霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二章 葱節(ねぶかぶし)〔一〇一四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第37巻 舎身活躍 子の巻 篇:第1篇 安閑喜楽 よみ:あんかんきらく
章:第2章 第37巻 よみ:ねぶかぶし 通し章番号:1014
口述日:1922(大正11)年10月08日(旧08月18日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年3月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
青垣山を四方にめぐらした山陰道の喉首口、丹波の亀岡にほど近い曽我部村の大字穴太は、瑞月王仁の生地である。
この地に生を享けてほとんど二十七年は夢のごとくに過ぎ去り、二十八歳を迎えた明治三十一年如月の八日、浄瑠璃のけいこ友達と知己の家で葱節をどなっていた。
そのとき、宮相撲をとっていた若錦という男が数名の侠客を引き連れて演壇にのぼり、瑞月を担いで桑畑の中へ連れて行き、打つ、殴る、蹴るなどの暴行を加えた。
嘘勝ら瑞月の友人が喧嘩に入り込んで乱闘を始め、宮錦らを追い散らした。瑞月は割木で頭を殴られ、頭が重く、友人らに助けられて自分の精乳館に連れてこられた。
寝込んでいると母がやってきて夜具をまくり、昨晩の喧嘩のことが知られてしまった。母は、父が亡くなったせいで近所の者に侮られるのだと加害者を恨んでいたが、これを聞くと自分も気の毒になり、傷の痛みはどこかへ逃げてしまった。
実際には自分が侠客気取りで喧嘩の仲裁をして回ったり、弟が賭場に入っていたのを引き出したりことから、あたりで鳴らしていた侠客の親分・勘吉に睨まれたことが原因であった。
そうして侠客の娘・多田琴とわりない仲になり、琴の父・亀について侠客の道を学んでいた。亀は瑞月を自分の後継ぎにしようと考えていた。
自分は貧家に生まれて、強者が弱者に対する横暴を非常に不快に感じ、憤っていた。父が亡くなってからはその思いが吹き出し、侠客と命がけのやり取りをして彼らをへこませていたから、睨まれていた。
もしも神様の御用をしなかったら、三十四五までにたたき殺されていたかもしれないと思うと、神様の御恩がしみじみとありがたくなってきた。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm3702
愛善世界社版:23頁 八幡書店版:第7輯 38頁 修補版: 校定版:24頁 普及版:9頁 初版: ページ備考:
001西(にし)半国(はんごく)(ひがし)愛宕(あたご)
002(みなみ)妙見(めうけん)(きた)帝釈(たいしやく)
003(やま)屏風(びやうぶ)()きまはし
004(なか)穴太(あなを)(うし)()
005 青垣山(あをがきやま)四方(しはう)(めぐ)らした山陰道(さんいんだう)喉首口(のどくびぐち)006丹波(たんば)亀岡(かめをか)(ほど)(ちか)き、007曽我部村(そがべむら)大字(おほあざ)穴太(あなを)瑞月(ずゐげつ)王仁(おに)生地(せいち)である。008賤ケ伏屋(しづがふせや)009産声(うぶごゑ)()げてより(ほとん)廿七年(にじふしちねん)(ゆめ)(ごと)くに()()り、010廿八歳(にじふはつさい)(むか)へた明治(めいぢ)卅一年(さんじふいちねん)如月(きさらぎ)八日(やうか)011半円(はんゑん)(つき)皎々(かうかう)として天空(てんくう)(かがや)(わた)り、012地上(ちじやう)には馥郁(ふくいく)たる梅花(ばいくわ)(かほ)り、013(つめた)(かぜ)(おく)られて(ゆか)しく、014(ひと)(こころ)(はな)やかに(なん)となく(はる)(むか)へた気分(きぶん)(ただよ)ふ。
015 瑞月(ずゐげつ)(その)(ころ)事業(じげふ)閑暇(かんか)浄瑠璃(じやうるり)(うな)(こと)(もつ)唯一(ゆゐいつ)(たのし)みとして()た。016浪華(なには)()より(くだ)つて()吾妻太夫(あづまだいふ)といふ盲目(めくら)(をとこ)師匠(ししやう)に、017終日(しうじつ)(げふ)()ませ、018三味(さみ)()けれども(たた)きにて(ふし)仕込(しこ)まれて()た。
019 今宵(こよひ)浄瑠璃(じやうるり)稽古(けいこ)友達(ともだち)七八人(しちはちにん)020温習会(おんしふくわい)(もよほ)すべく、021大石(おほいし)(ぼう)()知己(ちき)(いへ)女義太夫(をんなぎだいふ)(やと)(きた)り、022ベラベラ三味線(さみせん)をひかせ(なが)ら、023葱節(ねぶかぶし)得意気(とくいげ)になつて呶鳴(どな)つて()た。024下手(へた)横好(よこず)きとか()つて、025最初(さいしよ)露払(つゆばらひ)(つと)めたのは瑞月(ずゐげつ)で、026鏡山又助館(かがみやままたすけやかた)(だん)を、027(あせ)みどろになつて(かた)(をは)り、028(その)(ほか)二三人(にさんにん)天狗連(てんぐれん)の、029竹筒(たけづつ)()いた(やう)奴拍子(どびやうし)のぬけた(こゑ)浄瑠璃(じやうるり)()むと、030(ふたた)三月(さんぐわつ)菱餅(ひしもち)(ふた)つに()つた(やう)硬々(こわごわ)した角立(かどだ)つたものを()せられ、031(やぶ)(あふぎ)をたたいて(うな)つて()る。032(その)(とき)太閤記(たいかふき)十段目(じふだんめ)光秀(みつひで)が『夕顔棚(ゆふがほだな)此方(こなた)より(あら)はれ()でたる………』と()正念場(しやうねんば)であつた。033老若男女(らうにやくなんによ)(ちひ)さき百姓家(ひやくせうや)(えん)(すみ)から(には)()ふに(およ)ばず、034(おく)れて()たものは(かど)()つて()くと()大盛況(だいせいきやう)である。
035 (その)(とき)宮相撲(みやずもう)をとつて()若錦(わかにしき)()(をとこ)先頭(せんとう)に、036侠客(けふかく)小牛(こうし)037留公(とめこう)038与三公(よさこう)039茂一(もいち)五人連(ごにんづ)れ、040矢庭(やには)演壇(えんだん)(のぼ)り、041有無(うむ)()はせず瑞月(ずゐげつ)(かつ)いで附近(ふきん)桑畑(くはばたけ)(なか)()()き、042()つ、043()る、044(なぐ)るの大乱痴気(だいらんちき)(さわ)ぎを(はじ)めた。
045 浄瑠璃(じやうるり)友達(ともだち)隣家(となり)嘘勝(うそかつ)()ふデモ侠客(けふかく)二三人(にさんにん)手下(てした)()()れ、046二尺(にしやく)(ばか)りの割木(わりき)各自(てんで)()つて五人(ごにん)(なか)()()格闘(かくとう)(はじ)めた。047喧嘩(けんくわ)何時(いつ)()にか一方(いつぱう)転宅(てんたく)して(しま)ひ、048バラバラバラと(わめ)きつつ東南(とうなん)(はう)()げて()く。049嘘勝(うそかつ)一隊(いつたい)(あと)()つかける。
050 (その)(あと)二三(にさん)友人(いうじん)がやつて()て、051瑞月(ずゐげつ)(たす)けて牧畜場(ぼくちくぢやう)精乳館(せいにうくわん)()自分(じぶん)(やかた)()れて(かへ)つて()れた。052ひどく頭部(とうぶ)(いつ)()割木(わりき)(なぐ)られた結果(けつくわ)053(なん)とはなしに(あたま)(おも)たくなり、054うづき()し、055(みみ)はジヤンジヤンと早鐘(はやがね)をつく(やう)(きこ)えて()た。056時々(ときどき)火事(くわじ)警鐘(けいしよう)ではないかと、057負傷(ふしやう)した身体(からだ)(もた)げて()(ひら)(そと)(なが)めた(こと)もあつた。
058 精乳館(せいにうくわん)牛乳(ぎうにう)(しぼ)附近(ふきん)村落(そんらく)販売(はんばい)するのが営業(えいげふ)であつた。059牛乳(ぎうにう)配達人(はいだつにん)未明(みめい)からやつて()搾乳(さくにう)(はか)(わた)しを()つて()る。060瑞月(ずゐげつ)(あたま)(いた)()(くら)めき、061搾乳(さくにう)どころの(さわ)ぎではない。062二十数頭(にじふすうとう)牧牛(ぼくぎう)空腹(くうふく)(うつた)へたり、063(ちち)()()()(かな)(さう)(こゑ)()して一斉(いつせい)(うな)()した。064(その)(こゑ)(あたま)(ひび)くと一層(いつそう)(かしら)()れる(やう)気分(きぶん)がする。065それでも神様(かみさま)(いの)らうとも(おも)はねば、066医者(いしや)()び、067(くすり)()(やう)とも()まうとも(おも)はない。068(ただ)自分(じぶん)心裡(しんり)往復(わうふく)して()るのは、069今迄(いままで)大切(たいせつ)(おも)ふて()営業(えいげふ)はスツカリ(わす)れて(しま)ひ、070若錦(わかにしき)一派(いつぱ)(やつ)(たい)し、071(はや)本復(ほんぷく)して仕返(しかへ)しの大喧嘩(おほけんくわ)をやつてやらねばならぬと、072そればかりを一縷(いちる)(のぞ)みの(つな)として()た。073門口(かどぐち)()裏口(うらぐち)()(ぢやう)(おろ)してある。074それ(ゆゑ)配達人(はいだつにん)這入(はい)(こと)出来(でき)ぬ、075()むを()宮垣内(みやがいち)(はは)(たく)(はし)り、
076何故(なぜ)門口(かどぐち)(しま)つて()る、077一寸(ちよつと)()(くだ)さい』
078()つて(はは)()びに()つた。079相手方(あひてがた)村上(むらかみ)(ぼう)(やが)てやつて()時分(じぶん)だから自分(じぶん)昨夜(さくや)喧嘩(けんくわ)負傷(ふしやう)した(こと)()られては(あんま)面白(おもしろ)くないと、080負惜(まけをし)みを()して、081(あたま)手拭(てぬぐひ)(しば)()をふさいだ(まま)082()れた(みち)とて、083自分(じぶん)(かつ)()つて()いた喜楽亭(きらくてい)()(ごう)神社(じんじや)(まへ)矮屋(わいをく)(かく)(あたま)から夜具(やぐ)(かぶ)つて(いき)をこらして(よこたは)つて()た。
084 (しば)らくすると、085門口(かどぐち)から自分(じぶん)()()(なが)ら、086(あわただ)しく(はは)這入(はい)つて()られた。087瑞月(ずゐげつ)は、
088『こりや大変(たいへん)だ、089昨夜(さくや)喧嘩(けんくわ)(わか)つたのだらう、090額口(ひたひぐち)(きず)()られない(やう)に……』
091夜具(やぐ)をグツスリ(かぶ)り、092(あし)(ひざ)から(さき)()(ほど)(すく)んで、093()たふりをして()た。094遠慮会釈(ゑんりよゑしやく)もなく(はは)夜具(やぐ)をまくり()げ、
095『お(まへ)(また)喧嘩(けんくわ)をしたのだなア。096去年(きよねん)までは親爺(おやぢ)サンが()られたので(たれ)指一本(ゆびいつぽん)さえる(もの)()かつたが、097(わし)後家(ごけ)になつたと(おも)ふて(あなど)つて、098(うち)(せがれ)()んな(ひど)()()はしたのであらう。099去年(きよねん)(ふゆ)から丁度(ちやうど)(これ)九回目(きうくわいめ)100中途(ちうと)(をつと)(わか)れる(ほど)不幸(ふかう)(もの)はない、101(また)(おや)のない()(ほど)可愛相(かあいさう)なものは()い。102(おとうと)由松(よしまつ)は、103(あに)讐討(かたきうち)だとか()つて若錦(わかにしき)(ところ)押掛(おしか)け、104反対(はんたい)(あたま)をこつかれて、105()()して(かへ)つて()(うち)(うな)つて()る。106(あに)(また)()(とほ)り、107(かみ)(ほとけ)()()にはないものか』
108自分(じぶん)()(わる)いとは(おも)はず、109加害者(かがいしや)(うら)んで()られる。110(これ)()くと自分(じぶん)()(どく)(たま)らなくなり、111(きず)(いた)みは何処(どこ)へやら()()つて(しま)つた。
112 実際(じつさい)(こと)()へば自分(じぶん)は、113今迄(いままで)(ちち)がブラブラ(やまひ)二三年間(にさんねんかん)(くる)しんで()たので、114それが()(かか)り、115()()(こと)()はず、116(ちち)心配(しんぱい)をさせまいと(おも)ふて、117(ひと)喧嘩(けんくわ)する(やう)(こと)()るべく()ける(やう)にして()たから、118(むら)人々(ひとびと)にも(わか)連中(れんちう)にも、119チツとも(にく)まれた(こと)()く、120(かへつ)喜楽(きらく)さん喜楽(きらく)さんと()つて重宝(ちようほう)がられ、121可愛(かあい)がられて()たのである。122そうした(ところ)123明治(めいぢ)三十年(さんじふねん)(なつ)124(ちち)薬石(やくせき)(かう)なく(つひ)帰幽(きいう)したので、125最早(もはや)病身(びやうしん)(ちち)心配(しんぱい)さす(こと)もなくなつた。126(やぶ)侠客(けふかく)田舎(いなか)威張(ゐば)()らし、127良民(りやうみん)(くる)しめるのを()(たび)に、128()(たび)に、129(しやく)(さは)つて(たま)らない。130(たの)まれもせぬのに、131喧嘩(けんくわ)(なか)()()んで仲裁(ちうさい)をしたり、132(しまひ)には調子(てうし)()つて、133無頼漢(ぶらいかん)(むか)ふへまはし喧嘩(けんくわ)をするのを、134一廉(ひとかど)手柄(てがら)(やう)(おも)(やう)になつた。135二三遍(にさんぺん)うまく喧嘩(けんくわ)仲裁(ちうさい)をして(あぢ)()め、
136喧嘩(けんくわ)仲裁(ちうさい)には喜楽(きらく)さんに(かぎ)る』
137(むら)(もの)におだてられ、138益々(ますます)得意(とくい)になつて、
139(たれ)面白(おもしろ)喧嘩(けんくわ)をして()れないか、140(また)(ひと)仲裁(ちうさい)して()()つてやらう』
141(くだ)らぬ野心(やしん)にかられて、142チツと(たか)(こゑ)(はな)して()(かど)(とほ)つても、143()(みみ)()てる(やう)になつて()たのである。
144 (その)(ごろ)145亀岡(かめをか)余部(あまるべ)()(ところ)干支吉(えとよし)()侠客(けふかく)があり、146(その)兄弟分(きやうだいぶん)として威張(ゐば)つて()宿屋(やどや)息子(むすこ)勘吉(かんきち)()(をとこ)147身体(からだ)(おほ)きく()(たか)く、148(ちから)(つよ)く、149宮相撲(みやずもう)をとつて遠近(ゑんきん)()らして()た。150そして(その)父親(てておや)三哲(さんてつ)()つて、151附近(ふきん)()()れた侠客(けふかく)であつた。152(その)息子(むすこ)勘吉(かんきち)(また)もや非常(ひじやう)()()し、153(むら)(もの)大変(たいへん)(こま)つて()た。154第一(だいいち)賭場(とば)(ひら)いて毎日(まいにち)毎夜(まいや)テラ()り、155乾児(こぶん)四五人(しごにん)(やしな)ふて()つた。156自分(じぶん)(おとうと)勘吉(かんきち)賭場(とば)毎日(まいにち)毎夜(まいや)出入(でいり)し、157自分(じぶん)時計(とけい)()衣類(いるゐ)()り、158(しま)ひには(よる)()数百円(すうひやくゑん)(とう)じた乳牛(ちちうし)をひき()し、159亀岡(かめをか)あたりで五六十円(ごろくじふゑん)()()りして、160それを賭博(とばく)(もと)とする。161自分(じぶん)意見(いけん)をすると、162勘吉(かんきち)親分(おやぶん)(かさ)にきて(てこ)にも(ぼう)にもおへない。163村中(むらぢう)息子(むすこ)(ねずみ)(もち)をひく(やう)に、164今日(けふ)一人(ひとり)165明日(あす)二人(ふたり)()調子(てうし)で、166勘吉(かんきち)賭場(とば)引込(ひきこ)まれ、167親達(おやたち)非常(ひじやう)(なげ)いて()る。168けれども勘吉(かんきち)(みみ)這入(はい)つては如何(どん)(こと)をしられるか()れぬと(おも)ひ、169各自(めいめい)小声(こごゑ)(つぶや)いて()るのみであつた。
170 (これ)()いた自分(じぶん)(はら)()つて(たま)らず、171火事場(くわじば)使(つか)鳶口(とびぐち)()たげて、172河内屋(かはちや)勘吉(かんきち)賭場(とば)(ただ)一人(ひとり)173(よる)八時(はちじ)(ごろ)()()み、174車坐(くるまざ)になつて丁半(ちやうはん)(たたか)はして()(おとうと)(おび)鳶口(とびぐち)()つかけ、175二三間(にさんげん)引摺(ひきず)()した。176そうすると親分(おやぶん)勘吉(かんきち)巻舌(まきじた)になつて、
177(をとこ)()つた勘吉(かんきち)賭場(とば)賭場(とば)(あら)しに()よつたのか、178素人(しろうと)貴様(きさま)にこんな(こと)しられて(だま)つて()つては(をとこ)()たぬ。179……オイ与三公(よさこう)180留公(とめこう)181喜楽(きらく)をのばして(しま)へ』
182号令(がうれい)をかけて()る。183自分(じぶん)()ぐるが(おく)()と、184(しり)(うしろ)へつき()(ふた)()つポンポンとたたいたきり、185一目散(いちもくさん)牧場(ぼくぢやう)()げて(かへ)つて()た。186そして(もん)(かんぬき)(かた)()めて、187()しも()打破(うちやぶ)つて這入(はい)るが最後(さいご)188()ちのばしてやらうと、189(むく)(ぼう)()つて(そと)足音(あしおと)(かんが)へて()た。
190 (その)()(なん)(こと)()かつた。191勘吉(かんきち)(くち)(ほど)にない(やつ)だと安心(あんしん)して牧場(ぼくぢやう)(ねむ)つて()ると、192(よる)十時(じふじ)(ごろ)193二三(にさん)乾児(こぶん)()れて門口(もんぐち)へやつて()た。194そして、
195『オイ喜楽(きらく)196一寸(ちよつと)(よう)があるから(そと)()()れ』
197呶鳴(どな)つて()る。198流石(さすが)先方(むかう)も、199迂闊(うかつ)這入(はい)つて鳶口(とびぐち)でやられては(たま)らぬと(おも)ふたか、200門口(もんぐち)()つて()()してゐる。201自分(じぶん)故意(わざ)とに(つく)(いびき)をして()たふりをして()た。202そして(かし)(ぼう)寝床(ねどこ)(よこ)()いてあつた。203(しば)らくすると(をんな)(こゑ)で、
204『あんたハン、205立派(りつぱ)侠客(けふかく)サンぢやおまへんか、206たつた一人(ひとり)の、207あんな弱々(よわよわ)しい喜楽(きらく)サンに喧嘩(けんくわ)()るなんて、208(をとこ)(さが)りまつせ、209さアあんたハン、210一杯(いつぱい)桑酒屋(くはざけや)()みに()きまほ』
211勘吉(かんきち)頬辺(ほほべた)をピシヤピシヤたたいて()(おと)(きこ)えて()た。212(この)(をんな)中村(なかむら)多田亀(ただかめ)()老侠客(らうけふかく)(むすめ)で、213多田(ただ)(こと)()(をんな)である。214(ある)機会(きくわい)から(めう)(なか)となつて()つた。215(その)(こと)中村(なかむら)から遥々(はるばる)とやつて()て、216門口(かどぐち)河内屋(かはちや)出会(であ)ふたのである。217流石(さすが)侠客(けふかく)も、218横面(よこづら)をやさしい(こゑ)(なぐ)られてグニヤグニヤになり、219五六丁(ごろくちやう)(しも)吉川村(よしかはむら)桑酒屋(くはさけや)(さけ)()みに()つて(しま)つた。
220 それから自分(じぶん)多田(ただ)(こと)父親(ちちおや)多田亀(ただかめ)()いて侠客(けふかく)学問(がくもん)研究(けんきう)(はじ)めた。221多田(ただ)(かめ)()ふのには、
222侠客(けふかく)になつて()()(やう)(おも)へば、223(あたま)()られたり、224(うで)一本(いつぽん)(くらゐ)とられなくては本物(ほんもの)にならぬ。225此方(こつち)生命(いのち)()てる()になれば、226何百人(なんびやくにん)(てき)()げるものだ。227()(かく)気転(きてん)第一(だいいち)だ』
228自分(じぶん)(むすめ)情夫(をとこ)()(なが)ら、229(ろく)でもない(こと)一生懸命(いつしやうけんめい)(をし)へて()れた。230さうして多田(ただ)(かめ)()ふのには、
231(おれ)乾児(こぶん)大分(だいぶ)沢山(たくさん)あるのだが、232(あと)()がす(もの)がない。233これからお(まへ)仕込(しこ)んでやるから、234(この)乾児(こぶん)()てるのは(をし)いから、235若親分(わかおやぶん)になつたら如何(どう)だ。236(よね)サン(瑞月(ずゐげつ)(はは))に相談(さうだん)して、237(まへ)サンを此方(こつち)養子(やうし)(もら)(つもり)だ。238此方(こちら)一人(ひとり)(むすめ)をお(まへ)サンの自由(じいう)にさして、239(だま)つて()るのについては(かんが)へがあるのだ。240よもや一時(いちじ)テンゴに、241(おれ)一人娘(ひとりむすめ)をなぶり(もの)にしたのぢやあるまいなア』
242退引(のつぴき)させぬ(くぎ)をさされた。
243 (ちち)()(うち)から、244上田(うへだ)(あと)(おとうと)()がして(もら)()いと()つて(たの)んで()つた。245両親(りやうしん)亀岡(かめをか)(ある)易者(えきしや)()()てて(もら)ひ、
246(この)()総領(そうりやう)()まれて()るけれども、247(おや)屋敷(やしき)()つては若死(わかじに)をするから養子(やうし)にやつたが()い』
248といつたとかで、249両親(りやうしん)(すで)自分(じぶん)養子(やうし)()くのを承認(しようにん)して(しま)つた。250(しか)侠客(けふかく)養子(やうし)()らうとは(おも)うて()なかつたのである。
251 自分(じぶん)幼時(えうじ)から貧家(ひんか)(うま)れ、252弱者(じやくしや)(たい)する強者(きやうしや)横暴(わうばう)非常(ひじやう)不快(ふくわい)(かん)じて()た。253人間(にんげん)(すこ)しく(あたま)をあげて(かね)でも()めれば、254如何(どん)馬鹿(ばか)でも(かしこ)()られ、255(うやま)はれるが、256(すこ)しく地平線下(ちへいせんか)()ちると、257子供(こども)(まで)()つて(たか)つて()みつけ(やう)とする。258事大思想(じだいしさう)(さか)んな田舎(いなか)では尚更(なほさら)はげしいのである。259(なん)でも(ひと)(しう)(ぬき)んでなければ(あたま)があがらない、260生存(せいぞん)価値(かち)がないと、261幼時(えうじ)から(おも)ひつめて()た。262学問(がくもん)()ければ官吏(くわんり)になる(こと)出来(でき)ず、263軍人(ぐんじん)()()うても()れず、264(よわ)(もの)(たす)け、265(つよ)(もの)(へこ)ます侠客(けふかく)になつた(はう)が、266一番(いちばん)()()がるだらうと(くだ)らぬ(こと)(かんが)へ、267幡随院(ばんずゐゐん)長兵衛(ちやうべゑ)ちよんがれ()いて、268明治(めいぢ)幡随院(ばんずいゐん)長兵衛(ちやうべゑ)(おれ)がなつてやらうかと(まで)(おも)(こと)屡々(しばしば)あつた。269(その)平素(へいそ)(おも)ひと強者(きやうしや)(しひた)げられた無念(むねん)とが(ひと)つになつて、270社会(しやくわい)弱者(じやくしや)(たい)する同情心(どうじやうしん)が、271(ちち)帰幽(きいう)(とも)突発(とつぱつ)し、272生命(いのち)()けの侠客凹(けふかくへこ)ませを(くはだ)て、273猪口才(ちよこざい)(やつ)彼等(かれら)社会(しやくわい)から(にら)まれて()たから、274一年(いちねん)()たぬ(うち)九回(きうくわい)(まで)(ひど)()()はされたのである。275()しも神様(かみさま)御用(ごよう)をせなかつたらば、276自分(じぶん)三十四五(さんじふしご)(まで)(たた)(ころ)されて()るかも()れないと(おも)(うか)べて、277神様(かみさま)御恩(ごおん)がシミジミと有難(ありがた)くなつて()たのである。
278 自分(じぶん)(はは)言葉(ことば)(ごと)く、279(けつ)して(ちち)()くなつた()めに侠客(けふかく)(くる)しめられたのではない、280つまり自分(じぶん)から(まね)いた(わざはい)である(こと)(その)(とき)(すで)自覚(じかく)()たのである。
281大正一一・一〇・八 旧八・一八 北村隆光録)