霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一九章 逆襲(ぎやくしふ)〔一〇三一〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第37巻 舎身活躍 子の巻 篇:第3篇 阪丹珍聞 よみ:はんたんちんぶん
章:第19章 第37巻 よみ:ぎゃくしゅう 通し章番号:1031
口述日:1922(大正11)年10月10日(旧08月20日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年3月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
ふと新聞の広告を見ると、壮士俳優募集と出ていた。自分はそれを見つめていると、多田琴が神がかりになって、霊術を応用して役者になれば名優にしてやろうと強制的に問いかけた。
自分は役者になってみたいものだと思っていたから、一も二もなく喜んで承諾した。しかし入会料として十円を取られた後、臀部に大きな腫物ができてうずいてたまらず、芝居どころではない。
腹の中から松岡神が出てきて、役者になりたそうにしていたから改心のために戒めたのだ、と笑う。丹波に帰ろうとすると腫物は嘘のように治ってしまい、それ以来俳優になってみたいという心はすっかり消え失せ、一心不乱に神界の御用に尽くすことになった。
穴太の斎藤某という口やかましい家の息子を直してやったらい、村の者も気が付いて信仰するだろうと思い、訪ねてみた。しかし追い返されてとぼとぼ帰ってきたところ、今度は次郎松が一人娘が狐つきになってしまったと泣きついてきた。
行ってみると、次郎松も次郎松の老母も、彼らが喜楽に敵対して悪口を触れ回るものだから、腹いせのために娘に狐をつけたのだと思い込んでいる。喜楽は口を極めて二人に霊学の説明をしたが、まったく聞いてくれない。
仕方なく娘についていた狐を祓うと、またしても次郎松は、よくも大事な娘に狐をつけてくれたとあべこべに罵詈雑言をなす始末であった。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2017-09-17 20:57:32 OBC :rm3719
愛善世界社版:226頁 八幡書店版:第7輯 116頁 修補版: 校定版:236頁 普及版:112頁 初版: ページ備考:
001 不図(ふと)配達(はいたつ)して()日出新聞(ひのでしんぶん)広告欄(くわうこくらん)()ると、002壮士(さうし)俳優(はいいう)募集(ぼしふ)()立派(りつぱ)広告(くわうこく)()()た。003自分(じぶん)一生懸命(いつしやうけんめい)(その)広告(くわうこく)見詰(みつ)めて()ると、004多田(ただ)(こと)がポンと()(あが)神懸(かむがか)りになつて、
005多田(ただ)(わし)男山(をとこやま)眷族(けんぞく)小松林命(こまつばやしのみこと)であるぞ。006(いま)(その)広告(くわうこく)にある(とほ)り、007神界(しんかい)仕組(しぐみ)正義団(せいぎだん)()壮士(さうし)芝居(しばゐ)団体(だんたい)募集(ぼしふ)されて()るのだ。008(まへ)はこれから、009今迄(いままで)苦労(くらう)して(おぼ)えた霊術(れいじゆつ)応用(おうよう)して芝居(しばゐ)役者(やくしや)になれ。010(かみ)守護(しゆご)して如何(どん)不思議(ふしぎ)(こと)でもさしてやるから、011川上(かはかみ)音次郎(おとじらう)以上(いじやう)名優(めいいう)にしてやらう。012如何(どう)ぢや、013(かみ)(まを)(こと)承諾(しようだく)するか、014(ただし)(いや)(まを)すか、015(すぐ)返答(へんたふ)をして()れ』
016とニコニコ(わら)(なが)強制的(きやうせいてき)()ひかける。017喜楽(きらく)(この)広告(くわうこく)()て、
018(おれ)一度(いちど)壮士(さうし)役者(やくしや)になつて()たいものだ』
019(おも)ひつめて()(さい)であるから、020(いち)()もなく(よろこ)んで、
021喜楽(きらく)『ハイ、022神様(かみさま)さへお(ゆる)(くだ)されば壮士(さうし)役者(やくしや)になります』
023速座(そくざ)(こた)へた。024さうすると小松林(こまつばやし)名乗(なのり)憑霊(ひようれい)は、025(うれ)しさうな(かほ)して言葉(ことば)まで(やさ)しく、
026流石(さすが)はよく(さき)()える、027(さき)(わか)つた審神者(さには)だ。028サア愚図々々(ぐづぐづ)してると応募者(おうぼしや)がつまれば駄目(だめ)だから、029今夜(こんや)直様(すぐさま)()つて()け。030さうして(かね)十五六円(じふごろくゑん)ばかり(つも)りをして()け』
031()(わた)す。
032 ありもせぬ(かね)()(あつ)めてヤツと十五円(じふごゑん)(こしら)へ、033保津(ほづ)(はま)から、034(ふね)()つて谷間(たにあひ)(くだ)嵯峨(さが)()き、035それから竹屋町(たけやちやう)富小路(とみこうぢ)宿屋(やどや)(たづ)ねて()つた。036正義団長(せいぎだんちやう)(しよう)する(をとこ)037()(わす)れたが直様(すぐさま)二階(にかい)案内(あんない)して()れ、038入会料(にふくわいれう)として十円(じふゑん)請求(せいきう)する。039直様(すぐさま)十円(じふゑん)(はう)()種々(いろいろ)手続(てつづ)きを()まして、040それから(やす)宿(やど)(さが)し、041日々(にちにち)柔術(じうじゆつ)(かた)稽古(けいこ)したり、042科白(せりふ)(おぼ)えたり、043十二三人(じふにさんにん)(をとこ)がやつて()た。044愚図々々(ぐづぐづ)して()ると五円(ごゑん)(かね)()くなつて(しま)ふ。045さうして臀部(でんぶ)(おほ)きな(ちやう)出来(でき)てビクとも出来(でき)ず、046うづいて(たま)らない。
047『こんな(こと)では芝居(しばゐ)どころの(さわ)ぎぢやない。048(なん)とかして(わが)()(かへ)りたいものだが(ある)いて()(こと)出来(でき)ず、049俥賃(くるまちん)はなし、050一層(いつそう)(こと)051枳殻邸(きこくてい)附近(ふきん)(おとうと)政一(まさいち)()()つて()るから、052其処迄(そこまで)(くるま)(はこ)んで(もら)世話(せわ)にならうかなア』
053(かんが)()んで()ると(はら)(なか)から(また)もや(たま)ごろが喉元(のどもと)へつめ(あが)つて()た。054さうして、
055『アハヽヽヽ』
056可笑(おか)しさうに(わら)()す。
057(あし)腫物(はれもの)(いた)くて(なに)どこでもないのに、058可笑(おか)しさうに(はら)(なか)から(わら)(やつ)(なに)枉津(まがつ)ぢやい』
059呶鳴(どな)つて()た。060(はら)(なか)からさも可笑(おか)しさうに小気味良(こぎみよ)(さう)(こゑ)で、
061『イヒヽヽヽ』
062連続的(れんぞくてき)十分間(じつぷんかん)(ほど)(わら)ひつづける。063さうして、
064(おれ)松岡(まつをか)ぢや、065貴様(きさま)新聞(しんぶん)広告(くわうこく)()て、066役者(やくしや)になり()(さう)にして()るから、067一寸(ちよつと)改心(かいしん)(ため)(なぶ)つて()たのだ。068本当(ほんたう)日本一(につぽんいち)大馬鹿(おほばか)だのう、069オホヽヽヽ』
070(わら)()す。071進退(しんたい)維谷(これきは)まつた喜楽(きらく)如何(どう)する(こと)出来(でき)ず、072宿賃(やどちん)三日分(みつかぶん)三円(さんゑん)六十銭(ろくじつせん)(はら)ひ、073丹波(たんば)(かへ)らうとして宿(やど)門口(かどぐち)()つて()た。074()らぬ()臀部(でんぶ)(おほ)きな腫物(はれもの)(うそ)をついた(やう)(なほ)つて()た。075それきり壮士(さうし)俳優(はいいう)になつて見度(みた)いと()(こころ)は、076スツカリ()()せ、077一心不乱(いつしんふらん)神界(しんかい)御用(ごよう)(つく)すと()(こころ)になつたのである。
078 (おな)穴太(あなを)斎藤(さいとう)(ぼう)()紋屋(もんや)息子(むすこ)が、079肺病(はいびやう)(くる)しみ医薬(いやく)(かう)もなく(こま)つて()るから、080其処(そこ)(たす)けに()つたら如何(どう)だ……と おいよ()(ばあ)サンが()()て、081(しき)りに(すす)めるので、082喜楽(きらく)も、
083彼処(あそこ)息子(むすこ)(けい)サンの(やまひ)(なほ)してやつたら、084チツと(むら)(もの)()がつくだらう。085信仰(しんかう)をするだらう』
086(おも)ふたので、087(あさ)(はや)くから(その)(うち)羽織袴(はおりはかま)訪問(はうもん)して、
088喜楽(きらく)(けい)サンの病気(びやうき)平癒(へいゆ)をさしてやりませうか』
089掛合(かけあ)ふて()た。090此処(ここ)(おく)サンはお(えつ)()ひ、091随分(ずゐぶん)(くち)八釜(やかま)しい(をんな)で、092(むら)(ひと)から雲雀(ひばり)のお(えつ)サンと仇名(あだな)をとつて()た。093(えつ)サンは喜楽(きらく)姿(すがた)()()(まる)うし、
094(えつ)『これこれ、095飯綱使(いづなつか)ひの喜三(きさ)ヤン、096(なん)(よう)かい、097大方(おほかた)(まへ)は、098(うち)(けい)病気(びやうき)(をが)んでやらうと()つて()たのだらう。099アヽいや いや いや、100(かみ)さまの()()いても(はら)()つ、101(うち)親類(しんるゐ)天理(てんり)サンに(ほう)けて(いへ)(くら)もサツパリとられて(しま)つた。102(ちか)はんは稲荷下(いなりさ)げに(ほう)けて相場(さうば)して、103(いへ)屋敷(やしき)田地(でんち)(まで)()つて(しま)つた。104(この)時節(じせつ)神々(かみかみ)(ぬか)(やつ)(ろく)(もの)はない。105(まへ)サンも(ひと)(とこ)一杯(いつぱい)かけようと(おも)ふて()たのんだらう。106サア何卒(どうぞ)(かへ)つて(くだ)さい。107(しか)喜楽(きらく)サン、108(わし)()()ふとお(まへ)(はら)()てて、109あたん飯綱(いひづな)をつけて(かへ)るかも()れぬが、110()けるなら()けなされ。111(わし)(ところ)黒住(くろずみ)さまを(まつ)つてあるから、112飯綱(いひづな)(くらゐ)(あだ)はしられませぬから大丈夫(だいぢやうぶ)ぢや。113黒住(くろずみ)さまは天照皇大神宮(てんせうくわうだいじんぐう)さまぢや、114天狗(てんぐ)サンや四足(よつあし)とはてんからお(かほ)(だん)(ちが)ひますぞえ。115サア(はや)()んで(くだ)され。116其処等(そこら)がウサウサして()た。117(また)(けい)病気(びやうき)(おも)うなると(こま)るから……サア()んでと()ふたら()んでおくれ。118エー尻太(しぶと)(ひと)ぢやなア、119蛙切(かわづき)りの()蛙切(かわづき)りさへして()れば()いのに、120どてらい山子(やまこ)(おこ)して(かね)()(くせ)に、121(ひと)(かね)乳屋(ちちや)をしたり、122(その)乳屋(ちちや)(また)面白(おもしろ)くない(やう)になつたので、123そろそろ商売替(しやうばいが)へをして飯綱使(いひづなづか)ひをするなんて、124(まへ)にも似合(にあ)はぬ(こと)をするぢやないか。125昨日(きのふ)次郎松(じろまつ)サンが()()(なに)()()ふてをりましたぞえ。126薩張(さつぱ)()けの(かは)()けて()るぢやないか。127亀岡(かめをか)紙屑屋(かみくづや)へは如何(どう)でしたな』
128(くち)(きは)めて罵詈嘲弄(ばりてうろう)する。129喜楽(きらく)はむかついて(たま)らぬけれど、
130此処(ここ)(ひと)辛抱(しんばう)だ。131こんな八釜(やかま)しい(をんな)誤解(ごかい)をといておかねば将来(しやうらい)()面白(おもしろ)くない』
132(おも)ふたので、133色々(いろいろ)雑多(ざつた)神様(かみさま)(みち)()いて()かせたが、134てんで(みみ)をふさいで()かうとせぬ。135(えつ)サンは半泣声(はんなきごゑ)()して、
136(えつ)『エーエー(うる)さい。137何程(なにほど)落語家(はなしか)喜楽(きらく)サンが(うま)(こと)()つても、138(ろん)より証拠(しようこ)139現在(げんざい)身内(みうち)次郎松(じろまつ)サンが証拠人(しようこにん)だから……エー(けがら)はしい、140(はや)()んで(くだ)さい。141これお(とめ)142(しほ)もつておいで……』
143下女(げぢよ)()(まで)()びたてて(ひと)(しほ)でもかけてぶつ(かへ)さうとして()る。144仕方(しかた)()いのでトボトボと(わが)()()して(かへ)つて()た。
145 小幡橋(をばたばし)(たもと)まで(かへ)つて()ると、146次郎松(じろまつ)サンが真青(まつさを)(かほ)して()()るのに出会(であ)つた。147次郎松(じろまつ)ついにない(やさ)しい(かほ)をして、
148『もしもし上田(うへだ)先生(せんせい)149一寸(ちよつと)(たの)まれて(くだ)され。150二三日前(にさんにちまへ)から(うち)阿栗(おぐ)一人娘(ひとりむすめ)())に(きつね)()いて囈言(うさごと)()ふたり、151雪隠(せつちん)()つて(しり)から()るものを()(すく)ひ、152コロコロ団子(だんご)(こしら)へて仏壇(ぶつだん)(そな)へたり、153(めう)手付(てつき)(をど)つたり、154()ねたりした挙句(あげく)は、155布団(ふとん)をグツスリ(かぶ)つて寝通(ねとほ)しぢや。156モウこれからお(まへ)には敵対(てきた)はぬから何卒(どうぞ)堪忍(かんにん)して()れ。157あんまり(おれ)反対(はんたい)するのでお(まへ)(おこ)つて、158それ……あの……何々(なになに)()けたのぢやらう。159もうこれから屹度(きつと)(まへ)()(とほ)りにするから、160何々(なになに)()れて()つて(くだ)され。161ナア喜楽(きらく)先生(せんせい)162何卒(どうぞ)(たの)みますわ』
163(はし)(うへ)(おほ)きな(こゑ)()ふ。164(ひと)(きこ)えては(ざま)(わる)いと(おも)ふては、165キヨロキヨロ其処等(そこら)見廻(みまは)して()ると、166(まつ)サンは頓着(とんちやく)なしに(むすめ)病気(びやうき)(こと)(しやべ)()てる。167仕方(しかた)()いので喜楽(きらく)は、
168喜楽(きらく)()(かく)()つて()ませう』
169(さき)()つて次郎松(じろまつ)(うち)()つた。170おこの(ばあ)サンは喜楽(きらく)(かほ)()て、171いきなり、
172おこの『これ喜楽(きらく)サン、173(はら)()つたぢやらうが何卒(どうぞ)(こら)へてお()れ。174昨夜(ゆうべ)から阿栗(おぐ)喜楽(きらく)サン喜楽(きらく)サンと八釜(やかま)しう()ふて仕様(しやう)がない。175あまり(うち)(まつ)(かみ)さまの悪口(わるくち)()ふもんだから、176(まへ)(おこ)つて一寸(ちよつと)……したのだらう。177(なん)()ふても隠居(いんきよ)母家(おもや)間柄(あひだがら)178(うち)難儀(なんぎ)はお(まへ)(ところ)難儀(なんぎ)だ、179(また)(まへ)(ところ)難儀(なんぎ)矢張(やつぱり)(おれ)(うち)難儀(なんぎ)だ。180(わる)(こと)せずに、181(はや)飯綱(いひづな)()れて()んでくれ。182年寄(としより)(たの)みぢやから……たつた一人(ひとり)(まご)があんな(ざま)になつてるのを()()(わし)(こころ)はいぢらしいわいなア、183アンアンアン』
184()()す。185喜楽(きらく)はムツとして、
186喜楽(きらく)『これ、187おこのサン、188そんな無茶(むちや)(こと)()ひなさんな、189殺生(せつしやう)ぢやないか。190(たれ)がそんな(もの)使(つか)ふものか、191自分(じぶん)(うち)()いた奉公人(ほうこうにん)でさへも仲々(なかなか)()(こと)()かぬぢやないか。192仮令(たとへ)そんな(きつね)があるにした(ところ)人間(にんげん)()(こと)()きさうな(はず)がない。193あんまり見違(みちが)ひをしておくれな、194わしは(はら)()つ。195村中(むらぢう)(もの)飯綱使(いひづなづか)ひぢやと(わる)()はれるのも、196(みな)(まつ)サンが仕様(しやう)もない(こと)()れて(ある)くから(おれ)迷惑(めいわく)をしてるのぢや。197結構(けつこう)(かみ)さまの()まで(わる)くして(たま)らぬぢやないか』
198おこの『その腹立(はらだ)ちは(もつと)もぢやが、199(ほか)ぢやないから何卒(どうぞ)機嫌(きげん)(なほ)して阿栗(おぐ)病気(びやうき)(たす)けてやつてくれ。200これ(まつ)201(まへ)もチツと喜楽(きらく)サンに(たの)まぬかいな』
202 (おく)()阿栗(おぐ)()(むすめ)は、203ケラケラケラと他愛(たわ)いもなく(きつね)()いて(わら)ふて()る。204(たす)けてやつても(わる)()はれる、205(たす)けてやらねば(なほ)(わる)()はれる、206こんな(をとこ)にかかつたら如何(どう)する(こと)出来(でき)ぬ。207エー仕方(しかた)がないと病人(びやうにん)(まへ)端坐(たんざ)して天津祝詞(あまつのりと)奏上(そうじやう)し、208神言(かみごと)(しづか)(とな)へて(ひと)(ふた)()()……と(あま)数歌(かずうた)四五回(しごくわい)繰返(くりかへ)した。209病人(びやうにん)はムクムクムクと()()がり、210矢庭(やには)跣足(はだし)のまま(には)()り、211門口(かどぐち)()(あたま)()つて『キヤツ』と()つたまま仰向(あふむ)けに(たふ)れた。212(この)(とき)高畑(たかはた)(きつね)退()いたのである。213それから(むすめ)病気(びやうき)はスツカリ(なほ)つて(しま)つた。214(まつ)サンは(くち)(とが)らして、
215次郎松(じろまつ)『これ、216喜楽(きらく)サン、217(まへ)(なん)()悪戯(いたづら)をする(をとこ)だ。218(ひと)(とこ)(むすめ)(きつね)()けて(なが)(こと)(くる)しめ、219()らぬかと(おも)ふて()つたが、220(うち)母者人(ははじやひと)「母者人」とは母親を親しみを込めていう言葉。や、221(この)(まつ)サンの(くろ)()でサツパリ看破(みやぶ)られ、222しやう(こと)なしに()けた(きつね)をおひ()したのだらう。223今度(こんど)はこれで(こら)へてやるが、224一人娘(ひとりむすめ)(また)こんな()()はすと警察(けいさつ)へつき()して(しま)ふぞ。225サア飯綱使(いひづなづか)ひ、226(はや)()ね、227何程(なんぼ)(あたん)をしようと(おも)ふても、228(うち)には金比羅(こんぴら)さまのお(ふだ)(この)(とほ)沢山(たくさん)にあるから、229これから金比羅(こんぴら)さまを(いの)つてお(まへ)魔術(まじゆつ)()かぬ(やう)にしてやる。230(まへ)も、231もういい加減(かげん)改心(かいしん)をして(もと)乳屋(ちちや)になり、232年寄(としより)やお(よね)はんに安心(あんしん)をさしたら如何(どう)ぢや。233(まへ)(とこ)難儀(なんぎ)をすると矢張(やつぱり)(だま)つて見捨(みす)てておく(わけ)には()かぬから、234親切(しんせつ)()をつけるのだから(わる)(おも)(こと)はならぬぞ』
235(むすめ)(たす)けて(もら)うてお(れい)()(どころ)か、236アベコベに不足(ふそく)のタラダラを(なら)罵詈(ばり)(たくま)しうし、237()めごかしの御意見(ごいけん)諄々(じゆんじゆん)()かして()れた。238(まつ)サンは(その)翌日(あくるひ)から益々(ますます)猛烈(まうれつ)反対(はんたい)をしだし、
239次郎松(じろまつ)(うち)(むすめ)喜楽(きらく)がド(ぎつね)()けて(くる)しめよつた。240到頭(たうとう)()けが(あら)はれて(おれ)()()けられ、241仕様事(しやうこと)なしに骨折(ほねお)つて()けた(きつね)をおひ()して()れて()によつた。242(おれ)親類(しんるゐ)()つて()ふのだから(うそ)ぢやない。243みな用心(ようじん)しなされや』
244其処等中(そこらぢう)()(ある)いた。245喜楽(きらく)こそ()(つら)(かは)である。
246大正一一・一〇・一〇 旧八・二〇 北村隆光録)