霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一四章 (よる)山路(やまみち)〔一〇二六〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第37巻 舎身活躍 子の巻 篇:第3篇 阪丹珍聞 よみ:はんたんちんぶん
章:第14章 第37巻 よみ:よるのやまみち 通し章番号:1026
口述日:1922(大正11)年10月10日(旧08月20日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年3月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
大阪を去る前に佐一の餅屋を尋ねたところ、そこで一夜の宿をいただけることになった。いつしか佐一の一間に雑魚寝で寝入ってしまった。
西日の中、淀川のほとりにたたずんで大阪城を眺め、感慨にふけっていた。すると十二三歳の少年が番頭風の男に追われている。聞けば、店先の薬を盗んだのだという。
少年は、母が病気で苦しみ、貧乏で薬も買えずに苦しんでいたところ、どうしても薬が欲しくなって手が出てしまったのだという。喜楽は五十銭出して、少年のために薬を買ってあげた。
番頭風の男は怒りに口汚くののしりながら、五十銭をひったくるように受け取って帰ってしまった。喜楽はその無情さに歯ぎしりしながら見送っていた。
そして、この貧しい少年の境遇を見ても、鄙も都も暗黒世界は同じものだとため息をついていた。すると、佐一の妻のお繁婆さんにゆすり起こされた。今の夢は、神様の御心で喜楽の心に戒めを与えられたものだと気が付いた。
また郷里には母や祖母のあることを思いださしめ、早く帰国させようというお計らいであったことが、後日感じられた。
丹波への帰り道、夜の山路の岐路で迷っていると、怪しい白衣の旅人が現れ、案内をするように進んで行く。怪しみながら着いていくと、眠気に襲われて道端の六地蔵の屋根の下に横たわり、眠り込んでしまった。
ふと目を覚ますと、怪しい女が赤ん坊を背に負い、『南無阿弥陀仏』と唱えながら地蔵の数多から水をかけて祈願しているようである。喜楽は恐ろしくなったが、気を落ち着かせ、恐ろしい思いをしながら山道をたどって一目散に馳せかえった。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm3714
愛善世界社版:176頁 八幡書店版:第7輯 97頁 修補版: 校定版:184頁 普及版:87頁 初版: ページ備考:
001 喜楽(きらく)(ふところ)(さび)しく、002(なん)となしに力落(ちからお)ちがして(いよいよ)帰国(きこく)()()かむとした。003一度(いちど)空心町(くうしんまち)斎藤(さいとう)(いへ)(いとま)()ひに立寄(たちよ)つて()ようと(おも)ひ、004(ふたた)(おとづ)れると、005佐市(さいち)夫婦(ふうふ)(はじ)め、006四年(よねん)以前(いぜん)一寸(ちよつと)悶錯(もんさく)(おこ)して(わか)れた(むすめ)(をり)よく()()た。007(しげ)()アさんは(すゐ)()かして、008(せま)(うち)だけれど今晩(こんばん)(とま)つて(かへ)れと()ふ。009そこへ十六七(じふろくしち)富野(とみの)といふ(いもうと)()るので、010(わづか)四畳半(よでふはん)()で、011五人(ごにん)雑魚寝(ざこね)することとなつた。012姉娘(あねむすめ)のお(あき)といふのが(よる)十時(じふじ)(ごろ)に、013ガラガラと(くるま)でやつて()て、014(なん)だかブツブツ小言(こごと)()(なが)ら、015おいのといふ(をんな)合乗(あひの)りで()れて(かへ)つて(しま)つた。016油揚(あぶらあげ)(とび)にさらはれたやうな気分(きぶん)で、017喜楽(きらく)舌打(したう)ちし(なが)(ねむり)()いた。018(しか)(なが)(この)(とき)喜楽(きらく)一切(いつさい)情欲(じやうよく)(はな)れ、019(ただ)信仰(しんかう)一点張(いつてんばり)()(ぱら)つて()(とき)だから、020(むかし)(をんな)出会(であ)一間(ひとま)()(ところ)で、021(べつ)旧交(きうかう)(あたたか)めようとも(なん)ともそんな(かんが)へは()つて()なかつた。022乍併(しかしながら)(なん)となくなつかしいやうな()がして、023(その)(をんな)(おな)(いへ)一宿(いつしゆく)することを(うれ)しく(おも)うて()たのである。
024 ()容赦(ようしや)なく()(わた)る。025四人(よにん)何時(いつ)()にか安々(やすやす)(ねむ)りについて(しま)つた。
026
027 (なが)春日(はるび)(やや)西(にし)(かたむ)いて、028(よど)川水(かはみづ)金鱗(きんりん)(ひかり)(なが)す、029水瀬(みなせ)(ふか)浪速潟(なにはがた)030(みづ)(みやこ)天神橋(てんじんばし)(うへ)()つて、031(くび)(かたむ)思案(しあん)にくれてゐた。032(たつみ)(はう)()れば、033山岳(さんがく)(ごと)巍々(ぎぎ)として(きづ)()げられた、034宏壮(くわうさう)雄大(ゆうだい)なる大阪城(おほさかじやう)(みづ)(うつ)つて、035(いらか)がキラキラと西日(にしび)(かがや)いてゐる。036喜楽(きらく)(これ)()(かん)()たれ、037独言(ひとりごと)()つてゐた。
038『あゝ人間(にんげん)運命(うんめい)といふものは不思議(ふしぎ)なものだ。039二百八間(にひやくはちけん)矢矧(やはぎ)長橋(ながばし)(こも)(まと)うた腕白(わんぱく)小僧(こぞう)藤吉郎(とうきちろう)も、040忍耐(にんたい)勉励(べんれい)(こう)(むな)しからず、041登竜(とうりう)大志(たいし)達成(たつせい)威徳(ゐとく)赫々(かくかく)として、042旭日(きよくじつ)東海(とうかい)(なみ)をけり、043(をど)()でたるが(ごと)く、044(つひ)六十余州(ろくじふよしう)天下(てんか)掌握(しやうあく)し、045三韓(さんかん)()(したが)へ、046大明王(たいみんわう)(おどろ)かせ、047万古不朽(ばんこふきう)偉業(ゐげふ)後世(こうせい)(つた)へた。048(はなし)()くも(じつ)心持(こころもち)よき英雄(えいゆう)である。049豊太閤(ほうたいかふ)だとてヤツパリ人間(にんげん)()んだ()だ。050(かれ)(また)(おな)百姓(ひやくせう)から(うま)れた人間(にんげん)だ。051豊太閤(ほうたいかふ)幼時(えうじ)境遇(きやうぐう)は、052(また)喜楽(きらく)当時(たうじ)酷似(こくじ)してゐる。053矢矧(やはぎ)(はし)ならぬ天神橋(てんじんばし)(たもと)054自分(じぶん)此処(ここ)(ひと)(なに)思案(しあん)をせなくてはなるまい。055折角(せつかく)無理(むり)算段(さんだん)をして()つて()旅費(りよひ)はいつの()にか、056(けむり)(みやこ)(けぶり)()えて(しま)ひ、057何一(なにひと)()つて(かへ)るべき土産(みやげ)もない。058精神(せいしん)一到(いつたう)何事(なにごと)()らざむや、059()れも太閤(たいかふ)成功(せいこう)(くらゐ)(あま)んじては()れまい。060(かみ)(ちから)(まこと)(つゑ)に、061五六七(みろく)神政(しんせい)基礎(きそ)(かた)めねばならぬ』
062往来(わうらい)しげき(はし)(うへ)にて、063()れを(わす)れて雄健(をたけ)びなしつつ、064空想(くうさう)にからるる一刹那(いちせつな)065ドンと突当(つきあた)つた十二三歳(じふにさんさい)子供(こども)があつた。066喜楽(きらく)(おどろ)いて(その)子供(こども)(かほ)()つめてゐる。067あとより(いき)せき()つてかけ(きた)三十(さんじふ)前後(ぜんご)番頭風(ばんとうふう)大男(おほをとこ)有無(うむ)をいはせず子供(こども)引掴(ひつつか)み、068()つやら、069()るやら、070乱暴狼藉(らんばうろうぜき)(ほしいまま)にしてゐる。071子供(こども)悲鳴(ひめい)をあげて、072()(さけ)ぶのを、073物見(ものみ)(だか)大阪人(おほさかじん)(つね)として、074(たちま)(はし)(うへ)三人(さんにん)075五人(ごにん)076十人(じふにん)立止(たちど)まり、077往来止(わうらいど)めの姿(すがた)(かは)つて(しま)つた。078番頭風(ばんとうふう)(をとこ)(なほ)(つづ)いて手首(てくび)無理(むり)(かた)()り、079(うで)もぬけむ(ばか)りに引張(ひつぱ)(なが)ら、
080(をとこ)一寸(ちよつと)警察(けいさつ)(まで)()()い!』
081()きずつて()かうとする。082喜楽(きらく)()るに()かねて、
083喜楽(きらく)『モシモシ(しばら)()つてやつて(くだ)さい。084どんな(わる)いことをしたか()りませぬが……』
085()はせも()てず、086(をとこ)(ことば)荒々(あらあら)しく、
087(をとこ)『お(まへ)田舎下(いなかくだ)りの旅人(たびびと)088(かま)うてくれな。089此奴(こいつ)チボ玉子(たまご)だ。090(いま)店先(みせさき)にあつた実母散(じつぼさん)一服(いつぷく)かつさらへ、091()()してうせたヅ(ぶと)小僧(こぞう)だ。092今後(こんご)(いまし)めに橋詰(はしづめ)巡査(じゆんさ)引渡(ひきわた)すのだ』
093鼻息(はないき)あらく、094エライ権幕(けんまく)(にら)みつける。095子供(こども)(くすり)(つつみ)をそこへなげ()し、096両手(りやうて)をつき、097(なみだ)(なが)らに()きわびるいぢらしさ。098喜楽(きらく)(この)子供(こども)もウブからのチボではあるまいと(おも)ひ、099(だい)(をとこ)(むか)つて言葉(ことば)叮嚀(ていねい)に、100子供(こども)(かは)つてあやまり、101子供(こども)()ふことを聞訊(ききただ)してみれば、
102子供(こども)(わたくし)(はは)(なが)らく子宮病(しきうびやう)とかに(かか)つて(くるし)最早(もはや)生命(いのち)(あやふ)うなつて()ります。103貧乏(びんばふ)(ため)(くすり)()ふことも出来(でき)ず、104医者(いしや)さまに()(もら)ふことも出来(でき)ないので、105()(なが)らお()アサンの()ぬのを()るに(しの)びず、106日々(ひび)エライ心配(しんぱい)をして()りましたが、107(となり)(ひと)(はなし)によると、108(をんな)(やまひ)には実母散(じつぼさん)()んだら、109キツと全快(ぜんくわい)すると()いて、110(にはか)(その)(くすり)()しくなり(はは)大事(だいじ)(おも)一念(いちねん)から、111後前(あとさき)(わきま)へもなく薬屋(くすりや)店先(みせさき)にあつた実母散(じつぼさん)一服(いつぷく)()つて()げて()ました』
112(かた)(をは)つて、113ワツと(ばか)(その)()()(たふ)れた。114孝行(かうかう)息子(むすこ)(こころ)にほだされて、115喜楽(きらく)(おも)はず()らず(もら)()きをし(なが)ら、116(ふところ)(さぐ)つて五十銭(ごじつせん)取出(とりだ)し、
117喜楽(きらく)(この)(くすり)(わたくし)()つて(くだ)さい、118そして子供(こども)(つみ)(ゆる)してやつて(くだ)さい』
119といへば、120(だい)(をとこ)(つら)をふくらせ(なが)ら、
121(をとこ)此奴(こいつ)(ゆる)(がた)(やつ)だが、122今日(けふ)はお(まへ)(めん)じて(わす)れてやるから今後(こんご)はキツと(つつし)め!』
123口汚(くちぎたな)(ののし)り、124一服(いつぷく)十銭(じつせん)(くすり)五十銭(ごじつせん)()つたくるやうにして受取(うけと)り、125ツリをも(はら)はず(かた)(いか)らして(かへ)つて()(その)無情(むじやう)さ。126()(なみだ)(かよ)はぬ(をとこ)かなと、127(いか)りの(いろ)(あら)はして、128(かへ)()(をとこ)姿(すがた)()ぎしりし(なが)見送(みおく)つて()た。
129草枕(くさまくら)(たび)にし()でて(さと)りけり
130(そら)(おそ)ろしき(ひと)(こころ)
131 大阪(おほさか)()へば日本(にほん)三大(さんだい)都会(とくわい)(ひと)つ、132商業(しやうげふ)発達(はつたつ)大地(だいち)七福神(しちふくじん)のみの楽天地(らくてんち)(おも)うて()つたのに、133(いま)()のあたり貧児(ひんじ)境遇(きやうぐう)見聞(みきき)して、134どこへ()つても、135ヤツパリ(あき)には(あき)()る、136(ふゆ)はヤツパリ(ふゆ)だ、137暗黒界(あんこくかい)(ひな)(みやこ)(おな)じものだと溜息(ためいき)つくつく、138『アヽアヽ』と(なげ)いた(こゑ)が、139(そば)()てゐるおしげ()アサンの(みみ)()り、
140『コレコレ喜楽(きらく)サン、141(なに)寝言(ねごと)をいつてるのだ』
142とゆすり(おこ)されて()がついてみれば、143(せま)餅屋(もちや)四畳半(よでふはん)(ねむ)つてゐた。144(いま)(はし)(うへ)(ゆめ)(なか)出来事(できごと)(かみ)さまの御心(みこころ)によりて、145喜楽(きらく)(こころ)鞭撻(べんたつ)し、146郷里(くに)一人(ひとり)(はは)や、147老祖母(らうそぼ)のあることを(おも)(いだ)さしめ、148(はや)帰国(きこく)させむとの(はか)らひなりしことが後日(ごじつ)(いた)つて(かん)じられた。
149易者(えきしや)言葉(ことば)(はげ)まされ
150丹波(たんば)(くに)(かへ)らむと
151(こころ)(こま)(むち)うつて
152(くるま)()ばずトボトボと
153梅田(うめだ)(えき)につきにけり
154仕度(したく)なさむと懐中(くわいちう)
155(さぐ)りてみれば(なさけ)ない
156(のこ)りの(かね)二銭半(にせんはん)
157汽車(きしや)はあれ(ども)()るすべも
158(なん)線路(せんろ)真中(まんなか)
159一直線(いつちよくせん)膝栗毛(ひざくりげ)
160(はら)吹田(すゐた)のうまやぢの
161茶店(ちやみせ)にひさぐ()(いも)
162(くり)より(うま)十三里(じふさんり)
163道程(みちのり)一歩(いつぽ)(また)一歩(いつぽ)
164茨木町(いばらぎまち)(きた)()
165丹波(たんば)をさして(かへ)()
166(ころ)しも四月(しぐわつ)十五夜(じふごや)
167(つき)(ひがし)(やま)()
168(まる)(おもて)をあらはして
169ニコニコ()ませ(たま)(ども)
170(ゆふ)べの(そら)(なん)となく
171(こころ)(さび)しき一人旅(ひとりたび)
172(ひがし)西(にし)南北(なんぽく)
173知人(しるひと)もなくなく山路(やまみち)
174(そら)(つき)かげ(ちから)とし
175一度(いちど)(とほ)りしおろ(おぼ)えの
176(やま)(やま)との谷路(たにみち)
177どこやら不安(ふあん)心地(ここち)して
178岐路(きろ)ある(ところ)停立(ていりつ)
179(くび)をかたぐる(とき)(とき)
180(たちま)(まへ)(あら)はれし
181(あや)しき白衣(びやくい)旅人(たびびと)
182四五間(しごけん)(さき)()つて()
183喜楽(きらく)(すす)めば(かれ)(すす)
184立止(たちとど)まれば(また)()まり
185モウシモウシと(こゑ)をかけ
186()べど(こた)へぬ(しろ)(かげ)
187(あるひ)(あら)はれ(また)()
188変幻(へんげん)出没(しゆつぼつ)不思議(ふしぎ)なり
189二股道(ふたまたみち)(あら)はれて
190(また)もや案内(あない)をする(ごと)
191(あや)しみ(なが)らも(ちから)()
192(あし)(はこ)べど空腹(くうふく)
193(つか)れの(ため)(すす)みかね
194(ねむ)けの(おに)におそはれて
195街路(がいろ)転倒(てんたふ)(なが)らも
196(ねむ)たさ(こら)へて(かへ)()
197西別院(にしべつゐん)村外(むらはづ)
198(くだ)(さか)にとさしかかる
199(みづ)さへ(おと)なき(うし)(こく)
200(みち)片方(かたへ)細谷川(ほそたにがは)
201(へだ)てて(せま)墳墓(ふんぼ)あり
202六地蔵(ろくぢざう)さまを(まつ)りたる
203(ちひ)さき屋根(やね)()えてゐる
204ここにて雨露(うろ)(しの)がむと
205(いや)らし(はか)()(なが)
206(てん)(あた)へと(よろこ)びて
207六体(ろくたい)(なら)んだ石地蔵(いしぢざう)
208しりへに()をば(よこ)たへて
209手枕(てまくら)したままグウグウと
210華胥(くわしよ)(くに)(のぼ)りゆく
211あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
212御霊(みたま)(さち)はへましませよ。
213 あたり寂然(せきぜん)として(しづ)まり(かへ)(とき)しもあれ、214(ゆめ)(うつつ)(まぼろし)か、215(わが)枕頭(ちんとう)(ちか)(きこ)ゆる(をんな)(しの)()(こゑ)216(かす)かに(みみ)()ると(とも)にフと()をさませば、217喜楽(きらく)六地蔵(ろくぢざう)(うしろ)(よこ)たはつてゐることに()()いた。
218 喜楽(きらく)(ほほ)に、219(つめ)たい(みづ)のしぶきがかかる。220キツと()をあけて()れば六地蔵(ろくぢざう)(まへ)(あま)()(たか)くない、221横太(よこぶと)(あや)しい一人(ひとり)(をんな)が、222(あか)(ばう)()()(なが)ら、223土瓶(どびん)のやうな(もの)片手(かたて)(ひつさ)げ、224石地蔵(いしぢざう)(あたま)から、225南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)』といひ(なが)ら、226(つめ)たい(みづ)をかけて、227何事(なにごと)(しき)りに、228石地蔵(いしぢざう)(うつた)へてゐるやうである、229喜楽(きらく)(とどろ)心臓(しんざう)鼓動(こどう)(しひ)鎮圧(ちんあつ)し、230(いき)(ころ)して(うかが)()れば、231(あや)しき(をんな)(かげ)一歩(いつぽ)々々(いつぽ)とゆるぐが(ごと)く、232しづしづとして(あたら)しい(はか)(まへ)(いた)り、233マツチをすり蝋燭(らふそく)(てん)じ、234合掌(がつしやう)(なが)()(ごゑ)になつて、235()(かが)んでゐる。236石地蔵(いしぢざう)()つてゐる隙間(すきま)から、237(この)様子(やうす)(のぞ)きみた喜楽(きらく)(にはか)恐怖心(きようふしん)にかられ、238(あたま)()はちぢみ、239(からだ)はふるひ()し、240寸時(すんじ)もここに()たたまらず、241(いや)らしさに(この)()()()さうかと(おも)つたが、242(はら)(そこ)から(ちひ)さい(こゑ)で、243()て』と()ふやうに(きこ)えて()た。244(この)(こゑ)自分(じぶん)(ふたた)(どう)をすえ、245直日(なほひ)(かへり)りみることを()た。246……喜楽(きらく)顕幽(けんいう)両界(りやうかい)救済者(きうさいしや)たらむとする霊学(れいがく)修業者(しうげふしや)である、247(いま)(さいは)ひにして(かく)(ごと)怪霊(くわいれい)出会(しゆつくわい)し、248研究(けんきう)好材料(かうざいれう)()たのは(まつた)(かみ)さまの御心(みこころ)であらう。249よく(かんが)へて()れば(あめ)(した)(もと)より妖怪変化(えうくわいへんげ)のあるべき(はず)がない、250(いづ)れも(みな)(こころ)(まよ)ひから(こわ)くない(もの)(こわ)くなつたりするのである。251(なん)でもない(もの)妖怪変化(えうくわいへんげ)だと(おも)つて、252昏迷誑惑(こんめいけうわく)(その)()(うしな)はむとしたのは、253(なん)たる卑怯(ひけふ)であらう。254長途(ちやうと)(たび)にて心身(しんしん)疲労(ひらう)結果(けつくわ)255こんな妄想(もうさう)(おちい)つたのではあるまいか……と、256キツと心胆(しんたん)()え、257()()はれば妖怪(えうくわい)でも幽霊(いうれい)でもなく、258田舎(いなか)婦人(ふじん)何事(なにごと)(きふ)出来事(できごと)(ため)に、259(この)真夜中(まよなか)()(をつと)(はか)(まゐ)つたのであるらしく、260(やや)(ひさ)しく(いの)つた(のち)261南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)』と(ちから)なげに(くち)ずさみ(なが)ら、262ヨボヨボと元来(もとき)細谷川(ほそたにがは)(わた)つて、263(その)姿(すがた)木立(こだち)(まぎ)れて()えなくなつて(しま)つた。
264 (をんな)姿(すがた)()えしより、265喜楽(きらく)(また)(にはか)(おそ)ろしくなつて()た。266永居(ながゐ)はならじとソロソロ立上(たちあが)り、267(ほほ)かぶりをなし、268(しり)をひつからげ、269コワゴワ渓流(けいりう)(わた)り、270山路(やまみち)()でたる一刹那(いちせつな)
271(こわ)いツ!』
272といふ子供(こども)(さけ)(ごゑ)が、273つい足許(あしもと)(きこ)えて()た。274喜楽(きらく)(この)(こゑ)二度(にど)ビツクリし(なが)ら、
275(なん)にも(こわ)いことはない、276(おれ)人間(にんげん)だ!』
277()ばはりつつ(あと)ふり()きもせず、278一目散(いちもくさん)(あし)(いた)みも(わす)れて、279法貴谷(ほふきだに)(はう)へと()(かへ)るのであつた。
280大正一一・一〇・一〇 旧八・二〇 松村真澄録)
   
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9/15【霊界物語ネット】王仁文庫の第三篇「瑞能神歌」を掲載しました。