霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二三章 短兵急(たんぺいきふ)〔五一九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第12巻 霊主体従 亥の巻 篇:第3篇 天岩戸開(三) よみ:あまのいわとびらき(三)
章:第23章 短兵急 よみ:たんぺいきゅう 通し章番号:519
口述日:1922(大正11)年03月11日(旧02月13日) 口述場所: 筆録者:藤津久子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年9月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
深雪姫の館から海上を見下ろすと、幾百千もの戦船が島へ押し寄せてくるのが見えた。深雪姫は老臣・高杉別に、敵軍の見定めを命じた。
深雪姫は部下の大国別を呼ぶと、敵軍が何者にせよ、決して剣を抜いてはならぬ、善言美詞をもって対する素盞嗚命の御心を忘れるな、と申し付けた。
大国別は攻め寄せる大軍に対して今、日ごろたくわえ鍛えた武を用いるときではないのでしょうか、と深雪姫に反問する。深雪姫は再度、決して三五教の精神に則って、武に対して武を持って応えてはならぬ、ときつく宣示した。そして、今から御神前に祈願をして寄せ来る敵を言向け和す、といって奥殿に去ろうとする。
大国別は去っていこうとする深雪姫を留めて、なにとぞ今武勇を発揮することをお許しください、と懇願した。しかし深雪姫は悠々と宣伝歌を歌いながら奥殿に姿を隠してしまった。
数万の敵軍は上陸し、殺戮しながら城下に迫っている。深雪姫の将卒たちは、攻撃命令を今か今かと息を潜めて待っている。大国別は深雪姫の宣示にもろ手を組んでただ思案するのみであった。
そこへ、高杉別が帰って来た。高杉別は大国別が防戦の準備をしないで手をこまねいている様をなじり、自ら敵軍に対そうと外へ行こうとする。大国別は声をかけ、至仁至愛の神様の御心を考慮するように、と諭すが、高杉別は聞かない。
高杉別が敵に対しようと外に出ると、御年村の虎公こと手力男神は、ゆうゆうと敵軍の有様を見物している。高杉別は防戦を命じるが、手力男は取り合わない。
高杉別は怒って手討ちにしようとするが、逆に手力男に抑えられてしまう。手力男が手を離すと高杉別はまた討ってかかるが、手力男がひらりとよけたはずみで、抜き身のまま倒れてしまった。
黒煙は館を包み、攻め寄せる人馬の物音は近づいてきた。
主な登場人物: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:
愛善世界社版:190頁 八幡書店版:第2輯 695頁 修補版: 校定版:201頁 普及版:82頁 初版: ページ備考:
派生[?]この文献を底本として書かれたと思われる文献です。[×閉じる]出口王仁三郎著作集 > 第三巻「愛と美といのち」 > [6] 如是我観 > [6-2] 平和に生きる > [6-2-4] 言向けやわせ
001 (ひと)(じま)なる深雪姫ケ館(みゆきひめがやかた)高楼(たかどの)より、002眼下(がんか)海面(かいめん)見渡(みわた)せば、003幾百千(いくひやくせん)とも(かぎ)りなき軍船(いくさぶね)004魚鱗(ぎよりん)(そな)堂々(だうだう)として(しま)目蒐(めが)けて押寄(おしよ)(きた)物々(ものもの)しさ。005唯事(ただごと)ならじと深雪姫(みゆきひめ)近侍(きんじ)老臣(らうしん)高杉別(たかすぎわけ)(ちか)(まね)()(たま)ふ。
006高杉別(たかすぎわけ)殿(どの)007(わらは)(いま)()高楼(たかどの)より海面(かいめん)(なが)むれば、008此方(こなた)(むか)つて()()数多(あまた)兵船(ひやうせん)ウラル(ひこ)魔軍(まぐん)か、009天教山(てんけうざん)()れませる皇大神(すめおほかみ)神軍(しんぐん)か、010(たしか)見届(みとど)(きた)られよ』
011下知(げち)すれば、012高杉別(たかすぎわけ)は、
013委細(ゐさい)承知(しようち)(つかまつ)りました。014われは(これ)より当山(たうざん)(くだ)り、015(こと)実否(じつぴ)(ただ)した(うへ)(ただち)報告(はうこく)(つかまつ)るべし』
016()ふより(はや)(うま)(またが)り、017深雪ケ丘(みゆきがをか)浜辺(はまべ)(むか)つて戞々(かつかつ)(くだ)()く。018深雪姫(みゆきひめ)(また)もや大国別(ひろくにわけ)(ちか)(まね)き、
019『アイヤ大国別(ひろくにわけ)殿(どの)020当山(たうざん)()()(きた)数多(あまた)軍勢(ぐんぜい)唯事(ただこと)ならず。021仮令(たとへ)ウラル(ひこ)魔軍(まぐん)にもせよ、022(かなら)武器(ぶき)(もつ)(これ)敵対(てきたい)すべからず、023善言美詞(ぜんげんびし)言霊(ことたま)(もつ)(まが)言向(ことむ)(やは)すは神須佐之男(かむすさのを)(みこと)大御心(おほみこころ)024この(やかた)には数多(あまた)武器(ぶき)025兵士(つはもの)026()(そな)へありと(いへど)も、027(けつ)して(てき)殺戮(さつりく)する目的(もくてき)(あら)ず。028天下(てんか)神人(しんじん)(こころ)(ひそ)曲津軍(まがついくさ)を、029(つるぎ)威徳(ゐとく)()つて()(おそ)れしめ帰順(きじゆん)せしむるの神器(しんき)なれば、030(ゆみ)(ふくろ)に、031(つるぎ)(さや)(をさ)まり(かへ)つて、032(すべ)ての(てき)(のぞ)むべく部下(ぶか)将卒(しやうそつ)にも(この)(むね)(きび)しく(つた)へられよ』
033(ことば)(おごそ)かに宣示(せんじ)された。
034大国別(ひろくにわけ)(てき)雲霞(うんか)(ごと)く、035当山(たうざん)(むか)つて()(きた)り、036島人(しまびと)殺戮(さつりく)し、037民家(みんか)山林(さんりん)()(はら)ひ、038()炎々(えんえん)として最早(もはや)(やかた)間近(まぢか)()()せたり。039日頃(ひごろ)武術(ぶじゆつ)(きた)へたるは(かか)(とき)用意(ようい)ならめ。040(みが)()いたる弓矢(ゆみや)手前(てまへ)041(きも)()りたる将卒(しやうそつ)(いま)武勇(ぶゆう)(あら)はれ(どき)042この(とき)()いて(いづ)れの(とき)(たたか)はむや。043みすみす(てき)()(ほろぼ)されむは(こころ)もとなし。044(かみ)至仁(しじん)至愛(しあい)(まし)ませども(とき)あつて折伏(しやくふく)利剣(りけん)(もち)(たま)ふ。045(いは)んや、046コーカス(ざん)(しづ)まり(たま)ふ、047十握(とつか)宝剣(ほうけん)御魂(みたま)威徳(ゐとく)()()せる貴神(きしん)(おい)てをや。048血迷(ちまよ)(たま)ひしか、049(いま)一度(いちど)反省(はんせい)されむ(こと)(こひねが)(たてまつ)る』
050深雪姫(みゆきひめ)(つるぎ)容易(ようい)(もち)(べか)らず。051(つるぎ)凶器(きやうき)なり。052(きやう)(もつ)(きよう)(あた)り、053(ばう)(もつ)(ばう)(むく)ゆるは普通人(ふつうじん)(おこな)手段(しゆだん)054(いやし)くも三五教(あななひけう)天下(てんか)宣伝(せんでん)する天使(てんし)()として、055また宣伝使(せんでんし)(しよく)として、056善言美詞(ぜんげんびし)言霊(ことたま)閑却(かんきやく)し、057()(もつ)()(あた)るは()(こころ)(ゆる)さざる(ところ)058ただ何事(なにごと)至仁(しじん)至愛(しあい)(かみ)(まか)せよ。059()(たつと)雄健(ゆうけん)尊重(そんちよう)すると()ふは、060(かま)へなきの(かま)へ、061武器(ぶき)あつて武器(ぶき)(もち)ゐず、062武器(ぶき)()くして武器(ぶき)(もち)ゐ、063()堪忍(たへしの)び、064柔和(にうわ)(もつ)狂暴(きやうばう)()ち、065(ぜん)(もつ)(あく)(たい)し、066(かみ)(もつ)()(たい)す、067(じう)()(がう)(せい)するは神軍(しんぐん)兵法(へいはふ)068六韜三略(りくたうさんりやく)神策(しんさく)なり。069(なんぢ)(この)主旨(しゆし)忘却(ばうきやく)する(なか)れ。070(われ)はこれより奥殿(おくでん)()り、071大神(おほかみ)御前(おんまへ)神言(かみごと)奏上(そうじやう)し、072()()(てき)言向(ことむ)(やは)さむ。073一兵一卒(いつぺいいつそつ)(はし)(いた)(まで)074今日(けふ)(かぎ)武器(ぶき)()たしむるべからず』
075宣示(せんじ)し、076悠々(いういう)として奥殿(おくでん)()らむとなしたまふ。077大国別(ひろくにわけ)は、078深雪姫(みゆきひめ)(そで)(ひか)へて、
079『まづまづ(しばら)くお()(くだ)さいませ。080()()(ちか)づく矢叫(やさけ)びの(こゑ)081如何(いか)善言美詞(みやび)神嘉言(かむよごと)(もつ)言向(ことむ)(やは)さむとすればとて、082暴力(ばうりよく)には(およ)(がた)からむ。083(われ)はこれより部下(ぶか)将卒(しやうそつ)(はげ)まし、084()()(てき)縦横無尽(じうわうむじん)()()て、085薙払(なぎはら)ひ、086日頃(ひごろ)(きた)へし武勇(ぶゆう)(しめ)さむ。087(この)(こと)(ばか)りは()つて御許(おゆる)(くだ)さいませ』
088(こぶし)(にぎ)()(ふる)はし、089雄健(をたけ)びしつつ(ねが)()る。090深雪姫(みゆきひめ)悠々(いういう)(せま)らず、091悠長(いうちやう)なる音調(おんてう)にて、
092(かみ)(おもて)(あら)はれて
093(ぜん)(あく)とを立別(たてわ)ける
094(この)()(つく)りし神直日(かむなほひ)
095(こころ)(ひろ)大直日(おほなほひ)
096(ただ)何事(なにごと)(ひと)()
097直日(なほひ)見直(みなほ)()(なほ)
098()曲言(まがこと)()(なほ)
099正義(せいぎ)刃向(はむか)(つるぎ)なし
100(まこと)(ちから)()(すく)
101(かみ)(ちから)三五(あななひ)
102(かみ)(をしへ)(つゑ)として
103如何(いか)なる(てき)(きた)るとも
104(かみ)嘉言(よごと)言向(ことむ)けて
105(てき)(きず)つく(こと)(なか)
106(かみ)(なんじ)(とも)にあり
107(かみ)(まこと)()(とほ)
108(まこと)(ひと)(すく)ふべし
109(いま)身魂(みたま)(ため)(どき)
110(こころ)持方(もちかた)(ひと)つにて
111(ぜん)(たちま)(あく)となり
112(あく)(たちま)(ぜん)となる
113善悪正邪(ぜんあくせいじや)分水嶺(ぶんすゐれい)
114(あめ)(した)にはおしなべて
115(てき)味方(みかた)()きものぞ
116味方(みかた)(とき)(てき)となり
117(てき)味方(みかた)となり(かは)
118(ただ)何事(なにごと)(ひと)()
119(かみ)(まか)せよ(ことごと)
120(こころ)(いら)ちて過失(あやま)つな
121(かみ)(なんじ)(とも)()
122朝日(あさひ)()るとも(くも)るとも
123(つき)()つとも()くるとも
124仮令(たとへ)大地(だいち)(しづ)むとも
125(この)神島(かみしま)()けるとも
126(かみ)(かなら)吾々(われわれ)
127(あか)(こころ)御覧(みそなは)
128(やす)きに(すく)(たま)ふべし
129(まこと)(ひと)つの玉鉾(たまぼこ)
130()()(てき)言向(ことむ)けて
131(かみ)(ちから)(あら)はせよ
132(かみ)稜威(みいづ)(かがや)かせ』
133(うた)ひながら、134奥殿(おくでん)姿(すがた)(かく)させ(たま)ふ。
135 数万(すうまん)軍勢(ぐんぜい)全島(ぜんたう)()(はな)ち、136(をり)からの(かぜ)(あふ)られて黒煙(こくえん)濛々(もうもう)として四辺(あたり)(つつ)み、137数多(あまた)将卒(しやうそつ)(いづ)れも雄猛(をたけ)びして、138防戦(ばうせん)(めい)(くだ)るを(いま)(おそ)しと固唾(かたづ)()むで(ひか)へゐる。
139 大国別(ひろくにわけ)双手(もろて)()むで、140青息吐息(あをいきといき)141如何(いかが)はせむと思案(しあん)()るる(とき)しもあれ、142(こま)足音(あしおと)戞々(かつかつ)()(かへ)りたる高杉別(たかすぎわけ)はヒラリと(こま)()()りて、143大国別(ひろくにわけ)(まへ)(あら)はれ、
144『ヤア大国別(ひろくにわけ)殿(どの)145貴神(きしん)何故(なにゆゑ)防戦(ばうせん)用意(ようい)をなさらぬか、146(てき)四方(しはう)より数万騎(すうまんき)(もつ)当山(たうざん)(かこ)み、147山林(さんりん)()(はな)(すで)当館(たうやかた)烏有(ういう)()せむとする場合(ばあひ)148(なに)躊躇(ちうちよ)さるるや』
149(ひざ)(たた)いて呶鳴(どな)()けたるにぞ、150大国別(ひろくにわけ)(なん)(いらへ)もなく双手(もろて)()むだ(まま)(うつ)むき(なみだ)さへ腮辺(しへん)(つた)ふるを()()つた高杉別(たかすぎわけ)(もど)かしげに、
151『エイ、152日頃(ひごろ)武勇(ぶゆう)にも()ず、153千騎一騎(せんきいつき)()場合(ばあひ)154(てき)勢力(せいりよく)萎縮(ゐしゆく)して、155周章狼狽(しうしやうらうばい)(あま)り、156憂苦(いうく)(しづ)卑怯(ひけふ)未練(みれん)貴神(きしん)振舞(ふるまひ)157最早(もはや)()くなる(うへ)は、158貴神(きしん)相談(さうだん)するも(なん)(えき)あらむや。159()れはこれより(やかた)将卒(しやうそつ)(ひき)ゐ、160此処(ここ)先途(せんど)一戦(いつせん)(こころ)み、161勝敗(しようはい)一時(いちじ)(けつ)せむ』
162雄健(をたけ)びし(なが)ら、163スタスタと(この)()()つて(おもて)(いで)むとするを、164大国別(ひろくにわけ)言葉(ことば)をかけ、
165『ヤア高杉別(たかすぎわけ)殿(どの)166貴下(きか)御意見(ごいけん)御尤(ごもつと)千万(せんばん)167()れとても当館(たうやかた)主宰神(しゆさいじん)168闇々(やみやみ)(てき)蹂躪(じうりん)(まか)袖手(しうしゆ)傍観(ばうくわん)するに(しの)びむや。169さは()(なが)ら、170至仁(しじん)至愛(しあい)大神(おほかみ)天下(てんか)救済(きうさい)御神慮(ごしんりよ)慎重(しんちよう)考慮(かうりよ)せざる()からず。171貴神(きしん)(しばら)熟考(じゆくかう)せられよ』
172大国別(ひろくにわけ)殿(どの)言葉(ことば)とも(おぼ)えぬ。173卑怯(ひけふ)未練(みれん)陳弁(ちんべん)174貴神(きしん)本島(ほんたう)(まも)(たま)深雪姫(みゆきひめ)(かみ)宰神(さいしん)ならずや。175()かる卑怯(ひけふ)未練(みれん)御心掛(おこころがけ)にて闇々(やみやみ)(てき)占領(せんりやう)されなば、176(なに)(もつ)深雪姫(みゆきひめ)(かみ)言解(ことわ)けあるか。177アレアレ()かれよ、178山岳(さんがく)(とどろ)(ばか)りの(てき)(さけ)(ごゑ)179到底(たうてい)貴神(きしん)賛成(さんせい)覚束(おぼつか)なければ、180()れは(これ)より単独(たんどく)にて自由(じいう)行動(かうどう)()で、181本島(ほんたう)()()()たる雲霞(うんか)(ごと)大軍(たいぐん)を、182日頃(ひごろ)(きた)へし武力(ぶりよく)(もつ)鏖殺(おうさつ)せむ』
183(いきほひ)()んで(おもて)をさして駆出(かけいだ)す。
184『ヤアヤア高杉別(たかすぎわけ)殿(どの)185(しばら)(しばら)くお()ちあれ』
186(なに)ツ、187(この)()(およ)むで暫時(しばし)猶予(いうよ)がならうか、188()てば官軍(くわんぐん)()くれば(ぞく)189大国別(ひろくにわけ)殿(どの)190拙者(それがし)武勇(ぶゆう)御目(おんめ)()けむ』
191()()てて表門(おもてもん)へと駈出(かけい)だし、192部下(ぶか)将卒(しやうそつ)(むか)つて、193戦闘(せんとう)準備(じゆんび)命令(めいれい)せむとする(をり)しも、194深雪ケ丘(みゆきがをか)より(かへ)(きた)れる手力男(たぢからを)(かみ)(この)(てい)()て、
195『ヤア、196大変(たいへん)面白(おもしろ)くなつて()ましたね。197(ひと)敵軍(てきぐん)行列(ぎやうれつ)(ゆつく)りと、198(さけ)でも()むで見物(けんぶつ)(いた)しませうか』
199高杉別(たかすぎわけ)(なんじ)は、200御年村(みとせむら)自称(じしよう)丑寅(うしとら)金神(こんじん)手力男(たぢからを)ではないか。201かかる危急(ききふ)存亡(そんばう)場合(ばあひ)202(なに)悠々(いういう)として気楽(きらく)さうに(かま)へて()らるるや。203千騎一騎(せんきいつき)(この)場合(ばあひ)204防戦(ばうせん)用意(ようい)をなされ』
205『アハヽヽヽ、206ヤア面白(おもしろ)面白(おもしろ)い、207高杉別(たかすぎわけ)のその狼狽(うろたへ)かた、208イヤもう(へそ)宿換(やどがへ)いたすワイ。209アハヽヽヽ、210マアマア(ゆつく)落着(おちつ)いて敵軍(てきぐん)襲撃(しふげき)()てそれを(さかな)一杯(いつぱい)やらうかい。211ヤア(たれ)(かれ)(さけ)(さけ)だ、212殺伐(さつばつ)(つるぎ)(やり)(ゆみ)(やう)(もの)神様(かみさま)(しづ)まり(たま)聖地(せいち)(おい)(もち)ふる(もの)ではない。213武器(ぶき)兇器(きようき)だ』
214 高杉別(たかすぎわけ)はクワツと(いか)り、
215放縦(はうじう)無責任(むせきにん)(なんぢ)言葉(ことば)216門出(かどで)血祭(ちまつ)りにせむ』
217一刀(いつたう)()いて真向(まつこう)より()りかかる。218手力男神(たぢからをのかみ)は、219門柱(もんばしら)をグツと()()頭上(づじやう)(たか)()(かざ)し、220高杉別(たかすぎわけ)(おさ)()けた。
221高杉別(たかすぎわけ)『ヤア、222貴様(きさま)(いま)まで忠実(ちうじつ)なる味方(みかた)()せかけて、223内外(ないぐわい)(あひ)呼応(こおう)して、224(この)聖地(せいち)占領(せんりやう)せむと計画(けいくわく)しつつありし曲者(くせもの)ならむ。225たとへ吾身(わがみ)(ころ)されて帰幽(きいう)する(とも)226(わが)誠忠(せいちう)正義(せいぎ)霊魂(れいこん)地上(ちじやう)(とど)まり、227(なんぢ)悪念(あくねん)(こら)さで()くべきか』
228手力男神(たぢからをのかみ)『アハヽヽヽヽ、229モシモシ高杉別(たかすぎわけ)殿(どの)230誤解(ごかい)されては(こま)りますよ』
231()ひながら門柱(もんばしら)をサツと()()けた。232高杉別(たかすぎわけ)はその刹那(せつな)233飛鳥(ひてう)(ごと)()びかかつて、
234反逆無道(はんぎやくぶだう)曲者(くせもの)(おも)()れや』
235()つて、236手力男(たぢからを)脇腹(わきばら)目蒐(めが)けて()きかかる。237手力男(たぢからを)はヒラリと(たい)(かは)したる途端(とたん)に、238高杉別(たかすぎわけ)(ねら)(はづ)れて(いきほひ)(あま)り、239七八間(しちはちけん)前方(ぜんぱう)にトントントントンと(はし)つて抜刀(ぬきみ)(まま)ピタリと(たふ)れた。
240 黒煙(こくえん)益々(ますます)(やかた)(つつ)み、241(かぜ)(あふ)られて全山(ぜんざん)樹木(じゆもく)()ける(おと)242()()(きた)人馬(じんば)物音(ものおと)243刻々(こくこく)近付(ちかづき)(たか)まり()たりぬ。
244大正一一・三・一一 旧二・一三 藤津久子録)