霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一八章 奥野操(おくのみさを)〔一〇三〇〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第37巻 舎身活躍 子の巻 篇:第3篇 阪丹珍聞 よみ:はんたんちんぶん
章:第18章 奥野操 よみ:おくのみさお 通し章番号:1030
口述日:1922(大正11)年10月10日(旧08月20日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年3月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
斎藤宇一の親父の機嫌が直り、また屋敷を修行場として貸してもらえることになった。霊をかけて火鉢を動かしたり、机を宙に上げたり土瓶を廻したりなど、霊学の研究に面白く没頭していた。
多田琴や石田小末の憑霊は、京都大阪に出てこれを見世物として興行すれば、金儲けと神様のお道の宣伝と一石二鳥だと喜楽を急き立てる。
喜楽はそんな芸をして見せるのは神様に対して申しわけないと思っていたが、しきりに勧められるので、それで神様のお道が開けるのであれば、と決心して産土神社に参って伺ってみた。
すると自分の腹の中から馬鹿と怒鳴りつけられ、そんなことをしたら凶党界に落としてやるぞ、と戒められ、この計画は取りやめになった。
あるとき多田琴は、園部藩主の指南番であった奥野操と名乗る武士の憑霊があり、荒んで喜楽の鎮魂も効かなくなった。そこで産土の社へかけつけて祈願をこらしていた。
すると石田小末が、武士の霊が鎮まったと告げに来た。行ってみると、奥野操と名乗る武士の霊は、死後自分を誰も弔うことなく迷っているので、祀ってくれれば神の座に直り、教えを守護すると約束した。
そして自分の墓を探し当てたら、その石塔を動かして知らせると告げた。喜楽は霊が教えたお寺や、武士の家来の子孫の家という宅を訪ねてみた。武士の名前はわからなかったが、戒名は的中していたので墓を探し当てたが、石塔はいつまで待っても動かない。
霊眼で調べてみると、石塔の浦に大きな古狸が見えた。喜楽は怒って修行場に帰り、多田琴の憑霊を詰問して霊縛をかけたが、逆に座敷中を飛び回る。喜楽はどうぞお鎮まりください、と頭を下げて優しく出た。
すると神がかりは大口を開けて大笑いし、実は自分は松岡であり、審神の修行をさせてやったのだ、と腹をかかえて笑いこけた。
にわかに部屋が死人臭くなってきた。霊眼で見ると、亡者の葬列が障子の細い穴から入ってくるのが見えた。亡者の先頭は、隣のお紋という娘の顔をしている。不快の臭気が室内に漂い、ランプやろうそくの火も次々に消えてしまう。
禊をして天津祝詞を一生懸命奏上すると、怪しい亡者の影は一人、二人と減って逃げ去ってしまった。
するとお紋の母親があわただしくやってきて、娘が病気になり、うわごとで喜楽の名前を呼んでいると言うのでやってきてみると、修行場で臭った不快な熱病のにおいが漂っていた。
喜楽は天津祝詞を唱えて鎮魂を施すと、お紋は『のきます のきます』と言って門口の方へ二三歩歩きだし、その場に倒れてしまった。それから病気はすっかり治ってしまった。
次郎松はいよいよ喜楽は飯綱使いだと口を極めてののしりまわった。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:
愛善世界社版:213頁 八幡書店版:第7輯 111頁 修補版: 校定版:223頁 普及版:106頁 初版: ページ備考:
001 一旦(いつたん)斎藤(さいとう)宇一(ういち)座敷(ざしき)から、002退却(たいきやく)(めい)ぜられた修業場(しうげふば)は、003(また)もや(おやぢ)機嫌(きげん)(なほ)つて、004(ふたたび)修行場(しうぎやうば)に、005二間(ふたま)(つづ)きの奥座敷(おくざしき)給与(きふよ)された。006(その)(とき)多田(ただ)(こと)007石田(いしだ)小末(こすゑ)008上田(うへだ)幸吉(かうきち)などが(もつと)面白(おもしろ)神懸(かむがか)りであり、009いろいろの(めづら)しき神術(かむわざ)をして()せた。010多田(ただ)(こと)両手(りやうて)()審神者(さには)となり、011石田(いしだ)小末(こすゑ)神主(かむぬし)となり、
012『サア地震(ぢしん)だ』
013といへば、014(にはか)(いへ)がガタガタとふるひ()し、015ゴーゴーと(うな)(ごゑ)(きこ)えて()る。016けれ(ども)地震(ぢしん)(この)(いへ)(かぎ)りで、017門口(かどぐち)()ると最早(もはや)(なん)(こと)もなかつた、018大勢(おほぜい)(もの)(その)不可思議(ふかしぎ)神力(しんりき)(きも)(つぶ)し、019(した)()いてゐた。020多田(ただ)(こと)が、
021多田(ただ)『われは巴御前(ともゑごぜん)だ、022オイ家来(けらい)(もの)023(みな)サンにお(ちや)()げ』
024(めい)ずると、025戸棚(とだな)からガチヤガチヤと(おと)がして茶碗(ちやわん)(ひと)(かず)(だけ)(ちう)をたつて、026二人(ふたり)(まへ)()()る。027多田(ただ)は、
028多田(ただ)(みな)サンの(まへ)へ、029(ひと)つづつ(くば)れ』
030厳命(げんめい)すると、031(なに)()らぬのに、032茶碗(ちやわん)(たたみ)(うへ)五六寸(ごろくすん)(ところ)(とほ)つて、033各自(かくじ)(ひざ)(まへ)にチヤンと()はる、034()はつた(とき)どれもこれも茶碗(ちやわん)二三遍(にさんべん)キリキリと()うてゐるのが不思議(ふしぎ)である。
035多田(ただ)『サアお(ちや)をつげ』
036多田(ただ)(こと)命令(めいれい)すると、037石田(いしだ)小末(こすゑ)()土瓶(どびん)()つて、038(ちや)()真似(まね)をする。039さうすると、040火鉢(ひばち)にかかつてゐた土瓶(どびん)勝手(かつて)に、041(ちう)をブラブラやつて()て、042(たれ)かが()つて(ちや)()(やう)に、043八分(はちぶ)(ばか)り、044(かく)()()ぎに(そそ)いでまはる。045(はじ)めの(うち)喜楽(きらく)霊学(れいがく)(えら)(もの)だとほめて()たが、046ソロソロ魔法使(まはふつかい)047飯綱使(いづなつかい)(くち)(きは)めて(ののし)()した。048それにも(かま)はず(れい)をかけて火鉢(ひばち)(うご)かしたり、049(つくゑ)二三尺(にさんじやく)(ばか)りも(ちう)()げたり、050土瓶(どびん)(まは)らしたりして、051日夜(にちや)研究(けんきう)没頭(ぼつとう)してゐた。052(この)(とき)(くらゐ)面白(おもしろ)くて得意(とくい)(こと)はなかつた。053多田(ただ)(こと)(うつ)つた巴御前(ともえごぜん)自称(じしよう)する(れい)喜楽(きらく)(むか)つて()ふ。
054多田(ただ)(この)(とほ)色々(いろいろ)霊術(れいじゆつ)を、055(かみ)守護(しゆご)(いた)してさしてやるのだから、056これから一座(いちざ)()んで、057(きやう)大阪(おほさか)飛出(とびだ)し、058奇術師(きじゆつし)となつて、059ドツサリ(かね)(まう)け、060それを資本(しほん)として(おほ)きな神殿(しんでん)(つく)本部(ほんぶ)()てようだないか』
061(すす)めるのであつた。062喜楽(きらく)神様(かみさま)(みち)に、063そんな馬鹿(ばか)(こと)をしては(かへつ)(かみ)(みち)(けが)すだらうと(おも)つて、064躊躇(ちうちよ)して()ると、065石田(いしだ)小末(こすゑ)憑霊(ひようれい)(また)もや発動(はつどう)して、
066小末(こすゑ)『サア(これ)から(ちう)(ある)いて()せる、067()ンでもかンでも御望(おのぞ)次第(しだい)ぢや、068こんな結構(けつこう)神術(かむわざ)があるのに、069丹波(たんば)山奥(やまおく)(かく)しておくのは勿体(もつたい)ない、070(きやう)大阪(おほさか)()て、071天晴(あつぱ)神術(かむわざ)をして()せたら、072それこそ一遍(いつぺん)神様(かみさま)御神徳(ごしんとく)(わか)つて、073(みち)(ひら)けるだらう。074サア(はや)決心(けつしん)なされ』
075多田(ただ)小末(こすゑ)二人(ふたり)神懸(かむがかり)両方(りやうはう)からつめかける。076山子(やまこ)()きの元市(もといち)親子(おやこ)(のど)をならして(よろこ)び、
077『サアこれが神様(かみさま)御神徳(ごしんとく)だ。078天眼通(てんがんつう)から天耳通(てんじつう)079天言通(てんげんつう)080それにこんな神術(かむわざ)081これを()せたら、082いかな理屈(りくつ)(つよ)(をとこ)でも、083往生(わうじやう)せずには()られまい。084金儲(かねまう)けをしもつて、085神様(かみさま)のお(みち)(ひろ)まるのだ、086エヘヽヽヽ、087こんな結構(けつこう)(こと)()にあらうか』
088乗気(のりき)になつて()る。089岩森(いはもり)とく、090斎藤(さいとう)高子(たかこ)までが色々(いろいろ)不思議(ふしぎ)神術(かむわざ)習得(しふとく)して同意(どうい)()した。091喜楽(きらく)(こころ)では、092……そんな(ところ)()て、093(げい)をして()せるのは、094(なん)だか(はづか)しくて(たま)らない、095乍併(しかしながら)それで神様(かみさま)(みち)(ひら)けるのならば、096(あなが)()める(わけ)にも()くまい。097何事(なにごと)神懸(かむがかり)(まか)して、098(おも)()つて(きやう)大阪(おほさか)一興行(ひとこうぎやう)やりに()かうか……と決心(けつしん)し、099産土(うぶすな)神社(じんじや)(まゐ)つて、100(うかが)つてみた。101さうすると(また)もや自分(じぶん)(はら)から(かたまり)(ふた)(みつ)つゴロゴロと(のど)のあたりまで()(あが)り、
102『バカ バカ バカツ』
103呶鳴(どな)りつけた。104喜楽(きらく)()めるのが馬鹿(ばか)か、105興行(こうぎやう)()るのが馬鹿(ばか)か、106どちらで御座(ござ)ります………と()(かへ)して()ると、107(また)(はら)(なか)から、
108(その)判断(はんだん)がつかぬ(やつ)(なほ)馬鹿(ばか)だ』
109呶鳴(どな)られた。110喜楽(きらく)は、
111『そんなら多数決(たすうけつ)()つて、112神懸(かむがかり)元市(もといち)サンの()(とほ)りに(いた)します』
113()つてみれば、114(また)もや(はら)(なか)から、
115『やるならやれ、116兇党界(きよたうかい)(おと)してやるぞよ』
117呶鳴(どな)りつけられ、118とうとう霊学(れいがく)興行(こうぎやう)(おも)()(こと)にして(しま)つた。
119 (れい)(ごと)修業場(しうげふば)幽斎(いうさい)(はじ)めて()ると、120多田(ただ)(こと)容貌(ようばう)(にはか)獰悪(どうあく)となつて()た。121そしてはじけわれるやうな(こゑ)で、
122『アラ アラ アラ』
123呶鳴(どな)()し、124撃剣家(げきけんか)竹刀(しない)をふり()げて立合(たちあ)(やう)素振(そぶ)りをして()る。125審神者(さには)喜楽(きらく)は、
126(しづ)まれ!』
127一言(ひとこと)言霊(ことたま)発射(はつしや)した。128多田(ただ)(その)一言(いちごん)(もと)()行儀(ぎやうぎ)よく(すわ)り、129()んだ()(はな)して、130(むかし)武士(ぶし)が、131(こし)(かたな)()(やう)素振(そぶり)をなし、
132(これ)()よ』
133審神者(さには)(まへ)()をつき()す、134審神者(さには)()をつぶつた(まま)135(これ)()れば短刀(たんたう)根元(ねもと)に、136白紙(しらかみ)()いてあるのをつき()してるやうに()える。137そして(この)短刀(たんたう)()つた(をとこ)は、138(とし)四十(しじふ)前後(ぜんご)(やや)(あか)みがかつた(ほそ)だちの(ひん)のよい(をとこ)である。139多田(ただ)(くち)()つて()ふ、
140多田(ただ)(それがし)園部(そのべ)藩主(はんしゆ)小出公(こいでこう)指南番(しなんばん)奥野(おくの)(みさを)といふ(もの)(ござ)つたが、141同役(どうやく)のそねみに()つて、142讒言(ざんげん)をせられ、143園部(そのべ)()()され、144亀山(かめやま)(まゐ)り、145松平公(まつだひらこう)指南番(しなんばん)となり、146(つと)めてゐた(ところ)147十八歳(じふはちさい)殿様(とのさま)妹娘(いもうとむすめ)()れられて、148(つひ)同役(どうやく)より(また)もや讒言(ざんげん)をせられ、149無念(むねん)(なみだ)()んで、150丁度(ちやうど)八十年(はちじふねん)以前(いぜん)今晩(こんばん)151切腹(せつぷく)(いた)して相果(あひは)てた武士(ぶし)(ござ)る。152(この)短刀(たんたう)()られよ、153血汐(ちしほ)()いてをらうがなア』
154呶鳴(どな)()てた。
155喜楽(きらく)『ここは神様(かみさま)のお(うつ)(あそ)ばす(ため)修行場(しうぎやうば)であれば、156人霊(じんれい)などの()るべき(ところ)ではない。157(はや)立去(たちさ)つたがよからう』
158ときめつけた。159憑霊(ひようれい)(くび)左右(さいう)()り、
160(いやし)くも天下(てんか)豪傑(がうけつ)161武道(ぶだう)指南番(しなんばん)(むか)つて、162無礼千万(ぶれいせんばん)(その)()(でう)了見(れうけん)(いた)さぬぞ』
163()(なが)ら、164ツと立上(たちあが)り、
165『ヤア ヤア』
166(こゑ)をかけ、167喜楽(きらく)(あたま)(うへ)前後左右(ぜんごさいう)()(まは)り、168時々(ときどき)(あたま)()つて、169(さわ)ぎまはり、170何程(なにほど)鎮魂(ちんこん)をしても、171(あら)くなる(ばか)りで、172(すこ)しも(しづ)まらない。173喜楽(きらく)(ほとん)()てあまし、174(この)()をぬけ()し、175(ふたたび)産土(うぶすな)(やしろ)へかけつけて、176祈願(きぐわん)をこらして()た。177そこへ石田(いしだ)小末(こすゑ)(はし)つて()て、
178小末(こすゑ)『モシ先生(せんせい)179(しづ)まりました。180(みさを)()武士(ぶし)先生(せんせい)(ひと)御頼(おたの)みがあるから、181(はや)(かへ)つて()しいと(たの)んで()ります。182どうぞ(かへ)つて(くだ)さいませ』
183叮嚀(ていねい)(あたま)()げて(たの)んで()る。184喜楽(きらく)は、
185喜楽(きらく)『ヤアもう(しづ)まつたか、186そりや有難(ありがた)い、187産土様(うぶすなさま)御蔭(おかげ)だ』
188()(なが)ら、189社前(しやぜん)感謝(かんしや)し、190(ただち)元市(もといち)(たく)(かへ)つて()く。
191 (かへ)つて()れば多田(ただ)(こと)厳然(げんぜん)として(すわ)りこみ、
192多田(ただ)『アイヤ上田氏(うへだうぢ)193(それがし)最前(さいぜん)(まを)せし(ごと)く、194亀山公(かめやまこう)指南番(しなんばん)奥野(おくの)(みさを)(まを)(もの)(ござ)る。195女房(にようばう)もなければ()もなし、196(また)身内(みうち)もなき(ゆゑ)(あと)(とむら)ひくれるものもなく、197(ちう)(まよ)うて()りまする。198()いては自分(じぶん)(うち)出入(でいり)(いた)して()つた家来(けらい)子孫(しそん)内丸町(うちまるちやう)紙屑屋(かみくづや)(いた)して()る。199これは西尾(にしを)(まを)(もの)なれば、200よく(しら)べて(くだ)され、201戒名(かいみやう)何々(なになに)(しる)西尾(にしを)(たく)西町(にしまち)某寺(ぼうじ)(まつ)つてある。202()第一(だいいち)虚実(きよじつ)調(しら)べた(うへ)203(この)(はう)(みたま)御祀(おまつ)(くだ)さらば、204(それがし)(かみ)()(なほ)り、205(その)(はう)神業(しんげふ)保護(ほご)いたし、206日本国中(にほんこくぢう)(まを)すに(およ)ばず、207世界(せかい)隅々(すみずみ)(いた)るまで十年(じふねん)ならずして()(とどろ)かして()せるで(ござ)らう。208(なほ)(うたが)はしくば、209亀岡(かめをか)古世裏(こせうら)墓地(ぼち)()つて調(しら)べて(くだ)され。210入口(いりぐち)から(みぎ)(あた)つて(みつ)()石塔(せきたふ)が、211拙者(せつしや)石塔(せきたふ)(ござ)る。212性念(しやうねん)のある(しるし)には、213上田氏(うへだし)石塔(せきたふ)(まへ)()たれたならば自然(しぜん)(うご)くに()つて、214それを証拠(しようこ)御祀(おまつ)(くだ)され。215武士(ぶし)百姓(ひやくしやう)(せがれ)(あたま)()げてお(ねがひ)(まを)す』
216威丈高(ゐたけだか)になつて(かま)へてゐる。217これより喜楽(きらく)宇一(ういち)(その)()二三(にさん)修業者(しうげふしや)(ひき)つれ西町(にしまち)某寺(ぼうじ)調(しら)べ、218紙屑屋(かみくづや)西尾(にしを)(たく)()つて()いて()たが、219(みさを)()()はハツキリ(わか)らぬが、220某々院殿(ぼうぼうゐんでん)某々(ぼうぼう)居士(こじ)()(こと)(だけ)的中(てきちう)して()た。221(まつた)(みさを)(れい)間違(まちがひ)ないと、222(いさ)んで古世裏(こせうら)墓地(ぼち)()つて()た。223(ところ)墓地(ぼち)全体(ぜんたい)様子(やうす)亡霊(ばうれい)のいつた(とほ)寸分(すんぶん)間違(まちがひ)もなく、224(みぎ)(みつ)()石碑(せきひ)には(こけ)がたまつて、225ハツキリとは(わか)らぬが、226どうも()()(あら)はれてゐる。227石塔(せきたふ)がモウ(うご)くかモウ(うご)くかと()(こと)(ほとん)一時間(いちじかん)(ばか)り、228されど依然(いぜん)としてビクとも(うご)かない。229ハテ不思議(ふしぎ)と、230不思議(ふしぎ)でもない(こと)を、231不思議(ふしぎ)がつて瞑目(めいもく)し、232霊眼(れいがん)調(しら)べて()ると、233石塔(せきたふ)(うら)(おほ)きな古狸(ふるたぬき)()をむいてゐるのが()についた。
234『おのれド(たぬき)()が、235(ひと)馬鹿(ばか)にしやがつた、236これから(かへ)つて多田(ただ)(こと)審神(さには)厳重(げんぢう)にしてやらう』
237(おも)(なが)ら、238スタスタと穴太(あなを)修業場(しうげふば)(かへ)つて()た。239(その)(とき)(すで)()()れて()た、240修業場(しうげふば)には薄暗(うすぐら)いランプが(ひと)つ、241(とも)つて(その)(むか)ふに多田(ただ)(こと)石田(いしだ)四角張(しかくば)つて、242厳然(げんぜん)(ひかへ)えて()る。243自分等(じぶんら)姿(すがた)()るより、
244『ヤア上田(うへだ)殿(どの)245大儀(たいぎ)々々(たいぎ)よくこそお調(しら)(くだ)さつた。246(この)(はう)(まを)(こと)間違(まちがひ)(ござ)らうまいがなア、247(はや)(それがし)(れい)をお(まつ)(くだ)され。248ヤア元市(もといち)どの、249(その)(ほか)面々(めんめん)250いかい御苦労(ごくらう)(ござ)つた、251アツハヽヽヽ』
252豪傑(がうけつ)(わら)ひをなし、253(かた)二人(ふたり)一時(いつとき)()すつてゐる。
254喜楽(きらく)『コリヤ多田(ただ)(うつ)つてゐる古狸(ふるたぬき)()255小末(こすゑ)にうつつてる(たぬき)子分(こぶん)()256(この)審神者(さには)馬鹿(ばか)にしやがつたな、257サアもう了見(れうけん)ならぬ。258これから霊縛(れいばく)をかけて(いまし)めてやるから覚悟(かくご)(いた)せ』
259 多田(ただ)憑神(ひようしん)一層(いつそう)(おほ)きく(かた)をゆすりて大口(おほぐち)をあけ、
260『アハヽヽヽ、261イヒヽヽヽ』
262(わら)(なが)(よこ)にゴロンとこけて(しま)つた。263喜楽(きらく)両手(りやうて)()み、264一生懸命(いつしやうけんめい)にウンウンと霊縛(れいばく)をかけた。265石田(いしだ)はウンの(こゑ)(とも)にゴロリと(たふ)れた。266それと引替(ひきか)へに多田(ただ)肉体(にくたい)はムクリと()(あが)り、267ドンドンドンと(もち)つく(やう)二十貫(にじふくわん)(からだ)二尺(にしやく)(ばか)()()げして、268座敷中(ざしきちう)()(まは)る。269喜楽(きらく)一生懸命(いつしやうけんめい)になつて、
270喜楽(きらく)『どうぞお(しづ)まりを(ねが)ひます』
271(あたま)()げて(やさ)しく()た。272憑神(ひようしん)大口(おほぐち)あけて、
273『アハヽヽヽおれは小松林様(こまつばやしさま)(たの)まれて、274貴様(きさま)(たち)審神者(さには)修業(しうげふ)をさせてやつたのだ。275(じつ)(ところ)松岡(まつをか)だ。276()うだまされたのう、277石塔(せきたふ)(うら)(たぬき)()(とき)は、278随分(ずゐぶん)(めう)(かほ)だつたのう。279ホツホヽヽヽ、280アハヽヽヽ』
281(また)(はら)(かか)へて(わら)ひこける。
282 (にはか)室内(しつない)死人(しにん)(くさ)くなつて()た。283……あゝ(くさ)(くさ)いと各自(かくじ)(はな)をつまんでゐると、284どこともなしに坊主(ばうず)のお(きやう)(きこ)えて()るかと(おも)へば(いや)らしい(こゑ)巡礼歌(じゆんれいうた)(きこ)える、285チンドン、286ジヤブリンと()葬礼(さうれん)行列(ぎやうれつ)(みみ)()る。287此奴(こいつ)(あや)しいと()()()(ふさ)ぎ、288霊眼(れいがん)をてらせば、289幾十(いくじふ)とも()れぬ亡者(もうじや)各自(てんで)(かさ)(つゑ)()()ち、290乞食(こじき)坊主(ばうず)(あと)について、291障子(しやうじ)(ほそ)(あな)からくぐつて這入(はい)つて()るのが()についた。292そして一番先(いちばんさき)()()亡者(もうじや)(かほ)が、293(となり)のお(もん)()(むすめ)(かほ)にソツクリである。294喜楽(きらく)(おも)はず()らず、
295喜楽(きらく)『ヤアお(もん)サン』
296(さけ)んだ。297されど(なん)(こたへ)もなしに座敷(ざしき)へドカドカと亡者(もうじや)(かさ)なり(きた)り、298(つひ)には何百(なんびやく)とも()れず(かさ)なり()うて、299こちらを()いて(にら)んでゐる。300斎藤(さいとう)高子(たかこ)301岩森(いはもり)徳子(とくこ)二人(ふたり)神憑(かむがかり)はコワイコワイと(さけ)(なが)ら、302喜楽(きらく)(からだ)(くら)ひついて(ふる)()いてゐる。
303 (なん)とも()れぬ不快(ふくわい)(にほひ)室内(しつない)()ち、304ランプの(ひかり)自然(しぜん)(ほそ)つてそこら(ぢう)薄暗(うすぐら)くなつて()た。305それから蝋燭(らふそく)四五本(しごほん)(とも)してみたが、306どれもこれも()(ちひ)さくなつて()えて(しま)ふ。307仕方(しかた)がないから、308東側(ひがしがは)細溝(ほそみぞ)清水(せいすい)(からだ)(きよ)め、309(どう)()えて、310天津祝詞(あまつのりと)一生懸命(いつしやうけんめい)奏上(そうじやう)しかけた。311(あや)しき亡者(もうじや)(かげ)一人(ひとり)()二人(ふたり)()り、312とうとう(また)(もと)障子(しやうじ)(ほそ)(やぶ)(あな)から()()つて(しま)つた。313かかる(ところ)へお(もん)母親(ははおや)(はつ)といふ()アサンが、314(あは)ただしくやつて()て、
315(はつ)『モシモシ喜楽(きらく)サン、316最前(さいぜん)から(にはか)にお(もん)病気(びやうき)になつて囈言(うはごと)(ばか)りいつてゐます、317そして喜楽(きらく)サンどうぞこらへて(くだ)さいと、318幾度(いくど)となく繰返(くりかへ)して()りますから、319どうぞ、320どんな(わる)(こと)をしたか()らぬが、321まだ(とし)()かぬ子供(こども)(こと)だから、322カニーしてやつて(くだ)され。323大変(たいへん)(ねつ)で、324(くさ)うて(そば)へもよりつけませぬ』
325()(なが)ら、326()いて()る。327喜楽(きらく)はこれを()くより(となり)のお(もん)サンの(うち)()()れば、328(はつ)()アサンの()つた(とほ)り、329熱臭(ねつくさ)不快(ふくわい)(にほひ)(ただよ)(むすめ)はウンウンと(うな)つて()る。330丁度(ちやうど)元市(もといち)修業場(しうげふば)()いだ(にほひ)とソツクリであつた。331そこで(また)もや天津祝詞(あまつのりと)(こゑ)(たか)らかに奏上(そうじやう)し、332鎮魂(ちんこん)(ほどこ)せば、333(もん)サンは夢中(むちう)になつて、
334『のきます のきます』
335()(なが)ら、336寝所(ねどこ)から立上(たちあが)り、337二足(ふたあし)三足(みあし)門口(かどぐち)(はう)(ある)()し、338バタリと(その)()(たふ)れて(しま)つた。339それと同時(どうじ)病気(びやうき)はスツカリ(なほ)つて(しま)つたのである。
340 (この)(こと)があつてから、341次郎松(じろまつ)は、342いよいよ喜楽(きらく)飯綱使(いづなつかひ)だと(くち)(きは)めて(ののし)り、343曽我部(そがべ)村中(むらぢう)を、344御苦労(ごくらう)にも仕事(しごと)(やす)んでまでふれて(ある)いた奇篤(きとく)人間(にんげん)である。345あゝ惟神(かむながら)(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)
346大正一一・一〇・一〇 旧八・二〇 松村真澄録)