次第(しだい)々々(しだい)(ひろ)がつて、124(この)(ごろ)では半透明(はんとうめい)(くも)つて(しま)つた。125あの(たま)黒点(こくてん)から(かんが)へて()ると、126どうしても黒姫(くろひめ)()(やつ)127今日(けふ)(この)(ごろ)(この)(たうげ)のあたりへ近付(ちかづ)いて()象徴(かたち)()える。128それで(じつ)(ところ)はお前達(まへたち)無花果(いちじゆく)()りにかこつけて、129ここ(まで)(さそ)うて()たのだ。130(その)(ついで)に、131白黒石(しろくろいし)勝負(しようぶ)をやつて()たのだ。132こりや如何(どう)しても(くろ)(さは)つてゐる。133黒姫(くろひめ)を……(いや)黒石(くろいし)(たた)()つて(しま)はねば、134(この)(くに)はサツパリ駄目(だめ)だよ。135水晶玉(すいしやうだま)筑紫(つくし)(しま)がサツパリ泥水(どろみづ)になつちや(たま)らない。136国魂(くにたま)神様(かみさま)(この)()水晶(すゐしやう)御澄(おすま)(あそ)ばす純世姫命(すみよひめのみこと)だ。137(おれ)(とこ)秘蔵(ひざう)水晶玉(すいしやうだま)は、138()はば純世姫(すみよひめ)(さま)国玉(くにたま)だ。139どうかして(くろ)()のつく(もの)(ほろ)ぼして(しま)はなくちや、140国家(こくか)一大事(いちだいじ)だよ』
141(てい)『そんな(ちつ)ぽけな水晶玉(すいしやうだま)に、142広大無辺(くわうだいむへん)のアフリカの国魂神様(くにたまがみさま)(うつ)つて御座(ござ)るとは、143チと理屈(りくつ)(あは)ぬぢやないか』
144玉公(たまこう)馬鹿(ばか)()ふな。145伸縮(しんしゆく)自在(じざい)活動(くわつどう)(あそ)ばすのが、146所謂(いはゆる)神様(かみさま)御高徳(ごかうとく)だ。147至大無外(しだいむぐわい)148至小無内(しせうむない)149無遠近(むゑんきん)150無広狭(むくわうけふ)151無明暗(むめいあん)152過去(くわこ)153現在(げんざい)154未来(みらい)(ただ)一塊(いつくわい)水晶玉(すいしやうだま)(あつ)めて、155俺達(おれたち)(てのひら)(たま)(ころ)がす(やう)に、156自由自在(じいうじざい)になさるのが神様(かみさま)だ。157(その)神様(かみさま)御霊(みたま)があの(やう)(くも)りかけたのだから、158吾々(われわれ)筑紫島(つくしじま)人間(にんげん)はウカウカしては()られないのだ。159前達(まへたち)(すぐ)建能姫(たけのひめ)(さま)(おれ)恋慕(れんぼ)をして()(やう)に、160(めう)(ところ)凡夫心(ぼんぷごころ)発揮(はつき)しよるが、161そんな陽気(やうき)(こと)ぢやない。162(いま)地異(ちい)天変(てんぺん)何時(いつ)突発(とつぱつ)するか(わか)つたものぢやないぞ。163最前(さいぜん)暴風雨(ばうふうう)だつて、164(ここ)二十年(にじふねん)三十年(さんじふねん)165()いた(こと)がない()(かた)ぢやないか。166(おほ)きな(いは)()()(ごと)くドンドンと()つて()る、167大木(たいぼく)()から(たふ)れる、168()(えだ)()ける、169無花果(いちじゆく)(やう)(あめ)()る。170よく(かんが)へて()よ。171こりや(けつ)して(ただ)(こと)ぢやないぞ』
172 ()(はな)(ところ)へ、173蓑笠(みのかさ)草鞋(わらぢ)脚絆(きやはん)金剛杖(こんがうづゑ)(かる)扮装(いでたち)にて、174コツンコツンと、175坂路(さかみち)(たた)(なが)(のぼ)つて()一人(ひとり)中婆(ちうばば)アがあつた。176()れは()はずと()れた三五教(あななひけう)黒姫(くろひめ)である。
177 黒姫(くろひめ)(やうや)頂上(ちやうじやう)(のぼ)()め、178ヤツと一安心(ひとあんしん)したものの(ごと)く、179(ひだり)()金剛杖(こんがうづゑ)(かた)(にぎ)(からだ)をグツト(ささ)へ、180(みぎ)()(こぶし)(かた)めて、181(こし)()()()(たた)き、
182『アーア』
183()(なが)ら、184グツと背伸(せの)びをした途端(とたん)に、185五人(ごにん)(をとこ)車座(くるまざ)になつて、186(なに)(ささや)いてゐるのに()がつき、187黒姫(くろひめ)は、
188『モシモシそこに御座(ござ)るお(わか)御方(おかた)189一寸(ちよつと)(もの)をお(たづ)(いた)しますが、190()(くに)には高山彦(たかやまひこ)といふ(たふと)宣伝使(せんでんし)御見(おみ)えになつてをると()ふことを、191()きぢや御座(ござ)いませぬか』
192(おつ)何処(どこ)(ばば)アか()らぬが、193(この)山路(やまみち)大胆(だいたん)至極(しごく)にも一人旅(ひとりたび)とは如何(どう)したものだ。194高山彦(たかやまひこ)(さま)()(うへ)(たづ)ねて、195(まへ)(なん)とする(かんが)へだ』
196(へい)『オイ虎公(とらこう)197(あま)りぞんざいな(もの)()ひをしちやならぬよ。198高山彦(たかやまひこ)(さま)のお()アさまかも()れないからなア』
199虎公(とらこう)『モシモシ貴女(あなた)御子息(ごしそく)所在(ありか)(たづ)ねて、200はるばる此処迄(ここまで)201御出(おい)でになつたのですか』
202黒姫(くろひめ)『イエイエ(わたくし)高山彦(たかやまひこ)(つま)御座(ござ)います。203(をつと)(あと)(した)うて此処迄(ここまで)(まゐ)りました。204高山彦(たかやまひこ)さまは御無事(ごぶじ)でゐらつしやいますかな』
205虎公(とらこう)御無事(ごぶじ)御無事(ごぶじ)206(それ)(それ)大変(たいへん)(いきほ)ひだ。207乍併(しかしながら)208(まへ)さまが高山彦(たかやまひこ)(さま)女房(にようばう)とはチツと合点(がてん)のゆかぬ(はなし)だ。209愛子姫(あいこひめ)(さま)といふ立派(りつぱ)奥様(おくさま)御座(ござ)るのに、210(まへ)(やう)(こし)(まが)りかけた()アさまを女房(にようばう)にお()ちなさるとは、211チツと可笑(をか)しいぢやないか、212ソリヤ大方(おほかた)人違(ひとちがひ)だらう。213(おら)(また)そんな年老(としよ)りが(をとこ)(あと)(した)うて()ると()(こと)は、214(むかし)から()いた(こと)がない、215息子(むすこ)間違(まちがひ)ぢやないかな』
216黒姫(くろひめ)(わたし)息子(むすこ)があつたのだけれど、217(わか)(とき)世間(せけん)外聞(ぐわいぶん)(わる)いと()つて、218四辻(よつつじ)()て、219(ひと)(ひろ)はしたのだ。220(その)天罰(てんばつ)(をつと)には(わか)れる、221(わが)()行方(ゆくへ)()れず、222(とし)追々(おひおひ)()つてくる、223自分(じぶん)()はなし、224(ちから)とするのは神様(かみさま)高山彦(たかやまひこ)(をつと)(ばか)りだ。225(その)高山彦(たかやまひこ)さまに(わか)女房(にようばう)があるとは、226(うそ)ぢや御座(ござ)いますまいかなア』
227虎公(とらこう)(けつ)して(うそ)()ひませぬ。228一言(ひとこと)でも(うそ)()はふものなら、229国魂神様(くにたまがみさま)(ばち)(あた)つて、230(たちま)(くち)(ゆが)んで(しま)ひます。231(この)熊襲(くまそ)(くに)人間(にんげん)(くち)(ゆが)んだ(やつ)(おほ)いのは、232(みな)(うそ)()つて神罰(しんばつ)()けた(やつ)(ばか)りですよ、233なア新公(しんこう)
234新公(しんこう)『オウそうともそうとも、235(おそ)ろしいて、236(うそ)のウの()()はれたものぢやない』
237黒姫(くろひめ)『あゝそうですかなア。238折角(せつかく)此処迄(ここまで)(なが)海山(うみやま)()え、239やつて()黒姫(くろひめ)(こころ)()らずに、240高山(たかやま)さまとした(こと)が、241(わか)(をんな)女房(にようばう)()つとは、242(あま)没義道(もぎだう)だ。243チツとは(わたし)(こころ)推量(すゐりやう)してくれても()かりさうなものだのに。244あゝ如何(どう)しようかな。245(すす)みもならず退(しりぞ)きもならず、246(こま)つたことになつて()たワイ』
247(なみだ)をハラハラと(なが)し、248()つた(まま)249(なげ)きに(しづ)んで()る。
250玉公(たまこう)『コレコレお()アさま、251(まへ)さまは(いま)252黒姫(くろひめ)だと()ひましたねえ』
253黒姫(くろひめ)『ハイ、254()(くに)(みやこ)にまします高山彦(たかやまひこ)宣伝使(せんでんし)(まこと)女房(にようばう)御座(ござ)います』
255玉公(たまこう)『ハテ(こま)つた(こと)出来(でき)()た。256(わたし)(この)黒姫(くろひめ)(ほろ)ぼしてやらねば、257(この)(くに)泥海(どろうみ)になつて(しま)ふと、258水晶玉(すいしやうだま)()らせに()つて此処迄(ここまで)やつて()()つてゐたのだが、259御神徳(ごしんとく)(たか)高山彦(たかやまひこ)(さま)(おく)さまとあれば、260如何(どう)することも出来(でき)ない。261高山彦(たかやまひこ)(さま)筑紫(つくし)(しま)生神様(いきがみさま)262親様(おやさま)と、263国民(こくみん)全体(ぜんたい)尊敬(そんけい)して()立派(りつぱ)御方(おかた)264(その)奥様(おくさま)(しひた)げる(わけ)には()かない。265さうすると黒姫(くろひめ)さま、266貴女(あなた)高山彦(たかやまひこ)(さま)本当(ほんたう)奥様(おくさま)間違(まちがひ)ありませぬか』
267黒姫(くろひめ)(けつ)して間違(まちがひ)はありませぬ、268愛子姫(あいこひめ)()ふのは、269つまり高山彦(たかやまひこ)さまのお(めかけ)でせう。270一夫一婦(いつぷいつぷ)(をきて)(きび)しい三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)が、271二人(ふたり)本妻(ほんさい)()道理(だうり)()りますまい』
272玉公(たまこう)『ハテ合点(がてん)のゆかぬ(こと)だ。273あれ(だけ)立派(りつぱ)高山彦(たかやまひこ)(さま)が、274(めかけ)御持(おも)ちなさるとは、275(なん)たる矛盾(むじゆん)であらう。276何程(なにほど)(こひ)思案(しあん)(ほか)といつても、277コリヤ(また)(あま)りの脱線振(だつせんぶり)だ。278……モシモシ黒姫(くろひめ)さま、279貴女(あなた)一旦(いつたん)離縁(りえん)されたのぢやありませぬか。280()()うと失礼(しつれい)だが、281あんな立派(りつぱ)宣伝使(せんでんし)が、282(まへ)さまの(やう)(くろ)御方(おかた)夫婦(ふうふ)にならつしやるのは、283丁度(ちやうど)(つき)(すつぽん)284(さぎ)(からす)結婚(けつこん)した(やう)なものだから、285(まへ)さま自転倒島(おのころじま)とやらで、286三行半(みくだりはん)(もら)はしやつたのぢやありませぬか。287さうでないと、288如何(どう)しても高山彦(たかやまひこ)さまの神格(しんかく)()らし、289合点(がてん)()かぬ(ふし)沢山(たくさん)あるのだ』
290虎公(とらこう)『モシ黒姫(くろひめ)さま、291最前(さいぜん)(まへ)さまは一人(ひとり)()()てたと仰有(おつしや)つたが、292(その)()(いま)(いき)()つたら(いく)(くらゐ)になつてゐられますかな』
293黒姫(くろひめ)『ハイ、294(いま)から三十五年前(さんじふごねんぜん)(こと)295(いま)()つたならば三十五歳(さんじふごさい)血気(けつき)(ざか)りの立派(りつぱ)(をとこ)になつて()るだろう。296(わか)(とき)(おや)(ゆる)さぬ(をとこ)()(こしら)へて、297世間(せけん)外聞(ぐわいぶん)(わる)いと(おも)ひ、298無残(むざん)にも四辻(よつつじ)()てたのだが、299(いま)になつて(かんがへ)えて()れば(じつ)残念(ざんねん)なことを(いた)しました』
300今更(いまさら)(ごと)(なみだ)をハラハラと(なが)(うれ)ひに(しづ)む。
301虎公(とらこう)建野ケ原(たけのがはら)神館(かむやかた)建能姫(たけのひめ)(さま)御養子(ごやうし)()えたのは、302今年(こんねん)卅五歳(さんじふごさい)303建国別(たけくにわけ)といふ立派(りつぱ)宣伝使(せんでんし)だ。304(その)(かた)(はなし)()れば、305赤児(あかご)(とき)捨児(すてご)をしられ、306(いま)両親(りやうしん)行方(ゆくへ)()れぬので、307三五教(あななひけう)神様(かみさま)(しん)じ、308一日(ひとひ)(はや)(まこと)父母(ふぼ)()はして(くだ)さいといつて、309一心不乱(いつしんふらん)信仰(しんかう)(あそ)ばし、310(つひ)には(たふと)宣伝使(せんでんし)にお()りなさつたといふ(こと)です。311(いま)から丁度(ちやうど)一年前(いちねんまへ)だつた。312()(くに)(やかた)高山彦(たかやまひこ)(さま)御媒酌(ごばいしやく)建能姫(たけのひめ)(さま)御養子婿(ごやうしむこ)になられ、313夫婦(ふうふ)(むつ)まじく、314御神徳(ごしんとく)()()(たか)く、315それはそれは大変(たいへん)(いきほひ)御座(ござ)いますよ。316よもやお(まへ)さまの()てた御子(おこ)さまではあろまいかなア』
317黒姫(くろひめ)(なに)318建国別(たけくにわけ)宣伝使(せんでんし)捨児(すてご)だつたとなア。319さうして(その)(とし)卅五歳(さんじふごさい)320ハテ合点(がてん)のゆかぬ(こと)だなア』
321大正一一・九・一三 旧七・二二 松村真澄録)