むつかしき世とはなりけり上も下も重鎖となるべき石のなければ
天狗風にはかに吹きて合羽屋の親爺は濠におちんとぞする
雛段に虫喰ひ人形置き並べ酔うて狂へる世こそかなしき
田吾作の旗持人形が雛段の上にがんばる世こそさびしき
シグナルのやうな男が雛段の上にがんばる世はくだちたり
ライオンの姿地上に消えうせて痩犬一つ吠えたけりゐる
骨と皮ばかりになりし痩犬の老いたる姿のみじめなるかな
日の本は神のひらきし神の国神の出でずば治まらぬ国
獣のサツクばかりになりはててまことの人間少なき世なり
霊的に人の心をしらぶれば人らしき者まれなる世なり
かりごもの乱れに乱るる世の中を手をつかねみる獣のサツクよ
吾が思う十分一の働きをする人なきに朝夕さびしむ
口ばかり達者なれども肝腎の働く手足は糸の如細き
今の世に吾が大本の道なくばこの行く先はあやふかるべし
これと云ふ人間のなき世の中にまことの道を説くは苦しき
私利私欲のみにふけりてわが国の行先思はぬけもの多きも
衣食住これより外に望みなき獣のはばる世こそさびしき
恥と云ふことを知らざる今の世は百鬼昼行の姿なりけり
自己愛の欲にかられて人の道よこしまに行く蟹の世の中
骨のなき蛸にも似たり今の世は吸ふことばかり考へてゐる
人の汗人の膏をしぼりつつ生血まで吸ふ餓鬼の世の中
レツテルをはがして裸にして見れば骨と皮とのがりがり亡者よ
上も下もがりがり亡者の充ち満ちて神の御国は地獄となれり
漸くに秋深みつつ遠近の山野にすだく虫の音かなしき
骸骨が草葉のかげをぬけ出して風のまにまにうかれ出でたり
骸骨がかなしき声をしぼりつつ秋野の虫の如くさえづる
中原の鹿を獲んとて牛馬が猫の如くになりて騒ぐも
猫なればまだしもよけれ溝池の蛙となるが関の山なる
天津神生ませたまひし神国を守り得べきや蛙の身にして
人間と生れ出でたる尊さを忘れてけものの真似のみぞする
虫けらの如き真似のみするめいかおあしばかりをほしがる蛸野郎
年も早や虫なく頃となりにけり蛙にならんとさわぐこの秋
この秋は真葛ケ原に蛙なく日比谷ケ原のおたまじやくしと
人間の屑ばかり出る府議候補名をきくさへも厭になるなり
人間の屑が屑をば選挙する今年の秋は虫の音しげし
ろくな事一つもなさず云いもせずおさまりかへる糞壺の蛙
月清し虫の音清しこの秋をお玉杓子のさわぎたつるも
溝池にそだちしお玉杓子等が蛙となりて何も出来なく
蛇さへも呑まぬきたなき糞蛙只ガヤガヤと鳴くばかりなり
鐘たたき馬追松虫鈴虫や蟋の声蛙にまされる
向ふみずに日比谷ケ原を飛び交へば人の蛙と名づけたりけむ
千早振る神の御国をけがしゆく蛙の言霊いたくにごれり
不景気の風吹き荒ぶこの秋を蛙にならんと馬鹿がさわぐ
馬鹿も猫も鼠も犬豚も蛙生まんと血眼の秋
宗教をこはたんとして痴人が醜の痴事するぞゆゆしき
反宗教運動なせる痴人の数珠つなぎにされしさみしき秋なり
神の守る尊き国の有難さ知らぬ痴人が外国をしたふ
外国の魔神の教にあざむかれ男も恥づるまねする女よ
女学校の門よりはき出す怪物は女の顔した男のみなり
男にもあらず女に非ずして蛸にも似たる大学生かな
日の本の国の名のみは残れども外国人やけもののみ住む
獣のサツクばかりがうようよと神の御国を朝夕けがすも
神言の朝夕に轟ける天恩郷は神の御舎
君が代の千代ことほぎて吾が建てし石の宮居はとこしへなるべし
高台の上にそびゆる一本の公孫樹に似たるわがすぐせかな